JP4927807B2 - 半導体レーザ素子 - Google Patents

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Description

本発明は半導体レーザ素子に関する。
従来、発振波長が780nmで150mW以上の高い出力を連続して出力する半導体レーザ素子としては、図7に示すような構造のものがある。図7は、半導体レーザ素子を端面から見たときの結晶の層構造を表わしたものであり、半導体レーザ素子はこのような層構造が紙面に垂直な方向に延伸している。
図7で、1はn型GaAs基板、2はn型AlxGa1-xAs第1クラッド層、43は活性層、4はp型AlxGa1-xAs第2クラッド層、5はp型GaAsエッチングストップ層、6はストライプ状p型AlxGa1-xAs第3クラッド層、7はストライプ状切り欠き部を形成するn型GaAs電流阻止層、8はp型GaAsコンタクト層、11はn側電極、12はp側電極である。
上記p型GaAsコンタクト層8は、p型AlxGa1-xAs第3クラッド層6、n型GaAs電流阻止層7を覆うように形成されている。上記p型AlxGa1-xAs第3クラッド層6は、n型GaAs電流阻止層7のストライプ状切り欠き部を満たしている。上記電流阻止層7は、エッチングストップ層5上に形成されたn型AlxGa1-xAs第一埋め込み層7aと、この第一埋め込み層7a上に形成されたn型GaAs第二埋め込み層7bとからなっている。上記ストライプ状とは、幅の狭い構造が紙面に垂直な方向に延伸していることを表わしている。なお、上記xの範囲は0<x<1である。
上記活性層43は、多重量子井戸構造と呼ばれるものが採用されている。この多重量子井戸構造の詳細を図8に示す。図8において、縦軸はAlの混晶比xに応じて変化する各層のEg(バンドギャップエネルギー)を示し、横軸は基板1からの距離である。上記活性層43は、量子井戸と呼ばれる井戸層43aを有している。この井戸層43aには、両側の障壁層43b及びガイド層43c,43dに比べてAlの混晶比xが小さい結晶が用いている。これにより、上記井戸層43aのEgが障壁層43b及びガイド層43c,43dのEgよりも小さくなるので、井戸層43aのEgが井戸のように見える。また、上記井戸層43aの厚さが電子のド・ブロイ波長に比して同等または充分薄い200Å以下程度とされるので、井戸層43aは量子井戸と呼ばれる。また、多重というのは障壁層43bで分離された井戸層43aを複数用いていることを意味している。
上記ガイド層43c,43dは、図8の横軸方向へのレーザ光の閉じ込めの程度を調整する層である。製造工程を簡単化するために障壁層43bと同じ混晶比の層を用いることが多い。
上記構成の半導体レーザ素子によれば、上記電極11,12から注入されたキャリア(電子及びホール)はEgの小さい井戸層43aに閉じ込められるため、効率よく再結合する。また、上記井戸層43aでは量子効果により発光効率が高くなる。その結果、発振閾値電流Ithの低減や、外部量子効率ηの向上等の効果が得られる。ここで、発振波長λは、井戸層43aのEgに対し略λ=1.4/Egとなる関係を有する。なお、上記発振波長λの単位はμm、Egの単位はeVである。
上記発振閾値電流Ithが低く、外部量子効率ηが高いと、駆動電流をIdとした場合、光出力P0は(Id−Ith)×ηに等しいので、駆動電流Idをそれほど高くすることなく、大きい光出力P0が得られる。従って、駆動電流が同じであれば光出力P0を大きくすることができる。
特開平11−274644号公報(段落0053、図1)
ところが、上記従来の半導体レーザ素子では発光層がGaAlAsであるため、半導体レーザ素子の周囲に酸素や水分が存在すると、井戸層43aの構成原子であるAlがレーザの光エネルギーにより酸素や水分と光化学反応を起こして酸化し、井戸層43aの結晶構造を破壊してレーザ素子の特性が劣化し易いという問題があった。
この問題を解決する方法として、井戸層43aにAlを含まない結晶を用いることが考えられる。一方、CD−R(書き込み可能なコンパクト・ディスク)やCD−RW(複数回のデータの書き換えが可能なコンパクト・ディスク)等の光ディスクのシステム用光源として半導体レーザ素子を用いるには、その半導体レーザ素子のレーザ発振波長が略780nmでなければならない。
図3は、そのような可能性のある材料として想定されるIII−V族四元混晶In1-vGavAs1-ww(0<v<1、0<w<1)の組成を示す図である。
図3において、縦軸は混晶中のV族元素におけるPの割合を示し、横軸は混晶中のIII族元素におけるGaの割合を示す。四角形の四隅は右上隅から時計回りに2元混晶であるGaP,GaAs,InAs,InPを表している。また、四角形の四辺は右辺から時計回りに3元混晶であるGaAsw1-w,In1-vGavAs,InAs1-wPw,In1-vGavPを表す。そして、四角形の内部が4元混晶であるIn1-vGavAs1-wwを表している。
図3中の実線Aは結晶の格子定数aが等しくなる組成をつないだ線、即ち等格子定数線であり、実線Aの場合は右下のGaAsの点上を通っていることからGaAs基板に格子整合する組成の集合を表している。そして、図3中の破線B1及びB2は結晶のEgが等しくなる組成をつないだ線、即ち等Eg線であり、例えば線B1上の組成の結晶を井戸層として用いれば半導体レーザの発振波長が略780nmとなることを表わしている。
図3において、結晶の格子定数aは実線Aから略垂直に右上に行くほど小さくなり、左下に行くほど大きくなる。一方、結晶のEgは破線B1またはB2に垂直に右上に行くほど大きくなり、左下に行くほど小さくなる。従って、発振波長は右上に行くほど短くなり、左下に行くほど長くなる。
半導体レーザ素子の活性層としてはレーザ光の強度が高い部分にある層にはAlを含まないことが望ましい。即ち、井戸層だけでなく障壁層もAlを含まないことが望ましい。従って、発振波長780nmの半導体レーザを作製するためには、井戸層として図3の破線B1上の組成のIn1-v1Gav1As1-w1w1(0<v1<1、0<w1<1)結晶を用い、障壁層としてはそれよりバンドギャップの大きい図3の破線B2上の組成のIn1-v2Gav2As1-w2w2(0<v2<1、0<w2<1)結晶を用いれば良い。
しかし、v1,v2,w1,w2をどのように組合わせれば良いか、明確な指針が無かったためこのような半導体レーザはこれまで実用に供せられていない。
そこで、本発明の課題は、活性層にAlを含んでいなくても、より高い光出力を実用的な動作時間出すことができる半導体レーザ素子を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の半導体レーザ素子は、
第1導電型のGaAs基板上に、III−V族化合物半導体からなる第1導電型の第1クラッド層、活性層及び第2導電型の第2クラッド層がこの順序で形成され、上記活性層は、井戸層と、この井戸層よりエネルギーバンドギャップが大きくて上記井戸層を挟む障壁層と、上記井戸層および上記障壁層を挟むガイド層を有し、上記井戸層及び上記障壁層は、V族元素としてP(燐)及びAs(砒素)を有し、III族元素としてGa(ガリウム)及びIn(インジウム)を有し、上記障壁層は上記GaAs基板に対して引っ張り歪を有すると共に、上記ガイド層は上記GaAs基板に対して略格子整合し、上記ガイド層の厚さは該ガイド層と隣接する障壁層の厚さよりも厚く、電流阻止層により埋め込まれたリッジ構造または内部ストライプ構造を有する半導体レーザ素子において、
上記障壁層のV族元素におけるPの割合が、上記井戸層のV族元素におけるPの割合より大きく、かつ、上記障壁層のIII族元素におけるInの割合が、上記井戸層のIII族元素におけるInの割合より小さく、
上記井戸層は上記GaAs基板に対して圧縮歪を有し、
上記ガイド層はAlGaAs層より構成される一方、上記電流阻止層により埋め込まれたリッジ構造又は内部ストライプ構造はGaAsからなる層を介して上記AlGaAsガイド層とは反対側に形成され、このAlGaAsガイド層のAl混晶比が0.3以上かつ0.5以下である
ことを特徴としている。
上記構成の半導体レーザ素子によれば、上記障壁層のV族元素におけるPの割合を、井戸層のV族元素におけるPの割合より大きくすると共に、障壁層のIII族元素におけるInの割合を、井戸層のIII族元素におけるInの割合より小さくする。この場合、上記障壁層はGaAs基板に対して引っ張り歪を有し、井戸層は上記GaAs基板に対して圧縮歪を有しているので、活性層にAl(アルミ)を含んでいなくても、より高い光出力を実用的な動作時間出すことができる。従って、上記半導体レーザ素子は、例えばCD−RやCD−RW等の光ディスクシステム用半導体レーザ光源として用いることができる。また、GaAs基板に対して略格子整合し、隣接する障壁層よりも厚いガイド層の働きにより、高光出力高電流注入状態であっても、量子井戸層から漏れたキャリアがクラッド層の外側まで拡散するのを防ぐことができる。したがって、本発明の半導体レーザ素子は高温下で良好に動作することが可能となる。
一実施形態の半導体レーザ素子は、上記障壁層のIII族元素におけるIn混晶比が0.15以下である。
一実施形態の半導体レーザ素子は、上記障壁層の上記GaAs基板に対する引っ張り歪の大きさの絶対値が、上記井戸層の上記GaAs基板に対する圧縮歪の大きさの絶対値より大きい。
一実施形態の半導体レーザ素子は、上記井戸層を2つ以上有し、隣接する上記井戸層の間に上記障壁層が存在する。
上記実施形態の半導体レーザ素子によれば、上記井戸層を2つ以上有し、隣接する井戸層間に障壁層を存在するので、レーザ光出力の遠視野像を光ディスクシステムに適したような形状とすることができる。
本発明の半導体レーザ素子においては、上記ガイド層はAlGaAs層より構成されており、上記AlGaAsガイド層のAl混晶比が0.3以上である。この半導体レーザ素子は、70℃以上の高温でも高出力で安定動作できる。
一実施形態の半導体レーザ素子においては、上記活性領域と第1,第2クラッド層との間に、上記AlGaAsガイド層を設けている。
一実施形態の半導体レーザ素子は、上記AlGaAsガイド層と上記第2クラッド層との間にAlGaAsキャリアブロック層を有し、上記AlGaAsキャリアブロック層のAl混晶比が0.6以上0.85未満であり、上記第1導電型がn型であり、上記第2導電型がp型である。
上記実施形態の半導体レーザ素子によれば、上記AlGaAsガイド層と第2クラッド層との間に、Al混晶比が0.6以上0.85未満であるAlGaAsキャリアブロック層を設けている。この場合、上記第1導電型がn型であり、上記第2導電型がp型であるので、70℃以上の高温でも高出力で安定動作できる。
一実施形態の半導体レーザ素子は、上記第2クラッド層のAl混晶比が0.5以上である。
上記実施形態の半導体レーザ素子によれば、上記第2クラッド層のAl混晶比を0.5以上にしているので、70℃以上の高温でも高出力で安定動作できる。
一実施形態の半導体レーザ素子は、上記第2クラッド層上に形成された第2導電型のGaAsエッチングストップ層と、上記GaAsエッチングストップ層上に形成され、ストライプ状の切り欠き部を形成する第1導電型の電流阻止層と、上記ストライプ状の切り欠き部を満たす第2導電型の第3クラッド層と、上記第3クラッド層及び上記電流阻止層を覆うように形成されたコンタクト層とを有する。
上記実施形態の半導体レーザ素子によれば、上記第2クラッド層上に、第2導電型のGaAsエッチングストップ層、第1導電型の電流阻止層、第2導電型の第3クラッド層及びコンタクト層を順次積層しているので、例えばCD−RやCD−RW等の光ディスクシステムの高速化を実現する半導体レーザ光源として用いることができる。
一実施形態の半導体レーザ素子は、上記活性層は、2つの端面のうち少なくとも一方の端面に隣接する部分において、上記井戸層及び障壁層が混晶化されている。
上記実施形態の半導体レーザ素子によれば、上記活性層は、2つの端面のうち少なくとも一方の端面に隣接する部分において、井戸層及び障壁層が混晶化されているので、さらにより高い光出力を出すことができる。
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態の半導体レーザ素子を端面から見たときの結晶の層構造を表したものを示す。また、図1においては、図7に示した従来例の構成部と同一構成部に、図7における構成部と同一参照番号を付している。
図2に、上記第1実施形態の半導体レーザ素子の多重量子井戸活性層3の詳細を示す。図2において、縦軸は各層を構成する結晶のEgに対応し、横軸は基板からの距離を表わす。
上記多重量子井戸活性層3は、2層の量子井戸層3aと、各量子井戸層3aの両側に設けられた障壁層3bとを有している。上記量子井戸層3aはIn1-v1Gav1As1-w1w1結晶からなり、障壁層3bはIn1-v2Gav2As1-w2w2結晶からなる。ここで、v1,v2はv1<v2を満たし、w1,w2はw1<w2を満たす。
以下、上記量子井戸層3aの組成v1,w1の関係、及び、障壁層3bの組成v2,w2の関係について図3を用いてより詳しく説明する。
例えば、上記量子井戸層3aと障壁層3bとの組成を一点鎖線の線分D1の両端の組成に対応させる場合、点Zaを量子井戸層3aの組成とし、点Zbを障壁層3bの組成とすることが望ましい。また、例えば、上記量子井戸層3aと障壁層3bとの組成を一点鎖線の線分D2の両端の組成に対応させる場合、点Zcを量子井戸層3aの組成とし、点Zdを障壁層3bの組成とすることが望ましい。
以下、点Zaと点Zbとの関係または点Zcと点Zdとの関係について詳述する。
上記障壁層3bのEgが量子井戸層3aのEgより大きくなければならないことは既に説明した通りである。基板がGaAs基板である場合、基板の結晶格子の大きさAsと等しい結晶の組成は実線Aで表わされる。この実線A上の組成の結晶は基板に格子整合し、歪が無い状態となる。一方、図3に示す範囲の組成の結晶では、図の中央付近の結晶が最も作り難いことが知られている。この領域は一般にミシビリティギャップの領域と呼ばれている。本発明者らは、量子井戸層3a及び障壁層3bも歪の無い結晶を用いるために、量子井戸層3aの結晶の組成を点Ze、障壁層3bの結晶の組成は点Zfとして半導体レーザ素子を試作したところ、閾値電流が70mA以上と非常に高く、良好な素子は実現できなかった。点Zfはミシビリティギャップの領域外であり、結晶成長の観点からは良好な表面が得られている。ところが、実際の素子特性は良好なものが得られないことが確認された。これは従来の結晶成長の考え方では理解できない現象である。
上記障壁層3bとしては、歪のある組成を考えることもできる。ここで、結晶における歪Disは、基板の格子定数をa1、結晶の格子定数をa2、Δa=a2−a1とすると、Dis=Δa/a1で定義され、通常は%で表示される。歪Disの絶対値が大きい組成を選ぶということは、図で実線Aに対し垂直方向にできる限り遠くの点に対応する組成を選ぶことになる。歪Disの絶対値が大きくなりすぎると内部応力により結晶が破壊し、半導体レーザやLEDのような光デバイスを作製したとき、光が結晶の破壊で生じた欠陥により吸収されたり、キャリアがやはり欠陥によりトラップされて発光に寄与しなくなり、光デバイスの性能が悪くなることが知られている。実線Aから右上側がEgの大きくなる方向で、この方向では歪Disの大きさは負の値になるので引張り歪が加わることになる。反対に、実線Aより左下側がEgの小さくなる方向で、この方向では歪Disの大きさは正の値になるので圧縮歪が加わることになる。
また、上記半導体レーザ素子を、150mW〜200mWという高速CD−R用途の高出力レーザとして安定に動作させるためには、結晶性のほか、温度特性も極めて重要となる。温度特性を向上させるには各種の方法があるが、量子井戸層3aと障壁層3bとのエネルギーギャップ差が最も重要なパラメータである。しかし、従来は780nm帯すなわちGaAs基板上のInGaAsPを量子井戸層、障壁層の両者に適用したレーザでは、先に述べた結晶性と、温度特性すなわちエネルギーギャップ差を大きくとることを両立させるInGaAsP組成の組み合わせの明確な指針が示されていなかった。
この現況を鑑み本発明者等が鋭意検討した結果、成長される結晶の欠陥が少なく、量子井戸層3aと障壁層3bとのエネルギーギャップ差ができるだけ大きくなるようにするためには、障壁層3bのV族元素におけるPの割合が、量子井戸層3aのV族元素におけるPの割合より大きくし、障壁層3bのIII族元素におけるInの割合が、量子井戸層3aのIII族元素におけるInの割合より小さくし、そして、障壁層3bはGaAs基板1に対し引っ張り歪を有し、量子井戸層3aはGaAs基板1に対し圧縮歪を有するという条件を満足すれば良いことが分かった。
また、より好ましくは、上記障壁層3bのIII族元素におけるIn混晶比が0.15以下となるように設定する。この場合は、格段に素子の特性が向上することを、本発明者等が確認した。
また、上記障壁層3bのGaAs基板1に対する引っ張り歪の大きさの絶対値が井戸層のGaAs基板に対する圧縮歪の大きさの絶対値より大きいという条件を満足すれば更に良いことが分かった。
例えば、上記量子井戸層3aの組成を点Zaとすれば障壁層3bの組成を点Zbとすれば良く、量子井戸層3aの組成を点Zcとすれば障壁層3bの組成を点Zdとすれば良い。どの点が良いかは成長する装置により異なる。一般的には、結晶を成長するときの基板温度が高いほど、図の中心に近い組成まで良い結晶が成長できる。反対に、結晶を成長するときの基板温度が低いと、結晶の欠陥ができ始める組成が右下に下がってくる。上記基板温度はいくらでも高くするわけにはいかないが、できる限り高い温度が望ましい。その上で、上記障壁層3bの結晶のIII族元素におけるInの割合を15%以下となるように設定することが好ましい。理由については現在のところ明確にはなっていないが、これは780nm帯の半導体レーザに特有の現象と考えられる。
本第1実施形態の半導体レーザ素子では、障壁層3bの外側に障壁層よりエネルギーバンドギャップの大きいAlGaAsガイド層3c,3dを設けているがその理由を以下に説明する。
結晶の破壊が発生する歪の大きさの絶対値は結晶の厚さに反比例することが知られている。上記ガイド層3c,3dのようにレーザ光の閉じ込めを制御するためには層厚を0.01μm〜0.1μm程度まで厚くする必要があるので、基板1に対する歪は小さい方が望ましい。上述したように歪を小さくしてEgを大きくすることは実線B2上で左上の組成の結晶を作成することになるが、そのような組成で欠陥のない結晶は成長できないことは先に説明した通りである。そして、高出力動作を要求されるCD−R用半導体レーザではキャリアの注入量が従来より非常に大きくなるため、その半導体レーザを高温下で良好に動作させるには、量子井戸層−障壁層間のエネルギーギャップ差を大きくするだけではなく、量子井戸層の外側の層のEgをも大きくし量子井戸層から漏れたキャリアがクラッドの外側まで拡散するのを防ぐ必要がある。そこで、ガイド層を導入し、Egが大きくGaAs基板と格子定数の等しいAlGaAs結晶をその材料に用いている。ところで、GaAs基板上のInGaAsPでは従来780nm帯に用いられてきたAlGaAs系結晶と異なり量子井戸層−障壁層間のエネルギーギャップ差を大きくとることができない。また、キャリア漏れと深い関係がある量子井戸層内の基底準位や高次の準位の分布がAlGaAs系結晶と異なる構造をとるため、Ithの温度特性はもとより高光出力高電流注入状態でのキャリアの漏れの程度がAlGaAs系結晶とは異なっており、その漏れを防ぐ手段の最適化がなされていない。
これを受け、780nm帯InGaAsP系レーザである先のレーザ構造においてAlGaAsガイド層3c,3dの組成を変化させて素子の特性を調べたところ、Al混晶比が0.3未満では温度特性を示すT0値が25℃〜85℃間で70K以下であったが、Al混晶比が0.3以上であると、温度特性が向上する。特に、AlGaAsガイド層3c,3dにおけるAl混晶比が0.4以上であれば、T0値は130K以上と良好となることが確認された。これらのT0値は、p型AlxGa1-xAs第2クラッド層4のAl組成を0.48と固定したときのデータである。また、AlGaAsガイド層3c,3dの一部のAl組成を0.5程度まで上げた場合にも、p型AlxGa1-xAs第2クラッド層4のAl組成を0.48と固定したときと同じ結果が得られた。
AlGaAsガイド層3c,3d以外の層のEgを高くした場合も、上述したデータと同様の温度特性改善効果が確認された。780nm帯InGaAsP系量子井戸活性層を持つ半導体レーザの温度特性向上に適した層条件を得るため、後に述べるが、第1実施形態の構造を元にクラッド層(p側)、キャリアブロック層などガイド層以外の層の混晶比を様々に設定した素子を作製した。これらの素子の特性を調べたところ、ある特定の条件でガイド層の混晶比を大きくした場合と同様の温度特性値T0の増加が確認できた。
まず初めに、クラッド層の混晶比を変化させた時の実験結果を述べる。AlGaAsガイド層3c,3dのAl混晶比を0.4に固定し、p型AlxGa1-xAs第2クラッド層4のAl混晶比を変化させた素子を作製し、この素子の特性を調べた。その結果、p型AlxGa1-xAs第2クラッド層4のAl混晶比を0.5以上にすることでT0値は更に向上することが確認された。例えば、Al混晶比を0.6にするとT0値が150K、Al混晶比を0.7にするとT0値が200Kと向上する。
次に、キャリアブロック層を導入した結果について述べる。p型AlxGa1-xAs第2クラッド層4のAl混晶比を0.5に固定し、p型AlxGa1-xAs第2クラッド層4とGaAlAsガイド層3dとの間に、7nmの厚さのp型GaAlAs(Al混晶比0.7)キャリアブロック層を挿入したところ、T0値は180Kと向上した。他のAl混晶比キャリアブロック層では、Al混晶比を0.6〜0.85程度の値としたとき、p型GaAlAsキャリアブロック層のAl混晶比が0.7のときと同様の温度特性改善効果が得られた。また、GaAlAsガイド層3c,3dの組成をバリア層からクラッド層に向かって徐々に大きくなるよう連続的に変化させるGRIN(GRaded INdex)構造、または、段階的に変化させた構造についても温度特性が改善されることを確認した。
これらの結果から、本発明の活性層にAlを有しない780nm帯半導体レーザにおいては、p側のガイド層とクラッド層との材料にAlGaAsを用い、Al混晶比を上述した通り適切に設定することが温度特性の確保には極めて重要であることが確認された。
また、量子井戸層における光の利得を決定する光閉じ込め係数を十分大きく取ることも素子の温度特性向上には極めて重要であるが、先に述べたように780nm帯InGaAsP系の量子井戸層を持つ半導体レーザではバンド構造がAlGaAs系とは異なるため、バンド構造及びフェルミレベルと閉じ込め係数の最適値もAlGaAs系と大きく異なっていることが見出された。実際に素子を試作して特性を確認したところ、全光強度分布のうちの4%以上が量子井戸層に存在するように光学設計を行うことで良好な温度特性、閾値電流特性が実現できることが見出された。実際の素子では光の形状自体を変化させる他に、量子井戸層の層厚を厚くしたり量子井戸層の層数を増やすことで、この最適な閉じ込め係数値を実現している。
以上、量子井戸層,障壁層のInGaAsP材料の組み合わせと、量子井戸層,障壁層以外の層の温度特性向上対策で得られた実験結果を適用した第1実施形態の半導体レーザ素子は、高速CD−R用途の150mW〜200mW級の780nm帯InGaAsP系半導体レーザ素子として安定に動作できる。
以下に、図1,2を用いて第1実施形態の実際の層構造の一例を述べておく。
図1において、1はn型GaAs基板、2はn型Al0.45Ga0.55As第1クラッド層(3.0μm厚)、3は多重量子井戸活性層(発振波長0.78μm)、4はp型Al0.49Ga0.51As第2クラッド層(0.1967μm厚)、5はp型GaAsエッチングストップ層(3nm厚)、6はp型Al0.49Ga0.51As第3クラッド層(1.28μm厚)である。この第3クラッド層6はリッジストライプ構造を成している。そして、上記第3クラッド層6は、高さが約2μm、幅が最も広いところで約2.5μmである。つまり、上記第3クラッド層6においてエッチングストップ層5と接する部分の幅は約2.5μmに設定されている。また、上記第3クラッド層6の両側には電流阻止層7を設けていて、この電流阻止層7により第3クラッド層6の側面が埋め込まれている。上記電流阻止層7は、n型Al0.7Ga0.3As第1埋め込み層7a(0.7μm厚)、n型GaAs第2埋め込み層7b(0.3μm厚)が順次積層されてなっており、主に第3クラッド層6の直下にのみ電流が流れる電流狭窄構造をなしている。さらに、上記第3クラッド層6および電流阻止層7の上全面にp型GaAsコンタクト層8(2.0μm厚)が積層されている。
上記多重量子井戸活性層3は、図2に示すように、i型Al0.35Ga0.65Asガイド層3c(68.5nm厚)、2層のIn0.17Ga0.83As0.7170.283量子井戸層3a(8nm厚)、3層のIn0.09Ga0.91As0.420.58障壁層3b及びi型Al0.35Ga0.65Asガイド層3d(68.5nm厚)からなっている。上記障壁層3bはGaAs基板1に対して1.417%の引っ張り歪を有している。また、上記障壁層3bの3層のうちGaAs基板1側から数えて1番目、3番目の層における層厚を10nm、2番目の層における層厚を5nmとしている。そして、上記量子井戸層3aは、障壁層3b間に設けられ、GaAs基板1に対して0.217%の圧縮歪を有している。ここでは、上記量子井戸層3aと障壁層3bのバンドエネルギー差が約0.4eV弱となっている。
また、図示しないが、上記ガイド層3dと第2クラッド層4との間にAlGaAsキャリアブロック層を設ける場合は、ガイド層3dと第2クラッド層4との間に、例えば、p型Al0.7Ga0.3Asキャリアブロック層を設ける。また、望ましくは、第2クラッド層4のAl混晶比を0.5以上にする。
本第1実施形態の半導体レーザ素子はリッジガイド構造と呼ばれるもので、エッチングストップ層5は、リッジと呼ばれる断面が台形のストライプ状の第3クラッド層6を通常のホトリソグラフィー法で形成する場合、第2クラッド層4がエッチングされないようにするために設けられている。そして、上記エッチングストップ層5は、厚さを0.01μm以下として量子井戸層3aで発生したレーザ光を吸収しないように十分薄くしている。
また、上記電流阻止層7は0.3μm以上と厚いので、光を吸収しないAlGaAsで形成することが望ましい。しかし、上記電流阻止層上にコンタクト層を成長するためには、酸化され難いGaAsで電流阻止層を覆っておくことが望ましい。このため、上記電流阻止層7は、n型Al0.7Ga0.3As第1埋め込み層7aと、n型GaAs第2埋め込み層7bとで構成している。
また、上記第1埋め込み層7aを第3クラッド層6よりAl組成の大きな結晶とすることにより、レーザ光をGaAs基板1に平行な方向についてはリッジ部分に閉じ込めることができる。本構成の場合、上記電流阻止層7での光吸収が無いので外部量子効率が高くなる。従って、高い光出力で使用する場合に駆動電流が少なくなる。
上記コンタクト層8はp型不純物を高濃度に添加した層であり、p側電極12とオーミックコンタクトを取るために設けている。また、上記p側電極12がステム(図示せず)にダイボンドされたとき、多重量子井戸活性層3で発生した熱を速やかに逃すことができるよう、電極面積を広くするためにストライプ状リッジ部6の上だけでなく電流阻止層7も覆うように設けている。
本第1実施形態の半導体レーザ素子は、ステムやダイボンド方法に特別な工夫を行うことなく、発振波長が780nm、連続発振で150mW以上の光出力を実用に十分な動作時間出すことができる。
また、上記半導体レーザ素子をステムにマウントした半導体レーザ装置を光源に用いることにより、CD−RやCD−RW規格の光ディスクへの書込みを高速に行うことができるようになる。即ち、基準とされる書込み速度に対し、従来は12倍の速さまでしか書き込め無かったものが16倍以上の速さで書き込むことができるようになった。
(第2実施形態)
図4に、本発明の第2実施形態の半導体レーザ素子を端面から見たときの結晶の層構造を表わしたものを示す。また、図4においては、図1に示した第1実施形態の構成部と同一構成部に、図1における構成部と同一参照番号を付している。
図4において、1はn型GaAs基板、2はn型Al0.45Ga0.55As第1クラッド層(3.0μm厚)、23は多重量子井戸活性層(発振波長0.78μm)、4はp型Al0.49Ga0.51As第2クラッド層(0.1967μm厚)、5はp型GaAsエッチングストップ層(3nm厚)、26はp型Al0.49Ga0.51As第3クラッド層(1.28μm厚)、27はn型Al0.7Ga0.3As電流阻止層(0.7μm厚)、28はp型GaAsコンタクト層(2.0μm厚)である。上記電流阻止層27はストライプ開口部を有し、主にストライプ開口部直下のみに電流が流れる電流狭窄構造をなしている。また、上記第3クラッド層26は、エッチングストップ層5の一部と電流阻止層27を覆うように形成されている。
上記多重量子井戸活性層23は、図示しないが、i型Al0.4Ga0.6Asガイド層(35nm厚)、2層のIn0.20Ga0.80As0.710.29量子井戸層(15nm厚)、3層のIn0.07Ga0.93As0.520.48障壁層及びi型Al0.4Ga0.6Asガイド層(35nm厚)からなっている。上記障壁層はGaAs基板1に対して1.207%の引っ張り歪を有している。また、上記障壁層の3層のうちGaAs基板1側から数えて1番目、3番目の層における層厚を10nm、2番目の層における層厚を5nmとしている。そして、上記量子井戸層は、障壁層間に設けられ、GaAs基板1に対して0.409%の圧縮歪を有している。ここでは、上記量子井戸層と障壁層のバンドエネルギー差が約0.3eV弱となっている。
上記構成の第2実施形態の半導体レーザ素子では、第1実施形態と同様、量子井戸層と障壁層の組成比を、先に述べた図3中での適当な組み合わせとなるよう設定している。また、先述したように、量子井戸構造外での温度特性改善構造を取り入れている。つまり、上記第1実施形態では温度特性改善のためキャリアブロック層を導入したが、第2実施形態ではキャリアブロック層を用いず、量子井戸活性層23の層厚を厚くし、またガイド層のAl混晶比も大きく設定している。その結果、本第2実施形態の半導体レーザ素子は、上記第1実施形態と同じようにCD−R用半導体レーザの仕様を満たした高出力動作を行うことができる。
また、本第2実施形態では、リッジストライプ構造ではなく内部ストライプ構造を用いてGaAs基板1と平行方向にレーザ光を閉じ込めている。即ち、ストライプ状の切欠き部を有する電流阻止層27の全体を覆うように第3クラッド層26が形成されている。
上記第1実施形態の半導体レーザ素子では、リッジ形成工程と電流阻止層形成工程の間にフォトリソグラフィー工程を挟む必要があるため、結晶成長装置から素子を取出す必要がある。これに対して、本第2実施形態の半導体レーザ素子では、電流阻止層27を厚くすることが難しいので、高い出力を得るために駆動電圧を高くすることが困難ではあるが、内部ストライプ形成工程において電流阻止層が同時に形成されるので素子の作成が容易になるという特徴がある。
(第3実施形態)
図5(a)に、本発明の第3実施形態の半導体レーザ素子を端面から見たときの結晶の層構造を表したものを示し、図5(b)に、図5(a)のb−b線から見た断面を表したものを示している。また、図5(a),(b)においては、図1に示した第1実施形態の構成部と同一構成部に、図1における構成部と同一参照番号を付している。
図5(a)において、1はn型GaAs基板、2はn型Al0.43Ga0.57As第1クラッド層(3.0μm厚)、33は多重量子井戸活性層(発振波長0.78μm)、4はp型Al0.6Ga0.4As第2クラッド層(0.1967μm厚)、5はp型GaAsエッチングストップ層(3nm厚)、6はp型Al0.49Ga0.51As第3クラッド層(1.28μm厚)である。この第3クラッド層6はリッジストライプ構造を成している。そして、上記第3クラッド層6は、高さが約2.5μm、幅が最も広いところで約4.0μmである。つまり、上記第3クラッド層6においてエッチングストップ層5と接する部分の幅は約4.0μmに設定されている。また、上記第3クラッド層6の両側には電流阻止層7を設けていて、この電流阻止層7により第3クラッド層6の側面が埋め込まれている。上記電流阻止層7は、n型Al0.7Ga0.3As第1埋め込み層7a(0.7μm厚)、n型GaAs第2埋め込み層7b(0.3μm厚)が順次積層されてなっており、主に第3クラッド層6の直下にのみ電流が流れる電流狭窄構造をなしている。さらに、上記第3クラッド層6および電流阻止層7の上全面にp型GaAsコンタクト層8(2.0μm厚)が積層されている。
上記構成の第3実施形態の半導体レーザ素子では、第1、2実施形態と同様、量子井戸層と障壁層の組成比を、先に述べた図3中での適当な組み合わせとなるよう設定している。また、先述したように量子井戸構造外での温度特性改善構造を取り入れている。つまり、本第3実施形態では、量子井戸層数を増やし、i型AlGaAsガイド層を設け、また第2p−クラッド層4のAl混晶比も大きく設定している。その結果、本第3実施形態の半導体レーザ素子は、上記第1,2実施形態と同じようにCD−R用半導体レーザの仕様を満たした高出力動作を行うことができる。
また、図5(b)に示すように、本第3実施形態の半導体レーザ素子の端面9,10はレーザ光に対し部分反射鏡となって内部で発生した光の一部を再度内部に戻すことによりレーザ発振を発生させる。上記端面9,10は結晶構造が途切れており、各層のエネルギーバンドギャップが小さくなっている。そのため内部で発生した光のうち、端面9,10を透過する光の一部は多重量子井戸活性層33の結晶そのものに吸収され、この吸収された光の一部が熱となって端面9,10の温度を上昇させる。このような光吸収や温度上昇は多重量子井戸活性層33の端面が最も大きいが、光は第1,第2クラッド層2,4迄広がっているので第1,第2クラッド層2,4でも温度上昇が生じる。上記第1実施形態の半導体レーザ素子ではガイド層3c、3dや第1,第2クラッド層2,4には酸化されやすいAlが大量に含まれているので光出力を更に大きくするためには端面での光吸収を更に低減することが必要である。
図6に、本第3実施形態の半導体レーザの光を取出す端面9近傍の活性層33eを構成する各層の厚さとバンドギャップエネルギーを示す。
上記多重量子井戸活性層33は、図6に示すように、i型Al0.35Ga0.55Asガイド層33c(45nm厚)、3層のIn0.32Ga0.68As0.500.50量子井戸層33a(10nm厚)、4層のIn0.13Ga0.87As0.370.63障壁層33b及びi型Al0.35Ga0.65Asガイド層33d(35nm厚)からなっている。上記障壁層33bはGaAs基板1に対して1.302%の引っ張り歪を有している。また、上記障壁層33bの3層のうちGaAs基板1側から数えて1番目、4番目の層における層厚を10nm、2番目、3番目の層における層厚を5nmとしている。そして、上記量子井戸層33aは、障壁層3b間に設けられ、GaAs基板1に対して0.541%の圧縮歪を有している。ここでは、上記量子井戸層3aと障壁層3bのバンドエネルギー差が約0.40eVとなっている。
このように、本第3実施形態の半導体レーザ素子では量子井戸層33aを3層としている。そして、上記多重量子井戸活性層33の端面9近傍の部分33eでは、量子井戸層33aと障壁層33bとの周期構造が無くなり、バンドギャップエネルギーは量子井戸層33aと障壁層33bとの平均的な値となっている。このような構造は、光を取出す端面9の部分に、例えば、エッチングストップ層5の表面から亜鉛(Zn)を拡散することにより形成することができる。拡散されたZnは、量子井戸層33aと障壁層33bとの周期構造を破壊し全体として均一な組成の結晶に変換する。即ち、量子井戸構造を破壊するので端面9近傍のバンドギャップエネルギーは図6のようになるのである。
また、上記半導体レーザ素子の共振器長L=600μmに対し、量子井戸構造を破壊する部分33eは端面9から略20μmの長さとした。これは、上記量子井戸構造が破壊された部分ではレーザ発振のための利得が無くなるのであまり長くすると発振閾値Ithが高くなってしまうためである。
上記量子井戸層33aの組成を図3の点Zcの組成にし、障壁層33bの組成が図3の点Zdの組成にした場合、多重量子井戸活性層33の端面9近傍の部分33eの組成は平均的な組成、即ち、点Zgの歪の無い組成に近くなる。従って、上記端面9近傍の部分33eの厚さが例えば0.05μmにしても、結晶が破壊して欠陥が発生することが無い。その結果、結晶を劣化させること無く、多重量子井戸活性層33の端面9近傍の部分33eによる光吸収を無くす、いわゆる窓構造を実現できるため、より高い光出力の半導体レーザ素子を実現できる。
上記第3実施形態では、多重量子井戸活性層33において、端面9近傍の部分33eにおいて量子井戸層33aと障壁層33bとの周期構造を無くしていたが、多重量子井戸活性層33において端面9近傍の部分33eと、多重量子井戸活性層33において端面10近傍の部分との両方において、量子井戸層33aと障壁層33bの周期構造を無くしてもよい。また、ガイド層33dと第2クラッド層4との間に、第1実施形態において説明したようなキャリアブロック層を設けてもよい。
本第3実施形態の半導体レーザ素子を光ディスクシステムに用いることにより、より書込み速度の速いCD−R、CD−RWシステムを実現することができる。
(第4実施形態)
図9に、本発明の第4実施形態の半導体レーザ素子を端面から見たときの結晶の層構造を表したものを示す。この半導体レーザ素子は、n−GaAs基板101上に、n−GaAsバッファ層102(層厚0.5μm)、n−Al0.452Ga0.548As第一下クラッド層103(層厚3.0μm)、n−Al0.532Ga0.468As第二下クラッド層104(層厚0.12μm)、多重歪量子井戸活性層107、p−Al0.4885Ga0.5115As第一上クラッド層110(層厚0.13μm)およびp−GaAsエッチングストップ層111(層厚30Å)を順次積層している。上記n型の第一下クラッド層103と第二下クラッド層104とが第1導電型の第1クラッド層を構成しており、上記p型の第一上クラッド層110が第2導電型の第2クラッド層を構成している。また、エッチングストップ層111上に、第2導電型の第3クラッド層としてのメサストライプ形状のp−Al0.4885Ga0.5115As第二上クラッド層112(層厚1.28μm)および庇形状のGaAsキャップ層113(層厚0.75μm)を設けると共に、上記第二上クラッド層112およびGaAsキャップ層113の両側を、n−Al0.7Ga0.3As第一電流阻止層115(層厚1.0μm)、n−GaAs第二電流阻止層116(層厚0.3μm)およびp−GaAs平坦化層117(層厚0.65μm)からなる光・電流狭窄領域で埋め込み、さらに、全面にp−GaAsコンタクト層119を設けている。また、図示していないが、コンタクト層119の上にはp型電極を、そして基板101の裏面にはn型電極を設けている。この半導体レーザ素子は、メサストライプ部121aと、そのメサストライプ部121aの両側方のメサストライプ部側方部121bとを有し、該メサストライプ部121aの最下部の幅は約2.5μmである。
上記多重歪量子井戸活性層107は、図示していないが、基板側からAl0.4278Ga0.5722As下ガイド層(層厚2200Å)、In0.2655Ga0.7345As0.59140.4086圧縮歪量子井戸層(歪0.466%、層厚50Å、2層)とIn0.1260Ga0.8740As0.40710.5929障壁層(歪−1.200%、層厚90Å・50Å・90Åの3層)を交互に配置してなる多重歪量子井戸活性領域、Al0.4278Ga0.5722As上ガイド層(層厚1500Å)という層構造からなっている。
本実施形態において、発振波長は780nmであり、70℃、230mWパルスの信頼性試験において5000時間以上の安定な動作を確認した。これは、第1、2および3実施形態と同様、量子井戸層と障壁層の組成比を、先に述べた図3中での適当な組合せとなるように設定しているためである。その結果、本第4実施形態の半導体レーザ素子は、上記第1、2および3実施形態と同様にCD−R用半導体レーザの仕様を満たした高出力動作を行うことができ、本第4実施形態の半導体レーザ素子を光ディスクシステムに用いることにより、より書込み速度の速いCD−R、CD−RWシステムを実現することができる。
また、本実施形態では、埋込リッジ構造としたが、これに限るものではない。リッジ構造、内部ストライプ構造、埋込ヘテロ構造など、あらゆる構造に対して同様の効果が得られる。
また、活性層107と第一上クラッド層110との間にキャリアブロック層を設けてもよい。
また、本実施形態では、n型基板を用いたが、p型基板を用い、上記実施の形態のn型、p型を入れ替えても、同様の効果は得られる。
上記第1〜4実施形態の半導体レーザ素子は、発振波長が780nmで150mW以上の高い出力を連続して出力しても劣化が少なく、従って、高速で書き込み、書き換えが可能なCD−R,CD−RW等の光ディスクシステム用光源として好適である。
尚、本発明の半導体レーザ素子は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、たとえば井戸層・障壁層の層厚や層数など、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
以上より明らかなように、本発明の半導体レーザ素子は、障壁層のV族元素におけるPの割合を、井戸層のV族元素におけるPの割合より大きくすると共に、障壁層のIII族元素におけるInの割合を、井戸層のIII族元素におけるInの割合より小さくして、障壁層はGaAs基板に対して引っ張り歪を有し、井戸層は上記GaAs基板に対して圧縮歪を有しているので、活性層にAlを含んでいなくても、より高い光出力を実用的な動作時間出すことができる。また、GaAs基板に対して略格子整合し、隣接する障壁層よりも厚いガイド層により、量子井戸層から漏れたキャリアがクラッド層の外側まで拡散するのを防ぐことができるので、本発明の半導体レーザ素子は高温下で良好に動作することが可能となる。
図1は本発明の第1実施形態の半導体レーザ素子の端面から見た層構造を表わす図である。 図2は上記第1実施形態の半導体レーザ素子の活性層を構成する各層の厚さとバンドギャップエネルギー、各層の位置関係を表わす図である。 図3はIII−V族四元混晶In1-vGavAs1-ww(0<v<1、0<w<1)の組成を示す図である。 図4は本発明の第2実施形態の半導体レーザ素子の端面から見た層構造を表わす図である。 図5(a)は本発明の第3実施形態の半導体レーザ素子の端面から見た層構造を表わす図であり、図5(b)は図5(a)のb−b線断面図である。 図6は上記第3実施形態半導体レーザ素子の端面における活性層を構成する各層の厚さとバンドギャップエネルギー、各層の位置関係を表わす図である。 図7は従来の半導体レーザ素子の端面から見た層構造を表わす図である。 図8は従来の半導体レーザ素子の活性層を構成する各層の厚さとバンドギャップエネルギー、各層の位置関係を表わす図である。 図9は本発明の第4実施形態の半導体レーザ素子の端面から見た層構造を表す図である。
1 n型GaAs基板
2 n型Al0.45Ga0.55As第1クラッド層
3,23,33 多重量子井戸活性層
4 p型Al0.49Ga0.51As第2クラッド層
6,26 p型Al0.49Ga0.51As第3クラッド層
3a In0.17Ga0.83As0.7170.283量子井戸層
33a In0.32Ga0.68As0.500.50量子井戸層
3b In0.09Ga0.91As0.420.58障壁層
33b In0.13Ga0.87As0.370.63障壁層
101 n型GaAs基板
103 n型第一下クラッド層(第1クラッド層)
104 n型第二下クラッド層(第1クラッド層)
107 多重歪量子井戸活性層
110 p型第一上クラッド層(第2クラッド層)
112 p型第二上クラッド層(第3クラッド層)

Claims (5)

  1. 第1導電型のGaAs基板上に、III−V族化合物半導体からなる第1導電型の第1クラッド層、活性層及び第2導電型の第2クラッド層がこの順序で形成され、上記活性層は、井戸層と、この井戸層よりエネルギーバンドギャップが大きくて上記井戸層を挟む障壁層と、上記井戸層および上記障壁層を挟むガイド層を有し、上記井戸層及び上記障壁層は、V族元素としてP及びAsを有し、III族元素としてGa及びInを有し、上記障壁層は上記GaAs基板に対して引っ張り歪を有すると共に、上記ガイド層は上記GaAs基板に対して略格子整合し、上記ガイド層の厚さは該ガイド層と隣接する障壁層の厚さよりも厚く、電流阻止層により埋め込まれたリッジ構造または内部ストライプ構造を有する半導体レーザ素子において、
    上記障壁層のV族元素におけるPの割合が、上記井戸層のV族元素におけるPの割合より大きく、かつ、上記障壁層のIII族元素におけるInの割合が、上記井戸層のIII族元素におけるInの割合より小さく、
    上記井戸層は上記GaAs基板に対して圧縮歪を有し、
    上記ガイド層はAlGaAs層より構成される一方、上記電流阻止層により埋め込まれたリッジ構造又は内部ストライプ構造はGaAsからなる層を介して上記AlGaAsガイド層とは反対側に形成され、このAlGaAsガイド層のAl混晶比が0.3以上かつ0.5以下である
    ことを特徴とする半導体レーザ素子。
  2. 請求項1に記載の半導体レーザ素子において、
    上記障壁層のIII族元素におけるIn混晶比が0.15以下であることを特徴とする半導体レーザ素子。
  3. 請求項1または2に記載の半導体レーザ素子において、
    上記障壁層の上記GaAs基板に対する引っ張り歪の大きさの絶対値が、上記井戸層の上記GaAs基板に対する圧縮歪の大きさの絶対値より大きいことを特徴とする半導体レーザ素子。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1つに記載の半導体レーザ素子において、
    上記AlGaAsガイド層のAl混晶比は0.4以上であることを特徴とする半導体レーザ素子。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1つに記載の半導体レーザ素子において、
    上記活性層は、2つの端面のうち少なくとも一方の端面に隣接する部分において、上記井戸層及び障壁層が混晶化されていることを特徴とする半導体レーザ素子。
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