図1に本発明の実施形態に係る車載通信装置10を示す。車載通信装置10は、パケット通信アンテナ12、受信部14、送信部16、測位アンテナ18、測位装置20、情報処理部22、中継候補点記憶部24、車両テーブル記憶部26、表示部28、地図データ記憶部30、車両制御部32、および時計34を備えて構成される。車載通信装置10は車両に搭載される。複数の車両のそれぞれに搭載された車載通信装置10は車載通信システムを構成し、各車載通信装置10には識別符号(以下、IDとする。)が割り当てられる。各車両は搭載される車載通信装置10に割り当てられたIDによって識別される。
受信部14は、パケット通信アンテナ12を介してパケット情報を受信し、情報処理部22に出力する。送信部16は、情報処理部22が出力したパケット情報をパケット通信アンテナ12を介して送信する。測位装置20は、測位衛星から送信された信号を受信し、車両の位置を示す位置情報および車両の速度ベクトルを取得する。そして、位置情報および速度ベクトルを含む走行情報を情報処理部22に出力する。表示部28は情報処理部22が出力する情報を表示する。地図データ記憶部30は地図情報を記憶しており、地図情報を情報処理部22に出力する。時計34は時刻情報を情報処理部22に出力する。情報処理部22、中継候補点記憶部24、車両テーブル記憶部26、および車両制御部32については、車載通信装置10がパケット情報に対して施す処理と共に説明する。
図2に車載通信装置10が送受信するパケット情報の構成を示す。パケット情報は、送信源ID記述部、データ記述部、中継依頼ID記述部、および中継候補点記述部を含んで構成される。
送信源ID記述部には、パケット情報の送信源の車載通信装置10に割り当てられたIDが設定される。データ記述部には、送信源の車載通信装置10を搭載する車両の走行情報、および送信源の車載通信装置10がパケット情報を送信する時刻を示す時刻情報が設定される。データ記述部には、その他、送信源の車載通信装置10を搭載する車両の種類(乗用自動車、貨物自動車等、用途別に分類したもの。)、メーカー、外観形状等の車両の属性に関する情報等、送信先の車載通信装置10を搭載する車両の搭乗者に報知したい任意の情報を含ませることができる。
中継依頼ID記述部には、パケット情報を送信する車載通信装置10がパケット情報の中継送信を実行させるものとして指定する車載通信装置10のIDが設定される。中継候補点記述部には中継候補点の位置情報が設定される。中継候補点は、中継送信を実行させる車載通信装置10を指定する際に基準とする、道路上の中継基準点の候補とする点である。また、中継候補点は、車載通信装置10を搭載する車両が走行する道路の交差点領域内に存在すると推定される点であり、詳細については後述する。ここで交差点領域とは、互いに交わる2つの道路が重なる領域をいい、図10に示す例では、道路54と道路56とが重なる、符号「58」が付され破線で示された長方形の領域を指す。中継依頼ID記述部および中継候補点記述部には、パケット情報を送信した車載通信装置10の処理によっては、特に意味を有さない情報であるヌル情報が設定される場合がある。
車載通信システムを構成する各車載通信装置10は、送信源としてパケット情報を送信するパケット報知処理、およびパケット情報を受信しパケット情報に設定されている情報に応じて中継送信を行う受信中継処理を実行する。
車載通信装置10が実行する受信中継処理について説明する。この処理では、受信部14によって受信され情報処理部22に出力されたパケット情報に対して処理が施される。図3Aおよび図3Bは受信中継処理のフローチャートを示す。図3Bに記載されている丸印で囲まれた符号A1およびA2は、それぞれ、図3Aに記載されている丸印で囲まれた符号A1およびA2に接続されることを示す。
情報処理部22は、送信源ID記述部に設定されているIDを送信源IDとして抽出する(S1)。そして、送信源IDと車載通信装置10に割り当てられているID(以下、自車IDとする。)とを比較する(S2)。情報処理部22は、送信源IDと自車IDとが一致する場合には処理を終了する(A2)。
ステップS2によれば、送信源IDと自車IDとが一致する場合にはパケット情報に対する処理が終了する。送信源IDと自車IDとが一致することは、先に車載通信装置10が送信源として送信したパケット情報が当該車載通信装置10で受信されたことを意味する。したがって、当該パケット情報を後述のステップS3以降の処理によって中継送信することは、同一の情報内容を含むパケット情報を再度送信することとなる。ステップS2によれば、同一の情報内容を含むパケット情報が再度送信されることを回避することができる。
情報処理部22は、送信源IDと自車IDとが一致しない場合にはステップS3に移行する。情報処理部22は、データ記述部に設定されている走行情報を抽出し、それに含まれる位置情報を送信源位置情報として抽出する(S3)。また、データ記述部に設定されている時刻情報を送信時刻情報として抽出する(S4)。そして、送信源ID、送信源位置情報、および送信時刻情報を対応付け、車両テーブル記憶部26が記憶する車両テーブルに対応情報として登録する(S5)。
図4に車両テーブルの構成例を示す。車両テーブルには、所定の数以下の対応情報が登録される。当該所定の数の対応情報が既に登録されている場合において新たな対応情報を登録する場合には、最も先に登録された対応情報が車両テーブルから削除され、新たに生成された対応情報が登録される。図4に示す車両テーブルでは、10組以下の対応情報を登録することができ、3組の対応情報が登録されている場合を示している。送信源IDは、英文字と数字の組み合わせを以て、送信源位置情報は、地球の中心を原点とした3次元直交座標の座標値を以て表すことができる。なお、車両テーブルに対しては、送信源の車載通信装置10を搭載する車両(以下、送信源車両とする。)の現在の状況を正確に反映させるため、登録された後所定の時間経過した対応情報を削除する処理を実行してもよい。
ステップS1〜S5によれば、送信源IDと自車IDとが一致しない場合には、車両テーブルに登録する対応情報がパケット情報から抽出され、車両テーブルに登録される。
情報処理部22は、パケット情報から抽出した送信源IDおよび走行情報、ならびに地図データ記憶部30から取得した地図情報に基づいて、送信源車両が存在する位置および速度を示す情報を地図上に描いた画像情報を生成する。そして、生成した画像情報を表示部28に出力する(S6)。表示部28はその画像情報を表示する。なお、データ記述部に送信源車両の属性に関する情報等が含まれている場合には、情報処理部22はそれを抽出し画像情報に付加してもよい。このような処理によって、送信源車両の走行状況を地図上に描いた画像を表示部28に表示することができる。
情報処理部22は、測位装置20から走行情報を取得する(S7)。そして、測位装置20から取得した走行情報およびパケット情報から抽出した走行情報に基づいて、送信源車両との間の相対速度、送信源車両が存在する方位、および送信源車両との間の距離を求め、車両制御部32に出力する(S8)。車両制御部32は、送信源車両との衝突が回避されるよう、相対速度、方位および距離に基づいて車両の走行状態を制御する。車両の走行状態は、例えば、車両が備えるアクセルペダル、ブレーキペダル、ギアチェンジレバー、ハンドル等の操作を行うことで制御することができる。このような処理によって、送信源車両との衝突が回避されるよう車載通信装置10を搭載する車両(以下、自車両とする)の走行状態を制御することができる。
情報処理部22は、中継候補点記述部に位置情報が設定されているか否かを判定する(S9)。そして、位置情報が設定されているときは、その位置情報を中継候補点情報として抽出し、中継候補点記憶部24に出力する(S10)。一方、中継候補点記述部に位置情報が設定されていないときは交差点推定処理(S11)に移行する(A1)。ステップS9およびS10によれば、パケット情報の中継候補点記述部に位置情報が設定されている場合には、その位置情報が中継候補点情報として中継候補点記憶部24に記憶される。中継候補点記憶部24には複数の中継候補点情報を記憶させることができる。また、中継候補点情報と当該中継候補点情報が記憶された時刻とを対応付けて記憶させておき、中継候補点情報を記憶させてから所定の時間が経過したか否かを対応付けられた時刻に基づいて判定し、所定の時間が経過したものについては中継候補点記憶部24から削除することとしてもよい。
交差点推定処理では、受信部14から出力されたパケット情報のデータ記述部から抽出した走行情報、および測位装置20が出力する走行情報に基づいて、交差点領域内に存在すると推定される点の位置情報を求め、パケット情報の中継候補点記述部に設定する処理を実行する。図5に交差点推定処理のフローチャートを示す。
情報処理部22は、受信部14から出力されたパケット情報のデータ記述部から抽出した走行情報に基づいて、送信源車両の位置および速度ベクトルを取得する(S11−1)。また、情報処理部22は、測位装置20が出力する走行情報から、自車両の位置および速度ベクトルを取得する(S11−2)。
情報処理部22は、送信源車両の速度ベクトルと、自車両の速度ベクトルとのなす角である方向差角を求める(S11−3)。方向差角は、自車両の速度ベクトルの方向を0°とし、上空から見て反時計回りの回転方向を正とする。図6は自車両としての車両40と送信源車両としての車両42との位置関係に対して定まる方向差角θの定義を示したものである。車両40は道路44を図6の下から上に向かう方向に走行し、車両42は道路46を図6の左から右へと走行する。方向差角θは、車両40に含まれる点Aを始点とし、車両40の進行方向と同一の方向を有するベクトルBAと、車両42に含まれる点Bを始点とし、車両42の進行方向と同一の方向を有するベクトルBBとのなす角となる。
情報処理部22は、方向差角が−135°以上−45°以下、または45°以上135°以下のいずれかの範囲に含まれるか否かを判定する(S11−4)。
情報処理部22は、方向差角が−135°以上−45°以下であるとき、または45°以上135°以下であるときは、自車両に含まれる点Aを通り、自車両の速度ベクトルと同一の方向を有する自車両直線LAを示す数式、および送信源車両に含まれる点Bを通り、送信源車両の速度ベクトルと同一の方向を有する送信源車両直線LBを示す数式を求める(S11−5)。
情報処理部22は、自車両直線LAおよび送信源車両直線LBをそれぞれ示す2つの数式に基づいて、自車両直線LAと送信源車両直線LBとの交点の位置座標を求める(S11−6)。そして求めた交点の位置座標を含む位置情報をパケット情報の中継候補点記述部に設定し(S11−7)、交差点推定処理を終了して図3BのステップS12に移行する。
一方、方向差角が−180°以上−135°未満であるとき、−45°を超え45°未満であるとき、または135°を超え180°未満であるときには、パケット情報の中継候補点記述部にヌル情報を設定し(S11−8)、交差点推定処理を終了して図3BのステップS12に移行する。
このような処理によれば、方向差角が−135°以上−45°以下であるとき、または45°以上135°以下であるときには、自車両直線LAと送信源車両直線LBとの交点の位置情報が中継候補点記述部に設定される。方向差角をこのような範囲内の値にせしめる2つの車両は、それぞれ、交差点領域で交わる2つの道路を走行している蓋然性が高い。また、このようにして求められた交点は、その交差点領域内の点である蓋然性が高い。したがって、このような処理によって、交差点領域内に存在すると推定される点の位置情報を取得することができる。なお、ステップS11−4における方向差角に対する判定条件は、交差点領域内に存在すると推定される点の位置情報が取得される頻度を鑑みて任意に調整することができる。
ステップS12において情報処理部22は、中継依頼ID記述部にIDが設定されているか否かを判定する(S12)。そして、IDが設定されていないときには、後述の中継パケット生成処理を実行する(S15)。一方、IDが設定されているときは、そのIDを中継依頼IDとして抽出し(S13)、自車IDと比較する(S14)。情報処理部22は、中継依頼IDと自車IDとが一致するときには、中継パケット生成処理を実行する(S15)。一方、中継依頼IDと自車IDとが一致しないときは、パケット情報に対する処理を終了する。
ステップS12〜S14によれば、中継依頼ID記述部にIDが設定されており、そのIDが自車IDと一致する場合、または中継依頼ID記述部にIDが設定されていない場合には、パケット情報は中継パケット生成処理に供される。一方、中継依頼ID記述部にIDが設定されており、そのIDが自車IDと一致しない場合にはパケット情報に対する処理が終了する。これによって、中継依頼ID記述部に自車IDと同一のIDが設定されているパケット情報および中継依頼ID記述部にヌル情報が設定されているパケット情報に対しては中継送信のための処理が施された上で中継送信が行われ、中継依頼ID記述部に自車IDと異なるIDが設定されているパケット情報に対しては中継送信が行われないこととなる。
中継パケット生成処理(S15)は、パケット情報を中継送信するために、当該パケット情報の設定内容を変更する処理である。図7に中継パケット生成処理のフローチャートを示す。
情報処理部22は車両テーブル記憶部26を参照し、ステップS5で登録された対応情報以外の対応情報が登録されているか否かを判定する(S15−1)。そして、ステップS5で登録された対応情報以外の対応情報が登録されていないときは、ヌル情報をパケット情報の中継依頼ID記述部に設定し(S15−6)、中継パケット生成処理を終了して図3BのステップS16に移行する。
一方、ステップS5で登録された対応情報以外の対応情報が登録されているときは、ステップS7において取得した走行情報に基づいて中継依頼領域を求める(S15−2)。中継依頼領域は、中継基準点を指定するための領域である。図8に中継依頼領域の例を示す。この例では、道路36を走行する車両38から前方に距離dを隔てた位置に存在する点を重心Gとし、車両38の進行方向に長い長方形の領域を中継依頼領域Rとしている。
中継依頼領域は、車載通信装置10から送信された無線信号が到達可能な領域である。中継依頼領域は、そこに存在する他の車載通信装置10が確実にパケット情報を受信することができるよう設定される。ここでは、中継依頼領域Rの形状は長方形としたが、任意の形状とすることができる。
情報処理部22は、中継依頼領域に基づいて中継基準点を選択する処理を実行する(S15−3)。ステップS15−3において情報処理部22は、中継候補点記憶部24に記憶されている中継候補点情報によって特定される中継候補点のうち、中継依頼領域に含まれるものを選択する。情報処理部22は、選択された中継候補点が複数あるときは、選択された複数の中継候補点のうち中継依頼領域の重心Gに最も近いものを中継基準点として選択する。この際、選択された複数の中継候補点のそれぞれと重心Gとの距離が同一である場合には、当該複数の中継候補点のうち車載通信装置10からの距離が短いものを優先的に選択する。また、選択された中継候補点が1つであるときは、その中継候補点を中継基準点とする。情報処理部22は、選択された中継候補点がないとき、または中継候補点記憶部24に中継候補点情報が記憶されていないときは、重心Gを中継基準点とする。
情報処理部22は、中継基準点の位置情報と、車両テーブルに登録されている送信源位置情報とに基づいて、車両テーブルに登録されている対応情報を提供した車載通信装置10のうち、中継基準点から最も近い位置に存在するものを選択し、その車載通信装置10のIDを中継依頼IDとして取得する(S15−4)。この際、中継基準点からの距離が等しい、対応情報を提供した複数の車載通信装置10がある場合には、当該複数の車載通信装置10のうち自車両に搭載された車載通信装置10からの距離が短いものを選択する。情報処理部22は、中継依頼IDをパケット情報の中継依頼ID記述部に設定し(S15−5)、中継パケット生成処理を終了して図3BのステップS16に移行する。
ステップS15−1〜S15−3によれば、測位装置20から取得した走行情報に基づいて中継依頼領域が求められ、中継依頼領域に基づいて中継基準点が決定される。そして、ステップS15−4およびS15−5によれば、自車両とは異なる中継基準点に最も近い位置にある車両に搭載された車載通信装置10のIDが中継依頼IDとして中継依頼ID記述部に設定される。
上述のように、中継依頼領域は、車載通信装置10から送信された無線信号が到達可能な領域である。また、中継候補点は、交差点領域内に存在すると推定される点である。したがって、ステップS15−1〜S15−5によれば、車載通信装置10から無線信号によってパケット情報を送信することが可能であり、交差点領域内に存在すると推定される車両に搭載された車載通信装置10を、中継送信を実行させる車載通信装置10として指定することができる。また、自車両が走行する道路に交差点領域において交わる道路を走行する他車両に搭載された車載通信装置10に、中継送信を実行させるものとして指定した車載通信装置10の中継送信によってパケット情報を送信することができる。
情報処理部22は、中継パケット生成処理を実行した後、中継パケット生成処理が施されたパケット情報を送信部16に出力する(S16)。送信部16はパケット情報を送信する。
次に、車載通信装置10が、送信源としてパケット情報を送信するパケット報知処理について説明する。この処理は、各車両に搭載された車載通信装置10が、送信源としてパケット情報を送信する処理である。図9にパケット報知処理のフローチャートを示す。パケット報知処理は所定時間が経過する毎に実行する。また、車載通信装置10を搭載する車両が所定の距離を走行する毎に実行することとしてもよい。
情報処理部22は、車載通信装置10に割り当てられているIDを送信源ID記述部に設定する(S17)。また、情報処理部22は測位装置20から走行情報を取得し(S18)、時計34から時刻情報を取得する(S19)。そして、走行情報および時刻情報をデータ記述部に設定する(S20)。ここで、車載通信装置10を搭載する車両の属性に関する情報等、送信先の車載通信装置10を搭載する車両の搭乗者に報知したい情報をデータ記述部に設定してもよい。
情報処理部22は車両テーブル記憶部26を参照し、対応情報が登録されているか否かを判定する(S21)。そして、車両テーブルに対応情報が登録されているときは、測位装置20から取得した走行情報に基づいて中継依頼領域を求める(S22)。情報処理部22は、中継依頼領域に基づいて中継基準点を選択する(S23)。また、中継基準点の位置情報と車両テーブルに登録されている送信源位置情報とに基づいて、中継依頼IDを取得し(S24)、中継依頼IDをパケット情報の中継依頼ID記述部に設定する(S25)。ステップS22〜S25の処理は、それぞれ、中継パケット生成処理におけるステップS15−2〜S15−5の処理と同一である。
情報処理部22は、中継候補点記述部にヌル情報を設定した後(S27)、パケット情報を送信部16に出力する(S28)。送信部16はパケット情報を送信する。
一方、車両テーブルに対応情報が登録されていないときは、情報処理部22は、ヌル情報を中継依頼ID記述部および中継候補点記述部に設定した後(S26、S27)、パケット情報を送信部16に出力する(S28)。送信部16はパケット情報を送信する。
ステップS17〜S20によれば、車載通信装置10が送信するパケット情報の送信源ID記述部およびデータ記述部に必要な情報が設定される。
ステップS21〜S23によれば、車両テーブルに対応情報が登録されているときは、車載通信装置10を搭載する車両の走行情報に基づいて中継依頼領域が求められ、中継依頼領域に基づいて中継基準点が決定される。そして、ステップS24およびS25によれば、中継基準点に最も近い位置にある送信源車両に搭載された車載通信装置10のIDが中継依頼IDとして中継依頼ID記述部に設定される。これによって、車載通信装置10から無線信号によってパケット情報を送信することが可能な、交差点領域内に存在すると推定される車両に搭載された車載通信装置10を、中継送信を実行させる車載通信装置10として指定することができる。また、自車両が走行する道路に交差点領域において交わる道路を走行する他車両に搭載された車載通信装置10に、中継送信を実行させるものとして指定した車載通信装置10の中継送信によって、パケット情報を送信することができる。
次に、車載通信装置10を車両に搭載した車載通信システムの動作例について説明する。図10は、交差点領域58を形成する道路54および56、道路54を図10の下から上に向かって走行する車両48、道路56を図10の左から右に向かって走行する車両52、および図10の下から上に向かって交差点領域58に進入する車両50を示す。車両48、50、および52には、それぞれ車載通信装置10−48,10−50、および10−52が搭載される。
車載通信装置10−50は、パケット報知処理によってパケット情報を送信する。車載通信装置10−48は、車載通信装置10−50から送信されたパケット情報に基づいて、車載通信装置10−50に係る対応情報を車両テーブルに登録する。
車載通信装置10−52は、パケット報知処理によってパケット情報を送信する。車載通信装置10−50は、受信中継処理によって当該パケット情報を中継送信する。車載通信装置10−48は、車載通信装置10−50によって中継送信されたパケット情報を受信し、その中継候補点記述部に点Pの位置情報が含まれる場合には、点Pの位置情報を中継候補点情報として中継候補点記憶部24に記憶する。
このような処理によって、車載通信装置10−48は、車両テーブルに車載通信装置10−50に係る対応情報が登録され、中継候補点記憶部24に点Pの位置情報が中継候補点情報として記憶された状態となる。なお、以下の説明では、車載通信装置10−48の中継候補点記憶部24には、点Pの位置情報のみが記憶されているものとする。
この状態において、車載通信装置10−48がパケット報知処理によってパケット情報を送信する処理について説明する。車載通信装置10−48が求めた中継依頼領域に点Pが含まれることとなった場合、車載通信装置10−48の中継候補点記憶部24には点Pの位置情報が中継候補点情報として記憶されているため、車載通信装置10−48は点Pを中継基準点とする。また、車載通信装置10−48の車両テーブルには車載通信装置10−50に係る対応情報が登録されている。そして、点Pに最も近い車両は車両50であるため、車載通信装置10−48は車載通信装置10−50のIDを中継依頼IDとし、その中継依頼IDを中継依頼ID記述部に設定したパケット情報を送信する。
車載通信装置10−50は、車載通信装置10−48から送信されたパケット情報を受信する。当該パケット情報の中継依頼ID記述部には、車載通信装置10−50のIDが設定されているため、車載通信装置10−50は当該パケット情報を中継送信する。車載通信装置10−52は中継送信されたパケット情報を受信する。車載通信装置10−52は、受信したパケット情報に含まれる情報に基づいて、車両48の走行状況を地図上に描いた画像を表示部28に表示し、車両48との衝突が回避されるよう車両52の走行状態を制御する。
本実施形態に係る車載通信装置10を適用した車載通信システムによれば、各車両に搭載された車載通信装置10は、車両テーブルに対応情報が登録されている車両のうち、中継基準点に最も近い車両が搭載する車載通信装置10を、中継送信を実行させる装置として指定することができる。これによって、パケット情報を受信した車載通信装置10の総てが中継送信を行うことが回避され、情報内容が重複するパケット情報が同一の車載通信装置10によって複数回にわたって中継送信され、各車載通信装置10で処理すべき情報量がその処理能力を超えてしまうという問題を回避することができる。
また、中継基準点は、原則、交差点領域内に存在すると推定される中継候補点の中から選択されるため、中継基準点に最も近い位置に存在する車両は、交差点領域を走行していると推定される。これによって、交差点領域で交わる2つの道路をそれぞれ走行する2台の車両の間等、互いに無線信号を直接到達させることが困難な場合であっても、交差点領域を走行していると推定される車両に搭載された車載通信装置10の中継送信によって、当該2台の車両のうち一方に搭載された車載通信装置10から、他方の車両に搭載された車載通信装置10へとパケット情報を送信することができる。
なお、郊外の道路等、車両密度が低い道路を車両が走行している場合、他の車載通信装置10から送信されたパケット情報を受信する頻度が低くなる。上述の説明から明らかなように、車両テーブルに登録する対応情報は、他の車載通信装置10から送信されたパケット情報から取得する情報である。したがって、パケット情報を受信する頻度が低い場合、車載通信装置10は、受信中継処理においてはステップS5で登録された対応情報以外の対応情報が車両テーブルに登録されていない状態、パケット報知処理においては対応情報が車両テーブルに登録されていない状態となることがある。
このような場合、車載通信装置10は、受信中継処理およびパケット報知処理においてヌル情報を中継依頼ID記述部に設定したパケット情報を送信する(S15−6、S26)。ヌル情報が中継依頼ID記述部に設定されたパケット情報を受信した他の車載通信装置10は、ステップS12の判定に従い、ステップS15およびS16へと移行し中継送信を行う。このとき、当該他の車載通信装置10において中継依頼IDが取得された場合には、中継依頼ID記述部に中継依頼IDが設定されたパケット情報が中継送信される(S15−1〜S15−5)。このように、ヌル情報が中継依頼ID記述部に設定されたパケット情報を受信した総ての車載通信装置10に中継送信を行わせることとしても、各車載通信装置10は、中継依頼IDを取得した場合にはそれをパケット情報に設定する処理を行うため、情報内容が重複するパケット情報が同一の車載通信装置10によって複数回にわたって中継送信される現象は回避されることとなる。
次に、車載通信装置10の応用例について説明する。図11に応用例に係る車載通信装置10Aの構成を示す。車載通信装置10Aは、車載通信装置10に一時記憶部60および未報知候補点記憶部62を付加したものである。図1の構成部と同一の構成部については同一の符号を付してその説明を簡略に行う。
車載通信装置10Aが実行する受信中継応用処理について説明する。この処理では、車載通信装置10が実行する受信中継処理と同様、受信部14によって受信され情報処理部22に出力されたパケット情報に対して処理が施される。図12Aおよび12Bは受信中継応用処理のフローチャートを示す。図12Bに記載されている丸印で囲まれた符号B1およびB2は、それぞれ、図12Aに記載されている丸印で囲まれた符号B1およびB2に接続されることを示す。図3Aおよび図3Bに示す処理と同一の処理については、同一の符号を付してその説明を簡略に行う。また、図3Aおよび図3Bに示す処理と異なる処理については太線を以て示す。
情報処理部22は、送信源ID記述部に設定されているIDを送信源IDとして抽出する(S1)。そして、送信源IDと自車IDとを比較する(S2)。情報処理部22は、送信源IDと自車IDとが一致する場合には処理を終了する(B2)。
一方、送信源IDと自車IDとが一致しない場合にはステップS3〜S10を実行し、交差点推定応用処理(SA11)に移行する(B1)。
交差点推定応用処理では、受信部14から出力されたパケット情報のデータ記述部から抽出した走行情報、および測位装置20が出力する走行情報に基づいて、交差点領域内に存在すると推定される点の位置情報を求め、パケット情報の中継候補点記述部に設定する。さらに、求められた位置情報を一時記憶部60に記憶させる。図13に交差点推定応用処理のフローチャートを示す。図5に示す処理と同一の処理については同一の符号を付してその説明を簡略に行う。
交差点推定応用処理は、ステップS11−7の後に、ステップS11−7で求められた交点の位置情報を一時記憶部60に記憶させる処理を実行するステップSA11−9を設けた点が、交差点推定処理と異なる。一時処記憶部60に記憶された位置情報は、後の処理において、交差点領域内に存在すると推定される点の位置情報が求められたか否かの判定、他の車載通信装置10Aに当該位置情報を報知するための処理等に用いられる。
交差点推定応用処理を実行した後、情報処理部22はステップS12に移行する。情報処理部22は、中継依頼ID記述部にIDが設定されているか否かを判定する(S12)。そして、IDが設定されていないときは、一時記憶部60に位置情報が記憶されているか否かを判定する(SA17)。
そして、位置情報が記憶されていないときはパケット情報に対する処理を終了する。一方、位置情報が記憶されているときは、パケット情報の中継依頼ID記述部に自車IDを設定し(SA18)、パケット情報を送信部16に出力する(S16)。
情報処理部22は、ステップS12において、IDが設定されていると判定したときは、そのIDを中継依頼IDとして抽出し(S13)、自車IDと比較する(S14)。
そして、中継依頼IDと自車IDとが一致するときは、中継パケット生成処理を実行し(S15)、中継パケット生成処理が施されたパケット情報を送信部16に出力する(S16)。一方、中継依頼IDと自車IDとが一致しないときは、一時記憶部60に位置情報が記憶されているか否かを判定する(SA19)。そして、位置情報が記憶されていないときは、パケット情報に対する処理を終了する。一方、一時記憶部60に位置情報が記憶されているときは、その位置情報を未報知候補点記憶部62に記憶させる(SA20)。ここで、未報知候補点記憶部62は、後述するパケット報知応用処理において、パケット情報の中継候補点記述部に設定する位置情報を記憶するものである。未報知候補点記憶部62には複数の位置情報を記憶させることができる。また、位置情報と当該位置情報が記憶された時刻とを対応付けて記憶させておき、位置情報を記憶させてから所定の時間が経過したか否かを対応付けられた時刻に基づいて判定し、所定の時間が経過したものについては未報知候補点記憶部62から削除することとしてもよい。
情報処理部22は、ステップS16によってパケット情報が送信された後、または、ステップSA19によって位置情報が未報知候補点記憶部62に記憶された後、一時記憶部60に記憶されている情報を削除する(SA21)。
このような処理によれば、一時記憶部60に位置情報が記憶されており、受信したパケット情報の中継依頼ID記述部にIDが記述されていないときは、中継依頼ID記述部に自車IDが設定されたパケット情報が送信される(SA18、S16)。一時記憶部60に位置情報が記憶されている場合には、交差点推定応用処理のステップS11−7で中継候補点設定部に当該位置情報が設定されている。さらに、中継依頼ID記述部に自車IDを設定した場合には、他車両に搭載された車載通信装置10Aでは、中継候補点情報が取得されると共に(S9、S10)、他車両に搭載された当該車載通信装置10AのIDと中継依頼ID記述部に設定されているIDとの不一致により中継送信が中止される(S14、SA19)。したがって、交差点領域内に存在すると推定される点の位置情報を他車両に搭載された車載通信装置10Aに取得させることができると共に、送信したパケット情報が再び中継送信されることを回避することができる。
また、一時記憶部60に位置情報が記憶されており、受信したパケット情報の中継依頼ID記述部に設定されているIDが自車IDと一致しないときは、一時記憶部60に記憶されている位置情報が未報知候補点記憶部62に記憶され(SA19、SA20)、中継送信が行われることなく処理が終了する。一時記憶部60には、交差点推定応用処理のステップS11−7で求められた位置情報が記憶されているため、未報知候補点記憶部62には、交差点領域内に存在すると推定される点の位置情報が記憶される。この位置情報は、次に述べるパケット報知応用処理によって他車両に搭載された車載通信装置10Aに送信される。
ステップSA21は、次に実行する受信中継応用処理のために、一時記憶部60に記憶されている位置情報を削除する処理である。
次に、車載通信装置10Aが実行するパケット報知応用処理について説明する。この処理は、パケット報知処理と同様、各車両に搭載された車載通信装置10Aが送信源としてパケット情報を送信する処理である。図14にパケット報知応用処理のフローチャートを示す。図9に示される処理と同一の処理については同一の符号を付してその説明を簡略に行う。図14のフローチャートは、図9のフローチャートのステップS27をステップSA27−1〜SA27−4に置き換えたものである。
パケット報知応用処理は所定時間が経過する毎に実行する。また、車載通信装置10Aを搭載する車両が所定の距離を走行する毎に実行することとしてもよい。
情報処理部22は、ステップS17〜S26を実行した後、未報知候補点記憶部62に位置情報が記憶されているか否かを判定する(SA27−1)。
情報処理部22は、位置情報が記憶されているときは、パケット情報の中継候補点記述部に、未報知候補点記憶部62に記憶されている位置情報のうちの一つを設定する(SA27−2)。そして、中継候補点記述部に設定した位置情報を未報知候補点記憶部62から削除する(SA27−3)。情報処理部22は、パケット情報を送信部16に出力し(S28)、パケット情報を送信する。
一方、位置情報が記憶されていないときは、パケット情報の中継候補点記述部にヌル情報を設定する(SA27−4)。そして、パケット情報を送信部16に出力し(S28)、パケット情報を送信する。
このような処理によれば、未報知候補点記憶部62に位置情報が記憶されている場合には、パケット情報の中継候補点記述部には、当該記憶されている位置情報が設定される。上述のように、この位置情報は、交差点領域内に存在すると推定される点の位置情報である。したがって、車載通信装置10Aは、当該パケット情報を送信することによって、交差点領域内に存在すると推定される点の位置情報を、他車両に搭載されている車載通信装置10Aに取得させることができる。
また、未報知候補点記憶部62に記憶されている位置情報は、送信源の車載通信装置10Aから送信され取得されたパケット情報が中継送信されない場合に、当該取得されたパケット情報に基づいて求められた位置情報が未報知候補点記憶部62に記憶されたものである。パケット報知応用処理によれば、送信源の車載通信装置10Aから送信され取得されたパケット情報に対して中継送信が行われなくとも、当該取得されたパケット情報に基づいて求められた位置情報を含むパケット情報を他の車載通信装置10Aに送信することができる。これによって、交差点推定応用処理に要した処理を無駄にすることを回避することができる。
10,10−48,10−50,10−52,10A 車載通信装置、12 パケット通信アンテナ、14 受信部、16 送信部、18 測位アンテナ、20 測位装置、22 情報処理部、24 中継候補点記憶部、26 車両テーブル記憶部、28 表示部、30 地図データ記憶部、32 車両制御部、34 時計、36,44,46,54,56 道路、38,40,42,48,50,52 車両、58 交差点領域、LA 自車両直線、LB 送信源車両直線、BA,BB ベクトル、R 中継依頼領域、G 重心。