JP4926522B2 - 反射型マスクブランクス及び反射型マスク並びに半導体装置の製造方法 - Google Patents

反射型マスクブランクス及び反射型マスク並びに半導体装置の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、半導体装置製造等に使用される露光用反射型マスク、及びその原版である反射型マスクブランクス、並びに反射型マスクを使用して半導体装置を製造する半導体装置の製造方法に関する。
近年、半導体産業において、半導体デバイスの微細化に伴い、極紫外(Extreme Ultra Violet:以下、EUVと呼称する)光を用いた露光技術であるEUVリソグラフィが有望視されている。なお、ここで、EUV光とは、軟X線領域又は真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2〜100nm程度の光のことである。この、EUVリソグラフィにおいて用いられるマスクとしては、たとえば特許文献1に記載された露光用反射型マスクが提案されている。
このような反射型マスクは、基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、該多層反射膜上に露光光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成されたものである。露光機(パターン転写装置)に搭載された反射型マスクに入射した光は、吸収体膜のある部分では吸収され、吸収体膜のない部分では多層反射膜により反射された光像が反射光学系を通して半導体基板上に転写される。
上記多層反射膜としては、例えば13〜14nmのEUV光を反射するものとして、数nmの厚さのMoとSiを交互に40乃至60周期程度積層させたものなどが知られている。そして、反射率を高めるためには、屈折率の大きなMo膜を最上層とする方が望ましいが、Moは大気に触れると酸化されやすく、その結果、反射率が低下してしまう。そこで、酸化防止のための保護膜として、例えばSi膜を最上層に設けることが行われている。
また、特許文献2には、吸収体膜の材料として窒化クロム(CrN)を用いた反射型マスクが記載されている。
特公平7−27198号公報 特開2003−318101号公報
EUVリソグラフィにおいては、マスク上でEUV光は基板に対して斜め入射及び出射するため、反射領域に対するパターニング層(すなわち吸収体膜、もしくは吸収体膜及びバッファー層)の膜厚が厚いと、入射光及び出射光の光路がパターニング層の影響を受けて、シャドウイング(shadowing)効果と呼ばれるパターンぼけが強く生じてしまうという問題が発生する。このパターンぼけの問題は特に近年のパターンの微細化に伴い顕著になってきている。
したがって、吸収体膜の膜厚は出来る限り薄いことが望まれるが、吸収体膜の材料として、そのうちクロム系材料としては従来は窒化クロム(CrN)が用いられていた。しかし、この窒化クロム(CrN)を吸収体膜の材料として用いた場合、膜厚をある程度厚くしないとEUV光に対する吸収係数が高くならないため、吸収体膜の膜厚を薄くするといっても自ずと限界がある。
このような事情から、従来のCrN材料系よりも吸収体膜の膜厚を薄くすることが可能な材料が要望されている。
そこで本発明の目的は、第一に、従来のCrN材料系よりも高コントラストのパターン転写を実現できる反射型マスクブランクス及び反射型マスクを提供することであり、第二に、従来のCrN材料系よりも吸収体膜等の膜厚をより薄くすることができる反射型マスクブランクス及び反射型マスクを提供することであり、第三に、このような反射型マスクを使用したリソグラフィ技術により半導体基板上に微細パターンを形成する半導体装置の製造方法を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)基板と、該基板上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収体膜とを有する反射型マスクブランクスであって、前記吸収体膜は、クロム(Cr)を主成分とし、さらに銀(Ag)、テルル(Te)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、ゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する材料からなることを特徴とする反射型マスクブランクスである。
構成1における、クロム(Cr)を主成分とし、さらに銀(Ag)、テルル(Te)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、ゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する材料は、従来のCrNよりも露光光である例えばEUV光に対する高い吸収係数を持つため、構成1の反射型マスクブランクスから製造される反射型マスクを用いたパターン転写時に、高コントラストでパターン転写を行なえる。また、高い吸収係数を持つため、より薄い膜厚で吸収体膜を形成することができ、シャドウイング(shadowing)効果によるパターンぼけの発生を防止することができる。
(構成2)前記吸収体膜は、さらにホウ素(B)、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、珪素(Si)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする構成1又は2に記載の反射型マスクブランクスである。
構成1におけるクロム系材料からなる吸収体膜は、構成2にあるように、さらにホウ素(B)、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、珪素(Si)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することにより、吸収体膜のアモルファス性、表面平滑性、膜応力、或いは多層反射膜との密着性、等をより向上することができる。
(構成3)前記多層反射膜と前記吸収体膜との間に、該多層反射膜を保護するルテニウム(Ru)化合物からなる保護膜が形成されていることを特徴とする構成1又は2に記載の反射型マスクブランクスである。
多層反射膜と吸収体膜との間に、ルテニウム(Ru)化合物からなる保護膜を備えることにより、吸収体膜のパターン形成時、及びパターン修正時のエッチングによる多層反射膜のダメージを防止することができる。
(構成4)基板と、該基板上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収体膜とを有する反射型マスクブランクスであって、前記多層反射膜と前記吸収体膜との間に、該吸収体膜とエッチング特性が異なるバッファー層を備えており、該バッファー層は、クロム(Cr)を主成分とし、さらに銀(Ag)、テルル(Te)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、ゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する材料からなることを特徴とする反射型マスクブランクスである。
構成4における、クロム(Cr)を主成分とし、さらに銀(Ag)、テルル(Te)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、ゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する材料は、従来のCrNよりも露光光である例えばEUV光に対する高い吸収係数を持つため、かかるクロム系材料で形成されたバッファー層を備えることにより、吸収体膜とバッファー層を合わせた全体でEUV光の吸収体膜として機能し、高コントラストでパターン転写を行なえる。また、吸収体膜とバッファー層を合わせた全体の膜厚をより薄い膜厚とすることができ、構成4の反射型マスクブランクスから製造される反射型マスクを用いたパターン転写時に、シャドウイング(shadowing)効果によるパターンぼけの発生を防止することができる。
また、上記バッファー層を備えることにより、吸収体膜のパターン形成時、及びパターン修正時のエッチングによる多層反射膜のダメージが防止される。さらに、上記バッファー層は、高い平滑性が得られ、その上に形成される吸収体膜表面も高い平滑性が得られるので、形状精度の良好なパターンが得られる。
(構成5)前記バッファー層は、さらにホウ素(B)、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、珪素(Si)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする構成4に記載の反射型マスクブランクスである。
構成4におけるクロム系材料からなるバッファー層は、構成5にあるように、さらにホウ素(B)、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、珪素(Si)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することにより、バッファー層のアモルファス性、表面平滑性、膜応力、或いは多層反射膜や吸収体膜との密着性、等をより向上することができる。
(構成6)前記吸収体膜は、タンタル(Ta)又はタンタル(Ta)を主成分とする材料からなることを特徴とする構成4又は5に記載の反射型マスクブランクスである。
タンタル(Ta)又はタンタル(Ta)を主成分とする材料からなる吸収体膜は、露光光である例えばEUV光に対する高い吸収係数を持つため、高コントラストでパターン転写を行なえ、また、かかる吸収体膜と上記クロム系材料からなるバッファー層を合わせた全体の膜厚をより薄い膜厚とすることができる。
(構成7)前記多層反射膜と前記バッファー層との間に、該多層反射膜を保護するルテニウム(Ru)又はその化合物からなる保護膜が形成されていることを特徴とする構成4乃至6の何れか一に記載の反射型マスクブランクスである。
多層反射膜とバッファー層との間に、ルテニウム(Ru)又はその化合物からなる保護膜を備えることにより、吸収体膜パターンに従ってバッファー層をパターン形成する時のエッチングによる多層反射膜のダメージを防止することができる。
(構成8)構成1乃至7の何れか一に記載の反射型マスクブランクスの前記吸収体膜に、被転写体に対する転写パターンとなる吸収体膜パターンが形成されていることを特徴とする反射型マスクである。
構成1乃至7の反射型マスクブランクスを用いて得られる反射型マスクによれば、高コントラストのパターン転写を実現することができ、またパターン転写時にシャドウイング(shadowing)効果によるパターンぼけの発生を防止できる。
(構成9)構成8に記載の反射型マスクを使用したリソグラフィ技術により半導体基板上に微細パターンを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
構成8に記載の反射型マスクを使用したリソグラフィ技術により、半導体基板上に微細パターンが形成された半導体装置を製造することができる。
請求項1の発明によれば、請求項1に規定する特定のクロム系材料を用いて、反射型マスクブランクスから得られる反射型マスクを用いたパターン転写時に、高コントラストでパターン転写を行なうことができる。また、より薄い膜厚で吸収体膜を形成することができ、シャドウイング(shadowing)効果によるパターンぼけの発生を防止することができる。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明における効果に加えて、上記クロム系材料からなる吸収体膜のアモルファス性、表面平滑性、膜応力、或いは多層反射膜との密着性、等をより向上することができる。
請求項3の発明によれば、請求項1又は2の発明における効果に加えて、保護膜により、吸収体膜のパターン形成時、及びパターン修正時のエッチングによる多層反射膜のダメージを防止することができる。
請求項4の発明によれば、請求項4に規定する特定のクロム系材料で形成されたバッファー層を備えることにより、吸収体膜とバッファー層を合わせた全体でEUV光の吸収体膜として機能し、高コントラストでパターン転写を行なうことができる。また、吸収体膜とバッファー層を合わせた全体の膜厚をより薄い膜厚とすることができ、パターン転写時にシャドウイング(shadowing)効果によるパターンぼけの発生を防止できる。また、上記バッファー層を備えることにより、吸収体膜のパターン形成時、及びパターン修正時のエッチングによる多層反射膜のダメージを防止することができ、さらに、上記バッファー層は、高い平滑性が得られ、その上に形成される吸収体膜表面も高い平滑性が得られるので、形状精度の良好なパターンが得られる。
請求項5の発明によれば、請求項4の発明における効果に加えて、上記クロム系材料からなるバッファー層のアモルファス性、表面平滑性、膜応力、或いは多層反射膜や吸収体膜との密着性、等をより向上することができる。
請求項6の発明によれば、タンタル(Ta)又はタンタル(Ta)を主成分とする材料からなる吸収体膜とすることにより、高コントラストでパターン転写を行なえ、また、かかる吸収体膜と上記クロム系材料からなるバッファー層を合わせた全体の膜厚をより薄い膜厚とすることができる。
請求項7の発明によれば、請求項4乃至6の何れかの発明における効果に加えて、保護膜を備えることにより、吸収体膜パターンに従ってバッファー層をパターン形成する時のエッチングによる多層反射膜のダメージを防止することができる。
請求項8の発明によれば、本発明の反射型マスクブランクスを用いて得られる反射型マスクは、高コントラストのパターン転写を実現することができる。また、パターン転写時にシャドウイング(shadowing)効果によるパターンぼけの発生を防止できる。
請求項9の発明によれば、本発明の反射型マスクを使用したリソグラフィ技術により、半導体基板上に微細パターンを形成した半導体装置が得られる。
以下、本発明を実施の形態により詳細に説明する。
(実施の形態1)
本発明に係る反射型マスクブランクスの実施の形態1は、基板と、該基板上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収体膜とを有する。
本実施の形態において、前記吸収体膜は、クロム(Cr)を主成分とし、さらに銀(Ag)、テルル(Te)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、ゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有するクロム系材料(以下、「本発明のクロム系材料」と呼ぶ。)からなる。
本発明のクロム系材料は、従来のCrNよりも露光光である例えばEUV光に対する高い吸収係数を持つため、本実施の形態の反射型マスクブランクスから製造される反射型マスクを用いたパターン転写時に、高コントラストのパターン転写を行なえる。また、これにより薄い膜厚の吸収体膜とすることができるため、パターン転写時にシャドウイング(shadowing)効果によるパターンぼけの発生を防止することができる。
本発明では、吸収体膜を形成する材料は、露光光である例えばEUV光に対する高い吸収係数を持ち、それにより薄い膜厚の吸収体膜とすることができるように、露光光の波長における複素屈折率の虚数部の絶対値、つまり消衰係数がCrNよりも大きい材料であることが望ましい。そのためには、複素屈折率の虚数部が−0.025以下の物質が望ましい。上記本発明のクロム系材料は、複素屈折率の虚数部が−0.025以下の物質である。
ここで、上記複素屈折率について説明する。
例えばEUV光を露光光として用いる反射型マスクは光学回折素子であるため、複素屈折率と形状が判れば、光学特性を求めることが可能である。
EUV波長領域の複素屈折率は、単位体積中に存在する原子の種類(散乱因子fq)と数とで決定される。ここで、散乱因子fqは内核電子の状態で一義的に決定されるため、物質の結合状態には依存しない。EUV波長領域のようなフォトンのエネルギーが100eV付近か、吸収端から離れている場合には、内核の電子がフォトンを吸収するため、構造に関与した電子の相関は無視できる。従って、ある材料で形成された層の複素屈折率n*は以下の(1)式で記述される。
n*=n+ik=1−(rλ/2π)ΣNqfq(0) (1)
ここで、nは複素屈折率の実数部、kは複素屈折率の虚数部である。r=e/mc=2.82×10−13cmで古典的な電子半径である。Nqは元素qの1cm中の原子の数である。また、fq(0)は元素qの前方散乱断面積であり、以下のように表わせる。
fq(0)=fq(0)−ifq(0)
また、Nqは、密度N(g/cm)、原子量m、アボガドロ数Naから以下の関係式で得られる。
Nq=(N×Na)/m
以上の式を用いて上記の複素屈折率を求めることが可能である。なお、軟X線領域では、fとfは同じオーダーである。
従って、複素屈折率の虚数部kの絶対値、つまり消衰係数の大きい物質は露光光の吸収が多い。たとえば、Crのkの値は、−0.03822であり、CrNは、Crに比べてkの値の大きなN元素を含んでいるので、本発明では、Crと、Crよりもkの値の小さな若しくは同程度の元素とが形成する化合物が望ましい。
たとえば、前記Ag、Te、Os、Re、Geの各元素は、Crと比べてkの値の小さな若しくは同程度の元素である。
下記表1に、Ag、Te、Os、Re、Geの5つの元素についての散乱因子(f、f)、EUV光波長(13.5nm)における複素屈折率の実数部n、虚数部kの値を示した。
Figure 0004926522
Crとこれらの元素を組み合わせた物質(本発明のクロム系材料)も、CrNよりもkの値が小さくなる。すなわち、本発明のクロム系材料は、kの絶対値、つまり消衰係数で言うと、消衰係数の大きい物質であり、露光光である例えばEUV光に対する高い吸収係数を有するので吸収体膜を薄膜化する上で好適である。具体的なデータは後述の実施例で説明するが、本発明のクロム系材料で形成された吸収体膜の場合、従来のCrNで形成された吸収体膜と比べて、ある膜厚以上であればマスクコントラストの要求値を満足する膜厚(t100)を薄くすることが可能になる。
本発明のクロム系材料の具体例としては、例えば、CrTe、CrTe、CrTe、Cr11Ge、CrGe、CrGeN、CrGeN0.5、CrOs、CrOs等の結晶系材料が挙げられる。また、CrとAgまたはReとは、明確な結晶系ではなく混晶を形成する。とくに、Agは毒性が少なく且つ安定なため、CrとAgとを含有するクロム系材料は本発明に好適である。
本発明のクロム系材料は、Crを主成分とするため、その含有量は50原子%以上とする。
また、本発明のクロム系材料は、上記で例示したようなCrを主成分とし、Ag、Te、Os、Re、Geの何れかから選ばれる元素を含有する材料には限定されず、たとえばCrを主成分とし、Ag、Te、Os、Re、Geから選ばれる2種以上の元素を含有する材料であってもよい。
また、本発明のクロム系材料からなる吸収体膜は、さらにB、N、O、C、Siから選ばれる少なくとも1種の元素を含有していてもよい。これにより、吸収体膜のアモルファス性、表面平滑性、膜応力、或いは多層反射膜等との密着性、等をより向上することができる。例えば、CrとGeからなる化合物は結晶構造をとるが、NやSi等の元素を含むことでアモルファス化して、吸収体膜のパターン形状をより良好にすることができる。また、Bを加えることにより、吸収体膜のアモルファス性、表面平滑性をより向上することができる。また、Nを加えることにより、吸収体膜の膜応力を低減し、また下層の例えば多層反射膜との密着性が良好となる。また、Oを加えることにより、酸化に対する耐性が向上し、経時的な安定性が向上する。また、Cを加えることにより、耐薬品性が向上する。
なお、下記表2に、CrTe、CrTe、CrTe、Cr11Ge、CrGe、CrOs、CrOs、CrAg(Ag:20原子%)、CrAg(Ag:50原子%)の各物質についてのEUV光波長(13.5nm)における複素屈折率の実数部n、虚数部kの値を示した。参考までに、従来のCrNのデータも示した。
Figure 0004926522
このような本発明のクロム系材料からなる吸収体膜は、マグネトロンスパッタリングなどのスパッタ法で形成するのが好ましい。スパッタ法で形成した場合には、スパッタターゲットに投入するパワーや投入ガス圧力を変化させることにより内部応力を制御できる。また、室温程度の低温での形成が可能であるので、多層反射膜等への熱の影響を少なくすることができる。
本発明のクロム系材料からなる吸収体膜は、必ずしも全体が均一な組成でなくてもよく、例えば膜厚方向で組成が異なるように組成傾斜させてもよい。組成傾斜させる場合、含有する元素の組成が連続的に異なるようにしてもよいし、或いは組成が段階的に異なるようにしてもよい。
本発明のクロム系材料で形成された吸収体膜は、エッチングガスとして例えば塩素と酸素との混合ガスを用いたドライエッチングによりパターニングすることができる。
また、本実施の形態における前記基板としては、露光時の熱によるパターンの歪みを防止するため、0±1.0×10−7/℃の範囲内、より好ましくは0±0.3×10−7/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましい。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、アモルファスガラス、セラミック、金属の何れでも使用できる。例えばアモルファスガラスであれば、SiO−TiO系ガラス、石英ガラス、結晶化ガラスであれば、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス等を用いることが出来る。金属基板の例としては、インバー合金(Fe−Ni系合金)などが挙げられる。また、単結晶シリコン基板を使用することもできる。
また、基板は、高反射率及び高転写精度を得るために、高い平滑性と平坦度を備えた基板が好ましい。特に、0.2nmRms以下の平滑な表面(10μm角エリアでの平滑性)と、100nm以下の平坦度(142mm角エリアでの平坦度)を有することが好ましい。また、基板は、その上に形成される膜の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有しているものが好ましい。特に、65GPa以上の高いヤング率を有しているものが好ましい。
なお、平滑性を示す単位Rmsは、二乗平均平方根粗さであり、原子間力顕微鏡で測定することができる。また平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)で示される表面の反り(変形量)を表す値で、基板表面を基準として最小自乗法で定められる平面を焦平面とし、この焦平面より上にある基板表面の最も高い位置と、焦平面より下にある基板表面の最も低い位置との高低差の絶対値である。
また、基板上に形成される多層反射膜は、前述したように、屈折率の異なる元素が周期的に積層された多層膜であり、一般的には、重元素又はその化合物の薄膜と、軽元素又はその化合物の薄膜とが交互に40〜60周期程度積層された多層膜が用いられる。
例えば、波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜としては、前述のMo膜とSi膜を交互に40〜60周期程度積層したMo/Si周期積層膜が好ましく用いられる。その他に、EUV光の領域で使用される多層反射膜として、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などがある。要は、露光波長により、材質を適宜選択すればよい。
多層反射膜は、DCマグネトロンスパッタ法や、イオンビームスパッタ法などにより、各層を成膜することにより形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えばイオンビームスパッタ法により、まずSiターゲットを用いて厚さ数nm程度のSi膜を成膜し、その後Moターゲットを用いて厚さ数nm程度のMo膜を成膜し、これを一周期として、40〜60周期積層した後、最後に、酸化防止のための保護膜(キャッピング層とも呼んでいる)として、厚さ数nm程度のSi膜を最上層に設けることが行われている。
なお、本実施の形態の上記反射型マスクブランクスは、吸収体膜に所定の転写パターンを形成するためのレジスト膜が形成された状態であっても構わない。
上記反射型マスクブランクスを使用して得られる反射型マスクの態様としては、基板上に形成された多層反射膜上に、所定の転写パターンを有する吸収体膜パターンが形成された反射型マスクが挙げられる。
(実施の形態2)
本発明に係る反射型マスクブランクスの実施の形態2は、基板と、該基板上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収体膜とを有し、前記多層反射膜と前記吸収体膜との間に、該多層反射膜を保護するルテニウム(Ru)化合物からなる保護膜が形成されている。そして、前記吸収体膜は、実施の形態1と同様、本発明のクロム系材料で形成されている。
本実施の形態においては、多層反射膜と吸収体膜との間に、ルテニウム化合物からなる保護膜を備えることにより、吸収体膜のパターン形成時、及びパターン修正時のエッチングによる多層反射膜のダメージを防止することができる。
保護膜を形成するルテニウム化合物としては、Ruを含有する化合物であれば特に限定されないが、たとえば、Ruと、Mo、Nb、Zr、Y、B、Ti、Laから選ばれる少なくとも1種とを含有するルテニウム化合物が好ましく挙げられる。具体的には、Mo63Ru37、NbRu、ZrRu、RuY、RuB、TiRu、LaRu等が例示される。
上記ルテニウム化合物のRu含有量は、上記効果を引き出すためには10〜95原子%とすることが好ましい。
また、上記保護膜の膜厚は、0.5〜5nmの範囲で選定することが好ましい。さらに好ましくは、多層反射膜上で反射される光の反射率が最大となる膜厚にすることが望ましい。
上記保護膜は、基板上に前記多層反射膜を形成後、その上にDCマグネトロンスパッタ法やイオンビームスパッタ法などにより形成すればよい。たとえば多層反射膜がMo/Si周期多層膜である場合、その最上層(キャッピング層)であるSi膜の上にルテニウム化合物からなる保護膜が形成される。
本実施の形態の反射型マスクブランクスにおける基板、多層反射膜、本発明のクロム系材料からなる吸収体膜などについては、前述の実施の形態1と同様であるので、ここでは重複説明は省略する。
(実施の形態3)
本発明に係る反射型マスクブランクスの実施の形態3は、基板と、該基板上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収体膜とを有し、前記多層反射膜と前記吸収体膜との間に、該吸収体膜とエッチング特性が異なるバッファー層を備えている。そして、本実施の形態では、該バッファー層を本発明のクロム系材料で形成している。
本実施の形態では、本発明のクロム系材料で形成したバッファー層を備えることにより、吸収体膜とバッファー層を合わせた全体でEUV光の高い吸収係数を持った吸収体膜として機能するため、本実施の形態の反射型マスクブランクスから製造される反射型マスクを用いたパターン転写時に、高コントラストでパターン転写を行なえる。また、吸収体膜とバッファー層を合わせた全体の膜厚をより薄い膜厚とすることができ、パターン転写時にシャドウイング(shadowing)効果によるパターンぼけの発生を防止することができる。また、上記バッファー層を備えることにより、吸収体膜のパターン形成時、及びパターン修正時のエッチングによる多層反射膜のダメージが防止され、さらに、上記バッファー層は、高い平滑性が得られ、その上に形成される吸収体膜表面も高い平滑性が得られるので、形状精度の良好なパターンが得られる。
本実施の形態の反射型マスクブランクスにおける上記バッファー層を形成する本発明のクロム系材料や、基板、多層反射膜などについては、前述の実施の形態1と同様であるので、ここでは重複説明は省略する。
なお、本発明のクロム系材料からなるバッファー層は、さらにB、N、O、C、Siから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することにより、バッファー層のアモルファス性、表面平滑性、膜応力、或いは多層反射膜や吸収体膜との密着性、等をより向上することができる。
また、本発明のクロム系材料からなるバッファー層は、実施の形態1のように吸収体膜として用いた場合と同様、マグネトロンスパッタリングなどのスパッタ法で形成するのが好ましい。
また、本実施の形態では、上記吸収体膜は、タンタル(Ta)単体又はタンタル(Ta)を主成分とする材料で形成されることが好ましい。タンタル単体又はタンタルを主成分とする材料からなる吸収体膜は、露光光である例えばEUV光に対する高い吸収係数を持つため、高コントラストでパターン転写を行なえ、またかかる吸収体膜と本発明のクロム系材料からなるバッファー層を合わせた全体の膜厚をより薄い膜厚とすることができるからである。
Taを主成分とする材料は、通常、Taの合金である。このような吸収体膜の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。
Taを主成分とする材料としては、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、更にOとNの少なくとも何れかを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料、等を用いることが出来る。TaにBやSi、Ge等を加えることにより、アモルファス状の材料が容易に得られ、平滑性を向上させることができる。また、TaにNやOを加えれば、酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることが出来るという効果が得られる。
この中でも特に好ましい材料として、例えば、TaとBを含む材料(組成比Ta/Bが8.5/1.5〜7.5/2.5の範囲である)、TaとBとNを含む材料(Nが5〜30原子%であり、残りの成分を100とした時、Bが10〜30原子%)が挙げられる。これらの材料の場合、容易に微結晶或いはアモルファス構造を得ることが出来、良好な平滑性と平坦性が得られる。
このようなTa単体又はTaを主成分とする吸収体膜は、マグネトロンスパッタリングなどのスパッタ法で形成するのが好ましい。例えば、TaBN膜の場合、タンタルとホウ素を含むターゲットを用い、窒素を添加したアルゴンガスを用いたスパッタリング法で成膜することができる。スパッタ法で形成した場合には、スパッタターゲットに投入するパワーや投入ガス圧力を変化させることにより内部応力を制御できる。また、室温程度の低温での形成が可能であるので、多層反射膜等への熱の影響を少なくすることが出来る。
実施の形態1と同様、本実施の形態の反射型マスクブランクスは、吸収体膜に所定の転写パターンを形成するためのレジスト膜が形成された状態であっても構わない。
本実施の形態の反射型マスクブランクスを使用して得られる反射型マスクの態様としては、基板上に形成された多層反射膜上に、所定の転写パターンを有するバッファー層と吸収体膜のパターンが形成された反射型マスクが挙げられる。
(実施の形態4)
本発明に係る反射型マスクブランクスの実施の形態4は、基板と、該基板上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収体膜とを有し、前記多層反射膜と前記吸収体膜との間に、該吸収体膜とエッチング特性が異なるバッファー層を備えるとともに、前記多層反射膜と前記バッファー層との間に、該多層反射膜を保護するルテニウム(Ru)単体又はその化合物からなる保護膜が形成されている。そして、本実施の形態においても、上記バッファー層は本発明のクロム系材料で形成している。
本実施の形態では、多層反射膜とバッファー層との間に、ルテニウム単体又はその化合物からなる保護膜を備えることにより、吸収体膜パターンに従ってバッファー層をパターン形成する時のエッチングによる多層反射膜のダメージを防止することができる。
保護膜を形成するルテニウム化合物については、前述の実施の形態2の場合と同様である。また、ルテニウムからなる保護膜は、実質的にルテニウムからなるもの、例えばルテニウム中に微量に不純物が含まれているものも含むものとする。
また、上記ルテニウム化合物のRu含有量、保護膜の膜厚、保護膜の形成方法などについても、前述の実施の形態2の場合と同様である。
本実施の形態の反射型マスクブランクスにおけるバッファー層を形成する本発明のクロム系材料や、基板、多層反射膜、吸収体膜などについては、前述の実施の形態3と同様であるので、ここでは重複説明は省略する。
次に、本発明の反射型マスクブランクスを用いて反射型マスクを製造する工程を説明する。
図1は本発明の反射型マスクブランクスの一実施の形態及びこのマスクブランクスを用いて反射型マスクを製造する工程を示す概略断面図である。
図1に示す反射型マスクブランクスの一実施の形態としては、前述の実施の形態4の場合を例として挙げる。図1(a)に示すように、反射型マスクブランクス10は、基板1上に多層反射膜2が形成され、その上に保護膜6を設け、更にその上に、バッファー層3及び吸収体膜4の各層が形成された構造をしている。
反射型マスクブランクス10(図1(a)参照)の各層の材料及び形成方法については上述した通りである。
そして、この反射型マスクブランクス10の吸収体膜4に所定の転写パターンを形成する。まず、吸収体膜4上に電子線用レジストを塗布し、ベーキングを行う。次に、電子線描画機を用いて描画し、これを現像して、所定のレジストパターン5aを形成する。
形成されたレジストパターン5aをマスクとして、吸収体膜4をドライエッチングして、所定の転写パターンを有する吸収体膜パターン4aを形成する(同図(b)参照)。吸収体膜4がTaを主成分とする材料からなる場合、塩素ガスを用いたドライエッチングを用いることが出来る。
なお、熱濃硫酸を用いて、吸収体膜パターン4a上に残ったレジストパターン5aを除去して、マスク11(同図(c)参照)を作製する。
通常はここで、吸収体膜パターン4aが設計通りに形成されているかどうかの検査を行う。吸収体膜パターン4aの検査には、例えば波長190nm〜260nm程度のDUV(Deep UV:深紫外)光が用いられ、この検査光が吸収体膜パターン4aが形成されたマスク11上に入射される。ここでは、吸収体膜パターン4a上で反射される検査光と、吸収体膜4が除去されて露出したバッファー層3で反射される検査光とを検出し、そのコントラストを観察することによって、検査を行う。
このようにして、例えば、除去されるべきでない吸収体膜が除去されたピンホール欠陥(白欠陥)や、エッチング不足により一部が除去されずに残っているエッチング不足欠陥(黒欠陥)を検出する。このようなピンホール欠陥や、エッチング不足による欠陥が検出された場合には、これを修正する。エッチング不足による欠陥の修正には、例えば、集束イオンビーム(Focussed Ion Beam:FIB)照射による不要部分の除去を行うなどの方法がある。また、ピンホール欠陥の修正には、FIBアシストデポジション法により炭素膜等をピンホールに堆積させるなどの方法がある。また、このとき、バッファー層3は、FIB照射に対して、多層反射膜2を保護する保護膜となる。
こうして、パターン検査及び修正が終えた後、露出したバッファー層3を吸収体膜パターン4aに従って除去し、バッファー層にパターン3aを形成して、反射型マスク20を作製する(同図(d)参照)。ここで、本発明のクロム系材料からなるバッファー層の場合は、塩素と酸素を含む混合ガスでのドライエッチングを用いることができる。バッファー層を除去した部分では、露光光の反射領域である多層反射膜2が露出する。露出した多層反射膜2上には例えばルテニウム化合物によりなる保護膜6が形成されている。このとき、保護膜6は、バッファー層3のドライエッチングに対して多層反射膜2を保護する。
最後に、仕様通りの寸法精度で吸収体膜パターン4aが形成されているかどうかの最終的な確認の検査を行う。この最終確認検査の場合も、前述のDUV光が用いられる。
また、本発明により製造される反射型マスクは、EUV 光(波長0.2〜100nm程度)を露光光として用いた場合に特に好適であるが、他の波長の光に対しても適宜用いることができる。
以下、実施例により、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。
本発明の実施例を説明するにあたって、まずコントラストについて説明する。
例えばEUV光を露光光とする反射型マスクのコントラスト(マスクコントラスト)は、
コントラスト=反射率比(多層反射膜からの反射率/吸収体膜からの反射率)
で定義される(図3参照)。EUV光用の反射型マスクは光学多層膜であるため、反射光は複雑な経路の合成波であり、干渉の効果で反射光は吸収体膜の膜厚に対して複雑な挙動を示す。また、前述の実施の形態3,4のようにバッファー層を備える場合、バッファー層も吸収体としての効果を有するため、本発明においてコントラストを考えるときの吸収体膜とは、吸収体膜とバッファー層とを合わせた層を意味するものとする。
上述のように干渉の効果で反射光は吸収体膜の膜厚に対して複雑な挙動を示すため、図4に示すように、吸収体膜の膜厚に対するコントラストも複雑な挙動を示し、膜厚変動でコントラストが大きく変動する。成膜装置の繰り返し再現性、面内分布などを考慮すると、多少の膜厚変動があってもコントラストが要求値(製品として最低限保証されるマスクコントラストの要求値)を上回る必要がある。そこで、図4にも一例を示したように、EUV用反射型マスクに要求されるマスクコントラストを100と仮定し、ある膜厚以上であればコントラストの要求値を常に満足する膜厚を「t100」と定義して、以下の実施例ではt100の値を用いて本発明による効果を説明する。
以下に示す実施例1は、前述の実施の形態1に係る実施例である。
(実施例1)
使用する基板は、SiO2-TiO2系のガラス基板(6インチ角、厚さが6.3mm)である。この基板の熱膨張係数は0.2×10−7/℃、ヤング率は67GPaである。そして、このガラス基板は機械研磨により、0.2nmRms以下の平滑な表面と、100nm以下の平坦度に形成した。
基板上に形成される多層反射膜は、13〜14nmの露光光波長帯域に適した多層反射膜とするために、Mo膜/Si膜周期多層反射膜を採用した。即ち、多層反射膜は、MoターゲットとSiターゲットを使用し、イオンビームスパッタリングにより基板上に交互に積層して形成した。Si膜を4.2nm、Mo膜を2.8nm、これを一周期として、40周期積層した後、最後にキャッピング層としてSi膜を11nm成膜して多層反射膜付き基板を得た。この多層反射膜に対し、13.5nmのEUV光を入射角6.0度で反射率を測定したところ、反射率は64.8%であった。また、この多層反射膜表面の表面粗さは0.13nmRmsであった。
次に、この多層反射膜上に、吸収体膜として、CrTeターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、CrTe膜を所定の厚さに成膜し、反射型マスクブランクスを得た(実施例1−1の反射型マスクブランクスとする。)。
次に、実施例1−1の反射型マスクブランクスにおける上記吸収体膜の材料をそれぞれ、CrTe(実施例1−2)、CrTe(実施例1−3)、Cr11Ge(実施例1−4)、CrGe(実施例1−5)とした以外は実施例1−1と同様にして、実施例1−2〜1−5の反射型マスクブランクスを作製した。
次に、これら実施例1−1〜1−5の反射型マスクブランクスを用いて、所定の転写パターンを有するEUV露光用反射型マスクを以下のように作製した。
まず、上記反射型マスクブランクス上に電子線描画用レジストを形成し、電子線描画と現像により所定のレジストパターンを形成した。
このレジストパターンをマスクとして、塩素と酸素の混合ガスを用いて吸収体膜をドライエッチングし、吸収体膜に転写パターンを形成した。
こうして、実施例1−1〜1−5の反射型マスクを得た。
ここで、吸収体膜の材料として、CrTe(実施例1−1)、CrTe(実施例1−2)、Cr11Ge(実施例1−4)、CrGe(実施例1−5)を使用したときの、コントラストの吸収体膜厚依存性を求め、その結果を図5に示した。吸収体膜の膜厚に対してコントラストの値が複雑な挙動を示していることがわかる。コントラストは前述の定義に従った。また、実施例1−3についても同様にコントラストの吸収体膜厚依存性を求めた。
このコントラストの吸収体膜厚依存性の関係から、前述のある膜厚以上であればコントラストの要求値を常に満足する膜厚「t100」を求めた。その結果、t100の値は、それぞれ38.0nm(実施例1−1),38.2nm(実施例1−2),38.3nm(実施例1−3),66.1nm(実施例1−4),66.5nm(実施例1−5)であった。
なお、比較例として、上記吸収体膜の材料として窒化クロム(CrN)を使用したこと以外は上記実施例1と同様にして作製した反射型マスクについても、同様にコントラストの吸収体膜厚依存性を求め(図5参照)、さらにt100を求めたところ、t100の値は76.3nmであり、上記実施例と比べると大きい値であった。
以上の結果から、吸収体膜として本発明のクロム系材料を用いることにより、例えば従来のCrN材料を用いた場合と比べて、より薄い膜厚で高コントラストを実現でき、EUV露光用反射型マスクに要求されるコントラストを保証することができ信頼性が高い。
次に、得られた実施例1−1〜1−5の反射型マスク(但し、各実施例の吸収体膜の膜厚は各々の上記t100の値に設定した)を用いて、図2に示す半導体基板上へのEUV光によるパターン転写装置による露光転写を行った。
反射型マスクを搭載したパターン転写装置50は、レーザープラズマX線源31、縮小光学系32等から概略構成される。縮小光学系32は、X線反射ミラーを用いている。縮小光学系32により、反射型マスク20で反射されたパターンは通常1/4程度に縮小される。尚、露光波長として13〜14nmの波長帯を使用するので、光路が真空中になるように予め設定した。
このような状態で、レーザープラズマX線源31から得られたEUV光を反射型マスク20に入射し、ここで反射された光を縮小光学系32を通してシリコンウエハ(レジスト層付き半導体基板)33上に転写した。
反射型マスク20に入射した光は、吸収体パターン4a(図1参照)のある部分では、吸収体膜に吸収されて反射されず、一方、吸収体パターン4aのない部分に入射した光は多層反射膜により反射される。このようにして、反射型マスク20から反射される光により形成される像が縮小光学系32に入射する。縮小光学系32を経由した露光光は、シリコンウエハ33上のレジスト層に転写パターンを露光する。そして、この露光済レジスト層を現像することによってシリコンウエハ33上にレジストパターンを形成した。
以上のようにして半導体基板上へのパターン転写を行ったところ、実施例1−1〜1−5の反射型マスクは何れも、パターン転写時にパターンぼけの発生がなく、高コントラストのパターン転写を実現することができることが確認できた。
以下に示す実施例2は、前述の実施の形態2に係る実施例である。
(実施例2)
実施例1と同じガラス基板上に、MoターゲットとSiターゲットを使用し、イオンビームスパッタリングにより基板上に交互に積層して、Mo膜/Si膜周期多層反射膜を形成した。即ち、Si膜を4.2nm、Mo膜を2.8nm、これを一周期として、40周期積層した後、キャッピング層としてSi膜を4nm成膜し、更にその上に保護膜としてRuNbターゲットを用いてRuNb膜を2.5nm成膜して多層反射膜付き基板を得た。この多層反射膜に対し、13.5nmのEUV光を入射角6.0度で反射率を測定したところ、反射率は64.2%であった。また、この多層反射膜表面の表面粗さは0.13nmRmsであった。
次に、この多層反射膜上に、吸収体膜として、CrTeターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、CrTe膜を所定の厚さに成膜し、反射型マスクブランクスを得た(実施例2−1の反射型マスクブランクスとする。)。
次に、実施例2−1の反射型マスクブランクスにおける上記吸収体膜の材料をそれぞれ、CrTe(実施例2−2)、CrTe(実施例2−3)、Cr11Ge(実施例2−4)、CrGe(実施例2−5)、CrGeN(実施例2−6)とした以外は実施例2−1と同様にして、実施例2−2〜2−6の反射型マスクブランクスを作製した。
次に、これら実施例2−1〜2−6の反射型マスクブランクスを用いて、所定の転写パターンを有するEUV露光用反射型マスクを以下のように作製した。
まず、上記反射型マスクブランクス上に電子線描画用レジストを形成し、電子線描画と現像により所定のレジストパターンを形成した。
このレジストパターンをマスクとして、塩素と酸素の混合ガスを用いて吸収体膜をドライエッチングし、吸収体膜に転写パターンを形成した。
こうして、実施例2−1〜2−6の反射型マスクを得た。
ここで、吸収体膜の材料として、CrTe(実施例2−1)、CrTe(実施例2−2)、Cr11Ge(実施例2−4)、CrGe(実施例2−5)を使用したときの、コントラストの吸収体膜厚依存性を求め、その結果を図6に示した。また、実施例2−3、2−6についても同様にコントラストの吸収体膜厚依存性を求めた。
このコントラストの吸収体膜厚依存性の関係から、前述のある膜厚以上であればコントラストの要求値を常に満足する膜厚「t100」を求めた。その結果、t100の値は、それぞれ36.8nm(実施例2−1),37.0nm(実施例2−2),37.1nm(実施例2−3),64.9nm(実施例2−4),65.2nm(実施例2−5)、73.4nm(実施例2−6)であった。
なお、前述の実施例1の結果と比べると、吸収体膜の材料が同じでも本実施例2の方が実施例1よりもt100が小さくなっている。この理由は次のように推測される。即ち、図7の(a)(実施例1のマスク構成)と(b)(実施例2のマスク構成)には模式的に示したが、吸収体膜パターンのあるところ(吸収体領域)では、Ru系保護膜を有する(b)における吸収体膜と保護膜の界面からの反射光量の方が、(a)における吸収体膜とSiキャッピング層の界面からの反射光量よりも少なく、結果的に(b)における吸収体領域からの反射光b1の方が、(a)における吸収体領域からの反射光a1よりも光量が小さい。逆に、吸収体膜パターンのないところ(反射領域)では、Ru系保護膜を有する(b)における反射領域からの反射光b2の方が、(a)における反射領域からの反射光a2よりも光量が大きい。このため、Ru系保護膜を備えた本実施例2のマスクの方が実施例1のマスクよりもマスクコントラストが強調され、その結果本実施例2の方がt100が小さくなると考えられる。
なお、比較例として、上記吸収体膜の材料として窒化クロム(CrN)を使用したこと以外は上記実施例2と同様にして作製した反射型マスクについても、同様にコントラストの吸収体膜厚依存性を求め(図6参照)、さらにt100を求めたところ、t100の値は75.0nmであり、上記実施例と比べると大きい値であった。
以上の結果から、本実施例においても、吸収体膜として本発明のクロム系材料を用いることにより、例えば従来のCrN材料を用いた場合と比べて、より薄い膜厚で高コントラストを実現でき、EUV露光用反射型マスクに要求されるコントラストを保証することができ信頼性が高い。
次に、得られた実施例2−1〜2−6の反射型マスク(但し、各実施例の吸収体膜の膜厚は各々の上記t100の値に設定した)を用いて、実施例1と同様に図2のパターン転写装置を用いて半導体基板上へのパターン転写を行ったところ、実施例2−1〜2−6の反射型マスクは何れも、パターン転写時にパターンぼけの発生がなく、高コントラストのパターン転写を実現することができることが確認できた。
以下に示す実施例3は、前述の実施の形態3に係る実施例である。
(実施例3)
実施例1と同じガラス基板上に、MoターゲットとSiターゲットを使用し、イオンビームスパッタリングにより基板上に交互に積層して、Mo膜/Si膜周期多層反射膜を形成した。即ち、Si膜を4.2nm、Mo膜を2.8nm、これを一周期として、40周期積層した後、最後にキャッピング層としてSi膜を11nm成膜して多層反射膜付き基板を得た。この多層反射膜に対し、13.5nmのEUV光を入射角6.0度で反射率を測定したところ、反射率は64.8%であった。また、この多層反射膜表面の表面粗さは0.13nmRmsであった。
次に、この多層反射膜上に、バッファー層として、CrTeターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、CrTe膜を25nmの厚さに成膜した。
次に、このバッファー層上に、吸収体膜として、TaとBとNを含む材料を所定の厚さで形成した。即ち、Ta及びBを含むターゲットを用いて、アルゴン(Ar)に窒素(N2)を10%添加して、DCマグネトロンスパッタリング法によって成膜した。成膜したTaBN膜の組成比は、Taが0.8原子%、Bが0.1原子%、Nが0.1原子%であった。
こうして本実施例の反射型マスクブランクスを得た(実施例3−1の反射型マスクブランクスとする。)。
次に、実施例3−1の反射型マスクブランクスにおける上記バッファー層の材料をそれぞれ、CrTe(実施例3−2)、CrTe(実施例3−3)、Cr11Ge(実施例3−4)、CrGe(実施例3−5)とした以外は実施例3−1と同様にして、実施例3−2〜3−5の反射型マスクブランクスを作製した。
次に、これら実施例3−1〜3−5の反射型マスクブランクスを用いて、所定の転写パターンを有するEUV露光用反射型マスクを以下のように作製した。
まず、上記反射型マスクブランクス上に電子線描画用レジストを形成し、電子線描画と現像により所定のレジストパターンを形成した。
このレジストパターンをマスクとして、塩素ガスを用いてTaBN吸収体膜をドライエッチングし、吸収体膜に転写パターンを形成した。
さらに、塩素と酸素の混合ガスを用いて、反射領域上(吸収体膜のパターンのない部分)に残存しているバッファー層を吸収体膜のパターンに従ってドライエッチングして除去し、多層反射膜を露出させ、反射型マスクを得た。
こうして、実施例3−1〜3−5の反射型マスクを得た。
ここで、バッファー層の材料として、CrTe(実施例3−1)、CrTe(実施例3−2)、Cr11Ge(実施例3−4)、CrGe(実施例3−5)を使用したときの、コントラストの吸収体膜厚依存性を求め、その結果を図8に示した。但し、この場合の吸収体膜厚とは、吸収体膜とバッファー層を合わせた全体の膜厚のことであり、以下「全吸収体膜厚」と呼ぶことにする。また、実施例3−3についても同様にコントラストの全吸収体膜厚依存性を求めた。
このコントラストの全吸収体膜厚依存性の関係から、前述のある膜厚以上であればコントラストの要求値を常に満足する膜厚「t100」を求めた。その結果、t100の値は、それぞれ45.6nm(実施例3−1),51.3nm(実施例3−2),46.1nm(実施例3−3),74.4nm(実施例3−4),74.5nm(実施例3−5)であった。
なお、前述の実施例1の結果と比べると、材料が同じでも本実施例3と実施例1とではt100の値の序列が一部異なっている。たとえば、実施例3のバッファー層の材料として、CrTe(実施例3−2)、CrTe(実施例3−3)をそれぞれ使用した場合の両者のt100の大小の序列と、実施例1の吸収体膜の材料として、CrTe(実施例1−2)、CrTe(実施例1−3)をそれぞれ使用した場合の両者のt100の大小の序列とは異なっている。この理由は次のように推測される。即ち、図9の(a)(実施例3のマスク構成)と(b)(実施例1のマスク構成)には模式的に示したが、(a)に示す実施例3のマスク構成では、TaBN吸収体膜とCr系バッファー層との界面で屈折率差による反射光(図中のa3で示す反射光)が存在し、その反射光がCr系バッファー層の材料に依存するため、(b)に示すCr系吸収体膜のみを備える実施例1のマスク構成におけるt100の大小の序列とは異なっているものと推測される。また、TaBN吸収体膜表面で反射される反射光の強度がCr系吸収体膜表面で反射される反射光の強度とは異なることも理由の一つと考えられる。
なお、比較例として、上記バッファー層の材料として窒化クロム(CrN)を使用したこと以外は上記実施例3と同様にして作製した反射型マスクについても、同様にコントラストの全吸収体膜厚依存性を求め(図8参照)、さらにt100を求めたところ、t100の値は75.7nmであり、上記実施例と比べると大きい値であった。
以上の結果から、バッファー層として本発明のクロム系材料を用いることにより、例えば従来のCrN材料を用いた場合と比べて、より薄い全吸収体膜厚で高コントラストを実現でき、EUV露光用反射型マスクに要求されるコントラストを保証することができ信頼性が高い。
次に、得られた実施例3−1〜3−5の反射型マスク(但し、各実施例の全吸収体膜厚は各々の上記t100の値に設定した)を用いて、実施例1と同様に図2のパターン転写装置を用いて半導体基板上へのパターン転写を行ったところ、実施例3−1〜3−5の反射型マスクは何れも、パターン転写時にパターンぼけの発生がなく、高コントラストのパターン転写を実現することができることが確認できた。
なお、本実施例では、本発明のクロム系材料で形成するバッファー層の膜厚を一応25nmとしたが、これに限定される必要はない。たとえば、全吸収体膜厚を仮にt100の値に設定するとすれば、その場合のバッファー層の膜厚を25nmに限定する必要はなく、吸収体膜とバッファー層との膜厚の比率は適宜設定することができる。
以下に示す実施例4は、前述の実施の形態4に係る実施例である。
(実施例4)
実施例1と同じガラス基板上に、MoターゲットとSiターゲットを使用し、イオンビームスパッタリングにより基板上に交互に積層して、Mo膜/Si膜周期多層反射膜を形成した。即ち、Si膜を4.2nm、Mo膜を2.8nm、これを一周期として、40周期積層した後、キャッピング層としてSi膜を4nm成膜し、更にその上に保護膜としてRuNbターゲットを用いてRuNb膜を2.5nm成膜して多層反射膜付き基板を得た。この多層反射膜に対し、13.5nmのEUV光を入射角6.0度で反射率を測定したところ、反射率は64.2%であった。また、この多層反射膜表面の表面粗さは0.13nmRmsであった。
次に、この多層反射膜上に、バッファー層として、CrTeターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、CrTe膜を25nmの厚さに成膜した。
次に、このバッファー層上に、吸収体膜として、実施例3と同様にしてTaBN膜を所定の厚さで形成した。
こうして本実施例の反射型マスクブランクスを得た(実施例4−1の反射型マスクブランクスとする。)。
次に、実施例4−1の反射型マスクブランクスにおける上記バッファー層の材料をそれぞれ、CrTe(実施例4−2)、CrTe(実施例4−3)、Cr11Ge(実施例4−4)、CrGe(実施例4−5)とした以外は実施例4−1と同様にして、実施例4−2〜4−5の反射型マスクブランクスを作製した。
次に、これら実施例4−1〜4−5の反射型マスクブランクスを用いて、所定の転写パターンを有するEUV露光用反射型マスクを以下のように作製した。
まず、上記反射型マスクブランクス上に電子線描画用レジストを形成し、電子線描画と現像により所定のレジストパターンを形成した。
このレジストパターンをマスクとして、塩素ガスを用いてTaBN吸収体膜をドライエッチングし、吸収体膜に転写パターンを形成した。
さらに、塩素と酸素の混合ガスを用いて、反射領域上(吸収体膜のパターンのない部分)に残存しているバッファー層を吸収体膜のパターンに従ってドライエッチングして除去し、多層反射膜を露出させ、反射型マスクを得た。
こうして、実施例4−1〜4−5の反射型マスクを得た。
ここで、バッファー層の材料として、CrTe(実施例4−1)、CrTe(実施例4−2)、Cr11Ge(実施例4−4)、CrGe(実施例4−5)を使用したときの、コントラストの吸収体膜厚依存性を求め、その結果を図10に示した。但し、本実施例においてもこの場合の吸収体膜厚とは、吸収体膜とバッファー層を合わせた全体の膜厚のことであり、以下「全吸収体膜厚」と呼ぶ。また、実施例4−3についても同様にコントラストの全吸収体膜厚依存性を求めた。
このコントラストの全吸収体膜厚依存性の関係から、前述のある膜厚以上であればコントラストの要求値を常に満足する膜厚「t100」を求めた。その結果、t100の値は、それぞれ44.2nm(実施例4−1),51.3nm(実施例4−2),44.6nm(実施例4−3),73.2nm(実施例4−4),73.3nm(実施例4−5)であった。
なお、前述の実施例2の結果と比べると、材料が同じでも本実施例4と実施例2とではt100の値の序列が一部異なっているが、その理由は前述の実施例3で説明した理由と同様であると考えられる。
比較例として、上記バッファー層の材料として窒化クロム(CrN)を使用したこと以外は上記実施例4と同様にして作製した反射型マスクについても、同様にコントラストの全吸収体膜厚依存性を求め(図10参照)、さらにt100を求めたところ、t100の値は74.3nmであり、上記実施例と比べると大きい値であった。
以上の結果から、本実施例においてもバッファー層として本発明のクロム系材料を用いることにより、例えば従来のCrN材料を用いた場合と比べて、より薄い全吸収体膜厚で高コントラストを実現でき、EUV露光用反射型マスクに要求されるコントラストを保証することができ信頼性が高い。
次に、得られた実施例4−1〜4−5の反射型マスク(但し、各実施例の全吸収体膜厚は各々の上記t100の値に設定した)を用いて、実施例1と同様に図2のパターン転写装置を用いて半導体基板上へのパターン転写を行ったところ、実施例4−1〜4−5の反射型マスクは何れも、パターン転写時にパターンぼけの発生がなく、高コントラストのパターン転写を実現することができることが確認できた。
なお、本実施例においても、本発明のクロム系材料で形成するバッファー層の膜厚を一応25nmとしたが、これに限定される必要はなく、たとえば、全吸収体膜厚をt100の値に設定する場合のバッファー層の膜厚を25nmに限定する必要はない。吸収体膜とバッファー層との膜厚の比率は適宜設定することができる。
(実施例5)
実施例1−1の反射型マスクブランクスにおける吸収体膜の材料をそれぞれ、CrAg(Ag:20at%)(実施例5−1)、CrAg(Ag:50at%)(実施例5−2)とした以外は実施例1−1と同様にして、実施例5−1、5−2の反射型マスクブランクスを作製した。
実施例2−1の反射型マスクブランクスにおける吸収体膜の材料をそれぞれ、CrAg(Ag:20at%)(実施例5−3)、CrAg(Ag:50at%)(実施例5−4)とした以外は実施例2−1と同様にして、実施例5−3、5−4の反射型マスクブランクスを作製した。
実施例3−1の反射型マスクブランクスにおけるバッファー層の材料をそれぞれ、CrAg(Ag:20at%)(実施例5−5)、CrAg(Ag:50at%)(実施例5−6)とした以外は実施例3−1と同様にして、実施例5−5、5−6の反射型マスクブランクスを作製した。
実施例4−1の反射型マスクブランクスにおけるバッファー層の材料をそれぞれ、CrAg(Ag:20at%)(実施例5−7)、CrAg(Ag:50at%)(実施例5−8)とした以外は実施例4−1と同様にして、実施例5−7、5−8の反射型マスクブランクスを作製した。
次に、これら実施例5−1〜5−8の反射型マスクブランクスを用いて、所定の転写パターンを有するEUV露光用反射型マスクを作製し、実施例5−1〜5−8の反射型マスクを得た。
ここで、コントラストの吸収体膜厚依存性を求め、その結果を、実施例5−1、5−2については図11、実施例5−3、5−4については図12、実施例5−5、5−6については図13、実施例5−7、5−8については図14にそれぞれ示した。但し、実施例5−5〜5−8においては、吸収体膜厚とは、吸収体膜とバッファー層を合わせた「全吸収体膜厚」である。また、比較例として、上記吸収体膜又はバッファー層として窒化クロム(CrN)を使用した反射型マスクのコントラストの吸収体膜厚依存性についても併せて各図に示した。
このコントラストの吸収体膜厚依存性の関係から、前述のある膜厚以上であればコントラストの要求値を常に満足する膜厚「t100」を求めた。その結果、t100の値は、それぞれ62.3nm(実施例5−1),55.2nm(実施例5−2),61.0nm(実施例5−3),54.1nm(実施例5−4),74.8nm(実施例5−5)、61.9nm(実施例5−6)、67.4nm(実施例5−7)、60.4nm(実施例5−8)であった。
以上の結果から、本実施例においても吸収体膜又はバッファー層として本発明のクロム系材料(CrAg)を用いることにより、例えば従来のCrN材料を用いた場合と比べて、より薄い吸収体膜厚で高コントラストを実現でき、EUV露光用反射型マスクに要求されるコントラストを保証することができ信頼性が高い。
次に、得られた実施例5−1〜5−8の反射型マスク(但し、各実施例の全吸収体膜厚は各々の上記t100の値に設定した)を用いて、実施例1と同様に図2のパターン転写装置を用いて半導体基板上へのパターン転写を行ったところ、実施例5−1〜5−8の反射型マスクは何れも、パターン転写時にパターンぼけの発生がなく、高コントラストのパターン転写を実現することができることが確認できた。
反射型マスクブランクスの一実施の形態の構成及びこのマスクブランクスを用いて反射型マスクを製造する工程を示す断面図である。 反射型マスクを搭載したパターン転写装置の概略構成を示す図である。 コントラストの定義を説明するためのマスク構成の模式的断面図である。 膜厚t100の定義を説明するためのコントラストの膜厚依存性を示す図である。 実施例1の場合のコントラストの吸収体膜厚依存性を示す図である。 実施例2の場合のコントラストの吸収体膜厚依存性を示す図である。 Ru系保護膜を備えることによるコントラストへの影響を説明するための(a)実施例1のマスク構成と(b)実施例2のマスク構成を模式的に示した断面図である。 実施例3の場合のコントラストの吸収体膜厚依存性を示す図である。 本発明のCr系バッファー層上にTa系吸収体膜を有する場合の反射光への影響を説明するための(a)実施例3のマスク構成と(b)実施例1のマスク構成を模式的に示した断面図である。 実施例4の場合のコントラストの吸収体膜厚依存性を示す図である。 実施例5−1,5−2の場合のコントラストの吸収体膜厚依存性を示す図である。 実施例5−3,5−4の場合のコントラストの吸収体膜厚依存性を示す図である。 実施例5−5,5−6の場合のコントラストの吸収体膜厚依存性を示す図である。 実施例5−7,5−8の場合のコントラストの吸収体膜厚依存性を示す図である。
符号の説明
1 基板
2 多層反射膜
3 バッファー層
4 吸収体膜
5a レジストパターン
6 保護膜
10 反射型マスクブランクス
20 反射型マスク
50 パターン転写装置

Claims (12)

  1. 基板と、該基板上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収体膜とを有する反射型マスクブランクスであって、
    前記吸収体膜は、クロム(Cr)を主成分とし、さらに銀(Ag)、テルル(Te)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、ゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する材料からなり、
    前記吸収体膜は、DCスパッタ法で形成された膜であり、
    前記吸収体膜の膜厚は、前記露光光に対する前記多層反射膜からの反射率を前記吸収体膜からの反射率で除して算出されるコントラストが100以上となる条件を満足する膜厚であり、かつその膜厚以上でもコントラストが100未満にならない膜厚を下限値とすることを特徴とする反射型マスクブランクス。
  2. 前記吸収体膜の膜厚は、前記露光光に対する前記多層反射膜からの反射率をCrNで形成される吸収体膜からの反射率で除して算出されるコントラストが100以上となる条件を満足する膜厚であり、かつその膜厚以上でもコントラストが100未満にならない膜厚よりも小さい膜厚を下限値とすることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランクス。
  3. 前記吸収体膜は、さらにホウ素(B)、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、珪素(Si)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の反射型マスクブランクス。
  4. 前記多層反射膜と前記吸収体膜との間に、該多層反射膜を保護するルテニウム(Ru)化合物からなる保護膜が形成されており、前記露光光に対する前記多層反射膜からの反射率は、前記多層反射膜上に保護膜がある状態における反射率であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の反射型マスクブランクス。
  5. 基板と、該基板上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収体膜とを有する反射型マスクブランクスであって、
    前記多層反射膜と前記吸収体膜との間に、該吸収体膜とエッチング特性が異なるバッファー層を備えており、該バッファー層は、クロム(Cr)を主成分とし、さらに銀(Ag)、テルル(Te)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、ゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する材料からなり、
    前記バッファー層は、DCスパッタ法で形成された膜であり、
    前記吸収体膜と前記バッファー層とを合わせた層の全体膜厚は、前記露光光に対する前記多層反射膜からの反射率を前記吸収体膜と前記バッファー層とを合わせた層からの反射率で除して算出されるコントラストが100以上となる条件を満足する膜厚であり、かつその膜厚以上でもコントラストが100未満にならない膜厚を下限値とすることを特徴とする反射型マスクブランクス。
  6. 前記吸収体膜と前記バッファー層とを合わせた層の全体膜厚は、前記露光光に対する前記多層反射膜からの反射率を、前記吸収体膜とCrNで形成されるバッファー層とを合わせた層からの反射率で除して算出されるコントラストが100以上となる条件を満足する膜厚であり、かつその膜厚以上でもコントラストが100未満にならない膜厚よりも小さい膜厚を下限値とすることを特徴とする請求項5に記載の反射型マスクブランクス。
  7. 前記バッファー層は、さらにホウ素(B)、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、珪素(Si)から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項5又は6に記載の反射型マスクブランクス。
  8. 前記吸収体膜は、タンタル(Ta)又はタンタル(Ta)を主成分とする材料からなることを特徴とする請求項5乃至7の何れか一に記載の反射型マスクブランクス。
  9. 前記多層反射膜と前記バッファー層との間に、該多層反射膜を保護するルテニウム(Ru)又はその化合物からなる保護膜が形成されており、前記露光光に対する前記多層反射膜からの反射率は、前記多層反射膜上に保護膜がある状態における反射率であることを特徴とする請求項乃至の何れか一に記載の反射型マスクブランクス。
  10. 前記多層反射膜は、Si膜とMo膜を一周期として複数周期積層した膜であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一に記載の反射型マスクブランクス。
  11. 請求項1乃至10の何れか一に記載の反射型マスクブランクスの前記吸収体膜に、被転写体に対する転写パターンとなる吸収体膜パターンが形成されていることを特徴とする反射型マスク。
  12. 請求項11に記載の反射型マスクを使用したリソグラフィ技術により半導体基板上に微細パターンを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
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