JP4924614B2 - 管ネジ継手 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は油井管(OCTG)、ライザー管、ラインパイプなどの鋼管の締結に適した管ネジ継手に関する。より詳しくは、本発明は、耐圧縮性能に優れると同時に、現地における竪型の締結作業が容易になる、管ネジ継手に関する。
【背景技術】
【0002】
油井やガス井の探査や生産に使用されるチュービングおよびケーシングを包含する油井管すなわちOCTG(oil country tubular goods)、ライザー管、ならびにラインパイプなどの鋼管の締結は一般に管ネジ継手により行われる。
【0003】
管ネジ継手は、第1管状部材の端部に設けた雄ネジ要素であるピンと、第2管状部材の端部に設けた雌ネジ要素であるボックスとから構成され、いずれもテーパネジである雄ネジと雌ネジの嵌合により締結が行われる。典型的には第1管状部材が油井管などのパイプであり、第2管状部材は別部材のカップリングである(この種の管ネジ継手をカップリング方式という)。その場合、ピンはパイプ両端に、ボックスはカップリングの両側にそれぞれ形成される。
【0004】
カップリングを使用せずに、パイプの一端の外面にピンを、他端の内面にボックスを形成したインテグラル方式の管ネジ継手もある。その場合には、第1管状部材は第1のパイプ、第2管状部材は第2のパイプとなる。また、原理的には、ピンをカップリングに、ボックスをパイプに形成したカップリング方式の管ネジ継手も可能である。以下では主に、ピンがパイプ端部に、ボックスがカップリングに形成された最初に述べた種類の管ネジ継手を例にとって説明する。
【0005】
油井管の締結は、従来はAPI(米国石油協会)規格に規定された標準的なネジ継手が主に使用されてきた。しかし、近年、原油や天然ガスの掘削・生産環境が苛酷化しているため、プレミアムジョイントと呼ばれる高性能の特殊ネジ継手を使用することが増加している。
【0006】
プレミアムジョイントでは、ピンとボックスのそれぞれが、テーパネジに加えて、継手の相手部材との半径方向での直接金属間接触を可能にして密封性能を担うメタルシール面と、継手の締付け中に当接ストッパの役目を担うトルクショルダ面とを備える。
【0007】
図1(A)および図1(B)は、カップリング形式の一般的な油井管用プレミアムジョイントの模式的説明図である。図1(A)は全体図、図1(B)はその部分拡大図である。この管ネジ継手は、図1(B)に示すように、パイプ端部に設けられた雄ネジ要素であるピン1と、カップリングの両側に設けられた対応する雌ネジ要素であるボックス2とを備える。ピン1は、外面に、テーパ雄ネジ部11と、雄ネジ部11に隣接して先端側に設けられた、リップと呼ばれる略円筒状のネジ無し衝突部分(以下、リップ部という)12とを有する。リップ部12は、その外周面にメタルシール面(以下、単にシール面ともいう)13を、その端面にトルクショルダ面(以下、単にショルダ面ともいう)14を有する。
【0008】
相対するボックス2は、その内面に、それぞれピン1のテーパ雄ネジ部11、メタルシール面13、およびショルダ面14と嵌合するか、または当接することができる部分である、テーパ雌ネジ部21、メタルシール面23、およびショルダ面24を有している。
【0009】
図2は、API規格のバットレスネジに代表される台形ネジの形状・寸法を説明する模式図である。図1(A)および(B)と同様に、11が雄ネジ部、21が雌ネジ部である。プレミアムジョイントに用いられるネジも、通常はこのAPI規格のバットレスネジに倣った台形ネジである。ほとんどのプレミアムジョイントでは、ネジ山のアスペクト比(縦横比)やフランク角(側面傾斜角度)などもAPI規格のバットレスネジの寸法をほぼそのまま適用している。
【0010】
1例を示すと、ネジピッチが5TPI(5 threads per inch、1インチ当たり5山)のAPI規格のバットレスネジの場合、雄ネジ山の頂面の高さであるネジ高さ74は1.575mm、荷重面の傾斜角度71は3°、挿入面の傾斜角度72は10°、雄ネジ山と雌ネジ山の挿入面間の管軸方向隙間距離(挿入面隙間)73は平均で約100μm(30〜180μm)である。
【0011】
管ネジ継手のネジ山の形状に関して、WO92/15815号には、ピンとボックスの両方のネジ山の頂面と挿入面との間が直線または曲線により切除(すなわち、面取り)されていて、ピンをボックスに挿入した際に最初に接触する接触面として機能させる管継手が記載されている。この接触面は、ピンをボックスに挿入する際に両者が軸方向に不整列になった時に、ピンとボックスの接触面同士が接触して挿入を容易にすることを意図したものである。
【0012】
米国特許第6322110号にも同様の考え方の管継手が記載されている。すなわち、ピンとボックスの両方のネジ山の挿入面にコーナー・チャンファ(角部の面取り)が設けられている。ピンをボックスに挿入する際にコーナー・チャンファ同士が係合してピンの挿入を容易にする。
【0013】
上記WO92/15815号および米国特許第6322110号のいずれも、挿入面と頂面との間の面取り部においてピンとボックスが接触することにより挿入角度ずれを防いでピンの挿入を容易にするものである。従って、面取り部はピンとボックスの両者に必要であり、一方だけに設けても意図した効果を発揮しない。また、これらの特許文献には、面取りによる圧縮性能への影響は何も記載されていない。
【0014】
プレミアムジョイントにおいては、ピンとボックスのメタルシール面の間に、干渉量と呼ばれる半径方向の締め代が設けられている。ピンとボックスのショルダ面同士が突き当たるまで継手を締め込むと、これら両部材のシール面同士が継手の全周にわたって密着し、シールを形成する。
【0015】
ショルダ面は、締め付け時の当接ストッパの役割のほかに、継手に作用する圧縮荷重の殆どを負担する役目も担っている。したがって、ショルダ面の肉厚が厚くないと(または、ショルダ面の剛性が高くないと)、それらは大きな圧縮荷重には耐えられない。
【0016】
従来、垂直井が主流であったため、油井管用ネジ継手は、それに連結された管の重さによる引張荷重に耐えることができ、かつ内部を通過する高圧流体の漏洩を防止できれば十分に機能できた。しかし、近年は、深井戸化が進み、地中で坑井が屈曲する傾斜井や水平井が増加し、また、海洋や極地など劣悪な環境での井戸の開発が増加していることから、耐圧縮性能、耐曲げ性能、外圧シール性能、現場での取り扱いやピン挿入の容易性など、ネジ継手への要求性能は多様化している。
【0017】
上述した従来のプレミアムジョイントに外圧が作用した場合、作用外圧は、ネジの隙間を伝わって、シール面直前の図1(B)に31で示す部位まで浸透する。リップ部は、管本体に比べて肉厚がずっと薄いため、浸透外圧による縮径変形を受けることがある。そのため、外圧が高くなると、シール面に隙間が生じて、漏洩、すなわち外部流体が管体内部に侵入する状況、が発生する。
【0018】
また、水平井や傾斜井に油井管を埋設するときなど、プレミアムジョイントに圧縮荷重が作用した場合、ほとんどの継手は、前述のAPI規格のバットレスネジと同様に、挿入面隙間が比較的広いため、ネジによって圧縮荷重を負担する能力は低く、大部分の圧縮荷重をショルダが負担することになる。
【0019】
しかし、ショルダ面の肉厚(圧縮荷重の受圧面積、リップ端面の面積に相当)は通常、管本体のそれよりも相当小さい。そのため、管本体の降伏強度の40〜60%に相当するような圧縮荷重が作用すると、大抵のプレミアムジョイントではピンのリップ部が実質的な塑性変形を受け、この部分に隣接するシール面の密封性能を著しく低下させてしまう。
【0020】
外圧に対する継手のシール性(外圧シール性)を高めるには、ピンの縮径変形に対する抵抗を高めるように、その剛性を高くすればよい。この目的で、スウェジと呼ばれるリップ部の肉厚を厚くするための方法がパイプ軸によく適用される。
【0021】
しかし、スウェジ加工量があまりに大きいと、ケーシングの場合は、その内部に挿入される管がスウェジ部でひっかかってしまったりすることがあり、チュービングの場合は、スウェジ部によりチュービング内部を流れる原油等の流体に乱流が発生して、エロージョンの原因となることがある。そのため、スウェジ加工によるピンリップ部の肉厚の増加量はあまり大きくできない。
【0022】
WO2004/109173号には、図3に示すように、ピン1のメタルシール面13と端面のトルクショルダ面14との間にノーズ部15を設けた管ネジ継手が提案されている。このピン1のノーズ部15の略円筒形状の外周面は、ボックス2の向かい合う部分と接触していない。一方、ピンとボックスのメタルシール部13、23ならびにショルダ面14、24は互いに当接している。ピンのリップ部を延長してシール面の先に非接触のノーズ部15を設けることにより、限られた管肉厚の中で、ショルダ面およびシール面を含むリップ部の肉厚を大きくすることができ、管ネジ継手の耐圧縮性能と外圧シール性を著しく向上させることができる。
【特許文献1】
WO92/15815号
【特許文献2】
米国特許第6322110号
【特許文献3】
WO2004/109173号
【発明の開示】
【0023】
本発明は、耐圧縮性能に優れ、なおかつ現地における竪型の締結作業が容易に実施できる管ネジ継手を提供することを課題とする。
WO2004/109173号に提案された管ネジ継手では、ピンのメタルシール面より先端側の部分について改良を加えることにより耐圧縮性能の改善を図っている。本発明者らは、この管ネジ継手をベースに検討を重ねた結果、ネジ山形状、特にピン雄ネジとボックス雌ネジの挿入面間の軸方向隙間距離である挿入面隙間とリップ部長さとがある関係を満たすと、圧縮によるリップ部の塑性変形が起こるのが防止され、管ネジ継手の耐圧縮性能がさらに向上することを見出した。
【0024】
本発明は、第1管状部材の端部に設けた雄ネジ要素であるピンと第2管状部材の端部に設けた雌ネジ要素であるボックスとから構成される管ネジ継手であって、ピンとボックスはそれぞれネジ部および少なくとも1つのトルクショルダ面を備え、ピンの雄ネジ部はボックスの雌ネジ部に嵌合し、ピンの少なくとも1つのトルクショルダ面はボックスの少なくとも1つのトルクショルダ面と管軸方向に当接し、該当接するトルクショルダ面の一方はその部材の横断面方向端面を構成する端面ショルダ面であり、雄ネジ部および雌ネジ部のネジ山はそれぞれ、頂面、荷重面および挿入面を備え、かつ谷部により離間している略台形形状のネジ山である管ネジ継手に関する。
【0025】
本発明に係る管ネジ継手は、該端面ショルダ面を有する部材における端面ショルダ面と端面ショルダ面に最も近接した嵌合ネジ山(係合も螺合ネジ山)の荷重面との間の軸方向距離であるリップ長さが、雄ネジと雌ネジの嵌合ネジ部における雄ネジ山の荷重面が雌ネジ山の荷重面に当接している時の雄ネジ山の挿入面と雌ネジ山の挿入面との間の軸方向隙間距離である挿入面隙間の140倍以上、好ましくは160倍以上であり、少なくとも一方のネジ山において、その挿入面が谷部側の第1部分とネジ山頂面側の第2部分の2部分からなり、第1部分より第2部分の方が、管軸との垂線に対する平均傾斜角度が大きく、さらに第1部分が他方の部材のネジ山の挿入面と平行であることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る管ネジ継手の好適態様をいくつか列挙すると次の通りである:
・挿入面隙間が0.01mm以上である。
・挿入面隙間が0.3mm以下である。
【0027】
・雄ネジ部と雌ネジ部の少なくとも一方のネジ山について、その挿入面が谷部側の第1部分とネジ山頂面側の第2部分の2部分からなり、第1部分より第2部分の方が、継手管軸との垂線に対する平均傾斜角度が大きい。
【0028】
・前記挿入面の第1部分が、管長手方向断面が実質的に直線となる面(略円錐面など)であり、その第2部分が、管長手方向断面が実質的に直線となる面、バルジ面、または凹曲面である。
【0029】
・第1部分の継手管軸垂線に対する傾斜角度が5°〜25°の範囲内である。
・第2部分の継手管軸垂線に対する平均傾斜角度が20°〜70°の範囲内である。
・雄ネジ部と雌ネジ部の一方のネジ山が上記第1および第2部分を有する挿入面を備え、この一方のネジ部のネジ山の第1部分の管軸垂線方向に対する傾斜角度が他方のネジ部のネジ山の挿入面の傾斜角度と同一である。
【0030】
・前記挿入面の第1部分の半径方向高さとネジ部の嵌合ネジ山の展開ネジ山長さとの積が、締結される管本体の公称断面積と継手の当接ショルダ面の断面積との差より大きい。
・各ネジ山の頂面および谷部が管ネジ継手(従って、管軸)の軸方向に平行である。
【0031】
・嵌合ネジ山の荷重面の継手管軸垂線方向に対する傾斜角度が−5°〜+5°の範囲内である。
・雄ネジ部と雌ネジ部の少なくとも一方のネジ山について、そのネジ山の荷重面が谷部側の第3部分とネジ山頂面側の第4部分の2部分からなり、第4部分の方が第3部分より、継手管軸との垂線に対する平均傾斜角度が大きい。
【0032】
・第4部分が、管長手方向断面が実質的に直線となる面またはバルジ面のいずれかである。
・ピンとボックスのそれぞれがショルダ面とネジ部との間にメタルシール面を備える。
【0033】
・該メタルシール面がネジ部近くに配置されている。
・ピンとボックスのそれぞれが、メタルシール面とショルダ面との間に、ピンとボックスとが互いに接触しない非接触領域を有する。
【0034】
本発明によれば、管ネジ継手において当接する端面ショルダ面を有する方の部材における嵌合ネジ部と端面ショルダ面との間の部分、すなわち、リップ部の長さを、ネジ部の挿入面隙間の140倍以上、好ましくは160倍以上とすることにより、ネジ山挿入面(ピンまたはボックスの挿入面上部を面取り等により除去した場合は残りの挿入面有効部分)が耐圧縮性能に有効に寄与し、管ネジ継手の耐圧縮性能が向上する。
【0035】
また、挿入面隙間を一定範囲に制御することにより、ネジ継手の締結時の締め込み力のばらつきを低減させることができる。さらに、ネジ山の形状、特に頂面と谷部の方向や挿入面の形状と挿入面側のチャンファ(面取り)形状に工夫を加えることにより、自動化が進んでいる竪型状態での現場での締結作業といった限定締結作業時における挿入角度ずれによるトラブルや不当噛み込みを軽減することができ、締結作業が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の管ネジ継手は、カップリング方式とインテグラル方式のいずれの管ネジ継手にも適用することができる。カップリング方式の場合、典型的にはピンがパイプ両端に、ボックスがカップリングの両側に形成されるが、逆の組み合わせとすることも可能である。
【0037】
本発明のネジ継手の基本概念を、図4および5を参照して説明する。図4に略図で示すように、一般に管ネジ継手におけるピンは、相手方の雌ネジと嵌合する雄ネジを備えたネジ部(図中ではネジ嵌合部)と、それより先端側の嵌合ネジのないリップ部とから構成される。ピン先端の横断面方向端面はトルクショルダ面として機能する端面ショルダ面である。対応して、ボックス2は、先端側に相手方の雄ネジと嵌合する雌ネジを備えたネジ部と、それより内部側に嵌合ネジを持たない略円筒面を有する。ボックス最内部の横断面方向表面は、ピンの端面ショルダ面と当接するトルクショルダ面である。
【0038】
ピンとボックスの互いに当接するショルダ面は、図示のように、ピンの端面ショルダ面とそれに相対するボックスのショルダ面であることが多い。しかし、インテグラル方式の継手の場合には、雄ネジが形成されたピン側の管端の端面面積が、雌ネジが形成されたボックス側の管端の端面面積より小さくなることがある。その場合には、ボックスの管端面をトルクショルダ面とすることが、耐圧縮性能が高くなるので有利である。
【0039】
従って、本発明において、リップ部とは、ネジ継手を締結時にトルクショルダ面となる端面ショルダ面を有するネジ継手部材(ピンまたはボックス)における該継手部材の嵌合ネジ部より先端側の部分を意味する。
【0040】
ピンとボックスのネジ部のネジ山は互いに嵌合する。但し、ネジ山はその全長にわたって嵌合する必要はない。図1(B)に示したように、ネジ山の一方または両方の端部、特にボックス先端付近のネジ山は相手ネジ山と嵌合していなくてよい。また、図3に示すように、ピンの外面の嵌合ネジ部とリップ部との管の部分に非嵌合の雄ネジ山を追加することができる。こうすると、外圧に対するピンの剛性を高めることができる。本発明では、端面ショルダ面を有する部材(ピンまたはボックス)のネジ部の先端に近い側の端部に設けた非嵌合のネジ山の部分はリップ部に含める。
【0041】
本発明においては必須ではないが、典型的には、メタルシール部を有する。例えば、ピンのリップ部の外表面とボックスのネジなし略円筒内面は、図3に示すように、互いに当接してメタルシール面13,23を形成する部分を有している。このメタルシール面は、図示するように、リップ部のうちネジ部に近い領域に設けることが、耐圧縮性能を確保する上で好ましい。やはり本発明において必須ではないが、図3に示すように、リップ部において、メタルシール面13,23とショルダ面14,24との間に、ピンとボックスの略円筒状の円周面が互いに接触しない非接触領域を設けることが好ましい。WO2004/109173号に記載されているように、このリップ部における非接触領域は、この部分の耐圧縮性能をさらに向上させることができる。また、ショルダ部の両側のピンとボックスの内面を、図3に示すように除去して面取り部16,26を形成してもよい。それにより、ショルダ部における管内の真円性を確保して乱流発生を防止することができる。
【0042】
図5は、管ネジ継手の長手方向の断面における継手のネジ山を略式で示す。説明を容易にするため、ネジ山は角の面取りが全くない状態で示す。図2に関して既に説明したように、ピンおよびボックスの各嵌合ネジ山は、頂面、ピンの挿入方向において後方側のネジ山側面である荷重面、およびピンの挿入方向において前方側のネジ山側面である挿入面を備え、隣接するネジ山側面の間はネジ底部により離間されている。図5に示すように、ピンの雄ネジとボックスの雌ネジの荷重面同士が互いに当接している状態で雄ネジ山と雌ネジ山の挿入面同士の間にできる長手方向(軸方向)の隙間が(ネジ山)挿入面隙間である。図示のように、雄ネジ山の頂面と雌ネジ山の谷部との間にも隙間がある。これらの隙間は焼付きを生ずることなくねじ込みを行うのに必要である。
【0043】
図5では、雄ネジと雌ネジの挿入面が互いに平行であって、挿入面隙間は挿入面全体にわたって一定である例を示している。
本発明では、端面ショルダ面を有する方のネジ継手の部材(ピンまたはボックス)において、この端面ショルダ面とこの端面ショルダ面に最も近接した嵌合ネジ山の荷重面との間の軸方向(長手方向)の距離(この距離は実質的にリップ部の長さに相当するので、以下ではリップ長さともいう)が、挿入面隙間の140倍以上、好ましくは160倍以上である。図3に示したように、ネジ部(図示例ではピンのネジ部)がショルダ面14に近い側の端部に非嵌合のネジ山を有している場合には、この非嵌合のネジ山部分の軸方向長さ、すなわち、図3のボックス側に設けた円周グルーブ32の軸方向長さはリップ長さに含まれる。
【0044】
上述したように、管ネジ継手の相手側のショルダ面と当接する端面ショルダ面を有する部材は、典型的にはピンである。この場合、ピンのリップ長さが挿入面隙間に対して上記要件を満たすようにする。しかし、上述したように、特にインテグラル方式の管ネジ継手では、この端面ショルダ面がボックス側に位置することもある。その場合には、ボックスのリップ長さが上記条件を満たすようにする。管ネジ継手のピンとボックスの両方が端面ショルダ面、従ってリップ部を有する場合には、ピンとボックスの少なくとも一方のリップ長さが上記要件を満たすようにする。
【0045】
圧縮荷重下では、ネジ継手のリップ部の歪みが弾性領域内にとどまりながらネジ山の圧縮が寄与する必要がある。リップ長さが挿入面隙間の140倍以上、好ましくは160倍以上あると、外部圧力によりネジ継手が管軸方向に圧縮を受けてもリップ部の塑性変形が始まらずに、弾性領域内に保持された状態にてネジ部の挿入面が耐圧縮性に寄与できるため、管ネジ継手の耐圧縮性能が著しく向上する。
【0046】
挿入面隙間は好ましくは0.01mm(=10μm)以上、かつ0.3mm(=300μm)以下である。挿入面隙間が0.01mmより小さいと、隙間が小さすぎて、ネジ継手の締結作業が不安定となり、焼付きが発生し易くなる。一方、挿入面隙間が0.3mmより大きいと、隙間が大きすぎて、外圧の侵入が容易となり、リップ部への外圧負荷が大きくなる。図5に示すように、雄ネジ山の頂面とこれに嵌合した雌ネジ山の谷部との間にも継手半径方向の隙間がある。この半径方向の隙間の大きさは特に制限されるものではないが、通常はネジ山高さの公差を考慮しても十分な隙間ができるように設計される。
【0047】
少なくとも一方のネジ山(好ましくは図6〜9に示すように、ピンの雄ネジ山)において、その挿入面が谷部側の第1部分とネジ山頂面側の第2部分の2部分からなり、第1部分より第2部分の方が、長手方向管軸との垂線に対する平均傾斜角度が大きい(つまり、第2部分の方が第1部分より傾斜がきつい)ことが好ましい。それにより、次に説明するように、十分な耐圧縮性能を保持しながら、現地でのネジ継手の締結作業を容易にすることができる。
【0048】
一般に管ネジ継手の嵌合ネジ部の全ネジ山高さ(ネジの谷部から頂面までの半径方向高さ)は、引張荷重下において継手強度がパイプ本体強度以上になるように設計されている。一方、圧縮荷重下では当接するショルダ面も同時に荷重を支える。従って、当接ショルダ面の断面積による寄与分だけ、ネジ山で引き受ける荷重は小さくなる。すなわち、引張荷重下に比べて圧縮荷重下では、荷重支持に必要なネジ山高さは小さくなる。引張荷重は図5に示すように継手の荷重面同士が当接する状態において継手嵌合ネジ山の荷重面で支持されるのに対し、圧縮荷重は、図示しないが、継手の挿入面同士が当接する状態において嵌合ネジ山の挿入面により支持される。そのため、ネジ山の挿入面の側ではネジ山高さに余裕があることになる。
【0049】
当接するショルダ面と嵌合ネジ部を有する管ネジ継手では、これらの両方が耐圧縮性能に寄与し、圧縮荷重を受けることができる。このような管ネジ継手では、管ネジ継手の圧縮率はパイプ本体の半径方向断面に対する継手の圧縮受容表面の横断も半径方向の合計断面の比によって表すことができる:
圧縮率(%)={[(ネジ山累積投影断面積+当接ショルダ面断面積)]/(パイプ本体断面積)}×100。
【0050】
当接ショルダ面の断面積は典型的にはパイプ本体の断面積の約40〜50%である。従って、パイプ本体の降伏強度に相当する圧縮荷重を管ネジ継手に負荷した圧縮率100%の状態でも、挿入面のネジ山高さが全ネジ山高さの50〜60%以上あれば継手は圧縮荷重に耐えられる。従って、挿入面の谷側の第1部分に、圧縮荷重の支持に必要なだけの高さ(例えば、全ネジ山高の50〜60%)を確保すれば、残りの頂面側の第2部分については、圧縮荷重に寄与することができない、より大きな傾斜角度とすることができ、そのようにしても十分な耐圧縮性能が達成されうる。
【0051】
管ネジ継手の耐圧縮性(圧縮性能)に関して、従来から、リップ部先端に配置された端面ショルダ面の塑性変形が起こることが圧縮性能を失う主原因であると考えられてきたため、パイプ本体の断面積に対する端面ショルダ面の断面積の比率が重要な因子であった。本発明では、リップ部の変形がまだ弾性領域にある間にネジ山挿入面が接触開始することから、管ネジ継手の圧縮性能は当接ショルダ面の断面積と嵌合(有効)ネジ山挿入面(これは上述した挿入面の第1部分に相当する)の累積投影断面積との総和によって支配される。ネジ山挿入面における圧縮率に寄与する挿入面第1部分の高さはこのようにして求めることができる。
【0052】
例えば、ピンの雄ネジ山の面取りされた挿入面の第1部分の半径方向高さは、この第1部分の半径方向高さと嵌合ネジ山(互いに嵌合しているピンおよびボックスのネジ山)の展開ネジ山長さとの積が、締結される管(パイプ)本体の公称断面積と継手の当接ショルダ面の断面積との差より大きくなるように設定することが好ましい。それにより、継手は、前述した圧縮率100%の圧縮荷重に耐えることができる耐圧縮性能を確保することができる。パイプ本体の断面積とは、無論、パイプ肉厚部分の半径方向断面の断面積を意味する。ネジ継手が2以上の部位において当接ショルダ面を有する場合には、当接ショルダ面の断面積は2以上の部位の断面積の合計である。
【0053】
挿入面の第2部分には、現地締結作業性を配慮した形状に最適化した面取り(チャンファ)形状を付与することによって、第1部分により達成される優れた圧縮性能を保持しながら現地での容易な締結作業を実現することが可能となる。
【0054】
一方の継手部材(例、ピン)のネジ山の挿入面の第1部分は、この第1部分における挿入面隙間が一定となるように、他方の部材のネジ山の挿入面と平行にして、継手締結時にこの挿入面の第1部分が他方の部材のネジ山の挿入面と均一に接触できるようにする。従って、このネジ山挿入面の第1部分と他方の部材のネジ山挿入面はいずれも略円錐面とすることが好ましい。
【0055】
ここで、略円錐面とは、長手方向断面(管軸方向断面)が実質的に直線からなる面を意味する。より具体的には、略円錐面は、少なくとも高さの50%以上、好ましくは80%以上の部分が円錐、すなわち、管軸方向断面が直線からなる面であることを意味する。従って、略円錐面は、上端および/または下端が小さく丸みづけされている場合をも包含する。
【0056】
第1部分より大きな傾斜角度を有する挿入面の第2部分は面取り部である。この面取りは現地締結作業時にボックスへのピンの挿入を容易にする。第2部分の面取りは、図6に示すような管軸方向断面が直線的となる面取り(略円錐面)でもよく、或いは図7に示すような該断面が円弧状になる面取り(凸曲面であるバルジ面もしくは凹曲面)でもよい。図7はバルジ面の例である。また、面取りは以上の組み合わせ形状とすることもできる。
【0057】
挿入面の第1部分が略円錐形状である場合、この面の管軸垂線に対する傾斜角度は5°〜25°の範囲内とすることが好ましい。面取り部である第2部分は、面取り形状がいずれであっても、管軸垂線に対する平均傾斜角度は、図8に示すように、20°〜70°の範囲内とすることが好ましい。
【0058】
前述したWO92/15815号お米国特許第6322110号に記載された管ネジ継手では、雄ネジ山の挿入面頂部付近を面取りするだけでなく、雌ネジ山の対応箇所にも相応した形状を付与している。従って、雌ネジ山も傾斜角度が異なる2部分を有する。本発明においては、図示6〜8に示すように、雌ネジ山の挿入面には必ずしも雄ネジ山の面取りに応じた形状を付与する必要はない。
【0059】
雄ネジ山と雌ネジ山のすべてにおいて、ネジ山の頂面および谷部が管軸方向に平行であることが好ましい。すなわち、管ネジ継手のピンおよびボックスのネジ部はテーパネジの形態であるが、各ネジ山の頂面および谷部は、テーパ傾斜に平行とするのではなく、管軸に平行とすることが好ましい。こうすると、現地締結作業時に挿入角度ずれによるトラブルが低減する。
【0060】
ピンとボックスのネジ山の荷重面については、管軸垂線方向に対する角度が−5°〜+5°の範囲内とすることが好ましい。ここで、荷重面の傾斜角度が「−」であるとは、例えば、図5〜9に示すように、荷重面が図において管軸垂線方向より左側に傾いていることを意味する。
【0061】
荷重面についても、ピンとボックスの少なくとも一方のネジ山、好ましくはピンの雄ネジ山において、図6〜9、特に図9に示すように、荷重面が谷部側の第3部分とネジ山頂面側の第4部分の2部分からなることが好ましい。第4部分は第3部分より、管軸との垂線に対する平均傾斜角度が大きい(プラス側である)。その場合、荷重面の第3部分は好ましくは略円錐面であり、その傾斜角度は好ましくは−5°〜+5°の範囲内である。第4部分は、図示のような略円錐面でもよく、あるいはバルジ面とすることもできる。
【0062】
この荷重面の第4部分も、現地締結作業におけるピンのボックスへの挿入を容易にする1種の面取りである。引張荷重は荷重面だけで引き受け、ショルダ面による引張力への抵抗への寄与がない。従って、雄ネジ山と雌ネジ山が当接する部分の面積は、挿入面(その第1部分)に比べて荷重面(その第3部分)ではより大きくする必要がある。そのため、荷重面の第4部分は、挿入面の第2部分に比べて小さな高さとし、引張性能に寄与する荷重面の第3部分に十分な面積を残すことが好ましい。この理由から、第4部分の高さはネジ山高さの約20%以下とすることが好ましい。
【0063】
ピンとボックスはそれぞれ、ショルダ面と嵌合ネジ部との間に、すなわち、リップ部に、メタルシール面を備えることが好ましい。本発明においては、リップ長さが、ネジ山の挿入面隙間の140倍以上と、従来に比べてかなり長くなる。その場合、メタルシール面がリップ部の全体に設けられていると、締結作業時に焼付きが発生し易くなるので、リップ部の一部の領域、好ましくはネジ部近くの領域に配置されることが好ましい。メタルシール部の長さは、リップ長さの25%以下であることが好ましい。
【0064】
また、ピンとボックスのそれぞれが、メタルシール面とショルダ面との間に、互いに接触しない非接触領域を有することが好ましい。メタルシール面とショルダ面との間にこのような非接触領域を設けることによって、リップ部の長さを長くすることができ、圧縮荷重負荷時にリップ部分が弾性ひずみの領域にある間にピンとボックスのネジ部挿入面の接触により圧縮荷重を支持することが可能となり、メタルシール面を含むリップ部が圧縮による塑性変形に強いデザインとなる。
【0065】
この非接触領域は、図3に示されているような、ピンとボックスのいずれもネジ山を持たない部分であっても、あるいはピンとボックスの一方の部材がネジ山を持つ非嵌合ネジ部であっても、その両者であってもよい。この非接触領域の長さは、好ましくは、リップ長さの15%以上であることが好ましい。さらに、いずれの部材もネジ山を持たない非接触領域長さは、そのうちの33%以内とすることが好ましい。
【0066】
上述した挿入面隙間とリップ長さの関係、ならびに少なくとも一方、好ましくはピンの嵌合ネジ山の挿入面や荷重面の好ましい形状以外についての管ネジ継手の形状、構造は、特に制限されない。例えば、ショルダ部とメタルシール面は一カ所に限られるものではなく、図10に示すように、ボックス2の先端側に第2のショルダ部33を設けたり、或いは図11に示すように、ボックス2の先端付近の位置で両部材に第2のメタルシール面34を設けることができる。また、図12に示すように、パイプ及び/又はカップリングの継手部付近をスウェッジまたは肉盛り加工により厚肉化してもよい。
【0067】
特に図10に示すように、端面ショルダ面を有するリップ部がボックスとピンの両方の先端に設けられている場合は、換言すると、管ネジ継手が継手締結時にトルクショルダ面として機能する端面ショルダ面をそれぞれ有する2つのリップ部を有する場合は、本発明で規定するリップ長さと挿入面隙間との関係は少なくとも一つのリップ部について満たされればよい。
【実施例1】
【0068】
本発明の効果を明確に実証するため、表1に示した供試体に対して圧縮負荷を印加した後のリップ部変形の調査を実施した。
表1に示した供試体はいずれも、図3に示したようなカップリング方式の油井管用ネジ継手であって、9.625”×53.5(lb/ft)鋼管(外径244.5mm、肉厚13.84mm)に対して使用するものであった。全ての供試体に使用した鋼材はAPI規格でP110と規定されるものであった。ショルダ面はピン端部に位置する端面ショルダ面と対応するボックス側のショルダ面だけであった。リップ部は、その外周面に、ネジ部に近接したメタルシール面(長さ5.5mm)と、その先端側の非接触領域とを有していた。図3とは異なり、ネジ部の先端側端部に非嵌合のネジ山は設けなかった。
【0069】
ネジ形状は、テーパ(1/18)、雄ネジ高さ74(1.3mm)、ネジピッチ(5.08mm)、挿入面傾斜角度72(10°)および荷重面傾斜角度71(−3°)については、すべての供試体に対して同一とした。雄ネジ山と雌ネジ山のいずれも、挿入面と荷重面の面取りは図2に示すような最小の丸み付けにとどめ、挿入面が実質的に1部分のみからなるようにした。挿入面隙間(Stab隙間)73と継手のリップ部の長さを表1に示すように変動させた。
【0070】
締め付けは、いずれの供試体も、ピンとボックスのショルダ面が接触直後に停止した。結果を表1および図13に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1および図13の結果からわかるように、リップ長さが挿入面隙間の140倍以上であるという本発明の要件を満たすと、100%の圧縮力を負荷した場合でもリップ部は塑性変形を起こさず、弾性変形にとどまっていて、耐圧縮性能に優れていた。
【実施例2】
【0073】
実施例1と同様の評価試験を行ったが、本例では、ピンの雄ネジ山の挿入面が互いに傾斜角度の異なる谷側の第1部分と頂面側の第2部分とに別れていた。本例では、解析を単純にするため、図6および8に示すように、挿入面の第1部分と第2部分のいずれも円錐面(すなわち、管軸方向に沿った長手断面では実質的に直線状)となるようにした。挿入面の傾斜角度は第1部分が10°、第2部分が45°であった。リップ長さ/挿入面隙間の比率は200であった(挿入面隙間0.1mm、リップ部長さ20mm)。挿入面の第1部分の高さを変化させて、挿入面の全ネジ山高さに対する第1部分の高さの比(表2のネジ山挿入面高さ比)を表2に示すように変化させた。また、リップ部の先端の直径、すなわち、ピンのためショルダ面の面積を変化させて、パイプ本体(母管)の断面積に対する当接ショルダ面断面積および嵌合(有効)挿入面の累積断面積(=雄ネジ山の挿入面の第1部分のネジ山高さと嵌合ネジ山の展開ネジ山長さとの積)の比率を表2の断面積比の欄に示すように変化させた。この表において、条件7、8、9は、ピン先端をスウェッジ加工により厚肉化して、ショルダ部の先端の断面積を増大させた。
【0074】
解析は、締め付けた状態の各供試体に、パイプ本体の降伏強度(すなわち、前述した式で算出される弾性圧縮率)の100%に相当する圧縮荷重およびAPIにて規定された外圧を負荷した後のリップ部の状況(変形または破壊)により評価した。結果を表2および図14に示す。表2には、当接ショルダ面の断面積および嵌合挿入面の累積断面積を、いずれも該ネジ継手で締結されるパイプ本体の公称断面積に対する比率(%)で示してある。従って、締結されるパイプ本体の断面積は100%である。
【0075】
【表2】
【0076】
表2および図14からわかるように、ネジ山の嵌合挿入面の累積断面積が、パイプ本体(管本体)の公称断面積(100%)と端面ショルダ面の断面積との差より大きい、すなわち以下の関係が成り立つ場合に、ネジ継手の圧縮性能はパイプ本体の圧縮性能を上回り、リップ部の変形が起こらないという結果が得られた。
【0077】
[嵌合挿入面累積断面積]>[管本体の公称断面積]−[当接ショルダ面断面積]
以上に本発明を好適態様について説明したが、それらの態様は例示にすぎず、本発明を制限するものではない。請求の範囲に記載された本発明の範囲を逸脱せずに上記態様について各種の変更をなすことができることは当業者には自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1(A)はプレミアムジョイントと呼ばれる従来の一般的なカップリング方式の管ネジ継手の模式的説明図であり、図1(B)はその部分拡大図である
【図2】API規格のバットレスネジに代表される台形ネジの形状と寸法を説明する模式図である。
【図3】リップ部を延長し、メタルシール面の先方に非接触領域を設けた、本発明を適用するのに適した管ネジ継手の模式的断面図である。
【図4】管ネジ継手の各部を示す全体説明図である。
【図5】管ネジ継手のピンおよびボックスのネジ部の(長手)軸方向の断面形状を示す説明図である。
【図6】ピンの雄ネジの挿入面が互いに傾斜角度の異なる2つの部分を有する態様の説明図である。
【図7】図6に示した態様の変更例を示す説明図である。
【図8】図6と同様の態様の説明図である。
【図9】図6と同様の態様について、ピン(雄)ネジ山の挿入面と荷重面の各部に関する説明図である。
【図10】第2のショルダ面をボックス端面に併せ持つ態様を説明する模式的断面図である。
【図11】第2のメタルシール面をボックス端部位置に併せ持つ別の態様を説明する模式的断面図である。
【図12】スウェジ加工により管端の肉厚を増大させたピン部材を備えた態様示す模式図である。
【図13】実施例の結果を示すグラフである。
【図14】別の実施例の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0079】
1:ピン、2:ボックス、11:雄ネジ部、12:リップ部、13:ピンのメタルシール面、14:端面ショルダ面、21:雌ネジ部、23:ボックスのメタルシール面、24:ボックスのショルダ面、71:ネジ山の荷重面角度、72:ネジ山の挿入面角度、72:ネジ山の挿入面隙間
Claims (16)
- 第1管状部材の端部に設けた雄ネジ要素であるピンと第2管状部材の端部に設けた雌ネジ要素であるボックスとから構成される管ネジ継手において、ピンとボックスはそれぞれネジ部および少なくとも1つのトルクショルダ面を備え、ピンの雄ネジ部はボックスの雌ネジ部に嵌合し、ピンの少なくとも1つのトルクショルダ面はボックスの少なくとも1つのトルクショルダ面と管軸方向に当接し、該当接するトルクショルダ面の一方は、その部材の横断面方向端面を構成する端面ショルダ面であり、雄ネジ部および雌ネジ部のネジ山はそれぞれ、頂面、荷重面および挿入面を備え、かつ谷部により離間している略台形形状のネジ山である管ネジ継手であって、
該端面ショルダ面を有する部材における端面ショルダ面と端面ショルダ面に最も近接した嵌合ネジ山の荷重面との間の軸方向距離であるリップ長さが、嵌合ネジ部における雄ネジ山の荷重面が雌ネジ山の荷重面に当接している時の雄ネジ山の挿入面と雌ネジ山の挿入面との間の軸方向隙間距離である挿入面隙間の140倍以上であり、少なくとも一方のネジ山において、その挿入面が谷部側の第1部分とネジ山頂面側の第2部分の2部分からなり、第1部分より第2部分の方が、管軸との垂線に対する平均傾斜角度が大きく、さらに第1部分が他方の部材のネジ山の挿入面と平行であることを特徴とする管ネジ継手。 - 前記リップ長さが挿入面隙間の160倍以上である、請求項1に記載の管ネジ継手。
- 前記挿入面隙間が0.01mm以上である、請求項1または2に記載の管ネジ継手。
- 前記挿入面隙間が0.3mm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の管ネジ継手。
- 第1部分が略円錐面であって、第2部分が略円錐面、バルジ面、または凹曲面である、請求項1〜4のいずれかに記載の管ネジ継手。
- 第1部分の管軸垂線に対する傾斜角度が5°〜25°の範囲内である、請求項5に記載の管ネジ継手。
- 第2部分の管軸垂線に対する平均傾斜角度が20°〜70°の範囲内である、請求項5または6に記載の管ネジ継手。
- 一方のネジ山だけが2部分を有する挿入面を備え、この一方のネジ山の第1部分の管軸垂線方向に対する傾斜角度が他方のネジ山の挿入面の角度と同一である、請求項4〜7のいずれか1項記載の管ネジ継手。
- 第1部分の半径方向高さと嵌合ネジ山の展開ネジ山長さとの積が、締結される管本体の公称断面積と継手の当接ショルダ面の断面積との差より大きい、請求項4〜8のいずれか1項に記載の管ネジ継手。
- ネジ山頂面および谷部が管軸方向に平行である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の管ネジ継手。
- 荷重面の管軸垂線方向に対する角度が−5°〜+5°の範囲内である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の管ネジ継手。
- 少なくとも一方のネジ山において、その荷重面が谷部側の第3部分とネジ山頂面側の第4部分の2部分からなり、第4部分より第3部分の方が、管軸との垂線に対する平均傾斜角度が大きい(プラス側である)、請求項1〜11のいずれか1項に記載の管ネジ継手。
- 第4部分が略円錐面またはバルジ面のいずれかである請求項12に記載の管ネジ継手。
- ピンとボックスのそれぞれが、ショルダ面とネジ部との間にメタルシール面を備える、請求項1〜13のいずれか1項記載の管ネジ継手。
- 該メタルシール面がネジ部近くに配置されている、請求項14に記載の管ネジ継手。
- ピンとボックスのそれぞれが、メタルシール面とショルダ面との間に、互いに接触しない非接触領域を有する、請求項14または15に記載の管ネジ継手。
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