JP4924596B2 - 密閉型圧縮機 - Google Patents

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Description

本発明は、主に電気冷凍冷蔵庫などの冷凍サイクルに使用される圧縮機に関するものである。
従来、この種の密閉型圧縮機は省スペースの観点から小型化されているものがある(例えば、特許文献1参照)。また、高効率化の観点からシャフトのスラスト部に転がり軸受を設けたものがある(例えば、特許文献2参照)。
以下、図面を参照しながら従来の密閉型圧縮機を説明する。
まず、特許文献1に記載された従来の圧縮機を説明する。
図10は特許文献1に記載された従来の圧縮機の縦断面図、図11は図10の要部拡大図である。
図10および図11において、密閉容器1内には、潤滑油2が貯留されている。圧縮機本体4は、固定子12と回転子14を備える電動要素10と、電動要素10の上方に配置される圧縮要素20とからなり、サスペンションスプリング6で支持されて、密閉容器1内に収容されている。ここで電動要素10は、突極集中巻き方式のDCブラシレスモータを構成しており、固定子12は鉄心の磁極歯に絶縁材を介して巻線を直接巻回して形成される。密閉容器1は、ターミナル8を備えており、リード線9により、電動要素10と接続されている。
圧縮要素20を構成するシャフト21は、主軸22と、主軸22に対して偏心して形成された偏心軸24を有している。シリンダブロック26は、略円筒形のシリンダ30と、主軸22を軸支する軸受部27を有している。また、軸受部27の上端面がシャフト21のフランジ部21aと当接して、スラスト滑り軸受けを形成している。
軸受部27はシリンダブロック26と一体に形成され、軸受部27は周囲の支持部27aにより支持されている。ピストン28はシリンダ30に往復自在に挿入され、シリンダ30の端面に配設されるバルブプレート32とともに圧縮室34を形成する。また、ピストン28は、偏心軸24と連結手段36によって連結されている。吸入マフラ39は、バルブプレート32とシリンダヘッド38に挟持されることで固定されている。
さらに、固定子12は、回転子14とほぼ一定の隙間を保つように、回転子14の外径側に配置され、シリンダブロック26の脚部26aに固定されている。回転子14の上端とシリンダブロック26の支持部27aとの隙間はHであり、シリンダブロック26の軸受部27の長さはL、シリンダブロック26の支持部27aの厚みはD、スリーブ46とシャフト21の接触幅はWである。
以上のように構成された密閉型圧縮機について、以下その動作、作用を説明する。
電動要素10に通電されると、固定子12に発生する磁界により回転子14はシャフト21とともに回転する。主軸22の回転に伴い、偏心軸24は偏心回転し、この偏心運動は連結手段36を介して往復運動に変換され、ピストン28をシリンダ30内で往復運動させることで密閉容器1内の冷媒を圧縮室34内に吸入し、圧縮する圧縮動作を行う。
また、シャフト21下端は潤滑油2に浸漬しており、シャフト21が回転することにより、潤滑油2は給油機構64により圧縮要素20各部に供給され、摺動部の潤滑を行う。ピストン28が冷媒を圧縮する際、ピストン28にかかる圧縮荷重は、連結手段36を介して偏心軸24に作用し、最終的に主軸22と軸受部27によって受け止めている。
圧縮荷重に対して主軸22と軸受部27にかかる面圧、すなわち単位面積当りに作用する荷重が極端に大きくならないようにしなければ主軸22や軸受部27が摩耗してしまうので、圧縮荷重を受け止めるために必要な軸受部27の長さLは必然的に決まってしまうが、軸受部27の長さLを十分確保しているので、圧縮荷重に耐えることが出来、異常な摩耗は発生しない。
また、圧縮機の高さを低くするために、シリンダブロック26の脚部26aを短くして固定子12を脚部26aに取り付けている。また、シリンダブロック26の支持部27aの厚みDを小さくするとともに、回転子14の上端とシリンダブロック26の支持部27aとの隙間Hを小さくして、圧縮要素20と電動要素10を近接して配置している。その結果圧縮機の高さを低くすることが出来る。さらに、電動要素10に突極集中巻き方式を採用しているため、巻線の飛び出し高さを抑えることが可能になり、その結果、圧縮機の高さを低くすることができる。
次に、特許文献2に記載された従来の圧縮機を説明する。尚、特許文献1と同一構成については同符号を付して、詳細な説明を省略する。
図12は特許文献2に示された従来の転がり軸受を用いた圧縮機の断面図である。図13は図12の要部拡大図である。図14は特許文献2で用いた支持部材の形状を示した斜視図である。
図12から図14において、軸受部27は、軸心と直角な平面部であるスラスト面60と、スラスト面よりさらに上方に延長され、主軸22に対向する内面を有する管状延長部62を有している。
そして、管状延長部62の外周側に、上レース92、転がり軸受90、下レース93、および支持部材95が配置されている。
上レース92および下レース93は環状で金属製の平板で、上下の面が平行である。
支持部材95は、環状の金属の平板に下側の突起95f,95gと、上側突起95h,95iを設けたものである。これらの突起は同じ半径の曲面で形成され、上側と下側の頂点をそれぞれ結ぶ線が直角になるように配置されている。
そして、スラスト面60の上に、支持部材95、下レース93、転がり軸受90、上レース92の順に互いに接した状態で積み重なり、上レース92の上面にシャフト21のフランジ部が着座している。そして、支持部材95は、下側の突起95f,95gが線接触の状態でスラスト面60と接し、上側突起95h,95iが線接触の状態で下レース93と接している。転がり軸受90はボール91が上レース92と下レース93に点接触の状態で転がる軸受であり、シャフト21や回転子14の自重などの垂直方向の荷重を支持しながら回転が可能である。
このように、管状延長部62の外周側に、上レース92、転がり軸受90、下レース93、および支持部材95が縦に積み重なっているため、シリンダブロック26にはこれらを収納するための上下方向の空間が確保されている。
以上のように構成された密閉型圧縮機において以下その動作を説明する。
転がり軸受90は、一般的に用いられている滑り軸受の形式のスラストベアリングと比べ摩擦が少なく、近年高効率化を目的に採用されることが増えてきている。一方、ボール91は、上レース92と下レース93と点接触をしているため、接触点での面圧は非常に高く、接触荷重が数倍程度大きくなることで、塑性変形を生じる場合があるため、接触荷重が過大となることを防止する必要がある。
片持ち軸受の構成では、シャフト21は圧縮による荷重などにより、主軸22と軸受部27の隙間の範囲でわずかに傾斜することが避けられず、このようなわずかな傾斜によっても、ボール91と上レース92および下レース93の接触が不均一となりうるが、支持部材95により、これに着座する下レース93は任意の方向に傾斜可能であり、上レース92と下レース93は平行な状態を維持する調心機能の効果により、各ボール91へ作用する荷重を均等にすることができ、一部のボール91に大きな荷重が作用することによる寿命の低下を防止できる。
特開2007−132261号公報 特表2005−500476号公報
しかしながら、上記従来の構成では、転がり軸受90の下側に調心機能を有する支持部材95を配置するためにシリンダブロック26の一部を切り欠く必要があり、シリンダブロック26の剛性を低下させてしまい、また、全高が低い密閉型圧縮機では支持部材95を配置できないという課題を有していた。
本発明は上記従来の課題を解決するもので、シリンダブロック26の剛性の低下を抑えながら、調心機能を有する支持部材95を配置可能にして、小型で高い性能および信頼性を備えた密閉型圧縮機を提供することを目的とする。
上記従来の課題を解決するために、本発明の密閉型圧縮機は、軸受部のスラスト面に配設された支持部材を備え、支持部材はスラスト面に平行な略同一平面上に配置された外周部材と中間部材および内周部材と、中間部材に対して外周部材が傾斜可能に連結する外連結部と、中間部材に対して内周部材が外周部材の傾斜方向と異なる方向に傾斜可能に連結する内連結部とを備えたもので、略同一平面上にスラスト軸受の平行を維持するという作用を有する。
本発明の密閉型圧縮機は、支持部材により略同一平面上に調心機能を持たせたので、シリンダブロックの軸受部の剛性の低下を抑えながらスラスト軸受の平行を維持することが可能で、小型で高い性能および信頼性を備えた密閉型圧縮機を提供することができる。
請求項1に記載の発明は、密閉容器内に潤滑油を貯溜するとともに、固定子と回転子を備えた電動要素と、前記電動要素によって駆動される圧縮要素を収容し、前記圧縮要素は、前記回転子が固定された主軸部と偏心軸部とを有するシャフトと、圧縮室を備えたシリンダシリンダブロックと、前記圧縮室内で往復運動するピストンと、前記ピストンと前記偏心軸部とを連結する連結手段と、前記シリンダシリンダブロックに設けられ前記主軸部を軸支する主軸受と、前記主軸受のスラスト面に配設された支持部材とを備え、前記支持部材は、前記スラスト面に平行な略同一平面上に配置された外周部材と中間部材および内周部材と、前記中間部材に対して前記外周部材が傾斜可能に連結する外連結部と、前記中間部材に対して前記内周部材が前記外周部材の傾斜方向と前記中間部材に対して前記外周部材と前記内周部材とを異なる方向に傾斜可能に連結する内連結部を備えたもので、支持部材により略同一平面上に調心機能を持たせたので、シリンダブロックの軸受部の剛性の低下を抑えながらスラスト軸受の平行を維持することが可能で、小型で高い性能と信頼性を備えた密閉型圧縮機を提供することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記スラスト面に平行な略同一平面上に配置された外周部材と中間部材および内周部材と、前記中間部材に対して前記外周部材が傾斜可能に連結する外連結部と、前記中間部材に対して前記内周部材が前記外周部材の傾斜方向と直交する方向に傾斜可能に連結する内連結部とを備えたもので、請求項1の発明の効果に加えてさらに、極端に傾斜がしやすい方向や極端に傾斜しにくい方向がなく、組み立て方の違いによって生じる作用効果の違いがなくなり、組立性が向上する。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、外連結部および内連結部は、外周部材と中間部材および内周部材と同一平面上で、かつ支持部材の中心に対して対称位置にそれぞれ1対ずつ配設されたもので、支持部材の中心に作用するスラスト荷重を両側で支えるため、請求項2に記載の発明の効果に加えてさらに、外連結部および内連結部を軽量かつ高剛性にすることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明において、外連結部および内連結部は、一方がスラスト面に当接し他方がシャフトに当接して形成されるか、または、一方がスラスト面に当接し他方が回転子に当接して形成されるもので、請求項2または3の効果に加えてさらに、シャフトと回転子のいずれかのスラスト荷重を受けるので、請求項2または3に記載の発明の効果に加えてさらに、電動要素に対し、圧縮要素が上側の場合も下側の場合もスラスト軸受の平行を維持することが可能になる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、外連結部または内連結部は、支持部材の中心に対して半径方向に延出した1対の腕部で形成されるもので、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明の効果に加えてさらに、少ない部品点数で構成が可能で、高効率化が可能になる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、支持部材が弾性変形することで、前記シャフトの軸方向の荷重に対する弾性力を保持するもので、軸方向の変位が可能になるので、請求項5に記載の発明の効果の効果に加えてさらに、輸送時等に起きる振動によって発生するスラスト軸受への荷重を減衰させることが可能になり、スラスト軸受の破損を防止し、信頼性が向上する。
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の発明において、外周部材、中間部材、内周部材、外連結部、内連結部の全てが、板状の薄板に一体に形成されるもので、請求項5または6に記載の発明の効果に加えてさらに、支持部材の成型が容易で部品点数も少なくなるので、組立性が良好になる。
請求項8に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明において、円筒状の回転軸と前記回転軸を軸支する回転軸支持部で形成されるもので、請求項2または3に記載の発明の効果に加えてさらに、支持部材が傾斜する際の抵抗が少なく、確実な動作性を得ることが可能になる。
請求項9に記載の発明は請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、外連結部または内連結部は、球面と球面を回転自在に支持する球面支持部で形成されるもので、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明の効果に加えてさらに支持部材が傾斜する際の抵抗が少なく、確実な動作性を得ることが可能になる。
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載の発明において、転がり軸受を配置したもので、転がり軸受は摩擦が少ないため、請求項1から9のいずれか一項に記載の発明の効果に加えてさらに、スラストの摺動による損失を低減可能であり、かつスラスト軸受の平行を維持することで、信頼性を向上することができる。
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、外周部材とスラスト面との間に転がり軸受を配設し、支持部材に潤滑油を供給する給油機構を備えているもので、支持部材に付着した潤滑油が遠心力により転がり軸受に供給されるので、請求項10に記載の発明の効果の効果に加え、主軸との間の距離に関係なく転がり軸受への給油が可能になるため、良好な潤滑が維持されるので信頼性が向上する。
請求項12に記載の発明は請求項1から11のいずれか一項に記載の発明において、スラスト面に、シャフトの回転により油膜圧力が発生する動圧機構を形成しているもので、シャフトと支持部材と間に介在する油膜を厚く確保できるので、請求項1から11のいずれか一項に記載の発明の効果に加えてさらに、摺動損失を低減できるとともに摩耗を防止し信頼性が向上する。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の縦断面図、図2は軸受近傍の要部断面図、図3はスラスト軸受の要部断面図、図4は支持部材の上面図である。
図1において、密閉容器101内底部に潤滑油102を貯留するとともに、圧縮機本体104がサスペンションスプリング106により密閉容器101内で内部懸架されている。また、密閉容器101には、温暖化係数の低い冷媒であるR600a(イソブタン)が充填されている。
圧縮機本体104は、電動要素110と、これによって駆動される圧縮要素120とからなり、密閉容器101には電動要素110に電源を供給するための電源端子116が取り付けられている。
まず、電動要素110について説明する。
電動要素110は、薄板を積層した鉄心に銅製の巻線が巻かれて形成される固定子112と、固定子112の内径側に配置される回転子114とを備え、固定子112の巻線が電源端子116を経由して圧縮機外の電源(図示せず)と導線により接続されている。
次に圧縮要素120について説明する。
圧縮要素120は、電動要素110の上方に配設されている。圧縮要素120を構成するシャフト121は、主軸122と、主軸122と平行な偏心軸124を備えている。また、主軸122には回転子114が固定されている。
シャフト121の下端は、密閉容器101底部の潤滑油102に浸漬しており、シャフト121は、主軸122の表面に設けた螺旋溝164aなどからなり、シャフト121の下端から上端に至る給油機構164を備えている。
シリンダブロック126は、円筒形の内面を有する軸受部127を備え、軸受部127に主軸122が回転自在な状態で挿入され、支持されている。そして、圧縮要素120は、偏心軸124に作用した荷重を偏心軸124の下側に配置された主軸122と軸受部127で支持する片持ち軸受の構成になっている。
また、シリンダブロック126は円筒状の穴部であるシリンダ130を備えており、ピストン128がシリンダ130に往復自在に挿入されている。また、連結手段136は、両端に設けた穴部がそれぞれピストン128に取付けられたピストンピン129と、偏心軸124に嵌挿されることで、偏心軸124とピストン128と連結している。
シリンダ130端面にはバルブプレート132が取り付けられ、シリンダ130およびピストン128とともに圧縮室134を形成する。さらに、バルブプレート132を覆って蓋をするようにシリンダヘッド138が固定されている。吸入マフラ139は、PBTなどの樹脂で成型され、内部に消音空間を形成し、シリンダヘッド138に取り付けられている。
次にスラスト軸受について説明する。スラスト軸受とは、回転体の回転軸方向に働く力を受止める軸受である。本実施の形態におけるスラスト軸受は、シャフト121や回転子114に働く重力などによる鉛直下向きの荷重を支持している。
具体的には、図2および図3に示すように、スラスト軸受は支持部材195、転がり軸受190、下レース193によって構成されている。支持部材195は、同心円状の環状部材である外周部材195a、中間部材195b、内周部材195cを備えている。また、外周部材195aと中間部材195bをつなぐ外連結部195dと、中間部材195bと内周部材195cをつなぐ内連結部195eがそれぞれ支持部材195の中心に対して対称の位置に半径方向に延出した1対の腕部を有し、外連結部195dと内連結部195eの腕部の軸が互いに直交した形状のものである。
そして、外周部材195a、中間部材195b、内周部材195c、外連結部195d、内連結部195eの全てが、板状の薄板で一体に形成されている。
支持部材195は、外周部材195a、中間部材195b、内周部材195cを、半径方向の一対の腕部である外連結部195dと内連結部195eで連結することで、それぞれが傾斜可能状態であり、なおかつ軸方向の荷重に対して弾力性を有している。
転がり軸受190は、環状のホルダー189の円周方向に複数設けた穴部に、鋼球で形成されるボール191を転動自在に収納している。
支持部材195の内周部材195cの上面はシャフト121のフランジ部121aの下側に当接している。
さらに、支持部材195の外連結部195dの下側に転がり軸受190が配置され、外連結部195dとボール191が接しており、支持部材195の外周部材195aが上レース192を兼ねている。
さらに、転がり軸受190の下側には下レース193が配置され、ボール191と下レース193が接している。
さらに、下レース193はその下面においてシリンダブロック126と接している。
図3に示すようにスラスト軸受は下レース193、転がり軸受190、支持部材195の順番で構成されており、シリンダブロック126座面から下レース193と転がり軸受190を積み上げた高さh1は、座面から軸受部127の上端127bまでの高さh2よりdだけ高くなるように構成されている。
また、シャフト121の主軸122には、給油機構164の螺旋溝164aから支持部材195の内周側へ至る給油通路164bが設けられている。
以上のように構成された密閉型圧縮機について、以下その動作作用を説明する。
電源端子116より電動要素110に通電されると、固定子112に発生する磁界により回転子114はシャフト121とともに回転する。主軸122の回転に伴う偏心軸124の偏心回転は、連結手段136により変換され、ピストン128をシリンダ130内で往復運動させる。そして、圧縮室134が容積変化することで、密閉容器101内の冷媒を圧縮室134内に吸入し、圧縮する圧縮動作を行う。
この圧縮動作に伴う吸入行程において、密閉容器101内の冷媒は、吸入マフラ139を介して圧縮室134内に間欠的に吸入され、圧縮室134内で圧縮された後、高温高圧の冷媒は吐出配管などを経由して密閉容器101からの冷凍サイクル(図示せず)へ送られる。
また、シャフト121下端は潤滑油102に浸漬しており、シャフト121が回転することにより、潤滑油102は給油機構164により圧縮要素120各部に供給され、摺動部の潤滑を行う。
次に、スラスト軸受について説明する。
スラスト軸受として用いられる転がり軸受190は、ボール191が上レース192と下レース193に点接触の状態で転がる転がり軸受であり、シャフト121や回転子114の自重などの鉛直下向き方向の荷重を支持しながら回転が可能である。転がり軸受190は、一般的に用いられている滑り軸受の形式のスラストベアリングより摩擦が少なく、近年高効率化を目的に採用されることが増えてきている。
一方、ボール191は、上レース192と下レース193と点接触をしているため、接触点での面圧は非常に高い。具体的には、滑り形式のスラスト軸受の場合、面圧は0.1N/mm程度であるのに対し、点接触部分の面圧は1000N/mm程度に達する。このため、ボール191や、上レース192、下レース193には硬度の高い、軸受鋼や熱処理した工具鋼などが用いられるが、それでも接触荷重が数倍程度大きくなるだけで、塑性変形を生じるような荷重に到達する。このような変形を生じる荷重を、JISB1518では、基本静アキシアル定格荷重と定めており、玉軸受の場合、接触部中央の計算接触応力が4200MPaのときの荷重であり、この接触応力の下で生じる総永久変形量はボールの直径の0.0001倍になる。
片持ち軸受の構成では、シャフト121は圧縮による荷重などにより、主軸122と軸受部127の隙間の範囲でわずかに傾斜し得る構成であり、この傾斜によって、上レース192および下レース193の間隔が不均一となる。それによってボール191にかかる荷重も不均一になり、正常値と比べ数倍程度大きくなる可能性がある。それによってボール191自身の変形や上下レースの磨耗が生じる。更にそこを基点に上記部材の損傷が進むことで軸受全体の信頼性が著しく低下する恐れがある。
しかし、本実施の形態によりシャフト121に生じた傾きによってフランジ部121aと当接する内周部材195cも同様に傾くが、図5、図6に示すように外連結部195dおよび内連結部195eがそれぞれの軸周りに傾斜可能であるため、内連結部195eに生じる傾きは内周部材195c、中間部材195bが傾斜することで許容され、外周部材195aに傾きは生じない。よって下レース193との間の平行が維持される。そのため、レースに当接している転がり軸受190の各ボール191には常に均等な荷重が作用することとなる。
この結果、それぞれのボール191にかかる荷重が著しく増減することもなくなる。そのため、荷重の過多によるボール191の変形や上レース192および下レース193の損傷、逆に荷重の不足によるボール191の空回りが原因となる転がり軸受の寿命の低下を防ぎ、信頼性を向上させることができる。
また、輸送時等に発生する振動により、鉛直方向に大きな荷重が作用し、それにより、転がり軸受190、上レース192、下レース193が塑性変形したり、凝着が発生したりする可能性がある。そしてこれらが基点となり、転がり軸受の信頼性が著しく低下する恐れがある。しかし本実施の形態により、鉛直方向に発生した荷重は支持部材195がシャフト121の回転軸の鉛直方向に弾性変形することで、転がり軸受190に伝わる荷重は軽減される。さらに、支持部材195の弾性変形が大きくなり、変位量が隙間dと等しくなると、内周部材195cと軸受部127の上端127bに接触する。
この結果、それ以上の荷重は転がり軸受190に伝わらないため、ボール191や上レース192、下レース193の破損を防止でき、転がり軸受190の信頼性が向上する。
具体的には、バネ定数が28.4N/mmの支持部材195を用いて、隙間dを0.5mmと設定した場合、鉛直下向き方向に約13Nの荷重がシャフト121に余分にかかった際、荷重による支持部材195の鉛直下向き方向の変位量と隙間dが等しくなり、軸受部127の上端127bと支持部材195の下面が接触する。よってそれ以上の荷重がかかった場合でも転がり軸受190に余分な荷重は伝わらないこととなる。
さらに、転がり軸受190は軸受部127の離れた外径側に配置される上に、支持部材195が薄い板でかつ上レースを兼ねる構成であるため、従来、上レース192、転がり軸受190、下レース193、支持部材195を収納するために必要なシリンダブロック126に設ける上下空間を小さくできるため、それによって引き起こされるシリンダブロック126の剛性が低下することはない。よって、シリンダブロック126を薄肉化して、圧縮機を小型化することができる。
なお、本実施の形態では支持部材の外連結部195dと内連結部195eのそれぞれの腕部の軸が直交して傾斜方向が直交するように構成されているが、直交する構成であると極端に傾斜がしやすい方向や極端に傾斜しにくい方向がなく、組み立て方の違いによって生じる作用効果の違いがなくなり、組立性が向上するベストモードとなるものではあるが、必ずしもこれに捉われず、傾斜方向を適切な範囲で直交よりずれた方向に傾斜させることにおいても一定の効果が得られるものである。すなわち、中間部材195bに対して外周部材195aと前記内周部材195cとを異なる方向に傾斜可能とすることにより本願発明の趣旨とするところの一定の効果を得ることができるものである。
また、本実施の形態では電動要素の上側に圧縮要素を配置したが、電動要素の下側に圧縮要素を配置しても同様の効果が得られる。この場合、外周部材および内周部材は、一方がスラスト面に当接し他方が回転子に当接することになる。
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2における密閉型圧縮機の縦断面図、図8、図9は支持部材の上面図である。
図7において、密閉容器201内底部に潤滑油202を貯留するとともに、圧縮機本体204がサスペンションスプリング206により密閉容器201内で内部懸架されている。また、密閉容器201には、温暖化係数の低い冷媒であるR600a(イソブタン)が充填されている。
圧縮機本体204は、電動要素210と、これによって駆動される圧縮要素220とからなり、密閉容器201には電動要素210に電源を供給するための電源端子216が取り付けられている。
まず、電動要素210について説明する。
電動要素210は、薄板を積層した鉄心に銅製の巻線が巻かれて形成される固定子212と、固定子212の内径側に配置される回転子214とを備え、固定子212の巻線が電源端子216を経由して圧縮機外の電源(図示せず)と導線により接続されている。
次に圧縮要素220について説明する。
圧縮要素220は電動要素210の上方に配設されている。圧縮要素220を構成するシャフト221は、主軸222と、主軸222と平行な偏心軸224を備えている。また、主軸222には回転子214が固定されている。
シャフト221の下端は、密閉容器201底部の潤滑油202に浸漬しており、シャフト221は、主軸222の表面に設けた螺旋溝264aなどからなり、シャフト221の下端から上端に至る給油機構264を備えている。
シリンダブロック226は、円筒形の内面を有する軸受部227を備え、軸受部227に主軸222が回転自在な状態で挿入され、支持されている。そして、圧縮要素220は、偏心軸224に作用した荷重を偏心軸224の下側に配置された主軸222と軸受部227で支持する片持ち軸受の構成になっている。
また、シリンダブロック226は円筒状の穴部であるシリンダ230を備えており、ピストン228がシリンダ230に往復自在に挿入されている。また、連結手段236は、両端に設けた穴部がそれぞれピストン228に取付けられたピストンピン229と、偏心軸224に嵌挿されることで、偏心軸224とピストン228と連結している。
シリンダ230端面にはバルブプレート232が取り付けられ、シリンダ230およびピストン228とともに圧縮室234を形成する。さらに、バルブプレート232を覆って蓋をするようにシリンダヘッド238が固定されている。吸入マフラ239は、PBTなどの樹脂で成型され、内部に消音空間を形成し、シリンダヘッド238に取り付けられている。
次にスラスト軸受について説明する。スラスト軸受とは、回転体の回転軸方向に働く力を受止める軸受である。本実施の形態におけるスラスト軸受は、シャフト221の鉛直下向きにかかる荷重を支持している。
図7において、本実施の形態におけるスラスト軸受はシリンダブロック226の上面に配置された支持部材295によって構成されている。
本実施の形態における支持部材295は、図8に示すように同心円状の環状部材である中間部材295b、内周部材295cを備えている。
内周部材295cは、支持部材295の中心に対して半径方向外側に延出した1対の円筒状の回転軸で形成される腕部250を有している。
中間部材295bは、腕部250を回転自在に軸支する溝部である回転軸支持部251と、回転軸支持部と直交する方向で、支持部材295の中心に対して半径方向外側に延出した1対の円筒状の回転軸で形成される腕部252を有している。
さらに、シリンダブロック226には、腕部252を回転自在に軸支する溝部である回転軸支持部253を有することで、支持部材295の外周部材295bが一体に形成されている。
そして、腕部250と回転軸支持部251で内連結部295eを、腕部252と回転軸支持部253で外連結部295dを構成し、それぞれが直交する方向に傾斜可能である。
また、内周部材295cの上面の、シャフト221のフランジ部221aと対向する位置に、シャフト221の回転により油膜圧力が発生する動圧機構296を設けている。具体的には、シャフト221の回転を利用して溝に潤滑油を集めて、ポンピング作用によりスラスト部に動圧を発生させるヘリングボーン型のスラスト動圧軸受を構成している。
以上のように構成された密閉型圧縮機について、以下その動作作用を説明する。
電源端子216より電動要素210に通電されると、固定子212に発生する磁界により回転子214はシャフト221とともに回転する。主軸222の回転に伴う偏心軸224の偏心回転は、連結手段236により変換され、ピストン228をシリンダ230内で往復運動させる。そして、圧縮室234が容積変化することで、密閉容器201内の冷媒を圧縮室234内に吸入し、圧縮する圧縮動作を行う。
この圧縮動作に伴う吸入行程において、密閉容器201内の冷媒は、吸入マフラ239を介して圧縮室234内に間欠的に吸入され、圧縮室234内で圧縮された後、高温高圧の冷媒は吐出配管などを経由して密閉容器201からの冷凍サイクル(図示せず)へ送られる。
また、シャフト221下端は潤滑油202に浸漬しており、シャフト221が回転することにより、潤滑油202は給油機構264により圧縮要素220各部に供給され、摺動部の潤滑を行う。
次に、スラスト軸受について説明する。
片持ち軸受の構成では、シャフト221は圧縮による荷重などにより、主軸222と軸受部227の隙間の範囲でわずかに傾斜し得る構成であり、それによって、シャフトの傾きによってシャフトフランジ部221aと軸受部上端227bが形成する隙間が極端に小さくなり、それによって前記隙間に介在する油膜が極端に薄くなり、シャフトフランジ部221aとその接触部が異常磨耗する可能性がある。
しかし、支持部材295の内周部材295cは腕部250,252によって構成される直行する2本の軸周りに変位が可能なため、任意の方向に傾斜可能である。よって、シャフト221の傾きに倣い、内周部材295cも同様に傾くことが可能である。その結果、内周部材295cとシャフト221のフランジ部221aは常に全面均一の隙間を維持することが可能になる。
そのため、シャフト221の傾きに関係なく、内周部材295cとシャフトフランジ部221aの間に介在する油膜は常に一定の厚みを保つことが可能になり。油膜切れによって起きるシャフトフランジ部221aとその接触部の異常磨耗を抑制できる。
さらに、内周部材295cの上面に設けられた動圧機構296により、内周部材295cとシャフト221のフランジ部221aとの間には均一かつ厚い油膜を維持させることが可能になり、動圧機構296を設けない場合と比較して、内周部材295cとシャフト221のフランジ部221aの隙間を広く確保できる。
その結果、内周部材295cとシャフト221の間に生じる摺動による損失を軽減でき、圧縮機の効率が向上する。また、常に一定の厚さの油膜を確保できることで、油膜切れによるシャフト221のフランジ部221aとその接触部の摩耗を防止でき、信頼性が向上する。
なお、本実施の形態では、外連結部295dおよび内連結部295eを円筒状の腕部とこれを軸支する円筒軸支持部で構成したが、図9に示すような球面と球面を回転自在に支持する球面支持部で形成されていてもかまわない。
また、本実施の形態では、外連結部295dはシリンダブロック226に設けられた窪みに嵌め合い支持されているが、外周部材295aを別体で設けて、シリンダブロック226に設けた平面部に取付けてもかまわない。
さらに、本実施の形態では、動圧機構としてヘリングボーン型の動圧溝を用いたが、スパイラル溝軸受やテーパードランド軸受などの他の方式の動圧軸受を用いてもよい。
以上のように、本発明にかかる密閉型圧縮機は、給油量が増加し、性能と信頼性を向上できるので、家庭用電気冷凍冷蔵庫に限らず、エアーコンディショナー、自動販売機やその他の冷凍装置等に広く適用できる。
本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の縦断面図 同実施の形態における軸受近傍の要部断面図 同実施の形態における転がり軸受近傍の要部断面図 同実施の形態における支持部材の上面図 同実施の形態における支持部材の内連結部まわりの変位を示した斜視図 同実施の形態における支持部材の外連結部まわりの変位を示した斜視図 本発明の実施の形態2における密閉型圧縮機の縦断面図 同実施の形態における支持部材の形状を示した上面図 同実施の形態における支持部材の形状を示した上面図 従来の圧縮機の縦断面図 従来の圧縮機における軸受付近の要部断面図 従来の転がり軸受を有する密閉型圧縮機の縦断面図 従来の圧縮機における転がり軸受の配置を示した縦断面図 従来の圧縮機における支持部材の形状を示した斜視図
符号の説明
101,201 密閉容器
102,202 潤滑油
110,210 電動要素
112,212 固定子
114,214 回転子
120,220 圧縮要素
121,221 シャフト
126,226 シリンダブロック
128,228 ピストン
136,236 連結手段
164,264 給油機構
190 転がり軸受
195,295 支持部材
195a,295a 外周部材
195b,295b 中間部材
195c,295c 内周部材
195d,295d 外連結部
195e,295e 内連結部
296 動圧機構

Claims (12)

  1. 密閉容器内に固定子と回転子とを備えた電動要素と、前記電動要素によって駆動される圧縮要素を収容し、前記圧縮要素は、前記回転子が固定された主軸部と偏心軸部とを有するシャフトと、圧縮室を備えたシリンダブロックと、前記圧縮室内で往復運動するピストンと、前記ピストンと前記偏心軸部とを連結する連結手段と、前記シリンダブロックに設けられ前記主軸部を軸支する主軸受と、前記主軸受のスラスト面に配設された支持部材とを備え、前記支持部材は、前記スラスト面に平行な略同一平面上に配置された外周部材と中間部材および内周部材とを有し、前記中間部材に対して前記外周部材と前記内周部材とを異なる方向に傾斜可能とした密閉型圧縮機。
  2. 前記中間部材に対して前記外周部材が傾斜可能に連結する外連結部と、前記中間部材に対して前記内周部材が前記外周部材の傾斜方向と直交する方向に傾斜可能に連結する内連結部とを備えた請求項1に記載の密閉型圧縮機。
  3. 外連結部および内連結部は、外周部材と中間部材および内周部材と同一平面上で、かつ支持部材の中心に対して対称位置にそれぞれ1対ずつ配設され、前記外連結部を結ぶ軸線と前記内連結部を結ぶ軸線とが直交するように配設された請求項2に記載の密閉型圧縮機。
  4. 外連結部および内連結部は、一方がスラスト面に当接し他方がシャフトに当接して形成されるか、または、一方がスラスト面に当接し他方が回転子に当接して形成される請求項2または3に記載の密閉型圧縮機。
  5. 外連結部または内連結部は、支持部材の中心に対して半径方向に延出した1対の腕部で形成される請求項1から3のいずれか一項に記載の密閉型圧縮機。
  6. 支持部材が弾性変形することで、前記シャフトの軸方向の荷重に対する弾性力を保持する請求項5に記載の密閉型圧縮機。
  7. 外周部材、中間部材、内周部材、外連結部、内連結部の全てが、板状の薄板に一体に形成された請求項5または6に記載の密閉型圧縮機。
  8. 外連結部または内連結部は、円筒状の回転軸と前記回転軸を軸支する回転軸支持部で形成される請求項2または3に記載の密閉型圧縮機。
  9. 外連結部または内連結部は、球面と球面を回転自在に支持する球面支持部で形成される請求項1から3のいずれか一項に記載の密閉型圧縮機。
  10. スラスト面に、転がり軸受を配設した請求項1から9のいずれか一項に記載の密閉型圧縮機。
  11. 外周部材とスラスト面との間に転がり軸受を配設し、支持部材に潤滑油を供給する給油機構を備えた請求項10に記載の密閉型圧縮機。
  12. スラスト面に、シャフトの回転により油膜圧力が発生する動圧機構を形成した請求項1から11のいずれか一項に記載の密閉型圧縮機。
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