JP4924066B2 - モータ制御装置、及びモータ制御方法 - Google Patents
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Description
このようなモータ制御装置にあっては、通常、モータの回転数が高く、モータの磁気回路による渦電流損やヒステリシス損(鉄損)が増大して、ステータコイルの発熱量よりも、ロータコイルの発熱量が増大し、モータが加熱される場合には、モータの出力トルクの制限の開始温度(前記設定温度)を下げるようになっている。
本発明は、上記従来の技術に鑑みてなされたものであって、モータの加熱をより適切に防止可能なモータ制御装置及びモータ制御方法を提供することを課題とする。
<構成>
図1は、本実施形態の車両の概略構成を示す構成図である。この図1に示すように、モータ制御装置は、エンジン1、発電機2、インバータ3、モータ4、モータ温度センサ5、電流検出センサ6、回転センサ7、外気温センサ8、及び4WD(Wheel Drive)制御回路9を含んで構成される。
発電機2は、エンジン1によってロータ(不図示)が回転駆動され、その回転速度と界磁の磁束とに応じた電力を発生してインバータ3に出力する。
インバータ3は、4WD制御回路9から出力される駆動制御信号に従って、発電機2から供給される電力を用いてモータ4に交流電流を供給する。
ここで、モータ4が発生するトルクTは、モータ4の極対数P、鎖交時速数φ、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq、d軸電流Id、q軸電流Iqに基づき、下記(1)式で表される。
T=P×φ×Iq+(Ld−Lq)×Id×Iq・・・(1)
さらに、界磁コイル11で発生される磁束をφ’とすると、前記(1)式は下記(2)式で表される。
T=P×φ’×Iq+(Ld−Lq)×Id×Iq・・・(2)
また、U、V、W相それぞれのステータコイル13に流れる電流Iuは、下記(3)式で表される。
Iu=((Id2+Iq2)/3)1/2・・・(3)
そのため、モータ4のトルクTが大きい場合には(回転数が低い場合には)、銅損が増大してステータコイル13が発熱し、モータ4が加熱される。
また、温度上昇は局所的となり、ハウジング15による放熱マスが大きく、放熱性が高いので、出力が制限されると、ステータ14の温度は比較的早く降下する。
さらに、図5に示すように、モータ4のトルクTが若干小さい場合には(回転数が若干高い場合には)、ステータ14の温度は比較的緩やかに上昇するため、モータ4の温度上昇が全体的となり、ハウジング15による放熱マスが小さく、放熱特性は比較的低いので、出力が制限されると、ステータ14の温度は比較的緩やかに降下する。
Wc=We+Wh ・・・(4)
We=β×f2×Bm
Wh=α×f×Bm2
つまり、鉄損Wcは、界磁コイル11を流れる交流電流の周波数の約1.5〜2乗に比例し、モータ4の回転数が高くなるほど増大する。
なお、その際、界磁コイル11の発熱により、図6に示すように、モータ4の中心部から熱が発生するため、モータ4(ステータ14)の温度は緩やかに上昇する。
また、温度上昇は全体的となり、モータ4の中心部に界磁コイル11があるために、放熱性が低いので、出力が制限されると、ステータ14の温度は緩やかに降下する。
電流検出センサ6は、界磁コイル11を流れる電流を検出し、その検出結果(電流測定値)を4WD制御回路9に出力する。
外気温センサ8は、車両の外気温を検出し、その検出結果(気温測定値)を4WD制御回路9に出力する。
4WD制御回路9は、運転者による操作と車両の状態量とに基づき、界磁コイル11への供給電流を制御してモータ4を駆動させる(モータ4の出力を制御する)駆動制御信号をインバータ3に出力する。
また、モータ4の回転数が高回転数域にある場合には、鉄損が増大して界磁コイル11の発熱量が増大し、ステータ14よりも、ロータ12の温度が上昇し、モータ4が加熱されるため、モータ4の温度としてロータ12の温度を用いる(外気温センサ8の検出結果から推定される温度を用いる)。
次に、4WD制御回路9で実行されるモータ出力制限処理を図7のフローチャートに基づいて説明する。このモータ出力制限処理は、所定時間が経過するたびに実行される処理であって、まず、そのステップS101で、この演算処理が以前実行されたときに設定されたモータ温度Tm及びトルク制限しきい値Tthに基づき、Tm≧Tthであるか否かを判定する。そして、Tm<Tthである場合には(No)ステップS102に移行し、Tm≧Tthである場合には(Yes)ステップS106に移行する。
前記ステップS102では、4WD制御回路9から出力される駆動制御信号(トルク指令値、モータ4の出力トルク)と回転センサ7から出力されるモータ4の回転数とに基づき、図8の制御マップ(トルク指令値と回転数との組み合わせに応じて、モータ4の動作状態を規定するマップ)に従ってモータ4の動作状態(動作点)が第1領域(モータ4の回転数が極低回転数域(0〜100rpm)にあり且つモータ4の出力が高トルク域(40〜50Nm)にある領域)、第3領域(モータ4の回転数が高回転数域(8500〜10000rpm)にある領域)、第2領域(モータ4の回転数が低〜中回転数域にある領域、第1領域及び第3領域以外の領域)のいずれの領域にあるかを判定する。
図9の制御マップは、トルク指令値と回転数との組み合わせに応じてトルク制限温度しきい値を規定するマップであり、図8の制御マップの第1領域及び第2領域のトルク制限温度しきい値がステータ14の温度に対応する値を規定し、第3領域のトルク制限温度しきい値がロータ12の温度に対応する値を規定している。
前記ステップS107では、トルク制限処理を行ってから、この演算処理を終了する。
次に、4WD制御回路9で実行されるモータ出力復帰処理を図10のフローチャートに基づいて説明する。このモータ出力復帰処理は、トルク制限制御又は運転停止のいずれかが行われると実行される処理であって、まず、そのステップS201で、4WD制御回路9から出力される駆動制御信号(トルク指令値)と回転センサ7から出力されるモータ4の回転数と(コントローラメモリ)に基づき、図8の制御マップに従ってモータ4の動作状態(動作点)が第1領域〜第3領域のいずれの領域にあるかを判定する。
次にステップS203に移行して、前記ステップS202で読み取られた外気温と4WD制御回路9から出力される駆動制御信号と回転センサ7から出力されるモータ4の回転数(回転信号)とに基づき、図11の制御マップに従って動作復帰しきい値を設定する。
次にステップS204に移行して、前記ステップS203で設定された動作復帰しきい値をトルク制限しきい値Tthとする。
前記ステップS207では、動作復帰を行ってから、この演算処理を終了する。
次に、本実施形態の車両用駆動装置の動作を具体的状況に基づいて説明する。
まず、車両の走行速度が高く、モータ4の回転数が高いため、鉄損が増大して界磁コイル11の発熱量が増大し、モータ4の温度が上昇しているときに(モータ温度Tmがトルク制限しきい値Tthより低いが、モータ4の回転数が高回転数域(8500〜10000rpm)にあるときに)、4WD制御回路9でモータ出力制限処理が実行されたとする。すると、図7に示すように、まず、そのステップS101の判定が「No」となり、ステップS102で、第3領域にあると判定され、ステップS103で、4WD制御回路9から出力される駆動制御信号(トルク指令値)と回転センサ7から出力されるモータ4の回転数とに基づき、図9の制御マップに従ってロータ12の温度に対するトルク温度制限しきい値が設定される。また、ステップS104で、電流検出センサ6から出力される電流測定値に基づいてロータ12の温度が算出され、ステップS105で、その温度がモータ温度Tmとされ、トルク温度制限しきい値がトルク制限しきい値Tmとされ、ロータフェール温度がフェール温度Tfとされた後、この演算処理を終了する。そして、所定時間が経過するたびに、上記フローがステップS101から繰り返し実行される。
そして、モータ4の回転数が制限されて低減することで、鉄損が減少して界磁コイル11の発熱量が減少し、モータ4の加熱が抑制され、モータ4の温度が低下する。
上記フローが繰り返されるうちに、界磁コイル11の発熱量の減少により、モータ温度Tmがトルク制限しきい値Tthより低い温度になったとする。すると、前記ステップS206の判定が「Yes」となり、ステップS207で、動作復帰が行われ、トルク制限制御が終了された後に、この演算処理を終了する。
(1)このように、本実施形態のモータ制御装置にあっては、モータ4の回転数とモータ4の出力トルクとに基づき、モータ4の回転数とモータ4の出力トルクとの組み合わせに応じたトルク制限温度しきい値であり且つそれぞれがステータ14の温度又はロータ12の温度に対応するトルク制限温度しきい値を規定する図9の制御マップに従ってトルク制限温度しきい値を設定し、そのトルク制限温度しきい値がステータ14に対応するものである場合にはステータ14の温度が当該トルク制限温度しきい値以上であるか否かを判定し、トルク制限温度しきい値がロータ12の温度に対するものである場合にはロータ12の温度が当該トルク制限温度しきい値以上であるかを判定し、ステータ14の温度が前記トルク制限温度しきい値以上であると判定された場合又はロータ12の温度が前記トルク制限温度しきい値以上であると判定された場合にモータ4の出力を制限するようにした。そのため、常にステータ14の温度に基づいてモータ4の出力制限を行う方法に比べ、モータ4の加熱をより適切に防止することができる。
また、モータ4の回転数が高いときのトルク制限温度しきい値をロータ12の温度に対応づけておくことで、モータ4の回転数が高いために、界磁コイル11が発熱するときに、モータ4の出力を制限し、ロータ12の発熱を抑制でき、ロータ12の温度上昇に起因するモータ4の加熱をより適切に防止することができる。
Claims (4)
- 制御対象であるモータの回転数を検出する回転数検出手段と、前記モータの出力トルクを検出する出力トルク検出手段と、前記モータの回転数と前記モータの出力トルクとの組み合わせに応じたトルク制限温度しきい値であり且つそれぞれがステータの温度又はロータの温度に対応するトルク制限温度しきい値を規定する制御マップと、前記回転数検出手段で検出された回転数と前記出力トルク検出手段で検出された出力トルクとに基づき前記制御マップに従ってトルク制限温度しきい値を設定するしきい値設定手段と、前記ステータの温度を検出するステータ温度検出手段と、前記ロータの温度を検出するロータ温度検出手段と、前記しきい値設定手段で設定されたトルク制限温度しきい値が前記ステータに対応するものである場合には前記ステータ温度検出手段で検出された前記ステータの温度が当該トルク制限温度しきい値以上であるか否かを判定し、前記しきい値設定手段で設定されたトルク制限温度しきい値が前記ロータの温度に対するものである場合には前記ロータ温度検出手段で検出された前記ロータの温度が当該トルク制限温度しきい値以上であるかを判定する判定手段と、前記判定手段で前記ステータの温度が前記トルク制限温度しきい値以上であると判定された場合又は前記ロータの温度が前記トルク制限温度しきい値以上であると判定された場合に前記モータの出力を制限するモータ出力制限手段と、を備えたことを特徴とするモータ制御装置。
- 前記ロータ温度検出手段は、前記ロータに巻かれているコイルの抵抗値を検出するコイル抵抗値検出手段と、前記コイル抵抗値検出手段で検出された前記コイルの抵抗値に基づいて前記コイルの温度を推定するロータ温度推定手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
- 前記モータの回転数と前記モータの出力トルクとの組み合わせに応じた動作復帰しきい値であり且つそれぞれがステータの温度又はロータの温度に対応する動作復帰しきい値を規定する第2制御マップと、前記回転数検出手段で検出された回転数と前記出力トルク検出手段で検出された出力トルクとに基づき前記第2制御マップに従って動作復帰しきい値を設定する第2しきい値設定手段と、前記第2しきい値設定手段で設定された動作復帰しきい値が前記ステータに対応するものである場合には前記ステータ温度検出手段で検出された前記ステータの温度が当該動作復帰しきい値以下であるか否かを判定し、前記しきい値設定手段で設定された動作復帰しきい値が前記ロータの温度に対するものである場合には前記ロータ温度検出手段で検出された前記ロータの温度が当該動作復帰しきい値以下であるかを判定する第2判定手段と、前記モータの出力の制限が行われているときには、前記第2判定手段で前記ステータの温度が前記動作復帰しきい値以下であると判定された場合又は前記ロータの温度が前記動作復帰しきい値以下であると判定された場合に前記モータの出力の制限を終了するモータ制限終了手段と、を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
- 制御対象であるモータの回転数と前記モータの出力トルクとに基づき、前記モータの回転数と前記モータの出力トルクとの組み合わせに応じたトルク制限温度しきい値であり且つそれぞれがステータの温度又はロータの温度に対応するトルク制限温度しきい値を規定する制御マップに従ってトルク制限温度しきい値を設定し、そのトルク制限温度しきい値が前記ステータに対応するものである場合には前記ステータの温度が当該トルク制限温度しきい値以上であるか否かを判定し、前記トルク制限温度しきい値が前記ロータの温度に対するものである場合には前記ロータの温度が当該トルク制限温度しきい値以上であるかを判定し、前記ステータの温度が前記トルク制限温度しきい値以上であると判定された場合又は前記ロータの温度が前記トルク制限温度しきい値以上であると判定された場合に前記モータの出力を制限することを特徴とするモータ制御方法。
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