JP4919756B2 - 筆記具 - Google Patents
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Description
このバルブ体を使用した直液式の筆記具において殆どの場合、インキタンク内にインキのみ存在しているものが数多く知られている。
この機構の特徴としては、温度や気圧に変化に左右されないため、意図せずに多量のインキが流れ出すいわゆる直流現象(ドバ落ち)を低減する作用があり、更に通常筆記時には安定してインキを供給でき、筆跡の掠れや筆跡途切れを低減できるものである。
(1) 毛管力を有するペン体からなる筆記部及び軸筒を有し、該軸筒内に設けられたインキ収容室内にインキと、インキ後端を封止する追従体が充填され、該軸筒後端は外気と連通し、かつ、上記ペン体とインキは開閉可能なバルブ体によって分割された筆記具であって、上記バルブ体の開口部のインキ収容室側のインキと接する部分に毛管力が付与されていることを特徴とする筆記具。
(2) 毛管力の付与がバルブ体開口部のインキ収容室側のインキと接する部分にスリット形状を形成することにより構成されていることを特徴とする上記(1)記載の筆記具。
(3) 前記バルブ体開口部のインキ収容室側のインキと接する部分のスリット形状が、スリット幅0.05mm〜1.0mmであることを特徴とする上記(2)記載の筆記具。
(4) 毛管力の付与がバルブ体開口部のインキ収容室側のインキと接する部分に、孔径が1mm以下である多孔体を設けることにより構成されることを特徴とする上記(1)記載の筆記具。
(5) 毛管力の付与がバルブ体開口部のインキ収容室側のインキと接する部分にスリット形状を形成し、該スリットと共に多孔体を一体としたことにより構成されていることを特徴とする上記(1)記載の筆記具。
(6) 多孔体が繊維収束体、焼結体、発泡体の何れか一つにより構成されていることを特徴とする上記(4)又は(5)記載の筆記具。
(7) バルブ体は、筆記時にペン体が筆記面に押し付けられる圧力で開口することを特徴とする上記(1)〜(6)の何れか一つに記載の筆記具。
(8) インキ収容室は、酸素透過係数が3000cc・25μm/m2・24hr・atm(25℃、65%RH)以下であることを特徴とする上記(1)〜(7)の何れか一つに記載の筆記具。
図1〜図4は、本発明の第1実施形態を示す説明図面であり、図1(a)は非筆記時の部分縦断面図、(b)は(a)のa−a線断面図、図2(a)は筆記時(バルブ体開弁時)の部分縦断面図、(b)は(a)のa−a線断面図、図3は、バルブ体にペン体を装着した状態を示す正面図、図4はキャップ体を装着した筆記具の部分縦断面図である。
なお、ペン体10は、上記の素材によって一体に形成されたものの他、外周に液密性のある樹脂製フィルムや筒体等の外被部材が一体に密着する構造とすることができる。
この軸筒20は、酸素バリア性に優れる樹脂層を少なくとも一層(単層又は2層以上の多層構造)以上有することが好ましく、特に、酸素透過係数が3000cc・25μm/m2・24hr・atm(25℃、65%RH)以下であるものが望ましい。
これらの特性を有する樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
また、軸筒20が多層構造の場合は、少なくとも1層が、前記した性能(酸素バリア性等)を持つ樹脂で構成されていれば、残りの層は通常の樹脂でも実使用上問題はない。このような構造の軸筒20は、押出し成形、射出成形、共押出し成形などにより製造することができる。
インキ粘度としては、例えば、水性インキの場合は、粘度が25℃、E型粘度計による測定で1mPa・sec/1rpm〜1000mPa・sec/1rpmが好ましく、油性インキの場合は、粘度が25℃、E型粘度計による測定で1mPa・sec/1rpm〜500mPa・sec/1rpmが好ましい。
追従体23は、インキ22の後端側を封止し、インキ22の消費と共に、該インキ22に追従できるものであれば、その構成は特に限定されず、例えば、栓体状又はグリース状の追従体などが挙げられる。好ましい追従体23としては、インキと相溶しない溶剤を主成分とし、その粘度が25℃、E型粘度計による測定で1000mPa・sec/1rpm〜100000mPa・sec/1rpm以下であるものが望ましい。
上記軸筒先端部20aには、バルブ体40前方に、ペン体10を摺勤可能にガイドする中空円筒状のいわゆるクチプラと通称されるガイド部材25が設けられている。
弾発部材41は、ステンレス製のコイルスプリングが好適であるが、その他、弁棒42を前方に付勢できるものであれば、板状であったりエラストマー部材であったり等、形状、材質は特に限定されない。
弁棒42は、前部に開口部42aが形成されて大径になり、後部が中実で小径に形成されている。この開口部42a内にペン体10の後部小径部が挿入されて緊密に固定されている。
ここで、バルブ体40は、ペン体10の後部10bに連結された弁棒42の前端部と、該弁棒42の前方に位置して可撓性のあるゴム弾性体からなる弁体44とが当接・離脱することによって閉弁・開弁する弁機能を有している。
弁体44は、中央部に孔の形成された可撓性を有するものであり、弁体44内周面がペン体後部10b外周に摺接しているものである。この弁体44がペン体10の側面に嵌着され、且つ、可撓性の弁体44の後端がコイルスプリングからなる弾発部材41の押圧により弁棒41前端と当接し、外部とインキ収容室21を遮断する構造となっている。
なお、軸筒20の先端部20aには、図4に示すように、スプリング部材50aを有する摺動自在となる内キャップ部50bを有するキャップ体50が嵌合により着脱自在に装着される構成となっている。
本第2実施形態の筆記具Bは、図5〜図7に示すように、バルブ体40の開口部のインキ収容室21側に毛管力を付与するためのスリットを設けることなく、バルブ体40開口部のインキ収容室21側に、孔径(細孔径)が1mm以下である多孔体46を設けることにより構成されている点、及びペン体10が砲弾型形状からチゼル形状の芯体に変更した点、インキ収容室21と弁体を連通する連通孔47を設けた点で、上記第1実施形態の筆記具Aと相違するものである。
多孔体46は、毛管力が付与される構造となるものであれば特に限定されず、具体的には、1)有機高分子粒子などの焼結体、2)フェルトやスポンジなどの発泡体、または、3)天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン径樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組合せからなる繊維束体などにより構成される。
多孔体46の細孔径が1mmを超えると、目的の毛管力が発揮することができず、目的の効果を発揮できなくなる。
好ましい多孔体46としては、細孔径が50μm〜500μmであり、気孔率が30%〜90%であるものが望ましい。
本第3実施形態の筆記具Cは、上記第1及び第2実施形態で用いた弁体44が、外周部に比べて内周部が薄く形成され、内周部の中央孔48aの内径がペン体後部10bの外径と同じかそれよりも小径に形成されて、屈曲型の弁体48を用いた点で、上記第2実施形態の筆記具Bと相違するものである。
この屈曲型の弁体48は、中央孔48aの内径はペン体後部10b外径よりも小径に形成され、ペン体後部10に食い込むまたは噛み込む状態になる構成となっているので、内周端部がペン体10の外側面に押圧状態で密着し、かつ、ペン体10の移動によって該内周端部が密着状態を維持しつつ変形して〔図8(b)参照〕、ペン体10外側面とインキ収容室21との外気流通を遮断する構成としたものである。
この屈曲型の弁体48は、上記実施形態と同様に、ペン体10の側面に嵌着され、且つ、弁体48の後端がコイルスプリングからなる弾発部材41の押圧により弁棒42前端と当接し、外部とインキ収容室21を遮断する構造となっている。
この実施形態は、上記第1実施形態と第2実施形態を併用した筆記具であり、スリット45,45……と共に、多孔体46を一体としたものである。
この実施形態となる筆記具では、上記第1実施形態と第2実施形態と同様に、筆圧及びそれ以上の押圧力により、ペン体10が後退することによりバルブ体40が開弁し、インキがペン体10に接触しインキが供給され、一時的にインキ収容室21内が減圧になり、外部から空気が入り込もうとするが、上記スリット45及び多孔体46の各毛管力により、インキ収容室21内への外部空気の混入を更に防ぐことができるため、インキドロップ(逆流)を更に防止できると共に、インキ収容室内への空気の侵入を更に防止でき、筆記不良やインキ漏れという不具合を生じさせることなく、優れた筆記性能を有する筆記具が得られることとなる。
例えば、上記実施形態において、インキを用いたが化粧液や修正液などの塗布液を用いた塗布具態様のものであってもよいものである。
下記各構成の筆記具を作製し、下記組成のインキ1,2及び追従体を用いた。
(実施例1〜4、比較例1の筆記具の構成:図1〜図4準拠)
ペン芯構成:
砲弾型、ポリエステル繊維、3デニール、気孔率60%、全長24mm、最大径4mm、細孔径200μm
バルブ体構成:
弁体(シールリング);シリコン製、弁棒;ポリプロピレン製、弾発部材;ステンレス製、筒状支持部材;ポリプロピレン製、
スリット長さ:15mm、スリット間隔:1.0mm、スリット数:10、スリット幅:下記表1に記載
インキ収容室構成等:
口プラ;ポリプロピレン製、軸本体;ポリプロピレン製 長さ100mm 内径8mm 外径11mm、酸素透過係数が2000cc・25μm/m2・24hr・atm(25℃、65%RH)以下、尾栓;ポリプロピレン製
インキ充填量(インキ種は下記表1に記載):2g
追従体充填量(追従体種は下記表1に記載):0.5g
ペン芯構成:上記実施例1と同様
バルブ体構成:上記実施例1と同様、但し、スリットはなく、多孔体構成:PE製不織布で細孔径100μm、0.5mm厚とし、この多孔体を筒状支持部材43と一体化した。また、連通孔:長さ15mm、幅4mm、個数は2つ。
インキ収容室構成等:上記実施例1と同様
インキ充填量(インキ種は下記表1に記載):2g
追従体充填量(追従体種は下記表1に記載):0.5g
ペン芯構成:上記実施例1と同様
バルブ体構成:上記実施例1と同様、但し、スリット長さ:15mm、スリット間隔:1.0mm、スリット数:10、スリット幅:下記表1に記載、並びに、多孔体構成:上記実施例5と同様に一体化した。
インキ収容室構成等:上記実施例1と同様
インキ充填量(インキ種は下記表1に記載):2g
追従体充填量(追従体種は下記表1に記載):0.5g
図11及び図12中の図示符号は、図1の筆記具と同様な構造は同一符号を付ける。
ペン芯構成:上記実施例1と同様
バルブ体構成:上記実施例1と同様、但し、毛管力を有しない構造、連通孔長さ:15mm、連通孔間隔:4mm、連通孔数:3、連通孔の幅:2mm
インキ充填量(インキ種は下記表1に記載):2g
追従体充填量(追従体種は下記表1に記載):0.5g
下記配合組成を攪拌し、水性インキ(全量100重量%)を得た。
顔料:カーボンブラック(MA−100、三菱化学社製) 10.0
分散剤:スチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩 2.0
溶剤:プロピレングリコール 15.0
pH調整剤:アミノメチルプロパノール 0.5
界面活性剤:フッ素系界面活性剤(FC−430、住友スルーエム社製) 0.5
防菌剤:ビオサイト1700(タイショウテクノス社製) 0.3
粘度調整剤:プライマルTT615(ローム&ハース社製) 5.0
イオン交換水 残 部
インキ粘度:86mPa・sec/1rpm
56mPa・sec/10rpm
下記配合組成を攪拌し、油性インキ(全量100重量%)を得た。
顔料:カーボンブラック(MOGUL−1、 製) 10.0
分散樹脂:ポリビニルブチラール(BL−1、積水化学社製) 8.0
溶剤1:プロピレングリコール 5.0
溶剤2:プロピレングリコールモノメチルエーテル 残 部
インキ粘度:40mPa・sec/1rpm
37mPa・sec/10rpm
下記配合組成を攪拌し、150℃、2時間加熱攪拌し、追従体(全量100重量%)を得た。
基油:ダイアナプロセスオイル(PW−380、出光興産社製) 94
増粘剤1:タフテック1141(旭化成工業社製) 3
増粘剤2:Crodax DP−30(クローダジャパン社製) 3
追従体粘度:15000mPa・sec/1rpm
これらの結果を下記表1に示す。
ペン先を下向きにてインキがペン先から出てこなくなるまで筆記し、インキの消費率〔(筆記により消費したインキ量/当初のインキ量)×100〕の重量変化から下記評価基準により評価した。
評価基準:
○:インキの消費率が90%以上。
×:インキの消費率が90%未満。
ペン先を上向きにて10m筆記し、インキ収容室内への空気の侵入を視覚により下記評価基準により評価した。
評価基準:
○:インキ収容室への空気の侵入なし。
×:インキ収容室への空気の侵入がある。
本発明範囲となる実施例1〜6では、本発明範囲外となる比較例1及び2に較べて、筆記性、耐インキドロップ性について優れや性能を有することが判明した。
一方、本発明範囲外の比較例1は、インキの追従性が低く、インキを消費できなかった。また、比較例2は、上向き筆記にて、インキ収容室への空気(気泡)の侵入があることが判った。
20 軸筒
20a 軸筒先端部
21 インキ収容室
22 インキ
23 追従体
40 バルブ体
41 弾発部材
42 弁棒
43 筒状支持部材
44 弁体
45 スリット
46 多孔体
Claims (8)
- 毛管力を有するペン体からなる筆記部及び軸筒を有し、該軸筒内に設けられたインキ収容室内にインキと、インキ後端を封止する追従体が充填され、該軸筒後端は外気と連通し、かつ、上記ペン体とインキは開閉可能なバルブ体によって分割された筆記具であって、上記バルブ体の開口部のインキ収容室側のインキと接する部分に毛管力が付与されていることを特徴とする筆記具。
- 毛管力の付与がバルブ体開口部のインキ収容室側のインキと接する部分にスリット形状を形成することにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
- 前記バルブ体開口部のインキ収容室側のインキと接する部分のスリット形状が、スリット幅0.05mm〜1.0mmであることを特徴とする請求項2記載の筆記具。
- 毛管力の付与がバルブ体開口部のインキ収容室側のインキと接する部分に、孔径が1mm以下である多孔体を設けることにより構成されることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
- 毛管力の付与がバルブ体開口部のインキ収容室側のインキと接する部分にスリット形状を形成し、該スリットと共に多孔体を一体としたことにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
- 多孔体が繊維収束体、焼結体、発泡体の何れか一つにより構成されていることを特徴とする請求項4又は5記載の筆記具。
- バルブ体は、筆記時にペン体が筆記面に押し付けられる圧力で開口することを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の筆記具。
- インキ収容室は、酸素透過係数が3000cc・25μm/m2・24hr・atm(25℃、65%RH)以下であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の筆記具。
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