JP4919659B2 - ポリアミド樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物およびその用途 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物およびその用途 Download PDF

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Description

本発明は耐熱性、接着性、電気絶縁特性、および難燃性に優れる硬化物を与え、かつフィルム状に形成した場合、十分なフレキシビリティーを有するフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂と柔軟性フェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂との混合物、本樹脂混合物とエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物、およびこれらを用いたフレキシブルプリント配線板用材料ならびに半導体絶縁膜に関する。
ポリアミド樹脂は、通常エポキシ樹脂等の特性を改質する添加剤や硬化剤として開発されており、それを一成分として含むエポキシ樹脂組成物は一般的に耐熱性、機械特性、耐薬品性などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。このようなエポキシ樹脂組成物の主成分として、従来、最も一般的に使用されてきたエポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂が挙げられる。また、エポキシ樹脂の硬化剤としては酸無水物やアミン系化合物が知られているが電気・電子部品分野では耐熱性などの面から電気信頼性に優れるフェノールノボラックが使用されることが多い。最近、特許文献1には、エポキシ樹脂とフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂を含むエポキシ樹脂組成物が難燃性に優れ、また、フレキシブルプリント配線板用材料として有用である旨が記載されている。
しかしながら、特許文献1に開示されている樹脂組成物は柔軟性が不十分であり、また該樹脂組成物に使用しているフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂は、ジアミン成分とジカルボン酸成分の縮合を亜りん酸化合物の存在下に行うため、りん酸イオンの残留がある。この残留りん酸イオンは、樹脂を水洗することにより除去可能だが、ポリアミド樹脂の分子量が高くなるにつれ、その粘度上昇のために十分に水洗することが困難で、樹脂を電気・電子部品用として使用する場合に絶縁不良の原因となる場合がある。
一方、従来のエポキシ樹脂組成物の脆弱性を改善する目的で柔軟性添加剤として、フェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂を組成物中に添加すると、硬化物特性が、耐熱性と強靱性を有するものになることが知られている(特許文献2、特許文献3)。
しかしながら、これら文献に開示されている樹脂および樹脂組成物は、フィレキシビリティーに優れてはいるが難燃性や電気特性が不十分となる場合がある。
WO2004/048436 特許2969585号公報 特開2000−313787号公報
本発明は、その硬化物において、耐熱性、接着性、難燃性を有しつつ、シート状に成形しても十分なフレキシビリティーおよび電気信頼性に優れた、ポリアミド樹脂組成物またはエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意研究した結果、本発明を完成させるに到った。
すなわち本発明は
(1)下記式(1)
Figure 0004919659
(式(1)中mおよびnは平均値で、0.005≦n/(m+n)≦1.00を示し、また、m+nは2〜200の正数である。Arは2価の芳香族基、Arはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基、Arは二価の芳香族基を示す)で表される構造を有する、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂と、b)下記式(2)
Figure 0004919659
(式(2)中m、n、Ar、Ar、およびArは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)で表される構造を有する、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントと、下記式(3−1)または(3−2)
Figure 0004919659
(式(3)中x、y、およびzはそれぞれ平均値で、xは5〜200の正数を示し、yおよびzは0<z/(y+z)≦0.10を示し、また、y+zは10〜200の正数である。)より選ばれるブタジエン重合体またはアクリロニトリル−ブタジエン共重合体セグメントを分子中に有する、フェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂とを含有することすることを特徴とする、ポリアミド樹脂組成物
(2)a)フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂およびb)フェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂中のフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントが下記式(4)
Figure 0004919659
(式(4)中m、n及び、Arは式(1)におけるのと同じ意味を表し、qは平均置換基数であって1〜4の整数である。)で表される構造を有するセグメントである、上記(1)記載の樹脂組成物
(3)上記(1)または(2)記載の樹脂組成物及びc)エポキシ樹脂を含有する、エポキシ樹脂組成物
(4)上記(3)に記載のエポキシ樹脂組成物をシート状に加工したフィルム
(5)上記(3)に記載のエポキシ樹脂組成物を有するフレキシブルプリント配線板用接着シート
(6)上記(3)記載のエポキシ樹脂組成物、上記(5)記載のフィルムまたは上記(6)記載のシートを加熱硬化して得られる物品
(7)上記(3)に記載のエポキシ樹脂組成物またはその硬化物層を有するフレキシブルプリント配線板用補強板
(8)上記(3)に記載のエポキシ樹脂組成物またはその硬化物層を有するフレキシブルプリント配線板用カバーレイ
(9)上記(3)に記載のエポキシ樹脂組成物またはその硬化物層の片面または両面が、金属箔層の片面または片面金属張樹脂積層板の樹脂面に接していることを特徴とする片面または両面金属張樹脂積層板
(10)上記(4)記載のフィルム、上記(5)記載のシート、上記(7)記載の補強板、上記(8)記載のカバーレイ及び上記(9)記載の積層板からなる群から選ばれる1種以上を使用したフレキシブルプリント配線板
に関する。
本発明の樹脂組成物ならびにこれを含有するエポキシ樹脂組成物は、薄膜状に成形した場合でも十分な柔軟性を有し、かつ電気信頼性に優れる。また、本発明のエポキシ樹脂組成物をシート状に加工したフィルムおよびその硬化物においても上述の柔軟性および電気信頼性を維持しつつ、耐熱性、接着性、難燃性に優れているため、フレキシブル印刷配線基板の製造や半導体絶縁材料等に広く用いることが可能であり、電気基板、絶縁膜等、電気材料分野で極めて有用である。
本発明のa)フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂およびb)フェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂中のフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントは、分子構造中にフェノール性水酸基を、ポリアミド部位の繰り返し単位に対し0.5モル%以上100モル%以下で有していれば特に制限はないが、式(1)の繰り返し構造および式(2)のセグメントにおける−Ar−基として下記式(5)
Figure 0004919659
(式(5)中Rは水素原子又はO、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数0〜6の置換基、Rは直接結合又はO、N、S、P、F、Siを含んでもよい炭素数0〜6で構成される結合を表し、a、b、cは平均置換基数であってa、bはそれぞれ0〜4、cは0〜6の正数を表す。)で表される芳香族残基のうち一種以上を含有するのが好ましく、中でも下記式(5’)で表される芳香族残基が好ましい。
Figure 0004919659
(式(5’)中、中R、Rおよびbは式(5)におけるのと同じ意味を表す。)
式(5)および(5’)において、好ましいRとしては、水素原子、水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数4〜6の鎖状アルキル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数4〜6の環状アルキル基等が挙げられ、互いに同一でも異なっていてもよいが、全て同一であるものが好ましい。また、好ましいRとしては、直接結合、−O−、−SO−、−CO−、−(CH1〜6−、−C(CH−、−C(CF−等が挙げられる。なお、式(5)または式(5’)としては、式(1)または式(2)において、−NH−基が3,4’−または4,4’−結合でとなるような構造を選択するのが好ましい。
本発明で使用するa)フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂は、例えば特許2969585号公報、特許1957919号公報等に記載されている方法が応用できる。すなわち芳香族ジアミン原料と、フェノール性水酸基含有芳香族ジカルボン酸原料、場合によってはフェノール性水酸基を含有しない芳香族ジカルボン酸原料とを縮合させて得られる。また、b)フェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂の合成については、同様にして得られたフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂と、ブタジエン重合体またはアクリロニトリル−ブタジエン共重合体とを反応させて得られる。ポリアミド成分とブタジエン重合体またはアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(以下、ゴム成分という)との反応は、芳香族ジアミンを芳香族ジカルボン酸より過剰に仕込んで得られる両末端アミノ基のフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドと両末端カルボン酸のゴム成分、もしくは芳香族ジカルボン酸を芳香族ジアミンより過剰に仕込んで得られる両末端カルボン酸のフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドと両末端アミンのゴム成分とを縮合させる。
芳香族ジアミン原料と、フェノール性水酸基含有芳香族ジカルボン酸原料、場合によってはフェノール性水酸基を含有しない芳香族ジカルボン酸原料との縮合反応、および/またはポリアミド成分と両末端カルボン酸もしくは両末端アミンのゴム成分との縮合反応は、ピリジン誘導体の存在下、りん系縮合剤を用い反応させることができ、その他有機溶媒を用いることができ、その際塩化リチウムや塩化カルシウム等の無機塩を添加すると、より分子量が増大する。りん系縮合剤として亜りん酸エステルが好ましい。この製造方法によれば、官能基であるフェノール性水酸基を保護することなしに、更にフェノール性水酸基と他の反応基、例えばカルボキシル基やアミノ基との反応を起こすことなしに、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂を容易に製造できる。また、重縮合に際して高温を必要としない、すなわち約150℃以下で重縮合可能という利点も有するため、ゴム成分中の二重結合も保護でき、ゴム変性ポリアミド樹脂も容易に製造できる。
以下、本発明で使用されるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂およびフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂中のフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントの合成方法についてより詳しく説明する。合成するために使用する芳香族ジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−トリレンジアミン等のフェニレンジアミン誘導体;4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル等のジアミノジフェニルエーテル誘導体;4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル等のジアミノジフェニルチオエーテル誘導体;4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン等のジアミノベンゾフェノン誘導体;4,4’−ジアミノジフェニルスルフォキサイド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等のジアミノジフェニルスルホン誘導体;ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル等のベンジジン誘導体;p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、o−キシリレンジアミン等のキシリレンジアミン誘導体;4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン等のジアミノジフェニルメタン誘導体等が挙げられ、フェニレンジアミン誘導体、ジアミノジフェニルメタン誘導体またはジアミノジフェニルエーテル誘導体が好ましく、ジアミノジフェニルエーテル誘導体が中でも好ましく、得られるポリマーの溶剤溶解性、難燃性の面から3,4’−ジアミノジフェニルエーテルまたは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが特に好ましい。
また、芳香族ジカルボン酸のうち、フェノール性水酸基含有芳香族ジカルボン酸としては、芳香族環が2つのカルボン酸と1つ以上の水酸基を有する構造であれば特に制限はなく、例えば5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシイソフタル酸、3−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸等ベンゼン環上に1つの水酸基と2つのカルボン酸を有するジカルボン酸を挙げることができ、得られるポリマーの溶剤溶解性、純度、およびエポキシ樹脂組成物としたときの電気特性、金属箔およびポリイミドへの接着性等の面から5−ヒドロキシイソフタル酸が好ましい。またフェノール性水酸基含有芳香族ジカルボン酸原料以外の芳香族ジカルボン酸原料としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられイソフタル酸が好ましい。フェノール性水酸基含有芳香族ジカルボン酸はこれら芳香族ジカルボン酸原料中で0.5モル%以上100モル%以下を占める量を用いる。
フェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂中にエラストマーセグメントを導入するためのゴム成分は、前記式(3−1)で表される構造を有するブタジエン重合体や、式(3−2)で表されるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体であれば特に制限はない。このフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂中においては、樹脂中に含まれるニトリル基が重要な要素で、この量が多すぎると樹脂の電気的特性が低下する。したがって、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体を使用する場合、ニトリル基を含むセグメントの割合が前記yとzの関係を満たすようにする必要がある。
両末端カルボン酸または両末端ゴム成分としては、両末端カルボン酸ポリブタジエン(宇部興産:Hycar CTB)または両末端カルボン酸ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(宇部興産:Hycar CTBN)が好ましい。その使用量は、想定されるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントに対して、20〜200重量%、好ましくは100重量%であり、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントを合成後、反応液中に両末端カルボン酸ゴム成分を投入することによって、フェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミドは得られる。また、このときゴム成分とフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントの両末端カルボン酸または両末端アミンのモル比を考慮してゴム成分を使用する必要がある。
上記亜りん酸エステルとしては、亜りん酸トリフェニル、亜りん酸ジフェニル、亜りん酸トリ−o−トリル、亜りん酸ジ−o−トリル、亜りん酸トリ−m−トリル、亜りん酸トリ−p−トリル、亜りん酸ジ−p−トリル、亜りん酸ジ−p−クロロフェニル、亜りん酸トリ−p−クロロフェニル、亜りん酸ジ−p−クロロフェニル等が挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
また、亜りん酸エステルと共に使用するピリジン誘導体としては、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,4−ルチジンなどを例示することが出来る。
本発明に使用されるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂およびフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂の製造において使用される縮合剤は、上記亜りん酸エステルとピリジン誘導体であるがピリジン誘導体は有機溶媒に添加して用いられるのが一般的である。該有機溶媒としては亜りん酸エステルと実質的に反応せず、かつ上記芳香族ジアミンと上記ジカルボン酸とを良好に溶解させる性質を有するほか、反応生成物であるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂またはフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂に対する良溶媒であることが望ましい。この様な有機溶媒としては、N−メチルピロリドンやジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒の他、トルエン、MEK、またはこれらとアミド系溶媒との混合溶媒が挙げられ、中でもN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。通常、ピリジン誘導体と溶媒の混合物中で、ピリジン誘導体が5〜30重量%を占める量で添加した混合物が使用される。
また、重合度の大きいフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂またはフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂を得るには、上記亜りん酸エステルとピリジン誘導体との他に、塩化リチウム、塩化カルシウムなどの無機塩類を添加することが好ましい。
以下、本発明で使用するフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂およびフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂の製造方法を、最も好ましい態様を例にとってより具体的に説明する。まず、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂においては、ピリジン誘導体を含む有機溶媒からなる混合溶媒中に亜りん酸エステルを添加し、これに5−ヒドロキシイソフタル酸および場合によってはイソフタル酸と、該ジカルボン酸100モルに対して50〜200モルの3,4’−ジアミノジフェニルエーテルまたは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを添加し、次いで窒素などの不活性雰囲気下で加熱撹拌する。反応終了後、反応混合物を水、メタノール、あるいはヘキサンなどの貧溶媒を反応液に添加、または貧溶媒中に反応液投じて精製重合体を分離した後、再沈殿法によって精製を行って副生成物や無機塩類などを除去することにより、前記式(1)で表されるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂を得ることが出来る。
また、フェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂においては、ピリジン誘導体を含む有機溶媒からなる混合溶媒中に亜りん酸エステルを添加し、これに5−ヒドロキシイソフタル酸および場合によってはイソフタル酸と、該ジカルボン酸100モルに対して101〜200モルの3,4’−ジアミノジフェニルエーテルまたは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを添加し、次いで窒素などの不活性雰囲気下で加熱撹拌し、両末端がアミンであるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントが得られる。その後、有機溶媒で希釈した1〜100モルの両末端カルボン酸ゴム成分を添加し、引き続き不活性雰囲気下で加熱撹拌する。反応終了後、反応混合物を水、メタノール、あるいはヘキサンなどの貧溶媒を反応液に添加、または貧溶媒中に反応液を投じて精製重合体を分離した後、再沈殿法によって精製を行って副生成物や無機塩類などを除去することにより、前記式(2)表されるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントと前記式(3−1)または(3−2)で表されるエラストマーセグメントを有するフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂を得ることが出来る。
上記製造方法において縮合剤である亜りん酸エステルの添加量は、通常、アミノ基に対して通常等モル〜30倍モルである。30倍モル以上は効率的ではない。また、亜りん酸トリエステルを用いた場合、副生する亜りん酸ジエステルも縮合剤であるため、通常の80モル%程度でもよい。ピリジン誘導体の量はアミノ基に対して等モル以上であることが必要であるが、実際には反応溶媒としての役割を兼ねて大過剰使用されることが多い。上記ピリジン誘導体と有機溶媒とからなる混合物の使用量は、理論上得られるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂またはフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂濃度が、5〜30重量部となるような範囲が好ましい。反応温度は、通常60〜180℃が好ましい。反応時間は反応温度により大きく影響されるが、いかなる場合にも最高の重合度を表す最高粘度が得られるまで反応系を撹拌することが好ましく、通常数分から20時間である。
上記好ましい反応条件下で、5−ヒドロキシイソフタル酸および場合によってはイソフタル酸と3,4’−ジアミノジフェニルエーテルまたは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを等モル使用すると、繰り返し単位が2〜100程度という最も好ましい平均重合度を有するフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂を得ることができ、5−ヒドロキシイソフタル酸および場合によってはイソフタル酸と3,4’−ジアミノジフェニルエーテルまたは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルさらには両末端カルボン酸ゴム成分を、これら全体のカルボン酸に対し全体のアミンを等モル使用すると、最も好ましい平均重合度を有するフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂を得ることができる。
上記、好ましい平均重合度を有するフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂またはフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂の固有粘度値(30℃における0.5g/dlのN,N−ジメチルアセトアミド溶液で測定)は0.1〜4.0dl/gの範囲にある。一般に好ましい平均重合度を有するか否かは、固有粘度を参照することにより判断する。固有粘度が0.1dl/gより小さいと、成膜性や芳香族ポリアミド樹脂としての性質出現が不十分であるため、好ましくない。逆に固有粘度が4.0dl/gより大きいと、重合度が高すぎ溶剤溶解性が悪くなり、かつ成形加工性が悪くなるといった問題が発生する。
フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂またはフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂の重合度を調節する簡便な方法としては、ジアミン原料またはジカルボン酸原料のどちらか一方を過剰に使用する方法を挙げることができるが、両末端カルボン酸ゴム成分を原料として用いる場合ジアミン原料を過剰に使用する方法が好ましい。なお、式(1)にけるn/(n+m)は通常0.005〜1.00であるが、この比が大きすぎると樹脂中に残留するリン系イオンの量が多くなる場合があるので、この観点からは0.01〜0.05が好ましい。また式(2)になお、式(1)にけるn/(n+m)は通常0.005〜1.00であるが、0.05〜0.20が好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、a)フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂とb)フェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂とを含有すれば、他の成分に特に制限無いが、たとえば本樹脂組成物が溶剤に溶解してなる樹脂組成物溶液が挙げられ、上述のフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂とフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂とを溶剤に溶解して得ることができる。溶剤としては、例えばγ−ブチロラクトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。得られた樹脂溶液中の樹脂濃度はフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂が通常10〜70重量%、フェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂が通常10〜70重量%、両者を合わせた樹脂組成物の固形分濃度(溶剤の以外の物質の含有量、以下同様)が通常20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。本発明のポリアミド樹脂組成物におけるa)成分とb)成分の割合は、a)成分とb)成分の合計100重量%に対して、通常a)成分40〜95重量%、b)成分5〜95重量%である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドとフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂とを含有する組成物および、エポキシ樹脂とより成る。用いられるエポキシ樹脂としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環のような芳香族環を有し、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものであるならば特に限定はされない。具体的にはノボラック型エポキシ樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、別途硬化剤を配合しても良い。配合し得る硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノ−ルノボラック、トリフェニルメタンおよびこれらの変性物、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら硬化剤を配合する場合、エポキシ樹脂組成物中のフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂およびフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂が全硬化剤中に占める割合としては通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上である。
本発明のエポキシ樹脂組成物において配合する硬化剤の使用量は、硬化剤、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂、およびフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂の全活性水素当量が、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2であることが好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7活性水素当量に満たない場合、あるいは1.2活性水素当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂およびフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂の活性水素当量は反応時に仕込んだフェノール性水酸基含有芳香族ジカルボン酸および過剰分のジアミン成分の合計から算出することが出来る。
また上記硬化剤を用いる際に硬化促進剤を併用しても差し支えない。用いうる硬化促進剤の具体例としては例えば2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤はエポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は必要により無機充填材を含有する。用いうる無機充填材の具体例としてはシリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、りん酸カルシウム、アルミナ、タルク、ガラス短繊維等が挙げられる。無機充填材は本発明のエポキシ樹脂組成物中において0〜90重量%を占める量が用いられる。更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、顔料等の種々の配合剤を添加することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば、エポキシ樹脂組成物と場合によっては硬化剤、並びに必要により硬化促進剤および無機充填材、配合剤とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合し、そのエポキシ樹脂組成物を溶融注型法あるいはトランスファー成型法やインジェクション成型法、圧縮成型法などによって成型し、更に80〜200℃で2〜10時間に加熱することにより本発明の硬化物を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物をシート状に加工したフィルムおよびその硬化物は、本発明のエポキシ樹脂組成物を溶剤に溶解して得られる。用いられる溶剤としては、例えばγ−ブチロラクトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。得られたワニス中の固形分濃度は通常20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。
前記本発明のフィルムは、上記のエポキシ樹脂組成物をそれ自体公知のグラビアコート法、スクリーン印刷、メタルマスク法、スピンコート法などの各種塗工方法により平面状支持体上に乾燥後の厚さが所定の厚さ、例えば5〜500μmになるように塗布後乾燥して得られるが、どの塗工法を用いるかは基材の種類、形状、大きさ、塗膜の膜厚により適宜選択される。基材としては、例えばポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種高分子および/またはその共重合体から作られるフィルム、或いは銅箔等の金属箔であり、ポリイミド又は金属箔が好ましい。このフィルムを更に加熱することによりシート状の硬化物を得ることが出来る。本発明のフィルムの好ましい用途としてはフレキシブルプリント配線板用接着シート、フレキシブルプリント配線板用補強板、フレキシブルプリント配線板用カバーレイ、片面または両面金属張樹脂積層板の樹脂層(以下、これらをあわせてフレキシブルプリント配線板用材料という)が挙げられ、本発明のエポキシ樹脂組成物はこれらを構成するフレキシブルプリント配線板用の接着剤または樹脂層として作用する。こういった用途には平面状支持体が剥離フィルムとしての機能を有するものが使用される。
また本発明のワニスを、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ザイロン繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形して硬化物を得ることもできる。この際の溶剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。
次に本発明を更に実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
合成例1
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施し、5−ヒドロキシイソフタル酸1.8g(0.010モル)、イソフタル酸81.3g(0.490モル)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル102g(0.509モル)、塩化リチウム3.4g、N−メチル−2−ピロリドン344g、ピリジン115.7gを加え撹拌溶解させた後亜りん酸トリフェニル251g(0.809モル)を加えて90℃で8時間反応させ、下記式(6)
Figure 0004919659
(式(6)中のn/(m+n)=0.020(仕込みモル比)である。)で表されるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂の反応液を得た。この反応液を室温に冷却した後、メタノール500gに投入し析出した樹脂を濾別し、更にメタノール500gで洗浄した後、メタノール還流して精製した。次いで室温まで冷却した後濾過し、濾過物を乾燥させて樹脂粉末を得た。得量は160gで収率96%であった。この樹脂粉末0.100gをN,N−ジメチルアセトアミド20.0mlに溶解させ、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した対数粘度は、0.50dl/gであった。エポキシ基に対する活性水素当量は計算値で3300g/eqである(水酸基当量は17000g/eq)。
合成例2
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施し、5−ヒドロキシイソフタル酸9.1g(0.050モル)、イソフタル酸56.1g(0.338モル)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル82.2g(0.411モル)、塩化リチウム8.2g、N−メチル−2−ピロリドン856g、ピリジン95.1gを加え撹拌溶解させた後、亜りん酸トリフェニル206.2gを加えて95℃で4時間反応させ、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントを生成させた。これに両末端にカルボキシル基を持つポリブタジエン重合体(宇部興産製、Hycar CTB2000×162、重量平均分子量5000)110g(0.022モル)を165gのピリジンと165gのN−メチルピロリドンに溶かした溶液を加え、更に4時間反応させ、下記式(7)
Figure 0004919659
(式(7)中のn/(m+n)=0.147(仕込みモル比)であり、x/p=0.822(重量比)である。)で表されるフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントとポリブタジエンのエラストマーセグメントとがブロック共重合体となるフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂の反応溶液を得た。この反応溶液を室温に冷却した後、メタノール500gに投入し析出した樹脂を濾別し、更にメタノール500gで洗浄した後、メタノール還流して精製した。次いで室温まで冷却した後濾過し、濾過物を乾燥させて樹脂粉末を得た。得量は250gで収率96.6%であった。この樹脂粉末0.100gをN,N−ジメチルアセトアミド20.0mlに溶解させ、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した対数粘度は、0.60dl/gであった。エポキシ基に対する活性水素当量は計算値で4200g/eqである(水酸基当量は4900g/eq)。
実施例1
合成例1で得られたフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂、合成例2で得られたフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)とを表1に示す割合で混合し、本発明の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のE型粘度計による粘度測定値は20Pa・sであった。
実施例2
実施例1で得られた樹脂組成物溶液に対しエポキシ樹脂としてNC−3000(日本化薬製、エポキシ当量265から285g/eq)を、その他硬化剤としてカヤハードGPH−65(日本化薬製、活性水素当量200から205g/eq)を、硬化促進剤として2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ)を表1に示す割合で加え混合し、本発明のエポキシ樹脂組成物を得た。
実施例3
実施例2のエポキシ樹脂組成物をPETフィルム上に乾燥後の厚さが10μmになるように塗布し、140℃で3分間乾燥しPETフィルムを除去することにより、本発明のフィルムを得た。
実施例4
市販されているポリイミド銅張積層板ユピセルD(商品名;宇部興産社製)を用いてIPC−SM−840に規定されている櫛型電極(導体/線間=100μm/100μm)を形成し評価用回路とし、これに実施例3で作成した本発明のフィルムを貼り合わせ、170℃、5MPaで60分間加熱圧着し、電気信頼性試験用サンプルとした。イオンマイグレーション加速試験機を用いて121℃、100%RHの環境下で電極間に50Vの直流電圧を印加しながら、500時間を上限とし、絶縁抵抗値の連続測定(PCBT)を行った。絶縁抵抗値が10の5乗オーム以下となった時間を測定した結果を表2のHASTの欄に示す。
実施例5
実施例3で得られたフィルムを20cm角に切り出し、テフロン(登録商標)板ではさみ、熱板プレス機を用い170℃、5MPaで60分間加熱処理し、本発明のフィルムの硬化物を得た。この硬化物の難燃性、DMA測定によるガラス転移温度(Tg)、およびテンシロン試験機(東洋ボールドウィン製)を用いて室温(25℃)で測定した引っ張り伸度と弾性率を表2のそれぞれの欄に示す。
実施例6
実施例2のエポキシ樹脂組成物を厚さ25μmのポリイミド(ユーピレックス25SGA 宇部興産株式会社製)上にロールコーターを用いて、乾燥後の厚さが25μmになるように塗布し、乾燥条件140℃、3分で溶剤を除去し、接着層付きユーピレックスフィルム(カバーレイ)を得た。
実施例7
実施例6で得られた接着層付きユーピレックスフィルムの接着層剤面に厚さ18μmの圧延銅箔(日鉱マテリアルズ製、BHN箔)の粗化処理面を貼り合わせ、熱板プレス機を用い170℃、5MPaで60分間加熱圧着して本発明の片面銅張樹脂積層板を得た。得られた片面銅張樹脂積層板をテンシロン試験機(東洋ボールドウィン製)を用いて、JIS C6481に準拠して銅箔と樹脂層との剥離強度を測定した結果を表2のポリイミド−樹脂層−銅箔の欄に示す。
実施例8
実施例2のエポキシ樹脂組成物を厚さ18μmの圧延銅箔(日鉱マテリアルズ製、BHN箔)の粗化処理面上にロールコーターを用いて、乾燥後の厚さが10μmになるように塗布し、乾燥条件130℃、7分で溶剤を除去した。その後、接着層付き圧延銅箔2枚を20cm角に切り出し、それら接着層面どうしを接触させ、熱板プレス機を用い170℃、5MPaで60分間加熱圧着して本発明の両面銅張樹脂積層板を得た。得られた両面銅張樹脂積層板をテンシロン試験機(東洋ボールドウィン製)を用いて、JIS C6481に準拠して銅箔−接着樹脂層−銅箔との剥離強度を測定した結果を表2の銅箔−接着層−銅箔の欄に示す。
実施例9
実施例3のフィルムを厚さ25μmのポリイミド(ユーピレックス25SGA 宇部興産株式会社製)ではさみ、170℃、5MPaで60分間加熱圧着した。得られたものをテンシロン試験機(東洋ボールドウィン製)を用いて、JIS C6481に準拠して測定した。このポリイミド−接着樹脂層−ポリイミドとの剥離強度を測定することにより、両面銅張樹脂積層板用評価とした。剥離強度結果を表2のポリイミド−接着層−銅箔の欄に示す。
比較例1
実施例1において、合成例1で得られたフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂を用いなかった以外は実施例1及び2と同様にして、表1に示す割合で各成分を配合した比較用のエポキシ樹脂組成物を得た。
比較例2
実施例1において、合成例2で得られたフェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂を用いなかった以外は実施例1及び2と同様にして、表1に示す割合で各成分を配合した比較用のエポキシ樹脂組成物を得た。
比較例3
比較例1のエポキシ樹脂組成物につき実施例3、4、および5と同様な操作を施し比較用のフィルムおよび、それぞれの実施例に対応する比較用の物品を得た。これらにつき実施例4と同様にしてPCBTを、実施例5と同様にして難燃性、Tg、および引っ張り伸度と弾性率を測定した結果を表2に示す。
比較例4
比較例2のエポキシ樹脂組成物につき実施例3、4、および5と同様な操作を施し比較用のフィルムおよび、それぞれの実施例に対応する比較用の物品を得た。これらにつき実施例4と同様にしてPCBTを、実施例5と同様にして難燃性、Tg、および引っ張り伸度と弾性率を測定した結果を表2に示す。
Figure 0004919659
Figure 0004919659
このように本発明のエポキシ樹脂組成物は、比較用のエポキシ樹脂組成物に比べ、種々の基板への接着性や耐熱性、難燃性を損ねることなく、電気特性、特に絶縁性向上させることができる。

Claims (9)

  1. a)下記式(1)
    Figure 0004919659
    (式(1)中mおよびnは平均値で、0.005≦n/(m+n)≦1.00を示し、また、m+nは2〜200の正数である。Arは2価の芳香族基、Arはフェノール性水酸基を有する二価の芳香族基、Arは二価の芳香族基を示す)で表される構造を有する、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂と、b)下記式(2)
    Figure 0004919659
    (式(2)中m、n、Ar、Ar、およびArは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)で表される構造を有する、フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントと、下記式(3−1)または(3−2)
    Figure 0004919659
    (式(3)中x、y、およびzはそれぞれ平均値で、xは5〜200の正数を示し、yおよびzは0<z/(y+z)≦0.10を示し、また、y+zは10〜200の正数である。)より選ばれるブタジエン重合体またはアクリロニトリル−ブタジエン共重合体セグメントを分子中に有する、フェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂、及びc)エポキシ樹脂を含有することすることを特徴とする、エポキシ樹脂組成物。
  2. a)フェノール性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂およびb)フェノール性水酸基含有ゴム変性ポリアミド樹脂中のフェノール性水酸基含有芳香族ポリアミドセグメントが下記式(4)
    Figure 0004919659
    (式(4)中m、n及び、Arは式(1)におけるのと同じ意味を表し、qは平均置換基数であって1〜4の整数である。)で表される構造を有するセグメントである、請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 請求項に記載のエポキシ樹脂組成物をシート状に加工したフィルム。
  4. 請求項に記載のエポキシ樹脂組成物を有するフレキシブルプリント配線板用接着シート。
  5. 請求項記載のエポキシ樹脂組成物、請求項記載のフィルムまたは請求項記載のシートを加熱硬化して得られる物品。
  6. 請求項に記載のエポキシ樹脂組成物またはその硬化物層を有するフレキシブルプリント配線板用補強板。
  7. 請求項に記載のエポキシ樹脂組成物またはその硬化物層を有するフレキシブルプリント配線板用カバーレイ。
  8. 請求項に記載のエポキシ樹脂組成物またはその硬化物層の片面または両面が、金属箔層の片面または片面金属張樹脂積層板の樹脂面に接していることを特徴とする片面または両面金属張樹脂積層板。
  9. 請求項記載のフィルム、請求項記載のシート、請求項記載の補強板、請求項記載のカバーレイ及び請求項記載の積層板からなる群から選ばれる1種以上を使用したフレキシブルプリント配線板。
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