JP4918263B2 - 軸流圧縮機の静翼環 - Google Patents

Description

本発明はガスタービン圧縮機などの軸流圧縮機の静翼環に関し、組立静翼の実現により圧縮機の信頼性向上と性能向上が図れるようにしたものである。

図５は、従来のガスタービンの圧縮機静翼環の説明図で、同図（ａ）は断面図、同図（ｂ）は同図（ａ）のＣ矢視図である。図において、１００は圧縮機の静翼で、１０１はその外側シュラウドで車室１０２に組込まれている。１０３は内側シュラウドである。静翼１００は外側シュラウド１０１と内側シュラウド１０３にそれぞれテノン部（突出し部）１００ａ，１００ｂにおいて隅肉溶接で固定されている。１０４ａ，１０４ｂはそれぞれ内側シュラウド１０３のシールアームで、ロータ１０５のシール面と対向し、圧縮空気の洩れを防止している（特許文献１参照）。

上記のように静翼１００は内側及び外側シュラウド１０３，１０１に溶接で固定された構造であり、この静翼１００が円周上に複数枚配されて、全周で２分割された静翼環を構成している。このような静翼環が軸方向に複数段取付けられ、それらの間で動翼が回転することにより、ガスタービン作動空気を作る。

特開平１０−３１７９１０号公報

ところが、上述した従来の静翼環にあっては、静翼１００と内側及び外側シュラウド１０３，１０１をテノン部１００ａ，１００ｂで溶接で結合する。溶接では溶接肉盛底に切欠き欠陥が生じる場合があるが、本例での隅肉溶接ではその傾向が大で、これらの隅肉溶接部を起点した亀裂が発生するという虞れがあった。また、シールアーム１０４ａ，１０４ｂについても内側シュラウド１０３と隅肉溶接で結合するため、同様の虞れがあった。これらの結果、圧縮機静翼のさらなる寿命向上が望まれた。

さらに、静翼１００と内側及び外側シュラウド１０３，１０１は、互いに隅肉溶接で固定され、冶金的に一体となって構成されているため、翼の振動に対してダンピング効果が小さいという不都合があった。この結果、翼を薄くした場合、応力が過大となるため、翼の薄肉化による圧縮機の性能向上に対する阻害要因でもあった。

そこで、本発明の目的は、圧縮機の静翼環を組立静翼の構成とすることにより、シュラウドと翼との接合部の切欠きの除去と、振動に対するダンピングの向上と、それによる翼形の薄肉化とを可能として、ガスタービン圧縮機をはじめとする軸流圧縮機の信頼性向上と性能向上とを図るものである。

斯かる目的を達成するための本発明に係るガスタービンの圧縮機静翼環は、
（１）静翼と該静翼１枚宛に分割形成される内側及び外側シュラウド部を一体形成し、前記外側シュラウド部において、互いに周方向に隣接する静翼複数枚分をバンド部材で連結し、これを１ユニットとして周方向に複数連接してなると共に、前記外側シュラウド部を更に前記バンド部材とは別の補助バンド部材で静翼複数枚分を連結した、ことを特徴とする。

（２）前記（１）において、バンド部材が直接車室側の案内溝部に摺動自在に嵌合されることを特徴とする。

（３）前記（１）において、バンド部材で連結された外側シュラウド部が直接車室側の案内溝部に摺動自在に嵌合されることを特徴とする。

（４）静翼と該静翼１枚宛に分割形成される内側及び外側シュラウド部を一体形成し、前記外側シュラウド部において、互いに周方向に隣接する静翼複数枚分をバンド部材で連結し、前記内側シュラウド部においては、互いに周方向に隣接する静翼複数枚分の長さを有したシールホルダで挾持し、これを１ユニットとして周方向に複数連接してなると共に、前記外側シュラウド部を更に前記バンド部材とは別の補助バンド部材で静翼複数枚分を連結した、ことを特徴とする。

（５）前記（１），（２）又は（３）において、内側シュラウド部においては、互いに周方向に隣接する静翼複数枚分の長さを有したシールホルダで挾持することを特徴とする。

（６）前記（４）又は（５）において、シールホルダが作動流体の流れ方向に２分割されて締結手段で締結されることを特徴とする。

（７）前記（４），（５）又は（６）において、内側シュラウド部とシールホルダとはピン結合されることを特徴とする。

（８）前記（４），（５），（６）又は（７）において、互いに周方向に隣接する内側シュラウド部間及び外側シュラウド部間にそれぞれスペーサを介在させたことを特徴とする。

本発明のガスタービンの圧縮機静翼環によれば、組立静翼を実現でき、隅肉溶接を廃止することができるので、亀裂発生等の虞がなくなり圧縮機の信頼性が向上する。また、亀裂が発生した場合の補修が不要となることから、定期検査のインターバルの延長が可能となる。さらに、翼振動に対するダンピングが実現でき、応力の低減効果により翼の薄肉化が可能となるので、圧縮機の性能向上が図れる。

以下、本発明に係る軸流圧縮機の静翼環を実施例により図面を用いて詳細に説明する。

図１は本発明の実施例１を示すガスタービンの圧縮機静翼環の正面図、図２は図１のＡ−Ａ線断面図、図３は図１のＢ−Ｂ矢視図である。

図１に示すように、本実施例のガスタービンの圧縮機静翼環１は、円周方向に第１〜第４のユニット１ａ〜１ｄに分割される。そして、第１のユニット１ａには７枚の静翼２、第２のユニット１ｂには８枚の静翼２、第３のユニット１ｃには７枚の静翼２、第４のユニット１ｄには８枚の静翼２がそれぞれ備えられ、第１のユニット１ａと第２のユニット１ｂが車室２０（図２参照）の上半部に、第３のユニット１ｃと第４のユニット１ｄが車室２０の下半部にそれぞれ組み込まれる。

前記第１〜第４ユニット１ａ〜１ｄにおける構造を、図２及び図３を用いて説明する。先ず、静翼２と該静翼１枚宛に分割形成される内側シュラウド部３と外側シュラウド部４とが一体形成される。

そして、外側シュラウド部４は、対応するユニットにおける所定の数だけバンド部材（外側ホルダとも謂う：連結手段）５で連結され、このバンド部材５を介して車室２０の案内溝部２０ａに前，後両部（作動流体の流れ方向（図２中矢印参照）における上流部と下流部）において摺動自在に嵌合されるようになっている。バンド部材５は、圧縮機静翼環１の略１／４周分の長さを有し、各外側シュラウド部４とは、案内溝部５ａを介して前，後両部において摺動自在に嵌合した後、ボルト６で結合されている。

図３中８は、互いに周方向に隣接する外側シュラウド部４間にそれぞれ介在されたスペーサであり、製造コスト上余裕があれば、外側シュラウド部４と一体形成して廃止しても良い。

前記内側シュラウド部３は、対応するユニットにおける所定の数にわたって、作動流体の流れ方向又はロータの軸方向に２分割されてボルト（締結手段）１１で締結されるシールホルダ９，１０に、当該シールホルダ９，１０の案内溝部９ａ，１０ａによりその前，後両部において摺動自在に嵌合された状態で、挾持される。なお、この実施例では、組立作業を容易にするためにシールホルダ９，１０を２分割型にしているが、製造コスト又は構造体強度などを考慮して一体型又は３分割型にしてもよい。

シールホルダ９，１０は、圧縮機静翼環１の略１／４周分の長さを有し、各内側シュラウド部３とはピン１２結合されると共にその内周シール部９ｂ，１０ｂがロータ２１の外周部に気密に摺接している。また、外側シュラウド部４と同様に、互いに周方向に隣接する内側シュラウド部３間にそれぞれスペーサ（図示せず）が介在されるが、このスペーサも製造コスト上余裕があれば、内側シュラウド部３と一体形成して廃止しても良い。

このようにして、本実施例では、圧縮機静翼環１を円周方向に第１〜第４のユニット１ａ〜１ｄに分割し、各ユニット１ａ〜１ｄにおける静翼２と該静翼１枚宛に分割形成される内側及び外側シュラウド部３，４を所定の素材及び加工方法により一体形成した。

これにより、従来のような隅肉溶接を廃止することができるので、亀裂発生等の虞がなくなり、耐久性（疲労強度）の向上により圧縮機の信頼性が向上される。また、亀裂が発生した場合の補修が不要となることから、定期検査のインターバルの延長が可能となる。

また、外側シュラウド部４は、対応するユニットにおける所定の数だけバンド部材５で連結されるので、組立、取外しが容易になる。

ところで、ガスタービンの運転中は、作動流体の加振により翼の振動が発生する。ところが、本実施例では、内側及び外側シュラウド部３，４が静翼１枚宛に分割形成されているので、互いに周方向に隣接する内側及び外側シュラウド部３，４とスペーサ８（スペーサ８が無い場合は内側及び外側シュラウド部３，４同士）の接触部が摺動することになり、摩擦ダンピング効果が発生するため、翼の振動を小さく抑えることができる。即ち、応力の低減効果により翼の薄肉化が可能となり、圧縮機の性能向上が図れるのである。

特に、内側シュラウド部３は、２分割されてボルト１１で締結されるシールホルダ９，１０に挾持されて、組立構造になっているので、溶接構造と異なり疲労強度が向上すると共に、内側シュラウド部３とシールホルダ９，１０との間でも摺動可能であり摩擦ダンピング効果が発生するため、より一層翼の振動を小さく抑えることができる。

また、内側シュラウド部３とシールホルダ１０とは、ピン１２結合されているので、内側シュラウド部３（換言すれば、静翼２）が微小に振動することによるフレッティング摩耗及び亀裂が生じるのが回避される。なお、ピン１２の代わりにボルト又はボルトとバネとの組合せなど、ダンピング効果が得られる結合手段であれば適用することは可能である。

図４は本発明の実施例２を示すガスタービンの圧縮機静翼環の要部分解斜視図、図５は図４のさらに要部拡大断面図である。

これは、実施例１における外側シュラウド部４とスペーサ８を、当該外側シュラウド部４とスペーサ８の上面部（外周側）に形成したあり溝４ａ（スペーサ８のあり溝は図示せず）内に嵌合する狭幅のバンド部材５Ａ（連結手段）で連結して、外側シュラウド部４及びスペーサ８を直接車室２０の案内溝部２０ａに摺動自在に嵌合した例である。その他の構成は実施例１と同様である。

これによれば、実施例１と同様の作用・効果に加えて、バンド部材５Ａをコンパクトに形成することができる利点がある。なお、本実施例においても、スペーサ８は特に用いなくても良い。

図６は本発明の実施例３を示すガスタービンの圧縮機静翼環の要部断面図である。

これは、実施例１における外側シュラウド部４（及びスペーサ８）を、バンド部材５で連結する前に、予め当該バンド部材５とは別の狭幅の補助バンド部材７で連結するようにした例である。その他の構成は実施例１と同様である。

これによれば、実施例１と同様の作用・効果に加えて、点検等の取外し作業時に、バンド部材５を取り外しても即静翼２がバラバラにならないという利点がある。

尚、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で内，外シュラウド部及びシールホルダ並びにバンド部材の形状変更等各種変更が可能であることはいうまでもない。また、連結手段としては、前記バンド部材の他、各種溶接方法（レーザー、アーク、電子ビーム等）がある。

本発明の実施例１を示すガスタービンの圧縮機静翼環の正面図である。 図１のＡ−Ａ線断面図である。 図１のＢ−Ｂ矢視図である。 本発明の実施例２を示すガスタービンの圧縮機静翼環の要部分解斜視図である。 図４のさらに要部拡大断面図である。 本発明の実施例３を示すガスタービンの圧縮機静翼環の要部断面図である。 従来のガスタービンの圧縮機静翼環の説明図で、同図（ａ）は断面図、同図（ｂ）は同図（ａ）のＣ矢視図である。

符号の説明

１ 圧縮機静翼環
１ａ〜１ｄ 第１〜第４のユニット
２ 静翼
３ 内側シュラウド部
４ 外側シュラウド部
４ａ あり溝
５，５Ａ バンド部材
５ａ 案内溝部
６ ボルト部材
７ 補助バンド部材
８ スペーサ
９，１０ シールホルダ
９ａ，１０ａ 案内溝部
９ｂ，１０ｂ 内周シール部
１１ ボルト
１２ ピン
２０ 車室
２０ａ 案内溝部
２１ ロータ

Claims (8)

1. 静翼と該静翼１枚宛に分割形成される内側及び外側シュラウド部を一体形成し、
   前記外側シュラウド部において、互いに周方向に隣接する静翼複数枚分をバンド部材で連結し、
   これを１ユニットとして周方向に複数連接してなると共に、
   前記外側シュラウド部を更に前記バンド部材とは別の補助バンド部材で静翼複数枚分を連結した、
   ことを特徴とする軸流圧縮機の静翼環。
2. 前記バンド部材が直接車室側の案内溝部に摺動自在に嵌合されることを特徴とする請求項１記載の軸流圧縮機の静翼環。
3. 前記バンド部材で連結された外側シュラウド部が直接車室側の案内溝部に摺動自在に嵌合されることを特徴とする請求項１記載の軸流圧縮機の静翼環。
4. 静翼と該静翼１枚宛に分割形成される内側及び外側シュラウド部を一体形成し、
   前記外側シュラウド部において、互いに周方向に隣接する静翼複数枚分をバンド部材で連結し、
   前記内側シュラウド部においては、互いに周方向に隣接する静翼複数枚分の長さを有したシールホルダで挾持し、
   これを１ユニットとして周方向に複数連接してなると共に、
   前記外側シュラウド部を更に前記バンド部材とは別の補助バンド部材で静翼複数枚分を連結した、
   ことを特徴とする軸流圧縮機の静翼環。
5. 前記内側シュラウド部においては、互いに周方向に隣接する静翼複数枚分の長さを有したシールホルダで挾持することを特徴とする請求項１，２又は３記載の軸流圧縮機の静翼環。
6. 前記シールホルダが作動流体の流れ方向に２分割されて締結手段で締結されることを特徴とする請求項４又は５記載の軸流圧縮機の静翼環。
7. 前記内側シュラウド部と前記シールホルダとはピン結合されることを特徴とする請求項４，５又は６記載の軸流圧縮機の静翼環。
8. 前記互いに周方向に隣接する内側シュラウド部間及び外側シュラウド部間にそれぞれスペーサを介在させたことを特徴とする請求項４，５，６又は７記載の軸流圧縮機の静翼環。

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