JP4918197B2 - ホウ酸と鉱酸との混酸から鉱酸を回収する方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホウ酸(ホウ酸塩を含む)と鉱酸との混酸から鉱酸を回収する方法に関し、特に、産業廃水、飲料水、食品加工用水等の水や、食用油、食品加工油等の油類のような各種液体中に含まれるホウ素成分を吸着除去するために使用したキレート材を再生処理する際に発生する廃混酸や、生産過程で発生するホウ酸を含む混酸から鉱酸を回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホウ素やホウ素化合物は自然界に広く分布しており、人体にとって必須の元素であるが、反面、摂取量が多くなり過ぎると逆に悪影響を及ぼすことも確認されている。そして、河川や地下水中に含まれるホウ素成分による人為的汚染と思われる事例が報告されるにおよび、水を再利用する際の悪影響が懸念されている。現在、ホウ素は有害物質として水質汚濁防止法で規制されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来、ホウ素を含んだ廃水は、アルカリ側で凝集沈澱を行って除去しているが、鉱酸等が混合されている場合は、中和するためアルカリ剤が膨大になり、処理コストが高い等の問題がある。また、低濃度のホウ素溶液に対しては、イオン交換樹脂やキレート材を用いてホウ素成分を吸着し、廃水中から除去することが行われているが、ホウ素成分を吸着したイオン交換樹脂やキレート材をそのまま処分することは経済的な面を含めて問題が多いため、塩酸や硫酸等の鉱酸水溶液に接触させ、イオン交換樹脂やキレート材に吸着したホウ素成分を鉱酸水溶液中に溶解させることによってイオン交換樹脂やキレート材を再生し、再生後にホウ素成分の吸着除去に再利用することが行われている。しかし、再生処理に使用して排出される鉱酸水溶液(廃混酸)を処理することも同様にコストが高いという問題がある。
【0004】
これらの廃混酸中のホウ酸と鉱酸とを効率よく分離できれば、廃混酸中の鉱酸をイオン交換樹脂やキレート材の再生用や、生産工程に戻して再利用できるとともに、ホウ酸を精製することにより、これをホウ酸、ホウ素含有物の原料として利用することが容易になる。
【0005】
そこで本発明は、ホウ酸と鉱酸とが混合した混酸中のホウ酸を効率よく分離して鉱酸を回収することができる方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のホウ酸と鉱酸との混酸から鉱酸を回収する方法は、第1の構成として、硫酸、塩酸等の鉱酸成分とホウ酸とを含む混酸中の鉱酸を回収する方法であって、少なくとも陰イオン交換膜を有する電気透析装置を用い、該電気透析装置における透析槽の内部を前記陰イオン交換膜により陰極を設置した陰極室と陽極を設置した陽極室とに仕切り、前記混酸をpH5以下としてホウ酸がイオンに解離していない状態で前記陰極に導入し、前記鉱酸成分の陰イオンを、前記陰イオン交換膜を透過させて前記陽極に移行させて、該陽極室に導入されたキャリア液に伴わせて鉱酸濃縮液として取り出すことを特徴としている。
【0007】
また、本発明方法の第2に構成は、硫酸、塩酸等の鉱酸成分とホウ酸とを含む混酸中の鉱酸を回収する方法であって、陰イオン交換膜及び陽イオン交換膜により、陰極を有する陰イオン交換膜側の陰極室、陽極を有する陽イオン交換膜側の陽極室及び陰イオン交換膜と陽イオン交換膜とに挟まれた濃縮室の3室を区画形成した電気透析装置を用い、前記混酸をpH5以下としてホウ酸がイオンに解離していない状態で前記陰極室及び陽極室のいずれか一方の室内を経て他方の室内に導入し、前記陰極室で鉱酸成分の陰イオンを、前記陽極室で鉱酸中に存在する陽イオン不純物を前記濃縮室にそれぞれ移行させることで、前記陰極室及び陽極室にホウ酸を残留させ、前記濃縮室に移行された陰イオン及び陽イオン不純物を、前記濃縮室に流入する混酸により押し出して取り出すことを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明方法は、前記第1、第2の構成において、前記混酸が、ホウ素成分を吸着したキレート材を、硫酸、塩酸等の鉱酸で再生したときに発生する廃混酸であることを特徴とし、加えて、前記廃混酸から回収した鉱酸を、前記キレート材の再生に再利用することを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明方法によって鉱酸を回収するための装置構成の第1形態例を示す概略図である。この鉱酸回収装置は、透析槽10の内部を陰イオン交換膜11により仕切って一方に陽極12を設置した陽極室13を、他方に陰極14を設置した陰極室15をそれぞれ設けるとともに、陰極室15に混酸流入経路16及びホウ酸精製液流出経路17を、陽極室13にキャリア液流入経路18及び鉱酸濃縮液流出経路19を、それぞれ設けたものである。
【0010】
ホウ酸を含む混酸の水溶液は、混酸流入経路16から陰極側の陰極室15内に流入し、陽極12及び陰極14による電場の作用により、鉱酸成分の陰イオン、例えば塩素イオン(Cl)や硫酸イオン(SO 2−)は、陰イオン交換膜11を透過して陽極室13に移動する。陽極室13に移動した鉱酸成分の陰イオンは、キャリア液流入経路18から導入されるキャリア液に伴われて鉱酸濃縮液流出経路19から取り出される。このとき、キャリア液の流量を、混酸の流量より小さくすれば、混酸よりも濃度の高い鉱酸溶液を得ることができる。具体的には、キャリア液の流量を、混酸の流量の80%以下、特に50%以下にすることが好ましい。ホウ酸分離後の鉱酸成分は、キレート材再生用や、生産工程用等の鉱酸水溶液として再利用することができる。
【0011】
一方、陰極室15内のpHをホウ酸がホウ酸イオンに解離しないpH5以下に保つようにしておくことにより、ホウ酸(ホウ酸イオン)が陽極室13に移動することが無くなるので、ホウ酸は、陰極室15内に留まって精製され、ホウ酸精製液流出経路17から取り出すことができる。精製したホウ酸水溶液は、鉱酸等の不純物が少ないため、ホウ素原料としての利用が容易である。
【0012】
なお、キャリア液流入経路18から陽極室13内に流入するキャリア液は、電気透析開始時において所定の電気伝導度を得られる液ならばよく、通常運転時には水であってもよく、混酸や鉱酸の水溶液を使用することも可能である。
【0013】
図2は本発明方法を実施するための装置構成の第2形態例を示すホウ酸分離装置の概略図である。このホウ酸分離装置は、透析槽20の内部をカチオン交換膜21とアニオン交換膜22とにより、カチオン交換膜21側で陽極23を有する陽極室24と、アニオン交換膜22側で陰極25を有する陰極室26と、カチオン交換膜21とアニオン交換膜22とに挟まれた濃縮室27との三室に区画するとともに、前記陽極室24に混酸流入経路28を、前記陰極室26にホウ酸精製液流出経路29を、陽極室24と陰極室26との間に連絡経路30を、そして、前記濃縮室27に濃縮液流出経路31及びキャリア液流入経路32を、それぞれ設けたものである。なお、本例では、キャリア液流入経路32は、混酸流入経路28から分岐させているが、別の経路から任意の液体を流入させることができる。
【0014】
このような構成のホウ酸分離装置において、混酸流入経路28から陽極室24に流入したpH5以下の混酸水溶液中の陽イオン、例えばナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンをはじめとする各種金属イオン33は、陰極25側に引き寄せられることにより、カチオン交換膜21を通過して濃縮室27に移動する。
【0015】
陽極室24で陽イオン低減処理が行われた陽極室処理水は、前記連絡経路30を通って陰極室26に流入する。この陰極室26では、陽極室処理水中に存在する塩素イオンや硫酸イオン、炭酸イオン等の陰イオン34が陽極23側に引き寄せられることにより、アニオン交換膜22を通過して濃縮室27に移動する。
【0016】
したがって、イオンに解離していないホウ酸は、陽極室24及び陰極室26のいずれでも濃縮室27に移動することはなく、両室24,26で非透過液側に残留する。すなわち、陰極室26からホウ酸精製液流出経路29に流出する液体は、陽極室24で陽イオン33が除去され、陰極室26で陰イオン34が除去されることにより、イオンに解離していないホウ酸が精製された液となる。また、濃縮室27に移動した陽イオン33及び陰イオン34は、キャリア液流入経路32から濃縮室27に流入する混酸によって濃縮液流出経路31に押し出される。
【0017】
なお、陽極室24にはカチオン交換樹脂を、陰極室26にはアニオン交換樹脂をそれぞれ充填しておくこともできる。このようなイオン交換樹脂を使用すると、陰極室26では、廃混酸中の陰イオンがまずアニオン交換樹脂に捕捉される。次に、陰極25で発生するOHイオンによってアニオン交換樹脂に捕捉された陰イオンが置換され、濃縮室27に移動する。陽極室24でも同様に、廃混酸中の陽イオンがまずカチオン交換樹脂に捕捉され、陽極25で発生するHイオンによってカチオン交換樹脂に捕捉された陽イオンが置換され、濃縮室27に移動する。これにより、得られるホウ酸精製液中の不純物量が著しく減少し、また電気透析の処理速度を上げることができる。
【0018】
図3は、本発明方法を、廃水中のホウ酸イオンをキレート材によって除去するための水処理設備に適用した例を示す概略系統図である。この水処理設備は、廃水流入経路51から流入する廃水と、キレート材流入経路52から流入するキレート材とを反応槽53で混合してキレート材にホウ酸イオンを吸着させた後、分離槽54の固液分離手段55でキレート材を分離することによって処理水流出経路56からホウ酸イオンを除去した廃水を得るようにしたものである。なお、キレート材を複数用いることにより、他の金属イオン等を同時に廃水中から除去することが可能である。
【0019】
ホウ酸イオンを吸着したキレート材は、分離槽54から再生経路57を経て再生槽58に流入し、再生液流入経路59から流入するキレート材再生用の鉱酸水溶液と接触することにより、吸着していたホウ酸イオンを鉱酸中に放出して再生される。再生後のキレート材は、アルカリ等の洗浄液で中和処理が行われ、固液分離手段60で洗浄液を分離した後、前記キレート材流入経路52を通って前記反応槽53に再流入する。
【0020】
再生槽58でキレート材から放出されたホウ酸イオンは、鉱酸水溶液中に溶解した状態となり、この鉱酸水溶液をpH5以下に調整することにより、ホウ酸分子として液中に存在する状態となる。このようにホウ酸を含んだ状態の鉱酸水溶液(廃混酸)は、廃混酸再生経路61を通り、前記図1に示したようなホウ酸分離装置における透析槽10の陰極室15内に流入する。
【0021】
そして、前述のような陽極12及び陰極14による電場の作用によって廃混酸中の鉱酸イオンが陽極室13に移動し、陰極室15にホウ酸が分離精製されてホウ酸精製液流出経路17から取り出される。また、廃混酸の一部は、キャリア液流入経路18に分岐して陽極室13に流入し、陰イオン交換膜11を通過して陽極室13に移動した鉱酸イオンを伴って前記再生液流入経路59から再生槽58に再流入する。
【0022】
このように、キレート材再生後の廃混酸からホウ酸を分離することにより、鉱酸成分をキレート材の再生用として再利用することができる。また、ホウ酸分離装置として、前記図2に示した装置を使用することにより、キレート材に吸着されて再生時に鉱酸(混酸)中に溶解した金属イオンをホウ酸精製液中から除去することができる。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明方法によれば、キレート材を再生するために使用した後の鉱酸水溶液や、生産過程で発生するホウ酸を含む混酸中に溶解しているホウ酸を容易に分離除去することができるので、ホウ酸分離後の鉱酸水溶液をキレート材再生用や、生産工程に繰り返し利用することができる。また、ホウ酸精製液中にホウ酸を純粋なかたちで取り出すことができるので、ホウ酸の再利用も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明方法を実施するための装置構成の第1形態例を示す概略図である。
【図2】 本発明方法を実施するための装置構成の第2形態例を示す概略図である。
【図3】 本発明方法を、廃水中のホウ酸イオンをキレート材によって除去するための水処理設備に適用した例を示す概略系統図である。
【符号の説明】
10…透析槽、11…陰イオン交換膜、12…陽極、13…陽極室、14…陰極、15…陰極室、16…混酸流入経路、17…ホウ酸精製液流出経路、18…キャリア液流入経路、19…鉱酸濃縮液流出経路、20…透析槽、21…カチオン交換膜、22…アニオン交換膜、23…陽極、24…陽極室、25…陰極、26…陰極室、27…濃縮室、28…混酸流入経路、29…ホウ酸精製液流出経路、30…連絡経路、31…濃縮液流出経路、32…キャリア液流入経路、33…金属イオン(陽イオン)、34…陰イオン、51…廃水流入経路、52…キレート材流入経路、53…反応槽、54…分離槽、55…固液分離手段、56…処理水流出経路、57…再生経路、58…再生槽、59…再生液流入経路、60…固液分離手段、61…廃混酸再生経路

Claims (4)

  1. 硫酸、塩酸等の鉱酸成分とホウ酸とを含む混酸中の鉱酸を回収する方法であって、
    少なくとも陰イオン交換膜を有する電気透析装置を用い、
    該電気透析装置における透析槽の内部を前記陰イオン交換膜により陰極を設置した陰極室と陽極を設置した陽極室とに仕切り、
    前記混酸をpH5以下としてホウ酸がイオンに解離していない状態で前記陰極に導入し、
    前記鉱酸成分の陰イオンを、前記陰イオン交換膜を透過させて前記陽極に移行させて、該陽極室に導入されたキャリア液に伴わせて鉱酸濃縮液として取り出す
    ことを特徴とするホウ酸と鉱酸との混酸から鉱酸を回収する方法。
  2. 硫酸、塩酸等の鉱酸成分とホウ酸とを含む混酸中の鉱酸を回収する方法であって、
    陰イオン交換膜及び陽イオン交換膜により、陰極を有する陰イオン交換膜側の陰極室、陽極を有する陽イオン交換膜側の陽極室及び陰イオン交換膜と陽イオン交換膜とに挟まれた濃縮室の3室を区画形成した電気透析装置を用い、
    前記混酸をpH5以下としてホウ酸がイオンに解離していない状態で前記陰極室及び陽極室のいずれか一方の室内を経て他方の室内に導入し、
    前記陰極室で鉱酸成分の陰イオンを、前記陽極室で鉱酸中に存在する陽イオン不純物を前記濃縮室にそれぞれ移行させることで、前記陰極室及び陽極室にホウ酸を残留させ、
    前記濃縮室に移行された陰イオン及び陽イオン不純物を、前記濃縮室に流入する混酸により押し出して取り出す
    ことを特徴とするホウ酸と鉱酸との混酸から鉱酸を回収する方法。
  3. 前記混酸は、ホウ素成分を吸着したキレート材を、硫酸、塩酸等の鉱酸で再生したときに発生する廃混酸であることを特徴とする請求項1又は2記載のホウ酸と鉱酸との混酸から鉱酸を回収する方法。
  4. 前記廃混酸から回収した鉱酸を、前記キレート材の再生に再利用することを特徴とする請求項3記載のホウ酸と鉱酸との混酸から鉱酸を回収する方法。
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