JP4918054B2 - 軟質化方法および軟質化種子 - Google Patents

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Description

本発明は、軟質化方法および軟質化種子に関するものである。
例えば、高齢者や、何らかの疾患のため、硬い食物を噛めない・飲み込めない患者が多数存在する。これらの人々は、通常、複数の食品を混合した混合物を、磨り潰してペースト状や、液状にしたものを摂取している。
しかしながら、かかる場合、如何なる食品を食べているのかがはっきりせず、食欲も十分に出ず、その結果、体力を落とす等の弊害が生じやすい。したがって、食欲を増大させる観点からは、食品の柔らかさのみならず、その食品が元来有する食品自体の形状を維持していることも重要である。
これらの双方を満足する食品の軟質化方法として、例えば、特許文献1では、ペクチン分解酵素またはセルロース分解酵素を用いて、食品の形状を保持した状態で、食品を軟らかくする方法が開示されている。
しかしながら、この特許文献1において、処理対象とされる食品は、野菜類、イモ類、豆類、果実類や茸類であり、全ての食品を同様に柔らかくすることは困難である。
特開2003−284522号公報
本発明の目的は、植物の種子、特に、ブナ科またはイチョウ科に属する植物の種子を、その形状を維持しつつ、確実に軟質化することができる軟質化方法、およびかかる軟質化方法により、形状を維持した状態で軟質化され、優れた食感を有する軟質化種子を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜()の本発明により達成される。
(1) ブナ科に属する植物の種子であるクリを軟質化する軟質化方法であって、
前記種子の中心部の温度が65〜85℃の範囲となるように前記種子を、加湿下で加熱処理した後、キシラナーゼおよびペクチナーゼの双方を含有し、前記キシラナーゼおよび前記ペクチナーゼの含有量がそれぞれ0.1〜10wt%となっている酵素含有液を用いて酵素処理することを特徴とする軟質化方法。
) 加湿の湿度は、相対湿度で60〜100%RHである上記()に記載の軟質化方法。
) 前記酵素処理は、減圧下で行われる上記()または()に記載の軟質化方法。
) 前記加熱処理の後、前記酵素処理に先立って、前記種子内部への前記キシラナーゼおよび前記ペクチナーゼの浸透を促進する酵素浸透促進処理を行う上記(1)ないし()のいずれかに記載の軟質化方法。
) 前記酵素浸透促進処理は、前記種子を凍結した後、解凍する凍結・解凍処理である上記()に記載の軟質化方法。
) 前記酵素処理の後、酵素を失活させる酵素失活処理を行う上記(1)ないし()のいずれかに記載の軟質化方法。
) 前記種子は、軟質化前後において、ほぼ等しい形状をなしている上記(1)ないし()のいずれかに記載の軟質化方法。
ブナ科に属する植物の種子であるクリを、上記(1)ないし()のいずれかに記載の軟質化方法により軟質化してなることを特徴とする軟質化種子。
) 前記軟質化種子は、「高齢者用食品の表示許可の取り扱いについて(衛新第15号、厚生省生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長通知、平成6年2月23日)」に記載の「高齢者用食品の試験方法」に準拠して測定した圧縮応力が1×10N/m以下である上記()に記載の軟質化種子。
本発明によれば、ブナ科またはイチョウ科に属する植物の種子を、形状を維持した状態で、確実に軟質化することができ、滑らかな食感を有する軟質化種子が得られる。
特に、加熱処理における温度を適宜設定することにより、型崩れのない軟質化種子をより確実に得ることができる。
このような軟質化種子は、咀嚼や嚥下が困難な人が食するのに適する。
以下、本発明の軟質化方法および軟質化種子を好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の軟質化方法は、ブナ科またはイチョウ科に属する植物の種子を軟質化する方法であり、前記種子を加熱処理した後、キシラナーゼおよびペクチナーゼで酵素処理することを特徴とする。
ここで、本発明が適用される、ブナ科またはイチョウ科に属する植物の種子としては、例えば、クリ属、ブナ属、コナラ属、シイ属、マテバシイ属またはイチョウ属に属する植物の種子が挙げられるが、これらの中でも、特に、クリ属またはイチョウ属に属する植物の種子すなわちクリまたは銀杏が好ましい。
本発明の軟質化方法をこれらの種子の軟化に適用すれば、後に詳述するように、これらの種子の形状を保持しつつ、確実に軟質化させることができる。また、これらの種子(特に、クリまたは銀杏)は、食用としての需要も多いことから好ましい。
なお、本明細書において「種子」とは、ブナ科またはイチョウ科の果実が備える、例えば、種皮(殻・鬼皮)や内種皮(渋皮)等を取り除いた食用に供する部分のことを言う。
本実施形態の軟質化方法は、[1]ブナ科またはイチョウ科に属する植物の種子を加熱処理する加熱処理工程と、[2]加熱した種子を凍結した後、解凍する凍結・解凍処理工程と、[3]解凍した種子に酵素を浸透させて反応させる酵素処理工程と、[4]酵素を失活させる酵素失活処理工程とを有する。
かかる工程を経ることにより、種子の構成成分(例えば、多糖類等)の分子鎖を、その全体にわたって均等に切断することにより低分子化し、結果として、種子の形状を維持した状態で、軟質化を行うことができる。
以下、各工程について詳述する。
[1]加熱処理工程
まず、例えば、クリを用いる場合、鬼皮および渋皮を取り除いて、処理に供する種子を得、次いで、この種子を加熱処理する。
これにより、種子の構成成分は、例えば、分子同士の絡み合いが解けたり、分子鎖が切断されることにより若干低分子化したり、各分子間の距離が大きくなり種子内に空隙が形成されたりする。このため、後述する酵素処理工程[3]において、酵素により、分子鎖の切断をより確実に行うこと、すなわち、種子の軟質化をより確実に行うことができる。
加熱処理の方法としては、特に限定されず、例えば、種子を加湿下で加熱する方法(蒸す方法)、種子を熱湯(沸騰した水)中に浸漬する方法(茹でる方法)、種子に熱湯を噴霧または塗布する方法(塗布法)、種子を火炎に接触させる方法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、加熱処理の方法としては、特に、種子を加湿下に加熱する方法(蒸す方法)が好適である。
かかる方法によれば、加熱処理時において、種子の中心部の温度の制御を容易かつ正確に行うことができる。
また、加熱とともに種子内に水分を含浸させることができ、凍結・解凍処理工程[2]において、この水分を除去することにより、種子内に空隙を形成することができる。その結果、酵素処理工程[3]において、この空隙内に酵素を均一に供給することができる。そのため、酵素による種子の軟質化を、食感に優れた状態で行うことができる。
さらに、最終的に得られる軟質化種子の外表面に、焦げ目を付けることなく、見た目もよい。
この場合、加湿の湿度は、相対湿度で60〜100%RH程度であるのが好ましく、85〜100%RH程度であるのがより好ましい。かかる範囲の湿度の加湿下において、種子に加熱処理を行うことにより、種子の外表面の変質(変性)等をともなうことなく、種子の中心部まで均等に加熱することができる。
また、加熱は、種子の中心部の温度が65〜85℃程度の範囲となるように行うのが好ましく、70〜80℃程度の範囲となるように行うのがより好ましい。種子の中心部の温度を前記範囲内となるように加熱することにより、種子の外表面付近の温度が必要以上に高くなるのを防止して、ほぼ均一に加熱することができる。このため、後述する酵素処理工程[3]において、酵素で種子を処理した際に、種子の外表面が選択的に溶解、膨潤、変形等するのを確実に防止することができる。その結果、種子は、軟質化前後において、ほぼ等しい形状(種子そのものの形状)を確実に維持することができる。
なお、種子の中心部の温度を前記範囲内に設定するには、設置する温度によっても若干異なるが、加熱する温度は、好ましくは70〜110℃程度、より好ましくは80〜100℃程度とされる。かかる範囲内に設定することにより、種子の中心部の温度を前記範囲内に設定することができるとともに、種子全体にわたってほぼ均一な温度を保つことができる。
また、加熱の時間は、種子の中心部の温度によっても若干異なるため、特に限定されないが、前記温度範囲とする場合、5〜30分程度であるのが好ましく、10〜20分程度であるのがより好ましい。かかる時間で種子を加熱することにより、種子の中心部まで(種子全体を)より確実かつ均一に加熱することができるとともに、酵素で種子を処理した際に、種子の外表面が溶解、膨潤、変形等するのをより確実に防止することができる。
[2]凍結・解凍処理工程
次に、加熱処理した種子を、凍結した後、解凍する。
[2−1] まず、加熱処理した種子を、凍結する。
これにより、種子の内部に存在する水分が結晶化した後、後述する工程[2−2]において、再度液化する際に、種子の内部に微細な空隙(流路)が形成される。その結果、酵素処理工程[3]において、酵素含有液を、形成された空隙を介して、種子の中心部にまで確実に浸透させることができる。
したがって、かかる凍結・解凍処理は、酵素処理工程[3]において、種子内部への酵素の浸透を促進する酵素浸透促進処理と言うことができる。
凍結時の温度(凍結温度)は、特に限定されないが、−5℃以下であるのが好ましく、−10℃以下であるのがより好ましく、−20℃以下であるのがさらに好ましい。かかる凍結温度に設定することにより、種子の中心部まで迅速かつ確実にむらなく凍結させることができる。
前記凍結温度に保持する時間も、特に限定されないが、1時間以上であるのが好ましく、5〜12時間程度であるのがより好ましい。
また、凍結温度に到達させるまでの時間も、種子内部に形成すべき空隙のサイズに応じて適宜設定される。例えば、極めて微細な空隙を形成するためには、急激に凍結するのが好ましく、比較的大きな空隙を形成するためには、緩除に凍結するのが好ましい。
[2−2] 次に、凍結した種子を解凍する。
解凍の方法としては、特に限定されないが、例えば、種子を室温下に放置する方法、種子を加熱雰囲気下に放置する方法、種子を減圧雰囲気下に放置する方法の他、前述した加熱処理における方法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、解凍の方法としては、種子を室温下に放置する方法および種子を減圧雰囲気下に放置する方法の少なくとも1種を用いるのが好ましい。前者の方法によれば、大掛かりな設備を必要とせず、容易に種子の解凍を行うことができる。また、種子の型崩れを防止しつつ解凍できることからも好ましい。また、後者の方法によれば、空隙内で結晶化している水分を昇華して、解凍した際に、間隙内に残留する水分の量を確実に減少させることができ、酵素処理工程[3]において、間隙内への酵素の浸透率の向上を図ることができる。
なお、解凍は、本工程[2]で行わずともよく、次工程[3]において、酵素含有液中で種子が解凍される構成としてもよい。
また、酵素浸透促進処理には、種子を凍結・解凍するのに代えて、例えば、種子を酵素溶液中に浸漬した状態で加圧する方法や真空中もしくは、相対湿度で30〜60%RH程度の空気下に置き、表面を若干乾燥する方法等を用いることができる。
[3]酵素処理工程
次に、前記工程[2]を経て、解凍した種子に、酵素を浸透させて反応(酵素反応)させる。
これにより、酵素の作用により、種子の構成成分を切断して、その低分子化を行うことができ、その結果、種子を軟質化させることができる。
本発明では、種子の構成成分を切断させる酵素として、キシラナーゼおよびペクチナーゼの双方を含有するものを用いる。
キシラナーゼは、種子(クリ)に含まれる多糖類の1種であるヘミセルロース中に存在するキシロース同士の結合を切断する酵素活性を有するものである。一方、ペクチナーゼは、ペクチン中に存在するガラクツロン酸同士の結合を切断する酵素活性能を有するものである。
ここで、キシラナーゼおよびペクチナーゼの一方のみを用いて、酵素処理を行った場合、軟質化後の種子は、機械的に測定される値において十分な柔らかさを有さないか、あるいは、たとえ機械的に測定される値において十分な柔らかさを有する場合でも、実際に食した際に、全体にわたって柔らかさの程度が不均一であり、十分(滑らか)な食感が得られないことがある。
これは、前記工程[1]、[2]を経て種子内に形成された空隙内に、酵素を浸透させて種子の構成成分を切断する際に、キシラナーゼおよびペクチナーゼのいずれか一方の酵素処理では、種子内部に、十分に分解(低分子化)できていない多糖類が多数存在し、これらが、種子内に残存することが要因であると考えられる。
これに対して、本発明では、キシラナーゼおよびペクチナーゼの双方を用いて酵素処理を行うことにより、種子内部における構成成分の低分子化の程度を、種子全体にわたって均一にすることができ、軟質化後の種子は、機械的な測定値が低いことのみならず、実際に食した際にも、極めて滑らかな食感が得られる。
また、キシラナーゼおよびペクチナーゼは、それぞれ、上述したような、互いが有する酵素活性を阻害しないものである。そのため、互いが切断し得る種子の構成成分を切断しつつ、これらの酵素が種子内を浸透して行くこととなる。その結果、種子全体にわたって、酵素をほぼ均一に浸透させることができ、均一に軟化させることができる。
種子内部に酵素を浸透させる方法としては、例えば、酵素含有液に解凍した種子を浸漬する方法(浸漬法)、酵素含有液を解凍した種子に噴霧・塗布する方法(塗布法)等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、種子内部に酵素を浸透させる方法としては、酵素含有液に解凍した種子を浸漬する方法(浸漬法)を用いるのが好ましい。浸漬法を用いることにより、簡単な操作で、大量の種子を同時に処理し得ることから好ましい。
この場合、解凍した種子の酵素含有液への浸漬は、常圧下に行うようにしてもよいが、減圧下に行うのが好ましい。これにより、種子内に形成された空隙内、すなわち、種子内部に酵素をより確実に浸透させることができる。
減圧の際の圧力は、特に限定されないが、500〜3000Pa程度であるのが好ましく、1000〜2000Pa程度であるのがより好ましい。
また、酵素含有液の温度は、10〜30℃程度であるのが好ましく、15〜25℃程度であるのがより好ましい。
種子の酵素含有液への浸漬時間は、酵素含有液の温度によっても若干異なり、特に限定されないが、1〜60分間程度であるのが好ましく、5〜45分間程度であるのがより好ましい。
また、解凍した種子の酵素含有液への浸漬は、周囲の雰囲気を減圧することに代えて、または減圧するとともに、種子の形状が崩れない程度で、振動(超音波振動)を付与したり、攪拌したりしながら行うようにしてもよい。これにより、種子の内部への酵素の浸透効率を増大させることができる。
ここで、酵素浸透処理は、キシラナーゼを含有する第1の酵素含有液と、ペクチナーゼを含有する第2の酵素含有液とを用意し、これらを順次用いて種子を処理するようにしてもよいが、キシラナーゼおよびペクチナーゼの双方を含有する酵素含有液を用いるのが好ましい。これにより、キシラナーゼおよびペクチナーゼの双方の酵素を、種子の中心部にまで、十分、かつ、それらの濃度に偏りが生じることなく均一に浸透させることができる。
この場合、酵素含有液中のキシラナーゼの含有量は、特に限定されないが、0.1〜10wt%程度であるのが好ましく、0.5〜5wt%程度であるのがより好ましい。酵素含有液中のキシラナーゼの含有量を前記範囲とすることにより、ヘミセルロースの低分子量化をより確実におこなうことができる。
また、酵素含有液中のペクチナーゼの含有量も、特に限定されないが、0.1〜10wt%程度であるのが好ましく、0.5〜5wt%程度であるのがより好ましい。酵素含有液中のペクチナーゼの含有量を前記範囲とすることにより、ペクチンの低分子量化をより確実におこなうことができる。
したがって、キシラナーゼおよびペクチナーゼの双方を、前記範囲で含む酵素含有液を用いることにより、種子をより迅速かつ確実に軟質化させることができる。また、種子の形状が崩れるのも確実に防止することもできる。
このような酵素含有液を調製するのに用いる液体としては、例えば、水、および、エタノール等のアルコール類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらに、リン酸塩やクエン酸塩のような緩衝剤が添加された緩衝液を用いることもできる。
以上のような種子の構成成分と酵素との酵素反応は、できるだけ緩除に行うのが好ましく、具体的には、低温下に比較的長時間かけて行うのが好ましい。これにより、種子の構成成分の低分子化を、種子全体において均一に行うことができる。その結果、軟質化後の種子は、非常に食感が良くなる。
低温の温度は、4〜15℃程度であるのが好ましく、5〜10℃程度であるのがより好ましい。
酵素反応を行う時間は、前記温度範囲とする場合、1〜18時間程度であるのが好ましく、5〜15時間程度であるのが好ましい。
[4]酵素失活処理工程
次に、酵素を失活させる酵素失活処理を行う。
これにより、軟質化後の種子(軟質化種子)が、保存時等において、さらに酵素反応が進行して、例えば、種子の型崩れを起こすこと等を防止することができる。
この酵素失活処理としては、例えば、酵素処理された種子を加熱する加熱処理、酵素処理された種子に酸溶液を接触させる処理(酸溶液に浸漬する処理等)等が挙げられる。
以上の工程を経て、本発明の軟質化種子が得られる。
また、このようにして得られた軟質化種子は、軟質化前の種子とほぼ等しい形状をなしている。すなわち、かかる軟質化種子は、十分に軟質化されているうえに食感もよく、見た目も軟質化前の種子の形状をほぼ維持している。このため、咀嚼や嚥下が困難な高齢者や患者に対して、食欲の増進を促すことが期待できる。
かかる軟質化種子は、厚生労働省で規定の「高齢者用食品の試験方法」にしたがって測定した圧縮応力が好ましくは1×10N/m以下に、より好ましくは5×10N/m以下になっている。このような数値を満たすことにより、前述の高齢者や患者でも、確実に軟質化種子を咀嚼し、飲み込むことが可能となる。
以上、本発明の軟質化方法および軟質化種子を実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、本発明では、前記実施形態における工程[2]および[4]を省略してもよい。また、任意の工程が付加されていてもよい。
また、酵素として、キシラナーゼおよびペクチナーゼに加えて、さらにセルラーゼ、β−グルコシダーゼ、アミラーゼ、ラクターゼのような他の酵素を併用することもできる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.酵素の種類の違いによる評価
1−1.軟質化種子の製造
(実施例1A)
<1>加熱処理工程
まず、20個のニホングリを用意し、その鬼皮および渋皮を取り除いて、ニホングリの種子を得た。そして、このニホングリの種子を、沸騰した水(100℃)に投入し、10分間茹でた。
なお、10分経過後の種子の中心部(芯部)の温度は、平均73℃であった。
<2>凍結・解凍処理工程
次に、加熱処理後の種子を、−20℃の冷凍室内に収納し、一晩(10時間)凍結した。その後、凍結した種子を冷凍室から取り出し、20℃(室温)で60分間放置することにより、解凍した。
<3>酵素処理工程
次に、キシラナーゼおよびペクチナーゼの双方を水に溶解した酵素水溶液(酵素含有液)を調製した。
なお、この酵素水溶液中のキシラナーゼ(キシラナーゼ活性:90000U/g)の含有量は、0.5wt%であり、ペクチナーゼ(ペクチナーゼ活性:8000U/g)の含有量は、0.5wt%であった。
この酵素水溶液中に解凍後の種子を、減圧下(1500Pa)に、10分間浸漬した。これにより、キシラナーゼおよびペクチナーゼの双方を種子内部に浸透させた。
次に、酵素が浸透した種子を、5℃の冷蔵室内に収納し、一晩(10時間)放置した。これにより、種子と酵素とを反応させた。
<4>酵素失活処理工程
次に、酵素反応処理終了後の種子を、75℃×1時間加熱して、酵素を失活させた。
以上のようにして、ニホングリの軟質化種子を得た。
(比較例1A)
前記工程<3>において、酵素含有液として、1.0wt%のキシラナーゼ水溶液を用いた以外は、前記実施例1Aと同様にして、ニホングリの軟質化種子を得た。
(比較例2A)
前記工程<3>において、酵素含有液として、1.0wt%のペクチナーゼ水溶液を用いた以外は、前記実施例1Aと同様にして、ニホングリの軟質化種子を得た。
(比較例3A)
前記工程<3>において、酵素含有液として、1.0wt%のセルラーゼ水溶液を用いた以外は、前記実施例1Aと同様にして、ニホングリの軟質化種子を得た。
(比較例4A)
前記工程<3>において、酵素含有液として、キシラナーゼおよびセルラーゼの双方を含む酵素水溶液を用いた以外は、前記実施例1Aと同様にして、ニホングリの軟質化種子を得た。
なお、この酵素水溶液中のキシラナーゼの含有量は、0.5wt%であり、セルラーゼの含有量は、0.5wt%であった。
(比較例5A)
前記工程<3>において、酵素含有液として、ペクチナーゼおよびセルラーゼの双方を含む酵素水溶液を用いた以外は、前記実施例1Aと同様にして、ニホングリの軟質化種子を得た。
なお、この酵素水溶液中のペクチナーゼの含有量は、0.5wt%であり、セルラーゼの含有量は、0.5wt%であった。
1−2.評価
1−2−1.圧縮応力
圧縮応力は、「高齢者用食品の表示許可の取り扱いについて(衛新第15号、厚生省生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長通知、平成6年2月23日)」中の高齢者用食品の試験方法を参考にして(準拠して)測定した。すなわち、レオメーター(山電株式会社製、「RE2-33005S」)を用いて、直径3mmのプランジャーを圧縮速度10mm/秒で、軟質化種子(試料)の上端から、厚さの70%まで押し込み、下端側の部分が30%残存するようにクリアランスを設定して、圧縮応力(N/m)を測定した。なお、ここで、クリアランスとは、最大に試料を圧縮した時のプランジャーの先端からゼロ点(すなわち、試料の下端)までの距離をいう。
また、測定温度は20±2℃とした。
そして、実施例1Aおよび各比較例の軟質化種子でそれぞれ測定された、10個の軟質化種子の測定結果の平均値を、以下の4段階の基準にしたがって評価した。
◎:1×10N/m以下
○:1×10N/m超、5×10N/m以下
△:5×10N/m超、1×10N/m以下
×:1×10N/m
1−2−2.食感評価
次に、10人のモニターに、それぞれ、実施例1Aおよび各比較例の軟質化種子を食してもらい、それぞれが感じた食感に応じて、以下の4段階の基準にしたがって評価した。
A:全体として極めて滑らかな食感である。
B:全体として滑らかな食感であるが、若干、固形状のものが口内に残る。
C:固形状のものが口内に多数残り、全体としても滑らかな食感でない。
D:全体として硬い感じがする。
そして、実施例1Aおよび各比較例について、モニターのデータを集計した。
これらの結果を表1に示す。
Figure 0004918054
表1から明らかなように、キシラナーゼおよびペクチナーゼの双方を用いて酵素処理して得られた実施例1Aの軟質化種子は、機械的に測定された測定値(圧縮応力)において十分な柔らかさを示し、かつ実際に食した場合にも極めた滑らかな食感であった。
これに対して、キシラナーゼのみを用いて酵素処理して得られた比較例1A、さらに、キシラナーゼおよびセルラーゼの双方を用いて酵素処理して得られた比較例4Aの軟質化種子は、機械的に測定された測定値において十分な柔らかさを示したものの、実際に食した場合には十分な食感が得られなかった。
また、他の酵素を用いて酵素処理して得られた比較例2A、3A、5Aの軟質化種子は、いずれも、機械的に測定された測定値および実際の食感のいずれにおいても劣るものであった。
2.加熱処理における温度の違いによる評価
2−1.軟質化種子の製造
(実施例1B)
前記工程<1>において、スチームコンベンション(蒸し器)を用いて、加湿(相対湿度100%RH)下に、温度100℃で10分間、加熱した以外は、前記実施例1Aと同様にして、ニホングリの軟質化種子を得た。
なお、10分経過後の種子の中心部(芯部)の温度は、平均71℃であった。
(実施例2B)
加熱時間を20分間とした以外は、前記実施例1Bと同様にして、ニホングリの軟質化種子を得た。
なお、20分経過後の種子の中心部の温度は、平均83℃であった。
(実施例3B)
加熱時間を25分間とした以外は、前記実施例1Bと同様にして、ニホングリの軟質化種子を得た。
なお、25分経過後の種子の中心部の温度は、平均87℃であった。
(実施例4B)
加熱時間を5分間とした以外は、前記実施例1Bと同様にして、ニホングリの軟質化種子を得た。
なお、5分経過後の種子の中心部の温度は、平均67℃であった。
(実施例5B)
加熱時間を3分間とした以外は、前記実施例1Bと同様にして、ニホングリの軟質化種子を得た。
なお、3分経過後の種子の中心部の温度は、平均60℃であった。
(比較例1B)
加熱処理を省略した以外は、前記実施例1Bと同様にして、ニホングリの軟質化種子を得た。
2−2.評価
2−2−1.圧縮応力
前記1−2−1と同様にして行った。
2−2−2.食感評価
前記1−2−2と同様にして行った。
2−2−3.形状評価
10個の軟質化種子の形状を、それぞれ目視で確認して、以下の4段階の基準にしたがって評価した。
◎:形状の変化が全く認められない。
○:若干の形状の変化が認められる。
△:明らかな形状の変化が認められる。
×:形状を止めない。
これらの結果を表2に示す。
Figure 0004918054
表2から明らかなように、加熱処理時の種子の中心部の温度を70〜80℃の範囲に設定(実施例1Aおよび1B)することにより、軟質化種子の形状を保持しつつ、機械的に測定された測定値および実際の食感のいずれにおいても優れるものになった。
また、ニホングリに代えて、銀杏を用いて、前記実施例および比較例と同様にして軟質化種子を製造したところ、前記と同様の結果が得られた。

Claims (8)

  1. ブナ科に属する植物の種子であるクリを軟質化する軟質化方法であって、
    前記種子の中心部の温度が65〜85℃の範囲となるように前記種子を、加湿下で加熱処理した後、キシラナーゼおよびペクチナーゼの双方を含有し、前記キシラナーゼおよび前記ペクチナーゼの含有量がそれぞれ0.1〜10wt%となっている酵素含有液を用いて酵素処理することを特徴とする軟質化方法。
  2. 前記酵素処理は、減圧下で行われる請求項に記載の軟質化方法。
  3. 前記加熱処理の後、前記酵素処理に先立って、前記種子内部への前記キシラナーゼおよび前記ペクチナーゼの浸透を促進する酵素浸透促進処理を行う請求項1または2に記載の軟質化方法。
  4. 前記酵素浸透促進処理は、前記種子を凍結した後、解凍する凍結・解凍処理である請求項に記載の軟質化方法。
  5. 前記酵素処理の後、酵素を失活させる酵素失活処理を行う請求項1ないしのいずれかに記載の軟質化方法。
  6. 前記種子は、軟質化前後において、ほぼ等しい形状をなしている請求項1ないしのいずれかに記載の軟質化方法。
  7. ブナ科に属する植物の種子であるクリを、請求項1ないしのいずれかに記載の軟質化方法により軟質化してなることを特徴とする軟質化種子。
  8. 前記軟質化種子は、「高齢者用食品の表示許可の取り扱いについて(衛新第15号、厚生省生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長通知、平成6年2月23日)」に記載の「高齢者用食品の試験方法」に準拠して測定した圧縮応力が1×10N/m以下である請求項に記載の軟質化種子。
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