JP4917731B2 - 骨折における骨の断片の固定のための固定手段装置 - Google Patents

Description

【０００１】
本発明は、骨折における骨の断片の固定のための固定手段装置に関するものであり、その固定手段は好適には、大腿骨頚部の骨折における骨の断片の固定のための、大腿骨頚部用の大釘であり、さらにその固定手段は、ピンを作動可能位置に挿入するために後部が開口したスリーブを有しており、そのスリーブは、２つの対向する壁面、すなわち、側面に開口部を有した第１の縦方向壁面と案内面が斜め前方向に前記側面開口部の先端部まで延在する第２の縦方向壁面を有する細長い空間で画定され、前記案内面は、前方を、好適には前記ピンがスリーブに対して前進方向に移動される際に前記側面開口部を介して出口に押出されるようピンの湾曲した端部を案内するように形成される。
【０００２】
前述したタイプの固定手段は、スウェーデン国特許第４３１０５３号明細書（米国特許第４４９８４６８号明細書）（特許文献１および特許文献２）により公知であり、長年満足して実施されてきた。
【０００３】
しかしながら、ピンが側面開口部を通る出口をみつけられず、スリーブに対して間違った位置を占めたり、あるいは占めそうになると、スリーブ内部で変形する危険性が常にある。これはピンが意図せず動いたり、あるいは例えば駆動もしくは作動器械の回転部材からの影響を受けてスリーブに対し逆になったり、回転したりすることにより、作動可能位置から移動してしまうことに起因する。また、周囲の骨物質に移動するピンの前端部の部分が、有利に曲がった状態へ変形しない危険性がある。このことは、固定手段が意図する機能、すなわち骨の断片がお互いに対して安定して固定されるという機能を得られない危険性があることを意味する。また欠陥の設計によってピンの前端部が押し進む際に骨の断片を貫通する危険性もある。
【０００４】
【特許文献１】
スウェーデン国特許第４３１０５３号明細書
【特許文献２】
米国特許第４４９８４６８号明細書
【０００５】
本発明の目的は、この問題点を除去するためのものであり、前述の装置に後述の請求項１の特徴事項を設けることによって達成することができる。
【０００６】
前記特徴事項を有する装置を提供することにより、ピンが作動可能位置を離れ意図しない動作をすることを防ぎ、および／または、ピンの端部において骨の断片の安定した固定が得られ且つ骨の断片を貫通するピンが減るような有利な湾曲状態を得ることができる。
【０００７】
本発明を添付する図面に沿って以下にさらに説明する。
【０００８】
図に示した固定手段１は、骨折における骨の断片の固定に適用される。好適には、固定手段１は、大腿骨頚部用の大釘であり、大腿骨頚部の骨折４における骨断片２及び３の固定用としての頚スパイクである。
【０００９】
大釘１は、ピン７を挿入するために、後部が開口する細長い空間６を有するスリーブ５を構成する。細長い空間６は、環状、もしくは実質的に環状の横断面を有する。
【００１０】
スリーブ５は、第１縦方向壁面８と、それに対向する第２縦方向壁面９を有する。前記第１の縦方向壁面８には、側面開口部１０と、前記側面開口部１０の先端部１３から案内面１２が第２縦方向壁面９に対して反対側に傾斜した方向に突出する。
【００１１】
ピン７は、好適には湾曲した前端部７ｆを有する。この前端部７ｆは、案内面１２により案内されるよう構成され、側面開口部１０を介して空間６の外側に押し出され、隣接する骨断片３に進められる。
【００１２】
前記前端部７ｆに近接するピン７の前方部７ａは斜め前方向に第２縦方向壁面９の前方部９ａに向かって延在し、好適には、ピン７が作動可能位置Ｂ（図１参照）から、側面開口部１０を介して外側に前端部７ｆを押出すために細長い空間６を更に移動できるような作動可能位置Ｂにある際に案内面１２で前記前方部９ａと接触するよう構成される。この作動可能位置Ｂにおいて、前記前方部７ａとピン７の中間部７ｄの間の接触部７ｂは、側面開口部１０の後方の第１縦方向壁面８と接触する。
【００１３】
ピン７の前端部７ｆは好適には第１縦方向壁面８と第２縦方向壁面９との間の距離よりも大きい高さｈを有する。すなわち、前端部７ｆの前記高さｈはおよそ４．５ｍｍであり、一方前記距離ａはおよそ４ｍｍである。前記ピン７が作動可能位置Ｂに移動される際に、前記前端部７ｆが細長い空間６に挿入できるように前記ピン７は湾曲可能である。ピン７が作動可能位置Ｂに達した際に前記前端部７ｆは側面開口部１０にきちんと嵌め込まれる。
【００１４】
前記ピン７が作動可能位置Ｂにあるとき、および／または前記ピンが細長い空間６中を移動し側面開口部１０を介してその前端部７ｆが外に押出されるとき、ピン７の前記前端部７ｆは好適には、側面開口部１０の先端部１３と第２縦方向壁面９の間のおよそ中間点にある案内面１２の中央部と接触している。
【００１５】
ピン７の前端部７ｆは好適には側面開口部１０に突き出されるが、前記ピン７が作動可能位置Ｂに配置されている際には、スリーブ５の外郭を越えた外側には突き出されない。
【００１６】
ピン７は、スリーブ５中の空間６に相対して設計されるため作動可能位置Ｂにおいて、前記スリーブ５に相対する前記空間６の外側へ意図せず移動しない。
【００１７】
ピン７は駆動あるいは作動器械１５によりスリーブ５中を移動するように構成される。この器械は、図１に破線で図式的に示されるように３つの部材から構成されており、すなわち、スリーブ５の後縁部２３と噛み合わされることによりスリーブ５に対して方向を変えたりまたは回転できないようにされた外側スリーブ１５ａを含む。前記外側スリーブ１５ａは、外側スリーブをスリーブ５内の内側ねじ山とかみ合わせることができる外側ねじ山を有する内側スリーブ１５ｂによりこの位置に保持される。
【００１８】
駆動器械１５は、さらに駆動もしくは作動ユニット１５ｃを構成し、そのユニットは、内側スリーブ１５ｂ中の内側ねじ山にユニットがしっかりと固定できる外側ねじ山を有する。それによって駆動ユニット１５ｃはピン７の後端部１７と接触するため、ピン７をスリーブ５中の空間６に押し進められ、それによって、ピン７の前端部７ｆを側面開口部１０の外側に押出し、それによって前記前端部７ｆは変形する。
【００１９】
このタイプの駆動もしくは作動器械はすでにスウェーデン国特許第４３１０５３号明細書（米国特許第４４９８４６８号明細書）におり公知であるため、ここでは省略する。
【００２０】
前記ピン７は、駆動器械１５の部材が回転し、または方向を変える際にもしおよび／またはそれと共に接触する場合に、前記部材がその縦軸Ｌに対して回転できないようにスリーブ５の空間６に応じて設計される。これは、ピン７が作動開始位置Ｂにある際に、前記ピン７の前端部７ｆを側面開口部１０とかみ合わせることによって達成できる。
【００２１】
ピン７は好適には弾性特性を有し、もしくは、すくなくともその前方部７ａが弾性特性を有する。ピン７は例えば弾性特性を有する金属材料から構成される。
【００２２】
前記ピン７は、スリーブ５に対応して意図せずに動くかまたは動かされるとき、引っ張られた、あるいは伸ばされた状態Ｓ（図１参照）となる変形を介して、スリーブ５の細長い空間６中に挿入される間は、スリーブ５の細長い空間６の形状に対応する原形Ｕ字（図３参照）を形成する。ピン７の原形Ｕ字と細長い空間６の形状との間の差異を示すため、細長い空間の形状を図３に破線で示す。
【００２３】
ピン７は第２縦方向壁９の前方部９ａに対して滑るよう形成され、ピン７が細長い空間６に移動される際に、案内面１２に一番近接して配置される。ピン７の後方部７ｅは、ピン７が作動開始位置Ｂにあるときスリーブ５の第２縦方向壁９と接触する。
【００２４】
作動開始位置Ｂにおいて、ピン７の前端部７ｆは、好適には側面開口部１０の内側の短い距離を案内面１２と接触することによって、前端部７ｆが側面開口部１０を介して外側に押出される際に、その長さの全体もしくは少なくともその大部分に沿って湾曲した形状となる。
【００２５】
前記ピン７は、その原形Ｕ字において、直線もしくは実質的に直線の後方部７ｅを有し、また前記前方部７ａは直線状もしくは実質的に直線状であり、後方部７ｅに対して斜め前方向／横方向に向いており、あるいは、ピン７は例えば図３に示されるようにＳ字形状を有する。
【００２６】
ピン７の前方部７ａは、弓形状断面（図５参照）を有し、またその後方部７ｅは、円形状断面（図４参照）を有する。接触部７ｂにおいて、弓形状断面は円形状断面に変形する。さらに、ピン７の後方部７ｅは、接触部７ｃを介して第２縦方向壁９と接触する。
【００２７】
ピン７は、好適にはスリーブ５の細長い空間６の長さに相対する長さであるため、ピン７の後端部１７は、スリーブの後縁部２３の端から端まで設置されるか、あるいはピン７が完全にスリーブ５内に移動したとき、前記後縁部２３内に設置される。この結果、駆動もしくは作動操作が完了した後、ピン７がスリーブ５の後方で突出されないため、患者が傷つけられる危険性は減少するという利点がある。
【００２８】
更に、ピン７は、駆動もしくは作動操作が完了した後スリーブ５の内部に位置し、骨断片３からピン７を除去するもしくは抜き出すための摘出ユニット（図示しない）にある対応するねじ部（図示しない）と協同するために設けられたねじ部（図示しない）を提供する。
【００２９】
図６から明らかなように、スリーブ５の前領域部２７はスリーブ５を骨断片３にしっかり嵌めるために雄ねじを有する。前領域部２７の雄ねじの外径は前記前領域部２７の後方のスリーブ５の円筒部の外径と対応もしくは実質的に対応する。
【００３０】
前述した実施態様及び図に示した実施態様により、ピン７はその前端部７ｆが周囲の骨物質２の中に移動し、押し込まれるまでこのように作動開始位置Ｂに留まっている。他の利点として、ピン７の前端部７ｆが移動している間案内面１２の大部分に対して滑ることにより、前記ピンは側面開口部１０の外側においてピンの全体もしくはほぼ全体の長さに沿って有利に湾曲した形状となることである。
【００３１】
本発明は、前述した、もしくは図に示した実施態様に限ることなく、多様な部材もしくはその機能の使用及び設計に関連する後続の請求項の範囲内において変化し得る。記載していない実施および使用例として、固定手段１は大腿骨頚部（大腿骨の頚部）以外の位置の骨折にも使用することができ、スリーブ５は金属材料もしくは他の適切な材料から構成することができ、ピン７は、金属材料以外の他の材料から構成することができ、ピン７と同様スリーブ５は図示したもの以外の形状を有するとしても前述したものと類似もしくは同様な機能を有することができるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明による装置の固定手段の縦断面図である。
【図２】 ピンの前方部分がスリーブから突出している状態の図１の固定手段を示す。
【図３】 緩んだ初期の形状における図１の固定手段のピン形成部分を示す。
【図４】 図１の固定手段におけるIV−IVの断面図である。
【図５】 図１の固定手段におけるＶ−Ｖの断面図である。
【図６】 図１の固定手段の別の態様の設計及び構成部分を有するスリーブの前領域部を示す。

Claims (21)

1. 骨折における骨の断片を固定するための固定手段としての装置であって、
   固定手段（１）は大腿骨頚部の骨折（４）における骨断片（２，３）を固定するための大腿骨頚部用の大釘であり、
   前記固定手段（１）は作動可能位置（Ｂ）にピン（７）を挿入するために後部が開口したスリーブ（５）を備え、
   前記スリーブ（５）は２つの対向する壁面（８，９）、すなわち側面開口部（１０）を有する第１縦方向壁面（８）と案内面（１２）が斜め前方向に前記側面開口部（１０）の先端部（１３）まで延在する第２縦方向壁面（９）とにより細長い空間（６）が画定され、
   前記案内面（１２）は、前記ピン（７）が、前記スリーブ（５）に対して前進方向に移動される際に、前記ピン（７）の湾曲前端部（７ｆ）を案内して、前記ピン（７）の前記湾曲前端部（７ｆ）が前記側面開口部（１０）を介して出口に押出されるように形成された装置において、
   前記湾曲前端部（７ｆ）に一番近接する前記ピン（７）は前方部（７ａ）を含み、前記ピン（７）が前記スリーブ（５）の作動可能位置（Ｂ）に存在する際に前記前方部（７ａ）は、前記前方部（７ａ）の縦方向に直線状であり、また前記ピンの後方部（７ｅ）から斜め前方向に方向づけられて前記湾曲前端部（７ｆ）に至り、前記案内面（１２）に近接する前記第２壁面（９）の前方部（９ａ）まで延在することを特徴とする装置。
2. 前記ピン（７）の前方部（７ａ）は、前記ピン（７）が前記作動開始位置（Ｂ）に存在する際に前記第２壁面（９）の前記前方部（９ａ）と接触することを特徴とする請求項１記載の装置。
3. 前記ピン（７）が前記側面開口部（１０）を介して出口にその前記湾曲前端部（７ｆ）を突き出すかあるいは押出すために前記スリーブ（５）の細長い空間（６）内を移動するか押出される際に、前記ピンの前方部（７ａ）が前記第２壁面（９）の前記前方部（９ａ）に対して滑るよう構成されることを特徴とする請求項１または２記載の装置。
4. 前記ピン（７）が前記作動開始位置（Ｂ）に存在する際に前記ピン（７）の前記湾曲前端部（７ｆ）は前記側面開口部（１０）に嵌め込まれることを特徴とする請求項１乃至３のいずれかに記載の装置。
5. 前記ピン（７）は前記湾曲前端部（７ｆ）の高さ（ｈ）が前記第１及び第２縦方向壁面（８，９）間の距離（ａ）よりも大きい原形（Ｕ）を有し、
   前記ピン（７）が前記スリーブ内にある作動開始位置（Ｂ）へ移動する際に前記湾曲前端部（７ｆ）が前記スリーブ（５）内に挿入できるよう湾曲することができ、そして、
   前記ピン（７）が弾性特性を有し、前記湾曲前端部（７ｆ）が前記側面開口部に移動した後に前記側面開口部（１０）としっかりと嵌めることを特徴とする請求項４記載の装置。
6. 前記ピン（７）の前記湾曲前端部（７ｆ）は前記側面開口部（１０）に嵌め込まれる際に前記スリーブ（５）の外郭内に配置されることを特徴とする請求項４または５記載の装置。
7. 前記ピン（７）は後方部（７ｅ）の前方が中間部（７ｄ）に変形し、同様にその中間部の前方が前方部（７ａ）に変形するような前記後方部（７ｅ）を含むピンにおいて、前記中間部（７ｄ）は、前記ピン（７）が作動開始位置（Ｂ）にある際に第１縦方向壁面（８）に向かって斜め前方向に延在することを特徴とする請求項１乃至６のいずれかに記載の装置。
8. 前記ピン（７）が作動開始位置（Ｂ）にある際に前記中間部（７ｄ）と前記前方部（７ａ）との間にある接触部（７ｂ）は前記第１壁面（８）と接触し、前記後方部（７ｅ）は前記第２壁面（９）と接触することを特徴とする請求項７記載の装置。
9. 前記ピン（７）が作動開始位置（Ｂ）にある際に前記ピン（７）の前記湾曲前端部（７ｆ）は前記案内面（１２）と接触することを特徴とする請求項１乃至８のいずれかに記載の装置。
10. 前記ピン（７）の前記湾曲前端部（７ｆ）は、前記ピン（７）が前記作動可能位置（Ｂ）にあるとき、および／または前記ピン（７）が細長い空間（６）の中を移動し、側面開口部（１０）を介して前記湾曲前端部（７ｆ）が出口に押出されるとき、前記側面開口部（１０）の前記先端部（１３）と前記第２縦方向壁面（９）の間のおよそ中間点にある案内面（１２）の中央部と接触することを特徴とする請求項１乃至９のいずれかに記載の装置。
11. 前記ピン（７）は円形状断面を有する前記後方部（７ｅ）及び前記中間部（７ｄ）と弓形状断面を有する前記前方部（７ａ）を有することを特徴とする請求項１乃至１０のいずれかに記載の装置。
12. 前記作動開始位置（Ｂ）において、前記ピン（７）が回転しないかあるいは方向を変えないおよび／または前記スリーブ（５）に相対して前記ピン（７）の縦軸（Ｌ）を中心として回転できないかあるいは方向を変えることができないよう構成されることを特徴とする請求項１乃至１１のいずれかに記載の装置。
13. 前記作動開始位置（Ｂ）において、駆動あるいは作動器械（１５）の部材からのねじれ力により影響されても前記ピン（７）は前記スリーブ（５）における前記縦軸（Ｌ）に対して回転できないよう構成されることを特徴とする請求項１乃至１２のいずれかに記載の装置。
14. 前記ピン（７）は作動開始位置（Ｂ）において引っ張られたあるいは伸ばされた状態で設置されることを特徴とする請求項１乃至１３のいずれかに記載の装置。
15. 前記ピン（７）は前記細長い空間（６）内の作動開始位置（Ｂ）中に挿入される際に変形することにより引っ張られるあるいは伸ばされることで前記スリーブ（５）の前記細長い空間（６）の形状から偏向する原形（Ｕ）を有することを特徴とする請求項１乃至１４のいずれかに記載の装置。
16. 前記ピン（７）の前記湾曲前端部（７ｆ）はその長さ全体あるいは実質的に長さ全体に沿って湾曲した前記湾曲前端部（７ｆ）として前記側面開口部（１０）の外に押出されるよう構成されることを特徴とする請求項１乃至１５のいずれかに記載の装置。
17. 原形（Ｕ）の状態にある前記ピン（７）は直線もしくは実質的に直線の後方部（７ｅ）を有するとともに前記後方部（７ｅ）に対して斜め前方向／横方向に方向づけられた直線状の前方部（７ａ）を有することを特徴とする請求項１乃至１６のいずれかに記載の装置。
18. 前記ピン（７）あるいは少なくともその前方部（７ａ）は弾性特性を有することを特徴とする請求項１乃至１７のいずれかに記載の装置。
19. 前記ピン（７）は前記スリーブ（５）の前記細長い空間（６）の長さに相当する長さを有しており、前記ピン（７）が前記スリーブ（５）内に完全に移動される際に前記ピン（７）の後端部（１７）は前記スリーブ（５）の後縁部（２３）の端から端までもしくは前記後縁部（２３）内部に配置されるため、駆動もしくは作動操作を完了した後前記ピン（７）は前記スリーブ（５）の後方に突出されないことを特徴とする請求項１乃至１８のいずれかに記載の装置。
20. 前記スリーブ（５）の前領域部（２７）は前記前領域部（２７）を隣接する骨断片（３）にしっかり固定する雄ねじを有することを特徴とする請求項１乃至１９のいずれかに記載の装置。
21. 前記前領域部（２７）の前記雄ねじの外径は前記前領域部（２７）の後方の前記スリーブ（５）の円筒部の外径に相当もしくは実質的に相当することを特徴とする請求項２０記載の装置。

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