次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図4を参照して、本発明に係る実施形態の適用器具の使用対象となる第1の伸縮可能な骨固定部材10の構成について説明する。
この骨固定部材10は、特に限定されるものではないが、図4に示すように、全体として軸状に構成されている。図示例では、軸線10xに沿って延長された直線状に形成される。骨固定部材10は、第1の軸状体10Aと、第2の軸状体10Bとを有する。この第1の軸状体10Aと第2の軸状体10Bは、軸線10xの方向に相互にスライド可能な伸縮構造、図示例の場合にはテレスコピック構造を構成し、その結果、骨固定部材10は軸線10xの方向に伸縮可能に構成される。また、第1の軸状体10Aは、特に限定されるものではないが、導入時の抵抗を低減し、骨折部の整復状態に影響を与え難い平滑な外表面を有し、ねじなどの突起構造を備えない外形を有することが望ましい。
第1の軸状体10Aは骨固定部材10の先端側に配置され、第2の軸状体10Bは骨固定部材10の基端側に配置される。第1の軸状体10Aは、先端が閉塞された筒状のスリーブ11と、その内部に収容されたピン12とを有する。スリーブ11の先端部の側面には側部開口11aが形成され、この側部開口11aからピン12の先端の湾曲した係合フック部12aが出没可能となるように構成されている。ピン12が先端側へ押し出されたとき、係合フック部12aは、スリーブ11の上記側部開口11aの内部に隣接して形成された傾斜した案内面11bに当接して側部開口11aの側へ押し出される。これにより、係合フック部12aは、軸線10xと交差する方向である、側部開口11aの外側へ向けて突出する。なお、上記の側部開口11a及び係合フック部12aは、軸線10xに沿った方向の同一位置若しくは異なる位置においてそれぞれ出没可能となるように、複数設けられていてもよい。
スリーブ11の基端には基端開口11cが形成され、この基端開口11cはピン12の基端部12bに対する操作を可能にする。基端開口11cの内側には雌ねじ部11dが形成される。この雌ねじ部11dは、基端開口11cから挿入される後述する適用器具40の螺合連結軸部43の先端螺合構造(雄ねじ部)43bに螺合可能となるように構成される。また、基端開口11cには切り欠き部などからなる工具係合部11eが設けられる。この工具係合部11eは、前記適用器具40の後述する回転連結軸部42の先端係合縁42bと当接し、相互に嵌合する。
ピン12の基端部12bは係合フック部12aが図示例のように側部開口11a内に格納されている状態で、スリーブ11の基端開口11cからさらに基端側へ突出するように構成される。ピン12の基端部12bに隣接する部分には、抜去時において用いられる図示しない抜去工具の摘出軸の先端ねじ孔に接続するための雄ねじ部12cが形成されている。また、図示しないが、係合フック部12aが側部開口11aから十分に突出した状態では、基端部12bの軸線方向の位置は基端開口11cとほぼ一致する。これにより、係合フック部12aが骨と係合している場合には、基端開口11cからの基端部12bの突出量が存在しないか、或いは、存在したとしても医学的に問題にならない範囲内に収まるように構成される。なお、係合フック部12aは、骨の内部から骨(後述する例では、骨折線よりも奥側の骨頭部Z)に係合する第1の骨係合構造であって、軸線10xと交差する方向に移動可能に構成された可動係合部に相当する。
第2の軸状体10Bは、筒状のバレル部13と、このバレル部13の基端部から軸線10xの一方側へ張り出すように形成されたプレート部14とを有する。バレル部13は、第1の軸状体10Aの上記スリーブ11の基端側部分を、当該スリーブ11を軸線10xに沿ってスライド可能となるように収容している。第1の軸状体10Aは、バレル部13の先端開口13aから先端側へ突出して伸びている。また、バレル部13の基端には基端開口13bが設けられ、この基端開口13bを通して、スリーブ11やピン12の基端部分に対する前記適用器具や前記抜去工具などを用いた各種の操作が可能になっている。なお、スリーブ11の外周面には、リング状の溝などから構成される1又は複数の軸線方向の目印11gを適宜に形成してもよい。図示例の場合には、目印11gは軸線方向の複数個所に形成されている。この目印11gは、第1の伸縮可能な骨固定部材10の伸縮状態を、透視的に確認可能な態様(X線画像などの放射線画像により視認可能となる態様)で示すものである。図示例のように三本目の目印11gの位置がバレル部13の先端開口13aの縁部に一致していれば、骨固定部材10が伸長状態にあることを知ることができ、また、一本目の目印11gが先端開口13aに一致すれば、骨固定部材10が短縮状態にあることを知ることができる。
図示例の場合、スリーブ11の外周面の形状とバレル部13の内周面の形状との間の関係により、第1の軸状体10Aと第2の軸状体10Bが相互にスライド可能に構成されている範囲がスライド範囲Lに制限されている。このスライド範囲Lは、第1の軸状体10Aが基端側へスライドし、第2の軸状体10Bの内部に最も引き込まれた位置で、スリーブ11の基端開口11cがバレル部13の基端開口13bとほぼ一致するように構成される。ただし、実際には完全に一致する必要はない。これにより、係合フック部12aが骨内に突出しているときには、ピン12の基端部12bやスリーブ11の基端開口11cは、バレル部13の基端開口13bより突出しないか、或いは、医学的に問題のない程度の突出量の範囲に収まる。図示例の場合には、ピン12の基端部12bとスリーブ11の基端開口11cは、いずれもバレル部13の基端開口13bより突出しない。このように、スライド可能な範囲が引き込み側に制限されているため、第1の軸状体10Aが第2の軸状体10Bの内部に最も引き込まれた短縮状態であっても、第1の軸状体10Aの基端がバレル部13の基端開口13bから突出しないか、或いは、医学的に問題が生じない範囲の突出量に抑制される。
なお、スリーブ11の外周に止め輪11fを装着することにより、第1の軸状体10Aが第2の軸状体10Bから引き出される側にもスライド可能な範囲が制限される。これにより、第1の軸状体10Aを第2の軸状体10Bから分離すること(軸線方向先端側への抜き取り)ができないように構成される。
また、本実施形態では、第1の軸状体10Aと第2の軸状体10Bが相互にスライド可能に構成されている上記スライド範囲Lの全範囲にわたって、第1の軸状体10Aと第2の軸状体10Bとが軸線10xの周りに回転可能に接続されている。ただし、上述のように伸縮可能なスライド範囲Lのうちの一部において、第1の軸状体10Aと第2の軸状体10Bとが軸線10xの周りに回転可能であるが、他の部分において、第1の軸状体10Aと第2の軸状体10Bとが軸線10xの周りに回転できないように構成されていてもよい。このとき、上記一部は、手術時において術者が手技的に容易に位置決めできる位置であることが好ましい。例えば、テレスコピック構造が伸長状態にあるときだけ両軸状体が相互に回転可能であり、多少でも短縮した中間状態及び短縮状態では相互に回転できないように構成することができるし、これとは逆に、伸長状態と中間状態で回転不能、短縮状態で回転可能とすることもできる。これにより、第1の軸状体10Aと第2の軸状体10Bを軸線10xの周りの任意の相対的角度関係に設定することが可能になる。すなわち、第1の軸状体10Aをプレート部14の角度姿勢に対して任意の角度関係に設定することが可能になる。
前述のように、第1の軸状体10Aと第2の軸状体10Bとが上記スライド範囲Lの一部において相互に回転可能に構成され、上記一部以外の他の部分において相互に回転規制されるように構成される場合には、回転規制により以下の効果が得られる。手術中において第1の軸状体10Aと第2の軸状体10Bの間の相対的な回転姿勢を変更したい場合、例えば、第1の骨係合構造の回転姿勢を調整したり設定したりする際には、上記スライド範囲Lの中の上記一部に対応する伸縮状態(例えば、上記短縮状態)とし、上記回転姿勢を維持したい場合、例えば、係合フック部12aを突出させた後、或いはその直前などには、上記一部以外の他の部分に対応する伸縮状態(例えば、上記伸長状態及び中間状態)とすればよい。これにより、第1の骨係合構造の回転姿勢の調整や設定を可能にしつつ、骨固定部材10の骨、例えば、骨頭部Zに対する回旋規制作用を単独でも得ることができるため、骨固定部材の導入本数に拘わらず、骨固定システムの回旋方向の負荷に対する保持力や剛性を高めることができる。なお、上記の括弧内は、第1の軸状体10Aが第2の軸状体10Bの内部に最も引き込まれた短縮状態では、第1の軸状体10Aと第2の軸状体10Bが図示例と同様に相互に回転自在となるように構成されるが、上記短縮状態から多少でも第1の軸状体10Aが第2の軸状体10Bから引き出された状態、すなわち、伸長状態及び中間状態では、第1の軸状体10Aと第2の軸状体10Bの相互の軸線周りの回転が規制されるようにした場合の例を示すものである。
上記の回転規制を行うための構造は、第1の軸状体10Aの基端側の外周面(スリーブ11の基端側の外周面)と、第2の軸状体10Bの基端側の内周面(バレル部13の基端側の内周面)とが非円形の相互に回転方向に係合可能となるような相互に嵌合可能な断面形状を、上記スライド範囲Lの一部において相互に嵌合し、他の部分においては嵌合しないように備えることにより構成できる。
なお、本実施形態のように、基本的には第1の軸状体10Aと第2の軸状体10Bを軸線10xの周りに相互に回転可能に構成しておくが、事後的に、回転規制手段により、第1の軸状体10Aと第2の軸状体10Bが軸線10xの周りに相互に回転規制されるように構成してもよい。この回転規制手段としては、例えば、スリーブ11の基端開口11cの開口縁に形成した非円形断面を備える係合内面部と、バレル部13の基端開口13bの開口縁に形成した非円形断面を備える係合内面部と、これらの係合内面部に共に挿入可能であり、かつ、両係合内面部に対して軸線周りに係合可能な部材であって、ピン12の基端側部分を挿通させる貫通した軸孔を備えた嵌合部材(図示せず)などを用いることができる。この嵌合部材を基端開口11cと基端開口13bに挿入することにより、第1の軸状体10Aと第2の軸状体10Bが相互に回転できなくなる。なお、回転規制手段としては、上記嵌合部材のように装着時において回転規制を行う部材を用いるものでもよく、或いは、常に装着された状態にあるが、特定の位置若しくは姿勢となったときに回転規制を行う部材を用いるものでもよい。
プレート部14は、骨の外面に当接する態様で係合する骨固定部材10の基端部であって、バレル部13の基端から軸線10xの一方側へ張り出している。プレート部14には、基端開口13bと並列するように形成された開口部14aが形成されている。ここで、開口部14aの第2の軸線14xは、軸線10xと平行に設定されている。開口部14aは、第2の軸線14xに沿って先端側(図示左側)に向けて縮径する円錐台状に形成されている。開口部14aには、内部ねじ山14bが形成されている。この内部ねじ山14bは、後述する他方の骨固定部材20の頭部25に形成された雄ねじ25aと螺合可能に構成される。なお、本発明においては、軸線10xと第2の軸線14xは平行に限らず、両軸線が並行して伸びるように構成されていればよい。ここで、並行とは互いに他方に沿って伸びることを意味し、伸びる方向に見たときに相互の間隔が変わらないこと、すなわち、相互に平行であることを要しない。
プレート部14は、バレル部13と一体に構成されている。これにより、後述するように、伸縮可能な骨固定部材を別体のプレートに対して連結する(ロッキング固定する)ことが不要になるため、手術時の作業量を軽減できる。また、プレート部14は、軸線10xに対して一方側にのみ張り出し、その一方側の先端に開口部14aが配置されているので、コンパクトに構成できる。特に、プレート部14は、軸線10xから上記一方側へ向かう方向に延長された平面形状を備えているため、さらにコンパクトに構成される。プレート部14のコンパクト化は、手術時の要切開範囲の低減により低侵襲性をもたらす。なお、本発明においては、プレート部14は軸線10xの一方側にのみ張り出す態様に制限されるものではなく、複数の方向に張り出すように構成されていてもよく、また、或る角度範囲において、或いは、全方位に対して、広がるように構成されていてもよい。
次に、図5を参照して、第2の伸縮可能な骨固定部材20について説明する。
この骨固定部材20は、特に限定されるものではないが、図5に示すように、全体として軸状に構成されている。図示例では、軸線20xに沿って延長された直線状に形成される。骨固定部材20は、第1の軸状体20Aと、第2の軸状体20Bとを有する。この第1の軸状体20Aと第2の軸状体20Bは、軸線20xの方向に相互にスライド可能な伸縮構造、図示例の場合にはテレスコピック構造を構成し、その結果、骨固定部材20は軸線20xの方向に伸縮可能に構成される。また、第1の軸状体20Aは、特に限定されるものではないが、導入時の抵抗を低減し、骨折部の整復状態に影響を与え難い平滑な外表面を有し、ねじなどの突起構造を備えない外形を有することが望ましい。
第1の軸状体20Aは骨固定部材20の先端側に配置され、第2の軸状体20Bは骨固定部材20の基端側に配置される。第1の軸状体20Aは、先端が閉塞された筒状のスリーブ21と、その内部に収容されたピン22とを有する。スリーブ21の先端部の側面には側部開口21aが形成され、この側部開口21aからピン22の先端の湾曲した係合フック部22aが出没可能となるように構成されている。ピン22が先端側へ押し出されたとき、係合フック部22aは、スリーブ21の上記側部開口21aの内部に隣接して形成された傾斜した案内面21bに当接して側部開口21aの側へ押し出される。これにより、係合フック部22aは、軸線20xと交差する方向である、側部開口21aの外側へ向けて突出する。なお、上記の側部開口21aと係合フック部22aは、軸線20xに沿った方向の同一位置若しくは異なる位置においてそれぞれ出没可能となるように、複数設けられていてもよい。
スリーブ21の基端には基端開口21cが形成され、この基端開口21cはピン22の基端部22bに対する操作を可能にする。基端開口21cの内側には雌ねじ部21dが形成される。この雌ねじ部21dは、基端開口21cから挿入される後述する適用器具30の螺合連結軸部33の先端螺合構造(雄ねじ部)33bに螺合可能となるように構成される。また、基端開口21cには切り欠き部などからなる工具係合部21eが設けられる。この工具係合部21eは、前記適用器具30の後述する回転連結軸部32の先端係合縁32bと当接し、相互に嵌合する。
ピン22の基端部22bは係合フック部22aが図示例のように側部開口21a内に格納されている状態で、スリーブ21の基端開口21cからさらに基端側へ突出するように構成される。ピン22の基端部22bに隣接する部分には、抜去時において用いられる図示しない抜去工具の摘出軸の先端ねじ孔に接続するための雄ねじ部22cが形成されている。また、図示しないが、係合フック部22aが側部開口21aから十分に突出した状態では、基端部22bの軸線方向の位置は基端開口21cとほぼ一致する。これにより、係合フック部22aが骨と係合している場合には、基端開口21cからの基端部22bの突出量が存在しないか、或いは、存在したとしても医学的に問題にならない範囲内に収まるように構成される。なお、係合フック部22aは、骨の内部から骨(後述する例では、骨折線よりも奥側の骨頭部Z)に係合する第1の骨係合構造であって、軸線20xと交差する方向に移動可能に構成された可動係合部に相当する。
第2の軸状体20Bは、筒状のバレル構造23を有する。図示例では、バレル構造23のみにより第2の軸状体20Bが構成される。このバレル構造23は、先端側はほぼ平滑な円筒面状の外面を備え、軸線20xを中心とする回転体状の基本形状を備えている。このバレル構造23の基端側には、上記円筒面状の外面上において骨係合用の雄ねじ24が設けられている。雄ねじ24は、第1及び第2の伸縮可能な骨固定部材10,20が第1の軸状体10A,20Aの側から導入される骨(図示例では大腿骨近位部)の表面下(図示例では外側部Yの直下)の皮質に係合する第2の骨係合構造である。バレル構造23は、第1の軸状体20Aの上記スリーブ21の基端側部分を、軸線20xに沿ってスライド可能に収容している。第1の軸状体20Aは、バレル構造23の先端開口23aから先端側へ突出して伸びている。また、バレル構造23の基端には基端開口23bが設けられ、この基端開口23bを通して、スリーブ21やピン22の基端部分に対する前記適用器具や前記抜去工具などを用いた各種の操作が可能になっている。なお、目印21gは上記目印11gと同様である。
図示例の場合、スリーブ21の外周面の形状とバレル構造23の内周面の形状との間の関係により、第1の軸状体20Aと第2の軸状体20Bが相互にスライド可能に構成されている範囲がスライド範囲Lに制限されている。このスライド範囲Lは、第1の軸状体20Aが基端側へスライドし、第2の軸状体20B(バレル構造23)の内部に最も引き込まれた位置で、スリーブ21の基端開口21cがバレル構造23の基端開口23bとほぼ一致するように構成される。ただし、実際には完全に一致する必要はない。これにより、係合フック部22aが骨内に突出しているときには、ピン22の基端部22bは基端開口21cより突出しないか、或いは、医学的に問題のない程度の突出量の範囲に収まる。図示例の場合には、ピン22の基端部22bとスリーブ21の基端開口21cは、いずれもバレル構造23の基端開口23bより突出しない。このように、スライド可能な範囲が引き込み側に制限されているため、第1の軸状体20Aが第2の軸状体20Bの内部に最も引き込まれた短縮状態であっても、第1の軸状体20Aの一部がバレル構造23の基端開口23bから突出しないか、或いは、医学的に問題が生じない範囲の突出量に抑制される。
なお、スリーブ21の外周に止め輪21fを装着することにより、第1の軸状体10Aが第2の軸状体10Bから引き出される側にもスライド可能な範囲が制限される。これにより、第1の軸状体20Aを第2の軸状体20Bから分離すること(軸線方向先端側への抜き取り)ができないように構成される。
また、本実施形態では、第1の軸状体20Aと第2の軸状体20Bが相互にスライド可能に構成されている上記スライド範囲Lの全範囲にわたって、第1の軸状体20Aと第2の軸状体20Bとが軸線20xの周りに回転可能に接続されている。ただし、上述のように伸縮可能なスライド範囲Lのうちの一部において、第1の軸状体20Aと第2の軸状体20Bとが軸線20xの周りに回転可能であるが、他の部分において、第1の軸状体20Aと第2の軸状体20Bとが軸線20xの周りに回転できないように構成されていてもよい。このとき、上記一部は、手術時において術者が手技的に容易に位置決めできる位置であることが好ましい。例えば、テレスコピック構造が伸長状態にあるときだけ両軸状体が相互に回転可能であり、多少でも短縮した中間状態と短縮状態では相互に回転できないように構成することができるし、これとは逆に、伸長状態と中間状態で回転不能、短縮状態で回転可能とすることもできる。これにより、第1の軸状体10Aと第2の軸状体10Bを軸線10xの周りの任意の相対的角度関係に設定することが可能になる。すなわち、第1の軸状体20Aを骨係合用の雄ねじ24やロッキング用の雄ねじ25aの角度姿勢に対して任意の角度関係に設定することが可能になる。
前述のように、第1の軸状体20Aと第2の軸状体20Bとが上記スライド範囲Lの一部において相互に回転可能に構成され、上記一部以外の他の部分において相互に回転規制されるように構成される場合には、回転規制により以下の効果が得られる。手術中において第1の軸状体20Aと第2の軸状体20Bの間の相対的な回転姿勢を変更したい場合、例えば、第1の骨係合構造の回転姿勢を調整したり設定したりする際には、上記スライド範囲Lの中の上記一部に対応する伸縮状態(例えば、上記短縮状態)とし、上記回転姿勢を維持したい場合、例えば、係合フック部22aを突出させた後、或いはその直前などには、上記一部以外の他の部分に対応する伸縮状態(例えば、上記伸長状態及び中間状態)とすればよい。これにより、第1の骨係合構造の回転姿勢の調整や設定を可能にしつつ、骨固定部材20の骨、例えば、骨頭部Zに対する回旋規制作用を単独でも得ることができるため、骨固定部材の導入本数に拘わらず、骨固定システムの回旋方向の負荷に対する保持力や剛性を高めることができる。なお、上記の括弧内は、第1の軸状体20Aが第2の軸状体20Bの内部に最も引き込まれた短縮状態では、第1の軸状体20Aと第2の軸状体20Bが図示例と同様に相互に回転自在となるように構成されるが、上記短縮状態から多少でも第1の軸状体20Aが第2の軸状体20Bから引き出された状態、すなわち、伸長状態及び中間状態では、第1の軸状体20Aと第2の軸状体20Bの相互の軸線周りの回転が規制されるようにした場合の例を示すものである。
上記の回転規制を行うための構造は、第1の軸状体20Aの基端側の外周面(スリーブ21の基端側の外周面)と、第2の軸状体20Bの基端側の内周面(バレル構造23の基端側の内周面)とが非円形の相互に回転方向に係合可能となるような相互に嵌合可能な断面形状を、上記スライド範囲Lの一部において相互に嵌合し、他の部分においては嵌合しないように備えることにより構成できる。
なお、本実施形態のように、基本的には第1の軸状体20Aと第2の軸状体20Bを軸線20xの周りに相互に回転可能に構成しておくが、事後的に、回転規制手段により、第1の軸状体20Aと第2の軸状体20Bが軸線20xの周りに相互に回転規制されるように構成してもよい。この回転規制手段としては、例えば、スリーブ21の基端開口21cの開口縁に形成した非円形断面を備える係合内面部と、バレル構造23の基端開口23bの開口縁に形成した非円形断面を備える係合内面部と、これらの係合内面部に共に挿入可能であり、かつ、両係合内面部に対して軸線周りに係合可能な部材であって、ピン12の基端側部分を挿通させる貫通した軸孔を備えた嵌合部材(図示せず)などを用いることができる。この嵌合部材を基端開口21cと基端開口23bに挿入することにより、第1の軸状体20Aと第2の軸状体20Bが相互に回転できなくなる。なお、回転規制手段としては、上記嵌合部材のように装着時において回転規制を行う部材を用いるものでもよく、或いは、常に装着された状態にあるが、特定の位置若しくは姿勢となったときに回転規制を行う部材を用いるものでもよい。
上記骨係合用の雄ねじ24は、骨の皮質(図示例では外側部Yの皮質)に係合するためのねじ山であり、セルフタッピングを可能にするための正タッピング刃24a(図示例では3箇所)及び逆タッピング刃24b(図示例では2箇所)を備えている。ここで、正タッピング刃24aは、バレル構造23を骨の下穴にねじ込んでいくときのセルフタッピング用である。また、逆タッピング刃24bは、骨固定部材20の抜去時にバレル構造23を骨から抜き取る際のセルフタッピング用である。後者は、治癒過程において形成された仮骨をタッピングすることにより、骨固定部材20を抜取り可能にするために設けられている。
バレル構造23の基端には、基端側へ進むほど拡径した円錐台状の頭部25が形成される。この頭部25は、バレル構造23の他の部分と同様に、軸線20xを中心とする回転体状の基本形状を備える。そして、頭部25の上記基本形状の外周上には、ロッキング用の雄ねじ25aが形成されている。このロッキング用の雄ねじ25aは、図示例では2条ねじである。骨の表面下の皮質に雄ねじ24がねじ込まれていく(タッピングされていく)過程において、雄ねじ25aが開口部14aの内部ねじ山14bに同期して螺合していくように、ロッキング用の雄ねじ25aと、上記骨係合用の雄ねじ24は、相互に同じリードSを有するねじ構造を備えることが好ましい。頭部25の内部にはレンチなどの工具に係合し、第2の軸状体20Bを回転駆動させるための、六角穴構造などの工具係合部25bが形成される。なお、雄ねじ25aは、頭部25やプレート部14の開口部14aの周辺の厚みを低減しても十分な軸力を得るために多条ねじ(図示例では2条ねじ)となっている。
なお、第2の伸縮可能な骨固定部材20とプレート部14の開口部14aとは、第2の伸縮可能な骨固定部材20の第1の軸状体20Aの全体と、第2の軸状体20Bの頭部25(より詳細には頭部25の基端)以外の部分を全て開口部14aに挿通可能となるように寸法付けられている。これにより、先に第1の伸縮可能な骨固定部材10を第1の軸状体10Aの側から骨(大腿骨近位部)に導入し、第2の軸状体10Bのプレート部14を骨の表面(外側部Y)上に配置した状態としてから、第2の伸縮可能な骨固定部材20を開口部14aを通して骨(大腿骨近位部)に導入することが可能になる。
次に、図1及び図2を参照して、上記の伸縮可能な骨固定部材10,20を骨に導入するための適用器具の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、適用器具30は、接続具31と、この接続具31に接続される回転連結軸部32と、回転連結軸部32と同軸に配置され、回転連結軸部32の内部を通過するように設置される態様で上記接続具31に接続(挿通)される螺合連結軸部33と、を含む第1の操作軸30Aを有する。この第1の操作軸30Aは、上記第1の軸状体20Aの基端部、すなわち、スリーブ21の基端部に連結されるものである。ここで、接続具31の断面図は他の図面に比べて1.5倍に拡大して示してある。
接続具31は、軸線方向に貫通する内部通路を備えた本体31aを有する。そして、この本体31aに対して操作筒31bが外側から軸線方向にスライド可能となるように装着されることにより、内部にボールなどの結合部材を備えた着脱可能な連結構造が形成されている。この操作筒31bを含む連結構造は、本体31a内に回転連結軸部32の基端部を挿入したときに、回転連結軸部32の平坦部などの位置決め面32dに内面が嵌合し、かつ、凹部などの嵌合部32eに上記結合部材が嵌合することによって、回転連結軸部32を軸線方向及び軸線の周りの回転方向に固定する態様で連結できるように構成される。
本体31aの先端には接続端部材31cが接続され、この接続端部材31cには、軸線方向の先端側へ突出する向きにコイルばねなどの弾性部材により付勢された押圧端部31eが設けられている。また、本体31aの基端側の内部には、コイルばねなどの弾性部材により付勢されたリング部材31dが内蔵されている。さらに、本体31aの基端部には、操作用のハンドル31fが突設されている。
本体31aの基端部の内部には、本体31aの内部通路の開口面積を限定するように作用する挿通制御部材31gが、コイルばねなどの弾性部材により一方側(図示例では下方側)に付勢された状態で、軸線と交差(直交)する方向に移動可能に取り付けられている。挿通制御部材31gは、螺合連結軸部33の基端部分に形成された拡径部33cが挿通可能な開口部を備える。ただし、通常は弾性部材の付勢により挿通制御部材31gが図示下方へ移動した位置に配置されることにより上記開口部が内部通路に対して偏心した位置に配置され、上記拡径部33cが挿通不能とされる。一方、挿通制御部材31gの下端部を指などで押して挿通制御部材31gを上記付勢力に抗して上方に移動させると、上記開口部が本体31aの内部通路と同芯位置に移動し、上記拡径部33cを通過させることが可能になる。螺合連結軸部33には、上記拡径部33cに対して軸線方向の基端側に隣接した小径部33dが設けられている。螺合連結軸部33の先端を本体31aの内部通路に基端開口から挿入すると、上記拡径部33cが上記挿通制御部材31gの上記開口部の縁部に引っかかるが、ここで、上記挿通制御部材31gの下端部を押し上げると拡径部33cが上記開口部を通過するので、螺合連結軸部33を根元近くまで内部通路に挿入することができる。このとき、上記挿通制御部材31gの下端部から指を離すと、上記開口部に小径部33dが挿通された状態で、螺合連結軸部33は本体31aに対して軸線方向の両側に抜け止め(保持)された状態となる。
回転連結軸部32は軸線方向に貫通した軸孔32aを備える。また、回転連結軸部32の先端には、上記スリーブ21の工具係合部21eに嵌合可能に構成された先端係合縁32bが形成されている。この先端係合縁32bがスリーブ21の工具係合部21eと嵌合することにより、スリーブ21と回転連結軸部32とが軸線の周りの回転方向に固定される。また、回転連結軸部32の先端部は、当該先端部よりも基端側にある他の軸部分よりも大径に構成されることにより、上記先端部と当該他の軸部分との間に外周段差部32cが設けられている。
螺合連結軸部33は軸線方向に貫通した軸孔33aを備える。また、螺合連結軸部33の先端には、上記スリーブ21の雌ねじ部21dと螺合可能に構成された先端螺合構造(雄ねじ部)33bが形成されている。さらに、螺合連結軸部33の基端には拡大された操作部34が形成され、この操作部34の内部には、上記軸孔33aに連通する拡径されたねじ孔33eが形成されている。
適用器具30は、上記第2の軸状体20Bの基端部、すなわち、バレル構造23の基端部に係合する第2の操作軸30Bを有する。本実施形態では、第2の操作軸30Bはレンチ工具であり、貫通した軸孔35aを備えた軸部35を有する。当該軸部35の先端には、バレル構造23の基端に形成された上記工具係合部25bに係合可能に形成された先端係合部35bが設けられている。また、軸部35の基端には回転操作用のハンドル36が接続されている。
上記のように構成された各部品を備えた適用器具30は、以下のようにして組み立てることができる。まず、第2の操作軸30Bの軸孔35aの内部に回転連結軸部32を基端側から挿入する。次に、回転連結軸部32の基端部を上記接続具31の内部通路に挿入し、操作筒31bを操作して接続具31に回転連結軸部32を連結し固定する。最後に、螺合連結軸部33の先端を接続具31の基端開口から内部通路へ挿入し、上記挿通制御部材31gを操作して接続具31の内部通路に対して螺合連結軸部33を抜け止めする。このように組み立てると、図2に示すように、第1の操作軸30A(接続具31、回転連結軸部32及び螺合連結軸部33)と、第2の操作軸30Bとが一体化される。
上述のようにして組み立てた適用器具30においては、第2の操作軸30Bが第1の操作軸30Aの回転連結軸部32の外周段差部32cと、接続具31の接続端部材31cの押圧端部31eとの間で、軸線方向に挟持された状態となる。これにより、第1の操作軸30Aと第2の操作軸30Bは、軸線の周りに相互に回転可能に接続されるとともに、相互に軸線方向には固定される。このとき、押圧端部31eは、第2の操作軸30Bの軸部35の基端を軸線方向の先端側に弾性力により押圧するので、第2の操作軸30Bは、軸線方向に当該弾性力で挟持されるため、第1の操作軸30Aとの間のガタがなくなるとともに、外周段差部32c及び押圧端部31eに対する接触面に上記弾性力に応じた摩擦力を受ける。そして、この摩擦力は、第1の操作軸30Aと第2の操作軸30Bとの間の軸線の周りの回転方向に所定の回転抵抗を付与する。このため、術者が意図しないときに、第2の操作軸30Bが第1の操作軸30Aに対して軸線の周りの回転方向に勝手に回転してしまうことを防止できる。ただし、上記の回転抵抗は、術者による第1の操作軸30Aと第2の操作軸30Bとの間の相対的な軸線の周りの回転操作を妨げることがない程度の値に設定される。
また、この適用器具30の第1の操作軸30Aにおいては、接続具31に対して螺合連結軸部33が所定の限定された範囲において軸線方向に移動可能となるように構成される。そして、螺合連結軸部33は、上記拡径部33cの先端側の外周段差が接続具31内にあるリング部材31dから弾性力を受けることにより、軸線方向の基端側に付勢される。これによって螺合連結軸部33の先端螺合構造(雄ねじ部)33bが回転連結軸部32の先端から軸線方向の先端側へ突出したときに、先端螺合構造33bがスリーブの基端開口21cにパイロットガイドとしてはまり込むことができる。弾性力がない場合、スリーブとの接続作業がバレル構造23内部で行われるので直視することができず、接続時に先端螺合構造33bが基端開口21cの端部にぶつかるなどして螺合連結軸部33が基端側へ押し出されて接続が難しくなる。そして、操作部34を付勢力に抗して軸線方向の先端側へ押し込むことにより、拡径部33cの外周段差がリング部材31dを先端側に押しながら、螺合連結軸部33の全体が軸線方向の先端側へ移動する。
上記適用器具30の第1の操作軸30Aは、前記工具係合部21eと前記回転連結軸部32の先端係合縁32bとの嵌合状態が雌ねじ部21dと前記螺合連結軸部33の先端螺合構造33bとの螺合によって保持されることによって、前記スリーブ21に対して軸線方向及び軸線の周りの回転方向のいずれにも固定される。したがって、上記先端係合縁32bと上記先端螺合構造33bが前記第1の先端係合部を構成する。具体的には、上記第1の操作軸30Aと前記スリーブ21は、前述のリング部材31dにより与えられる付勢力により、或いは、接続具31及び回転連結軸部32と、螺合連結軸部33の基端に設けられた拡大された操作部34との間の締付力により、軸線方向に連結される。
本実施形態においては、上記適用器具30において、操作部34の基端開口から図2に示す押圧具30Cの押圧軸37を挿入することができる。押圧具30Cは、押圧軸37の基端側に押圧軸37の挿入深さの目安とするための指標部38を備える。指標部38には、軸線方向の先端側に設けられた雄ねじ部38aと、軸線方向の基端側に設けられたストッパ部38bとが設けられる。また、指標部38には上記目安とするための数値や目盛などが適宜に表示される。指標部38の基端側に接続されたハンドル39を回転操作することにより、ストッパ部38bが操作部34の基端開口の開口縁部に当接するまで、上記雄ねじ部38aを上記螺合連結軸部33の操作部34内に形成されたねじ孔33eにねじ込むことができる。これにより、押圧軸37の押圧端37aを第1の操作軸30Aの先端部内に突出させることができる。このとき、適用器具30に骨固定部材20が連結されていれば、骨固定部材20のピン22の基端部22bを上記押圧端37aにより押し込むことができるため、ピン22の係合フック部22aをスリーブ21の側部開口21aから突出させることができる。
図2に示すように、適用器具30は、上記の伸縮可能な骨固定部材20の第1の軸状体20Aに連結させることができ、かつ、第2の軸状体20Bに係合させることができるようになっている。ここで、第1の操作軸30Aは、第2の操作軸30Bの内部を通過し、回転連結軸部32の先端係合縁32bが第2の操作軸30Bの軸部35の先端係合部35bから先端側へ突出する。このため、先端係合縁32bを第1の軸状体20Aのスリーブ21の基端開口21cに形成された工具係合部21eに嵌合させることにより、回転連結軸部32とスリーブ21とが軸線の周りの回転方向に固定される。この状態で、操作部34を接続具31に向けて軸線方向の先端側へ押し込んでから僅かに回転させ、螺合連結軸部33の先端螺合構造33bをスリーブ21の雌ねじ部21dに螺合させる。その後、操作部34をさらに同じ向きに回転させていくと、操作部34が接続具31の基端に当接し、スリーブ21は、回転連結軸部32に対して軸線の周りの回転方向に固定された状態で、螺合連結軸部33及び操作部34により締付固定される。なお、この連結作業時において、螺合連結軸部33は上記弾性力により軸線方向の基端側に付勢されているため、スリーブの基端開口21cに先端係合縁32bより突出した先端螺合構造33bがパイロットガイドとしてはまり込み、回転連結軸部32の先端係合縁32bがスリーブ21の工具係合部21eから外れにくくなるから、直視できないバレル構造23の内部における接続でも、骨固定部材20と適用器具30の連結作業を容易化することができる。
上記のように、伸縮可能な骨固定部材20の第1の軸状体20Aを適用器具30の第1の操作軸30Aに連結した状態では、第1の操作軸30Aと第2の操作軸30Bの間の軸線方向の位置関係が固定(保持)されているとともに、上記位置関係は、骨固定部材20の伸縮構造のスライド範囲L内に対応する位置関係であるため、第2の軸状体20Bが適用器具30の第2の操作軸30Bに係合可能な状態となる。本実施形態の適用器具30では、図示例の場合、第1の軸状体20Aが第2の軸状体20Bの内部から最も引き出された伸長状態にあるときに、第2の軸状体20Bのバレル構造23の頭部25の工具係合部25b(六角穴)に第2の操作軸30Bの第2の先端係合部である先端係合部35b(六角レンチ)が係合可能となるように構成されている。
なお、上記の位置関係は、骨固定部材20の伸縮構造のスライド範囲L内の第1の軸状体20Aの基端部と、第2の軸状体20Bの基端部との間の位置関係と対応したものであればよく、伸縮構造のうちの上述の伸長状態に限らず、第1の軸状体20Aが第2の軸状体20Bの中に最も引き込まれた短縮状態であってもよく、伸長状態と短縮状態の間の任意の中間状態であってもよい。なお、本実施形態では、骨固定部材20を骨に導入したときの基本姿勢が伸長状態であるため、適用器具30の第1の操作軸30Aの第1の先端係合部である先端係合縁32b及び先端螺合構造33bと、第2の操作軸30Bの第1の先端係合部である先端係合部35bとの間の所定の位置関係を上記伸長状態に対応するものとしている。したがって、骨固定部材20の骨に導入する基本姿勢に合わせて、伸長状態に対応する適用器具30の他に、短縮状態や中間状態に対応する適用器具を別途用意してもよい。
また、上記適用器具30とは異なり、適用器具30の第1の操作軸30Aの第1の先端係合部である先端係合縁32b及び先端螺合構造(雄ねじ部)33bと、第2の操作軸30Bの第2の先端係合部である先端係合部35bとの間の軸線方向の所定の位置関係を調整可能な位置関係調整機構を設けてもよい。この場合、位置関係調整機構は、上記スライド範囲Lに対応する調整範囲を少なくとも有することが好ましい。例えば、回転連結軸部32と接続具31との間の連結構造(操作筒31bを含む部分)の連結位置などを調整可能とすることにより、上述の所定の位置関係を伸長状態に対応するものから中間状態や短縮状態に対応するものに変更することができる。
次に、図3を参照して、本発明に係る第2実施形態の適用器具40について説明する。
この適用器具40は、上記骨固定部材10を骨内に導入するために適した構造を備えている。適用器具40は、上記の第1の軸状体10Aに連結可能な第1の操作軸40Aと、上記の第2の軸状体10Bに係合可能な第2の操作軸40Bとを有している。第1の操作軸40Aは、軸線方向に貫通する内部通路を備えた接続具41と、接続具41の内部通路と連通するように軸線方向に貫通する軸孔42aを有する回転連結軸部42と、接続具41の内部通路及び回転連結軸部42の軸孔42aの内部に挿通され、軸線方向に貫通する軸孔43aを有する螺合連結軸部43と、を備えている。ここで、適用器具40の断面図は他の図面に比べて1.5倍に拡大して示してある。
なお、接続具41は、回転連結軸部42に対して着脱可能でははく、回転連結軸部42と一体に構成されている点で異なるものの、上記の弾性部材により付勢されたリング部材31dと同様のリング部材41dや上記挿通制御部材31gと同様の挿通制御部材41gを有する点は、接続具31と同様である。また、回転連結軸部42は、接続具41に対して着脱可能ではなく、接続具41と一体化されている点、及び、軸線方向の長さが異なる点で、上記適用器具30の回転連結軸部32と異なるものの、骨固定部材10のスリーブ11の基端開口11cに形成された工具係合部11eと嵌合する先端係合縁42bを先端に有する点などの基本的機能については、上記回転連結軸部32と同様である。また、接続具41の内部通路には上記螺合連結軸部43が挿入可能に構成され、適用器具30と同様に、螺合連結軸部43の先端には雄ねじ部のような先端螺合構造43bが形成され、基端には拡径された操作部44が設けられている。
回転連結軸部42の外周面上には雄ねじ部42cが形成されている。一方、回転連結軸部42の外周には筒状の第2の操作軸40Bが装着されている。この第2の操作軸40Bは、軸線方向に貫通する軸孔45aを備えた筒状の軸部45により構成されている。軸部45の先端には、骨固定部材10の第2の軸状体10Bのバレル部13の基端開口13bの開口縁に当接可能なテーパー状の先端係合部45bを備えている。また、軸部45の軸孔45aの少なくとも一部には雌ねじ部45cが形成され、この雌ねじ部45cは回転連結軸部42の上記雄ねじ部42cと螺合する。さらに、軸部45の基端には、軸部45を回転操作するためのローレット加工などが施された、軸部45の他の部分より大径に形成された操作部45dが形成されている。
この適用器具40において、第2の操作軸40Bは、第1の操作軸40Aの回転連結軸部42の外周面上において軸線の周りの回転方向に回転操作することにより、軸線方向に移動可能に装着されている。また、第2の操作軸40Bは、雄ねじ部42cと雌ねじ部45cとの螺合構造により、第1の操作軸40Aに対して軸線方向の所定の位置関係を有するように、位置決め可能(固定可能)に構成されている。
適用器具40の第1の操作軸40Aは、前述の適用器具30の第1の操作軸30Aと同様に、骨固定部材10の第1の軸状体10Aのスリーブ11の基端開口11cに連結可能に構成されている。具体的には、基端開口11cの工具係合部11eが回転連結軸部42の先端係合縁42bと嵌合した状態で、螺合連結軸部43の先端螺合構造(雄ねじ部)43bを雌ねじ部11dに螺合させることにより、適用器具30と同様の方法で、第1の操作軸40Aはスリーブ11に対して連結される。すなわち、第1の操作軸40Aは、前記工具係合部11eと前記回転連結軸部42の先端係合縁42bとの嵌合状態が雌ねじ部11dと前記螺合連結軸部43の先端螺合構造43bとの螺合によって保持されることによって、前記スリーブ11に対して軸線方向及び軸線の周りの回転方向のいずれにも固定される。より具体的には、上記第1の操作軸40Aと前記スリーブ11は、前述のリング部材41dにより与えられる付勢力により、或いは、接続具41及び回転連結軸部42と螺合連結軸部43の基端に設けられた拡大された操作部44との間の締付力により、軸線方向に連結される。
上記のように第1の操作軸40Aが第1の軸状体10Aに連結されると、図3(a)に示すように、第2の操作軸40Bの先端係合部45bが、第2の軸状体10Bのバレル部13の基端開口13bの開口縁部に係合可能となるように構成される。すなわち、操作部45dを回転操作することにより、軸部45を回転させると、雄ねじ部42cと雌ねじ部45cの螺合構造により、第2の操作軸40Bを第1の操作軸40Aに対して軸線方向に移動させることができる。このようにして、第2の操作軸40Bを軸線方向の先端側へ前進させると、やがて先端係合部45bが基端開口13bの開口縁部に当接し、第2の軸状体10Bを軸線方向の先端側へ押し付けることができる。例えば、図3(a)に示すように骨固定部材10が骨の内部に挿入されている状態では、第1の軸状体10Aの深さ方向の位置に拘わらず、第2の軸状体10Bを骨の表面(外側部Y)に押し付けた状態となるように設置できる。
なお、適用器具40についても、適用器具30と同様に、操作部44の基端開口から挿入可能な押圧軸47、指標部48、ハンドル49を備えた押圧具40Cを用意することができる。この押圧具40Cは、押圧具30Cが適用器具30の長さに対応する長さの押圧軸37を備えるのと同様に、適用器具40の長さに対応する長さの押圧軸47を備える。そして、ハンドル49を回転操作することにより、雄ねじ部48aを操作部44の内部のねじ孔に螺合させることにより押圧軸47をストッパ部48bが操作部44に抵触するまで前進させることができる。このため、その押圧端47aによってピン12の基端部12bを押し込むことにより、スリーブ11の側部開口11aからピン12の係合フック部12aを突出させることができる。
次に、図6〜図8を参照して、上記第1実施形態の適用器具30及び第2実施形態の適用器具40を用いて骨固定部材10,20を骨に適用する方法について説明する。
この適用態様は大腿骨頚部骨折(内側骨折)への適用例であり、図8に示すように、大腿骨の頚部Xの骨折線を跨いで、二つの骨固定部材10,20を大腿骨の外側部Yから骨頭部Zの内側にまで導入する。遠位側に導入される骨固定部材20は、外側部Yから頚部Xの遠位側の皮質の内面に支持されるように導入され、近位側に導入される骨固定部材10は、外側部Yから頚部Xの後方の皮質の内面に支持されるように導入される。これにより、骨固定部材10、20は、外側部Yと、頚部Xの遠位側と、頚部Xの後方との3か所の皮質にそれぞれ支持された状態となる。
上記の態様では、まず、図6(a)に示すように、遠位側の骨固定部材20を導入する第1の基準線20sに沿ってガイドピン20pの挿入と、ドリルやリーマなどの穿孔具20rによる下穴の穿孔とを行う。この第1の基準線20sは、頚部Xの遠位側の皮質の内側を通過し、骨頭部Zの内部に向かう。そして、この第1の基準線20sに沿って導入されたガイドピン20pや穿孔具20rなどを基準として、ガイド器具(パラレルガイド)50を用いて、頚部Xの後方の皮質の内側を通過する第2の基準線10sを設定し、ガイドピン10pの挿入、穿孔具10rによる下穴の穿孔を行う。第2の基準線10sの設定位置は、患者の頚部Xの大きさによって異なる。一方、第1の基準線20sと第2の基準線10sの間隔G(軸線10xと第2の軸線14xとの間の距離に等しい。)は一定であり、このため、頚部Xのサイズの大小に拘わらず、第2の基準線10sに沿って骨固定部材10を挿入したときに後方の皮質の内側に接触するように、プレート部14の軸線10xと第2の軸線14xを結ぶ線の傾斜角度を調整する必要がある。この段階では、上記ガイド器具50の傾斜を調整して、それぞれ第2の基準線10sの位置を設定する。すなわち、頚部Xが大きい場合には上記傾斜角度を大きくし、頚部Xが小さい場合には上記傾斜角度を小さくして、骨固定部材10が頚部Xの後方の皮質に接するように第2の基準線10sの位置を調整する。
なお、第1の基準線20sと第2の基準線10sは基本的には平行であるが、状況に応じて適宜の相互姿勢関係に設定することができる。この相互姿勢関係を確保するために、上記ガイド器具50を用いる。このガイド器具50は、二本の骨固定部材20にそれぞれ対応する第1の基準線と第2の基準線の間の相互姿勢関係を規定するものであり、通常は両基準線を平行に設定する平行ガイド器具である。また、上記の相互姿勢関係をプレート部14の開口部14aを用いて定めることも可能である。なお、図示例のように、骨癒合過程における骨折部の短縮作用(骨頭短縮)に対応するには、骨固定部材10と20が相互に平行に導入される必要がある。
次に、図6(b)に示すように、第2の基準線10sに沿って導入されたガイドピン10pや穿孔具10rなどにより形成された下穴に、近位側の骨固定部材10を上記適用器具40を用いて第2の基準線10sに沿って導入する。このとき、骨固定部材10は、プレート部14の開口部14aが第1の基準線20sに沿って導入されたガイドピン20pや穿孔具20r、或いは、これらに接続された各種の工具に挿通される態様で、第2の基準線10sに沿って導入される。この骨固定部材10の導入は、スリーブ11の工具係合部11eに係合する回転連結軸部42及び雌ねじ部11dに螺合する螺合連結軸部43を含む上記の第1の操作軸40Aを用いる。第1の操作軸40Aは、スリーブ11に対して第2の基準線10sに沿った軸線方向と、第2の基準線10sの周りの回転方向の双方に固定されている。
このとき、骨固定部材10の挿入深さと、側部開口11aの開口の向き、及び、係合フック部12aの突出の向きが定まる。なお、骨固定部材10を伸縮構造が伸長状態にある態様で骨内に導入する場合には、第2の操作軸40Bを用いずに骨固定部材10を下穴に挿入し、プレート部14が外側部Yの骨表面に当接するまで押し込むだけでよい。ただし、適用器具40に上記の第2の操作軸40Bが装着されている場合には、操作部45dに対する回転操作により軸部45の軸線方向の位置を調整し、先端係合部45bを第2の軸状体10Bのバレル部13の基端開口13bの開口縁部に押し付けることにより、プレート部14を外側部Yの骨表面上に対して確実に密着させることができる。
一方、骨固定部材10を伸縮構造が短縮状態や中間状態にある態様で骨内に導入しようとする場合には、適用器具40に上記の第2の操作軸40Bを装着し、第1の操作軸40Aにより第1の軸状体10Aを既定の深さに配置した状態で、第2の軸状体10Bの基端開口13bの開口縁部を第2の操作軸40Bにより押し込み、外側部Yの骨表面上に押し付ける。図示例の場合には、軸部45を操作部45dに対する回転操作によって回転させて軸線方向に移動させ、第2の軸状体10Bのプレート部14が骨表面上に密着するように位置決めする。なお、このような第2の操作軸40Bを用いた第2の軸状体10Bの位置決めやプレート部14の骨表面への密着の作業は、後述する係合フック部12aの突出作業の後に行うだけでもよい。
その後、図7(c)に示すように、適用器具40の操作部44の基部開口に上記押圧具40Cの押圧軸47(図示せず)を挿入し、ハンドル49を回転操作することによって図示しない押圧軸47の先端の押圧端47aでピン12を押し込み、係合フック部12aをスリーブ11の側部開口11aから突出させることができる。
上記のような第1の軸状体10Aの導入深さの調整(これは、係合フック部12aの係合位置の深さ調整を意味する。)は、患者の骨頭位置と骨固定部材10のサイズとの関係、患者の骨頭部Z内の骨質の良否などに応じて医師が手術中に判断する必要があるため、骨固定部材10のスライド構造は、インプラントのサイズ別準備数量を低減できる点と手術時のサイズ交換作業が不要になる点で極めて効果的である。
本実施形態において、上記のように、係合フック部12aを突出させ、骨に係合させた後に、必要に応じて、第2の軸状体10Bを第2の操作軸40Bの先端係合部45bにより押し込み、プレート部14を外側部Yの表面に当接させる。この状態により更に第2の操作軸40Bを前進させると、骨折部(頚部X)に圧迫をかけることができる。
上述のようにして骨固定部材10の設置が完了すると、その後、図7(d)に示すように、ガイドピン20p及び穿孔具20r等により形成される第1の基準線20sに沿った下穴に骨固定部材20を導入する。この骨固定部材20は、骨固定部材10のプレート部14に形成された開口部14aを通して下穴に挿入される。この骨固定部材20の導入作業においては、スリーブ21の基端に対して軸線方向及び回転方向に固定される第1の操作軸30Aを備えた上記の適用器具30を用いる。適用器具30を用いた導入作業により、第1の軸状体20Aが下穴内に導入される。やがて、第2の軸状体20Bの骨係合用の雄ねじ24が外側部Yに到達すると、適用器具30の第2の操作軸30Bの軸部35の先端係合部35bを工具係合部25bに係合させ、ハンドル36に対する回転操作により、第2の軸状体20B(バレル構造23)を回転させ、雄ねじ24を骨にねじ込んでいく。雄ねじ24は、正タッピング刃24aによるセルフタッピングにより下穴の周囲をタッピングしながらねじ込まれていく。これにより、雄ねじ24は外側部Yの表面下の皮質にしっかりと係合する。
このとき、骨固定部材20の第2の軸状体20Bの頭部25は、プレート部14の開口部14aに形成された内部ねじ山14bにロッキング用の雄ねじ25aが螺合することにより保持される。ロッキング用のねじ孔である開口部14aの内部ねじ山14bとロッキング用の雄ねじ25aの螺合により、骨固定部材20の第2の軸状体20Bはプレート部14に対して固定される。すなわち、第2の軸状体20Bは、ロッキング効果により、プレート部14に対して軸線20xの方向に固定された状態となる。一方、第2の軸状体20Bは骨係合用の雄ねじ24により外側部Yの皮質にも係合している。このことは、ロッキング構造を介して、プレート部14(ひいては骨固定部材10の軸線10x)が外側部Yに対してしっかりと固定されることを意味する。また、上記ロッキング構造の効果は、骨固定部材20のプレート部14或いは外側部Yに対する角度安定性を保証する。この角度安定性は、骨固定部材10と20の間の相互姿勢(平行度)の剛性を増強するとともに、骨係合用の雄ねじ24を介して骨固定部材10,20の骨の表面近傍の皮質(外側部Y)に対する固定力を高める。
上記のように第2の軸状体20Bが適正にねじ込まれたとき、第1の軸状体20Aに固定された上記適用器具30の第1の操作軸30Aと、第2の軸状体20Bの工具係合部25bに係合する第2の操作軸30Bとの間の軸線方向の位置関係により、第1の軸状体20Aと第2の軸状体20Bとの間の軸線方向の位置関係が適切な一定の関係(例えば、伸長状態)に維持されるように構成されていれば、第2の操作軸30Bによる第2の軸状体20Bのねじ込み作業が終了すると、その時点で第1の軸状体20Aが上記所定の位置関係に対応する骨内の適切な深度に配置されることになる。したがって、適用器具30の所定の位置関係が骨固定部材20の最終的な伸縮状態と整合したものであれば、第2の軸状体20Bのねじ込みが終了した時点で、骨固定部材20の骨に対する位置調整の作業は完了する。
最後に、第1の軸状体20Aが適切な深度に配置されていることを確認した後に、押圧具30Cの押圧軸37を上記適用器具30の操作部34の基端開口から挿入し、図8に示すように、ハンドル39の回転操作によって押圧端37bを押し込むことによりピン22を押し込み、係合フック部22aをスリーブ21の側部開口21aから突出させ、骨に係合させる。
以上説明したように、上記の骨固定システムは、係合フック部12a,22aなどの可動係合部を第1の骨係合構造として備えた第1の軸状体10A、20Aと、この第1の軸状体10A,20Aとの間で伸縮構造を構成する第2の軸状体10B、20Bとを有する、伸縮可能な骨固定部材10,20を含むことにより、骨の表面上や表面下(外側部Y)の皮質に骨固定部材10,20の基端側部分である第2の軸状体10B,20Bを骨にしっかりと固定した上で、骨固定部材10,20の先端側部分に設けた第1の骨係合構造(係合フック部12a,22aなどの可動係合部)の軸線方向の位置(係合位置)を任意に変更し、調整及び設定することができる。これにより、本実施形態は、骨粗鬆症などの脆弱な骨質や、Garden分類のステージIIIやIVの不安定な転位型などの複雑な骨折態様にも適用可能な柔軟で確実な対応性を有する骨固定システムとなる。
特に、第2の軸状体10B,20Bに対する第1の骨係合構造の係合位置が移動可能に構成されることにより、骨の治癒過程における短縮作用(骨頭短縮)への順応性を確保できる。このため、骨の表面近傍箇所にある骨部分(骨折線よりも表面側にある部分、例えば、外側部Y)に対して第2の軸状体10B,20Bをスライド可能な状態に設置する必要がなくなり、第2の軸状体10B,20Bを上記骨部分に対しては密着性の高い態様で適用することが可能になる。したがって、複数の骨固定部材が骨の表面下の皮質に共に支持されるように適用できることから、骨固定部材10と20の間の相対姿勢を維持するための剛性を大幅に向上できる。これにより、例えば、骨固定部材10と20の間にX型回旋転位(チョップスティックス現象)が生ずることなどを回避できる。このような固定態様は、骨固定システム全体の剛性が向上することにより、骨粗鬆症などの脆弱な骨に対する局所的な圧迫の危険性を回避できる点でも有利である。
本実施形態の場合、具体的には、骨固定部材10,20は、第1の軸状体10A,20Aと第2の軸状体10B,20Bが伸縮構造によりスライド可能に構成されるため、プレート部14や雄ねじ24により外側部Yに係合される第2の軸状体10B,20Bに対して、第1の軸状体10A,20Aの係合フック部12a,22aが骨頭部Zに係合する位置(穿孔部内の深さ)を第1の基準線20s及び第2の基準線10sに沿って適宜に設定することができる。
このとき、本実施形態の適用器具30,40は、第1の軸状体10A,20Aの基端部に係合可能な第1の操作軸30A、40Aと、第2の軸状体10B,20Bの基端部に係合可能な第2の操作軸30B,40Bとが、骨固定部材10,20のスライド範囲L内の第1の軸状体10A,20Aと第2の軸状体10B,20Bとの間の軸線方向の位置関係に対応する所定の位置関係となるように軸線方向に相互に位置決めされている。このため、第1の操作軸30A,40Aにより第1の軸状体10A,20Aを操作する際には、第2の軸状体10B,20Bの軸線方向の位置が上記所定の位置関係に応じた位置に自動的に支持(保持)され、第2の操作軸30B,40Bにより第2の軸状体10B,20Bを操作する際には、第1の軸状体10A,20Aの軸線方向の位置が上記所定の位置関係に応じた位置に自動的に支持(保持)される。したがって、手術時における第1の軸状体10A,20Aに対する操作及び第2の軸状体10B,20Bに対する操作がそれぞれ容易になるとともに、両操作の切り替えも容易かつ確実に、或いは、スムーズに行うことが可能になる。
この場合、上記所定の位置関係は、骨固定部材10,20の骨内における最終的な伸縮状態に対応する位置関係であることが好ましいが、必ずしも最終的な伸縮状態に対応しなくても構わない。ここで、術者の希望により上記所定の位置関係の変更を可能にする対策としては、伸縮構造のスライド範囲L内の複数の異なる態様にそれぞれ対応する複数の異なる上記所定の位置関係をそれぞれ備えた複数の適用器具を予め用意しておくことが考えられる。また、適用器具30において、第1の先端係合部(32b、33b)と第2の先端係合部(35b)との距離を変更可能にする機構を設けることにより、上記所定の位置関係を調整可能にしてもよい。また、回転連結軸部32の外周段差部32cを設けず、ハンドル36の軸上の回転連結軸部32の外周位置に、ハンドル31fと同様のストッパー機構を設け、第2の軸状体20Bのみを前進させる場合は、このストッパー機構を解除し、第2の操作軸30Bを前方へ押し付けるという手段でもよい。更にこの場合、螺合連結軸部33の操作部34の外周に、第2の操作軸40Bと同様の軸部45を圧迫ナットとして設ければ、ハンドル36に内蔵される上記のストッパー機構を解除してハンドル31fを把持しながら第2の操作軸30B(圧迫ナット)を前進させることによって、骨折部(頚部X)に圧迫をかけることもできる。以上のような構造により、第2の操作軸30Bが軸線方向の少なくとも先端側に向けて移動可能となるように、第2の操作軸30Bの第1の操作軸30Aに対する軸線方向の固定による拘束状態が解除可能に構成される。なお、適用器具40では、第1の先端係合部(42b、43b)と第2の先端係合部(45b)との位置関係を、第2の操作軸40Bの回転操作により、予め、或いは、手術中においても、容易に変更することができる。また、適用器具40では、第1の操作軸40Aと第2の操作軸40Bを上記螺合範囲を越えて回転可能とし、螺合状態を脱することができるように構成することにより、第2の操作軸40Bが軸線方向の少なくとも先端側に向けてスライド移動可能となるように、第2の操作軸40Bの第1の操作軸40Aに対する螺合による拘束状態が解除可能に構成される。
上記のような軸線方向の拘束状態の解除は、第2の軸状体への加圧による骨折部の圧迫、所定の位置関係以外の位置における第2の軸状体の一時的な手動による支持などを可能とする。なお、拘束状態が解除されたときに移動可能な領域としては、軸線方向の先端側に限らず、軸線方向の基端側であってもよく、軸線方向の両側であっても構わない。また、拘束状態が解除されたときに移動可能な領域にあるときに第2の操作軸を拘束状態に復帰可能となるように構成することにより、第1の操作軸と第2の操作軸との間の所定の位置関係の変更又は調整も可能となる。
また、本実施形態の骨固定システムでは、第1の軸状体10A,20Aと第2の軸状体10B,20Bが相互に軸線周りに回転可能に接続されていることにより、係合フック部12a,22aが骨内に突出する向きも、第2の軸状体10B,20Bの軸線周りの回転姿勢によらず、任意に設定することができる。このように、骨折線よりも奥側にある部分(骨頭部Z)に対する第1の骨係合構造を備えるとともに、骨折線よりも表面側にある部分(外側部Y)に対する第2の骨係合構造を備えた骨固定システムにおいて、第1の骨係合構造の深さと向きを任意に設定することができるため、骨質や骨折態様に合わせて柔軟かつ確実に対応することが可能になる。
ここで、本実施形態の適用器具30では、第1の操作軸30Aと第2の操作軸30Bが軸線方向の位置関係を変更することなしに相互に回転可能に構成されているため、第1の軸状体20Aの軸線の周りの回転姿勢を、第2の軸状体20Bの回転姿勢に拘わらずに、適宜に設定することが可能である。一方、適用器具40では、第1の操作軸40Aと第2の操作軸40Bが相互に回転可能に構成されているが、両軸が相対的に回転すると軸線方向の位置関係も変更される。しかし、両軸の軸線方向の位置関係を相互に干渉しない範囲で、或いは、相互に支障のない軸線方向の向きに、変えることで、相互に軸線の周りの回転姿勢を変更できる。例えば、第2の操作軸40Bが第2の軸状体10Bと係合せずに離間している場合、或いは、第2の操作軸40Bを第2の軸状体10Bから離れる向きに移動させる場合には、両軸を相対的に回転させることに支障はないため、第1の軸状体10Aの軸線の周りの回転姿勢を、第2の軸状体10Bに対して変更することが可能である。
開口部14aの内部ねじ山14bと頭部25の雄ねじ25aとの螺合によるロッキング固定は、骨係合用の雄ねじ24とロッキング用の雄ねじ25aとが同期している(リードが一致している)構成により、プレート部14の骨面からの不適切な離反、ロッキングねじ(内部ねじ山14bと雄ねじ25a)の不完全なねじ込み状態、骨係合用の雄ねじ24のタッピングにより形成された骨のねじ山の破壊などを防止できる。また、上記の構成は、第2の伸縮可能な骨固定部材20の第2の軸状体20Bのねじ込み時において、この時点におけるプレート部14の骨表面(外側部Yの表面)に対する位置のままで、プレート部14がロッキング固定されることを意味する。したがって、ねじ込み完了後のプレート部14の位置をねじ込み作業時において設定することができる。なお、雄ねじ25aを図示例のように多条ねじとすることにより、プレート部14や頭部25の厚みを制限しつつ、ねじの軸力を確保して確実なロッキング固定を実現できる。なお、以上の点は、プレート部14に対するものに限らず、後述するプレート15のような独立したプレートに対する場合も同様である。なお、適用器具40の上記先端係合部45bとバレル部13の基端開口13bとを回転方向に係合可能な構造とすることによって、第2の操作軸40Bにより第2の軸状体10Bの回転姿勢をも調整可能となるように構成できる。
本実施形態の適用器具40では、第1の操作軸40Aにより第1の軸状体10Aを支持しつつ、第2の操作軸40Bによりプレート部14の位置を確実に支持することができる。このため、適用器具40を接続したままで、プレート部14の開口部14aに係合しうるロッキング用の頭部を備えた他の骨固定部材(骨ねじ、フックピンなど、骨固定部材20でもよい。)を装着するようにすれば、プレート部14と他の骨固定部材との螺合位置を正確に設定することができる。また、他の骨固定部材の頭部がロッキング用の頭部でない場合でも、第2の操作軸40Bによりプレート部14を骨面上に確実に当接させた状態で、通常の骨プレートと同様に、他の骨固定部材によりプレート部14を骨面上に圧迫固定できる。
なお、本発明に係る骨固定部材は、上記実施形態に記載の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づく種々の異なる態様を含む。たとえば、上記開口部14aなどの各所の開口部は、いずれも、完全な孔形状ではなく、切り欠き状であっても構わない。また、骨固定部材は、上記実施形態のように第1の軸状体としてフックピンを用いた場合に限らず、第1の軸状体として、スクリュータイプ、ブレードタイプ又はブローチタイプの骨係合要素を備えたもの、或いは、先端の方が後端よりもピッチの大きなねじ構造を備えた圧迫(圧縮)ねじなどを用いることも可能である。
また、骨固定部材の骨に対する適用態様についても、図8とは逆に、骨固定部材10を遠位側に導入し、骨固定部材20を近位側に導入しても構わない。また、骨固定部材10と20のいずれか一方が伸縮可能な骨固定部材であれば、他方は単なる骨ねじやフックピンなどの伸縮可能でない骨固定部材であっても構わない。同様に、二本以上の骨固定部材20を用いても構わない。さらに、これらのうちのいずれか一方が伸縮可能な骨固定部材であれば、他方は単なる骨ねじやフックピンなどの伸縮可能でない骨固定部材であっても構わない。ただし、上記のいずれの場合でも、伸縮可能でない骨固定部材は、骨の表面近傍の皮質にのみ係合するように構成されることが望ましい。
本発明に係る骨固定部材の適用器具は、上記適用器具30,40に限らず、本発明の主旨をかなえるものであれば、種々の変更が施されたものであってもよい。例えば、上記実施形態の適用器具30,40は、いずれも、軸線と交差する方向に移動可能な可動係合部(係合フック)を第1の骨係合構造として備えた第1の軸状体10A,20Aを備える骨固定部材10,20を使用対象とするものである。しかし、本発明に係る適用器具は、可動係合部(係合フック)を第1の骨係合構造として備えた第1の軸状体を有する骨固定部材に限らず、第1の骨係合構造としてねじ構造を備えた第1の軸状体を有する骨固定部材(例えば、上記のスライディングスクリュー)を使用対象とするものであっても構わない。
上記の適用態様では、大腿骨近位部に適用した例を示したが、本発明に係る骨固定部材や適用器具は、寸法を適宜に変更することにより、各部の各種の骨折態様に用いることができる。特に、大腿骨や上腕骨などの長管骨の骨端部に用いることにより多大な効果を得ることが可能である。
また、本発明に係る適用器具は、上記実施形態にて示した構成に限らず、第1の操作軸が第1の軸状体に係合することにより、軸線方向の先端側と基端側のいずれか少なくとも一方に向けて支持する第1の軸状体の軸線方向の位置と、第2の操作軸が第2の軸状体に係合することにより、軸線方向の先端側と基端側のいずれか少なくとも一方に向けて支持する第2の軸状体の軸線方向の位置とを、相互に伸縮構造のスライド可能な範囲内の相対的な所定の位置関係で位置決めすることができるものであればよい。なお、本明細書において「位置決め可能」とは、固定された状態にすることができる場合に限らず、手術時において、意図的な操作を加えない限り、所定の位置関係を保持(維持)可能な状態にすることができる場合をも含む。