(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1に係る部品実装機について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る部品実装機の構成を示す外観図である。
部品実装機120は、上流から下流に向けて基板20を送りながら電子部品を実装するとともに、基板20の表面状態を検査する装置であり、お互いが協調して、交互動作を行なう実装ヘッドと検査ヘッドとを備えている。
図2は、部品実装機120内部の主要な構成を示す平面図である。
部品実装機120は、その内部に基板20の搬送方向(X軸方向)と直交する部品実装機120の前後方向(Y軸方向)に前サブ設備120aおよび後サブ設備120bを備えている。
前サブ設備120aは、基板20に部品を実装し、回路基板を生産する装置であり、部品テープを収納する部品カセット123の配列である部品供給部125aと、後述するビーム122aと、部品カセット123から電子部品を吸着し基板20に装着することができる複数の吸着ノズル(以下、単に「ノズル」ともいう。)を有する実装ヘッド121とを備えている。
後サブ設備120bは、基板20の表面状態を検査する装置であり、基板20の表面状態を検査するための検査ヘッド127と、ビーム122bとを備えている。
ここで、「部品テープ」とは、同一部品種の複数の部品がテープ(キャリアテープ)上に並べられたものであり、リール(供給リール)等に巻かれた状態で供給される。主に、チップ部品と呼ばれる比較的小さいサイズの部品を部品実装機に供給するのに使用される。
この前サブ設備120aは、具体的には、高速装着機と呼ばれる部品実装機と多機能装着機と呼ばれる部品実装機それぞれの機能を併せもつ実装装置である。高速装着機とは、主として□10mm以下の電子部品を1点あたり0.1秒程度のスピードで装着する高い生産性を特徴とする設備であり、多機能装着機とは、□10mm以上の大型電子部品やスイッチ・コネクタ等の異形部品、QFP(Quad Flat Package)・BGA(Ball Grid Array)等のIC部品を装着する設備である。
すなわち、この前サブ設備120aは、ほぼ全ての種類の電子部品(装着対象となる部品として、0.4mm×0.2mmのチップ抵抗から200mmのコネクタまで)を装着できるように設計されており、この部品実装機120を必要台数だけ並べることで、実装ラインを構成することができる。
ビーム122aは、X軸方向に延びた剛体であって、Y軸方向(基板20の搬送方向と垂直方向)に設けられた軌道(図示せず)上をX軸方向と平行を保ったままで移動することができるものである。また、ビーム122aは、当該ビーム122aに取り付けられた実装ヘッド121をビーム122aに沿って、すなわちX軸方向に移動させることができるものであり、自己のY軸方向の移動と、これに伴ってY軸方向に移動する実装ヘッド121のX軸方向の移動とで実装ヘッド121をXY平面内で自在に移動させることができる。また、これらを駆動させるための複数のモータ(図示せず)がビーム122aに備えられており、ビーム122aを介してこれらモータなどに電力が供給されている。
ビーム122bもビーム122aと同様の構成を有する。ビーム122bのY軸方向の移動とビーム122b上の検査ヘッド127のX軸方向の移動とにより、検査ヘッド127は、実装ヘッド121と同様、XY平面内で自在に移動することができる。
また、部品実装機120には前サブ設備120aおよび後サブ設備120bの間に、基板20を搬送するためのレール129が一対備えられている。
レール129は、固定レール129aと可動レール129bとからなり、固定レール129aの位置は予め固定されているものの、可動レール129bは、搬送される基板20のY軸方向の長さに応じてY軸方向に移動可能な構成になっている。
実装ヘッド121の定位置から基板20の中心までの距離を「F」とし、検査ヘッド127の定位置から基板20の中心までの距離を「R」とした場合、F≦Rなる関係が満たされる。つまり、図3に示すように、固定レール129aと可動レール129bとの間の距離が最大になるような位置に可動レール129bを移動させた状態では、F=Rなる関係が満たされ、可動レール129bの位置がそれ以外の場合には、図2に示すようにF<Rなる関係が満たされる。ここで、実装ヘッド121の定位置とは、基板20外の位置であり、例えば、図2に示すように部品供給部125aのX軸方向で中央付近の位置である。また、検査ヘッド127の定位置とは、基板20外の位置であり、例えば、同図に示すように、部品実装機120のY軸方向の端部と基板20との間の位置であり、かつ、部品実装機120のX軸方向の中央付近の位置である。
実装ヘッド121が基板20上で部品を実装する際の動作時間と、検査ヘッド127が基板20の検査を行なう際の動作時間とを比較した場合、前者の方が長い。これは、検査ヘッド127は、基板20上の複数の実装点をまとめて検査可能だからである。よって、実装ヘッド121の定位置から基板20までの移動時間が検査ヘッド127の定位置から基板20までの移動時間よりも短くなるように、実装ヘッド121を前サブ設備120aに配置し、検査ヘッド127を後サブ設備120bに配置する。このような配置にすることにより、基板20までの移動時間を含めた実装ヘッド121の動作時間と検査ヘッド127の動作時間との差異を縮小することができ、理想的には両者を略均等にすることができる。
なお、前サブ設備120aは、さらに、実装ヘッド121により吸着された部品の吸着状態を2次元又は3次元的に検査するための部品認識カメラおよびトレイ部品を供給するためのトレイ供給部などを備えているが、本願発明の主眼ではないため、同図においてその記載を省略している。
本実施の形態では、実装ヘッド121および検査ヘッド127が前側(前サブ設備120a)および後側(後サブ設備120b)にそれぞれ備えられる事例について説明するが、本発明が適用される部品実装機は、このような部品実装機に限定されるものではない。例えば、基板搬送方向の上流側および下流側に実装ヘッド121および検査ヘッド127をそれぞれ備える部品実装機であってもよい。つまり、実装ヘッド121および検査ヘッド127がどのような配置であろうとも、定位置から基板20までの距離がそれぞれ異なる実装ヘッド121および検査ヘッド127を備える部品実装機であれば、本発明を適用可能である。
図4は、実装ヘッド121および部品カセット123の外観を示す斜視図である。
部品カセット123は、多数の部品を保持する部品テープが巻き付けられる部品リール107が取り付けられ、部品テープに保持される部品を順次実装ヘッド121による吸着位置に供給する装置である。
実装ヘッド121は、その先端にノズル群121aを備える。ノズル群121aを構成する各ノズルは、部品供給部125aから供給される部品を真空吸引により吸着する。1本のノズルにつき1つの部品を保持することが可能であり、実装ヘッド121は、ノズル群121aを構成するノズルの本数に応じた数量の部品を1度に保持することが可能となる。同図に示される実装ヘッド121のノズル群121aはノズルを10本備えているため、最大10個の部品を一度に保持することができる。また、実装ヘッド121に取り付けられるノズル群121aを構成する各ノズルの形状や大きさなどを部品の大きさや重量、形状によって変更することにより、さまざまな大きさや形状の部品を実装ヘッド121で保持することができる。
次に、検査ヘッド127について、図5および図6を参照して説明する。
図5は、検査ヘッド127の外観を示す斜視図である。図6は、検査ヘッド127の内部を一部断面で示す側面図である。
検査ヘッド127は、基台124を備え、その基台124に取り付けられた2つのカメラ112、116を備える。第1のカメラ112と第2のカメラ116とは解像度が異なり、第1のカメラ112は低解像度のカメラであり、第2のカメラ116は高解像度のカメラである。第1のカメラ112と第2のカメラ116とは、それぞれ先端にリング照明118を備える。
第1のカメラ112と第2のカメラ116とは、部品の大きさに応じて使い分けられる。部品の大きさが所定の閾値以下である小さな部品が基板上に落下しているかを検査する場合や、小さな部品の装着位置のずれを検査する場合には、高解像度のカメラである第2のカメラ116を使用する。また、部品の大きさが所定の閾値を越える大きな部品の装着位置のずれを検査する場合には、低解像度のカメラである第1のカメラ112を使用する。
一般に、低解像度のカメラは高解像度のカメラよりも視野が広い。そのため、解像度が異なるカメラを部品サイズに応じて使い分けることにより、小さな部品に関する正確な検査と、広い視野による効率的な検査との両立を図ることが可能になる。
なお、第1のカメラ112と第2のカメラ116とは、ズーム機構を備える1つのカメラにより実現されてもよい。
また、第1のカメラ112と第2のカメラ116とのそれぞれが備えるリング照明118は、第1のカメラ112と第2のカメラ116とのレンズをそれぞれ取り囲むようにリング状に配置されたLED(Light Emitting Diode)により構成される。リング照明118は、光量の調整が可能である。リング照明118の光量は、カメラ116(112)での検査時に、カメラの解像度や、基板20、部品22などの被写体の状態に応じて調整される。
これにより、検査に適した画像を撮影することができ、検査の精度を向上させることが可能になる。
ここで、検査ヘッド127による検査の内容について説明する。
検査ヘッド127は、実装ヘッド121が部品を実装した後に、その部品の実装状態を検査する装着後検査の他に、実装ヘッド121がこれから部品を実装しようとする基板20の実装点における表面状態を検査する装着前検査をも行なう。
以下、装着前検査について説明する。基板20に部品が実装された回路基板を生産する回路基板生産システムは、部品実装機120以外にも様々な装置により構成される。つまり、回路基板生産システムは、基板20にはんだを印刷する印刷機、基板20に接着剤を塗布する塗布機、はんだが印刷された基板に部品を実装する部品実装機120、実装した部品をはんだ付けするリフロー機などにより構成される。
部品実装の対象となる基板20は、上記回路基板生産システムの中を一連のコンベアにより搬送され、流れ作業により回路基板として生産されていく。つまり、各装置において、基板上にはんだを印刷し、大小様々な多数の部品を基板20に実装し、はんだ付けするといった各工程が基板20に対して実行される。回路基板は、このような各装置による一連の生産工程を経て生産される。このようにして生産された回路基板は、家電製品などの最終製品に搭載される。
上記回路基板生産システムにおいて、回路基板の不良品が生産される場合がある。品質不良の原因はさまざまであるが、その1つに、はんだの印刷不良がある。例えば、はんだ印刷の不良があるにもかかわらず、その基板に後続する工程を実行すること、すなわち、部品を実装し、はんだ付けをすることは、回路基板生産システムの使用、部品の消費など多くの無駄を生じさせる。
不良品の生産数量を減らし、回路基板生産システムの無駄な工程の実行を減らすためには、一連の生産工程の途中で不良が発生した場合、早期に不良の発生を検知し、対策を講じる技術が有効である。
このため、検査ヘッド127は、装着前検査として、はんだが印刷された基板20を上方から撮影し、部品を実装する前に、撮影により得られた画像に基づきはんだの印刷状態を検査する。
また、部品実装中に微細な部品が基板20上に落下し、その後に装着されるCSP(Chip Size Package)などの比較的大きな部品と基板20との間に上記微細な部品が挟まれることがある。このような大きな部品が微細な部品を挟みこむという不良(以下、「挟みこみ不良」という。)が生じると、大きな部品を破壊し、再利用を不可能にする場合もある。例えば、CSPなどの大きな部品は、挟みこまれた小さな部品のためにショートし、破壊されることもある。破壊された部品は再利用できないため、挟み込み不良はコストロスの原因になる。
このような挟み込み不良は、大きな部品が実装された後では発見が困難な場合が多い。このため、検査ヘッド127は、装着前検査として、実装ヘッド121が部品を実装する直前に部品実装点に部品等が落下しているか否かの検査も行なう。
図7は、部品実装機120が備える構成を示すブロック図である。
部品実装機120は、入力部103と、機構部130と、記憶部134と、制御部132と、通信I/F136と、表示部102とを備える。
入力部103は、キーボード、タッチパネル、マウスなど、後述する検査データなどを入力したり変更したりするためのインタフェースである。
記憶部134は、実装ヘッド121が基板20に実装する部品に関する情報を含む実装データ134a、検査ヘッド127による検査領域や使用するカメラの種類などを特定するための条件を含む検査データ134bなどを記憶する記憶媒体である。
機構部130は、上述の実装ヘッド121と検査ヘッド127とを有する。
制御部132は、部品実装機120を制御する処理部であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)などである。制御部132は、記憶部134が記憶している情報を参照し、機構部130を制御し、実装ヘッド121に基板20へ部品を実装させ、検査ヘッド127に基板20の表面状態を検査させる。
通信I/F(インタフェース)部136は、実装基板生産システムを構成する他の機械やホストコンピュータ(図示せず)などと通信するためのインタフェースであり、例えば、LAN(Local Area Network)アダプタなどである。
表示部102は、上記のように基板20の表面状態を検査した結果などを表示する。
図8は、実装データ134aの一部を示す図である。
本図に示す実装データ134aは、1つの実装工程において実装される部品、すなわち1つの部品実装機120において1つの基板20に実装する部品に関する情報であり、「装着番号」と、「タスク番号」と、「部品種」と、「装着点座標」と、「部品サイズ」とを含む。
「装着番号」は、各装着点を識別するための情報である。
「タスク番号」は、1つの実装工程に含まれる各タスクを識別するための情報である。ここで、「タスク」とは、実装ヘッドにより、一度に保持する部品を「吸着」し、吸着した部品を認識カメラにより「認識」し、基板20に「装着」するという一連の動作の繰り返しにおける1回分の一連動作または当該一連動作により基板20に実装される部品群である。
「部品種」は、各装着点(装着番号)において実装される部品の種類を示す情報である。
「装着点座標」は、各部品を装着すべき基板20上の位置を示す情報である。「装着点座標」は、部品の中央が装着されるべき基板20上の位置を示す。
「部品サイズ」は、部品の大きさを示す情報である。
なお、「装着点座標」と「部品サイズ」とを合わせて、部品が装着されるべき基板上の領域を算出可能であり、算出された情報を「装着領域情報」として実装データ134aに含ませてもよい。また、実装データ134aには、本図に示す情報の他に、部品ライブラリが含まれていてもよい。
本図では、各タスク内で装着する部品群の一部のみを例示しており、各タスクには実装ヘッド121が備えるノズル群108aにより装着される部品群に関する実装データ134aが含まれる。本実施の形態では、上記のように実装ヘッド121のノズル群121aはノズルを10本備えているため、各タスクには最大10個の装着位置に対応する実装データ134aが含まれる。
本図に示す実装データ134aは、例えば、「装着番号」が「1」である部品は、「タスク番号」が「1」であるタスクにおいて、基板上の基準位置からX方向に「10」ミリメートル、Y方向に「20」ミリメートルの位置に実装されることを示す。また、「装着番号」が「1」である部品は、「部品種」が「A1」であり、その大きさがX方向に「0.3」ミリメートル、Y方向に「0.6」ミリメートルであることを示す。
このような実装データ134aを参照することにより、検査ヘッド127は、実装が終了した部品の実装状態の検査、これから部品が装着される基板20の表面状態の検査などにおいて、基板上のどの部分を検査すればよいかを判断することが可能になる。
図9は、検査データ134bの一例を示す図である。
検査データ134bは、上記のように検査ヘッド127による検査のタイミングや検査領域等を特定するための条件である。検査データ134bには、例えば、装着前検査および装着後検査での検査対象となる部品を特定するための情報などが含まれる。
本実施の形態の検査データ134bには、装着前検査の検査対象となる部品を特定するための情報としての「対象部品種」が「CSP1」であり、検査領域は、特定された部品の「装着位置」およびその「周囲3mm」(ミリメートル)であることが示されている。すなわち、本実施の形態の装着前検査の検査領域は、装着位置を中心とした部品外形の更に外側に3mm広げた領域である。このように、装着前検査の対象部品を設定することにより、設定した対象部品種「CSP1」の部品についてのみ装着前検査を行なうが、それ以外の部品については装着前検査を行なわないようにすることができる。
さらに、検査データ134bには、装着後検査の検査対象となる部品を特定するための情報としての「対象部品種」が「A1」であり、検査領域は、特定された部品の「装着位置」であることが示されている。このように、装着後検査の対象部品を設定することにより、設定した対象部品種「A1」の部品についてのみ装着後検査を行なうが、それ以外の部品については装着後検査を行なわないようにすることができる。
なお、検査データ134bは、装着前検査および装着後検査のいずれか一方のみの検査条件を設定するものであっても構わない。その場合、検査条件を設定しない側の検査については、検査対象とする部品がないものとするものあっても構わないし、すべての部品を検査対象の部品とするものであっても構わない。
図10は、検査データ134bにより特定される基板20上の検査領域の一例を示す図である。基板20に「CSP1」が装着位置24に1つ装着される場合、検査領域は、装着位置24(装着部品の外形)の周囲3mmを示す外点線枠26の内部となる。
このような検査データ134bは、入力部103から入力された情報である。なお、検査データ134bは、予め設定されていてもよく、また、ネットワークを介して取得された情報でもよい。
図11は、実装ヘッド121および検査ヘッド127の協調動作について説明するための図である。
同図に示されるように、前サブ設備120aの実装ヘッド121は、部品供給部125aからの部品の「吸着」、吸着した部品の部品認識カメラ126による「認識」および認識された部品の基板20への「装着」という3つの動作を交互に繰り返すことにより、部品を基板20上に実装していく。
一方、後サブ設備120bの検査ヘッド127は、基板20の表面状態または部品実装状態の「検査」および定位置への「退避」という2つの動作を交互に繰り返すことにより、基板20の検査を行なう。
なお、実装ヘッド121および検査ヘッド127が独立に動作すると、実装ヘッド121と検査ヘッド127とが衝突する可能性がある。つまり、実装ヘッド121が「装着」動作を行なっているときに検査ヘッド127が「検査」動作を行なうと、2つのヘッドが同時に基板20に進入することとなるため、2つのヘッドが衝突する可能性がある。このようなヘッド同士の衝突を防ぐために、実装ヘッド121および検査ヘッド127は、協調動作を行ないながら、部品実装および基板検査を行なう。
具体的には、図12(a)に示されるように、後サブ設備120bの検査ヘッド127が「検査」動作を行なっている際には、前サブ設備120aの実装ヘッド121は「吸着」動作および「認識」動作を行なう。一方、図12(b)に示されるように、前サブ設備120aの実装ヘッド121が「装着」動作を行なっている際には、後サブ設備120bの検査ヘッド127は定位置に「退避」している。このように、検査ヘッド127による「検査」動作と実装ヘッド121による「装着」動作とを交互に行なうことにより、実装ヘッド121と検査ヘッド127との衝突を防ぐことができる。なお、理想的には、検査ヘッド127が「検査」動作を行なっている間に、実装ヘッド121による「吸着」動作および「認識」動作が終了していれば、検査ヘッド127による「検査」動作が完了した時点で、滞りなく実装ヘッド121による「装着」動作に移ることができ、回路基板の生産効率を向上させることができる。なお、検査ヘッド127は「退避」時には動作を行なっていない。このため、実装ヘッド121による「装着」動作が完了した時点で、検査ヘッド127による「検査」動作に移ることができる。
次に、図2、図13および図14を用いて、部品実装機120による部品実装および基板検査の流れの一例について説明する。ここでは、実装ヘッド121が、1番目のタスクとして微細な部品を基板20に実装し、2番目以降のタスクとしてCSPなどの大きな部品を基板20に実装する場合を考える。
部品実装および基板検査の開始時には、実装ヘッド121および検査ヘッド127は、それぞれ図2に示すような定位置にある。この状態から、図13(a)に示すように実装ヘッド121が部品の「吸着」、「認識」および「装着」動作を行なうことにより微細な部品を基板20上に実装する。その間、検査ヘッド127は定位置に「退避」している。
実装ヘッド121による「装着」動作が完了すると、図13(b)に示すように、検査ヘッド127が基板20内に進入するとともに、実装ヘッド121が基板20外に移動する。検査ヘッド127は、基板20内に進入後、「検査」動作、すなわち装着後検査とともに装着前検査を行なう。つまり、検査ヘッド127は、実装ヘッド121により実装された微細な部品の実装状態を検査する。次に、検査ヘッド127は、実装ヘッド121により実装される実装位置の基板20の表面状態を検査する。例えば、検査ヘッド127は、基板20の表面に部品が落下しているか否かの検査を行なったり、はんだの印刷不良を検査したりする。検査ヘッド127が「検査」動作を行なっている間、実装ヘッド121は、次のタスクで基板20に実装する部品を部品供給部125aから「吸着」するとともに、当該部品に対する「認識」動作を行なう。実装ヘッド121は、「認識」動作が終了すると、基板20の外の所定位置で待機する。
検査ヘッド127による「検査」動作が完了すると、図14(a)に示すように検査ヘッド127は、定位置に「退避」する。検査ヘッド127の定位置への「退避」とともに、実装ヘッド121は基板20へ進入し、「装着」動作を行なう。
実装ヘッド121による「装着」動作が完了すると、図14(b)に示すように、検査ヘッド127が基板20内に進入するとともに、実装ヘッド121が基板20外に移動する。図13(b)と同様、検査ヘッド127は、「検査」動作を行ない、実装ヘッド121は「吸着」動作および「認識」動作を行なう。
以降は、図14(a)に示す状態と図14(b)に示す状態とがすべてのタスクが終了するまで繰り返される。つまり、実装ヘッド121による部品実装と検査ヘッド127による基板検査とがタスクが終了するまで交互に繰り返される。
以上説明したように、本実施の形態によると、定位置から基板20までの距離が相対的に短い側、すなわち前サブ設備120aに実装ヘッド121を配置し、定位置から基板20までの距離が相対的に長い側、すなわち後サブ設備120bに検査ヘッド127を配置している。このため、基板までの移動時間は実装ヘッド121のほうが短い。一方、上述したように実装ヘッド121が基板20上で部品を実装する際の動作時間と、検査ヘッド127が基板20の検査を行なう際の動作時間とを比較した場合、前者の方が長い。このため、基板20までの移動時間を含めた実装ヘッド121の動作時間と基板20までの移動時間を含めた検査ヘッド127の動作時間との差異を縮小することができ、理想的には両者を略均等にすることができる。また、実装ヘッド121および検査ヘッド127が協調動作をしながら部品実装と基板検査とを行なっている。これに伴い、実装ヘッド121および検査ヘッド127が遊んでしまう無駄な時間を極力減らすことができる。よって、部品実装機120による回路基板の生産に要するタクトを短くすることができる。
なお、定位置から基板20までの距離の大小に従い、実装ヘッド121および検査ヘッド127の配置を決定するのではなく、単位距離の移動時間の大小に従い、実装ヘッド121および検査ヘッド127の配置を決定するようにしても構わない。一般的に、検査ヘッド127は、実装ヘッド121に比べて位置精度が要求される。このため、検査ヘッド127の最大加速度は小さく、移動時間が大きい。しかし、実装ヘッド121にはノズルの本数が異なる様々な種類の実装ヘッド121が存在し、互いに移動時間が異なる。例えば、それぞれ、12本、8本および3本の吸着ノズルを備える実装ヘッド121が存在するが、吸着ノズルの本数が少ない実装ヘッド121ほど大きな部品を搬送しなければならないため、最大加速度は小さく、移動時間が大きい。このため、単位距離の移動時間が大きいものから並べると、12本の吸着ノズルを備える実装ヘッド121、8本の吸着ノズルを備える実装ヘッド121、検査ヘッド127、3本の吸着ノズルを備える実装ヘッド121の順になる。よって、これらの4種類のヘッドのうち2種類のヘッドを部品実装機120に配置する場合には、単位距離の移動時間が大きいヘッドを前サブ設備120aに配置し、単位距離の移動時間が小さいヘッドを後サブ設備120bに配置するようにしてもよい。
(実施の形態2)
実施の形態1では、実装ヘッド121と検査ヘッド127との配置位置が予め定められていたが、本実施の形態では、実装ヘッド121と検査ヘッド127の配置位置をヘッド配置決定装置により決定する。
図15は、ヘッド配置決定装置を備える部品実装システムの構成を示す外観図である。
部品実装システムは、実施の形態1と同様の部品実装機120と、ヘッド配置決定装置300とを備えている。
図16は、ヘッド配置決定装置300の機能的構成を示すブロック図である。
ヘッド配置決定装置300は、部品実装機120とネットワークを介して接続され、部品実装機120における実装ヘッドおよび検査ヘッドの配置を決定する装置であり、距離算出部311、距離比較部312、配置決定部313、表示部302、入力部303および通信I/F部336等から構成される。
ヘッド配置決定装置300は、本発明に係るプログラムをパーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータシステムが実行することによって実現される。なお、ヘッド配置決定装置300の機能が部品実装機120の内部に備わっていても構わない。
距離算出部311、距離比較部312および配置決定部313は、CPU上でプログラムを実行することにより機能的に実現される処理部である。
距離算出部311は、部品実装機120の前サブ設備120aに設けられた第1の定位置から基板20までの距離と、後サブ設備120bに設けられた第2の定位置から基板20までの距離とを算出する処理部である。
距離比較部312は、距離算出部311において算出された2つの距離の大小関係を比較する処理部である。
配置決定部313は、距離比較部312における比較結果に従って、実装ヘッド121および検査ヘッド127が配置されるサブ設備を決定する処理部である。
表示部302はCRT(Cathode-Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等であり、入力部303はキーボードやマウス等であり、これらは、ヘッド配置決定装置300とオペレータとが対話する等のために用いられる。
通信I/F(インタフェース)部336は、部品実装機120などと通信するためのインタフェースであり、例えば、LAN(Local Area Network)アダプタなどである。
図17は、ヘッドの配置位置を決定する処理のフローチャートである。
ヘッド配置決定装置300の距離算出部311は、通信I/F部336を介して、部品実装機120より、第1の定位置のy座標、第2の定位置のy座標、固定レールのy座標および基板幅を取得する(S1)。なお、これらのデータの一部および全部が予めヘッド配置決定装置300に記憶されていても良い。
図18は、これらのデータについて説明するための図である。つまり、第1の定位置のy座標は、部品実装機120の前サブ設備120aに設けられたビーム122aの定位置のy座標である。また、第2の定位置のy座標は、部品実装機120の後サブ設備120bに設けられたビーム122bの定位置のy座標である。基板幅は、基板20のy方向の幅を示すデータである。
距離算出部311は、取得された第1の定位置のy座標、第2の定位置のy座標、固定レールのy座標および基板幅に基づいて、以下の式により第1の定位置から基板20までの距離Fと、第2の定位置から基板20までの距離Rとを算出する(S2)。
F=固定レールのy座標−第1の定位置のy座標+(基板幅/2)
R=第2の定位置のy座標−固定レールのy座標−(基板幅/2)
距離比較部312は、距離算出部311が算出した距離Fおよび距離Rの大小関係を比較する(S3)。
比較の結果、F≦Rなる関係が満たされる場合には(S3でYES)、配置決定部313は、前サブ設備120aに実装ヘッド121を配置し、後サブ設備120bに検査ヘッド127を配置するとの配置位置を決定する(S4)。また、F>Rなる関係が満たされる場合には(S3でNO)、前サブ設備120aに検査ヘッド127を配置し、後サブ設備120bに実装ヘッド121を配置するとの配置位置を決定する(S5)。このように配置位置を決定することにより、常に、定位置から基板20までの距離が相対的に長いほうのサブ設備に検査ヘッド127を配置し、短い方のサブ設備に実装ヘッド121を配置することができる。よって、実装ヘッド121の動作時間と検査ヘッド127の動作時間との差異を縮小することができ、理想的には両者を略均等にすることができ、回路基板を生産するためのタクトを短縮することができる。
なお、F=Rの場合に、配置決定部313は、実装ヘッド121を前サブ設備120aに配置するような決定を行なう。なぜならば、実装ヘッド121の配置にともない部品供給部125aが前サブ設備120aの側に位置するため、部品切れが生じた場合にオペレータが部品交換作業をし易くなるからである。
なお、本実施の形態では、距離算出部311が基板20までの距離を算出するようにしたが、当該距離を部品実装機120より取得するものであってもよい。
(実施の形態3)
上述の実施の形態1および2では、実装ヘッドと検査ヘッドとを備えた部品実装機について説明したが、本実施の形態に係る部品実装機は、検査ヘッドの代わりに基板に接着剤を塗布する塗布ヘッドを備えている。
図19は、塗布ヘッドを備えた部品実装機内部の主要な構成を示す図である。
部品実装機220は、図2に示した部品実装機120の内部構成において、検査ヘッド127の代わりに塗布ヘッド137を備えたものである。同図に示すように、前サブ設備120aに実装ヘッド121が設けられ、後サブ設備120bに塗布ヘッド137が設けられている。
図20は、接着剤塗布機21に設けられている基板上に接着剤を塗布する塗布ヘッドの外観図である。
塗布ヘッド137は、接着剤を貯留するためのタンク21bと、基板20上に接着剤を吐出する吐出部21aとを含む。
図21は、接着剤の塗布を説明するための図である。
タンク21b内に貯留された接着剤21cは、エアー21dにより吐出部21aの内部に注入され、吐出部21aの先端より押し出される。押し出された接着剤は、基板20上に塗布される。
塗布ヘッド137は部品の実装点に接着剤を吐出し、その後、実装ヘッド121は接着剤が塗布された実装点に部品を実装する。これにより、部品を基板20に確実に固定させることができる。
実装ヘッド121と塗布ヘッド137も、実装ヘッド121と検査ヘッド127の場合と同様に、協調動作を行ないながら、塗布ヘッド137による接着剤塗布と実装ヘッド121による部品実装とを交互に行なう。
実装ヘッド121による接着剤塗布も検査ヘッド127による基板検査と同様、実装ヘッド121による部品実装よりも短時間で行なうことができる。このため、図19に示すように、定位置から基板20までの距離が短い前サブ設備120aに実装ヘッド121を設け、定位置から基板20までの距離が長い後サブ設備120bに塗布ヘッド137を設けることにより、基板20までの移動時間を含めた実装ヘッド121の動作時間と基板20までの移動時間を含めた塗布ヘッド137の動作時間とを縮小することができ、理想的には両者を略均等にすることができる。また、実装ヘッド121および塗布ヘッド137が遊んでしまう無駄な時間を極力減らすことができる。よって、部品実装機220による回路基板の生産に要するタクトを短くすることができる。なお、塗布ヘッド137による処理の方が実装ヘッド121による処理よりも時間を要する場合には、前サブ設備120aに塗布ヘッド137を配置し、後サブ設備120bに実装ヘッド121を配置するようにしても構わない。
なお、定位置から基板20までの距離の大小に従い、実装ヘッド121および塗布ヘッド137の配置を決定するのではなく、単位距離の移動時間の大小に従い、実装ヘッド121および塗布ヘッド137の配置を決定するようにしても構わない。吸着ノズルの本数と実装ヘッド121の移動時間との関係は、実施の形態2で説明した通りである。また、塗布ヘッド137の移動時間と12本の吸着ノズルを備える実装ヘッド121の移動時間とは略等しいと考えることができる。このため、単位距離の移動時間が大きいものから並べると、塗布ヘッド137(=12本の吸着ノズルを備える実装ヘッド121)、8本の吸着ノズルを備える実装ヘッド121、3本の吸着ノズルを備える実装ヘッド121の順になる。つまり、塗布ヘッド137の移動時間は、実装ヘッド121の移動時間よりも大きいか同等である。このため、前サブ設備120aに塗布ヘッド137を配置し、後サブ設備120bに実装ヘッド121を配置するようにしてもよい。
以上、本発明に係る部品実装機について実施の形態を示したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
例えば、部品供給部125aにおける部品供給位置を、実装ヘッド121の定位置としてもよい。なぜならば、実装ヘッド121は、検査ヘッド127や塗布ヘッド137のように基板20に対して処理を施していない場合に上述の実施の形態で説明した定位置で待機するのではなく、次のタスクの部品の吸着のため部品供給部125aの部品供給位置に移動し、実装ヘッド121は、部品供給部125aから基板20まで移動するからである。
また、部品認識カメラによる部品認識が行なわれた後の実装ヘッド121の待機位置を、実装ヘッド121の定位置としてもよい。他方のヘッドによる基板20に対する処理が完了した後に、実装ヘッド121は当該待機位置から基板20まで移動するからである。
さらに、図13および図14を用いて説明したように、実装ヘッド121が最初に部品を実装するとして説明を行なったが、検査ヘッド127が最初に基板検査をするものであってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。