JP4916368B2 - パームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料及びその製造方法 - Google Patents
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しかし、該パームアッシュカリ肥料は粉状で且つ比重が小さいため、施肥作業時には飛散や流亡が発生し易く、元肥、追肥ともに使用し難い肥料となっている。
この施肥時に飛散し易いという燃焼灰肥料の処理方法の一例として、特許文献1には、パーム椰子の燃焼灰に水または助剤を10〜25%添加混合して粘着性、凝集性を高め、更に次の工程で骨粉、ナタネ油かす、魚かすなどの有機物含有肥料や、窒素、リン酸、カリ成分を含有する化学肥料を混合し、しかる後に造粒することにより密度を高め、飛散を防止した成形肥料の製造方法が提案されている。
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、水酸化カリウムを主成分とするパームアッシュカリ肥料と酸化カルシウムを主成分とする鶏糞燃焼灰や水酸化カルシウムを主成分とする消石灰などを混合して混合肥料とし、炭酸ガスを接触させて炭酸カルシウムにし、潮解をなくしたパームアッシュカリ混合肥料およびその製造方法を提供しようとするものである。
また、この肥料はバインダーと共に造粒しているので粒子が自壊することのない強度を保持でき、乾燥による微粉化も起こらないので施肥作業時に粉体飛散や流亡の発生もない。
したがって、耕地に散布する際に、肥料粒子を分散させて支障なく施肥作業を行うことが可能になる。
また、製造工程中において、重油燃焼炭酸ガスで処理するので、大量に且つ短時間で酸化カルシウムや水酸化カルシウム等の炭酸化を促すとともに乾燥させることが同時に可能となるので、効率良く大量に生産することが可能となる。
さらに、これまで処分に困っていた養鶏場で大量に発生する鶏糞を燃焼灰にし、使用する配合比を高めることにとって、より多く利用し消費できるようになったことは廃棄物処理の観点からも極めて有益である。
また、本発明のパームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料は、鶏糞燃焼灰のほかに生石灰、消石灰、苦土生石灰、苦土消石灰及びそれらの混合物もパームアッシュカリを非潮解性にすることが可能であり、これらも非潮解性のパームアッシュカリを含む肥料の原料のひとつとして使用できるようになる。
本発明のパームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料は、潮解性、飛散性のないパームアッシュカリ混合肥料であるが、原料として、パームアッシュカリと、酸化カルシウムなどを主成分とする鶏糞燃焼灰、生石灰などを用い、これに添加剤として糖蜜などのバインダーを混合して、粒状に成型したものである。
以下、本発明に使用する材料の特徴について説明し、その原料から製造されるパームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料の特徴について説明する。
そのパームアッシュカリの成分の分析表を下記表1に示す。
このパームアッシュカリ原料は、そのままでは嵩比重も小さいので、このままでは施肥時には風に乗り飛散し易く使用しにくい材料である。
本発明ではそのようなパームアッシュカリ原料を酸化カルシウムや水酸化カルシウムなどと混合分散させてバインダーを使用して混練して造粒するので、重みを持った粒子は耕地内の目的箇所に飛散させずに散布させることが可能となる。
したがって酸化カルシウムや水酸化カルシウムなどと混合分散させるとき、粒子径が互いに近いことが混合分散しやすくなるため、粒子径は0.2mmのふるい目下が好ましい。
この潮解性を発現させない方法として、炭酸カルシウムの防湿性皮膜を形成して水分を近づけさせない方法と、炭酸カリウムに化学変化させて水分の吸着を抑える組成にする方法が考えられるが、本発明ではこれらの方法を併行して進行させることを着想した。
そして、前者の方法として、パームアッシュカリの主成分である水酸化カリウムに炭酸カルシウムの防湿性皮膜を形成して水分を近づけさせない材料として、鶏糞燃焼灰に着目した。
その鶏糞燃焼灰は鶏糞を900〜1000℃で燃焼させて製造され、酸化カルシウムを主成分とする。
この鶏糞燃焼灰の成分の分析表を下記表2に示す。
また、パームアッシュカリの主成分である水酸化カリウムに水分を寄せ付けない他の材料として、生石灰、苦土生石灰も使用できる。
更に、パームアッシュカリに水分を寄せ付けない他の材料として、消石灰、苦土消石灰も使用でき、それらの混合物でも使用可能である。
これらは、主成分が水酸化カルシウムであるので、炭酸ガスを吸収して前記同様、炭酸カルシウムに化学変化し、硬化し、水分を近づけさせなくすることができる。
バインダーとして使用する材料は、製糖産業の副産物ならびに廃糖蜜を発酵工業にて利用した後に産生される糖蜜発酵副産濃縮液、リグニンスルホン酸塩、コーンスチープリカー、CMCなどの水溶性結合剤である。
本発明で使用するパームアッシュカリ肥料と鶏糞燃焼灰などを混練して結合を成し、且つ粒子径1〜10mmに造粒して自重で壊れない強度に保持できるようにそれらを適量使用する。
上記4例はいずれも、0.2mmのふるい目下に粉砕したパームアッシュカリ肥料とカルシウム含有物を、合わせて100重量%とし、混合機で混合して該混合材にバインダー4重量%を混練したものである。
カルシウム含有物は鶏糞燃焼灰、生石灰、消石灰、苦土生石灰、苦土消石灰のいずれかの単品種でも良く、それらの2品種以上の混合品を用いることもできる。
この造粒された混合肥料の外径は1〜10mm程度に抑え、パームアッシュカリ肥料の基本の粒形状を形成させる。
このように造粒された前記パームアッシュカリ肥料は水分を含んでおり、含有するパームアッシュカリ肥料成分である水酸化カリウムは水に溶け始め、次第に粘性が生じる。しかし一方において、そのパームアッシュカリ肥料に配合された鶏糞燃焼灰、生石灰、苦土生石灰由来の酸化カルシウムは、水分と即座に水和反応を開始して水酸化カルシウムを形成し、造粒後にはパームアッシュカリ肥料の外周面が漆喰化されて、崩れることがなくなる。
また、この粒状パームアッシュカリ肥料に配合される消石灰、苦土消石灰由来の水酸化カルシウムは、上記の酸化カルシウム由来の水酸化カルシウム同様に、造粒後にはパームアッシュカリ肥料の外周面を漆喰化して、崩れることなく粒状を保つことができる。
そして、次工程で、前記漆喰化した水酸化カルシウムは水分を放出しながら外気の炭酸ガスや炭酸ガス発生装置による炭酸ガスを吸収し、炭酸カルシウムを形成する。
この炭酸カルシウムはパームアッシュカリ肥料の外周を覆うことになり、この炭酸カルシウムで覆われたパームアッシュカリ肥料は潮解性が起こらず、又は起き難くなる。
このように造粒されたパームアッシュカリ肥料の成分の分析表を下記表4に示す。
そこで、この配合で混合混練して造粒した後に炭酸ガスと接触させると、水分の吸着を抑える組成である炭酸カリウムが形成されて一時的であるが潮解性が抑えられる。
更に、この水酸化カリウムが少量の場合も、炭酸ガスと接触させて形成した炭酸カリウムは潮解性を抑えることができる。
即ち、第1ステップにおいては、酸化カルシウム由来の水酸化カルシウムは水分を含んで漆喰化を開始し、パームアッシュカリ由来の水酸化カリウムを覆いつつ、パームアッシュカリ肥料は粒状成長する。
第2ステップにおいては、該粒状成長したパームアッシュカリ肥料の表層部において漆喰化した水酸化カルシウムは、炭酸ガスと接触して水分に不溶解な炭酸カルシウムを被覆形成する。更に、該炭酸ガスは、まだ炭酸カルシウムで被覆されていないパームアッシュカリ肥料由来の水酸化カリウムを炭酸カリウムに化学的に変性させる。
第3ステップにおいては、該粒状パームアッシュカリ肥料を乾燥させて水分を発散させると共に、水分を粒状パームアッシュカリ肥料の内部への浸透を抑制する。
従来、草木灰を水に溶かして炭酸カリウムの水溶液を得る方法があるが、炭酸カリウムは水溶液として溶解しているので、水分の蒸発による粒状物の形成はできない。
本発明のパームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料は、酸化カルシウムや水酸化カルシウム由来の炭酸カルシウムで覆われているので、潮解性を大幅に軽減する。
パームアッシュカリ肥料の主成分である水酸化カリウムが少量の場合、炭酸ガスと化学反応して炭酸カリウムに状態変化しているので、潮解が目立たない。
パームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料はバインダーと共に造粒され、その粒子が固化されて一定強度を保っているので、施肥作業時に飛散や流亡がない。
また、実施例NO.7では苦土生石灰(D)と(苦土消石灰)Eもパームアッシュカリの潮解性を10日以上抑えることを確認し得た。
この製造方法では、パームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料を製造するに当たり、事前に3mmふるい目下のパームアッシュカリをボールミル等の粉砕機を使用して0.2mmふるい目下の粉状パームアッシュカリに粉砕して本発明の原料とした。
そして、0.2mmふるい目下の粉状パームアッシュカリ70kg、鶏糞燃焼灰30kgを採取し、リボンミキサーで両者を配合混合して、バインダーであるリグニンスルホン酸塩(通称名:リグニン)4kgを混練し、ロータリー式造粒機にて造粒しながら、外径を1〜10mm程度の粒状に成形すると共に、自重では壊れない強度を持たせた。
その後、該粒状物を重油燃焼炭酸ガスにより炭酸ガスと反応させつつ、加熱乾燥を行ってパームアッシュカリ混合肥料を製造した。
また他の方法としては、造粒後に自然放置して大気中の炭酸ガスと反応させ、パームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料を製造することもできる。
上記方法で製造した外径1〜10mmのパームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料の品質を確認するために、潮解試験を行い、潮解試験試料としてシャーレに粒状肥料を採取し、30℃、湿度70%の雰囲気中にて経過観察をし、そして本発明のパームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料の優位性を確認するために、原料のパームアッシュカリをほぼ同じ大きさに造粒したものを同一条件の雰囲気中において両者を比較した。
図2は試験開始時の比較写真で、原料である改良前のパームアッシュカリ肥料をPBA100%と明示し、該PBA100%は既に部分的に黒色に変色して潮解が開始していることが観察できる。
図3は潮解試験開始後2時間を経過した写真で、両者の黒色に変色の差が大きくなっていることを示し、原料のパームアッシュカリ肥料PBA100%が黒変している量が増え、吸湿して潮解が進んでいることを示している。本発明品は原料のパームアッシュカリに鶏糞燃焼灰を30%混合したものであるので鶏糞灰30%と明示しているが、色相に変化がない。
このことから、本発明のパームアッシュカリ粒状肥料には潮解性がないことを確認できた。
また、図4は潮解試験開始後1日(24時間)を経過した写真で、時間経過するに従って、原料のパームアッシュカリ肥料PBA100%の方は潮解性を更に高め、この写真では全量黒変している。しかし、本発明品の鶏糞灰30%明示品ではほとんど色にも変化がない。
また、図6は前記潮解試験開始後5日を経過した潮解試験試料の両方をシャーレから取り出した状況を示している。原料のパームアッシュカリ肥料PBA100%の方はヘラで動かして流動化状況を可視化させた写真である。これに対して本発明品の鶏糞灰30%明示品の方は、若干の吸湿は観察されるが潮解を起こさず、粒状の原型が保持されている。
この製造方法では、パームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料を製造するに当たり、事前に3mmふるい目下のパームアッシュカリをボールミル等の粉砕機を使用して0.2mmふるい目下の粉状パームアッシュカリに粉砕して本発明の原料とした。
そして、0.2mmふるい目下の粉状パームアッシュカリ70kg、鶏糞燃焼灰30kgを採取し、リボンミキサーで両者を配合混合して、バインダーである糖蜜発酵副産濃縮液(通称名:廃糖蜜)4kgを混練し、ロータリー式造粒機にて造粒しながら、外径を1〜10mm程度の粒状に成形すると共に、自重では壊れない強度を持たせた。
その後、該粒状物を重油燃焼炭酸ガスにより炭酸ガスと反応させつつ、加熱乾燥を行ってパームアッシュカリ混合肥料を製造した。
また他の方法としては、造粒後に自然放置して大気中の炭酸ガスと反応させることによって、本発明のパームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料が製造できる。
上記方法で製造した外径1〜10mmのパームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料の品質を確認するために、潮解試験を行い、潮解試験試料としてシャーレに非潮解性粒状肥料を採取し、30℃、湿度70%の雰囲気中にて経過観察し、そして、本発明の肥料の優位性を確認するために、原料のパームアッシュカリ肥料を造粒したものをと同一の雰囲気中において両者を比較した。
図7は試験開始時の比較写真で、原料である改良前のパームアッシュカリ肥料をPBA100%と明示し、そのPBA100%は既に部分的に黒色に変色して潮解が開始していることが観察できる。
また、図8は潮解試験開始後2時間を経過した写真で、PBA100%はさらに黒色に変色し、色の差が明確に大きくなっていることがわかる。
原料のパームアッシュカリ肥料PBA100%のほうは黒変している量が増え、吸湿して潮解が進んでいることを示している。
これに対して本発明品は原料のパームアッシュカリに鶏糞燃焼灰を30%混合したものであるので鶏糞灰30%と明示しているが、色相に変化がなく、潮解が起きていないことが確認できる。
また、図10は潮解試験開始後5日を経過した写真で、原料のパームアッシュカリ肥料PBA100%の方は完全に潮解を起こして黒化し、水分が確認されると共に粘性の高い流動化が起きていることを示している。しかし本発明品の鶏糞灰30%明示品の方は若干吸湿して色相が少し変化している程度で、潮解が起きていないことが確認できる。
そして、図11は前記潮解試験開始後5日を経過した潮解試験試料の両方をシャーレから取り出した状況を示している。
原料のパームアッシュカリ肥料PBA100%の方はヘラで動かして流動化状況を可視化させた写真である。これに対して本発明品の鶏糞灰30%明示品の方では若干の吸湿は観察されるが、バインダーに糖蜜発酵副産濃縮液を用いたものも、潮解は起こらず、粒状の原型がそのまま保持されているようすがわかる。
Claims (3)
- 粒状肥料に含まれる全100重量%に対して、原料の粒子径3mmふるい目下のパームアッシュカリが50〜95重量%、鶏糞燃焼灰を含む粉体が50〜5重量%に配合され、且つ前記両原料で造粒した粒子の形状を保持し得る量のバインダーが配合されて、パームアッシュカリに含まれた水酸化カリウムの潮解性をなくしたことを特徴とするパームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料。
- 粒状肥料に含まれる全100重量%に対して、原料の粒子径3mmふるい目下のパームアッシュカリが5〜95重量%、生石灰、消石灰、苦土生石灰、苦土消石灰からなる群のうち少なくともいずれか一つを含む粉体が95〜5重量%に配合され、且つ前記両原料で造粒した粒子の形状を保持し得る量のバインダーが配合されて、パームアッシュカリに含まれた水酸化カリウムの潮解性をなくしたことを特徴とするパームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料。
- 請求項1又は請求項2に記載のパームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料の製造方法であって、
(a)粒子径3mmふるい目下のパームアッシュカリに鶏糞燃焼灰、生石灰、消石灰、苦土生石灰、苦土消石灰からなる群のうち少なくともいずれか一つを含む粉体を混合する工程と、
(b)該混合粉体に、造粒した粒子の形状が保持し得る量のバインダーを加えて混練する工程と、
(c)該混練物を造粒する工程と、
(d)該造粒物を加熱乾燥しつつ炭酸ガスを接触反応させる工程と、
から成り、
前記製造工程中でパームアッシュカリに含まれた水酸化カリウムの潮解性をなくしたことを特徴とするパームアッシュカリを混合した非潮解性粒状肥料の製造方法。
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