JP5409179B2 - パームアッシュカリ肥料 - Google Patents
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しかしながら該パームアッシュカリは比重が小さく、且つ粉状であるために飛散し易く、取扱いに工夫を必要としている。その工夫の一例として、該パームアッシュカリを他の肥料と混合して複合肥料とし、粒状化して飛散を防止する方法が取られている。具体的には、パーム椰子の燃焼灰に水または助剤を10〜25%添加混合して粘着性、凝集性を高め、更に次の工程で骨粉、ナタネ油かす、魚かすなどの有機物含有肥料や、窒素、リン酸、カリ成分を含有する化学肥料を混合し、しかる後に造粒することにより密度を高め、飛散を防止することを目的とした提案(特許文献1)がある。
一方、該パームアッシュカリの主成分が水酸化カリウムであるために空気中の水分を取り込み、該パームアッシュカリは潮解性を発現して液状になり易い性質を有している。この潮解性は該パームアッシュカリを粒状に成形したときに顕著に現れ、該パームアッシュカリの取扱い方法に新たな工夫を必要としている。
しかしながら、このパームアッシュカリの潮解性を抑制する従来技術は存在せず、前記特許文献1にあるように造粒により飛散は防止できても、粒状品中のパーム椰子燃焼灰の量が多いと潮解性が次第に発現して施肥作業が困難になり、パーム椰子燃焼灰混合肥料による高含有カリ肥料として常時使用でき得ないものとなっている。
このパームアッシュカリ肥料は潮解を起こさないので、耕地に散布する際に肥料粒子を分散させることができ、支障なく施肥作業を行うことが可能になる。また、バインダーと共に造粒しているので比重が大きく、その粒子は自壊することのない強度を保持でき、乾燥による微粉化も起こらないので施肥作業時に粉体飛散や流亡し難く、元肥、追肥ともに使用し易い。加えて、製造工程において大量に且つ短時間で造粒が可能である。
本発明の潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料はその原料をパームアッシュカリとし、これに過リン酸石灰等リン酸質肥料を混合配合した肥料で、更に添加剤として糖蜜発酵副産濃縮液などのバインダーを添加しながら粒状に造粒した肥料である。次いで、該パームアッシュカリ肥料のカリウム成分を増加するための原料として硫酸カリウム、塩化カリウム等を添加した肥料である。
以下に本発明に使用する各原料の特徴について説明し、次いで、製造される潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料の特徴について説明する。
パームアッシュカリはパーム椰子の実の部分を除いた房の部分(Empty Bunch)を燃焼させてできる草木灰の一種である。その主成分は水酸化カリウムであり、植物が成長するために必要なカリ成分を他の草木灰より大変多く含有するので、有機質由来の貴重なカリ肥料となっている。
そのパームアッシュカリの成分分析表を下記表1に示す。該下表1に示すK2Oの分析結果は、蛍光X線分析法では65.1%でパームアッシュカリに含有する全量の数値を表し、農林水産省が定める肥料分析法では34.2%で作物が肥料として有効に利用できる成分量を表している。
つまり、このパームアッシュカリは嵩比重が小さいので、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料などと配合混合するときに風に乗って飛散し易く、使用し難い材料である。従って、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料などと混合分散させるとき、粒子径が互いに近いことが混合分散し易い。従って、使用するパームアッシュカリの粒子径は10mmのふるい目下とし、3mmのふるい目下が好ましいこととなる。
この潮解性は該パームアッシュカリ単独で粒状に成形すると、あるいは該パームアッシュカリと化学反応を起こさない他の材料を混合して粒状に成形すると、より顕著に現れる。この理由は、該パームアッシュカリおよび他の混合材料が粒状に成形されていても他の材料と化学反応が成されていないためである。
つまり、この水酸化カリウムの潮解性はその水酸基によるものであり、該水酸化カリウムの潮解性を発現させないようにするためには、過リン酸石灰や重過リン酸石灰などリン酸質肥料が持つリン酸二水素基を水酸化カリウムの水酸基と置き換えて潮解しないリン酸二水素カリウムを形成すれば可能となることに着想したものである。
過リン酸石灰および重過リン酸石灰は、農林水産省の定める肥料公定規格のリン酸質肥料に規定されている肥料である。
該過リン酸石灰は、粉末状に粉砕したリン鉱石Ca3(PO4)2に硫酸H2SO4を作用させて生成する。その生成物はリン酸二水素カルシウムCa(H2PO4)2と硫酸カルシウムCaSO4・2H2O の混合した粉体で、リン酸成分が豊富で水に溶解して植物に吸収され易い肥料として広く使用されている。
また、重過リン酸石灰も粉末状に粉砕したリン鉱石Ca3(PO4)2を原料とし、リン酸H3PO4を作用させて生成する。その生成物は過リン酸石灰と同じリン酸二水素カルシウムCa(H2PO4)2の粉体で、水に溶解するリン酸分が過リン酸石灰より大変多い肥料として使用されている。
該過リン酸石灰、該重過リン酸石灰などリン酸質肥料はいずれもリン酸二水素基を所有し、本発明にとって重要な原料となっている。すなわち、本発明においてこのリン酸二水素基とパームアッシュカリのカリウム基を化学反応させ、リン酸二水素カリウムを形成させ、潮解しないカリ肥料に化学変化させることにある。
該加工リン酸肥料、該リン酸苦土肥料にあっても、その成分であるリン酸二水素基を水酸化カリウムの水酸基と置き換えてリン酸二水素カリウムを形成して潮解しないカリ肥料に化学反応させることができる。
化1の反応式は、パームアッシュカリの主成分である水酸化カリウムが過リン酸石灰あるいは重過リン酸石灰のリン酸二水素カルシウムと化学反応した結果、いずれもリン酸二水素カリウム、いわゆる潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料が生成されることを示している。すなわち、該化学反応は10%程度の水の存在下で、水酸化カリウムがリン酸二水素カルシウムと共に水に溶解してイオン化が起こり、潮解性のないリン酸二水素カリウムとリン酸水素カルシウムが形成されることを示すものである。同時に生成される水分は最終工程で乾燥されて蒸発することを示している。
言い換えれば、該化2の化学反応は10%程度の水の存在下で、水酸化カリウムとリン酸二水素カルシウムやリン酸二水素マグネシウムは共に水に溶解してイオン化が起こり、潮解性のないリン酸二水素カリウムとリン酸水素カルシウムやリン酸水素マグネシウムが形成される。また同時に生成される水分は最終工程で乾燥されて蒸発することを示している。
該硫酸カリウムおよび該塩化カリウムは前記パームアッシュカリ肥料のカリウム成分を増加するために添加する原料である。具体的にはパームアッシュカリ100重量部に対して硫酸カリウムの場合10重量部とした。
以上のパームアッシュカリとリン酸質肥料から成る原料のほかに、本発明では原料の密着度合いを高め、且つ該原料によって形成される造粒物が容易に崩れない程度の強度を持つために適切なバインダーを用いることができる。
バインダーとして使用する材料は、製糖産業の副産物ならびに廃糖蜜を発酵工業にて利用した後に産出される糖蜜発酵副産濃縮液、リグニンスルホン酸塩、コーンスチープリカー、CMC、でんぷん粉、石膏などを選定し、水に溶解させて使用した。更には水だけでもバインダーとして選定できた。
その使用量は、本発明で使用するパームアッシュカリとリン酸質肥料の化学反応を阻害することなく、且つ粒子径1〜10mmに造粒して自重で壊れない強度に保持できるように適量使用するものとし、具体的にはパームアッシュカリ100重量部に対して糖蜜発酵副産濃縮液の場合4重量部とした。
この製造工程図に示す通り、原料であるパームアッシュカリの粉体とリン酸質肥料の粉体、並びにバインダーを混合し、外径1〜10mm程度の粒状にパン式造粒機にて造粒することは、自重では壊れない強度を発現させ得るものである。
つまりこの工程は、パームアッシュカリの水酸化カリウムとリン酸質肥料のリン酸二水素カルシウムあるいはリン酸二水素マグネシウムと共にバインダー中の水に溶解してイオン化し、リン酸二水素カリウムを徐々に生成する工程となっている。この化学反応は粒状に固く密着することによって可能となり、自重では壊れない強度を発現させるものとなる。言い換えると、パームアッシュカリとリン酸質肥料のそれぞれが粉状で混合状態にあっても、粒子同士が少量の水分などで密着しない限り化学反応は起こり難く、パームアッシュカリ肥料を形成することはできない。
表2は、原料としてパームアッシュカリとリン酸質肥料とバインダーを使用して各配合試料の合計はそれぞれ100wt%とし、その配合割合によって生成されたパームアッシュカリ肥料の潮解性の度合いを記号で示したものである。この表の右端には、パームアッシュカリ100重量部に対するリン酸質肥料の配合量を付設した。
元来、パームアッシュカリは潮解性があり、このことを試料NO.0で確認した。この潮解性を表す写真を図2に示す。この写真はパームアッシュカリ96.0wt%にバインダー4.0wt%を混合造粒後、温度28℃、湿度70%の雰囲気にて96時間保存し、その後、潮解性を確認した状況写真である。
ここで、該パームアッシュカリに該リン酸質肥料を配合し、潮解性を発現しない具体例を写真で示す。
図3は上記と同じ試料NO.5の場合で、パームアッシュカリ76.8wt%に過リン酸石灰19.2wt%とバインダー4.0wt%を混合造粒後、温度28℃、湿度70%の雰囲気に保ち、96時間経過後に潮解性が現れていない状況を写真で示したものである。
図4は該試料NO.5の場合で、パームアッシュカリ76.8wt%に重過リン酸石灰19.2wt%とバインダー4.0wt%を混合造粒後、温度28℃、湿度70%の雰囲気に保ち、96時間経過後に潮解性が現れていない状況を写真で示したものである。
図5も同じく、パームアッシュカリ76.8wt%に加工リン酸肥料19.2wt%とバインダー4.0wt%を混合造粒後、温度28℃、湿度70%の雰囲気に保ち、96時間経過後に潮解性が現れていない状況を写真で示したものである。
試料NO.4に示すように、パームアッシュカリを80.0wt%使用して過リン酸石灰を前記試料NO.5よりも少ない量の16.0wt%使用した場合、すなわちパームアッシュカリ100重量部に対する過リン酸石灰が20重量部の場合、パームアッシュカリ肥料の製造工程における湿度に関わる製造条件により潮解性観察開始から4日経過後にパームアッシュカリ肥料に潮解性が現れなかった。このことを表2に○印で表記した。従って下表2に示すように、パームアッシュカリの潮解性を抑制するために配合する過リン酸石灰の最小添加量は20重量部とした。同様に、重過リン酸石灰や加工リン酸肥料あるいはリン酸苦土肥料の最小添加量も20重量部であった。
更に、潮解性が発現しない各リン酸質肥料の最大添加量について説明する。
試料NO.19に示すように、パームアッシュカリを5.0wt%使用して過リン酸石灰を91.0wt%使用した場合、すなわちパームアッシュカリ100重量部に対する過リン酸石灰が1820重量部と多いと、生成されたパームアッシュカリ肥料の潮解性は潮解性観察開始から10日経過後であっても現れなかった。このことを表2に◎印で表記した。この◎印による表記は過リン酸石灰が1820重量部のみならず、42.9重量部以上であれば10日経過しても潮解性は発現することはなく、配合の上限を確認することはできなかった。このことから、パームアッシュカリの潮解性を抑制するために添加する過リン酸石灰の最大添加量は限定され得ない。同様に、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料もパームアッシュカリの潮解性を抑制する最大添加量は限定され得ない。
表3の試料NO.20あるいは21は、原料としてパームアッシュカリと、リン酸質肥料と、硫酸カリウムあるいは塩化カリウムと、バインダーを使用し、その合計を100wt%とし、その配合割合によって生成されたパームアッシュカリ肥料の潮解性の度合いを記号で示したものである。この表の右端には、パームアッシュカリ100重量部に対するリン酸質肥料と共に、カリウム成分の配合量を付設した。比較のために、試料NO.0と試料NO.4を付設した。
以上の結果は重過リン酸石灰や加工リン酸肥料あるいはリン酸苦土肥料の場合も同じ傾向を示し、各カリウム成分が添加されても少量であれば、本発明のパームアッシュカリ肥料は潮解性を抑制したカリ肥料が形成されることを示している。
本発明のパームアッシュカリ肥料は、パームアッシュカリの主成分である水酸化カリウムに過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料などリン酸質肥料の主成分であるリン酸二水素カルシウムあるいはリン酸二水素マグネシウムを混合して製造された肥料であるので、潮解性のないリン酸二水素カリウムに変化したものとなっている。
また、製造工程において、該パームアッシュカリを該リン酸質肥料と混合分散させてバインダーを使用しながら造粒するので、少量の水分によって該パームアッシュカリの粒子と該リン酸質肥料の粒子は互いに密着が可能となり、徐々にイオン化して化学反応が起こる。この造粒した粒子は重みを持ち、一定強度を保っているので、耕地内の目的箇所に飛散させずに散布させることが可能となる。
更に、該パームアッシュカリ肥料は硫酸カリウム、塩化カリウムなどカリウム成分を添加することができ、カリウム成分の豊富な且つ潮解性のないリン酸二水素カリウムに変化したものとなっている。
次いで、パームアッシュカリ100重量部に過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料を各々60重量部混合し、バインダー4重量部を加えて造粒した。いずれも10日以上の潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料が製造された。結果を表5に示す。
更に、パームアッシュカリ100重量部に過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料を各々900重量部混合し、バインダー4重量部を加えて造粒した。いずれも10日以上の潮解性を抑制し、且つリン酸分の多いパームアッシュカリ肥料が製造された。結果を表6に示す。
最後に、パームアッシュカリ100重量部に過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料を各々20重量部混合し、加えて硫酸カリウム、塩化カリウムを各々10重量部混合してバインダー4重量部を加えて造粒した。いずれも4日以上の潮解性を抑制し、且つカリウム成分の豊富なパームアッシュカリ肥料が製造された。結果を表7および表8に示す。
Claims (3)
- パームアッシュカリ100重量部に対して、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料およびこれらを原材料として成された肥料からなる群の少なくともいずれか一つを用いたリン酸質肥料20重量部以上を配合することを特徴とする潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料。
- パームアッシュカリ100重量部に対して過リン酸石灰、重過リン酸石灰、加工リン酸肥料、リン酸苦土肥料およびこれらを原材料として成された肥料からなる群の少なくともいずれか一つを用いたリン酸質肥料20重量部以上を配合したものに、バインダーを添加して造粒することを特徴とする潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料。
- バインダーが、糖蜜発酵副産濃縮液、リグニンスルホン酸塩、コーンスチープリカー、CMC、でんぷん粉、石膏、水からなる群の少なくともいずれか一つを用いた請求項2に記載の潮解性を抑制したパームアッシュカリ肥料。
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