JP4916111B2 - ボルト軸力測定器および方法 - Google Patents
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Description
本発明は、ボルトの軸力(締め付け力)を測定するボルト軸力測定器および方法に係わり、特に、車両のホイールと車軸とを連結するハブ用のボルト、すなわち、ホイールをハブに締結するハブボルトの軸力(締め付け力)を測定するボルト軸力測定器に関する。
[背景技術]
一般に、車両のホイールはハブを介して車軸と連結される。この場合、ホイールとハブとがボルト(以下、ハブボルトという)およびナットによって締結される。ナットを固定してハブボルトを締め方向に回転させると、ホイールおよびハブが圧縮されるとともに、ハブボルト自体にも引張り方向の力(軸力または締め付け力)が発生し、ハブボルトが伸びる。組立作業等においては、このハブボルトの締め付け力(軸力)を十分に管理して適正な値に保持することが重要である。締結が不十分であったり、締め付けすぎたりすると、ハブやホイールが変形したり破損したりする虞があるからである。
ハブボルトの締め付け力(軸力)を管理する方法としては、従来から様々な方法が知られている。例えばトルクレンチを用いて締め付けトルクを所定の値に設定したり、あるいは、熟練整備士等が微小ハンマーを用いてボルト締結部材の各部を叩き、その叩打音によってハブボルトの締め付け状態を点検したりする方法が良く知られている。また、締め付けられるハブボルトに対してその軸方向の一端面から超音波パルスを入射するとともに、その反射波が戻ってくるまでの時間からハブボルトの長さ(伸び)を求め、このボルト長からハブボルトの軸力を算出する超音波出射式の測定試験器も知られている。
しかしながら、前記トルクレンチを用いた方法は、使用の前提として、人の腕力に負うものであるため、その使用が小型車両等に限定される。また、このトルクレンチ法は、単に、締め付けトルクを所定の値に設定し、その設定値までボルトを締め付けるだけのものであるため、締め付けられた後のハブボルトの軸力自体を調査・測定することができない。更に、トルクレンチ法は、そのトルク係数の不安定要因が欠点として挙げられる。
一方、微小ハンマーを用いた叩打音による前記点検方法は、定格のない熟練と勘に頼る聴取判定であるため、ハブボルトの締結状態を正確に調査・測定することができない。
また、前記超音波出射式測定試験器を用いた方法は、被検体であるハブボルトの伸びからハブボルトの軸力を相関算出する方法であるため、ハブボルトの伸びを決定するために少なくともボルト締結の前後で2回測定を行なわなければならない。したがって、測定に伴う時間およびコストの低減にも限界がある。また、従来の超音波出射式測定試験器は、センサ部とアンプ部とが分離されており、部品点数が複数に及ぶことから、可搬作業に適さず、また、それ自体が電源を有していないため、商用電源のある場所でしか使用することができない。
[発明の開示]
本発明の目的は、締め付けられたボルトの軸力(締結状態)を迅速且つ正確に測定することができる携帯性および汎用性に優れたボルト軸力測定器を提供することにある。
このため、本願は、車両のホイールと車軸とを連結するハブ用のボルトの軸力を測定するためのボルト軸力測定器において、前記ボルトの規定された軸力を設定するための設定部と、測定を開始するために操作される起動操作部と、前記ボルトに当接され、前記起動操作部からの起動操作により作動して前記ボルトを一定のストロークにより連続的に複数回叩打する叩打部と、前記ボルトに当接され、前記叩打部による前記ボルトの叩打によって生じる叩打音を集音する集音部と、前記集音部で集音された叩打音の周波数を測定する周波数測定部と、前記周波数測定部によって測定された叩打音の周波数を前記ボルトの軸力に換算する軸力換算部と、前記設定部で設定された設定軸力と、前記軸力換算部により叩打音周波数から換算された換算軸力とを比較する比較部と、前記比較部による比較結果を表示する前記表示部と、を一体的に備えるボルト軸力測定器を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係るボルト軸力測定器の概念的な要部拡大断面図;
第2図は、本発明に係るボルト軸力測定器の概念的なブロック図;
第3図は、本発明の一実施形態に係るボルト軸力測定器の側面図;
第4図は、ボルト軸力と叩打音周波数との相関関係を示すグラフ図;
第5図は、本発明の一実施形態に係るボルト軸力測定器の概略的な内部構成図;
第6図は、本発明の一実施形態に係るボルト軸力測定器の測定手順を示すフローチャートである。
[発明を実施するための最良の形態]
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
第1図および第2図には、本発明に係るボルト軸力測定器が概念的に示されている。これらの図からも分かるように、本発明に係るボルト軸力測定器は、ハブボルトを叩打し、その叩打音の周波数からボルトの軸力を測定する。まず、その原理について以下に説明する。
一般に、物体に張力が発生している時に、この物体に打撃を加えると、固有の音が発生する。この打撃音の周波数は、打撃された物体の張力の多少によって変化する(この原理を応用した物の代表的な例は楽器であり、ピアノやギター等は、弦の張力の加減によって調律を行なう)。例えば、張力がかかっている鋼体に対してこれよりも高硬度の物体により打撃を加えた際に生じる打撃音の周波数は、鋼体の張力と相関関係があり、張力が高ければ周波数が高く、張力が低ければ周波数が低くなる。これを現象的に捕らえると、例えば熱処理された金属部品の正常な締結箇所(鋼体に正常な張力が発生している場合)などでは、一般的に周波数の高い音が発生し、一方、腐食、破断、弛み、亀裂などが発生している箇所では、周波数が低く、鈍い音が発生する。
以上の原理をボルト軸力の測定に応用することが本発明の基本概念である。すなわち、ボルト・ナットを締め付けることは、ボルトに張力を発生させる作業そのものであり、規定の締め付けトルク(軸力)でボルトが締め付けられたか否かは、ボルトに一定の張力が発生しているか否かを計測することによって判別でき、また、この張力は、前述したようにボルトを叩いた時の打撃音の周波数から計測できる。
このような基本原理に基づいて、本発明に係るボルト軸力測定器1は、第1図および第2図に示されるように、測定を開始するために操作される起動操作部2と、起動操作部2からの起動信号を受ける主回路4と、測定対象となるボルト14に当接され且つ前記起動信号に伴う主回路4からの制御信号に基づいて作動してボルト14を打撃する叩打装置6と、叩打装置6によるボルト14からの打撃音(叩打音)を集める集音マイク8と、測定対象となるボルトの適正軸力(規定値)を例えば所定の範囲で設定入力するための設定装置12と、測定結果を表示する表示装置10とを備えている。
この構成において、集音マイク8によって集められた打撃音はその周波数が測定され、その測定値は、主回路4において基準値と比較される。具体的には、主回路4は、周波数とボルト軸力(張力)との相関データ(実験等により予め求められる)を記憶した記憶部を有しており、この記憶部に記憶された相関データから周波数測定値に対応するボルト軸力を求め、そのボルト軸力が設定装置12で設定入力された適正値(基準値)に一致しているか否か(適正軸力が所定の範囲で設定入力されている場合には、測定周波数から換算されたボルト軸力が設定装置12で設定入力された適正値の範囲内にあるか否か)を比較判断する。そして、その判断結果は、表示装置10に表示される。なお、第1図中、16は、ボルト14と組み合わされるナットであり、18は、ボルト14およびナット16によって締結される部材である。
以上のように、本発明に係るボルト軸力測定器1は、ボルト14に叩打装置6を打ち当て、その時に発生する打撃音の周波数を測定して、その測定値を基準値(設定装置で設定入力された1つの値(または、値の範囲))と比較することにより、ボルト14の軸力(張力)の多少を検査診断するテスターとして機能する。このことから分かるように、本発明に係るボルト軸力測定器の基本的な使用形態は、極小のハンマーを用いて機構の各部を軽く打撃しながら点検していく前述した従来の方法と類似しているが、この従来の点検方法と本発明に係るボルト軸力測定器を用いた方法との大きな相違点は、極小のハンマーを用いた従来の点検方法が、定格のない熟練と勘に頼る聴取判定であるのに対し、本発明に係るボルト軸力測定器を用いた方法が、叩打音を電気的に感知して処理することによりボルトの軸力を正確に計測するという点である。
次に、第3図乃至第6図を参照しながら、以上の原理に基づく本発明の具体的な一実施形態について説明する。
第3図および第5図に示されるように、本実施形態のボルト軸力測定器1Aは、略ピストル形状を成しており、砲身状の本体部(測定器本体)42と、手で握持できるハンドル部40とから成る。ハンドル部40には、測定を開始するべくハンドル部40を握持した手の指で操作できる起動操作部としてのトリガレバー2Aが設けられている。このトリガレバー2Aは、後述する主基板(主回路)4Aの駆動制御部22に電気的に接続されている。また、ハンドル部40には、主基板4Aを含む各種の電子部品(後述する)に電力を供給するバッテリ20が内蔵されている。
本体部42には、測定対象となるボルトの適正軸力(基準値;規定値)を例えば所定の範囲で設定入力する設定部12Aと、測定結果を表示する表示部10Aとが設けられている。表示部10Aは、第3図に示されるように本体部42の側壁に露出する表示パネル10aを有している。この表示パネル10aには、測定されたボルトの軸力が適正軸力であるか否かに関する測定(判定)結果を例えば複数の形態で表示できる複数のLED(表示手段)と、ボルト軸力の測定値を表示する表示器と、バッテリ20の充電状態を表示するLEDとが少なくとも設けられている。一方、設定部12Aも、第3図に示されるように本体部42の側壁に露出する設定パネル12aを有しており、この設定パネル12aには、ボルトの適正軸力を設定したり、後述する相関データに関与する測定ボルトのサイズ等を設定するための各種の設定ボタンと、設定ボタンによって設定された値を表示する表示器とが少なくとも設けられている。なお、これらの表示部10Aおよび設定部12Aは、主基板4Aの後述する比較演算判定回路24に電気的に接続されている。
また、本体部42の先端面には、測定対象となるボルトに当接してこのボルトを連続的に打撃する叩打装置(叩打部)としてのインパクトチップ6Aが設けられている。このインパクトチップ6Aの硬度は、測定対象となるボルトの硬度よりも大きく設定されている。
また、インパクトチップ6Aは、主基板4Aの駆動制御部22と電気的に接続されたプランジャソレノイド32の先端に取り付けられており、駆動制御部22からの制御信号によりプランジャソレノイド32の進退駆動部が約5mmのストロークで進退することによりボルトを連続的に打撃する(例えば、1秒間に約3回叩打する速度で、約2秒間作動する)。
また、本体部42の先端面には、インパクトチップ6Aによってボルトを叩打する際に生じる打撃音(叩打音)を集める集音マイク(集音部)8Aが設けられている。この集音マイク8Aは、増幅器26とA/D周波数変換回路(周波数測定部)28とを介して、主基板4Aの比較演算判定回路24に電気的に接続されている。この場合、増幅器26は、集音マイク8Aによって集められた打撃音に伴う音信号を増幅する。また、A/D周波数変換回路28は、増幅器26によって増幅されたアナログ信号としての音信号を周波数に変換してデジタル信号として比較演算判定回路24に出力する。
また、本体部42の先端面には、ボルトに対して例えば判定結果をマーキングできるインクジェットノズル34が設けられている。このインクジェットノズル36は、主基板4Aの駆動制御部22と電気的に接続されたプランジャソレノイドバルブ30に接続されており、プランジャソレノイドバルブ30の作動によりインクタンク36からのインクをボルトに対して噴き付けることができる。
主基板4Aは、駆動制御部22と、比較演算判定回路(比較部;軸力換算部)24とを備えている。駆動制御部22は、トリガレバー2Aの作動に伴うトリガ信号を受けてインパクトチップ6Aのプランジャソレノイド32を駆動させる制御信号を形成するとともに、比較演算判定回路24からの判定信号を受けてインクジェットノズル34のプランジャソレノイドバルブ30を駆動させる制御信号を形成する。
一方、比較演算判定回路24は、集音マイク8Aによって集められた打撃音に対応する周波数のデジタル信号をA/D周波数変換回路28から受け、このデジタル信号の周波数データをボルト軸力に換算(演算)するとともに、その換算値を設定部12Aで設定入力された設定値(規定の適正ボルト軸力)と比較して、ボルト軸力が適正であるか否かを判定する。
具体的には、比較演算判定回路24は、叩打音周波数(インパクトチップ6Aによってボルトを叩打する際に生じる打撃音の周波数)とボルト軸力との相関データ(実験等により予め求められる)を記憶しており、この記憶された相関データから周波数測定値(A/D周波数変換回路28から受けたデジタル信号)に対応するボルト軸力を求め、そのボルト軸力が設定部12Aで設定入力された設定値に一致しているか否か(適正軸力が所定の範囲で設定入力されている場合には、周波数測定値から換算したボルト軸力が設定部12Aで設定入力された適正値の範囲内にあるか否か)を比較判断する。周波数とボルト軸力との前記相関データは、ボルトのサイズ毎、また、ボルトやボルト締結に関与する部材の材質毎にそれぞれ対応するものが記憶されており、設定部12Aで測定ボルトのサイズや材質等が設定されると、それに対応する相関データが使用されて比較演算判定回路24により周波数測定値がボルト軸力に換算される。
なお、前記相関データの採取には、ボルトのサイズや材質等以外のパラメータが加味されても良い。相関データの一例として、JIS B1051表1−7における1.8T系列の中心的な強度区分12.9のM20ボルト(表面硬さ454HV)のボルト軸力と叩打音周波数との相関データを第4図に示す。
次に、上記構成のボルト軸力測定器1Aを用いて、車両のホイールと車軸とを連結するハブ用のボルト、すなわち、ホイールをハブに締結するハブボルトの軸力を測定する場合について、第6図のフローチャートを参照しながら説明する。
なお、この場合、ハブは第1図の部材18に相当し、ハブナットは第1図のナット16に相当するとともに、ハブボルトが第1図のボルト14に相当する。また、ネジ呼び径が18mm〜20mm(M18〜M22)のハブボルトを使用する中型車のボルト軸力を測定する場合、例えばJIS規格においてネジ呼び径20mm(M20)のハブボルトの表面硬さが454HVとすると、インパクトチップ6Aの表面硬さは、これよりも硬い例えば520HVに設定される。また、比較演算判定回路24には、車両に荷が積載されていない空積載状態における叩打音周波数とボルト軸力との相関データが、ハブボルトのサイズ毎、ハブボルトおよびホイールの材質毎にそれぞれ記憶されているものとして話を進める。
まず、設定部12Aの設定ボタンを操作して、測定対象となるハブボルトの適正軸力(定格値)を例えば所定の範囲で(単一の値であっても良い)設定するとともに、ハブボルトのサイズや材質などを設定する(第6図のステップS1)。例えば、ボルトサイズとしてM20を設定し、材質としてハブボルトの材質やハブボルトによって締結されるホイールの材質(アルミまたはスチール)等を設定する。これにより、比較演算判定回路24は、これらの設定パラメータに応じた叩打音周波数−ボルト軸力相関データを使用して比較判定を行なうことになる。また、適正軸力として例えば7500kgf〜15000kgfの範囲(または、標準軸力である9800kgfなる単一の値)を設定する。
次に、車両に荷が積載されていない空積載状態(ここでは、空積載状態での相関データが比較演算判定回路24に記憶されているため)で、ボルト軸力測定器1Aの先端面にあるインパクトチップ6Aをハブボルトの端面に当接させる(ステップS2…第1図の状態)。
インパクトチップ6Aをボルトの端面に当接させたら、トリガレバー2Aを引き操作する(ステップS3)。これにより、トリガレバー2A側からトリガ信号が駆動制御部22に入力され、これに応じて、駆動制御部22は、プランジャソレノイド32を駆動させる制御信号をプランジャソレノイド32に出力する。その結果、プランジャソレノイド32の進退駆動部が約5mmのストロークで進退し、インパクトチップ6Aがハブボルトの端面を連続的に打撃する(ステップS4)。ここでは、例えば約3叩打/秒の速度で、約2秒間叩打する。
この打撃時に発生する叩打音は、集音マイク8Aによって集められる(ステップS5)とともに、増幅器26によって増幅される。そして、増幅されたアナログ信号としての音信号は、A/D周波数変換回路28により周波数に変換され(ステップS6)、デジタル信号として比較演算判定回路24に出力される。
このようにして集音マイク8Aによって集められた叩打音の周波数データが比較演算判定回路24に入力されると、比較演算判定回路24は、設定部12Aで設定されたハブボルトのサイズやハブボルトおよびホイールの材質に対応した叩打音周波数−ボルト軸力相関データを使用して、入力された周波数データをボルト軸力に換算し(ステップS7)、この換算値が設定部12Aで設定入力された設定値に一致しているか否か(適正軸力が所定の範囲で設定入力されている場合には、換算値が設定部12Aで設定入力された適正値の範囲内にあるか否か)を比較判断する(ステップS8)。そして、比較演算判定回路24は、換算値が設定値に一致している(または、設定範囲内にある)と判断すると、換算値(測定されたボルト軸力)を表示部10Aの表示器に表示するとともに、表示部10Aの例えば「OK」と表示されたLEDを点灯させる(ステップS9)。また、同時に、比較演算判定回路24は、測定されたボルト軸力が適正である旨の信号を駆動制御部22に送る。これにより、プランジャソレノイドバルブ30が駆動制御部22により駆動され、インクタンク36からのインクがインクジェットノズル36を介してボルトに対して噴き付けられることにより、ボルト軸力が適正である旨の判定結果を示すマーキングがボルトに施される(ステップ10)。
一方、比較演算判定回路24は、換算値が設定値に一致していない(または、設定範囲内にない)と判断すると、換算値(測定されたボルト軸力)を表示部10Aの表示器に表示するとともに、表示部10Aの例えば「NG」と表示されたLEDを点灯させる(ステップS11)。この時、換算値が設定値を上回っているか下回っているかを具体的に表示するため、例えば「HI」または「LOW」と表示されたLEDを点灯させても良い。
以上説明したように、本発明に係るボルト軸力測定器は、ボルトの叩打音周波数とボルトの軸力との間に相関関係があることを利用し、ボルトを叩打する叩打部(6,6A)と、叩打部(6,6A)によってボルトを叩打することによって生じる叩打音を集音する集音部(8,8A)と、集音部(8,8A)で集音された叩打音の周波数を測定する周波数測定部(28)と、周波数測定部(28)によって測定された叩打音の周波数をボルトの軸力に換算する軸力換算部(24)とを備えている。したがって、熟練や勘、特定の知識や経験を有しなくとも、簡便且つ短時間にボルトの軸力(ボルト締結後の締結状態)を正確に測定でき、また、人の腕力に負うものでもないため、測定対象も特に制限されない(汎用性に優れている)。
また、本発明の一実施形態に係るボルト軸力測定器においては、ボルトの規定された軸力を設定するための設定部(12,12A)や、設定部(12,12A)で設定された設定軸力と、軸力換算部(24)により叩打音周波数から換算された換算軸力とを比較する比較部(24)が設けられている。そのため、測定対象となるボルトが規定の軸力を有しているか(規定の締め付け力で締め付けられているか)否か、すなわち、ボルトの締め付け不足や閉め忘れ、締め付けすぎを正確に知ることができる。
また、本発明の一実施形態に係るボルト軸力測定器において、軸力換算部(24)は、ボルトのサイズ、ボルトおよびボルトによって締結される部材の材質等の様々なパラメータに応じて、叩打音の周波数をボルト軸力に換算する。そのため、正確な周波数−軸力変換を行なうことができ、ボルト軸力の測定精度が高まる。
また、本発明の一実施形態に係るボルト軸力測定器は、叩打部(6,6A)、集音部(8,8A)、周波数測定部(28)、軸力換算部(24)をそれぞれ内蔵する測定器本体(42)と、測定器本体(42)から延在するとともに、叩打部を(6,6A)起動させるための起動部(2,2A)を有する、手で把持可能なハンドル部(40)とから成るとともに、ボルト軸力測定に必要な電力を供給するためのバッテリ(20)を内蔵している。そのため、屋内外の天候および電源に制約されることなく、任意の場所で簡単に使用することができる(携帯性に優れる)。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは言うまでもない。例えば、前述した実施形態において、表示部10Aは、測定値をボルトの軸力(kgf)として表示するが、締め付けトルク(T)、張力(N)、叩打音周波数(Hz)を測定値として表示しても良い。また、前述した実施形態において、設定部12Aは、規定のボルト軸力を設定入力できるようになっているが、規定のボルト軸力に対応する叩打音周波数を設定入力できるようになっていても良い。この場合には、叩打音周波数をボルト軸力に換算する相関データを用いることなく、比較演算判定回路24によって測定周波数と設定周波数とを直接に比較することができる。これは、適正軸力に対応する叩打音周波数が予め分かっている場合に有益である。また、この場合、測定された軸力ではなく、測定された叩打音周波数を表示部10Aに表示するようにすると、測定器は、もはやボルト軸力測定器ではなく、ボルト叩打音周波数測定器となる。また、前述した実施形態においては、様々なボルトサイズや材質等の軸力測定に対応できるように、設定部12Aが設けられ、この設定部12Aで設定入力されたパラメータに応じて相関データを選択して叩打音周波数から軸力が測定されるが、ボルト軸力測定器を特定のサイズや材質のボルトに対してのみ使用する場合には、共通の相関データが使用されるため、敢えて設定部を設ける必要はなくなる。
Claims (6)
- 車両のホイールと車軸とを連結するハブ用のボルトの軸力を測定するためのボルト軸力測定器において、
前記ボルトの規定された軸力を設定するための設定部と、
測定を開始するために操作される起動操作部からのトリガ信号によりプランジャソレノイドを往復駆動させる起動制御部と、前記ボルトに当接され前記プランジャソレノイドによって作動して前記ボルトを一定のストローク及び一定の時間間隔で連続的に複数回叩打する叩打部と、からなる叩打装置と、
前記叩打装置による前記ボルトの叩打によって生じる叩打音を集音する集音部と、
前記集音部で集音された叩打音の周波数を測定する周波数測定部と、
前記周波数測定部によって測定された叩打音の周波数を、実験により予め求められて記憶されている前記叩打音の周波数及びボルト軸力の相関データに基づいて前記ボルトの軸力に換算する軸力換算部と、
前記設定部で設定された設定軸力と、前記軸力換算部により叩打音周波数から換算された換算軸力とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果を表示する表示部と、
前記比較結果を前記ボルトに対してマーキングするマーキング部と、
を含み、上記した各部及び装置を一体的に備えて把持可能に構成されていることを特徴とするボルト軸力測定器。 - 前記叩打装置は、前記ボルトに当接するインパクトチップを有し、当該インパクトチップの硬度は、測定対象のボルトの硬度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のボルト軸力測定器。
- 前記表示部は、前記軸力換算部で換算された前記ボルトの軸力を表示する請求項1に記載のボルト軸力測定器。
- 前記軸力換算部は、前記ボルトのサイズに応じて、叩打音の周波数をボルト軸力に換算する請求項1または3に記載のボルト軸力測定器。
- 前記軸力換算部は、前記ボルトおよびボルトによって締結される部材の材質に応じて、叩打音の周波数をボルト軸力に換算する請求項4に記載のボルト軸力測定器。
- ボルト軸力測定に必要な電力を供給するためのバッテリが内蔵されている請求項1に記載のボルト軸力測定器。
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