JP4915769B2 - 光学活性高分子化合物および高分子発光素子 - Google Patents

光学活性高分子化合物および高分子発光素子 Download PDF

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Description

本発明は、光学活性高分子化合物および高分子発光素子(以下、高分子LEDということがある。)に関する。
高分子量の発光材料や電荷輸送材料等の高分子材料を用いた発光素子(高分子発光素子)が種々検討されており、高分子材料の例としてポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体等の高分子化合物が知られている(非特許文献1)。
月刊ディスプレイ 2003年9巻9号 10頁
発光素子に用いる高分子化合物に求められる性能としては、その素子の用途等に応じ、発光効率、発光輝度、発光色、寿命、耐熱安定性等があげられる。また、製膜性がよいことも求められる。
上記公知の高分子化合物では、種々の用途に応じるためには、求められる性能のいずれかが十分でなく、これらを満足しうる、新規な高分子化合物が望まれていた。
本発明の目的は、発光素子等の材料として有用な新規な高分子化合物を提供することにある。
即ち本発明は、下式(1)で示される繰り返し単位を主鎖中に含み、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108である光学活性高分子化合物を提供するものである。

Figure 0004915769

〔式中、R2はアルキル基または置換基を有するシリル基を表し、R3は水素原子またはアルキル基を表す。2個のR2および2個のR3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。*は不斉炭素原子を意味する。〕
本発明の高分子化合物は、発光素子等の材料として有用な新規な高分子化合物である。
本発明の高分子化合物は上記式(1)で示される繰り返し単位を主鎖中に含むものである。
式(1)におけるアルキル基は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよく、炭素数が通常1〜20程度であり、好ましくは炭素数1〜10であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基が好ましい。
置換基を有するシリル基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基または1価の複素環基から選ばれる1、2または3個の基で置換されたシリル基があげられる。置換シリル基の炭素数は通常1〜60程度であり、好ましくは炭素数3〜48である。
なお該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基または1価の複素環基は置換基を有していてもよい。
具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、ジメチル−i−プロピルシリル基、ジエチル−i−プロピルシリル基、トリブチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基などが例示され、好ましくはトリメチルシリル基、トリブチルシリル基、トリ−t−ブチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、オクタデカニルジメチルシリル基である。
また、上記式(1)のビフェニル環部分に置換基を有していてもよい。
上記式(1)で示される繰り返し単位の合計の量は、本発明で用いられる高分子化合物が有する全繰り返し単位の合計の通常1モル%以上100モル%以下であり、好ましくは、10モル%以上100モル%以下である。
本発明の高分子化合物は、上記式(1)以外の繰り返し単位を含むことができ、その例として、下記式(3)、式(4)、式(5)または式(6)で示される繰り返し単位があげられる。

Figure 0004915769

式中、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4はそれぞれ独立にアリーレン基、2価の複素環基または金属錯体構造を有する2価の基を示す。X1、X2およびX3はそれぞれ独立に−CR14=CR15−、−C≡C−、−N(R16)−、または−(SiR1718n−を示す。R14およびR15は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基またはシアノ基を示す。R16、R17およびR18は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、アリールアルキル基、置換アミノ基を示す。ffは1または2を示す。nは1〜12の整数を示す。R14、R15、R16、R17およびR18がそれぞれ複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
ここにアリーレン基とは、芳香族炭化水素から、水素原子2個を除いた原子団であり、通常炭素数は6〜60程度であり、好ましくは6〜20である。ここに芳香族炭化水素としては、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環または縮合環2個以上が直接またはビニレン等の基を介して結合したものが含まれる。
アリーレン基としては、フェニレン基(例えば、下図の式1〜3)、ナフタレンジイル基(下図の式4〜13)、アントラセニレン基(下図の式14〜19)、ビフェニレン基(下図の式20〜25)、フルオレンージイル基(下図の式36〜38)、トリフェニレン基(下図の式26〜28)、スチルベン−ジイル(下図の式A〜D),ジスチルベン−ジイル(下図の式E,F)、縮合環化合物基(下図の式29〜38)などが例示される。
中でもフェニレン基、ビフェニレン基、フルオレン−ジイル基、スチルベン−ジイル基が好ましい。

Figure 0004915769
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また、2価の複素環基とは、複素環化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、炭素数は通常3〜60程度である。
ここに複素環化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素、ヒ素などのヘテロ原子を環内に含むものをいう。
2価の複素環基としては、例えば以下のものが挙げられる。
ヘテロ原子として、窒素を含む2価の複素環基;ピリジンージイル基(下図の式39〜44)、ジアザフェニレン基(下図の式45〜48)、キノリンジイル基(下図の式49〜63)、キノキサリンジイル基(下図の式64〜68)、アクリジンジイル基(下図の式69〜72)、ビピリジルジイル基(下図の式73〜75)、フェナントロリンジイル基(下図の式76〜78)、など。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含みフルオレン構造を有する基(下図の式79〜93)。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基:(下図の式94〜98)が挙げられる。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環縮合複素基:(下図の式99〜108)が挙げられる。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位で結合し2量体やオリゴマーになっている基:(下図の式109〜113)が挙げられる。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位でフェニル基に結合している基:(下図の式113〜119)が挙げられる。
ヘテロ原子として酸素、窒素、硫黄、などを含む5員環縮合複素環基にフェニル基やフリル基、チエニル基が置換した基:(下図の式120〜125)が挙げられる。
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また、金属錯体構造を有する2価の基とは、有機配位子を有する金属錯体の有機配位子から水素原子を2個除いた残りの2価の基である。
該有機配位子の炭素数は、通常4〜60程度であり、例えば、8−キノリノールおよびその誘導体、ベンゾキノリノールおよびその誘導体、2−フェニル−ピリジンおよびその誘導体、2−フェニル−ベンゾチアゾールおよびその誘導体、2−フェニル−ベンゾキサゾールおよびその誘導体、ポルフィリンおよびその誘導体などが挙げられる。
また、該錯体の中心金属としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、ベリリウム、イリジウム、白金、金、ユーロピウム、テルビウムなどが挙げられる。
有機配位子を有する金属錯体としては、低分子の蛍光材料、燐光材料として公知の金属錯体、三重項発光錯体などが挙げられる。
金属錯体構造を有する2価の基としては、具体的には、以下の(126〜132)が例示される。

Figure 0004915769
上記の式1〜132において、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミノ基、アミド基、イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基またはシアノ基を示す。また、式1〜132の基が有する炭素原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子と置き換えられていてもよく、水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。
上記式(3)で示される繰り返し単位の中では、下記式(7)、式(8)、式(10)、または式(11)で示される繰り返し単位が好ましく、上記式(4)で示される繰り返し単位の中では、式(9)または式(12)で示される繰り返し単位が好ましい。
Figure 0004915769

〔式中、R3は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミノ基、アミド基、イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基またはシアノ基を示す。nは0〜4の整数を示す。〕
Figure 0004915769

〔式中、R4およびR5は、それぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミノ基、アミド基、イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基またはシアノ基を示す。Oおよびpはそれぞれ独立に0〜3の整数を示す。〕

Figure 0004915769

〔式中、R6およびR9は、それぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミノ基、アミド基、イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基またはシアノ基を示す。qおよびrはそれぞれ独立に0〜4の整数を示す。R7およびR8は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基またはシアノ基を示す。〕
Figure 0004915769

〔式中、R10は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミノ基、アミド基、イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基またはシアノ基を示す。sは0〜2の整数を示す。
4は、O、S、SO、SO2、Se,またはTeを示す。〕
Figure 0004915769

〔式中、R11およびR12は、それぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミノ基、アミド基、イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基またはシアノ基を示す。tおよびuはそれぞれ独立に0〜4の整数を示す。X5は、O、S、SO2、Se,Te、N−R13、またはSiR1415を示す。X6およびX7は、それぞれ独立にNまたはC−R16を示す。R13、R14、15およびR16はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基または1価の複素環基を示す。〕
式(11)で示される繰り返し単位の中央の5員環の例としては、チアジアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チオフェン、フラン、ピロール、シロールなどが挙げられる。
Figure 0004915769

〔式中、R17およびR22は、それぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミノ基、アミド基、イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基またはシアノ基を示す。vおよびwはそれぞれ独立に0〜4の整数を示す。R18、R19、R20およびR21は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基またはシアノ基を示す。Ar5はアリーレン基、2価の複素環基または金属錯体構造を有する2価の基を示す。〕
また上記式(4)で示される繰り返し単位の中で、下記式(13)で示される繰り返し単位が好ましい。
Figure 0004915769

〔式中、Ar6、Ar7、Ar8およびAr9はそれぞれ独立にアリーレン基または2価の複素環基を示す。Ar10、Ar11およびAr12はそれぞれ独立にアリール基、また
は1価の複素環基を示す。Ar6、Ar7、Ar8、Ar9、およびAr10は置換基を有し
ていてもよい。xおよびyはそれぞれ独立に0または1を示し、0≦x+y≦1である。
上記式(13)で示される繰り返し単位の具体例としては、以下の(式133〜140)で示されるものが挙げられる。
Figure 0004915769
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上記式133〜140においてRは、前記式1〜132のそれと同じである。上記の例において、1つの構造式中に複数のRを有しているが、それらは同一であってもよいし、異なる基であってもよい。溶媒への溶解性を高めるためには、水素原子以外を1つ以上有していることが好ましく、また置換基を含めた繰り返し単位の形状の対称性が少ないことが好ましい。
さらに、上記式においてRがアリール基や複素環基をその一部に含む場合は、それらがさらに1つ以上の置換基を有していてもよい。
また、上記式においてRがアルキル鎖を含む置換基においては、それらは直鎖、分岐または環状のいずれかまたはそれらの組み合わせであってもよく、直鎖でない場合、例えば、イソアミル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロヘキシル基、4−C1〜C12アルキルシクロヘキシル基などが例示される。高分子化合物の溶媒への溶解性を高めるためには、1つ以上に環状または分岐のあるアルキル鎖が含まれることが好ましい。
また、複数のRが連結して環を形成していてもよい。さらに、Rがアルキル鎖を含む基の場合は、該アルキル鎖は、ヘテロ原子を含む基で中断されていてもよい。ここに、ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などが例示される。
なお、本発明の高分子化合物のなかでは、実質的に上記式(1)で示される繰り返し単位からなるもの、上記式(1)と、式(3)〜式(13)で示される繰り返し単位の1以上とから実質的になるものが好ましい。
また、本発明で用いられる高分子化合物においては、繰り返し単位が、非共役の単位で連結されていてもよいし、繰り返し単位にそれらの非共役部分が含まれていてもよい。結合構造としては、以下に示すもの、および以下に示すもののうち2つ以上を組み合わせたものなどが例示される。ここで、Rは前記のものと同じ置換基から選ばれる基であり、Arは炭素数6〜60個の炭化水素基を示す。

Figure 0004915769
また、本発明の高分子化合物は、ランダム、ブロックまたはグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。蛍光の量子収率の高い高分子蛍光体を得る観点からは完全なランダム共重合体よりブロック性を帯びたランダム共重合体やブロックまたはグラフト共重合体が好ましい。主鎖に枝分かれがあり、末端部が3つ以上ある場合やデンドリマーも含まれる。
また、本発明の高分子化合物の末端基は、重合活性基がそのまま残っていると、素子にしたときの発光特性や寿命が低下する可能性があるので、安定な基で保護されていてよい。主鎖の共役構造と連続した共役結合を有しているものが好ましく、例えば、炭素―炭素結合を介してアリール基または複素環基と結合している構造が例示される。具体的には、特開平9−45478号公報の化10に記載の置換基等が例示される。
本発明の高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は103〜108であり、好ましくは104〜106である。
本発明の高分子化合物に対する良溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、n−ブチルベンゼンなどが例示される。高分子化合物の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
本発明の高分子化合物の具体例としては、以下の(式141〜146)で示される重合体または共重合体であるものが挙げられるが、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能である。

Figure 0004915769


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Figure 0004915769

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(式中、R2はアルキル基または置換基を有するシリル基を表し、R3は水素原子またはアルキル基を表す。R4、R5、R7、R8、R9はアルキル基を表す。R6は置換基を有するシリル基を表す。2個のR2〜R9はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。nは正の整数を表す。)
次に、本発明の高分子化合物の製造方法について説明する。本発明の高分子化合物は、例えば、下式(2)で示す光学活性化合物を重合に供することで製造できる。

Figure 0004915769

(式中、R2、R3および*は上記と同じ意味を示す。R1は重合に関与する置換基を表す。)
ここで、上記式(2)で示される光学活性化合物としては、高い光学純度を有することが好ましく、好ましくは50%ee以上の光学純度を有することであり、より好ましくは90%ee以上の光学純度を有する。
重合に関与する置換基としては、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられ、アルキルスルホネート基としてはメチルスルホネート基またはトリフルオロメチルスルホネート基が挙げられ、アリールスルホネート基としてはフェニルスルホネート基が挙げられ、アリールアルキルスルホネート基としてはp-トルエンスルホネート基が挙げられる。
なお、式(2)で示される光学活性化合物は、対応するラセミ体を光学分割することにより、製造できる。また、不斉合成により製造することも可能である。
本発明の光学活性高分子化合物が、重合において主鎖に二重結合を生成する場合は、例えば、ビニル基を有する化合物とハロゲン原子を有する化合物とのHeck反応が利用できる。あるいは、本発明の光学活性高分子化合物が重合によって主鎖に三重結合を生成する場合には、例えば、Heck反応、Sonogashira反応が利用できる。
また、二重結合や三重結合を生成しない場合には、例えば該当するモノマーからSuzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)錯体により重合する方法、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、あるいは適当な脱離基を有する中間体高分子の分解による方法などが例示される。
二重結合や三重結合を生成しない場合、本発明の光学活性高分子化合物は、例えば、式(2)において、2個のR1がハロゲン原子である光学活性化合物(ジハロゲン化物)を脱ハロゲン化して重合することにより得ることができる。
反応性が高いという観点から、脱ハロゲン化重合を、パラジウムまたはニッケル化合物(好ましくはニッケル化合物)の存在下で行うことが好ましい。
ニッケル化合物の中では、例えば、ゼロ価ニッケル錯体(例えばビス(1、5−シクロオクタジエン)ニッケル:Ni(COD)2)の使用が好ましい。
このような反応は、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)等の有機溶媒を用いて、20〜120℃程度の温度で行うことができる。
上記式(1)で示される光学活性化合物の量は、本発明で用いられる光学活性高分子化合物を製造する際に供される原料化合物の合計の通常1モル%以上100モル%以下であり、好ましくは、10モル%以上100モル%以下である。
ここで、本発明で用いられる光学活性高分子化合物を製造する際に供される原料化合物とは、本発明で用いられる光学活性高分子化合物が有する繰り返し単位に対応する原料化合物を意味する。
次に、本発明の高分子LEDについて説明する。
本発明の高分子LEDは、陽極および陰極からなる電極間に、上記本発明の光学活性高分子化合物を含む層(A)を有することを特徴とする。
層(A)は、発光層、正孔輸送層、電子輸送層等のいずれであってもよいが、発光層であることが好ましい。
ここに、発光層とは、発光する機能を有する層をいい、正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層をいい、電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層をいう。なお、電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶ。発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。
層(A)が発光層である場合、該発光層がさらに正孔輸送材料、電子輸送材料または発光材料を含んでいてもよい。ここで、発光材料とは、蛍光および/または燐光を示す材料のことを示す。
本発明で用いられる光学活性高分子化合物に正孔輸送材料と混合する場合には、全有機材料に対して、正孔輸送材料の混合割合は1wt%〜80wt%であり、好ましくは5wt%〜60wt%である。本発明で用いられる光学活性高分子化合物に電子輸送材料を混合する場合には、全有機材料に対して電子輸送材料の混合割合は1wt%〜80wt%であり、好ましくは5wt%〜60wt%である。さらに、本発明で用いられる光学活性高分子化合物に発光材料を混合する場合には全有機材料に対して発光材料の混合割合は1wt%〜80wt%であり、好ましくは5wt%〜60wt%である。本発明で用いられる光学活性分子化合物に発光材料、正孔輸送材料および/または電子輸送材料を混合する場合には全有機材料に対して発光材料の混合割合は1wt%〜50wt%であり、好ましくは5wt%〜40wt%であり、正孔輸送材料と電子輸送材料はそれらの合計で1wt%〜50wt%であり、好ましくは5wt%〜40wt%であり、本発明で用いられる光学活性高分子化合物の含有量は99wt%〜20wt%である。
混合する正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料としては公知の低分子化合物や高分子化合物が使用できるが、高分子化合物を用いることが好ましい。高分子化合物の正孔輸送材料、電子輸送材料および発光材料としては、WO99/13692、WO99/48160、GB2340304A、WO00/53656、WO01/19834、WO00/55927、GB2348316、WO00/46321、WO00/06665、WO99/54943、WO99/54385、US5777070、WO98/06773、WO97/05184、WO00/35987、WO00/53655、WO01/34722、WO99/24526、WO00/22027、WO00/22026、WO98/27136、US573636、WO98/21262、US5741921、WO97/09394、WO96/29356、WO96/10617、EP0707020、WO95/07955、特開平2001−181618号公報、特開平2001−123156号公報、特開平2001−3045号公報、特開平2000−351967号公報、特開平2000−303066号公報、特開平2000−299189号公報、特開平2000−252065号公報、特開平2000−136379号公報、特開平2000−104057号公報、特開平2000−80167号公報、特開平10−324870号公報、特開平10−114891号公報、特開平9−111233号公報、特開平9−45478号公報等に開示されているポリフルオレン、その誘導体および共重合体、ポリアリーレン、その誘導体および共重合体、ポリアリーレンビニレン、その誘導体および共重合体、芳香族アミンおよびその誘導体の(共)重合体が例示される。
低分子化合物の蛍光性材料としでは、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセンもしくはその誘導体、ペリレンもしくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエンもしくはその誘導体、またはテトラフェニルブタジエンもしくはその誘導体などを用いることができる。
具体的には、例えば特開昭57−51781号、同59−194393号公報に記載されているもの等、公知のものが使用可能である。
低分子化合物の燐光材料としては、例えば、イリジウムを中心金属とするIr(ppy)3、Btp2Ir(acac)、白金を中心金属とするPtOEP、ユーロピウムを中心金属とするEu(TTA)3phen等の三重項発光錯体が挙げられる。
Figure 0004915769
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Figure 0004915769
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三重項発光錯体として具体的には、例えばNature, (1998), 395, 151、Appl. Phys. Lett. (1999), 75(1), 4、Proc. SPIE-Int. Soc. Opt. Eng. (2001), 4105(Organic Light-Emitting Materials and DevicesIV), 119、J. Am. Chem. Soc., (2001), 123, 4304、Appl. Phys. Lett., (1997), 71(18), 2596、Syn. Met., (1998), 94(1), 103、Syn. Met., (1999), 99(2), 1361、Adv. Mater., (1999), 11(10), 852 、Jpn.J.Appl.Phys.,34, 1883 (1995)などに記載されている。
本発明の高分子LEDが有する発光層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
発光層の形成方法としては、例えば、溶液からの成膜による方法が例示される。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
印刷法等で用いるインク組成物としては、少なくとも1種類の本発明の光学活性高分子化合物が含有されていればよく、また本発明の光学活性高分子化合物以外に正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、溶媒、安定剤などの添加剤を含んでいてもよい。
該インク組成物中における本発明の光学活性高分子化合物の割合は、溶媒を除いた組成物の全重量に対して20wt%〜100wt%であり、好ましくは40wt%〜100wt%である。
またインク組成物中に溶媒が含まれる場合の溶媒の割合は、組成物の全重量に対して1wt%〜99.9wt%であり、好ましくは60wt%〜99.5wt%であり、さらに好ましく80wt%〜99.0wt%である。
インク組成物の粘度は印刷法によって異なるが、インクジェットプリント法などインク組成物中が吐出装置を経由するもの場合には、吐出時の目づまりや飛行曲がりを防止するために粘度が25℃において1〜20mPa・sの範囲であることが好ましい。
インク組成物として用いる溶媒としては特に制限はないが、該インク組成物を構成する溶媒以外の材料を溶解または均一に分散できるものが好ましい。該インク組成物を構成する材料が非極性溶媒に可溶なものである場合に、該溶媒としてクロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。また、これらの溶媒は、単独で、または複数組み合わせて用いることができる。
また、本発明の高分子LEDとしては、陰極と発光層との間に、電子輸送層を設けた高分子LED、陽極と発光層との間に、正孔輸送層を設けた高分子LED、陰極と発光層との間に、電子輸送層を設け、かつ陽極と発光層との間に、正孔輸送層を設けた高分子LED等が挙げられる。
例えば、具体的には、以下のa)〜d)の構造が例示される。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
本発明の高分子LEDが正孔輸送層を有する場合、使用される正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリピロールもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体などが例示される。
具体的には、該正孔輸送材料として、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示される。
これらの中で、正孔輸送層に用いる正孔輸送材料として、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体等の高分子正孔輸送性材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。
また、低分子化合物の正孔輸送性材料としてはピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体が例示される。低分子の正孔輸送性材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体は、例えばビニルモノマーからカチオン重合またはラジカル重合によって得られる。
ポリシランもしくはその誘導体としては、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第89巻、1359頁(1989年)、英国特許GB2300196号公開明細書に記載の化合物等が例示される。合成方法もこれらに記載の方法を用いることができるが、特にキッピング法が好適に用いられる。
ポリシロキサンもしくはその誘導体は、シロキサン骨格構造には正孔輸送性がほとんどないので、側鎖または主鎖に上記低分子正孔輸送材料の構造を有するものが好適に用いられる。特に正孔輸送性の芳香族アミンを側鎖または主鎖に有するものが例示される。
正孔輸送層の成膜の方法に制限はないが、低分子正孔輸送材料では、高分子バインダーとの混合溶液からの成膜による方法が例示される。また、高分子正孔輸送性材料では、溶液からの成膜による方法が例示される。
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔輸送性材料を溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
溶液からの成膜方法としては、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
正孔輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚としては、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
本発明の高分子LEDが電子輸送層を有する場合、使用される電子輸送性材料としては公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンもしくはその誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、ナフトキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンもしくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンもしくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体等が例示される。
具体的には、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示される。
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、または溶液もしくは溶融状態からの成膜による方法が、高分子電子輸送材料では溶液または溶融状態からの成膜による方法がそれぞれ例示される。溶液または溶融状態からの成膜時には、上記の高分子バインダーを併用してもよい。
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、電子輸送材料および/または高分子バインダーを溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
溶液または溶融状態からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
電子輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子輸送層の膜厚としては、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
また、電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、特に電荷注入層(正孔注入層、電子注入層)と一般に呼ばれることがある。
さらに電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して前記の電荷注入層又は膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。
積層する層の順番や数、および各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜用いることができる。
本発明において、電荷注入層(電子注入層、正孔注入層)を設けた高分子LEDとしては、陰極に隣接して電荷注入層を設けた高分子LED、陽極に隣接して電荷注入層を設けた高分子LEDが挙げられる。
例えば、具体的には、以下のe)〜p)の構造が挙げられる。
e)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
f)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
g)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/陰極
l)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
m)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
o)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
p)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
電荷注入層の具体的な例としては、導電性高分子を含む層、陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送性材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送性材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層などが例示される。
上記電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、該導電性高分子の電気伝導度は、10-5S/cm以上103以下であることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくする
ためには、10-5S/cm以上102以下がより好ましく、10-5S/cm以上101以下がさらに好ましい。
上記電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、該導電性高分子の電気伝導度は、10-5S/cm以上103S/cm以下であることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小
さくするためには、10-5S/cm以上102S/cm以下がより好ましく、10-5S/cm以上101S/cm以下がさらに好ましい。
通常は該導電性高分子の電気伝導度を10-5S/cm以上103以下とするために、該導電性高分子に適量のイオンをドープする。
ドープするイオンの種類は、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。アニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオンなどが例示され、カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンなどが例示される。
電荷注入層の膜厚としては、例えば1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
電荷注入層に用いる材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリキノリンおよびその誘導体、ポリキノキサリンおよびその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖または側鎖に含む重合体などの導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニンなど)、カーボンなどが例示される。
膜厚2nm以下の絶縁層は電荷注入を容易にする機能を有するものである。上記絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子LEDとしては、陰極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子LED、陽極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子LEDが挙げられる。
具体的には、例えば、以下のq)〜ab)の構造が挙げられる。
q)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/陰極
r)陽極/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
s)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
t)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/陰極
u)陽極/正孔輸送層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
v)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
w)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/電子輸送層/陰極
x)陽極/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
y)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
z)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
aa)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
ab)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
本発明の高分子LEDを形成する基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、例えばガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン基板などが例示される。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明または半透明であることが好ましい。
通常本発明の高分子LEDが有する陽極および陰極の少なくとも一方が透明または半透明である。陽極側が透明または半透明であることが好ましい。
該陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、およびそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作成された膜(NESAなど)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nmから10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
また、陽極上に、電荷注入を容易にするために、フタロシアニン誘導体、導電性高分子、カーボンなどからなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよい。
本発明の高分子LEDで用いる陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、およびそれらのうち2つ以上の合金、あるいはそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイトまたはグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などが挙げられる。陰極を2層以上の積層構造としてもよい。
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nmから10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。また、陰極と有機物層との間に、導電性高分子からなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよく、陰極作製後、該高分子LEDを保護する保護層を装着していてもよい。
該高分子LEDを長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層および/または保護カバーを装着することが好ましい。
該保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物などを用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板などを用いることができ、該カバーを熱効果樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子がキズつくのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にタメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
本発明の高分子LEDは面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置のバックライトとして用いることができる。
本発明の高分子LEDを用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極または陰極のいずれか一方、または両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にOn/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号などを表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子蛍光体を塗り分ける方法や、カラーフィルターまたは蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFTなどと組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダーなどの表示装置として用いることができる。
さらに、前記面状の発光素子は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、あるいは面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
また、本発明の前記光学活性高分子化合物は単独で、または正孔輸送材料、電子輸送材料および発光材料から選ばれる少なくとも1種類の材料との混合物として、発光性薄膜、導電性薄膜および有機半導体薄膜などの有機薄膜に用いることができる。
ここで、発光性薄膜とは、熱、電気、光などの作用によって発光する薄膜のことである。
導電性薄膜および有機半導体薄膜とは、材料そのものが、あるいは種々の元素やイオンのドープによって導電特性または半導体特性を示す薄膜のことである。
これらの有機薄膜は、その電気特性、光特性などの物理的特性を生かし、有機レーザー、有機太陽電池、有機トランジスタなどに使用することができる。
本発明の発光性薄膜は前記本発明の光学活性高分子化合物を含有する。
本発明の導電性薄膜は前記本発明の光学活性高分子化合物を含有する。
本発明の有機半導体薄膜は、前記本発明の光学活性高分子化合物を含有する。
本発明の組成物は、前記本発明の上記光学活性高分子化合物と、正孔輸送材料、電子輸送材料および発光材料から選ばれる少なくとも1種類の材料とを含むことを特徴とする。
これは、発光材料や電荷輸送材料として用いることができる。本発明の組成物は、本発明の光学活性高分子化合物を2種以上含有していてもよい。
本発明の光学活性高分子化合物と、正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料から選ばれる少なくとも1種類の材料と本発明の含有比率は、用途に応じて決めればよいが、発光材料の用途の場合は、上記の発光層におけると同じ含有比率が好ましい。
本発明のインク組成物は、前記本発明の光学活性高分子化合物を含有することを特徴とする。
インク組成物としては、少なくとも1種類の光学活性高分子化合物が含有されていればよく、本発明の光学活性高分子化合物以外に正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、溶媒、安定剤などの添加剤を含んでいてもよい。
該インク組成物中における本発明の光学活性高分子化合物の割合は、溶媒を除いた組成物の全重量に対して通常20wt%〜100wt%であり、好ましくは40wt%〜100wt%である。
またインク組成物中に溶媒が含まれる場合の溶媒の割合は、インク組成物の全重量に対して通常1wt%〜99.9wt%であり、好ましくは60wt%〜99.5wt%であり、さらに好ましく80wt%〜99.0wt%である。
インク組成物の粘度は印刷法によって異なるが、インクジェットプリント法などインク組成物中が吐出装置を経由するもの場合には、吐出時の目づまりや飛行曲がりを防止するために粘度が25℃において1〜20mPa・sの範囲であることが好ましい。
インク組成物として用いる溶媒としては特に制限はないが、該インク組成物を構成する溶媒以外の材料を溶解または均一に分散できるものが好ましい。該インク組成物を構成する材料が非極性溶媒に可溶なものである場合に、該溶媒としてクロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。また、これらの溶媒は、単独で、または複数組み合わせて用いることができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ここで、数平均分子量については、クロロホルムを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の数平均分子量を求めた。
キラルジハロゲン化物の合成
以下に示す合成ルートに従って、キラル2,7-ジブロモ-トランス-9,10-ジヒドロ-9,10-ビス(トリブチルシリルオキシ)フェナントレンを合成した。

Figure 0004915769
1.4,4'-ジブロモ-2,2'-ジカルボキシ-1,1'-ビフェニル()の合成
2-アミノ-5-ブロモ安息香酸()(5.47g, 25.3mmol)に水(20mL)と塩酸水(9mL)を加え0℃に冷却、さらに硝酸ナトリウム(2.10g,30.4mmol)を加え1時間攪拌した。その後、copper(II) sulfate pentahydrate(12.6g, 50.5mmol)を水(45mL)に溶かし、30%アンモニア水(22mL)を加えた溶液に水酸化アンモニウムクロライド(3.76g, 55.7mmol)の6N-水酸化ナトリウム (9mL)溶液を0℃で加え、攪拌した。その溶液に、ジアゾ化した溶液をcopper溶液の液面より下から30分かけ滴下した。さらに室温に戻し2時間攪拌、1時間加熱した。
塩酸で溶液を酸性にした後、吸引ろ過、乾燥した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することで4,4'-ジブロモ-2,2'-ジカルボキシ-1,1'-ビフェニル() (4.5g, 11.3mmol, 90%)を黄色粉末として得た。得られた粉末を、クロロホルムにより再結晶化させることで白色盤状結晶を得た。
物性値
1H NMR(CD3OD, 400MHz)
δ(ppm)=8.10(d,J=1.95Hz,2H,Ha) 7.69(dd,J=1.95,8.30Hz,2H,Hb) 7.10(d,J=8.30Hz, 2H,Hc)
IR(KBr) 3099, 1708, 1585, 1417, 1298, 1281, 1248, 1096, 1003, 826 (cm-1)
上記物性値中、Ha、Hb、Hcは、ベンゼン環に結合している水素に帰属される。(以下の記述においても同様)
2.4,4'-ジブロモ-2,2'-ビス(メトキシカルボニル)-1,1'-ビフェニル(3)の合成
窒素雰囲気下、4,4'-ジブロモ-2,2'-ジカルボキシ-1,1'-ビフェニル(0.18g, 0.46mmol)に炭酸カリウム (0.84g, 6.00mmol)、 アセトン(25mL)、ヨウ化メタン(170μL, 2.73mmol)を加え2時間還流した。
クロロホルムで抽出、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=1:1)で精製することで黄色粉末である4,4'-ジブロモ-2,2'-ビス(メトキシカルボニル)-1,1'-ビフェニル(3) (0.18g, 0.42mmol, 91%)を得た。
得られた粉末を、クロロホルム−ヘキサン混合溶媒により再結晶化させることで白色盤状結晶を得た。
物性値
1H NMR(CDCl3, 400MHz)
δ(ppm)=8.16(d,J=1.95Hz,2H,Ha) 7.66(dd,J=1.95,8.30Hz,2H,Hb) 7.04(d,J=8.30Hz, 2H,Hc) 3.66(s, 6H, -CH3)
IR(KBr) 1730, 1716, 1434, 1294, 1278, 1244, 1148, 1095, 971, 832 (cm-1)
3.4,4'-ジブロモ-2,2'-ビス(ヒドロキシメチル)-1,1'-ビフェニル(4)の合成
窒素雰囲気下、4,4'-ジブロモ-2,2'-ビス(メトキシカルボニル)-1,1'-ビフェニル (3.24g, 7.56mmol)を乾燥エーテル(42mL)に溶解させ、0℃で攪拌した。さらに水素化リチウムアルミニウム (0.64g, 16.9mmol)を加え、6時間攪拌した。
酢酸エチルで抽出、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することで白色粉末である4,4'-ジブロモ-2,2'-ビス(ヒドロキシメチル)-1,1'-ビフェニル(4) (2.60g, 6.98mmol, 92%)を得た。得られた粉末を、クロロホルム−ヘキサン混合溶媒により再結晶化させることで白色針状結晶を得た。
物性値
1H NMR(DMSO, 400MHz)
δ(ppm)=7.69(d,J=1.71Hz,2H,Ha) 7.47(dd,J=2.20,8.05Hz,2H,Hb) 7.02(d,J=8.05Hz, 2H,Hc) 5.23(t, J=5.37Hz,2H, -OH) 4.15,4.05(dd,J=5.61, 14.1Hz,2H,-CH2-)
IR(KBr) 3454, 3320, 1656, 1611, 1567, 1542, 1222, 1161, 957, 822 (cm-1)
4.4,4'-ジブロモ-ビフェニル-2,2'-ジカルブアルデヒド (5)の合成
窒素雰囲気下、−78℃で乾燥ジクロロメタン (30mL)に蓚酸ジクロライド (1.11mL, 12.9mmol)、硫酸ジメチル (2.00mL, 28.2mmol)を加え1時間攪拌した。その後、 4,4'-ジブロモ-2,2'-ビス(ヒドロキシメチル)-1,1'-ビフェニル (2.10g, 5.64mmol)、トリエチルアミン(7.86mL, 56.4mmol)を加え2時間攪拌した。
酢酸エチルで抽出、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=2:1)で精製することで黄色粉末である4,4'-ジブロモ-ビフェニル-2,2'-ジカルブアルデヒド (5) (1.87g, 5.08mmol, 90%)を得た。得られた粉末を、クロロホルム−ヘキサン混合溶媒により再結晶化させることで白色盤状結晶を得た。
物性値
1H NMR(CDCl3, 400MHz)
δ(ppm)=9.77(s,2H,-CHO) 8.17(d,J=2.44Hz,2H,Ha) 7.80(dd,J=2.44,8.30Hz,2H,Hb) 7.21(d,J=8.30Hz,2H,Hc)
IR(KBr) 1693, 1682, 1583, 1457, 1389, 1179, 1086, 877, 833, 677 (cm-1)
5.2,7-ジブロモ-トランス-9,10-ジヒドロフェナントレン-9,10-ジオール (6)
の合成
窒素雰囲気下、−78℃で4,4'-ジブロモ-ビフェニル-2,2'-ジカルブアルデヒド (2.70g, 7.33mmol) を乾燥テトラヒドロフラン(60mL)に溶解させた溶液に、titanium(IV)chloride (1.21mL, 11.0mmol)を滴下し、30分後、亜鉛(1.44g, 22.0mmol)を加え0℃に戻して3時間攪拌した。
酢酸エチルで抽出、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製することで白色粉末である2,7-ジブロモ-トランス-9,10-ジヒドロフェナントレン-9,10-ジオール (6) (2.17g, 5.86mmol, 80%)を得た。得られた粉末を、クロロホルム−ヘキサン混合溶媒により再結晶化させることで白色針状結晶を得た。
物性値
1H NMR(DMSO-d, 400MHz)
δ(ppm)=7.76(d,J=8.29Hz,2H,Hc) 7.71(dd,J=2.20,8.29Hz,2H,Hb) 7.55(d,J=2.20Hz,2H,Ha) 5.88(s, 2H,-benzylH) 4.47(s,2H,-OH)
IR(KBr) 3349, 1459, 1416, 1193, 1141, 1084, 1027, 805, 633, 446 (cm-1)
6.2,7-ジブロモ-トランス-9,10-ジヒドロフェナントレン-9,10-ジオール (6)の光学分割
2,7-ジブロモ-トランス-9,10-ジヒドロフェナントレン-9,10-ジオール (6)の光学分割は以下の方法で行った。カラムにCHIRALPAK AD(ダイセル化学工業製)を用い、移動相にはヘキサン/2−プロパノール混合液(8:2)を用いて、光学異性体を分取した。1.45gの2,7-ジブロモ-トランス-9,10-ジヒドロフェナントレン-9,10-ジオール (6)から、光学異性体2成分を633mg(以後P−1と呼ぶ、光学純度98.6%ee)、643mg(以後P−2と呼ぶ、光学純度98.5%ee)で取得した。
7.キラル2,7-ジブロモ-トランス-9,10-ジヒドロ-9,10-ビス(トリブチルシリルオキシ)フェナントレン (7)の合成
窒素雰囲気下、光学分割した2,7-ジブロモ-トランス-9,10-ジヒドロフェナントレン-9,10-ジオール(P−1,370mg, 1.0mmol)をdry THF(6mL)に溶解させた溶液に、クロロトリブチルシラン(0.58mL, 2.2mmol)、つづいて1,8-ジアザビシクロ-[5,4,0]-7-アンデセン(0.37mL, 2.5mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。
酢酸エチルで抽出、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=1:3)で精製することで白色オイルである2,7-ジブロモ-トランス-9,10-ジヒドロ-9,10-ビス(トリブチルシリルオキシ)フェナントレン (7) (0.67g, 88%)を得た。
物性値
オイル
1H NMR(CDCl3, 300MHz)
δ(ppm)= 7.50(m, 6H), 4.57(s, 2H) 1.25(m,24H), 0.85(t, 18H) 0.59 (m,12H)

Figure 0004915769
高分子化合物の合成
以下の示すようにして、ジハロゲン化物であるキラル2,7-ジブロモ-トランス-9,10-ジヒドロ-9,10-ビス(トリブチルシリルオキシ)フェナントレン (7)から高分子化合物を合成した。
窒素雰囲気下、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)(299mg, 1.1mmol)にdry DMF(3mL)、2,2'-ビピリジン(170mg, 1.1mmol)、1,5-シクロオクタジエン(0.13mL, 1.1mmol)を加え、キラル2,7-ジブロモ-トランス-9,10-ジヒドロ-9,10-ビス(トリブチルシリルオキシ)フェナントレン(379mg, 0.49mmol)のdry DMF(2mL)を1時間かけて滴下して加え、その後60℃で5日間攪拌した。臭化水素酸でクエンチした後、高分子化合物を再沈殿させた。得られた沈殿を水、メタノールで2度洗浄を行なった後、EDTA-4Na(aq)で洗浄を行なった。その後、クロロホルムに溶解させた沈殿物をアセトン、メタノールで再沈殿の操作を繰り返し、得られた沈殿物を減圧乾燥することで光学活性高分子化合物(以後、キラルポリマーと呼ぶ)を80%の収率で得た。
以下に構造式を示す。
1H NMR(CDCl3, 400MHz)
δ(ppm)= 7.87-7.73(br, 6H), 4.73(s, 2H) 1.27(br,24H), 0.84(bt, 18H) 0.64(m,12H)
(図1)
Figure 0004915769

円偏光二色性スペクトルの測定
測定サンプルは、無蛍光ガラス基板上にクロロホルム溶液よりキャスト法を用いて作成を行なった。
膜厚は、UV-VIS吸収スペクトルの吸光度が1.8程度のフィルムになるように調整した。測定範囲は、600nmから200nmまで行い、積算回数は2回、走査速度は50nm/min、サンプリングピッチは、0.1nmで測定した。
キラルポリマーの測定結果を図2に示す。
比較例として、2,7-ジブロモ-トランス-9,10-ジヒドロフェナントレン-9,10-ジオール (6)の光学分割を行わないで2,7-ジブロモ-トランス-9,10-ジヒドロ-9,10-ビス(トリブチルシリルオキシ)フェナントレンを合成し、キラル高分子化合物の合成と同様の手順で得た高分子化合物(以後、ラセミポリマーと呼ぶ)の円偏光二色性スペクトルの測定を行った。ラセミポリマーの場合は、キラルポリマーと比べて無視できる円偏光二色性が観測されただけであった。
キラルポリマーとラセミポリマーを比較すると、ラセミポリマーの膜はひび割れてぼこぼこした膜が得られるが、キラルポリマ−の製膜性は良いことが分った。
蛍光スペクトルの測定
蛍光スペクトルの測定は以下の方法で行った。キラルポリマーの0.8wt%トルエンまたはクロロホルム溶液を石英上にスピンコートして高分子化合物の薄膜を作製した。この薄膜を350nmの波長で励起し、蛍光分光光度計(堀場製作所製Fluorolog)を用いて蛍光スペクトルを測定した。426、453、482nmにピークトップを有するスペクトルが観測された。
素子作製評価
スパッタ法により百数十nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(バイエル社、BaytronP)を用いてスピンコートにより50nmの厚みで成膜し、ホットプレート上で200℃で10分間乾燥する。次に、上記で得たキラルポリマーを3.0wt%となるように調製したトルエン溶液を用いてスピンコートにより800rpmの回転速度で成膜する。膜厚は約60nmであった。さらに、これを減圧下80℃で1時間乾燥した後、陰極バッファー層として、LiFを約4nm、陰極として、カルシウムを約5nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して、EL素子を作製する。なお真空度が、1×10-4Pa以下に到達したのち、金属の蒸着を開始する。得られた素子に電圧を印加することによりEL発光が得られる。EL発光の強度は電流密度にほぼ比例している。
本発明の光学活性高分子化合物を含む層を、陽極および陰極からなる電極間に有する本発明の高分子発光素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックッス表示装置、液晶表示装置などに用途に適用できる。
キラルポリマーのCDCl3中の1H−NMRスペクトルを示す。 キラルポリマーの無蛍光板上に作製したキャストフィルムのUV−visスペクトルの吸光度およびCDスペクトルを示す。

Claims (15)

  1. 下式(1)で示される繰り返し単位を主鎖中に含み、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108である光学活性高分子化合物。
    Figure 0004915769

    (式中、R2はアルキル基、または置換基を有するシリル基を示し、R3は水素原子またはアルキル基を示す。2個のR2および2個のR3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。*は不斉炭素原子を示す。)
  2. 陽極および陰極からなる電極間に、請求項1記載の光学活性高分子化合物を含む層(A)を有することを特徴とする高分子発光素子。
  3. 層(A)が発光層であることを特徴とする請求項2記載の高分子発光素子。
  4. 層(A)がさらに正孔輸送材料、電子輸送材料または発光材料を含むことを特徴とする請求項2または3記載の高分子発光素子。
  5. 請求項2〜4のいずれかに記載の高分子発光素子を用いたことを特徴とする面状光源。
  6. 請求項2〜4のいずれかに記載の高分子発光素子を用いたことを特徴とするセグメント表示装置。
  7. 請求項2〜4のいずれかに記載の高分子発光素子を用いたことを特徴とするドットマトリックス表示装置。
  8. 請求項2〜4のいずれかに記載の高分子発光素子をバックライトとすることを特徴とする液晶表示装置。
  9. 請求項1に記載の高分子化合物を含有する発光性薄膜。
  10. 請求項1に記載の高分子化合物を含有する導電性薄膜。
  11. 請求項1に記載の高分子化合物を含有する有機半導体薄膜。
  12. 請求項1に記載の高分子化合物と、正孔輸送材料、電子輸送材料および発光材料から選ばれる少なくとも1種類の材料とを含むことを特徴とする組成物。
  13. 請求項1に記載の高分子化合物を含有することを特徴とするインク組成物。
  14. 25℃における粘度が1〜20mPa・sであることを特徴とする請求項13記載のインク組成物。
  15. (2)で示される光学活性化合物を重合して得られる請求項1記載の光学活性高分子化合物。
    Figure 0004915769
    (式中、R 2 、R 3 および*は上記と同じ意味を示す。R 1 は重合に関与する置換基を表す。)
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