JP4913289B2 - カスパーゼ阻害剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、虚血性疾患および神経変性疾患の治療剤およびその利用に関する。より詳しくは、神経芽腫細胞(Neuro2a)のカスパーゼ阻害作用を有し、アポトーシス抑制作用を有する虚血性疾患および神経変性疾患治療剤を配合してなる医薬用組成物関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、虚血性疾患例えば脳梗塞、心筋梗塞など、さらには神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病などは、アポトーシスの亢進が病態と関連していることが知られている。細胞のアポトーシスをともなう疾病に対し、直接その細胞のアポトーシスを抑制することにより前記疾病を予防あるいは治療する薬剤は広く探索されているが、実用上有効な薬剤は未だ見い出されていない。このため、虚血性疾患および神経変性疾患治療薬及び予防効果のある機能性食品の開発が切望されている。
【0003】
わが国における虚血性疾患および脳神経疾患は人口の高齢化に伴い増えつつある、とりわけ脳梗塞やアルツハイマー型痴呆等の脳神経疾患が急増している。これら神経疾患においては、神経細胞のアポトーシスの亢進すなわちカスパーゼの活性化が要因の一つとして深く関わっていることが示唆されている(実験医学Vol.18,p1774,2000)。神経疾患以外の病態として心筋梗塞、エイズ、アルコール性肝炎などにおいても細胞のアポトーシス亢進が病態の発現につながっていると考えられている(Science,Vol.267,1456,2000)。アポトーシスを制御するカスパーゼの阻害剤の開発は上記疾患の治療薬としても有用であると考えられる。
【0004】
これに関連して、β−アミロイド蛋白や抗ガン剤により惹起される神経細胞のカスパーゼファミリーを阻害する作用をもつものとして合成ペプチド阻害薬が知られている。
一方、高等植物や藻類の組織に存在する糖脂質については、その生理活性面では解明されていない部分が多く、報告類も少ないのが実情である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、脳神経細胞の細胞死を伴うことなく該細胞の増殖能を抑制し、かつ分化誘導を促進させることより虚血性疾患および神経変性疾患の領域において治療効果をもたらすカスパーゼ阻害剤、及び、このカスパーゼ阻害剤を利用した医薬用組成物ならびに食用組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決するために、種々の海苔、藻類や陸生緑植物に存在する糖脂質についてマウス神経細胞腫由来の神経系樹立細胞であるNeuro2a細胞に細胞死誘導剤である各種抗ガン剤を添加しカスパーゼを活性化させ、その阻害効果を検討したところ、スルホキノボシルジアシルグリセロール(以下、「SQDG」とも云う)、モノガラクトシルグリセロール(以下、「MGDG」とも云う)およびジガラクトシルグリセロール(以下、「DGDG」とも云う)にカスパーゼ阻害活性を見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、次に示す式(III)で表されるDGDGを有効成分としてなるカスパーゼ阻害剤によって前記課題を解決できる。
【0010】
【化3】
Figure 0004913289
【0011】
(ただし、式(III)においてR1およびR2は炭素数が14以上22以下であり、二重結合の数が0以上6以下の脂肪酸のアルキル残基またはアルケニル残基である。)
【0012】
上記DGDGにおいて、これらを構成する脂肪酸残基(上記の式(III)のなかのR1およびR2がミリスチン酸、パルミチン酸(以上、飽和脂肪酸)、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ジホモガンマリノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸(以上、一価あるいは多価の不飽和脂肪酸)からなる群から選ばれる脂肪酸のアルキル残基またはアルケニル残基であることが望ましく、それぞれの式中のR1およびR2が同じものであっても異なるものであっても良い。
【0013】
また、本発明におけるDGDGは天然物由来のものでも化学合成したものでもさしつかえないが、例えば、藍藻類、紅藻類、褐藻類または緑藻類に属する藻類もしくはホウレン草などの陸生緑植物を原料として、これから有機溶剤を用いて抽出して得られるものを適宜に精製処理を施して用いることが好ましい。
【0014】
本発明のカスパーゼ阻害剤において、脳神経細胞に関する賦活作用が脳神経細胞の外傷および変性要因による障害、代謝性要因による障害、β−アミロイド蛋白質による障害または脳虚血性要因による障害を予防する作用あるいは治癒する作用であるものを対象にするのがよい。
さらに、本発明によれば、前記のカスパーゼ阻害剤を有効成分として配合してなる医薬用組成物よって前記課題を解決できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明において、SQDG、MGDG、DGDGはそのナトリウム塩やカリウム塩等の薬学的に許容され得る塩を対象に含むものとする。
【0016】
本発明に用いられる糖脂質はグリセロール骨格の1位もしくは2位に炭素数14以上22以下の飽和脂肪酸ならびに不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として有する。飽和脂肪酸の主なものはミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等であり、不飽和脂肪酸の主たるものとして、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸(ω3)、オクタデカテトラエン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等を例示できる。グリセロール骨格の1位および2位の構成脂肪酸の種類はとくに限定されるものではないが、前記の式(I)、(II)、(III)において、それぞれのR1およびR2はミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ジホモガンマリノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸からなる群から選ばれる脂肪酸のアルキル残基またはアルケニル残基であるものが望ましく、R1およびR2は同じものであっても、異なるものであっても良い。
【0017】
なお、本発明に用いる糖脂質を天然物から採取するには、原料として藍藻類(Anabaena variabilis、Anacystis nidulans、Spirulina platensis:スピルリナ等)、紅藻類(Porphyra yez oensis:スサビノリ、Gelidium amansii:マクサ、Gigartina tenella:スギノリ、Gracilaria verrucosa:オゴノリ等)、褐藻類(Undariapinnatifida:ワカメ、Hizikia fusiformis:ヒジキ、Laminaria japonica:マコンブ、Sargassum
horneri:アカモク等)または緑藻類(Chlamidomonas
sp.:クラミドモナスの一種、Enteromorpha sp.:アオサの一種、Chlorella sp.:クロレラ等)に属する藻の藻体を用いるのが好適である。また、ホウレンソウや大麦の葉等の陸生植物を原料とすることもできる。
【0018】
これらの藻類から得られる糖脂質の構成脂肪酸は、脂質の1位及び2位に飽和脂肪酸もしくは多価不飽和脂肪酸を有するするものが多い。本発明ではこのようなタイプのものが好ましい。例えば、紅藻類のアマノリ属スサビノリの場合、その構成脂肪酸は1位にエイコサペンタエン酸、2位にパルミチン酸がそれぞれ多く存在する(Jap.J.Phycol.,Vol.34,p94,1986)。紅藻類のオゴノリ属オゴノリの場合は、1位にアラキドン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸が主として存在し、2位にパルミチン酸が多く存在する(Hydrobiol.,Vol.204/205,p513,1990)。紅藻類のツノマタ属ツノマタでは、1位にミリスチン酸、パルミチン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸を、2位にパルミチン酸を主成分として含む。ヒジキ、ワカメなどの褐藻類では、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が多く、また、エイコサペンタエン酸やアラキドン酸も存在する(Plant Cell Physiol,Vol.32,p623,1991)。
【0019】
本発明に用いられるSQDG、MGDG、DGDGは、以下のようにして調製することができる。すなわち、前記原料を適宜に細断ないしは粉砕し、ヘキサン、クロロホルム、アセトン、メタノール、エタノール等の脂質成分抽出用有機溶媒を用いて抽出処理し、該抽出液から溶媒を除去して全脂質を得る。ついで、シリカゲル、アルミナ、セファデックス、逆相吸着剤(オクタデシルシリル化シリカゲル等)、イオン交換樹脂等を用いたカラムクロマトグラフィーで分画処理して濃縮画分を採取し、さらに必要に応じて濃縮精製し、最終的には薄層クロマトグラフィーにより精製処理して目的物である糖脂質を調製することができる。
【0020】
本発明では、このようにして得られる糖脂質含有物中のSQDG、MGDG及びDGDGは充分に高い純度であるため、そのままカスパーゼ阻害剤として使用できる。あるいは、デンプン、デキストリン、セルロース等の公知の賦形剤を混合、形成して本発明の阻害剤となすことも可能である。
【0021】
前述のSQDG、MGDG、DGDGを有効成分としてなる本発明のカスパーゼ阻害剤は、脳神経細胞を賦活し、細胞死を誘発することなくその増殖を抑制して分化を促進する。すなわち、神経細胞賦活因子として代表的なレチノイン酸は、Neuro2a細胞を刺激して神経細胞様に分化せしめ、神経突起を伸展させる作用を有するが、本発明のカスパーゼ阻害剤は単独作用においてNeuro2a細胞を神経細胞様に分化せしめ、神経突起を伸展させる作用が顕著である。
【0022】
また、SQDG、MGDG、DGDGを有効成分としてなる本発明の阻害剤は脳神経細胞の外傷性または変性要因、代謝性要因、β−アミロイド蛋白質、脳虚血性要因等の種々の要因による障害に対して予防作用あるいは治癒作用を有する。この一例として、β−アミロイド蛋白質の活性部位を抜き出したモデルペプチドであるβ25−35が惹起する神経細胞への細胞死および抗ガン剤エトポシド惹起の細胞死を濃度依存的に軽減する。なお、β−アミロイド蛋白質は、アルツハイマー病患者の脳に沈着するアミロイドを構成する蛋白質であり、アルツハイマー病の原因の一つであると考えられている(「医学のあゆみ」、Vol.174,p614−618,1995)。このことから、本発明の糖脂質含有賦形剤は、β−アミロイド蛋白質の毒性に起因する脳神経細胞の障害に対しても保護作用を有することが明らかとなった。
【0023】
次に、本発明のカスパーゼ阻害剤を配合してなる医薬用組成物および食用組成物について説明する。SQDG、MGDG、DGDGを有効成分としてなる本発明の前記阻害剤は、これをそのまま、あるいは慣用の医薬製剤担体とともに医薬用組成物となし、動物およびヒトに投与することができる。医薬用組成物の剤形としては特に制限されるものではなく、必要に応じて適宜に選択すればよいが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤、注射剤、坐剤等の非経口剤があげられる。投与量は、通常、成人で糖脂質(SQDG、MGDG及びDGDGの合計量)の重量として1日あたり20mg以上600mg以下を数回に分けて服用するのが適当である。
【0024】
本発明において錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤としての経口剤は、例えば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を用いて常法に従って製造される。これらの製剤中の糖脂質の配合量は特に限定されるものではなく適宜設計できる。この種の製剤には本発明の阻害剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を適宜に使用することができる。
【0025】
ここに、結合剤としてデンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等を例示できる。崩壊剤としてはデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース等を例としてあげることができる。界面活性剤の例としてラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等をあげることができる。滑沢剤では、タルク、ロウ類、水素添加植物油、蔗糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコール等を例示できる。流動性促進剤では、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等を例としてあげることができる。また、糖脂質は懸濁液、エマルション剤、シロップ剤、エリキシル剤としても投与することができ、これらの各種剤形には、矯味矯臭剤、着色剤を含有させてもよい。
【0026】
非経口剤として本発明の所望の効果を発現せしめるには、患者の年齢、体重、疾患の程度により異なるが、通常、成人で糖脂質の重量として1日あたり1〜60mgの静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射が適当である。この非経口投与剤は常法に従って製造され、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、大豆油、トウモロコシ油、プロピレングリコール等を用いることができる。さらに必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、安定剤を加えてもよい。また、この非経口剤は安定性の点から、バイアル等に充填後冷凍し、通常の凍結乾燥処理により水分を除き、使用直前に凍結乾燥物から液剤を再調製することもできる。さらに必要に応じて、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤を加えてもよい。これら製剤中の糖脂質の配合量は特に限定されるものではなく任意に設定できる。その他の非経口剤の例として、外用液剤、軟膏等の塗布剤、直腸内投与のための坐剤等があげられ、これらも常法に従って製造される。
【0027】
本発明の他の組成物の好適な態様は食用組成物である。すなわち、前述のようにして得られるSQDG、MGDG、DGDGを有効成分としてなるカスパーゼ阻害剤は、これをそのまま液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えばジュース、清涼飲料、茶、スープ、豆乳、サラダ油、ドレッシング、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、ケーキミックス、粉末状または液状の乳製品、パン、クッキー等に添加したり、必要に応じてデキストリン、乳糖、澱粉等の賦形剤や香料、色素等とともにペレット、錠剤、顆粒等に加工したり、またゼラチン等で被覆してカプセルに成形加工して健康食品や栄養補助食品等として利用できる。
【0028】
これらの食品類あるいは食用組成物における本発明のカスパーゼ阻害剤の配合量は、当該食品や組成物の種類や状態等により一律に規定しがたいが、約0.01〜50重量%、より好ましくは0.1〜30重量%である。配合量が0.01重量%未満では経口摂取による所望の効果が小さく、50重量%を超えると食品の種類によっては風味を損なったり当該食品を調製できなくなる場合がある。なお、本発明のカスパーゼ阻害剤は、これをそのまま食用に供してもさしつかえない。
【0029】
本発明の医薬用組成物および食用組成物は、脳神経細胞の障害を予防あるいは治癒をねらいとして利用するものであれば、それを使用する上で何ら制限を受けることなく適用されるが、とりわけ外傷性、変性による脳神経細胞障害、代謝性の要因による脳神経細胞障害、脳虚血性脳神経細胞障害、パーキンソン病またはダウン症による脳神経細胞障害等の治癒に対して有効である。また、これらの疾患の予防措置の手段としても使用することが可能である。
【0030】
【実施例】
以下に本発明のカスパーゼ阻害剤について具体的に説明する。
[粗抽出 (粗抽出液A)]
スサビノリの乾燥物(約3g)を細断し、クロロホルム/メタノール(1:1,v/v、以下とくに断らないかぎり同様。)100mlを加え、ホモジナイザー中で室温下15分間抽出処理を行った。同様の操作をさらに2回繰り返し、抽出液を集め、細かい抽出残渣を濾過して除去した後、分液漏斗に移し、Bligh−Dyer法に従ってクロロホルム層と水−メタノール層とに分離した。クロロホルム層を採り、減圧下で濃縮、乾固して乾固物を得た(抽出量54mg、収率1.8%)。この乾固物を少量のクロロホルム/メタノール(1:4)に溶解させ、これを脂質の粗抽出液Aとした。
【0031】
[粗抽出 (粗抽出液B)]
上記粗抽出液Aの粗抽出において、クロロホルム/メタノール(1:1)100mlに代えてヘキサン/エタノール(1:1)60mlを用い、50℃にて2時間抽出処理した以外は同様に処理し、抽出乾固物(抽出量35mg、収率1.2%)を得た。この乾固物を少量のクロロホルム/メタノール(1:4)に溶解させ、脂質の粗抽出液Bとした。
【0032】
[粗抽出液Aからの精製]
1mol/L酢酸ナトリウム水溶液で酢酸型としてメタノールに懸濁させたDEAE−Toyopeal(東ソー社製)を内径10mmのガラスカラムに約50mmの高さに充填し、クロロホルム/メタノール(1:4)100mlで前記カラムを洗浄した。これに上記に記載の方法で2バッチ処理して得た粗抽出液Aを添加し、クロロホルム/メタノール(1:4)100mlで溶出させフラクション1を得た。次に、5mol/L酢酸アンモニウム水溶液0.5mlを添加したクロロホルム/メタノール(1:4)100mlで溶出させフラクション2を得た。
【0033】
イアトロビーズ(Iatron Lab.社製)をメタノール懸濁させ内径10mmのガラスカラムに約50mmの高さに充填し、50mlのメタノールと50mlのクロロホルムで順次カラムを洗浄した。濃縮・乾固したフラクション1の濃縮乾固物をクロロホルムに溶解させ、前記イアトロビーズカラムに添加した。まず、クロロホルム/アセトン(20:5)50mlで溶出させフラクション3を得た。ついで、アセトン100mlさらにメタノール50mlを流し、順次カラム内に残留する脂質を溶出させ、アセトン溶出画分(フラクション4)およびメタノール溶出画分(フラクション5)を得た。
【0034】
上記で得たフラクション2〜5の各画分を減圧下で濃縮し、少量のクロロホルム/メタノール(1:1)に溶解させ、これを脂質類の分析用試料とした。各分析用試料を薄層クロマトグラフィー(TLC)に供して同定を行った。なお、TLCの展開溶媒の組成は、それぞれフラクション2ではクロロホルム/アセトン/メタノール/酢酸/水=50:20:10:15:5、フラクション3ではヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸=80:20:0.5、フラクション4および5ではともにクロロホルム/メタノール/水=70:21:3である。
各フラクションに含まれる脂質の組成を表1に示す。
【0035】
【表1】
Figure 0004913289
【0036】
以上の実験を定量化して行い、その結果から、原料(スサビノリ乾燥物)中の脂質成分の組成を求めたところ、SQDG:17.0%、MDGD:10.5%、DGDG:25.4%、PG:21.5%、PC:15.7%、PE:微量、TG:3.0%、その他:6.8%であった。
【0037】
上記で得たフラクション2および4のTLCプレートからSQDG、MGDG、DGDGそれぞれに相当するスポットをかきとり、クロロホルム/メタノール(1:1)に溶解させ、濾過および溶媒除去してほぼ純品の3種の糖脂質を得た。ついで、これらを常法により塩酸加水分解処理、またはリゾプス デレマー(Rhizopus delemar)由来のリパーゼ(シグマ社製試薬)を用いて酵素加水分解処理して、前者からSQDGの1位および2位の構成脂肪酸、後者から1位の構成脂肪酸を遊離せしめた。各々のメチルエステル化処理を経てガスクロマトグラフィー(GC)分析に供した。
【0038】
この結果、SQDGの1位を構成する主な脂肪酸はエイコサペンタエン酸:91.0%、アラキドン酸:1.8%、パルミチン酸:4.6%であり、2位の主な構成脂肪酸はパルミチン酸:92.5%、オレイン酸:2.8%であった。MGDGの1位を構成する主な脂肪酸はエイコサペンタエン酸:85.0%、パルミチン酸:8.6%であり、2位の主な構成脂肪酸はエイコサペンタエン酸:60.0%、パルミチン酸:20.0%であった。一方、DGDGの1位を構成する主な脂肪酸はエイコサペンタエン酸:86.4%、パルミチン酸:9.0%であり、2位の主な構成脂肪酸はパルミチン酸:76.0%、オレイン酸:9.2%、リノール酸8.6%であった。
【0039】
[カスパーゼ−阻害活性の検証]
神経芽腫細胞のモデル細胞であるNeuro2a細胞は、マウス神経芽細胞腫より樹立された細胞株であり、レチノイン酸に応答して神経突起を伸展し、神経細胞様に分化する。そこで、このNeuro2a細胞(理化学研究所から分譲)をT−25培養フラスコ中で静置培養し、SQDG、MGDG、DGDGの神経突起伸展作用、すなわち分化誘導能を検討した。培養液はDMEM培地(ダルベッコ社)に10%(v/v)馬血清を含み、37℃、5%二酸化炭素混有空気中でpH7.2〜7.4に保った。上記で調整したMGDG、DGDG及びSQDGは、ジメチルスルホキシドにそれぞれ溶解し、ミリポアフィルター(0.2μm)にて濾過滅菌後、Neuro2a(ニューロツーエー)細胞培養液に最終的な濃度(最終濃度)が1、10μmol/Lとなるように添加した。また、同時にエトポシド(最終濃度50μmol/L)も添加した。
【0040】
24時間培養後、Tripsin−EDTA処理し遠心分離により細胞を回収した。細胞は抽出用の緩衝液(25mmol/L−Hepes、5mmol/L−EDTA、5mmol/L−EGTA、1mmol/L−MgCl2、100mmol/L−DTT、10μg/ml−PepstatinA、10μg/mlLeupeptin、1mmol/L−PMSF、pH7.5)に懸濁し、ボルテックスミキサーによって撹拌後、さらに超音波破砕を行い、上清をカスパーゼ粗酵素液とした。酵素活性は、粗酵素液を25mmol/LHepes、10%Sucrose、0.1%CHAPS、100mmol/LDTTの存在下、10分平衡化させた後、基質10μmol/LのDEVD−MCA(ペプチド研)を加え、蛍光光度計(励起波長380nm、蛍光波長460nm)で5分間反応させた。
なお、酵素活性はAMC(ペプチド研)の蛍光強度による検量線より算出された。
得られたエトポシド誘導カスパーゼ−3阻害活性の結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
Figure 0004913289
【0042】
表2により、SQDG、MGDG、DGDGにエトポシド誘導カスパーゼ−3阻害活性が見られることが確認された。その中で特にSQDGに強力な阻害作用があることが判る。
【0043】
[脳虚血性病変を伴う疾患の予防および治療効果の確認]
実験動物として178−210g(9週齢)のF344/NSlc雄性ラットを用いた。被験物質(SQDG、MGDG、DGDG)は、それぞれ2.0mlの2%アラビアゴム溶液に体重1kg当たり10mgとなるようと懸濁し、ガス通気の30分前に経口投与した。また対象群は2%アラビアゴム溶液を2.0ml/kgを経口投与した。
【0044】
投与後40分後、これらラットを常圧の容器に入れ、97vol%窒素と3vol%酸素とからなる混合ガスを2L/分で通気した。通気開始から呼吸停止に至るまでの時間(生存時間・秒)を生存時間として測定した。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
Figure 0004913289
【0046】
表3から、SQDG、MGDGあるいはDGDGの投与は低酸素負荷時においてラットの生存期間を増加することがわかる。このことにより脳虚血性病変を伴う疾患の予防および治療効果を有することが確認された。
【0047】
[医薬用組成物、あるいは、食用組成物の試作]
上記記載の方法により調製したほぼ純品のSQDG、MGDG、DGDG各々150mg、精製大豆油125mg、ミツロウ15mgおよびビタミンE10mgを窒素ガス雰囲気下で約40℃に加温し、充分に混合して均質な液状物とした。これをカプセル充填機に供給して1粒内容量300mgのゼラチン被覆カプセル製剤を試作した。この製剤は医薬用組成物または食用組成物として利用できるものである。
【0048】
[食品である味付け焼き海苔への適用]
海苔を原料として食用味付け焼き海苔を製造する方法において、採取したアサクサノリおよびスサビノリを篩付き木製型枠に流し込んですき、乾燥機中で約50℃にて2時間乾燥し、さらにトンネル型ヒーターで150〜180℃にて6〜7秒間加熱処理して焼き海苔をつくった。別に、味付け用タレとして塩5.0kg、調味料2.0kg、砂糖8.6kg、唐辛子0.3kg、醤油2.0リットル、みりん1.8リットル、水6.0リットルの混合液に加えて粗抽出液Bから溶媒を除去してなる抽出乾固物250gを配合して均質化したものを作成し、このタレを前記焼き海苔に塗布し乾燥して本発明の味付け焼き海苔を試作した。このものは、市販の味付け焼き海苔と比較して外観、風味および食感のいずれにおいても遜色なく、健康の維持増進を訴求する食品として利用できるものであった。なお、粗抽出液Bには粗抽出液Aと同じレベルの充分高いレベルのSQDG、MGDG、DGDGがそれぞれ含まれていることが
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、脳神経細胞に対して賦活作用および保護作用を示し、外傷、代謝性の要因、脳虚血、β−アミロイド蛋白質、パーキンソン病およびダウン症等による脳神経細胞障害に対する予防および治癒に極めて有用なSQDG、MGDGあるいはDGDGを有効成分としてなるカスパーゼ阻害剤が提供される。該阻害剤は単独作用により、神経細胞のアポトーシスを抑制する機能を有する。また、本発明によれば、前記機能を有するカスパーゼ剤を配合してなる医薬用組成物および食用組成物が提供され、これらの組成物は脳神経細胞の障害に対する予防あるいは治療のための手段として活用され得る。

Claims (6)

  1. 次に示す式(III)(ただし、式中R1およびR2は炭素数が14以上22以下で、二重結合の数が0以上6以下の脂肪酸のアルキル残基またはアルケニル残基である。)で表されるジガラクトシルグリセロールを有効成分としてなることを特徴とするカスパーゼ阻害剤。
    Figure 0004913289
  2. 上記の式(III)において、R1およびR2が、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ジホモガンマリノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸からなる群から選ばれる多価脂肪酸のアルキル残基またはアルケニル残基であることを特徴とする請求項1に記載のカスパーゼ阻害剤。
  3. 上記の式(III)で表されるスルホキノボシルジアシルグリセロール、モノガラクトシルグリセロールおよびジガラクトシルグリセロールが藍藻類、紅藻類、褐藻類または緑藻類に属する藻類もしくはホウレン草などの陸生緑色物原料とし、これから溶剤抽出されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のカスパーゼ阻害剤。
  4. 上記カスパーゼ阻害剤のカスパーゼ阻害が、神経芽腫細胞(Neuro2a)におけるカスパーゼ阻害であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のカスパーゼ阻害剤。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のカスパーゼ阻害剤を配合してなるカスパーゼ阻害用医薬用組成物。
  6. 次に示す式(III)(ただし、式(III)中R 1 およびR 2 はそれぞれ炭素数が14以上22以下で、二重結合の数が0以上6以下の脂肪酸のアルキル残基またはアルケニル残基である)で表される化合物のうち少なくとも1種を有効成分として有する虚血性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、エイズ及びアルコール性肝炎の予防・治癒剤。
    Figure 0004913289
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