そこで、本発明の課題は、装置への実装の自由度が高い微細な棒状構造発光素子を製造できる棒状構造発光素子の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の棒状構造発光素子の製造方法は、
基板上に、貫通孔を有する絶縁体を形成する絶縁体形成工程と、
上記貫通孔に重なる上記基板の表面上に、上記貫通孔から突出するように棒状の第1導電型の半導体コアを形成する半導体コア形成工程と、
上記貫通孔から突出した上記半導体コアを覆うように第2導電型の半導体層を形成する半導体層形成工程と、
上記半導体コアの上記半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、上記半導体コアの上記半導体層で覆われている外周面付近の部分上に、上記絶縁体の一部が残るように、上記絶縁体をエッチングする絶縁体エッチング工程と、
上記半導体コアと、上記半導体層と、上記絶縁体エッチング工程において上記基板上に残る上記絶縁体の一部とを有する棒状構造発光素子を、上記基板から切り離す切り離し工程と
を備えたことを特徴としている。
ここで、第1導電型とは、P型またはN型を意味する。また、第2導電型とは、第1導電型がP型の場合はN型、N型の場合はP型を意味する。
上記構成によれば、上記基板上に、貫通孔を有する絶縁体を形成した後、その貫通孔から露出した基板の表面上に、貫通孔から突出するように棒状の第1導電型の半導体コアを形成する。
次に、上記貫通孔から突出した半導体コアを覆うように第2導電型の半導体層を形成すると共に、半導体コアの半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、半導体コアの半導体層で覆われている外周面付近の部分上に、絶縁体の一部が残るように、絶縁体をエッチングする。これにより、上記第2導電型の半導体層で半導体コアの一端側(基板側とは反対側)を覆う一方、絶縁体の一部で半導体コアの他端側(基板側)の少なくとも上記部分を覆うことができる。
次に、上記半導体コアと、半導体層と、基板上に残る絶縁体の一部とを有する棒状構造発光素子を、例えば超音波により基板を振動させたり切断工具を用いたりして基板から切り離す。
このように、上記基板から棒状構造発光素子を切り離すことによって、棒状構造発光素子の装置への実装の自由度は高くなるので、装置への実装の自由度が高い微細な棒状構造発光素子を製造できる。
ここで、微細な棒状構造発光素子とは、例えば直径が10nmから5μmまでの範囲内に入り、長さが100nmから200μmまでの範囲内に入るサイズであり、より好ましくは、直径が100nmから2μmまでの範囲内に入って長さが1μmから50μmまでの範囲内に入るサイズの素子である。
また、上記貫通孔に重なる基板の表面上に、貫通孔から突出するように棒状の第1導電型の半導体コアを形成するので、半導体コアの太さを一様にできる。
また、上記基板は、棒状構造発光素子と切り離されるので、棒状構造発光素子の発光時に用いなくてもよい。したがって、上記棒状構造発光素子の発光時に用いる基板の選択肢が増え、棒状構造発光素子を実装すべき装置の形態の自由度が高くなる。
また、上記基板から棒状構造発光素子を切り離すとき、第2導電型の半導体層で覆われた領域と第2導電型の半導体層で覆われない領域との境界(望まれない箇所)で半導体コアが折れやすいところが、半導体コア上に残る絶縁体により補強される。そのため、望まれる箇所、すなわち半導体コアの根元から、棒状構造発光素子を容易に切り取れる。したがって、上記棒状構造発光素子を複数製造しても、複数の棒状構造発光素子の長さを一様にできる。
また、上記棒状構造発光素子を形成するために用いた基板は、棒状構造発光素子を切り離した後、棒状構造発光素子の製造に再利用できるので、製造コストを低減できる。
また、上記棒状構造発光素子は微細にして使用する半導体の量を少なくできるので、棒状構造発光素子を実装すべき装置の薄型化と軽量化が可能となり、環境への負荷を軽減できる。
また、上述の製造方法によって、半導体コアの上記他端側において半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、半導体コアの上記一端側において半導体層で覆われている外周面付近の部分を、絶縁体で覆うことができる。そして、上記半導体コアの他端側において絶縁体で覆われていない部分に第1導電側の電極を接続し、半導体層に第2導電側の電極を接続して、電極間に電流を流すと、棒状構造発光素子が発光する。
また、上述の製造方法によって、第2導電型の半導体層で半導体コアの一端側を覆うことができるので、発光領域を広くして、発光量を増やすことができると共に、発光効率を高くすることができる。
また、上述の製造方法によって、半導体コアの上記他端側において半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、半導体コアの上記一端側において半導体層で覆われている外周面付近の部分を絶縁体で覆うことができるので、第1導電側の電極が第2導電側の電極に短絡するのを防ぐことができる。
本発明の棒状構造発光素子の製造方法は、
基板上に、第1導電型の半導体からなる下地層を形成する下地層形成工程と、
上記下地層上に、貫通孔を有する絶縁体を形成する絶縁体形成工程と、
上記貫通孔に重なる上記下地層の表面上に、上記貫通孔から突出するように棒状の第1導電型の半導体コアを形成する半導体コア形成工程と、
上記貫通孔から突出した上記半導体コアを覆うように第2導電型の半導体層を形成する半導体層形成工程と、
上記半導体コアの上記半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、上記半導体コアの上記半導体層で覆われている外周面付近の部分上に、上記絶縁体の一部が残るように、かつ、上記半導体コアの上記基板側の端に連なる上記下地層の一部が残るように、上記絶縁体および上記下地層をエッチングするエッチング工程と、
上記半導体コアと、上記半導体層と、上記エッチング工程において上記基板上に残る上記絶縁体の一部と、上記エッチング工程において上記基板上に残る上記下地層の一部とを有する棒状構造発光素子を、上記基板から切り離す切り離し工程と
を備えたことを特徴としている。
ここで、第1導電型とは、P型またはN型を意味する。また、第2導電型とは、第1導電型がP型の場合はN型、N型の場合はP型を意味する。
上記構成によれば、上記基板上に、第1導電型の半導体からなる下地層を形成して、さらに、下地層上に、貫通孔を有する絶縁体を形成した後、その貫通孔から露出した下地層の表面上に、貫通孔から突出するように棒状の第1導電型の半導体コアを形成する。
次に、上記貫通孔から突出した半導体コアを覆うように第2導電型の半導体層を形成すると共に、半導体コアの半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、半導体コアの半導体層で覆われている外周面付近の部分上に、絶縁体の一部が残るように、かつ、半導体コアの基板側の端に連なる下地層の一部が残るように、絶縁体および下地層をエッチングする。これにより、上記第2導電型の半導体層で半導体コアの一端側(基板側とは反対側)を覆う一方、絶縁体の一部で半導体コアの他端側(基板側)の少なくとも上記部分を覆うことができる。また、上記下地層の一部の外周面を露出させることができる。
次に、上記半導体コアと、半導体層と、基板上に残る絶縁体の一部と、基板上に残る下地層の一部とを有する棒状構造発光素子を、例えば超音波により基板を振動させたり切断工具を用いたりして基板から切り離す。これにより、上記下地層の半導体コア側と反対側の軸方向の端面(基板に接触していた端面)を露出させることができる。
このように、上記基板から棒状構造発光素子を切り離すことによって、棒状構造発光素子の装置への実装の自由度は高くなるので、装置への実装の自由度が高い微細な棒状構造発光素子を製造できる。
ここで、微細な棒状構造発光素子とは、例えば直径が10nmから5μmまでの範囲内に入り、長さが100nmから200μmまでの範囲内に入るサイズであり、より好ましくは、直径が100nmから2μmまでの範囲内に入って長さが1μmから50μmまでの範囲内に入るサイズの素子である。
また、上記貫通孔に重なる基板の表面上に、貫通孔から突出するように棒状の第1導電型の半導体コアを形成するので、半導体コアの太さを一様にできる。
また、上記基板は、棒状構造発光素子と切り離されるので、棒状構造発光素子の発光時に用いなくてよい。したがって、上記棒状構造発光素子の発光時に用いる基板の選択肢が増え、棒状構造発光素子を実装すべき装置の形態の自由度が高くなる。
また、上記基板から棒状構造発光素子を切り離すとき、第2導電型の半導体層で覆われた領域と第2導電型の半導体層で覆われない領域との境界(望まれない箇所)で半導体コアが折れやすいところが、半導体コア上に残る絶縁体により補強される。そのため、望まれる箇所、すなわち半導体コアの根元から、棒状構造発光素子を容易に切り取れる。したがって、上記棒状構造発光素子を複数製造しても、複数の棒状構造発光素子の長さを一様にできる。
また、上記棒状構造発光素子を形成するために用いた基板は、棒状構造発光素子を切り離した後、棒状構造発光素子の製造に再利用できるので、製造コストを低減できる。
また、上記棒状構造発光素子は微細にして使用する半導体の量を少なくできるので、棒状構造発光素子を実装すべき装置の薄型化と軽量化が可能となり、環境への負荷を軽減できる。
また、上述の製造方法によって、下地層の半導体コア側と反対側の軸方向の端面と、下地層の周面とを露出させることができる。この端面および周面の少なくとも一方に第1導電側の電極を接続し、半導体層に第2導電側の電極を接続して、電極間に電流を流すと、棒状構造発光素子が発光する。
また、上述の製造方法によって、第2導電型の半導体層で半導体コアの一端側を覆うことができるので、発光領域を広くして、発光量を増やすことができると共に、発光効率を高くすることができる。
また、上述の製造方法によって、半導体コアの上記他端側において半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、半導体コアの上記一端側において半導体層で覆われている外周面付近の部分を絶縁体で覆うことができるので、第1導電側の電極が第2導電側の電極に短絡するのを防ぐことができる。
一実施形態の棒状構造発光素子の製造方法では、
上記半導体コアと上記半導体層との間に量子井戸層を形成する。
上記実施形態によれば、上記半導体コアと半導体層との間に量子井戸層を形成するので、発光量をより増やすことができる。
本発明の棒状構造発光素子は、
棒状の第1導電型の半導体コアと、
上記半導体コアの一端側を覆う第2導電型の半導体層と、
上記半導体コアの上記半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、上記半導体コアの上記半導体層で覆われている外周面付近の部分を覆う絶縁体と
を備え、上記半導体コアの他端側の端部のうち少なくとも軸方向の端面は上記絶縁体で覆われずに露出していることを特徴としている。
ここで、第1導電型とは、P型またはN型を意味する。また、第2導電型とは、第1導電型がP型の場合はN型、N型の場合はP型を意味する。
上記構成によれば、棒状の第1導電型の半導体コアと、半導体コアの一端側を覆う第2導電型の半導体層と、半導体コアの半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、半導体コアの半導体層で覆われている外周面付近の部分を覆う絶縁体とを備えているので、本発明の棒状構造発光素子の製造方法で製造することができる。
また、上記半導体コアの他端側において絶縁体で覆われていない部分に第1導電側の電極を接続し、半導体層に第2導電側の電極を接続して、電極間に電流を流すと、棒状構造発光素子が発光する。このとき、上記第2導電型の半導体層が半導体コアの一端側を覆っているので、発光領域が広くなる。したがって、発光量を増やすことができると共に、発光効率を高くすることができる。
また、上記棒状構造発光素子が微細であっても、半導体コアの他端側の端部のうち少なくとも軸方向の端面は露出しているので、この端面に第1導電側の電極を容易に接続することができる。
また、上記半導体コアの半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、半導体コアの半導体層で覆われている外周面付近の部分を覆う絶縁体を備えることによって、第1導電側の電極が第2導電側の電極と短絡し難くなるので、第1導電側の電極および第2導電側の電極の形成は容易となる。
ここで、棒状構造発光素子が微細とは、棒状構造発光素子が、例えば直径10nmから5μmまでの範囲内に入り、長さが100nmから200μmまでの範囲内に入るサイズであり、より好ましくは、直径が100nmから2μmまでの範囲内に入って長さが1μmから50μmまでの範囲内に入るサイズを有することを意味する。
一実施形態の棒状構造発光素子では、
上記半導体層の外周面を軸方向に延ばした仮想面は、上記絶縁体の外周面を軸方向に延ばした仮想面と略一致する。
一実施形態の棒状構造発光素子では、
上記半導体層の上記絶縁体側とは反対側の部分を覆う導電膜を備え、
上記導電体膜の外周面を軸方向に延ばした仮想面は、上記絶縁体の外周面を軸方向に延ばした仮想面と略一致する。
本発明の棒状構造発光素子は、
棒状の第1導電型の半導体コアと、
上記半導体コアの一端側を覆う第2導電型の半導体層と、
上記半導体コアの上記半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、上記半導体コアの上記半導体層で覆われている外周面付近の部分を覆う絶縁体と、
上記半導体コアの他端に連なる第1導電型の下地層と
を備え、
上記下地層の上記半導体コア側と反対側の軸方向の端面と、上記下地層の周面とが露出し、
上記半導体層の外周面を軸方向に延ばした仮想面は、上記下地層の周面を軸方向に延ばした仮想面と略一致することを特徴としている。
ここで、第1導電型とは、P型またはN型を意味する。また、第2導電型とは、第1導電型がP型の場合はN型、N型の場合はP型を意味する。
上記構成によれば、棒状の第1導電型の半導体コアと、半導体コアの一端側を覆う第2導電型の半導体層と、半導体コアの半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、半導体コアの半導体層で覆われている外周面付近の部分を覆う絶縁体と、半導体コアの他端に連なる第1導電型の下地層とを備え、この下地層の半導体コア側と反対側の軸方向の端面と、下地層の周面とが露出しているので、本発明の棒状構造発光素子の製造方法で製造できる。
また、例えば、上記下地層の半導体コア側と反対側の軸方向の端面と、下地層の周面との少なくとも一方に第1導電側の電極を接続し、半導体層に第2導電側の電極を接続して、電極間に電流を流すと、棒状構造発光素子が発光する。このとき、上記第2導電型の半導体層が半導体コアの一端側を覆っているので、発光領域が広くなる。したがって、発光量を増やすことができると共に、発光効率を高くすることができる。
また、上記棒状構造発光素子が微細であっても、下地層の半導体コア側と反対側の軸方向の端面と、下地層の周面とが露出しているので、この軸方向の端面および周面の少なくとも一方に第1導電側の電極を容易に接続することができる。
また、上記半導体コアの半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、半導体コアの半導体層で覆われている外周面付近の部分を覆う絶縁体を備えることによって、第1導電側の電極が第2導電側の電極と短絡し難くなるので、第1導電側の電極および第2導電側の電極の形成は容易となる。
ここで、棒状構造発光素子が微細とは、例えば直径が10nmから5μmまでの範囲内に入り、長さが100nmから200μmまでの範囲内に入るサイズであり、より好ましくは、直径が100nmから2μmまでの範囲内に入って長さが1μmから50μmまでの範囲内に入るサイズを有することを意味する。
一実施形態の棒状構造発光素子は、
上記半導体層の上記絶縁体側とは反対側の部分を覆う導電膜を備え、
上記導電膜の外周面を軸方向に延ばした仮想面は、上記下地層の周面を軸方向に延ばした仮想面と略一致する。
本発明のバックライトは、
本発明の棒状構造発光素子を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、上記棒状構造発光素子を備えるので、発光効率が高くて省電力なバックライトを実現できる。
本発明の照明装置は、
本発明の棒状構造発光素子を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、上記棒状構造発光素子を備えるので、発光効率が高くて省電力な照明装置を実現できる。
本発明の表示装置は、
本発明の棒状構造発光素子を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、上記棒状構造発光素子を備えるので、発光効率が高くて省電力な表示装置を実現できる。
本発明の棒状構造発光素子の製造方法によれば、半導体コアと、半導体層と、基板上に残る絶縁体の一部とを有する棒状構造発光素子を、例えば超音波により基板を振動させたり切断工具を用いたりして基板から切り離すことによって、棒状構造発光素子の装置への実装の自由度は高くなるので、装置への実装の自由度が高い微細な棒状構造発光素子を製造できる。
また、上記貫通孔に重なる基板の表面上に、貫通孔から突出するように棒状の第1導電型の半導体コアを形成するので、半導体コアの太さを一様にできる。
また、上記基板は棒状構造発光素子と切り離されるので、棒状構造発光素子の発光時に用いる基板の選択肢が増え、棒状構造発光素子を実装すべき装置の形態の自由度が高くなる。
また、上記基板から棒状構造発光素子を切り離すとき、半導体コアの根元から棒状構造発光素子を容易に切り取れるので、棒状構造発光素子を複数製造しても、複数の棒状構造発光素子の長さを一様にできる。
また、上記棒状構造発光素子を形成するために用いた基板は、棒状構造発光素子を切り離した後、棒状構造発光素子の製造に再利用できるので、製造コストを低減できる。
また、上記棒状構造発光素子は微細にして使用する半導体の量を少なくできるので、棒状構造発光素子を実装すべき装置の薄型化と軽量化が可能となり、環境への負荷を軽減できる。
また、上記製造方法によって、半導体コアの他端部のうち軸方向の端面以外の部分を絶縁体で覆うことができる。
また、上記製造方法によって、第2導電型の半導体層で半導体コアの一端側を覆うことができるので、発光領域を広くして、発光量を増やすことができると共に、発光効率を高くすることができる。
また、上記製造方法によって、半導体コアの他端側において半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、半導体コアの一端側において半導体層で覆われている外周面付近の部分を、絶縁体の一部で覆うことができるので、第1導電側の電極が第2導電側の電極に短絡するのを防ぐことができる。
本発明の棒状構造発光素子の製造方法によれば、半導体コアと、半導体層と、基板上に残る絶縁体の一部と、基板上に残る下地層の一部とを有する棒状構造発光素子を、例えば超音波により基板を振動させたり切断工具を用いたりして基板から切り離すことによって、棒状構造発光素子の装置への実装の自由度は高くなるので、装置への実装の自由度が高い微細な棒状構造発光素子を製造できる。
また、上記貫通孔に重なる基板の表面上に、貫通孔から突出するように棒状の第1導電型の半導体コアを形成するので、半導体コアの太さを一様にできる。
また、上記基板は棒状構造発光素子と切り離されるので、棒状構造発光素子の発光時に用いる基板の選択肢が増え、棒状構造発光素子を実装すべき装置の形態の自由度が高くなる。
また、上記基板から棒状構造発光素子を切り離すとき、基板と下地層の接合面を含む面で棒状構造発光素子を容易に切り取れるので、棒状構造発光素子を複数製造しても、複数の棒状構造発光素子の長さを一様にできる。
また、上記棒状構造発光素子を形成するために用いた基板は、棒状構造発光素子を切り離した後、棒状構造発光素子の製造に再利用できるので、製造コストを低減できる。
また、上記棒状構造発光素子は微細にして使用する半導体の量を少なくできるので、棒状構造発光素子を実装すべき装置の薄型化と軽量化が可能となり、環境への負荷を軽減できる。
また、上記製造方法によって、下地層の半導体コア側と反対側の軸方向の端面と、下地層の周面とを露出させることができる。この端面および周面の少なくとも一方に第1導電側の電極を接続し、半導体層に第2導電側の電極を接続して、電極間に電流を流すと、棒状構造発光素子が発光する。
また、上記製造方法によって、第2導電型の半導体層で半導体コアの一端側を覆うことができるので、発光領域を広くして、発光量を増やすことができると共に、発光効率を高くすることができる。
また、上記製造方法によって、半導体コアの他端側において半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、半導体コアの一端側において半導体層で覆われている外周面付近の部分を、絶縁体の一部で覆うことができるので、第1導電側の電極が第2導電側の電極に短絡するのを防ぐことができる。
本発明の棒状構造発光素子によれば、棒状の第1導電型の半導体コアと、半導体コアの一端側を覆う第2導電型の半導体層と、半導体コアの半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、半導体コアの半導体層で覆われている外周面付近の部分を覆う絶縁体とを備えているので、本発明の棒状構造発光素子の製造方法で製造することができる。
また、上記半導体コアの他端側において絶縁体で覆われていない部分に第1導電側の電極を接続し、半導体層に第2導電側の電極を接続して、電極間に電流を流すと、棒状構造発光素子が発光する。このとき、上記第2導電型の半導体層が半導体コアの一端側を覆っているので、発光領域を広くでき、発光量を増やすことができる。
また、上記棒状構造発光素子が微細であっても、半導体コアの他端側の端部のうち少なくとも軸方向の端面は露出しているので、この端面に第1導電側の電極を容易に接続することができる。
また、上記半導体コアの半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、半導体コアの半導体層で覆われている外周面付近の部分を覆う絶縁体を備えることによって、第1導電側の電極が第2導電側の電極と短絡し難くなるので、第1導電側の電極および第2導電側の電極を簡単に形成できる。
本発明の棒状構造発光素子によれば、棒状の第1導電型の半導体コアと、半導体コアの一端側を覆う第2導電型の半導体層と、半導体コアの半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、半導体コアの半導体層で覆われている外周面付近の部分を覆う絶縁体と、半導体コアの他端に連なる第1導電型の下地層とを備え、この下地層の半導体コア側と反対側の軸方向の端面と、下地層の周面とが露出しているので、本発明の棒状構造発光素子の製造方法で製造できる。
また、例えば、上記下地層の半導体コア側と反対側の軸方向の端面と、下地層の周面との少なくとも一方に第1導電側の電極を接続し、半導体層に第2導電側の電極を接続して、電極間に電流を流すと、棒状構造発光素子が発光する。このとき、上記第2導電型の半導体層が半導体コアの一端側を覆っているので、発光領域を広くでき、発光量を増やすことができる。
また、上記棒状構造発光素子が微細であっても、下地層の半導体コア側と反対側の軸方向の端面と、下地層の周面とが露出しているので、この軸方向の端面および周面の少なくとも一方に第1導電側の電極を容易に接続することができる。
また、上記半導体コアの半導体層で覆われていない外周面のうち、少なくとも、半導体コアの半導体層で覆われている外周面付近の部分を覆う絶縁体とを備えることによって、第1導電側の電極が第2導電側の電極と短絡し難くなるので、第1導電側の電極および第2導電側の電極を簡単に形成できる。
本発明のバックライトは、本発明の棒状構造発光素子を備えるので、発光効率が高くて省電力なバックライトを実現できる。
本発明の照明装置は、本発明の棒状構造発光素子を備えるので、発光効率が高くて省電力な照明装置を実現できる。
本発明の表示装置は、本発明の棒状構造発光素子を備えるので、発光効率が高くて省電力な表示装置を実現できる。
以下、本発明を図示の実施形態により詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態の棒状構造発光素子1の模式断面図である。
上記棒状構造発光素子1は、断面ほぼ円形の棒状のn型GaN(窒化ガリウム)からなる半導体コア11と、この半導体コア11の一端側の外周面および軸方向端面を覆うp型InGaNからなる量子井戸層12と、この量子井戸層12を覆うp型GaNからなる半導体層13と、半導体コア11の他端側の端部の外周面を覆うSiO2(酸化シリコン)またはSi3N4(窒化シリコン)からなる絶縁体14とを備えている。なお、半導体コア11は第1導電型の半導体コアの一例、量子井戸層12は量子井戸層の一例、半導体層13は第2導電型の半導体層の一例である。
上記半導体コア11の他端側の外周面は絶縁体14で覆われているが、半導体コア11の他端側の軸方向端面11aは絶縁体14で覆われていなくて露出している。ここでは、絶縁体14は半導体コア11の他端側の外周面全体を覆っている。なお、絶縁体14に換えて、図1中の二点鎖線で示すように、半導体コア11の他端側において半導体層13で覆われていない外周面のうち、半導体コア11の一端側において半導体層13で覆われた外周面付近の部分のみを覆う絶縁体14’を形成してもよい。
また、上記半導体コア11にはドナー不純物としてSiがドープされている一方、量子井戸層12および半導体層13にはアクセプタ不純物としてMgがドープされているが、ドナー不純物はSiに限られず、アクセプタ不純物もMgに限られない。
また、上記半導体層13の外周面上には、ポリシリコンまたはITO(錫添加酸化インジウム)からなる導電膜15が形成されている。この導電膜15は量子井戸層12からの光を透過する膜である。また、導電膜15の外周面は絶縁体14の外周面と段差を生じることなく連続するように形成されていてもよい。つまり、導電膜15の外周面は絶縁体14の外周面と面一になっていてもよい。
以下、図2A〜図2Kを用いて、上記棒状構造発光素子1の製造方法について説明する。
まず、図2Aに示すように、n型GaNからなる基板101を用意する。この基板101には、必要に応じて、洗浄剤や純水などで基板洗浄を行ったり、マーキングなどの基板加工を行ったりしてもよい。
次に、図2Bに示すように、基板101上に、絶縁体からなるマスク層14Aを形成した後、公知のリソグラフィー法とドライエッチング法を用いて、図2Cに示すように、基板101上に、成長孔16を有するマスク層14Bを形成する(絶縁体形成工程)。なお、成長孔16は貫通孔の一例であり、マスク層14Bは絶縁体の一例である。
より詳しくは、上記マスク層14Aの表面にレジストを塗布した後、露光および現像を行うことにより、レジストパターン17を形成する。このレジストパターン17をマスクとし、基板101の表面の一部が露出するまでドライエッチングを行う。このようにして、基板101上に、成長孔16を有するマスク層14Bを形成する。このとき、マスク層14A,14Bの材料には、SiO2あるいは窒化シリコンSi3N4などのように、量子井戸層12の材料に対して選択的にエッチング可能な材料を用いる。
次に、NiまたはFeの触媒金属の蒸着を行って、図2Dに示すように、成長孔16から露出する基板101の表面上に、NiまたはFeからなる島状の触媒金属部18を形成する(触媒部形成工程)。これに伴い、レジストパターン17上に、NiまたはFeからなる触媒金属層19が形成される。また、触媒金属部18の体積は、触媒金属部18の断面形状がほぼ矩形となるぐらいまで大きくする。
次に、図2Eに示すように、レジストパターン17を除去することによって、触媒金属層19をリフトオフした後、例えば純水で洗浄する。
次に、図2Fに示すように、島状の触媒金属部18が形成された基板101の表面上に、つまり、成長孔16に重なる基板101の表面上に、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長)装置を用いて、島状の触媒金属部18と基板101との界面からn型のGaNを結晶成長させることにより、n型のGaNからなる棒状の半導体コア11Aを形成する(半導体コア形成工程)。このとき、成長温度を800℃程度に設定し、成長ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)およびNH3(アンモニア)を使用し、n型不純物供給用にSiH4(シラン)を供給し、さらに、キャリアガスとしてH2を供給することによって、Siをドナー不純物としたn型GaNの半導体コア11Aを成長させることができる。
次に、上記半導体コア11Aの一端に島状の触媒金属部18を保持した状態で、半導体コア11Aの外周面からの結晶成長、および、触媒金属部18と半導体コア11の界面からの結晶成長により、図2Gに示すように、p型InGaNからなる量子井戸層12Aと、p型GaNからなる半導体層13Aとを形成する(半導体層形成工程)。このとき、成長温度を750℃〜800℃の範囲内に設定し、成長ガスとしてTMG、NH3およびTMI(トリメチルインジウム)を使用し、p型不純物供給用にCp2Mg(ビスシクロペンタジエニルマグネシウム)を供給し、さらに、キャリアガスとしてH2を供給することによって、Mgを不純物とするp型InGaNを成長させることができる。そして、成長温度を900℃程度に設定し、成長ガスとしてTMGおよびNH3を使用し、p型不純物供給用にCp2Mgを供給し、さらに、キャリアガスとしてH2を供給することによって、Mgを不純物とするp型GaNを成長させることができる。また、量子井戸層12Aおよび半導体層13Aは、成長孔16から突出した半導体コア11を覆うように形成される。また、量子井戸層12Aの構造は、井戸層を1つ持つ単一量子井戸構造にしてもよいし、井戸層を複数持つ多重量子井戸構造にしてもよい。
次に、図2Hに示すように、半導体コア11Aの一端に島状の触媒金属部18を選択的にウェットエッチングで除去した後、例えば純水で洗浄する。島状の触媒金属部18は、ドライエッチングのRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)で除去してもよい。このとき、RIEにSiCl4を用いることにより、GaNに異方性を持ったエッチングを容易に行うことができる。
次に、p型GaNの活性化のためのアニールを行った後、図2Iに示すように、半導体層13A上に、ポリシリコンまたはITOからなる導電膜15Aを形成して、さらに、アニール処理を行って、半導体層13Aと導電膜15Aの間の抵抗を下げる。
次に、上記導電膜15A、半導体層13A、量子井戸層12Aおよびマスク層14Bを順次非等方エッチングして、図2Jに示すように、半導体コア11の一端側に、量子井戸層12、半導体層13および導電膜15を残す一方、半導体コア11の他端側に絶縁体14を残す(絶縁体エッチング工程)。このとき、半導体層13Aおよび導電膜15Aの一部が除去されるが、量子井戸層12Aおよび半導体層13Aでは、半導体コア11の外周面を覆う部分の径方向の厚さよりも、半導体コア11の一端側の軸方向端面を覆う部分の軸方向の厚さが厚くなっているので、半導体コア11の一端側の軸方向端面は露出し難い。なお、導電膜15A、半導体層13A、量子井戸層12Aおよびマスク層14Bを順次非等方エッチングするとき、マスク層14Bをエッチングする際の非等方性を小さくすることにより、図2J中の二点鎖線で示すように、半導体コア11の他端側において半導体層13で覆われていない外周面のうち、半導体コア11の一端側において半導体層13で覆われた外周面付近の部分のみを覆う絶縁体14’を形成することができる。また、絶縁体14,14’は基板101上に残ったマスク層14Bの一部である。また、図2Jでは、1つの棒状構造発光素子1が形成されているように図示しているが、複数の棒状構造発光素子1が形成されている。
次に、IPA(イソプロピルアルコール)水溶液中に基板101を浸し、例えば数10KHzの超音波を用いて基板101を基板平面に沿って振動させることにより、基板101上に立設する半導体コア11の基板101側に近い根元を折り曲げるように、半導体コア11および絶縁体14に対して応力が働いて、図2Kに示すように、半導体コア11が基板101から切り離される(切り離し工程)。
こうして、上記基板101から切り離なされた複数の微細な棒状構造発光素子1を製造することができる。ここで、微細な棒状構造発光素子とは、例えば直径が10nmから5μmまでの範囲内に入り、長さが100nmから200μmまでの範囲内に入るサイズであり、より好ましくは、直径が100nmから2μmまでの範囲内に入って長さが1μmから50μmまでの範囲内に入るサイズの素子である。
上記構成の棒状構造発光素子の製造方法によれば、基板101から微細な棒状構造発光素子1を切り離すので、微細な棒状構造発光素子1の装置への実装の自由度を高くすることができる。
また、上記基板101に重なる基板101の表面上に、基板101から突出するように棒状の第1導電型の半導体コアを形成するので、半導体コアの太さを一様にできる。
また、上記基板101は、微細な棒状構造発光素子1と切り離されるので、微細な棒状構造発光素子1の発光時に用いなくてもよい。したがって、微細な棒状構造発光素子1の発光時に用いる基板の選択肢が増え、微細な棒状構造発光素子1を実装すべき装置の形態の自由度を高くすることができる。
また、上記切り離し工程において、超音波を用いて基板平面に沿って基板101を振動させることにより、基板101上に立設する半導体コア11の基板101側に近い根元を折り曲げるように、半導体コア11および絶縁体14に対して応力が働いて、半導体コア11および絶縁体14が基板101から切り離される。したがって、基板101上に設けられた複数の微細な棒状構造発光素子1を簡単な方法で容易に切り離すことができる。
もし、上記棒状構造発光素子1が絶縁体14を備えていないなら、半導体コア11の外周面において段差が形成されている箇所に応力が集中して、この箇所付近で半導体コア11が折れやすくなる。上記箇所で半導体コア11が折れた場合は、素子不良となる。したがって、上記棒状構造発光素子1は絶縁体14を備え、絶縁体14が半導体コア11の上記箇所付近の外周面を覆うので、上記箇所付近で半導体コア11が折れるのを防ぐことができる。その結果、微細な棒状構造発光素子1を複数製造しても、複数の微細な棒状構造発光素子1の長さを一様にできる。なお、図1に示すように、絶縁体14は、半導体コア11の他端側の外周面全体を完全に覆うので、絶縁体14’に比べて、切り離し時に半導体コア11が途中で折れるのを防ぐ効果が高くなる結果、複数の微細な棒状構造発光素子1の長さを確実に一様にできる。
また、上記基板101は、微細な棒状構造発光素子1を切り離した後、微細な棒状構造発光素子1の製造に再利用できるので、製造コストを低減できる。
また、上記棒状構造発光素子1は微細であるので、使用する半導体の量を少なくできる。したがって、棒状構造発光素子1を実装すべき装置の薄型化と軽量化が可能となり、環境への負荷を軽減できる。
また、上記触媒部形成工程において、成長孔16内に形成する島状の触媒金属部18の体積を、触媒金属部18の断面形状がほぼ矩形となるように大きくするので、次の半導体コア形成工程において、棒状の半導体コア11Aの成長孔16内の部分の径より、棒状の半導体コア11Aの成長孔16外の部分の径が大きくなる。したがって、pn接合部を大きくして、広い発光領域を得ることができる。
また、上記半導体形成工程において、島状の触媒金属部18を除去せずに、半導体コア11Aの一端に島状の触媒金属部18を保持した状態で、p型InGaNからなる量子井戸層12Aと、p型GaNからなる半導体層13Aとを形成するので、半導体コア11Aの外周面からの結晶成長よりも、触媒金属部18と半導体コア11の界面からの結晶成長が促進される。つまり、触媒金属部18と半導体コア11の界面からの結晶成長の速度は、半導体コア11Aの外周面からの結晶成長の速度の10倍〜100倍となる。したがって、量子井戸層12Aおよび半導体層13Aにおいて、半導体コア11の外周面を覆う部分の径方向の厚さよりも、半導体コア11の一端側の軸方向端面を覆う部分の軸方向の厚さを容易に厚くすることができる。その結果、半導体コア11の一端側の軸方向端面は露出し難いので、n型の半導体コア11の一端側の軸方向端面にp側電極が接続されるのを防ぐことができる。
また、上記棒状構造発光素子の製造方法により製造された微細な棒状構造発光素子1では、絶縁体14で覆われていない半導体コア11の軸方向端面11aにn側電極を接続し、導電膜15またはこの導電膜15から露出している半導体層13の表面にp側電極を接続して、p型の半導体層13からn型の半導体コア11へ電流を流すことにより、量子井戸層12で電子と正孔の再結合が起きて光が放出される。このとき、量子井戸層12および半導体層13が半導体コア11の一端側の全周面および軸方向端面を覆うように形成されているので、量子井戸層12のほぼ全部から光が放出され、発光領域が広くなる。したがって、発光量を増やすことができると共に、発光効率を高くすることができる。
また、上記棒状構造発光素子1の発光効率を高くすることができるので、棒状構造発光素子1を用いて、発光効率が高く省電力なバックライト、照明装置および表示装置などを実現することができる。
また、上記半導体コア11と半導体層13との間に量子井戸層12を形成することによって、量子井戸層12の量子閉じ込め効果により、発光量をより増やすことができると共に、発光効率をより高くすることができる。
また、上記半導体コア11の軸方向端面11aは露出しているので、この軸方向端面11aにn側電極を容易に接続することができる。
また、上記半導体コア11の他端側において半導体層13で覆われていない外周面のうち、半導体コア11の一端側において半導体層13で覆われた外周面付近の部分を、絶縁体14で覆うことによって、n側電極がp側電極と短絡し難くなるので、n側電極およびp側電極の形成は容易である。すなわち、半導体層13に接続すべきp側電極を半導体コア11の外周面の段差付近に形成しても、p側電極が半導体コア11と接触するのを防げるので、n側電極およびp側電極の形成は容易である。このような効果は、絶縁体14に換えて絶縁体14’を形成した場合でも得られる。
さらに、上記棒状構造発光素子の製造方法により製造された微細な棒状構造発光素子1は、量子井戸層12Aおよび半導体層13Aが半導体コア11Aの外周面から半径方向外向に結晶成長し、径方向の成長距離が短くかつ欠陥が外向に逃げる。したがって、結晶欠陥の少ない量子井戸層12および半導体層13で半導体コア11の一端側を覆うことができるので、微細な棒状構造発光素子1の特性を良好にできる。
また、上記棒状構造発光素子1の軸方向が基板の表面に対して平行となるように、棒状構造発光素子1を基板に配置した場合、導電膜15の外周面は絶縁体14の外周面と段差を生じることなく連続するように形成されているので、棒状構造発光素子1の破損を防ぐことができると共に、棒状構造発光素子1が基板の表面に対して傾いて不安定になるのを防ぐことができる。
また、上記棒状構造発光素子1が基板の表面に対して傾いて配置されるのを防ぐことによって、その基板の表面に対する棒状構造発光素子1の接触面積が大きくなるので、棒状構造発光素子1の熱が上記基板へ拡散し易くなる。
〔第2実施形態〕
図3は本発明の第2実施形態の棒状構造発光素子2の模式断面図である。
上記棒状構造発光素子2は、断面ほぼ円形の棒状のn型GaN(窒化ガリウム)からなる半導体コア21と、この半導体コア21の一端側の外周面および軸方向端面を覆うp型InGaNからなる量子井戸層22と、この量子井戸層22を覆うp型GaNからなる半導体層23と、半導体コア21の他端側の外周面を覆うSiO2(酸化シリコン)またはSi3N4(窒化シリコン)からなる絶縁体24と、半導体コア21の他端に連なる下地層30とを備えている。なお、半導体コア21は第1導電型の半導体層の一例、量子井戸層22は量子井戸層の一例、半導体層23は第2導電型の半導体層の一例、下地層30は第1導電型の下地層の一例である。
上記半導体コア21の表面は、量子井戸層22または絶縁体24で覆われている。ここでは、絶縁体24は半導体コア21の他端側の外周面全体を覆っている。なお、絶縁体24に換えて、図3中の二点鎖線で示すように、半導体コア21の他端側において半導体層23で覆われていない外周面のうち、半導体コア21の一端側において半導体層23で覆われた外周面付近の部分のみを覆う絶縁体24’を形成してもよい。
上記下地層30の半導体コア21側とは反対側の軸方向端面30aは絶縁体24で覆われていなくて露出している。また、下地層30の周面30bも絶縁体24で覆われていなくて露出している。
また、上記半導体コア21にはドナー不純物としてSiがドープされている一方、量子井戸層22および半導体層23にはアクセプタ不純物としてMgがドープされているが、ドナー不純物はSiに限られず、アクセプタ不純物もMgに限られない。
また、上記半導体層23の外周面上には、ポリシリコンまたはITO(錫添加酸化インジウム)からなる導電膜25が形成されている。この導電膜25は量子井戸層22からの光を透過する膜である。また、導電膜25の外周面は、絶縁体24の外周面と段差を生じることなく連続するように形成されていてもよい。つまり、導電膜25の外周面は絶縁体24の外周面と面一になっていてもよい。
以下、図4A〜図4Mを用いて、上記棒状構造発光素子2の製造方法について説明する。
まず、図4Aに示すように、例えばSiからなる基板201を用意する。この基板201には、必要に応じて、洗浄剤や純水などで基板洗浄を行ったり、マーキングなどの基板加工を行ったりしてもよい。
次に、図4Bに示すように、基板201上に、MOCVD装置を用いて、n型GaNからなる下地層30Aを形成する(下地層形成工程)。このとき、成長温度を950℃程度に設定し、成長ガスとしてTMGおよびNH3を使用し、n型不純物供給用にSiH4を供給し、さらに、キャリアガスとしてH2を供給することによって、Siをドナー不純物としたn型GaNの下地層30Aを成長させることができる。
次に、図4Cに示すように、基板201上に、絶縁体からなるマスク層24Aを形成した後、公知のリソグラフィー法とドライエッチング法を用いて、図4Dに示すように、基板201上に、成長孔26を有するマスク層24Bを形成する(絶縁体形成工程)。なお、成長孔26は貫通孔の一例であり、マスク層24Bは絶縁体の一例である。
より詳しくは、上記マスク層24Aの表面にレジストを塗布した後、露光および現像を行うことにより、レジストパターン27を形成する。このレジストパターン27をマスクとし、下地層30Aの表面の一部が露出するまでドライエッチングを行う。このようにして、下地層30A上に、成長孔26を有するマスク層24Bを形成する。このとき、マスク層24A,24Bの材料には、SiO2あるいは窒化シリコンSi3N4などのように、量子井戸層22の材料に対して選択的にエッチング可能な材料を用いる。
次に、NiまたはFeの触媒金属の蒸着を行って、図4Eに示すように、成長孔26から露出する下地層30Aの表面上に、NiまたはFeからなる島状の触媒金属部28を形成する(触媒部形成工程)。これに伴い、レジストパターン27上に、NiまたはFeからなる触媒金属層29が形成される。また、触媒金属部28の体積は、触媒金属部28の断面形状がほぼ矩形となるぐらいまで大きくする。
次に、図4Fに示すように、レジストパターン27を除去することによって、触媒金属層29をリフトオフした後、例えば純水で洗浄する。
次に、図4Gに示すように、島状の触媒金属部28が形成された下地層30Aの表面上に、つまり、成長孔26に重なる下地層30Aの表面上に、MOCVD装置を用いて、島状の触媒金属部28と下地層30Aとの界面からn型のGaNを結晶成長させることにより、n型のGaNからなる棒状の半導体コア21Aを形成する(半導体コア形成工程)。このとき、成長温度を800℃程度に設定し、成長ガスとしてTMGおよびNH3を使用し、n型不純物供給用にSiH4を供給し、さらに、キャリアガスとしてH2を供給することによって、Siをドナー不純物としたn型GaNの半導体コア21Aを成長させることができる。
次に、上記半導体コア21Aの一端に島状の触媒金属部28を保持した状態で、半導体コア21Aの外周面からの結晶成長、および、触媒金属部28と半導体コア21の界面からの結晶成長により、図4Hに示すように、p型InGaNからなる量子井戸層22Aと、p型GaNからなる半導体層23Aとを形成する(半導体層形成工程)。このとき、成長温度を750℃〜800℃の範囲内に設定し、成長ガスとしてTMG、NH3およびTMIを使用し、p型不純物供給用にCp2Mgを供給し、さらに、キャリアガスとしてH2を供給することによって、Mgを不純物とするp型InGaNを成長させることができる。そして、成長温度を900℃程度に設定し、成長ガスとしてTMGおよびNH3を使用し、p型不純物供給用にCp2Mgを供給し、さらに、キャリアガスとしてH2を供給することによって、Mgを不純物とするp型GaNを成長させることができる。また、量子井戸層22Aおよび半導体層23Aは、成長孔26から突出した半導体コア21を覆うように形成される。また、量子井戸層22Aの構造は、井戸層を1つ持つ単一量子井戸構造にしてもよいし、井戸層を複数持つ多重量子井戸構造にしてもよい。
次に、図4Iに示すように、半導体コア21Aの一端に島状の触媒金属部28を選択的にウェットエッチングで除去した後、例えば純水で洗浄する。島状の触媒金属部28は、ドライエッチングのRIEで除去してもよい。このとき、RIEにSiCl4を用いることにより、GaNに異方性を持ったエッチングを容易に行うことができる。
次に、p型GaNの活性化のためのアニールを行った後、図4Jに示すように、半導体層23A上に、ポリシリコンまたはITOからなる導電膜25Aを形成して、さらに、アニール処理を行って、半導体層23Aと導電膜25Aの間の抵抗を下げる。
次に、上記導電膜25A、半導体層23A、量子井戸層22Aおよびマスク層24Bを順次非等方エッチングして、図4Kに示すように、半導体コア21の一端側に、量子井戸層22、半導体層23および導電膜25を残す一方、半導体コア21の他端側に絶縁体24を残す(絶縁体エッチング工程)。このとき、半導体層23Aおよび導電膜25Aの一部が除去されるが、量子井戸層22Aおよび半導体層23Aでは、半導体コア21の外周面を覆う部分の径方向の厚さよりも、半導体コア21の一端側の軸方向端面を覆う部分の軸方向の厚さが厚くなっているので、半導体コア21の一端側の軸方向端面は露出し難い。なお、導電膜25A、半導体層23A、量子井戸層22Aおよびマスク層24Bを順次非等方エッチングするとき、マスク層24Bをエッチングする際の非等方性を小さくすることにより、図4K中の二点鎖線で示すように、半導体コア21の他端側において半導体層23で覆われていない外周面のうち、半導体コア21の一端側において半導体層23で覆われた外周面付近の部分のみを覆う絶縁体24’を形成することができる。また、絶縁体24,24’は基板201上に残ったマスク層24Bの一部である。また、図4Kでは、1つの棒状構造発光素子2が形成されているように図示しているが、複数の棒状構造発光素子2が形成されている。なお、上記絶縁体エッチング工程はエッチング工程の一例である。
次に、上記下地層30AにRIEを行って、図4Lに示すように、半導体コア21の他端に連なる下地層30を形成する(下地層エッチング工程)。なお、上記下地層エッチング工程はエッチング工程の一例である。
次に、IPA水溶液中に基板201を浸し、例えば数10KHzの超音波を用いて基板201を基板平面に沿って振動させることにより、基板201上に立設する半導体コア21の基板201側に近い根元を折り曲げるように、半導体コア21および絶縁体24に対して応力が働いて、図4Mに示すように、下地層30が基板201から切り離される(切り離し工程)。
こうして、上記基板201から切り離なされた複数の微細な棒状構造発光素子2を製造することができる。ここで、微細な棒状構造発光素子とは、例えば直径が10nmから5μmまでの範囲内に入り、長さが100nmから200μmまでの範囲内に入るサイズであり、より好ましくは、直径が100nmから2μmまでの範囲内に入って長さが1μmから50μmまでの範囲内に入るサイズの素子である。
上記構成の棒状構造発光素子の製造方法によれば、基板201から微細な棒状構造発光素子2を切り離すので、微細な棒状構造発光素子2の装置への実装の自由度を高くすることができる。
また、上記基板201に重なる基板201の表面上に、基板201から突出するように棒状の第1導電型の半導体コアを形成するので、半導体コアの太さを一様にできる。
また、上記基板201は、微細な棒状構造発光素子2と切り離されるので、微細な棒状構造発光素子2の発光時に用いなくてもよい。つまり、基板201への電極の接続は不要となる。したがって、微細な棒状構造発光素子2の発光時に用いる基板の選択肢が増え、微細な棒状構造発光素子2を実装すべき装置の形態の自由度を高くすることができる。
また、上記切り離し工程において、超音波を用いて基板平面に沿って基板201を振動させることにより、基板201上に立設する半導体コア21の基板201側に近い根元を折り曲げるように、半導体コア21および絶縁体24に対して応力が働いて、半導体コア21および絶縁体24が基板201から切り離される。したがって、基板201上に設けられた複数の微細な棒状構造発光素子2を簡単な方法で容易に切り離すことができる。
もし、上記棒状構造発光素子2が絶縁体24を備えていないなら、半導体コア21の外周面において段差が形成されている箇所に応力が集中して、この箇所付近で半導体コア21が折れやすくなる。上記箇所で半導体コア21が折れた場合は、素子不良となる。したがって、上記棒状構造発光素子2は絶縁体24を備え、絶縁体24が半導体コア21の上記箇所付近の外周面を覆うので、上記箇所付近で半導体コア21が折れるのを防ぐことができる。その結果、微細な棒状構造発光素子2を複数製造しても、複数の微細な棒状構造発光素子2の長さを一様にできる。なお、図3に示すように、絶縁体24が半導体コア21の他端側の外周面全体を完全に覆うので、絶縁体24’に比べて、切り離し時に半導体コア21が途中で折れるのを防ぐ効果が高くなる結果、複数の微細な棒状構造発光素子2の長さを確実に一様にできる。
また、上記基板201は、微細な棒状構造発光素子2を切り離した後、微細な棒状構造発光素子2の製造に再利用できるので、製造コストを低減できる。
また、上記棒状構造発光素子2は微細であるので、使用する半導体の量を少なくできる。したがって、棒状構造発光素子2を実装すべき装置の薄型化と軽量化が可能となり、環境への負荷を軽減できる。
また、上記触媒部形成工程において、成長孔26内に形成する島状の触媒金属部28の体積を、触媒金属部28の断面形状がほぼ矩形となるように大きくするので、次の半導体コア形成工程において、棒状の半導体コア21Aの成長孔26内の部分の径より、棒状の半導体コア21Aの成長孔26外の部分の径が大きくなる。したがって、pn接合部を大きくして、広い発光領域を得ることができる。
また、上記半導体コア形成工程において、n型GaNからなる下地層30A上に、n型GaNからなる半導体コア21Aを結晶成長させるので、半導体コア21Aを容易に結晶成長させることができると共に、半導体コア21Aの初期の結晶成長のばらつきを低減することができる。
また、上記半導体形成工程において、島状の触媒金属部28を除去せずに、半導体コア21Aの一端に島状の触媒金属部28を保持した状態で、p型InGaNからなる量子井戸層22Aと、p型GaNからなる半導体層23Aとを形成するので、半導体コア21Aの外周面からの結晶成長よりも、触媒金属部28と半導体コア21の界面からの結晶成長が促進される。つまり、触媒金属部28と半導体コア21の界面からの結晶成長の速度は、半導体コア21Aの外周面からの結晶成長の速度の10倍〜100倍となる。したがって、量子井戸層22Aおよび半導体層23Aにおいて、半導体コア21の外周面を覆う部分の径方向の厚さよりも、半導体コア21の一端側の軸方向端面を覆う部分の軸方向の厚さを容易に厚くすることができる。その結果、半導体コア21の一端側の軸方向端面は露出し難いので、n型の半導体コア21の一端側の軸方向端面にp側電極が接続されるのを防ぐことができる。
また、上記棒状構造発光素子の製造方法により製造された微細な棒状構造発光素子2では、絶縁体24で覆われていない下地層30の軸方向端面30aと、絶縁体24で覆われていない下地層30の周面30bとの少なくとも一方にn側電極を接続し、導電膜25またはこの導電膜25から露出している半導体層23の表面にp側電極を接続して、p型の半導体層23からn型の半導体コア21へ電流を流すことにより、量子井戸層22で電子と正孔の再結合が起きて光が放出される。このとき、量子井戸層22および半導体層23が半導体コア21の一端側の全周面および軸方向端面を覆うように形成されているので、量子井戸層22のほぼ全部から光が放出され、発光領域が広くなる。したがって、発光量を増やすことができると共に、発光効率を高くすることができる。
また、上記棒状構造発光素子2の発光効率を高くすることができるので、棒状構造発光素子2を用いて、発光効率が高く省電力なバックライト、照明装置および表示装置などを実現することができる。
また、上記半導体コア21と半導体層23との間に量子井戸層22を形成することによって、量子井戸層22の量子閉じ込め効果により、発光量をより増やすことができると共に、発光効率をより高くすることができる。
また、上記下地層30の軸方向端面30aおよび周面30bは露出しているので、この軸方向端面30aおよび周面30bの少なくとも一方にn側電極を容易に接続することができる。
また、上記半導体コア21の他端側において半導体層23で覆われていない外周面のうち、半導体コア21の一端側において半導体層23で覆われた外周面付近の部分を、絶縁体24で覆うことによって、n側電極がp側電極と短絡し難くなるので、n側電極およびp側電極の形成は容易である。すなわち、半導体層23に接続すべきp側電極を半導体コア21の外周面の段差付近に形成しても、p側電極が半導体コア21と接触するのを防げるので、n側電極およびp側電極の形成は容易である。このような効果は、絶縁体24に換えて絶縁体24’を形成した場合でも得られる。
さらに、上記棒状構造発光素子の製造方法により製造された微細な棒状構造発光素子2は、量子井戸層22Aおよび半導体層23Aが半導体コア21Aの外周面から半径方向外向に結晶成長し、径方向の成長距離が短くかつ欠陥が外向に逃げる。したがって、結晶欠陥の少ない量子井戸層22および半導体層23で半導体コア21の一端側を覆うことができるので、微細な棒状構造発光素子2の特性を良好にできる。
また、上記棒状構造発光素子2の軸方向が基板の表面に対して平行となるように、棒状構造発光素子2を基板に配置した場合、導電膜25の外周面は絶縁体24の外周面と段差を生じることなく連続するように形成されているので、棒状構造発光素子2の破損を防ぐことができると共に、棒状構造発光素子2が基板の表面に対して傾いて不安定になるのを防ぐことができる。
また、上記棒状構造発光素子2が基板の表面に対して傾いて配置されるのを防ぐことによって、その基板の表面に対する棒状構造発光素子2の接触面積が大きくなるので、棒状構造発光素子2の熱が上記基板へ拡散し易くなる。
上記第1,第2実施形態において、GaAs,AlGaAs,GaAsP,InGaN,AlGaN,GaP,ZnSe,AlGaInPなどを母材とする半導体を用いて、微細な棒状構造発光素子を製造してもよい。
上記第1,第2実施形態では、n型の半導体コア11,21、p型の量子井戸層12,22、p型の半導体層13,23およびn型の下地層30を用いていたが、p型の半導体コア、n型の量子井戸層、n型の半導体層およびp型の下地層を用いてもよい。つまり、上記第1,第2実施形態における導電型を逆にしてもよい。
上記第1,第2実施形態において、半導体コア11,21の直径は300nm以上かつ50μm以下にすると、直径が数10nm〜数100nmの半導体コアに比べて、半導体コア11,21の直径のばらつきを抑えることができ、発光面積すなわち発光特性のばらつきを低減でき、歩留まりを向上できる。
上記第1,第2実施形態では、断面ほぼ円形の棒状の半導体コア11,21の一端側に量子井戸層12,22や半導体層13,23を被覆した棒状構造発光素子1,2について説明したが、例えば、断面ほぼ楕円の棒状の半導体コアの一端側に量子井戸層や半導体層などを被覆した棒状構造発光素子や、断面ほぼ六角形などの他の多角形の棒状の半導体コアの一端側に量子井戸層や半導体層などを被覆した棒状構造発光素子について、本発明を適用してもよい。n型GaNは、六方晶系の結晶成長となり、基板表面に対して垂直方向をc軸方向にして成長させることにより、ほぼ六角柱形状の半導体コアが得られる。成長方向や成長温度などの成長条件に依存するが、成長孔16,26の直径が数10nmから数100nm程度と小さい場合、断面がほぼ円形に近い形状の半導体コアが形成され易い傾向があり、成長孔16,26の直径が0.5μm程度から数μmと大きい場合、断面がほぼ六角形の形状の半導体コアが形成され易い傾向がある。
上記第1,第2実施形態では、一端側の径が他端側の径よりも大きい半導体コア11,21を形成していたが、一端側の径が他端側の径と同じ半導体コアを形成してもよい。このような半導体コアは、成長孔16内に形成する島状の触媒金属部の体積を、触媒金属部の断面形状がほぼ半円となるように小さくすることで容易に形成できる。
上記第1,第2実施形態では、半導体コア11A,21Aの一端に島状の触媒金属部18,28を保持した状態で、p型InGaNからなる量子井戸層12A,22Aと、p型GaNからなる半導体層13A,23Aとを形成していたが、半導体層のみを形成するようにしてもよい。つまり、量子井戸層12A,22Aを形成しないようにしてもよい。
上記第1,第2実施形態では、導電膜15,25の外周面を絶縁体14,24の外周面と段差を生じることなく連続するように形成していたが、導電膜15,25を形成しないようにして、半導体層の外周面を絶縁体14,24の外周面と段差を生じることなく連続するように形成してもよい。
上記第1,第2実施形態では、触媒金属部18,28を用いて、半導体コア11A,21A、量子井戸層12A,22Aおよび半導体層13A,23Aを形成していたが、触媒金属部18,28を用いずに、半導体コア、量子井戸層および半導体層を形成してもよい。
上記触媒金属部18,28を用いないで、半導体コア、量子井戸層および半導体層を形成した場合、量子井戸層および半導体層では、半導体コアの一端側の軸方向端面を覆う部分の軸方向の厚さが、半導体コアの外周面を覆う部分の径方向の厚さとほぼ同じなる。このため、絶縁体エッチング工程において、半導体コアの一端側の軸方向端面は露出し易くなるが、半導体コアの一端側の軸方向端面は露出してもよい。
上記第1,第2実施形態の切り離し工程において、切断工具を用いて導体コア11を基板101から機械的に切り離してもよい。この切断工具を用いて、基板101上に立設する半導体コア11の基板101側に近い根元を折り曲げるようにし、半導体層13に覆われた半導体コア11に対して応力が働いて、半導体層13に覆われた半導体コア11が基板101から切り離される。この場合、簡単な方法で基板101上に設けられた微細な複数の棒状構造発光素子を短時間で切り離すことができる。
上記第1,第2実施形態の絶縁体エッチング工程において、半導体コア11の他端側の端部の周囲にマスク層14B,24Bの一部が残るように、マスク層14Bをエッチングすることによって、導電膜15A,25A、半導体層13A,23Aおよび量子井戸層12A,22Aを一斉にリフトオフしてもよい。
上記第1,第2実施形態において、MOCVD装置に換えて、MBE(分子線エピタキシャル)装置などの他の結晶成長装置を用いてもよい。
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態の棒状構造発光素子を備えたバックライト、照明装置および表示装置について説明する。この第3実施形態では、上記第1,第2実施形態に記載の棒状構造発光素子1,2を絶縁性基板に配列する。この棒状構造発光素子1,2の配列は、本出願人が特願2007−102848(特開2008−260073号公報)で出願した「微細構造体の配列方法及び微細構造体を配列した基板、並びに集積回路装置及び表示素子」の発明の技術を用いて行う。
図5は本第3実施形態のバックライト、照明装置および表示装置に用いる絶縁性基板の平面図を示している。図5に示すように、絶縁性基板350の表面に、金属電極351,352を形成している。絶縁性基板350はガラス、セラミック、酸化アルミニウム、樹脂のような絶縁体、またはシリコンのような半導体表面にシリコン酸化膜を形成し、表面が絶縁性を有するような基板である。ガラス基板を用いる場合は、表面にシリコン酸化膜、シリコン窒化膜のような下地絶縁膜を形成するのが望ましい。
上記金属電極351,352は、印刷技術を利用して所望の電極形状に形成している。なお、金属膜および感光体膜を一様に積層し、所望の電極パターンを露光し、エッチングして形成してもよい。
図5では省略されているが、金属電極351,352には外部から電位を与えられるように、パッドを形成している。この金属電極351,352が対向する部分(配列領域)に棒状構造発光素子を配列する。図5では、棒状構造発光素子を配列する配列領域が2×2個配列されているが、任意の個数を配列してよい。
図6は図5のVI−VI線から見た模式断面図である。
まず、図6に示すように、絶縁性基板350上に、棒状構造発光素子360を含んだイソプロピルアルコール(IPA)361を薄く塗布する。IPA361の他に、エチレングリコール、プロピレングリコール、メタノール、エタノール、アセトン、またはそれらの混合物でもよい。あるいは、IPA361は、他の有機物からなる液体、水などを用いることができる。なお、棒状構造発光素子360は上記第1,第2実施形態に記載の棒状構造発光素子1,2またはその変形例である。
ただし、液体を通じて金属電極351,352間に大きな電流が流れてしまうと、金属電極351,352間に所望の電圧差を印加できなくなってしまう。そのような場合には、金属電極351,352を覆うように、絶縁性基板350表面全体に、10nm〜30nm程度の絶縁膜をコーティングすればよい。
上記棒状構造発光素子360を含むIPA361を塗布する厚さは、次に棒状構造発光素子360を配列する工程で、棒状構造発光素子360が配列できるよう、液体中で棒状構造発光素子360が移動できる厚さである。したがって、IPA361を塗布する厚さは、棒状構造発光素子360の太さ以上であり、例えば、数μm〜数mmである。塗布する厚さは薄すぎると、棒状構造発光素子360が移動し難くなり、厚すぎると、液体を乾燥する時間が長くなる。また、IPAの量に対して、棒状構造発光素子360の量は、1×104本/cm3〜1×107本/cm3が好ましい。
上記棒状構造発光素子360を含むIPA361を塗布するために、棒状構造発光素子360を配列させる金属電極の外周囲に枠を形成し、その枠内に棒状構造発光素子360を含むIPA361を所望の厚さになるように充填してもよい。しかしながら、棒状構造発光素子360を含むIPA361が粘性を有する場合は、枠を必要とせずに、所望の厚さに塗布することが可能である。
IPAやエチレングリコール、プロピレングリコール、…、またはそれらの混合物、あるいは、他の有機物からなる液体、または水などの液体は、棒状構造発光素子360の配列工程のためには粘性が低いほど望ましく、また加熱により蒸発しやすい方が望ましい。
次に、金属電極351,352間に電位差を与える。この第3実施形態では、1Vの電位差とするのが適当であった。金属電極351,352の電位差は、0.1〜10Vを印加することができるが、0.1V以下では棒状構造発光素子360の配列が悪くなり、10V以上では金属電極間の絶縁が問題になり始める。したがって、1〜5Vが好ましく、更には1V程度とするのが好ましい。
図7は上記棒状構造発光素子360が金属電極351,352上に配列する原理を示している。図7に示すように、金属電極351に電位VLを印加し、金属電極352に電位VR(VL<VR)を印加すると、金属電極351には負電荷が誘起され、金属電極352には正電荷が誘起される。そこに棒状構造発光素子360が接近すると、棒状構造発光素子360において、金属電極351に近い側に正電荷が誘起され、金属電極352に近い側に負電荷が誘起される。この棒状構造発光素子360に電荷が誘起されるのは静電誘導による。すなわち、電界中に置かれた棒状構造発光素子360は、内部の電界が0となるまで表面に電荷が誘起されることによる。その結果、各電極と棒状構造発光素子360との間に静電力により引力が働き、棒状構造発光素子360は、金属電極351,352間に生じる電気力線に沿うと共に、各棒状構造発光素子360に誘起された電荷がほぼ等しいので、電荷による反発力により、ほぼ等間隔に一定方向に規則正しく配列する。しかしながら、例えば、第1実施形態の図1に示す棒状構造発光素子1では、軸方向端面11aの向きは一定にならず、ランダムになる(第1実施形態の変形例や他の実施形態の棒状構造発光素子でも同様)。
以上のように、上記棒状構造発光素子360が金属電極351,352間に発生した外部電場により、棒状構造発光素子360に電荷を発生させ、電荷の引力により金属電極351,352に棒状構造発光素子360を吸着させるので、棒状構造発光素子360の大きさは、液体中で移動可能な大きさであることが必要である。したがって、棒状構造発光素子360の大きさは、液体の塗布量(厚さ)により変化する。液体の塗布量が少ない場合は、棒状構造発光素子360はナノオーダーサイズでなければならないが、液体の塗布量が多い場合は、マイクロオーダーサイズであってもかまわない。
上記棒状構造発光素子360が電気的に中性ではなく、正または負に帯電している場合は、金属電極351,352間に静的な電位差(DC)を与えるだけでは、棒状構造発光素子360を安定して配列することができない。例えば、棒状構造発光素子360が正味として正に帯電した場合は、正電荷が誘起されている金属電極352との引力が相対的に弱くなる。そのため、棒状構造発光素子360の配列が非対象になる。
そのような場合は、図8に示すように、金属電極351,352間にAC電圧を印加することが好ましい。図8においては、金属電極352に基準電位を、金属電極351には振幅VPPL/2のAC電圧を印加している。こうすることにより、棒状構造発光素子360が帯電している場合でも、配列を対象に保つことができる。なお、この場合の金属電極352に与える交流電圧の周波数は、10Hz〜1MHzとするのが好ましく、50Hz〜1kHzとするのが最も配列が安定し、より好ましい。さらに、金属電極351,352間に印加するAC電圧は、正弦波に限らず、矩形波、三角波、ノコギリ波など、周期的に変動するものであればよい。なお、VPPLは1V程度とするのが好ましかった。
次に、上記金属電極351,352上に、棒状構造発光素子360を配列させた後、絶縁性基板350を加熱することにより、液体を蒸発させて乾燥させ、棒状構造発光素子360を金属電極351,352間の電気力線に沿って等間隔に配列させて固着させる。
図9は上記棒状構造発光素子360を配列した絶縁性基板350の平面図を示している。この棒状構造発光素子360を配列した絶縁性基板350を、液晶表示装置などのバックライトに用いることにより、薄型化と軽量化が可能でかつ発光効率が高く省電力なバックライトを実現することができる。また、この棒状構造発光素子360を配列した絶縁性基板350を照明装置として用いることにより、薄型化と軽量化が可能でかつ発光効率が高く省電力な照明装置を実現することができる。
また、図10は上記棒状構造発光素子360を配列した絶縁性基板を用いた表示装置の平面図を示している。図10に示すように、表示装置300は、絶縁性基板310上に、表示部301、論理回路部302、論理回路部303、論理回路部304および論理回路部305を備える構成となっている。上記表示部301には、マトリックス状に配置された画素に棒状構造発光素子360を配列している。
図11は上記表示装置300の表示部301の要部の回路図を示しており、上記表示装置300の表示部301は、図11に示すように、互いに交差する複数の走査信号線GL(図11では1本のみを示す)と複数のデータ信号線SL(図11では1本のみを示す)とを備えており、隣接する2本の走査信号線GLと隣接する2本のデータ信号線SLとで包囲された部分に、画素がマトリクス状に配置されている。この画素は、ゲートが走査信号線GLに接続され、ソースがデータ信号線SLに接続されたスイッチング素子Q1と、そのスイッチング素子Q1のドレインにゲートが接続されたスイッチング素子Q2と、上記スイッチング素子Q2のゲートに一端が接続された画素容量Cと、上記スイッチング素子Q2により駆動される複数の発光ダイオードD1〜Dn(棒状構造発光素子360)とを有している。
上記棒状構造発光素子360のpnの極性は、一方に揃っておらず、ランダムに配列されている。このため、駆動時は交流電圧により駆動されて、異なる極性の棒状構造発光素子360が交互に発光することになる。
また、上記表示装置の製造方法によれば、独立した電位が夫々与えられる2つの電極351,352を単位とする配列領域が形成された絶縁性基板350を作成し、その絶縁性基板350上にナノオーダーサイズまたはマイクロオーダーサイズの棒状構造発光素子360を含んだ液体を塗布する。その後、2つの電極351,352に独立した電圧を夫々印加して、微細な棒状構造発光素子360を2つの電極351,352により規定される位置に配列させる。これにより、上記棒状構造発光素子360を所定の絶縁性基板350上に容易に配列させることができる。
また、上記表示装置の製造方法では、使用する半導体の量を少なくできると共に、薄型化と軽量化が可能な表示装置を製造することができる。また、棒状構造発光素子360は、半導体層で覆われた半導体コアの全周から光が放出されることにより発光領域が広くなるので、発光効率が高く省電力な表示装置を実現することができる。
上記第3実施形態では、絶縁性基板350の表面に形成された2つの金属電極351,352に電位差を与えて、金属電極351,352間に棒状構造発光素子360を配列させたが、これに限らず、絶縁性基板の表面に形成された2つの電極間に、第3の電極を形成し、3つの電極に独立した電圧を夫々印加して、棒状構造発光素子を電極により規定される位置に配列させてもよい。
上記第3実施形態では、棒状構造発光素子を備えた表示装置について説明したが、これに限らず、本発明の棒状構造発光素子の製造方法により製造された棒状構造発光素子をバックライトや照明装置などの他の装置に適用してもよい。
本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明は上記第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々変更して実施することができる。