以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
この実施の形態は、静電潜像担持体としての感光体ドラムの帯電及び露光、当該感光体ドラム上に形成された静電潜像のトナーによる現像、得られたトナー画像の記録媒体上への転写、当該記録媒体上のトナー画像の定着といったプロセスを経ることにより、入力された画像データに基づいて当該記録媒体に対して画像を印刷する電子写真記録方式の印刷装置である。
特に、この印刷装置は、記録媒体としての記録用紙上に印刷する1画素分の露光時間を時分割することにより、発光素子によって発光された光を主走査方向に走査することによる第1の露光場所から第nの露光場所までの複数の露光によって1画素を形成する際に、隣接する露光場所の少なくとも一部を重ね合わせながら、露光位置を第1の露光場所から第nの露光場所まで所定距離ずつ離して露光させるとともに、第1の露光場所から第nの露光場所までのうち、少なくとも2箇所以上を異なる露光量(記録エネルギ)で制御して1画素の階調を表現するものである。なお、以下では、説明の便宜上、感光体ドラムに光を照射して露光する露光素子(発光素子)として、複数の発光ダイオード(Light Emitting Diode;以下、LEDという。)素子をアレイ状に配列した印刷装置を用いて説明するものとする。
まず、本発明の第1の実施の形態として示す印刷装置について説明する。
印刷装置は、図1に示すように、静電潜像を形成する感光体ドラム1と、この感光体ドラム1の表面を所定の負電圧に帯電させるために負の高電圧が印加されたチャージローラ2と、アレイ状にLED素子が配列されたLEDヘッド3とを備える。印刷装置においては、LEDヘッド3を構成するLED素子を選択的に発光させることにより、帯電した感光体ドラム1上に静電潜像を形成させる。なお、LEDヘッド3は、複数ビットのデータ入力によって濃度階調が表現可能な階調ヘッドとして構成され、画素毎に印加するエネルギ量を変化させることができるものである。
また、印刷装置は、感光体ドラム1上に形成された静電潜像をトナーによって現像する現像ユニット4を備える。現像ユニット4は、トナーを帯電させ、このトナーを所定の負の高電圧が印加された現像ローラ5に供給し、さらに、この現像ローラ5に供給されたトナーを感光体ドラム1上に供給して当該感光体ドラム1上の静電潜像を可視像とする。
さらに、印刷装置は、現像ユニット4によって現像されたトナー像を記録媒体としての記録用紙P上に転写する転写ローラ(転写器)6を備える。転写ローラ6は、所定の正の高電圧が印加され、感光体ドラム1上に形成されているトナー像を正の電界によって記録用紙P上に転写する。
このような印刷装置においては、ホッピングローラ8を回転させることにより、当該印刷装置本体に着脱可能に設置された用紙カセット9に格納された記録用紙Pを当該用紙カセット9から1枚ずつ繰り出し、さらに一対のレジストローラ10a,10bによって記録用紙Pを搬送する。
さらにまた、印刷装置は、感光体ドラム1及び転写ローラ6の下流に、濃度センサ11を備える。濃度センサ11は、発光素子と受光素子とからなり、記録用紙P上に転写されたトナー濃度を測定する。また、印刷装置は、記録用紙P上に形成されたトナー像を当該記録用紙Pに定着させる定着部として、一対のヒートローラ12a,12bを備える。ヒートローラ12a,12bは、記録用紙P上に形成されたトナー像を高温で溶解することにより、当該記録用紙P上にトナー像を定着させる。印刷装置においては、これらヒートローラ12a,12bによって記録用紙P上に画像を定着させると、当該記録用紙Pを搬送し、スタッカ13に格納する。
このような印刷装置における制御系は、図2に示すように構成される。すなわち、印刷装置は、各部を統括的に制御する制御部20と、インターフェース線21と、A/D(Analog to Digital)コンバータ22と、各種入力操作を行うための操作部23と、LEDヘッド3を駆動制御するLEDヘッド制御部24と、複数のモータ26を駆動制御するモータ制御部25と、チャージローラ2及び現像ローラ5に対して高電圧を印加する高圧電源28,29を制御する高圧制御部27と、D/A(Digital to Analog)コンバータ30と、転写ローラ6に対して高電圧を印加する高圧電源31と、階調補正データを格納するデータ変換メモリ32とを備える。
制御部20は、例えば、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、タイマ等から構成され、各部の制御を司る。具体的には、制御部20は、マイクロプロセッサ及びこのマイクロプロセッサが実行するソフトウェアによって構成される階調データ制御部20aと、ROMやRAM等からなるメモリ20bとを有する。階調データ制御部20aは、必要に応じて、複数の階調からなるテスト印刷パターンのデータを用いて記録用紙Pに対する印刷を行い、この印刷の際に濃度センサ11によって読み取られた記録用紙P上のテスト印刷パターンの濃度のうち、予め決められた設定最低濃度から設定最高濃度までの間を必要とする階調数で分割してサンプリング階調データとし、このサンプリング階調データとテスト印刷パターンのデータの階調との対応関係に基づいて、階調補正を行う。
インターフェース線21は、当該印刷装置の外部に設けられたコンピュータ等の上位装置から画像データを入力するためのものであり、制御部20に接続されている。
A/Dコンバータ22は、濃度センサ11によって検出されたアナログ値の濃度情報をディジタル値に変換する。A/Dコンバータ22は、変換して得られたディジタル値の濃度データを制御部20に供給する。
操作部23は、例えば複数のキー等から構成され、当該印刷装置の各種設定等を行うために設けられる。この操作部23を介した入力操作を示す情報は、制御部20に供給される。
LEDヘッド制御部24は、制御部20におけるメモリ20bから読み出された画像データをLEDヘッド3に対して転送可能な階調データ形式に変換し、さらに、LEDヘッド3を1ライン毎に一定時間駆動することにより、記録用紙Pの移動にともないLED素子による露光位置を線状に移動させる。このLEDヘッド制御部24は、複数のデータ入力線を介してLEDヘッドと接続されている。印刷装置においては、これらデータ入力線のいずれかをオンとすることにより、1画素毎に濃度階調の表現が可能となる。
モータ制御部25は、例えばI/O(Input/Output)ポートやモータドライバ等から構成され、制御部20の指示に基づいて、複数のモータ26を回転させ、ホッピングローラ8やレジストローラ10a,10b、感光体ドラム1、及びヒートローラ12a,12b等を、所定のギヤ列を介して回転させる。
高圧制御部27は、制御部20の指示に基づいて、チャージローラ2及び現像ローラ5に接続されている高圧電源28,29をオン/オフさせる。印刷装置においては、この高圧電源28,29のオン/オフ動作に応じて、チャージローラ2及び現像ローラ5に対して高電圧を印加する。
D/Aコンバータ30は、制御部20から供給されるディジタル値の指示データをアナログの直流電圧に変換する。D/Aコンバータ30は、変換して得られたアナログの直流電圧を高圧電源31に供給する。
高圧電源31は、D/Aコンバータ30の出力電圧に応じて、高電圧を出力する。印刷装置においては、この高圧電源31から出力された高電圧が転写ローラ6に対して印加される。
データ変換メモリ32は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性メモリから構成され、所定の階調補正データを格納する。このデータ変換メモリ32に格納された階調補正データは、制御部20によって読み出される。
このような印刷装置においては、制御部20及びLEDヘッド制御部24の制御のもとに、LEDヘッド3に対して階調データ形式のデータを供給し、LEDヘッド3を駆動する。具体的には、印刷装置においては、制御部20及びLEDヘッド制御部24によって図3に示すような機能を実現する。なお、以下では、説明の便宜上、1画素あたりの画像データが5ビットで表現されるとともに、1画素あたりの駆動パターンデータがn=8ビットで表現されるものとする。
印刷装置は、画像データをライン単位で蓄積する画像データラインバッファ51と、この画像データラインバッファ51から読み出された画像データをLED素子の駆動パターンを示す駆動パターンデータに変換する駆動パターン変換部52と、ストローブ時間を制御するストローブ時間制御回路53と、ライン同期信号及びm−ライン同期信号を発生するライン同期信号発生回路54とを備える。
画像データラインバッファ51は、ライン同期信号発生回路54から出力されるライン同期信号に応じて、上位装置から送信されてくる画像データをライン単位で蓄積する。ここで、画像データラインバッファ51は、2ライン分の容量を有している。1ライン分の容量は、上位装置からの画像データを受信するために用いられ、残りの1ライン分の容量は、既に受信済みの前ラインの画像データを後段の駆動パターン変換部52に供給するために用いられる。
駆動パターン変換部52は、例えば図4に示すような階調値に対応した駆動パターンを示す駆動パターンテーブルを記憶する駆動パターンテーブル記憶部52aと、変換した駆動パターンデータを蓄積する駆動パターンデータバッファ52bとを有する。駆動パターンテーブル記憶部52aは、5ビットのアドレスと8ビットのデータを記憶するメモリである。駆動パターン変換部52は、後述する処理を行うことにより、駆動パターンテーブル記憶部52aに記憶された駆動パターンテーブルに基づいて、画像データラインバッファ51に蓄積された階調値を示す画像データを、1画素毎に駆動パターンデータに変換し、この駆動パターンデータを駆動パターンデータバッファ52bに逐次蓄積する。なお、駆動パターン変換部52は、画像データを駆動パターンデータに変換するのに先立って、階調値を記録エネルギに変換した後、必要に応じて、周辺干渉補正や縦縞補正等を施し、補正した記録エネルギを駆動パターンデータに変換している。この駆動パターンデータバッファ52に蓄積された駆動パターンデータ信号は、ライン同期信号発生回路54によって発生されたm−ライン同期信号に応じて、LEDヘッド3に供給される。
ストローブ時間制御回路53は、併設されたストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に対して図示しないマイクロコンピュータによって設定された値を、ライン同期信号発生回路54によって発生されたm−ライン同期信号の到来毎に内部のタイマ回路にロードし、所定距離毎に同じ露光量を決めるためのストローブ信号であってタイマ回路にロードした値にしたがうパルス幅のストローブ信号を、LEDヘッド3に対して送出する。
ライン同期信号発生回路54は、ライン同期信号を発生するとともに、1/8周期でm−ライン同期信号を発生する。ライン同期信号発生回路54は、発生したライン同期信号を上位装置に対して送信するとともに、発生したm−ライン同期信号を駆動パターン変換部52及びストローブ時間制御回路53に供給する。
このような印刷装置においては、5ビットで表現された画像データをPIXとし、この画像データPIXに対応する8回の駆動パターンデータをPTNとすると、例えば図5に示すように、これら画像データPIXの値と駆動パターンデータPTNの値との対応が予め定義されており、画像データラインバッファ51から1画素ずつ読み出した画像データPIXを、対応する駆動パターンデータPTNに変換する。
さて、印刷装置においては、図示しない上位装置から1ページ分の画像データの印刷指令を受信すると、ライン受信の開始を示すべく、ライン同期信号発生回路54によってライン同期信号をインターフェース線21を介して上位装置に対して送信する。これに応じて、上位装置は、1ライン分の画像データを、LEDヘッド3の主走査方向の画素順に、当該LEDヘッド3に搭載されているLED素子の個数分だけ送信する。ここでは、1画素あたりの画像データは5ビットであり、600dpiのピッチでLED素子が4992個設けられているものとする。したがって、1ライン分の画像データ量は、5×4992=24960ビットである。
印刷装置においては、1ライン分の画像データの受信を完了し、この画像データを画像データラインバッファ51に蓄積すると、蓄積した画像データを、次のライン同期信号の到来に応じて、後段の駆動パターン変換部52に送出開始する。駆動パターン変換部52においては、5ビットで表現される1画素の画像データを、図5に示したように予め定義された対応関係に基づいて変換し、1ライン分の画像データに対応する分だけ蓄積する。なお、1画素あたりの駆動パターンデータは8ビットであり、LED素子が4992個設けられていることから、画像データラインバッファ51の1ライン分の容量に対応する駆動パターン変換部52における1ライン分の画像データ量は、8×4992=39936ビットである。
ここで、図6に、主走査方向に配列されたLED素子と、これに対応する画像データ及び駆動パターンデータとの関係を示す。印刷装置においては、駆動パターン変換部52から、m−ライン同期信号に同期して、駆動パターンデータPTNの最上位ビットPTN[7]のみをLED素子の個数分だけ順次読み出して駆動パターンデータ信号を生成し、LEDヘッド3に対して送出する。この後、印刷装置においては、ストローブ時間レジスタSTBR1に設定されている時間のパルス幅でストローブ信号をストローブ時間制御回路53からLEDヘッド3に対して出力する。さらに、印刷装置においては、次のm−ライン同期信号に同期して、駆動パターンデータPTN[6]のみをLED素子の個数分だけ順次読み出して駆動パターンデータ信号を生成し、LEDヘッド3に対して送出する。そして、印刷装置においては、ストローブ時間レジスタSTBR2に設定されている時間のパルス幅でストローブ信号をストローブ時間制御回路53からLEDヘッド3に対して出力する。印刷装置においては、このようなシーケンスを8回繰り返し行うことにより、画像データラインバッファ51の1ライン分の容量に相当するデータの露光を終了する。
すなわち、8ビットの駆動パターンデータPTNの最上位ビットから最下位ビットまでの各ビットPTN[7],・・・,PTN[0]は、それぞれ、この順序で、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定された時間で示されるパルス幅のストローブ信号に対応する。そして、印刷装置においては、各ビットPTN[7],・・・,PTN[0]が"1"である場合には、対応するストローブ信号のタイミングで、LEDヘッド3内のスイッチ素子をオン状態としてLED素子を発光させる一方で、各ビットPTN[7],・・・,PTN[0]が"0"である場合には、当該スイッチ素子をオフ状態としてLED素子を発光させないように制御する。したがって、1画素毎の累積露光量は、駆動パターンデータPTNの値と、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定された値とによって定まることになる。すなわち、印刷装置においては、感光体ドラム1の露光パターンとして、異なる光学濃度を得る第1の露光パターンから第2n=28の露光パターンの全256通りの露光パターンが実現されることになる。
図7に、図6に示した画像データ及び駆動パターンデータにしたがって発生するLED素子の発光状態を、m−ライン同期信号の信号波形及びストローブ信号の信号波形との関係とともに模式的に示す。同図において、模式的に示したスポット径は、相互の大小関係のみを表現している。このように、印刷装置においては、駆動パターンデータPTNに基づいて、ストローブ信号のパルス幅、すなわち、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定されている時間だけ、LED素子を発光させる。
また、図8(a)乃至図8(d)に、上述した方法によって感光体ドラム1を露光し、現像プロセスを経て形成された画像の光学濃度を、以下に示すようなシミュレーションによって得た結果の一例を示す。このシミュレーションは、簡略化のために、1発光点のみを取り扱ったものである。また、図14に、図8(a)乃至図8(d)に示すグラフを得るためにストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に割り当てた値の一覧を示す。一般に、トナーが安定して付着するためには、ある程度の露光が必要となることから、印刷装置においては、ベースとなる露光を行う時間をストローブ時間レジスタSTBR8に設定している。すなわち、ストローブ信号のうちの1つは、感光体ドラム1を露光してトナーが所定濃度付着する最低露光量を決めるものであるように、ストローブ時間レジスタSTBR8に対して設定される値が決められる。このため、本実施の形態においては、残りのストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR7によって表される7ビットで露光パターンの調整を行っている。
まず、シミュレーションにおいては、各LED素子の発光エネルギの強度分布を測定によって取得し、取得した発光エネルギの強度分布を2次元の配列shape[y][x]に格納した。このとき、強度分布shape[y][x]の総和は、1.0となるように規格化している。このような強度分布shape[y][x]は、例えば図9に示すように表される。
続いて、シミュレーションにおいては、このLED素子をエネルギESで発光させたときの静電潜像を表す配列latimg[y][x]を、次式(2)に示す感光体ドラムの特性式に強度分布shape[y][x]の各値を代入して求めた。例えば、感光体ドラムの光減衰特性を近似する式を求めるにあたっては、予め実験において感光体ドラムに初期帯電電圧Vchを帯電しておき、当該感光体ドラムへの露光量を変化させ、露光後の感光体ドラムの帯電電圧を測定する。そして、図10に示すように、複数の各露光量での感光体ドラムの帯電電圧をプロットし、その測定結果を近似する曲線を表す次式(2)を求めた。このようにして求められた静電潜像latimg[y][x]は、例えば図11に示すように表される。なお、次式(2)におけるVchは、初期帯電電圧であり、Vsatは、飽和残留電圧であり、K1は、半減露光量であり、K2は、第1の感光体特性係数であり、K3は、第2の感光体特性係数である。
そして、シミュレーションにおいては、例えば図12に示すような感光体ドラムの電位と現像レベルとの関係を近似する現像関数dv_funcを用い、潜像電位である静電潜像latimg[y][x]に対応する現像結果dvlp[y][x]を求めた。このようにして求められた現像結果dvlp[y][x]は、例えば図13に示すように表される。このような現像結果dvlp[y][x]は、単位面積あたりに付着するトナーの確率を表すものであることから、シミュレーションにおいては、次式(3)を用いて光学濃度od[y][x]に換算した。なお、次式(3)におけるnは、いわゆるYule−Nielsen nファクタであり、dmaxは、最大光学濃度である。
なお、本実施の形態においては、最大8個の発光点の重なり合いを取り扱う必要があることから、静電潜像latimg[y][x]は、8通りのエネルギES(0),・・・,ES(7)による露光量分布を、先に図7に示したように空間的に重ね合わせたものとし、さらに、非露光場所との境界条件を避けるのに十分な領域(例えば5×5画素の領域)を対象として露光処理を行い、この露光場所の中心画素に対応する部分から光学濃度を得ている。例えば、予め実験によって求めた各エネルギを照射したときの露光分布及び各エネルギの配置から空間的に重ね合わさる領域の面積を減らし、さらに、空間的に重ね合わさる領域の露光量を、複数の露光量の合算を考慮して求めた。
ここで、先に図8(a)乃至図8(d)に示したグラフは、それぞれ、上述したように、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する8種類の値の割り当てを、図14中(a)乃至(d)で示す各行の値とした場合における累積露光量と光学濃度との関係を示すものである。すなわち、図8(a)は、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する単位設定時間をTとしたとき、これらストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する値を、それぞれ、4(=22)×T,8(=23)×T,64(=26)×T,32(=25)×T,16(=24)×T,1(=20)×T,2(=21)×T,16(=24)×Tとしたときの累積露光量と光学濃度との関係を示し、図8(b)は、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する値を、それぞれ、16(=24)×T,8(=23)×T,64(=26)×T,2(=21)×T,4(=22)×T,32(=25)×T,1(=20)×T,16(=24)×Tとしたときの累積露光量と光学濃度との関係を示し、図8(c)は、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する値を、それぞれ、64(=26)×T,4(=22)×T,32(=25)×T,1(=20)×T,16(=24)×T,8(=23)×T,2(=21)×T,16(=24)×Tとしたときの累積露光量と光学濃度との関係を示し、図8(d)は、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する値を、それぞれ、1(=20)×T,4(=22)×T,16(=24)×T,64(=26)×T,2(=21)×T,32(=25)×T,8(=23)×T,16(=24)×Tとしたときの累積露光量と光学濃度との関係を示している。
このように、印刷装置においては、同じ累積露光量であっても、値の割り当てに応じて現像結果の光学濃度が異なるものとなり、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する値が階調再現リニアリティの良悪を左右することがわかる。
なお、図8(a)乃至図8(d)においては、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する値の割り当てとして、4通りの割り当てに対応する結果のみを示したが、本実施の形態においては、全5040通りの割り当てが存在する。そこで、これらストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する値の割り当てと階調再現リニアリティの良悪との関係を評価する指標値LNRを次式(4)で定義する。なお、次式(4)におけるod(n)は、最大光学濃度を1.0として規格化した光学濃度であり、combは、5040通りの値の割り当てのそれぞれに付与した識別情報(0〜5039)であり、mは、画像データの変調に用いる累積露光量の種類数(m=28−1=128)である。なお、m=128であるのは、上述したように、ベースとなる露光を行う時間をストローブ時間レジスタSTBR8に設定しており、残りの7ビットで露光パターンの調整を行うためである。
図15に、5040通りの値の割り当てに対する指標値LNRを求めた結果を示す。このように、指標値LNRは、5040通りの値の割り当てに応じて変化し、その最小値が最良の指標を与えるものとなる。すなわち、印刷装置においては、128通りの露光パターンのそれぞれについて隣接する露光パターンによって得られる光学濃度の差の合計が最小となる場所に、1画素の階調を表現する8個の露光場所を配置することにより、最良の階調再現リニアリティを実現することができる。なお、図8(a)乃至図8(d)は、それぞれ、図15における序列で1番目、1000番目、2000番目、及び3000番目にあたるものであり、先に図7に示した光スポットの配置は、最良の指標を与える図8(a)に対応したものである。印刷装置においては、指標値LNRが少なくとも2/m≒0.015以下となる条件を満たすように露光場所を配置することにより、良好な階調再現リニアリティを実現することができる。
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態として示す印刷装置においては、1画素を形成する複数種類の露光量からなる光スポットの相互作用を鑑みた露光場所の相対位置関係を定めることにより、良好な階調再現リニアリティを実現することができる。
ただし、印刷装置においては、先に図8(a)乃至図8(d)に示したグラフのように良好な階調再現リニアリティを実現することができた場合であっても、厳密には、例えば図16中C,Dで示す領域のように、画像情報と階調再現との関係に反転する領域が現れる場合がある。なお、図16に示すグラフは、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する8種類の値の割り当てを、図14中(a)で示す行の値とした場合における累積露光量と光学濃度との関係を示すものであり、図17に、図16中Cで示す領域近傍の拡大図を示し、図18に、図16中Dで示す領域近傍の拡大図を示している。また、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する8種類の値の割り当てを、図14中(a)で示す行の値とした場合に得られる128通りの累積露光量と、これに対応する駆動パターンデータとの関係は、図19に示すようになる。このような場合、印刷装置においては、以下に示す露光パターンの置き換えを行うことにより、累積露光量の増加に対して光学濃度が減少するという逆転による影響を補正することができる。
まず、印刷装置においては、先に図8(a)乃至図8(d)に示したように、累積露光量に対する光学濃度特性を求める。
そして、印刷装置においては、累積露光量が少ない累積露光量[0]から累積露光量[n−1]までのうち、最も高い光学濃度od[n_max]と、累積露光量[n]の光学濃度od[n]とを比較し、光学濃度od[n_max]よりも光学濃度od[n]が減少する場合には、累積露光量[n]の露光量を得る露光パターンを光学濃度od[n_max]の露光量を得る露光パターンに置き換える駆動パターンテーブルを作成し、駆動パターンテーブル記憶部52aに記憶させる。
具体的には、図19に示した128通りの累積露光量及び駆動パターンデータにおける累積露光量の増加に対する光学濃度の減少がみられる領域について、その駆動パターンによって得られる累積露光量が少なく、且つ、光学濃度が最大である駆動パターンに置き換えた場合には、図20に示すような128通りの累積露光量及び駆動パターンデータが得られる。そして、図20に示す駆動パターンによって得られる累積露光量と光学濃度との関係は、図21に示すように、露光量が増加する場合に光学濃度が減少する領域を補正したものとなる。
このように、印刷装置においては、露光量が増加する場合に光学濃度が減少する領域については、その露光量よりも少ない露光量での光学濃度に置き換えることができ、露光量が増加する場合に光学濃度が減少する領域を補正することができる。
また、階調を粗くしてもよい印刷装置においては、複数ある発光パターンの一部を抜き出して、階調値である光学濃度に対応する発光パターンの変換テーブルを作成するが、累積露光量の増加に対して光学濃度が減少する場所を避け、累積露光量の増加に対して光学濃度が単調増加する領域を選択して累積露光量を得るための露光パターンと光学濃度の駆動パターンテーブルとを作成し、駆動パターンテーブル記憶部52aに記憶させてもよい。
具体的には、図19に示した128通りの累積露光量及び駆動パターンデータのうち、累積露光量の増加に対して光学濃度の減少がみられる領域の駆動パターンデータを削除した場合には、図22に示すような128通りの累積露光量及び駆動パターンデータが得られる。そして、図22に示す駆動パターンによって得られる累積露光量と光学濃度との関係は、図23に示すように、露光量が増加する場合に光学濃度が減少する領域を補正したものとなる。
このように、階調を粗くしてもよい印刷装置においては、累積露光量の増加に対して光学濃度が減少する場所を避け、累積露光量の増加に対して光学濃度が単調増加する領域を選択して累積露光量を得るための露光パターンと光学濃度の駆動パターンテーブルとを作成してもよい。
つぎに、第2の実施の形態として示す印刷装置について説明する。
この第2の実施の形態として示す印刷装置は、第1の実施の形態として示した印刷装置のように、各LED素子の発光時間ではなく、発光強度によって1画素毎の階調値の変調を行うものである。したがって、この第2の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態の説明と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
この第2の実施の形態として示す印刷装置は、制御部20及びLEDヘッド制御部24によって図24に示すような機能を実現する。
すなわち、印刷装置は、上述した画像データラインバッファ51、駆動パターン変換部52、及びライン同期信号発生回路54の他に、ストローブ強度を制御するストローブ強度制御回路61を備える。
ストローブ強度制御回路61は、併設されたストローブ強度レジスタSTBR1,・・・,STBR8に対して図示しないマイクロコンピュータによって設定された値を、ライン同期信号発生回路54によって発生されたm−ライン同期信号の到来毎に内部のタイマ回路にロードし、この値にしたがうアナログ電圧レベルのストローブ信号を、LEDヘッド3に対して送出する。
このような印刷装置においては、駆動パターンデータPTNに基づいて、ストローブ強度レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定されている値に応じたアナログ電圧レベルのストローブ信号をLEDヘッド3に対して出力し、これに応じた発光強度でLED素子を発光させる。すなわち、印刷装置においては、第1の実施の形態と同様に、駆動パターン変換部52において1画素の画像データを予め定義された対応関係に基づいて変換すると、この駆動パターン変換部52から、m−ライン同期信号に同期して、駆動パターンデータPTNの最上位ビットPTN[7]のみをLED素子の個数分だけ順次読み出して駆動パターンデータ信号を生成し、LEDヘッド3に対して送出する。この後、印刷装置においては、ストローブ強度レジスタSTBR1に設定されている値に応じたアナログ電圧レベルのストローブ信号をストローブ強度制御回路61からLEDヘッド3に対して出力する。さらに、印刷装置においては、次のm−ライン同期信号に同期して、駆動パターンデータPTN[6]のみをLED素子の個数分だけ順次読み出して駆動パターンデータ信号を生成し、LEDヘッド3に対して送出する。そして、印刷装置においては、ストローブ強度レジスタSTBR2に設定されている値に応じたアナログ電圧レベルのストローブ信号をストローブ強度制御回路61からLEDヘッド3に対して出力する。印刷装置においては、このようなシーケンスを8回繰り返し行うことにより、画像データラインバッファ51の1ライン分の容量に相当するデータの露光を終了する。
このように、印刷装置においては、1画素毎の階調値をLED素子の発光強度によって変調する。したがって、画素毎に対応する累積露光量は、第1の実施の形態と同様であり、駆動パターンデータPTNの値と、ストローブ強度レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定された値とによって定まることになる。すなわち、印刷装置においては、感光体ドラム1の露光パターンとして、異なる光学濃度を得る第1の露光パターンから第2n−1=28−1の露光パターンの全128通りの露光パターンが実現されることになる。なお、露光パターンが2n−1種類であるのは、上述したように、ベースとなる露光を行う時間をストローブ時間レジスタSTBR8に設定しており、残りの7ビットで露光パターンの調整を行うためである。また、印刷装置においては、感光体ドラム1上に形成される静電潜像についても第1の実施の形態と変わりなく、さらに、光スポットの配置についても先に図7に示したように表される。
さらに、印刷装置においては、ストローブ強度レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する値の割り当てとして、第1の実施の形態と同様に、全5040通りの割り当てが存在し、同じ累積露光量であっても、値の割り当てに応じて現像結果の光学濃度が異なるものとなり、ストローブ強度レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する値が階調再現リニアリティの良悪を左右する。したがって、印刷装置においては、ストローブ強度レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する値の割り当てと階調再現リニアリティの良悪との関係を評価する指標値LNRについても、上式(4)で定義することができ、その最小値が最良の指標を与えるものとなる。すなわち、印刷装置においては、128通りの露光パターンのそれぞれについて隣接する露光パターンによって得られる光学濃度の差の合計が最小となる場所に、1画素の階調を表現する8個の露光場所を配置することにより、最良の階調再現リニアリティを実現することができ、指標値LNRが少なくとも2/m以下となる条件を満たすように露光場所を配置することにより、良好な階調再現リニアリティを実現することができる。
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態として示す印刷装置においては、各LED素子の発光時間ではなく、発光強度によって1画素毎の階調値の変調を行う場合であっても、1画素を形成する複数種類の露光量からなる光スポットの相互作用を鑑みた露光場所の相対位置関係を定めることにより、良好な階調再現リニアリティを実現することができる。
つぎに、第3の実施の形態として示す印刷装置について説明する。
この第3の実施の形態として示す印刷装置は、第1の実施の形態として示した印刷装置と同じ階調表現能力を有するものであり、2値モードで印刷を行う場合の対策を備えたものである。したがって、この第3の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態の説明と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
この第3の実施の形態として示す印刷装置は、制御部20及びLEDヘッド制御部24によって先に図3に示したような機能を実現する。ここで、2値モードで印刷を行う場合に上位装置から送信されてくる画像データは、1画素あたり5ビットからなるものであるが、最下位ビットPIX[0]又は最上位ビットPIX[31]のみが送信され、その他の値は送信されない。
このような印刷装置においては、5ビットで表現された画像データをPIXとし、この画像データPIXに対応する8回の駆動パターンデータをPTNとすると、例えば図25に示すように、これら画像データPIXの値と駆動パターンデータPTNの値との対応が予め定義されており、画像データラインバッファ51から1画素ずつ読み出した画像データPIXを、対応する駆動パターンデータPTNに変換する。なお、本実施の形態においては、画像データPIX[0]又はPIX[31]のみが参照されることになる。
すなわち、印刷装置においては、1ライン分の画像データの受信を完了し、この画像データを画像データラインバッファ51に蓄積すると、蓄積した画像データを、次のライン同期信号の到来に応じて、後段の駆動パターン変換部52に送出開始する。駆動パターン変換部52においては、5ビットで表現される1画素の画像データを、図25に示したように予め定義された対応関係に基づいて変換し、1ライン分の画像データに対応する分だけ蓄積する。
ここで、図26に、主走査方向に配列されたLED素子と、これに対応する画像データ及び駆動パターンデータとの関係を示す。印刷装置においては、第1の実施の形態と同様に、駆動パターン変換部52から、m−ライン同期信号に同期して、駆動パターンデータPTNの最上位ビットPTN[7]のみをLED素子の個数分だけ順次読み出して駆動パターンデータ信号を生成し、LEDヘッド3に対して送出する。この後、印刷装置においては、ストローブ時間レジスタSTBR1に設定されている時間のパルス幅でストローブ信号をストローブ時間制御回路53からLEDヘッド3に対して出力する。さらに、印刷装置においては、次のm−ライン同期信号に同期して、駆動パターンデータPTN[6]のみをLED素子の個数分だけ順次読み出して駆動パターンデータ信号を生成し、LEDヘッド3に対して送出する。そして、印刷装置においては、ストローブ時間レジスタSTBR2に設定されている時間のパルス幅でストローブ信号をストローブ時間制御回路53からLEDヘッド3に対して出力する。印刷装置においては、このようなシーケンスを8回繰り返し行うことにより、画像データラインバッファ51の1ライン分の容量に相当するデータの露光を終了する。
このように、印刷装置においては、1画素毎の階調値をLED素子の発光時間によって変調する。したがって、画素毎に対応する累積露光量は、1画素毎の累積露光量は、駆動パターンデータPTNの値と、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定された値とによって定まることになる。すなわち、印刷装置においては、感光体ドラム1の露光パターンとして、異なる光学濃度を得る第1の露光パターンから第2n=28の露光パターンの全256通りの露光パターンが実現されることになる。
図27に、図26に示した画像データ及び駆動パターンデータにしたがって発生するLED素子の発光状態を、m−ライン同期信号の信号波形及びストローブ信号の信号波形との関係とともに模式的に示す。同図において、模式的に示したスポット径は、相互の大小関係のみを表現している。このように、印刷装置においては、駆動パターンデータPTNに基づいて、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定されている時間だけ、LED素子を発光させる。
また、図28に、上述した方法によって感光体ドラム1を露光し、現像プロセスを経て形成された画像の光学濃度を、第1の実施の形態にて説明したものと同様のシミュレーションによって得た結果の一例を示す。また、図29に、図28に示すグラフを得るためにストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に割り当てた値の一覧を示す。一般に、トナーが安定して付着するためには、ある程度の露光が必要となることから、印刷装置においては、ベースとなる露光を行う時間をストローブ時間レジスタSTBR8に設定している。このため、本実施の形態においては、残りのストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR7によって表される7ビットで露光パターンの調整を行っている。
このように、図28に示したグラフは、上述したように、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する8種類の値の割り当てを、図29で示す値とした場合における累積露光量と光学濃度との関係を示すものである。すなわち、図28は、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する単位設定時間をTとしたとき、これらストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する値を、それぞれ、16(=24)×T,8(=23)×T,4(=22)×T,2(=21)×T,32(=25)×T,64(=26)×T,1(=20)×T,16(=24)×Tとしたときの累積露光量と光学濃度との関係を示している。同図から、累積露光量79×Eで得られる光学濃度は、これよりも大きな累積露光量で得られる光学濃度とほぼ遜色ない大きな値が得られていることがわかる。したがって、印刷装置においては、画像データPIX[31]に対応させてより小さな累積露光量で2値モード印刷を行うことが可能となる。なお、先に図27に示した光スポットの配置は、最大の現像効率を与える図28に対応したものである。
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態として示す印刷装置においては、1画素を形成する複数種類の露光量からなる光スポットの相互作用に基づいて、単位露光量あたりの発生濃度が最も高い露光場所の相対位置関係を定めることにより、高い現像効率を得ることができ、低消費電力化を図ることができる。
つぎに、第4の実施の形態として示す印刷装置について説明する。
この第4の実施の形態として示す印刷装置は、第1の実施の形態として示した印刷装置を改良し、累積露光量を上げても光学濃度が低くなる場合に対処することができるものであり、階調値の増加に対して、1単位の画素を構成する画像要素の記録エネルギの総和と光学濃度の増加量との比が0以上となるように、階調値を駆動パターンデータに変換するものである。したがって、この第4の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態の説明と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
この第4の実施の形態として示す印刷装置は、制御部20及びLEDヘッド制御部24によって先に図3に示したような機能を実現する。ここで、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する単位設定時間をTとしたとき、図30に示すように、これらストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する値を、それぞれ、128(=27)×T,64(=26)×T,32(=25)×T,16(=24)×T,8(=23)×T,4(=22)×T,2(=21)×T,1(=20)×Tとする。このストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8の組み合わせの場合には、単位設定時間Tで得られる単位露光量をEとすると、0〜256×Eの全256通りの累積露光量が実現される。
ここで、図31に、主走査方向に配列された4992個のLED素子と、これに対応する5ビットの画像データ及び8ビットの駆動パターンデータとの関係の一例を示す。なお、駆動パターンデータは、上述した駆動パターンデータバッファ52bに蓄積されるものである。また、上述した駆動パターンテーブル記憶部52aには、先に図4に示したような階調値に対応した駆動パターンを示す駆動パターンテーブルが記憶されているものとする。
このような印刷装置においては、図31に示す駆動パターンデータが駆動パターンデータバッファ52bに蓄積された場合には、図32に示すタイミングにしたがって、駆動パターン変換部52から、m−ライン同期信号に同期して、駆動パターンデータPTNの最上位ビットPTN[7]のみをLED素子の個数分だけ順次読み出して駆動パターンデータ信号を生成し、LEDヘッド3に対して送出する。この後、印刷装置においては、ストローブ時間制御回路53から、ストローブ時間レジスタSTBRに設定されている時間のパルス幅(Ts1=128×T)でストローブ信号をLEDヘッド3に対して出力する。さらに、印刷装置においては、次のm−ライン同期信号に同期して、駆動パターンデータPTN[6]のみをLED素子の個数分だけ順次読み出して駆動パターンデータ信号を生成し、LEDヘッド3に対して送出する。そして、印刷装置においては、ストローブ時間レジスタSTBR2に設定されている時間のパルス幅(Ts2=64×T)でストローブ信号をストローブ時間制御回路53からLEDヘッド3に対して出力する。印刷装置においては、このようなシーケンスを8回繰り返し行うことにより、画像データラインバッファ51の1ライン分の容量に相当するデータの露光を終了する。
図33に、図31に示した画像データ及び駆動パターンデータにしたがって発生するLED素子の発光状態を、m−ライン同期信号の信号波形及びストローブ信号の信号波形との関係とともに模式的に示す。同図において、模式的に示したスポット径は、相互の大小関係のみを表現している。また、同図において、m−ライン同期信号の間隔は、LED素子の主走査方向のピッチ600dpiの1/8であり、4800dpiである。1画素は、m−ライン1〜8の駆動パターンで構成される。
m−ライン1は、駆動パターンデータPTN[7]に対応し、m−ライン2は、駆動パターンデータPTN[6]に対応し、同様に、m−ライン3〜8は、駆動パターンデータPTN[5]〜PTN[0]に対応している。また、m−ライン1は、ストローブ時間レジスタSTBR1に設定されている時間のパルス幅(Ts1=128×T)で露光され、m−ライン2は、ストローブ時間レジスタSTBR2に設定されている時間のパルス幅(Ts2=64×T)で露光され、同様に、m−ライン3〜8は、ストローブ時間レジスタSTBR3〜STBR8にそれぞれ設定されている時間のパルス幅(Ts3=32×T、Ts4=16×T、Ts5=8×T、Ts6=4×T、Ts7=2×T、Ts8=1×T)で露光される。
印刷装置においては、駆動パターン変換部52により、例えば図34に示すように、上位装置から画像データラインバッファ51によって受信された5ビットの階調値によって表される画像データと、これに対応する駆動パターンを示す駆動パターンテーブルとの関係にしたがって、LED番号1の階調値"7"を駆動パターンデータ"34hex"に変換し、PTN[5]、PTN[4]、PTN[2]に対応するm−ライン3,4,6の露光を行う。このように、印刷装置においては、駆動パターンデータPTNに基づいてLED素子を発光させることによって露光を行う。
ここで、図35に、上位装置から画像データラインバッファ51によって受信された5ビットの階調値によって表される画像データと、これに対応する露光量との関係を示し、図36に、図30に示したストローブ時間の組み合わせによって得られる256通りの累積露光量と、これに対応する駆動パターンを示す駆動パターンテーブルとの関係を示す。図36に示す256通りの累積露光量と光学濃度との関係は、図37に示すようになる。このように、図36に示す駆動パターンは、図37中E,Fで示す領域のように、累積露光量の増加に対して光学濃度の減少がみられ、光学濃度が反転してしまう特徴を有する。また、先に図34に示した階調値に対応した駆動パターンテーブルは、図35及び図36に基づいて作成されたものである。印刷装置においては、図34に示した駆動パターンテーブルを駆動パターンテーブル記憶部52aに記憶している状態で、駆動パターン変換部52により、この駆動パターンテーブルに基づいて、階調値から駆動パターンへの変換を行うと、例えば図38に示すように、階調値の増加に対して光学濃度が減少してしまう領域が現れることになる。
そこで、印刷装置においては、累積露光量及び駆動パターンデータにおける累積露光量の増加に対する光学濃度の減少がみられる領域についての駆動パターンを置き換える。図39に、図30に示したストローブ時間の組み合わせによって得られる256通りの累積露光量と、これに対応する駆動パターンを示す駆動パターンテーブルとの関係を示す。この図39に示す駆動パターンテーブルは、先に図36に示した駆動パターンテーブルとは異なり、図37中Eで示した累積露光量が96×E〜101×Eの領域と、同図中Fで示した累積露光量が128×E〜135×Eの領域とに使用する駆動パターンを変更したものである。ここでは、累積露光量が96×E〜101×Eの領域を、本来の駆動パターンによって得られる累積露光量よりも少なく、且つ、光学濃度が最大である95×Eの駆動パターンである"5Fhex"に置き換え、累積露光量が128×E〜135×Eの領域を、本来の駆動パターンによって得られる累積露光量よりも少なく、且つ、光学濃度が最大である127×Eの駆動パターンである"7Fhex"に置き換えている。なお、先に図4に示した階調値に対応した駆動パターンテーブルは、図35及び図39に基づいて作成されたものである。印刷装置においては、このような駆動パターンテーブルを駆動パターンテーブル記憶部52aに記憶しておき、駆動パターン変換部52により、この駆動パターンテーブルに基づいて、階調値から駆動パターンへの変換を行う。これにより、印刷装置においては、図40に示すように、階調値の増加に対して光学濃度が減少する領域をなくすことができる。
以上説明したように、本発明の第4の実施の形態として示す印刷装置においては、階調値の増加に対して、1単位の画素を構成する画像要素の記録エネルギの総和と光学濃度の増加量との比が0以上となるように、階調値を駆動パターンデータに変換する。具体的には、この印刷装置においては、累積露光量及び駆動パターンデータにおける累積露光量の増加に対する光学濃度の減少がみられる領域について、その駆動パターンによって得られる累積露光量が少なく、且つ、光学濃度が最大である駆動パターンに置き換えることにより、極めて良好な階調再現リニアリティを実現し、印刷品質を大幅に向上させることができる。
最後に、第5の実施の形態として示す印刷装置について説明する。
この第5の実施の形態として示す印刷装置は、第4の実施の形態として示した印刷装置と同様に、階調値の増加に対して、1単位の画素を構成する画像要素の記録エネルギの総和と光学濃度の増加量との比が0以上となるように、階調値を駆動パターンデータに変換することができる他の方法を提案するものである。したがって、この第5の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態の説明と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
この第5の実施の形態として示す印刷装置は、制御部20及びLEDヘッド制御部24によって先に図3に示したような機能を実現する。ここで、ストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8に設定する値は、それぞれ、先に図30に示したように、128(=27)×T,64(=26)×T,32(=25)×T,16(=24)×T,8(=23)×T,4(=22)×T,2(=21)×T,1(=20)×Tとする。このストローブ時間レジスタSTBR1,・・・,STBR8の組み合わせの場合には、単位設定時間Tで得られる単位露光量をEとすると、0〜256×Eの全256通りの累積露光量が実現される。
ここで、図41に、主走査方向に配列された4992個のLED素子と、これに対応する5ビットの画像データ及び8ビットの駆動パターンデータとの関係の一例を示す。また、上述した駆動パターンテーブル記憶部52aには、図42に示すような階調値に対応した駆動パターンを示す駆動パターンテーブルが記憶されているものとする。
このような印刷装置においては、図41に示す駆動パターンデータが駆動パターンデータバッファ52bに蓄積された場合には、図43に示すタイミングにしたがって、駆動パターン変換部52から、m−ライン同期信号に同期して、駆動パターンデータPTNの最上位ビットPTN[7]のみをLED素子の個数分だけ順次読み出して駆動パターンデータ信号を生成し、LEDヘッド3に対して送出する。この後、印刷装置においては、ストローブ時間制御回路53から、ストローブ時間レジスタSTBRに設定されている時間のパルス幅(Ts1=128×T)でストローブ信号をLEDヘッド3に対して出力する。さらに、印刷装置においては、次のm−ライン同期信号に同期して、駆動パターンデータPTN[6]のみをLED素子の個数分だけ順次読み出して駆動パターンデータ信号を生成し、LEDヘッド3に対して送出する。そして、印刷装置においては、ストローブ時間レジスタSTBR2に設定されている時間のパルス幅(Ts2=64×T)でストローブ信号をストローブ時間制御回路53からLEDヘッド3に対して出力する。印刷装置においては、このようなシーケンスを8回繰り返し行うことにより、画像データラインバッファ51の1ライン分の容量に相当するデータの露光を終了する。
図44に、図41に示した画像データ及び駆動パターンデータにしたがって発生するLED素子の発光状態を、m−ライン同期信号の信号波形及びストローブ信号の信号波形との関係とともに模式的に示す。同図において、模式的に示したスポット径は、相互の大小関係のみを表現している。また、同図において、m−ライン同期信号の間隔は、LED素子の主走査方向のピッチ600dpiの1/8であり、4800dpiである。1画素は、m−ライン1〜8の駆動パターンで構成される。
ここでも、m−ライン1は、駆動パターンデータPTN[7]に対応し、m−ライン2は、駆動パターンデータPTN[6]に対応し、同様に、m−ライン3〜8は、駆動パターンデータPTN[5]〜PTN[0]に対応している。また、m−ライン1は、ストローブ時間レジスタSTBR1に設定されている時間のパルス幅(Ts1=128×T)で露光され、m−ライン2は、ストローブ時間レジスタSTBR2に設定されている時間のパルス幅(Ts2=64×T)で露光され、同様に、m−ライン3〜8は、ストローブ時間レジスタSTBR3〜STBR8にそれぞれ設定されている時間のパルス幅(Ts3=32×T、Ts4=16×T、Ts5=8×T、Ts6=4×T、Ts7=2×T、Ts8=1×T)で露光される。
印刷装置においては、駆動パターン変換部52により、図42に示したように、上位装置から画像データラインバッファ51によって受信された5ビットの階調値によって表される画像データと、これに対応する駆動パターンを示す駆動パターンテーブルとの関係にしたがって、LED番号1の階調値"7"を駆動パターンデータ"34hex"に変換し、PTN[5]、PTN[4]、PTN[2]に対応するm−ライン3,4,6の露光を行う。このように、印刷装置においては、駆動パターンデータPTNに基づいてLED素子を発光させることによって露光を行う。
ここで、図45(a)及び図45(b)に、図30に示したストローブ時間の組み合わせによって得られる256通りの累積露光量と、これに対応する駆動パターンを示す駆動パターンテーブルとの関係を示す。図45(a)に示す駆動パターンテーブルは、図37中Eで示した累積露光量が96×E〜101×Eの領域に使用する駆動パターンを削除したものである。また、図37中Fで示した領域に使用する駆動パターンは、図45(a)に示す駆動パターンテーブルにおいて、累積露光量が122×E〜129×Eの部分にシフトされる。さらに、図45(b)に示す駆動パターンテーブルは、図37中Fで示した累積露光量が128×E〜135×Eの領域に使用する駆動パターンを削除したものである。この結果、図45(b)に示す駆動パターンテーブルは、図30に示したストローブ時間の組み合わせによって得られる256通りの累積露光量と駆動パターンとの対応を示すものであるが、図37中E,Fで示した領域に使用する駆動パターンは使用していないものとなる。
すなわち、印刷装置においては、累積露光量及び駆動パターンデータにおける累積露光量の増加に対する光学濃度の減少がみられる領域についての駆動パターンを削除する。先に図42に示した駆動パターンテーブルは、図35及び図45(b)に基づいて作成されたものである。印刷装置においては、このような駆動パターンテーブルを駆動パターンテーブル記憶部52aに記憶しておき、駆動パターン変換部52により、この駆動パターンテーブルに基づいて、階調値から駆動パターンへの変換を行う。これにより、印刷装置においては、図46に示すように、階調値の増加に対して光学濃度が減少する領域をなくすことができる。
以上説明したように、本発明の第5の実施の形態として示す印刷装置においては、階調値の増加に対して、1単位の画素を構成する画像要素の記録エネルギの総和と光学濃度の増加量との比が0以上となるように、階調値を駆動パターンデータに変換する。具体的には、この印刷装置においては、累積露光量及び駆動パターンデータにおける累積露光量の増加に対する光学濃度の減少がみられる領域について、その駆動パターンを削除することにより、階調値の増加にともなって光学濃度が必ず増加することになり、極めて良好な階調再現リニアリティを実現し、印刷品質を大幅に向上させることができる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態では、感光体ドラム1に光を照射して露光する露光素子として、複数のLED素子からなる列を備えた印刷装置を用いて説明したが、本発明は、電子写真方式による印刷装置に適用する場合には、レーザやEL(Electronic Luminescent)素子アレイ等を露光素子として用いてもよい。また、本発明は、複数の発熱素子からなる列を備えたサーマルヘッドを使用した印刷装置にも適用することができる。すなわち、本発明は、露光素子や発熱素子といった任意の記録素子を用いた記録ヘッドを備えた印刷装置であり、記録ヘッドと記録用紙とを相対的に主走査方向と略直交する副走査方向に移動させて画像を記録し、記録ヘッドによって主走査方向に記録された画像を主走査線像としたとき、副走査方向にずれた所定本数の主走査線像を構成する画像要素のうち、主走査方向の略同一位置に配置された画像要素の集まりである画素毎に多値の階調を表現する印刷装置であれば適用することができる。
さらに、本発明は、発光素子によって発光された光ビームを主走査方向に走査する露光部を備えるレーザプリンタにおいて、主走査方向と略直交する副走査方向に複数回の露光によって1画素を形成して階調表現する場合に、1画素を構成する画像要素の駆動パターンの選択にも適用することができる。
さらにまた、本発明は、複数の発熱素子からなる列を備えたサーマルヘッドを使用して画像形成を行うサーマルプリンタにおいて、副走査方向に複数回の通電によって1画素を形成して階調表現する場合に、1画素を構成する画像要素の通電パターンの選択にも適用することができる。
また、本発明は、所定の記録媒体に対する印刷を行う機器であればいかなるものであっても適用することができ、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写機、及びこれらの機能を複合的に備える装置に適用して好適である。
このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。