JP4907300B2 - ハイブリッド車両のモータロータ - Google Patents

ハイブリッド車両のモータロータ Download PDF

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本発明は、駆動輪を駆動するための動力源としてエンジンと電動モータとを併用するハイブリッド車両のモータロータに関する。
従来より、エンジンと電動モータとを駆動源として併用するハイブリッド車両には、エンジンを車両走行の駆動源の主体とし、電動モータによって駆動力のアシストを行うとともに制動力の回生を行うようにしたパラレルハイブリッド車両がある。また、パラレルハイブリッド車両の構成としてはエンジンと変速機との間に電動モータを配設したものがあり、この種のハイブリッド車両に採用される電動モータのロータ(モータロータ)としては、エンジンのクランク軸に直結するロータハブに、環状のロータ本体を外嵌したものが広く知られている。
ところで、上述のロータ本体は、一般に、電磁鋼材等からなる環状のロータコアに複数のマグネットが保持されて要部が構成されている。このようなロータ本体では、ロータコアに過剰な応力が作用すると磁束の挙動が変化する。従って、ロータ本体の磁束変化に起因する電動モータの出力性能の低下を抑制するためには、ロータ本体をロータハブに外嵌する際の圧入緊度を低く設定する必要がある。
その一方で、エンジンのクランク軸は各気筒の爆発タイミング等に起因して微小に偏心しながら回転するため、クランク軸には微小なスラスト力が発生する。従って、このようなクランク軸にロータハブを直結した場合、ロータ本体は、クランク軸から伝達されるスラスト力によってロータハブから脱落する虞がある。
そこで、この種の電動モータでは、一般に、ロータ本体よりも高い圧入緊度でロータハブに外嵌した環状のストッパをロータ本体の軸方向端面に当接させることにより、ロータ本体の脱落防止が図られている(例えば、特許文献1参照)。なお、この種の電動モータにおいて、ロータで発生する磁束の軸方向へのリークを抑制して出力低下を防止するため、ストッパを非磁性体で構成し、ストッパに磁束遮断機能を持たせることも可能である。
特開2005−57832号公報
しかしながら、電動モータがエンジンと変速機の間に配設されたハイブリッド車両においては、ロータが高温に曝されるため、ロータハブとストッパとの熱膨張率の関係によっては、ストッパがロータハブから脱落する虞がある。特に、電動モータの出力特性の向上を図るべくストッパを非磁性体で構成した場合、一般に、非磁性体は鉄等よりも熱膨張率が大きいため、エンジンや変速機から伝達される熱によって容易に脱落してしまう虞がある。
これに対処し、ストッパをロータハブにボルト締結等することも考えられるが、このような締結構造を採用すると、電動モータの軸方向への大型化や構造の複雑化等を招く虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、電動モータを軸方向に大型化させることなく簡単な構成でロータ本体をロータハブに確実に保持することができ、しかも、電動モータの出力性能を向上することができるハイブリッド車両のモータロータを提供することを目的とする。
本発明は、エンジンのクランク軸と変速機の入力軸との間に電動モータを備えたハイブリッド車両のモータロータであって、環状に形成されたロータ本体と、前記クランク軸の軸方向に延伸する筒状部を有し、当該筒状部の外周に前記ロータ本体が外嵌するロータハブと、前記ロータ本体の軸方向端面に当接するディスク部と当該ディスク部から延伸する圧接部とが前記ロータハブよりも熱膨張率の大きい非磁性体で一体形成され、前記筒状部の内周への前記圧接部の圧接によって前記ロータハブに固設する磁束遮断ディスクと、を備えたことを特徴とする。
本発明のハイブリッド車両のモータロータによれば、電動モータを軸方向に大型化させることなく簡単な構成でロータ本体をロータハブに確実に保持することができ、しかも、出力低下を防止することができる。
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1はハイブリッド車両の駆動装置を示すスケルトン図、図2は電動モータの要部断面図、図3はロータの分解斜視図である。
図1において、符号1はエンジン10と電動モータ20とを駆動源として併用するパラレル方式のハイブリッド車両の駆動装置を示す。本実施形態において、この駆動装置1は、例えば、エンジン10と変速機50とが車両の前後方向に沿って縦置き配置される4輪駆動車用の駆動装置であり、エンジン10のクランク軸11と変速機50の入力軸(変速入力軸)51との間に、電動モータ20が介装されている。
電動モータ20は、エンジン10に連設するモータハウジング21に固設されたステータ22と、モータハウジング21内でクランク軸11に連結されるロータ(モータロータ)23とを有する。そして、このロータ23は、トルクコンバータ40を介して、変速入力軸51に連設されている。すなわち、ロータ23はトルクコンバータ40のポンプシェル41に固定されており、クランク軸11とトルクコンバータ40とはロータ23を介して直結されている。さらに、トルクコンバータ40のポンプシェル41にはポンプインペラ42が固定されているとともに、ポンプインペラ42に対向してタービンランナ43が収容され、タービンランナ43に固定されるタービン軸44には変速入力軸51が連結されている。
これにより、エンジン10のクランク軸11から出力されるエンジン動力は、電動モータ20のロータ23を回転駆動するとともに、トルクコンバータ40を介して変速入力軸51に入力されるようになっている。また、発進時や加速時など大きな駆動トルクが要求される場合には、電動モータ20のステータコイル22aに対して通電制御を行うことにより、モータ動力を出力してエンジン10をアシストすることが可能となっている。一方、車両減速時等においては、電動モータ20を発電機として駆動させることにより、運動エネルギを電気エネルギに変換して図示しないバッテリに回収するようにしている。また、トルクコンバータ40にはクランク軸11とタービン軸44とを直結するロックアップクラッチ45が設けられており、定常走行時にはロックアップクラッチ45を締結してエンジン動力やモータ動力の伝達効率を向上させることが可能となっている。
また、エンジン動力やモータ動力が入力される変速入力軸51には、遊星歯車列、クラッチ、ブレーキ等を備える変速機構52が連結されている。この変速機構52内のクラッチやブレーキを締結制御することにより、変速入力軸51と変速出力軸53との間の動力伝達径路を切り換えて変速することが可能となる。さらに、変速出力軸53とこれの同心上に設けられる後輪出力軸54との間には、前後輪に駆動トルクを分配する複合遊星歯車式のセンタデファレンシャル機構55が装着されており、このセンタデファレンシャル機構55を介して前輪出力軸56と後輪出力軸54とには所定の分配比で駆動トルクが分配される。なお、センタデファレンシャル機構55に設けられる差動制限クラッチ55aを締結することにより、ピニオンギヤ55bの差動回転を抑制して前後輪のトルク分配比を50:50に固定することが可能となる。
次に、図2及び図3を参照して、ロータ23の構成について詳細に説明する。
本実施形態において、ロータ23は、ステータ22の内周に対向する環状のロータ本体25と、このロータ本体25をクランク軸11と同軸上に軸支するロータハブ26と、ロータ本体25の軸方向の各端面に当接する第1,第2の磁束遮断ディスク27,28とを有して構成されている。
ロータ本体25は、例えば、電磁鋼材で構成された環状のロータコア30を有する。このロータコア30の内周には、軸方向に延伸する複数の嵌合突起30aが所定角度間隔毎に形成されている。また、ロータコア30の外周には、複数の凹部30bが所定角度間隔毎に形成され、各凹部30bにはマグネット31がそれぞれ収容されている。そして、各凹部30bに収容された各マグネット31は、ロータコア30の外周に装着されるアウタリング32によって保持されている。
ロータハブ26は、例えば、クランク軸11に連結する軸部35と、軸部35の外周でクランク軸11の軸方向に延伸する筒状部36とを有し、これらが鉄系材料を用いて一体形成されている。
軸部35は、クランク軸11との当接面に開口する複数のボルト挿通孔35aを有し、これらボルト挿通孔35aに挿通されたボルト37を介して、クランク軸11に締結固定されている。また、軸部35の後部にはドライブプレート38が固設され、このドライブプレート38を介して、軸部35がトルクコンバータ40のポンプシェル41に連結されている。
筒状部36の外周には、ロータコア30の嵌合突起30aに対応する嵌合溝36aが、所定角度間隔毎に形成されている。また、筒状部36の後端部には、外向フランジ36bが周設されている。そして、この筒状部36の外周には、ロータ本体25が、筒状部36の前端部側から装着される。その際、嵌合溝36aに嵌合突起30aが嵌合することにより、ロータハブ26とロータ本体25との相対回転が規制される。また、ロータ本体25の後端部が、後述する第1の磁束遮断ディスク27を介して外向フランジ36bに当接されることにより、ロータ本体25の後方への移動が規制される。ここで、本実施形態において、筒状部36の軸方向の長さは、ロータ本体25の後端部が第1の磁束遮断ディスク27を介して外向フランジ36bに当接された際に、筒状部36の前端面とロータ本体25の前端面とが略面一となるよう設定されている。
第1,第2の磁束遮断ディスク27,28は、例えば、ロータハブ26を構成する鉄系材料よりも熱膨張率の大きい非磁性体材料で構成されている。具体的には、第1、第2の磁束遮断ディスク27,28は、例えば、オーステナイト系の鋼材であるSUS301で構成されている。
第1の磁束遮断ディスク27は、内径がロータハブ26の筒状部36の外径と略同径に形成された環状の平板形状をなし、筒状部36の外周において、ロータ本体25と外向フランジ36bとの間に挟持される。そして、第1の磁束遮断ディスク27は、ロータ本体25の後端面に当接されることにより、ロータ本体25の後端面から軸方向にリークする磁束を遮断する。
第2の磁束遮断ディスク28は、環状の平板形状をなすディスク部28aと、ディスク部28aから軸方向に延伸する筒状の圧接部28bとが一体形成されて要部が構成されている。ディスク部28aは、内径がロータハブ26の筒状部36の内径と略同径に形成された環状の平板形状をなす。また、圧接部28bは、外径がロータハブ26の筒状部36の内径よりも若干大径に形成された筒形状をなす。そして、第2の磁束遮断ディスク28は、圧接部28bが筒状部36の内周に冷間嵌めによって圧入されることによりロータハブ26に固設される。これにより、第2の磁束遮断ディスク28のディスク部28aは、ロータ本体25及び筒状部36の前端面に当接される、ロータ本体25のロータハブ26からの脱落を防止するとともに、ロータ本体25の前端面から軸方向にリークする磁束を遮断する。
このような実施形態によれば、ロータハブ26よりも熱膨張率の大きい非磁性体で構成した第2の磁束遮断ディスク28のディスク部28aから圧接部28bを延伸させ、この圧接部28bの筒状部36の内周への圧接によって第2の磁束遮断ディスク28をロータハブ26に固設することにより、電動モータ20を軸方向に大型化させることなく簡単な構成でロータ本体25をロータハブ26に確実に保持することができ、しかも、電動モータ20の出力性能を向上することができる。すなわち、ディスク部28aから圧接部28bを延伸させて筒状部36の内周に圧接させることにより、冷態時は勿論のこと、エンジン10等からの熱によって第2の磁束遮断ディスク28が熱膨張した場合にも、圧接部28bを筒状部36内周に対して強く押し当てることができる。従って、電動モータ20を軸方向に大型化させることなく、ロータ本体25の端面からの磁束のリークを防止する機能と、ロータ本体25がロータハブ26からの脱落することを防止する機能とを、第2の磁束遮断ディスク28によって両立させることができる。
この場合において、第2の磁束遮断ディスク28をロータ本体25よりもエンジン10側でロータハブ26に固設することにより、ロータ本体25の脱落防止をより的確に実現することができる。すなわち、上述のように、本実施形態においては、第2の磁束遮断ディスク28が高温になる程、筒状部36と圧接部28bとの間の圧接緊度が向上する。そこで、冷態始動時においては、エンジン10側の方が変速機50側(トルクコンバータ40側)よりも早期に昇温することに着目し、第2の磁束遮断ディスク28をロータ本体25よりもエンジン10側に配設することにより、第2の磁束遮断ディスク28を早期に昇温させることができる。
ここで、第2の磁束遮断ディスク28に形成される圧接部としては、上述のような筒形状のものに限定されるものではなく、例えば、図4、図5に示すように、ディスク部28aの内周に沿って複数の圧接部28cを櫛歯状に配列してもよい。この場合、各圧接部28cの先端部に係止爪28dを形成すると共に、筒状部36の内周に係止溝36cを周設することにより、ロータハブ26に対する第2の磁束遮断ディスク28の装着を常温下で行うことができる。すなわち、このような構成においては、各圧接部28cを弾性変形させながら筒状部36の内周に挿入して係止爪28dを係止溝36cに係止すればよいため、筒状部36と圧接部28cとの間に高い緊度を必要とすることなく、第2の磁束遮断ディスク28を容易にロータハブ26に保持させることができる。勿論、第2の磁束遮断ディスク28が昇温された場合には、筒状部36の内周に対する圧接部28cの緊度が向上するので、係止溝36cから係止爪28dが外れることはない。
なお、上述の実施形態においては、ロータ本体の両端部に配設される1対の磁束遮断ディスクのうちの一方のみに(第2の磁束遮断ディスクのみに)、圧接部を延伸させて筒状部に固定した一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、筒状部に形成される外向フランジを廃止し、両磁束遮断ディスクに圧接部を延伸させて筒状部に固定してもよいことは勿論である。
ハイブリッド車両の駆動装置を示すスケルトン図 電動モータの要部断面図 ロータの分解斜視図 電動モータの変形例を示す要部断面図 ロータの変形例を示す分解斜視図
符号の説明
1 … 駆動装置
10 … エンジン
11 … クランク軸
20 … 電動モータ
22 … ステータ
23 … ロータ
25 … ロータ本体
26 … ロータハブ
28 … 第2の磁束遮断ディスク(磁束遮断ディスク)
28a … ディスク部
28b … 圧接部
28c … 圧接部
28d … 係止爪
30 … ロータコア
31 … マグネット
35 … 軸部
36 … 筒状部
36c … 係止溝
40 … トルクコンバータ
50 … 変速機
51 … 変速入力軸(入力軸)

Claims (2)

  1. エンジンのクランク軸と変速機の入力軸との間に電動モータを備えたハイブリッド車両のモータロータであって、
    環状に形成されたロータ本体と、
    前記クランク軸の軸方向に延伸する筒状部を有し、当該筒状部の外周に前記ロータ本体が外嵌するロータハブと、
    前記ロータ本体の軸方向端面に当接するディスク部と当該ディスク部から延伸する圧接部とが前記ロータハブよりも熱膨張率の大きい非磁性体で一体形成され、前記筒状部の内周への前記圧接部の圧接によって前記ロータハブに固設する磁束遮断ディスクと、を備えたことを特徴とするハイブリッド車両のモータロータ。
  2. 前記磁束遮断ディスクは、前記ロータ本体よりもエンジン側で前記ロータハブに固設することを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車のモータロータ。
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