JP4905155B2 - 吸収型多層膜片面ndフィルターの設計方法 - Google Patents

吸収型多層膜片面ndフィルターの設計方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4905155B2
JP4905155B2 JP2007013422A JP2007013422A JP4905155B2 JP 4905155 B2 JP4905155 B2 JP 4905155B2 JP 2007013422 A JP2007013422 A JP 2007013422A JP 2007013422 A JP2007013422 A JP 2007013422A JP 4905155 B2 JP4905155 B2 JP 4905155B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
absorption
filter
sided
film thickness
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2007013422A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008180844A (ja
Inventor
秀晴 大上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Mining Co Ltd filed Critical Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority to JP2007013422A priority Critical patent/JP4905155B2/ja
Publication of JP2008180844A publication Critical patent/JP2008180844A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4905155B2 publication Critical patent/JP4905155B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Optical Elements Other Than Lenses (AREA)
  • Optical Filters (AREA)

Description

本発明は、透過光を減衰させる吸収型多層膜が樹脂フィルムから成る基板の入射側片面に設けられた吸収型多層膜片面NDフィルターに係り、特に、反射光による影響が少なく量産性にも優れた吸収型多層膜片面NDフィルターの設計方法に関するものである。
この種のND(Neutral Density Filter)フィルターには、入射光を反射して減衰させる反射型NDフィルターと、入射光を吸収して減衰させる吸収型NDフィルターが知られている。そして、反射光が問題となるレンズ光学系にNDフィルターを組み込む場合には一般的に吸収型NDフィルターが用いられ、この吸収型NDフィルターには、基板自体に吸収物質を混ぜたり(色ガラスNDフィルター)塗布するタイプと、基板自体に吸収はなくその表面に形成された薄膜に吸収があるタイプとが存在する。また、後者の場合は、薄膜表面の反射を防ぐため上記薄膜を多層膜(吸収型多層膜)で構成し、透過光を減衰させる機能と共に反射防止の効果を持たせている。これは、入射光を減衰させる目的のNDフィルターにおいても、その表面に反射があると、反射光がフレアーや画像のボケを引き起こす原因となり好ましくないからである。
ところで、小型で薄型のデジタルカメラに用いられる吸収型多層膜NDフィルターは、組込みスペースが狭いため基板自体を薄くする必要があり、非常に薄いガラス薄板や、樹脂板あるいは樹脂フィルムが基板として適用されている。
そして、従来、上記薄膜が多層膜で構成された吸収型多層膜NDフィルターとして、特許文献1では誘電体膜層と吸収のある2種類以上の金属酸化物膜層とを組合せた多層膜が提案され、特許文献2では誘電体膜層とニオブ膜層とを組合せた多層膜が提案され、また、特許文献3では誘電体層膜とニッケル膜層とを組合せた多層膜が提案され、更に、これ等NDフィルターでは上記吸収型多層膜が基板の片面に成膜されるタイプと基板の両面に成膜されるタイプとが存在した。
ところで、吸収型多層膜が基板の両面に成膜されるタイプにおいては、入射光を吸収して減衰させる機能と基板両面側の反射防止機能を併せ持つが、吸収型多層膜が基板の片面に成膜されるタイプにおいては、基板裏面側に吸収型多層膜が存在しない分、基板の裏面反射を基板入射側と同様に低減させることは困難であった。
そこで、特許文献4においては、基板の入射側と裏面側(出射側)の反射防止効果を考慮して、誘電体膜層と金属酸化物膜層とで構成される多層膜と基板との間に、異種材料による高屈折率の誘電体層を介在させた複雑な片面NDフィルターが提案されている。しかし、このような複雑な膜構成を採ったとしても、基板入射側と基板出射側の各反射率を同一レベルに低く設定することは困難で、基板出射側の反射率を低く設定すると基板入射側の反射率が相対的に高くなる問題を有していた。
但し、吸収型多層膜が基板の片面に成膜されるタイプの吸収型多層膜片面NDフィルターは、吸収型多層膜が基板の両面に成膜されるNDフィルターと較べて製造時間の短縮が図れるため製造コストの低減が図れるメリットを有している。このため、基板の裏面反射が低減できる吸収型多層膜片面NDフィルターの開発が望まれている。
特許第3359114号公報 特開2002−350610号公報 特開2006−058854号公報 特開2003−344612号公報
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、樹脂フィルムを基板とし、可視光領域に対し平坦な透過率減衰が得られると共に、反射光による影響が少なく量産性にも優れた吸収型多層膜片面NDフィルターの設計方法を提供することにある。
そこで、本発明者は、上記課題を解決するため鋭意実験を行うと共に以下に述べるような技術的検討を経ることで、吸収型多層膜が基板両面に成膜された吸収型多層膜両面NDフィルターに匹敵する機能を有する吸収型多層膜片面NDフィルターを見出すに至った。
まず、吸収型多層膜片面NDフィルターは、入射側片面にしか吸収型多層膜が成膜されていないため、基板の裏面反射を抑制するには基板出射側の反射率も低く調整する必要がある。この場合、基板片面に成膜される吸収型多層膜について基板入射側の反射率と共に基板出射側の反射率を低減させる膜構成も考えられるが、上述した特許文献4に記載されているように非常に複雑な膜構成になってしまい、かつ、基板出射側の反射率を低く設定すると基板入射側の反射率が相対的に高くなる問題が存在する。
このような技術的背景の下、本発明者は、吸収型多層膜片面NDフィルターにおける吸収膜の光吸収機能に着目し、透明膜とは異なる考え方により上記裏面反射の低減が図れる方法が存在するかについて独自の技術的検討を試みた。
すなわち、樹脂フィルム等の基板に透明膜が成膜されたフィルターの場合、透明膜を透過して基板の裏面側へ出射する出射光量Ioutは、図1(b)に示す模式図から理解されるように(出射光量Iout)=(入射光量Iin)×(透過率Tout)となる。この場合、上記透明膜による出射光の減衰はほとんどないため、上記(出射光量Iout)は(入射光量Iin)とほとんど同一である。次に、上記出射光が、基板出射側に存在する反射体で反射(100%)されて再びフィルターに入射すると、基板と透明膜の界面にて反射された図1(b)に示す反射光量Iout refは、(反射光量Iout ref)=(出射光量Iout)×(出射側反射率Rout)となる。ここで、上記(出射光量Iout)は(入射光量Iin)とほとんど同一のため、(出射側反射率Rout)が図1(b)に示す(入射側反射率Rin)と同程度でなく高い値であると、出射側の(反射光量Iout ref)は、図1(b)に示す入射側の(反射光量Iin ref)と較べて高い値となり、上述したフレアーや画像のボケを引き起こす原因となる。すなわち、上記(出射側反射率Rout)は迷光を増やす要因になるため(入射側反射率Rin)と同程度に調整する必要がある。しかし、実用的な4〜6層の膜構成で膜厚最適化により両方の反射率を同時に3%以下にする解は存在しないことから入射側反射率と出射側反射率の両方を同時に低減させることは困難である。
他方、樹脂フィルム等の基板に吸収膜が成膜されたフィルターの場合、吸収膜を透過して基板の裏面側へ出射する出射光量Ioutは、図1(a)に示す模式図から理解されるように(出射光量Iout)=(入射光量Iin)×(透過率Tout)となる。この場合、上記吸収膜の光吸収機能により出射光が減衰されるため、上記(出射光量Iout)は(入射光量Iin)よりかなり小さくなっている。次に、出射光が基板出射側に存在する反射体で反射(100%)されて再びフィルターに入射すると、基板と透明膜の界面にて反射された図1(a)に示す反射光量Iout refは、(反射光量Iout ref)=(出射光量Iout)×(出射側反射率Rout)となる。ここで、上記(出射光量Iout)は上述したように(入射光量Iin)よりかなり小さくなっているため、(出射側反射率Rout)が図1(a)に示す(入射側反射率Rin)と同一でなく(入射側反射率Rin)よりかなり大きな値になっていても、出射側の(反射光量Iout ref)は、図1(a)に示す入射側の(反射光量Iin ref)と大きな差異は生じない。例えば、(入射側反射率Rin)が2%でかつ(出射側反射率Rout)が20%であったとしても、上記(透過率Tout)が10%であれば、上述した(出射光量Iout)=(入射光量Iin)×(透過率Tout)の式と、(反射光量Iout ref)=(出射光量Iout)×(出射側反射率Rout)の式から、(反射光量Iout ref)=0.1×0.2×(入射光量Iin)=0.02×(入射光量Iin)となり、上述した(入射側反射率Rin)が2%の場合の(反射光量Iin ref)=0.02×(入射光量Iin)と同一となる。すなわち、吸収膜においては(出射側反射率Rout)が迷光を増やす要因になり難く、透明膜の場合と異なり(入射側反射率Rin)の低減を重視した膜構造が上記迷光の対策として効果的であることが確認され、特に、入射側の(反射光量Iin ref)と出射側の(反射光量Iout ref)を等しくする(一方の目標光量を低く設定すると他方の光量は必然的に高くなるため、両方の反射光量を等しくする)ことが最も理想的であることが確認される。
そして、入射側の(反射光量Iin ref)=出射側の(反射光量Iout ref)とするための条件は、
入射側の(反射光量Iin ref)=(入射光量Iin)×(入射側反射率Rin)の式、
出射側の(反射光量Iout ref)=(出射光量Iout)×(出射側反射率Rout)の式、および、(出射光量Iout)=(入射光量Iin)×(透過率Tout)の式から、
出射側の(反射光量Iout ref)=(入射光量Iin)×(透過率Tout)×(出射側反射率Rout)となり、
(入射側反射率Rin)=(透過率Tout)×(出射側反射率Rout)の条件を満たす吸収膜を膜厚最適化手法により求めればよいことが見出される。
ところで、上記膜厚最適化手法には、Simplex法、Gradient法、Monte Carlo法等の多くの手法があるが、基本的には各層の膜厚を増減させながら分光透過率と分光反射率を計算し、各波長における理論透過率および理論反射率を目標値(ターゲット値)と比較して評価し、各波長における理論透過率および理論反射率が目標値(ターゲット値)に近くなるように各層の膜厚を求めるものである。そして、本発明においては、各波長における理論透過率および理論反射率を目標値(ターゲット値)と比較する方法として、各ターゲット値にウェイト(重み付け)をかけるError Function(評価関数)が用いられる。
また、金属膜は吸収のある金属酸化物膜よりも吸収係数が大きいことから、透過率の小さいNDフィルターを構成する場合、各金属膜層の膜厚が数分の1になり、成膜時における膜厚コントロールが困難となる懸念が存在していた。しかし、近年の成膜技術の進歩により数nmの金属膜層の膜厚制御も可能になってきている。特に、フレキシブル性のある樹脂フィルムに成膜する場合、吸収のある金属酸化物膜層よりも膜厚が薄い金属膜層を適用した方が適している。そこで、本発明においては、誘電体膜層と金属膜層とで多層膜を構成する方法が採られている。
本発明はこのような技術的検討を経て完成されている。
すなわち、請求項1に係る発明は、
樹脂フィルムから成る基板の入射側片面に、透過光を減衰させる吸収型多層膜が設けられ、かつ、この吸収型多層膜が、SiOから成る誘電体膜層とTiから成る金属膜層とを交互に積層させた4層以上の多層膜により構成されると共に、吸収型多層膜における各層の膜厚を増減させて目標とする分光光学特性に近づける膜厚最適化手法により各層の膜厚を予め選定する吸収型多層膜片面NDフィルターの設計方法を前提とし、
目標とする分光光学特性、および、[入射側反射率Rin]=[透過率Tout]×[出射側反射率Rout]の条件を満たす膜厚を選定するための上記膜厚最適化手法に下記数式(1)で示されるError Function(評価関数)を用いると共に、Error Function(評価関数)が最小の値になる膜厚条件に基づき上記吸収型多層膜における各層の膜厚を選定していることを特徴とし、
Figure 0004905155
請求項2に係る発明は、
請求項1記載の吸収型多層膜片面NDフィルターの設計方法を前提とし、
Figure 0004905155
波長400〜700nmにおける透過率が25±12.5%、入射側反射率が5%以下、および、出射側反射率が20%以下である条件を満たすことを特徴とし、
請求項3に係る発明は、
請求項1記載の吸収型多層膜片面NDフィルターの設計方法を前提とし、
Figure 0004905155
波長400〜700nmにおける透過率が12.5±6.3%、入射側反射率が2.5%以下、および、出射側反射率が20%以下である条件を満たすことを特徴とし、
また、請求項4に係る発明は、
請求項1記載の吸収型多層膜片面NDフィルターの設計方法を前提とし、
Figure 0004905155
波長400〜700nmにおける透過率が6.3±3.1%、入射側反射率が1.25%以下、および、出射側反射率が20%以下である条件を満たすことを特徴とする。
本発明は、樹脂フィルムから成る基板の入射側片面に、透過光を減衰させる吸収型多層膜が設けられ、かつ、この吸収型多層膜が、SiO から成る誘電体膜層とTiから成る金属膜層とを交互に積層させた4層以上の多層膜により構成されると共に、吸収型多層膜における各層の膜厚を増減させて目標とする分光光学特性に近づける膜厚最適化手法により各層の膜厚を予め選定する吸収型多層膜片面NDフィルターの設計方法において、
目標とする分光光学特性、および、[入射側反射率Rin]=[透過率Tout]×[出射側反射率Rout]の条件を満たす膜厚を選定するための上記膜厚最適化手法に上記数式(1)で示されるError Function(評価関数)を用いると共に、Error Function(評価関数)が最小の値になる膜厚条件に基づき上記吸収型多層膜における各層の膜厚を選定していることを特徴としている
そして、樹脂フィルムから成る基板の片面に吸収型多層膜を成膜した構成にも拘らず、本発明に係る設計方法により得られた吸収型多層膜片面NDフィルターは、吸収型多層膜が基板両面に成膜された吸収型多層膜片面NDフィルターと同程度の性能を実現できる効果を有している。
また、本発明に係る設計方法により得られた吸収型多層膜片面NDフィルターは、基板の片面に吸収型多層膜を成膜した構成のため、基板両面に吸収型多層膜が成膜される吸収型多層膜両面NDフィルターより成膜工程の低減が図れ、製造コストを削減できる効果を有している。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、樹脂フィルムから成る基板の入射側片面に、透過光を減衰させる吸収型多層膜が設けられ、かつ、この吸収型多層膜が、SiO から成る誘電体膜層とTiから成る金属膜層とを交互に積層させた4層以上の多層膜により構成されると共に、吸収型多層膜における各層の膜厚を増減させて目標とする分光光学特性に近づける膜厚最適化手法により各層の膜厚を予め選定する吸収型多層膜片面NDフィルターの設計方法において、
目標とする分光光学特性、および、[入射側反射率Rin]=[透過率Tout]×[出射側反射率Rout]の条件を満たす膜厚を選定するための上記膜厚最適化手法に下記数式(1)で示されるError Function(評価関数)を用いると共に、Error Function(評価関数)が最小の値になる膜厚条件に基づき上記吸収型多層膜における各層の膜厚を選定していることを特徴とする
Figure 0004905155
ここで、上記Error Function(評価関数)の第1項、すなわち、
Figure 0004905155
は、透過率を目標とする値に近づけるため目標値と計算値の差を評価する項である。
また、上記Error Function(評価関数)の第2項、すなわち、
Figure 0004905155
は、入射側反射率を目標とする値に近づけるため目標値と計算値の差を評価する項である。
更に、上記Error Function(評価関数)の第3項、すなわち、
Figure 0004905155
は、上記[入射側反射率]の値と[透過率×出射側反射率]の値を等しくさせるためその差を評価する項である。
そして、上記3項の総和であるError Function(評価関数)の値が最小の値になるように吸収型多層膜における各層の膜厚が選定されることにより[入射側反射率]の値と[透過率×出射側反射率]の値がほぼ等しくなり、樹脂フィルムを基板とし、可視光領域に対し平坦な透過率減衰が得られると共に、反射光による影響が少なく量産性にも優れた吸収型多層膜片面NDフィルターを得ることが可能となる。
ここで、上記数式(1)における第1項〜第3項の「重み付け」の理由は以下の通りである。すなわち、NDフィルターの分光光学特性は、理論透過率が要求する透過率に近く、入射側と出射側の理論反射率が低いほど良い。しかし、コストを優先して基板片面に吸収型多層膜を形成し、限られた膜層数ですべてを満足させる膜厚の解はない。そこで、求められた膜厚で構成されるNDフィルターの波長毎の透過率と反射率に特性の重要度に応じて重み付けをしかつ積分することで、各層の膜厚をError Function(評価関数)により評価している。評価関数が大きいとき、各層の膜厚を変更して、再度、Error Function(評価関数)による評価を行い、これらを繰り返して評価関数が最も小さくなる各層の膜厚を求める。そして、透過率を重視するか、反射率を重視するかは、評価関数の波長毎の重み付けで決定される。
一般的な光学薄膜すなわち透明膜で構成された光学薄膜では、光学薄膜を通過することにより光量が減衰することがないので、通過した光量がどこかで100%反射されて戻ってくることを想定し、入射側と透過側で反射率が同じになるようにError Function(評価関数)を設定する。
Figure 0004905155
Figure 0004905155
となる。
ところが、NDフィルターにおいては、NDフィルターを通過することで光量が減衰するので、通過した光量が通過側のどこかで100%反射されて再度NDフィルターに戻ってきたとしても、NDフィルターにおける基板と吸収型多層膜の界面での実際の反射レベルは、NDフィルターの[透過率×出射側反射率]でしかない。
従って、出射側の反射率を入射側の反射率ほど低くする必要はなく、上述したように[入射側反射率]の値と[透過率×出射側反射率]の値をほぼ等しく設定すればよい。このような考え方により膜設計の自由度が大きくなり、入射側の反射率をより低反射にする各層の膜厚を求めることが可能となる。
次に、本発明に係る設計方法により得られる吸収型多層膜片面NDフィルターにおいては、吸収型多層膜が誘電体膜層と金属膜層とを交互に積層させた4層以上の多層膜により構成されるが、上記誘電体膜層についてはSiOで構成し、かつ、Tiから成る金属膜層の空気側最外層が次の金属膜層より厚くないように設定することが好ましい。光学特性が安定でかつ硬質な酸化物誘電体薄膜の低屈折率材料であるSiOを用いて上記誘電体膜層が構成されない場合、誘電体膜層と金属膜層との屈折率差が小さくなり膜設計の自由度が小さくなることがある。更に、Tiから成る金属膜層の空気側最外層を次の金属膜層より薄くした場合、平均反射率を若干低くすることが可能となる利点を有する。
次に、上記数式(1)で示されるError Function(評価関数)が用いられ、この評価関数が最小の値になるように吸収型多層膜における各層の膜厚が選定され、かつ、[入射側反射率]の値と[透過率×出射側反射率]の値がほぼ等しく設定された本発明に係る設計方法により得られる吸収型多層膜片面NDフィルターの具体例を示すと以下の通りである。
Figure 0004905155
Figure 0004905155
Figure 0004905155
が例示される。
次に、本発明に係る設計方法により得られる吸収型多層膜片面NDフィルターにおいて、誘電体膜層と金属膜層とで構成される吸収型多層膜は、真空蒸着法、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法若しくはイオンプレーティング法から選択された成膜法により成膜される。ここで、金属膜層は、膜材料の添加物や不純物、成膜時の残留ガス、基板からの放出ガスや成膜速度によって屈折率や吸収係数等の特性が大きく異なることがある。従って、所望の特性を有する吸収型多層膜片面NDフィルターが得られるように上記条件を適宜選択することが望ましい。
また、基板を構成する樹脂フィルムの材質は特に限定されないが透明であるものが好ましく、量産性を考慮した場合、乾式のロールコーティングが可能なフレキシブル基板が好ましい。フレキシブル基板は、従来のガラス基板等に比べて廉価である上、軽量で変形性に富む点においても優れている。そして、樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)およびノルボルネンから選択された樹脂から成るフィルム、あるいは、樹脂フィルムの片面または両面をアクリル系有機膜で被覆した複合フィルムが挙げられる。特に、ノルボルネン樹脂は、可視波長域における透明性と耐熱性等の特長を有するため好ましく、代表的なものとして吸収率の低い日本ゼオン社製のゼオノア(商品名)や膜密着性の高いJSR社製のアートン(商品名)等を挙げることができる。
次に、吸収型多層膜の誘電体膜層にSiO、金属膜層にTiを用いると共に、空気側からSiO、Ti、SiO、Tiの4層膜により吸収型多層膜が構成され、かつ、出射側透過率が波長400〜700nmにおいて12.5%、入射側反射率が波長400〜700nmにおいて1%である吸収型多層膜NDフィルターを設計する方法について具体的に説明する。
尚、ここでは平均透過率が12.5%のNDフィルターを設計例としているが、本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターが上記透過率に限定されるものではない。また、膜厚最適化手法にはSimplex法を用いている。
Figure 0004905155
また、生産の再現性を考慮し、誘電体膜層は2層とも同じ膜厚にする制限を入れており、膜厚の初期値として、各SiOの膜厚を50nm、各Tiの膜厚を10nmに設定した。更に、SiOの最小膜厚は20nm、最大膜厚は100nm、Tiの最小膜厚は3nm、最大膜厚は50nmとし、膜厚は0.5nmの最小ステップで変化させた。
Figure 0004905155
この膜構成を以下の表1に、理論分光特性を図2に示す。
Figure 0004905155
Figure 0004905155
図2のグラフ図から確認されるように、図2中、破線で示される分光透過率は波長400〜700nmに対して12.5%±1%以内、実線で示される入射側反射率は波長400〜700nmに対して2%以下、一点鎖線で示される出射側反射率は波長400〜700nmに対して約18%以下になった。尚、出射側反射率は約18%もあるが、透過率12.5%の吸収型多層膜により吸収されて光量が減衰しているため、入射光に対して入射側反射率とほぼ同等の約2%(=18%×12.5%)まで低下している。
従って、数式(1)で示される上記Error Function(評価関数)を用いることにより、入射側反射率に加えて出射側反射率も考慮した吸収型多層膜片面NDフィルターの設計が可能になる。但し、例示した上記吸収型多層膜片面NDフィルターのように[入射側反射率]の値と[透過率×出射側反射率]の値をほぼ等しくする膜設計は、透過率が高い場合には困難であり、透過率は25%以下が望ましい。更に、入射側反射率が4%を越えると、デジタルカメラにNDフィルターを内蔵したときにフレアーや画像のボケが顕著に現れる。このため、入射側反射率の目標値(ターゲット値)は3%以下が望ましい。
また、生産性や再現性を考慮すると、誘電体膜層と金属膜層はそれぞれ同一膜厚の方が都合がよい。しかし、入射側反射率を可視全域にわたり低減させるため、膜厚の最適化を実行すると金属膜層の最外層(空気側)は次の金属膜層より薄くなる。
また、例示した上記吸収型多層膜片面NDフィルターでは誘電体膜層にSiO、金属膜層にTiが用いられている。
次に、本発明の実施例について具体的に説明する。
300mmにスリットした厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを基板として用い、この基板片面に上記表1に示す膜構成の吸収型多層膜を成膜した。
成膜にはスパッタリングロールコータ装置を用い、酸化物誘電体層:SiOの膜厚が70nmのとき、成膜時のフィルム搬送速度は約0.3m/分、金属膜層:Tiの膜厚が11.5nm、18.5nmのとき、成膜時のフィルム搬送速度はそれぞれ約0.8m/分、約0.5m/分で行い、各層の膜厚に応じてフィルム搬送速度を調整している。また、SiO層の成膜には、ターゲットにSiを用いているため、成膜中に酸素を導入して酸化物誘電体層を成膜している。
得られた実施例1に係る吸収型多層膜両面NDフィルターの理論分光特性を図2に示す。
実施例1と同様、400〜700nmにおける出射側透過率が12.5%である吸収型多層膜両面NDフィルターを製造した。
すなわち、300mmにスリットした厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを基板として用い、この基板片面に表2に示す膜構成の吸収型多層膜を成膜した。
成膜にはスパッタリングロールコータ装置を用い、酸化物誘電体層:SiOの膜厚が20nm、70nmのとき、成膜時のフィルム搬送速度はそれぞれ約1.1m/分、約0.3m/分、金属膜層:Tiの膜厚が8nm、11nmのとき、成膜時のフィルム搬送速度はそれぞれ約1.2m/分、約0.8m/分で行い、各層の膜厚に応じてフィルム搬送速度を調整している。また、SiO層の成膜には、ターゲットにSiを用いているため、成膜中には酸素を導入して酸化物誘電体層を成膜している。
得られた実施例2に係る吸収型多層膜両面NDフィルターの理論分光特性を図3に示す。
Figure 0004905155
[比較例]
比較例として従来の吸収型多層膜両面NDフィルターの膜構成を表3に、この吸収型多層膜両面NDフィルターの理論分光光学特性を図4に示す。
Figure 0004905155
「評 価」
次に、実施例1と2に係る吸収型多層膜片面NDフィルター、および、比較例に係る吸収型多層膜両面NDフィルターの波長450nmにおける透過率、入射側反射率と出射側反射率を評価した。また、出射側反射率については、基板出射側から光を照射してその出射側反射パワーを測定すると共に、実際の使用状況に近づけるため、各NDフィルターに対して基板入射側から光を照射しかつNDフィルターを一度透過し減衰した光をAlミラーに入射し略100%反射させてほぼ完全にNDフィルターに戻すと共に基板出射側で反射された出射側反射率パワーの測定も実施した。
この結果を表4に示す。
尚、表4において、「透過パワー」とは各NDフィルターの基板入射側から光を入射させその透過光のパワーを基板出射側において測定した値、「入射側反射パワー」とは各NDフィルターの基板入射側から光を入射させその反射光のパワーを基板入射側において測定した値、「出射側反射パワー」とは各NDフィルターの基板出射側から光を入射させその反射光のパワーを基板出射側において測定した値、「NDフィルター透過光の出射側反射パワー」とは各NDフィルターの基板入射側から光を入射させ一度透過した光を基板出射側に設けられたAlミラーに入射し、このAlミラーにおいて反射された光をNDフィルターに戻すと共に、この戻り光がNDフィルターで反射された光のパワーを基板出射側において測定した値を意味している。
そして、表4に示されたデータから確認されるように、実施例1と2に係る吸収型多層膜片面NDフィルターにおいては、「入射側反射パワー」と「NDフィルター透過光の出射側反射パワー」とが略等しい値になっており、これ等吸収型多層膜片面NDフィルターをデジタルカメラ等に内蔵しても反射光によるフレアーや画像のボケに起因することはなかった。
また、比較例に係る吸収型多層膜両面NDフィルターにおいても、その「入射側反射パワー」と「出射側反射パワー」は同一の「1.5μW」になっており、この吸収型多層膜両面NDフィルターをデジタルカメラ等に内蔵しても反射光によるフレアーや画像のボケに起因することはなかった。
従って、基板片面にのみに吸収型多層膜が成膜された実施例1と2に係る吸収型多層膜片面NDフィルターは、基板両面に吸収型多層膜が成膜された比較例に係る吸収型多層膜両面NDフィルターと同一の機能を具備していることが確認される。
Figure 0004905155
本発明に係る設計方法により得られた吸収型多層膜片面NDフィルターは、従来の吸収型多層膜両面NDフィルターより生産性に優れ、製造コストの低減が図れるため、低価格機種のデジタルカメラ等に利用される産業上の可能性を有している。
図1(a)は基板片面に吸収膜が設けられたフィルターに光が入射したときの透過率、反射率を考慮した入反射状態を示す模式図、図1(b)は基板片面に透明膜が設けられたフィルターに光が入射したときの透過率、反射率を考慮した入反射状態を示す模式図。 実施例1に係る吸収型多層膜片面NDフィルターの理論分光特性を示すグラフ図。 実施例2に係る吸収型多層膜片面NDフィルターの理論分光特性を示すグラフ図。 比較例に係る吸収型多層膜両面NDフィルターの理論分光特性を示すグラフ図。

Claims (4)

  1. 樹脂フィルムから成る基板の入射側片面に、透過光を減衰させる吸収型多層膜が設けられ、かつ、この吸収型多層膜が、SiOから成る誘電体膜層とTiから成る金属膜層とを交互に積層させた4層以上の多層膜により構成されると共に、吸収型多層膜における各層の膜厚を増減させて目標とする分光光学特性に近づける膜厚最適化手法により各層の膜厚を予め選定する吸収型多層膜片面NDフィルターの設計方法において、
    目標とする分光光学特性、および、[入射側反射率Rin]=[透過率Tout]×[出射側反射率Rout]の条件を満たす膜厚を選定するための上記膜厚最適化手法に下記数式(1)で示されるError Function(評価関数)を用いると共に、Error Function(評価関数)が最小の値になる膜厚条件に基づき上記吸収型多層膜における各層の膜厚を選定していることを特徴とする吸収型多層膜片面NDフィルターの設計方法。
    Figure 0004905155
  2. Figure 0004905155
    波長400〜700nmにおける透過率が25±12.5%、入射側反射率が5%以下、および、出射側反射率が20%以下である条件を満たすことを特徴とする請求項1記載の吸収型多層膜片面NDフィルターの設計方法。
  3. Figure 0004905155
    波長400〜700nmにおける透過率が12.5±6.3%、入射側反射率が2.5%以下、および、出射側反射率が20%以下である条件を満たすことを特徴とする請求項1記載の吸収型多層膜片面NDフィルターの設計方法。
  4. Figure 0004905155
    波長400〜700nmにおける透過率が6.3±3.1%、入射側反射率が1.25%以下、および、出射側反射率が20%以下である条件を満たすことを特徴とする請求項1記載の吸収型多層膜片面NDフィルターの設計方法。
JP2007013422A 2007-01-24 2007-01-24 吸収型多層膜片面ndフィルターの設計方法 Expired - Fee Related JP4905155B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007013422A JP4905155B2 (ja) 2007-01-24 2007-01-24 吸収型多層膜片面ndフィルターの設計方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007013422A JP4905155B2 (ja) 2007-01-24 2007-01-24 吸収型多層膜片面ndフィルターの設計方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008180844A JP2008180844A (ja) 2008-08-07
JP4905155B2 true JP4905155B2 (ja) 2012-03-28

Family

ID=39724802

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007013422A Expired - Fee Related JP4905155B2 (ja) 2007-01-24 2007-01-24 吸収型多層膜片面ndフィルターの設計方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4905155B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018185446A (ja) * 2017-04-27 2018-11-22 セイコーエプソン株式会社 反射防止膜、光デバイスおよび反射防止膜の製造方法
CN114384043B (zh) * 2022-01-07 2024-03-22 重庆大学 柔性近红外陷波片及其制作工艺和应用于文物检测的方法及系统

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02113202A (ja) * 1988-10-21 1990-04-25 Nippon Shinku Kogaku Kk 中性濃度フィルター
KR20060115324A (ko) * 2003-11-14 2006-11-08 니덱 코팔 가부시키가이샤 Nd 필터 및 이것을 이용한 광량 조리개 장치
JP2006084994A (ja) * 2004-09-17 2006-03-30 Nidec Copal Corp Ndフィルタ及びこれを用いた光量絞り装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008180844A (ja) 2008-08-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5823119B2 (ja) 紫外赤外線カット用光学フィルタ
KR101815823B1 (ko) 광학 필터 및 촬상 장치
US4488775A (en) Light absorptive film having an anti-reflecting property
JP2021140177A (ja) 光学フィルタおよび撮像装置
EP1569015A2 (en) An optical detector system
CN100489566C (zh) 反射镜和光学读取器
JP2012137649A (ja) 光学フィルタ
US20150212335A1 (en) Reflective type imaging element and optical system, and method of manufacturing relective type imaging element
WO2014077399A1 (ja) 光学フィルタ及び光学機器
JP2012137645A (ja) 光学フィルタ
JP6808355B2 (ja) 光学フィルタおよびそれを有する光学系、撮像装置
KR20160043916A (ko) 파장 선택 필터 및 광조사 장치
JP2012137648A (ja) 撮像光学ユニット
JP2013156619A (ja) Irカット機能付きndフィルタ
JPH0593811A (ja) 光吸収膜
JP4905155B2 (ja) 吸収型多層膜片面ndフィルターの設計方法
US9864118B2 (en) Photochromic solar control films
JP6053352B2 (ja) 光学フィルタ、光学装置及び光学フィルタの製造方法。
JP4981456B2 (ja) Ndフィルタ
JP2008032804A (ja) 光学素子
JP2004258494A (ja) Ndフィルタ
JP2006201697A (ja) 光吸収部材及びそれを有する光学素子
WO2022052268A1 (zh) 镜片以及镜头组件
CN115280194A (zh) 干涉滤光片、光学器件和制造干涉滤光片的方法
JP6982951B2 (ja) 赤外線用機能性膜付シリコン基板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090521

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110519

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110524

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110704

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20110726

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111007

A911 Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20111013

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20111213

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20111226

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150120

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees