JP4904609B2 - 二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、極板を巻回した極板群を用いた高出力型の二次電池、特にその集電体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電動工具や電気自動車用電池として高出力型電池の需要が高まっている。高出力型の電池は、電池の作動電圧が高く、電池の内部抵抗が小さいことが条件となるため、従来から様々な集電構造が提案されている。そのなかで特開昭61−281457号公報には、出入力集電構造として極板群の上下端面からそれぞれ外方へ突出した一方の電極の先端部に集電体を溶接する構造が提案されており、これはタブレスと呼ばれる構造であり、高出力型の電池においては一般的に用いられている。
【0003】
タブレス方式に用いられる集電体として、例えば(1)特開平7−6749号公報には、極板群と集電端子との溶接時に無効電流を阻止するため、櫛歯状の溶接部および棒状導電部を備えた集電部が、複数部分に分割された集電端子が記載されている。(2)特開平10−188997号公報には、集電体と集電条との溶接を完全に行うとともに発熱量を小さくするために、板部材に複数の切り込み部を形成し、この切り込み部の隅部に丸みを設け、切り欠き部の縁部には折曲エッジ部が設けられた集電体が記載されている。(3)特開平11−31497号公報には、集電体のリブ状突起片と電極先端部との交叉部を十分な強度で溶接するために、矩形あるいは円盤状の平板の中央部近くから外周縁部にまたがった長方形の切り欠き部を設け、この切り欠き部の縁部には下向きのリブ状突起片が一体に形成されている集電体が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したそれぞれの集電体は、例えば(1)(3)の構造においては極板群の中心付近、特に最内周と集電板とを溶接することが非常に難しく、このため極板群の最内周に位置する極板端部からの電流経路が長くなってしまう。また、(2)の構造においては取り出した電流を外部へ導出する際に電流経路が長くなるため、電池としての内部抵抗の増加を招いてしまうものであった。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、高出力を得ることができる、内部抵抗の小さな二次電池を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、集電板は外周部から中央部穴までを貫通させた切り欠き部と、その周縁部に極板群に向けて屈曲させたリブ状の突起片とを有し、前記切り欠き部には前記集電体の中心点が含まれており、巻回された極板群の対向する端面を形成した一方の極板にそれぞれ接合された集電板は極板群の少なくとも最内周と接合され、かつ集電板の中心部に接続端子が設けられている構成とするものである。この場合の中心部とは、中心点に近い程良いが、最大に離れても中心点から周縁部までの距離の半分までのことを示す。このとき集電板には切り欠き部が設けられ、この切り欠き部には集電板の中心点が含まれている構成とすることにより、極板群の最内周と接合することができる。
【0007】
また、切り欠き部の周縁には極板群に向けて突起片が設けられ、この突起片と極板群の対向する端面を形成した一方の極板とが溶接されていることにより、一層強固な接合が得られるものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の要部である集電体の一実施の形態を図1に示した。厚さ0.25mm直径20mmの鉄製(表面にはニッケルメッキを施したもの)集電体7は、円盤状の部材の中央部に穴7fが開けられ、3組の切り欠き部7aと1組の外周部から中央部穴7fまでを貫通させた切り欠き部7dが設けられている。それぞれの切り欠き部には、その周縁部に下向きに屈曲させてリブ状の突起片7cを設けた。このリブ状突起7cを渦巻状極板群の極板芯材露出部に押し当て、隣り合うリブ状突起7c上部にそれぞれ溶接電極棒を押し当てて通電することで、極板群と集電体を溶接することができる。この際の無効電流防止のため、切り欠き部の集電体中央部端部にさらに切り欠き部7eを設けることもできる。
【0009】
この集電体7と封口板との電気的接合のための集電端子が位置7gに取り付けられている。この取付位置は、中心点に近い程良いが、中心点から周縁部までの距離の半分までにすることにより、集電板から封口板までの電流経路を短くすることができ、内部抵抗を低く抑えることができる。
【0010】
また、図2は本発明の参考の形態である。この集電体は図1に示したものより大型の電池に用いられるものである。厚さ0.25mm直径100mmの鉄製(表面にはニッケルメッキを施したもの)集電体14は、円盤状の部材の中央部に穴14fが開けられ、5組の切り欠き部14aと1組の外周部から中央部穴14fまでを貫通させた切り欠き部14dが設けられている。それぞれの切り欠き部には、その周縁部に下向きに屈曲させてリブ状の突起片14cを設けた。このリブ状突起14cを渦巻状極板群の極板芯材露出部に押し当て、隣り合うリブ状突起14c上部にそれぞれ溶接電極棒を押し当てて通電することで、極板群と集電体を溶接することができる。切り欠き部14aの間隔は
L≦3.64×10-3×t/ρ
(L:溶接点の間隔(cm)、t:溶接点における極板の厚み(cm)、ρ:溶接点における極板の比抵抗(Ω・cm))で決まり、下記の実施例と同様の極板(厚さ0.08mm、比抵抗8.71×10-6Ω・cm)を用いた場合、集電板の最外周において5本以上の切り欠き部を設ける必要がある。
【0011】
【実施例】
(実施例1)
本発明について、ニッケル水素蓄電池を例として述べる。作製した電池は、図3に示すごとく直径22mm、高さ42.5mm、公称容量2200mAhである。厚さ0.42mmの焼結式ニッケル正極板1と厚さ0.22mmのペースト式水素吸蔵合金負極板3とを用い、それぞれの極板の長端部の一方は1mmの芯材の露出した部分4、5を設け、それぞれの芯材部が反対向きになるように極板を配し、さらに互いの極板芯材部が対極板よりも2mm突出するようにして、セパレータ2を間に介在させ、正極板、負極板及びセパレータを渦巻状に巻回させ、外径約20mm、高さ約37mmの極板群6を構成した。
【0012】
この極板群の正極側の芯材部端面に図1に示した、集電体7を溶接し、負極側の芯材部端面には図4に示した厚さ0.25mmの鉄製(表面にはニッケルメッキを施したもの)集電体8を溶接した。
【0013】
集電体8は集電体7と同様の円盤状の鉄部材(表面にはニッケルメッキを施したもの)から構成されており、4組の集電体周縁部から中央部にかけての切り欠き部8aを有し、その切り欠き部8aの一部を下向きに屈曲させてリブ状の突起片8cを設けた。このリブ状突起8cを渦巻状極板群の負極板芯材露出部5に押し当て、隣り合うリブ状突起8c上部にそれぞれ溶接電極棒を押し当てて通電することで極板群と集電体を溶接した。さらに集電体7と同様に、渦巻状極板群への溶接の際の無効電流防止のため、切り欠き部8dを設けた。
【0014】
この、集電体を溶接した極群を金属製ケース9に挿入し、集電体7の中央部の穴7fを利用して溶接電極を挿入し、集電体8の中央部8eと金属製ケース底部を溶接した。比重1.30の水酸化カリウム水溶液を4ml注液した後、封口板とケースをかしめて密閉電池甲を作製した。
【0015】
比較例として、集電体7の代わりに、上記と同様にして作製した極板群の正極芯材部端面に厚さ0.25mmの鉄製(表面にはニッケルメッキを施したもの)集電体12を溶接して、集電体12の接続端子12iを封口板に溶接する他は電池甲と同様にして密閉電池乙を作製した。
【0016】
集電体12は図5に示すごとく、円盤状の鉄部材(表面にはニッケルメッキを施したもの)の中央部に負極集電体とケースの溶接のための穴12hを開け、2組の切り欠き部12aと、1組の外周部から中央部穴12hまでを貫通させた切り欠き部12dと、1組の中央部穴から集電体外周部に向けた切り欠き部12eを設け、それぞれの切り欠き部の一部を下向きに屈曲させてリブ状の突起片12cを設けた。また、切り欠き部12eの外側に、集電体12と一体成形された集電端子12iを設けた。
【0017】
リブ状突起12cを渦巻状極板群の正極板芯材露出部4に押し当て、隣り合うリブ状突起12c上部にそれぞれ溶接電極棒を押し当てて通電することで極板群と集電体を溶接した。この際の無効電流防止のため、切り欠き部の集電体中央部端部にさらに切り欠き部12fを設けた。さらに、切り欠き部12eに関しては切り欠き部12gを設けて無効電流を防止した。
【0018】
また、さらに別の比較例として、集電体7の代わりに、上記と同様にして作製した極板群の正極芯材部端面に厚さ0.25mmの鉄製(表面にはニッケルメッキを施したもの)集電体13を溶接した。集電体13は図6に示すように、3組の櫛歯13aを有する平板部13bからなり、各々の平板部材13b間には隙間13cを有し、この平板部13bの中央部が接続端子13dと繋がっており、全ての構成要素は一体成型されているものである。
【0019】
集電体13を正極芯材露出部4に押し当て、平板部13bと隙間13cに溶接電極棒を押し当て、通電することで集電体13と正極芯材露出部4の溶接を行った。集電体13の中央部に立てられた棒状の集電端子13dを封口板11の中央部に貫通させて突出させ正極端子として用いた。封口板11と集電端子13dの隙間をエポキシ樹脂で埋めて密閉した他は、電池甲と同様にして密閉電池丙を作製した。
【0020】
電池甲、乙及び丙を室温にて、1.1Aの電流で2.5時間充電し、1.1Aの電流で電池の端子電圧が1Vになるまで放電する、という方式で10回充放電を繰り返して電池を活性化させた。次に放電状態の電池甲及び乙を1.1Aの電流で1時間充電した後、1時間放置して、60Aの放電を10秒間行った。この60A放電前後の電池電圧の差を電流値で除することにより、電池の直流抵抗を求めた。それぞれの電池について、この直流抵抗の値を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表1から、本発明の電池甲は電池乙・丙に対してそれぞれ0.65mΩ、0.30mΩ電池の内部抵抗が低く、より高出力であることが明らかになった。
【0023】
さらに、これらの電池甲、乙及び丙を室温にて、1.1Aの電流で2.5時間充電し、1.1Aの電流で電池の端子電圧が1Vになるまで放電する、という方式で50回充放電追加した。次に放電状態の電池甲及び乙を1.1Aの電流で1時間充電した後、1時間放置して、60Aの放電を10秒間行った。この60A放電前後の電池電圧の差を電流値で除することにより、電池の直流抵抗を求めた。それぞれの電池について、この直流抵抗の値を表2に示す。
【0024】
【表2】
【0025】
表2から、本発明の電池甲は電池乙・丙に対してそれぞれ0.88mΩ、0.33mΩ電池の直流抵抗が低くなった。また、10サイクル後及び60サイクル後の電池甲の60A10秒放電での直流抵抗を比較すると、60サイクル後の方が抵抗が低くなっており、電池の出力の劣化は見られなかった。
【0026】
(実施例2)
集電体と極板の溶接点数と電池内部抵抗の関係を明らかにするため、以下のような実験を行った。作製した電池は直径22mm、高さ42.5mm、公称容量2200mAhである。厚さ0.42mmの焼結式ニッケル正極板と厚さ0.22mm(芯材は厚み0.08mmの鉄製)のペースト式水素吸蔵合金負極板とを用い、それぞれの極板の長端部の一方は1mmの芯材の露出した部分を設け、それぞれの芯材部が反対向きになるように極板を配し、さらに互いの極板芯材部が対極板よりも2mm突出するようにして、セパレータを間に介在させ、正極板、負極板及びセパレータを渦巻状に巻回させ、外径約20mm、高さ約37mmの極板群を構成した。負極板には予め等間隔にニッケルリード(長さ30mm、厚み0.2mm)を溶接し、巻回後、電池を密閉せずにこれらのニッケルリードを束ねて負極端子とした。極板群の正極側端面には集電体8を溶接し、さらにこの集電体を金属ケースと溶接して金属ケース底部を正極端子とした。
【0027】
これらの電池を電池甲、乙及び丙を室温にて、1.1Aの電流で2.5時間充電し、1.1Aの電流で電池の端子電圧が1Vになるまで放電する、という方式で10回充放電を繰り返して電池を活性化させた。次に放電状態の電池甲及び乙を1.1Aの電流で1h充電した後、1時間放置して、60Aの放電を10秒間行った。この60A放電前後の電池電圧の差を電流値で除することにより、電池の直流抵抗を求めた。以下に負極リード間隔と直流抵抗の関係を図7に示す。
【0028】
図7から負極リードの溶接間隔が3cm以下であれば、ほぼ直流抵抗が最低値をとることが分かった。このことから、本実施例で用いた極板を用いる場合では、集電体と芯材の無地部との溶接間隔も3cm以下であれば充分に電池の内部抵抗を低減できると考えられる。
【0029】
また、極板の集電部の間隔は、芯材の比抵抗が大きくなれば狭くする必要があり、芯材厚みが増せば広げることが可能であると考えられる。ここで、電池内部抵抗を最低にするための最大集電間隔をLmax[cm]とすると、Lmaxは芯材の比抵抗ρ[Ω・cm]に反比例し、芯材厚みt[cm]に比例すると考えると以下の式が得られる。
【0030】
Lmax=a×t/ρ
ここでaは比例定数である。ここで、先述の結果をLmax、t、ρに代入してaの値を求めると
a=3.64×10-3 [Ω・cm]
となる。従って、集電体と極板の溶接点同士の間隔L[cm]が
L≦3.64×10-3×t/ρ
(ρ:芯材の比抵抗 [Ω・cm]、t:芯材厚み [cm])
を満たせば電池の内部抵抗は充分に低くなる。
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、巻回された極板群の対向する端面を形成した一方の極板にそれぞれ接合された集電板は極板群の少なくとも最内周と接合され、かつ集電板の中心部に接続端子が設けられることにより、極板群から電池外部への電流経路を最短とすることができ、内部抵抗の低い、高出力型の二次電池を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による集電体の一実施例を示す外観図
【図2】 本発明による集電体の別の一実施例を示す外観図
【図3】 本発明の一実施例を示す二次電池の半裁断面図
【図4】 一般的な集電板の外観図
【図5】 比較例の集電板の外観図
【図6】 比較例の集電板の外観図
【図7】 リード溶接間隔と直流抵抗の関係を示す図
【符号の説明】
1 正極板
2 セパレータ
3 負極板
4、5 芯材露出部
6 極板群
7、8 集電板
9 金属ケース
10 集電端子
11 封口板

Claims (2)

  1. 正極板と負極板とがセパレータを介して巻回された極板群と、
    この極板群の端面に接合された集電板と、これら極板群と集電板とを収納する有底円筒型の電槽と、この電槽の開口部を封口する封口板と、この封口板と前記集電板とを電気的に接続する接続端子とを備え、前記極板群はその一端面には一方の極性のみの極板端部が露出しており、前記集電板は外周部から中央部穴までを貫通させた切り欠き部と、その周縁部に極板群に向けて屈曲させたリブ状の突起片とを有し、前記切り欠き部には前記集電体の中心点が含まれており、前記集電板は接合された極板の前記極板群における最内周と接合され、前記集電板の中心部に接続端子が設けられていることを特徴とする二次電池。
  2. 前記突起片と極板群の対向する端面を形成した一方の極板とが溶接されていることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
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