JP4903891B2 - シアノビリン変異体−ポリマー接合体 - Google Patents

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Description

本発明は、タンパク質−ポリマー接合体の分野に関する。さらに詳細には、本発明は、(i)活性化した水溶性ポリマー(例えばポリエチレングリコール)と部位特異的または部位選択的に接合させるのに適したシアノビリン変異体と、(ii)シアノビリン変異体−ポリマー接合体と、(iii)そのような接合体の製造法および使用法に関する。
シアノビリン−N(CV−N)は強力なHIV不活化タンパク質であり、元々は培養したノストック・エリプソスポラム(Nostoc ellipsoporum)というシアノバクテリアの水性抽出物から単離して同定された(アメリカ合衆国特許第6,420,336号)。シアノビリン−Nが同定されて以来、大腸菌の中で組み換えによってシアノビリン−Nを産生させるいろいろな方法が開発された(Mori,T.他、Protein Expr.Purif.、第12巻、151〜158ページ、1998年)。シアノビリン−Nは11kDaのタンパク質であり、101個のアミノ酸からなる単一の鎖で構成されていて、2つの鎖内ジスルフィド結合を含んでいる。CV−Nは、細長くて大部分がβ−シートになったタンパク質であり、内部擬2回対称性を示し、HIVの表面エンベロープ・タンパク質であるgp120に高い親和性で特異的に結合する(Bewley、C.R.他、Nature Structural Biology、第5巻(7)、571〜578ページ、1998年)。
シアノビリン−Nには抗ウイルス活性があることが観察されているにもかかわらず、シアノビリン−Nタンパク質療法の開発は中断状態になっている。それは、投与後の半減期が比較的短いことと、生体内での免疫原性および潜在的な毒性副作用があることが原因である。循環系に導入されるたいていのタンパク質、特に比較的低分子量のタンパク質は、対象とする哺乳動物から腎臓を通じて素早く排出される。この問題は、大量の治療用タンパク質を投与することによって、あるいは頻繁に投与することによって、部分的に解決することができる。しかしタンパク質の投与量が多くなると、そのタンパク質と結合して不活化することのできる抗体および/または対象の体内からそのタンパク質を容易に排出する抗体が誘導される可能性がある。そのため、治療用タンパク質を繰り返して投与すると実質的に無効になる可能性がある。さらに、この方法はアレルギー応答を誘導することがあるため危険である可能性がある。
タンパク質療法に付随するこうした問題を解決するさまざまな試みとして、マイクロカプセル化、リポソーム送達システム、融合タンパク質の投与、化学的修飾といった方法がある。その中で現在のところ最も有望なのは、治療用タンパク質にポリ(アルキレンオキシド)ポリマー(特にポリエチレングリコール(“PEG”))を共有結合させる修飾を行なうという方法である。例えばRoberts,M.他、Adv.Drug Delivery Reviews、第54巻、459〜476ページ、2002年には、生体巨大分子をPEGと共有結合させて修飾し、生理学的に活性な非免疫原性の水溶性PEG接合体を得ることが記載されている。PEGをタンパク質などの治療用分子に結合させる方法は、例えばアメリカ合衆国特許第4,179,337号、第5,122,614号、第5,446,090号、第5,990,237号、第6,214,966号、第6,376,604号、第6,413,507号、第6,495,659号、第6,602,498号にも開示されている。なおそれぞれの特許の内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
PEGは水和するとランダム・コイルとしての性質を持つため、免疫系によって認識されることになるタンパク質の表面エピトープがマスクされる。その結果、PEGを治療用タンパク質に結合させると、身体からの拒絶がゆっくりとなり、タンパク質、細胞、細菌による吸着が低下し、そのタンパク質の流体力学的半径が増大して糸球体での濾過と腎臓でのクリアランスが低下する。PEGを付加することにより、いくつかのタンパク質が修飾されている。そのようなタンパク質を少し挙げると、アデノシンデアミダーゼ、L−アスパラギナーゼ、インターフェロンα2b、スーパーオキシドディスムターゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)、ウロキナーゼ、ウリカーゼ、ヘモグロビン、インターロイキン類、インターフェロン類、TGF−β、EGFその他の増殖因子がある(Nucci他、Adv.Drug Delivery Rev.、第4巻、133〜151ページ、1991年)。このような修飾により、接合体になっていないタンパク質と比べてタンパク質の半減期が延長し、毒性および/または免疫原性が低下し、薬物動態が改善し、溶解度が大きくなった。
残念なことに、ポリマー鎖(例えばPEG)をタンパク質に結合させても治療特性が向上するタンパク質が常に得られるとは限らない。PEG化の間にタンパク質の修飾が実質的に完了する場合、すなわちタンパク質表面の利用できる反応部位のすべてまたは過半がPEG化された場合、そのタンパク質の生物活性の大部分が失われる可能性がある。後述するように、例えばシアノビリン−Nのリシン残基をPEG化することにより、生物活性がほとんどない接合体が得られた。
タンパク質の部分的PEG化によって生物活性に対するこの影響を小さくすることができる。しかし部分的修飾の1つの欠点は、非選択的プロセスを利用する場合には、タンパク質内の利用可能なさまざまな残基位置にPEG化されたさまざまな種(例えばモノPEG化種、ジPEG化種など)が統計的に分布したPEG化タンパク質の異種混合物が得られることである。得られる接合体組成物の性質(例えば安定性、生物活性、毒性など)にこのような結合が及ぼす影響をはっきりと予測することは難しい。
さらに、結合したPEG基の数と位置の両方が異なるPEG化タンパク質混合物を含むこのようにランダムにPEG化された接合体組成物は、再現性よく調製できないことがしばしばある。さまざまに修飾されたタンパク質のこのような混合物は、一般に医薬組成物として用いるのに適していない。
このような混合物から特定のPEG化タンパク質を精製して単離するには、たとえ実現可能であるとしても時間とコストのかかる方法が用いられるため、興味の対象である特定のPEG化タンパク質の全収率が低下する。位置異性体の分離、すなわち数は同じだが位置が異なるPEG部を含む接合体の分離は特に難しい可能性がある。というのもその接合体は互いに分子量が似ているからである。このように面倒な問題があるため、非特異的PEG化タンパク質の利用は経済的に見合わない。
既存のPEG化法の多くには上記の欠点があるため、PEGを特定の分子(例えばシアノビリン)に結合させる方法を開発することにより、全身毒性を低下させ、循環の半減期を長くしつつ生物活性をほぼ維持していて、成分がよくわかった医薬組成物となるPEG接合体を提供する必要性が相変わらず残されたままになっている。
これらの問題点および他の問題点の一部に対処するため、本発明により、特定のシアノビリン−Nタンパク質変異体に共有結合した水溶性ポリマーを含む性質のよくわかったタンパク質−ポリマー接合体を提供する。この明細書に提示するこのような変異体は、水溶性ポリマーに選択的に結合させうる決まった数(1〜4個が好ましく、1個または2個がより好ましい)の反応部位が含まれるように修飾したポリペプチドである。
本発明によるシアノビリン−N変異体の特別な実施態様として、天然シアノビリン−N(配列ID番号1)と少なくとも70%の配列同一性を有し、5、9〜21、25、29〜40、45〜49、52、57、59〜72、79〜91、96〜101、C末端、N末端からなるグループの中から選択した少なくとも1つの位置に置換または挿入によるシステインを有する抗ウイルス・ポリペプチドが挙げられる。あるいはこのポリペプチドは、3、48、74、84、99からなるグループの中から選択した少なくとも4つの残基に置換されたアルギニンを含むこともできる。
選択したいくつかの実施態様では、上記の置換または挿入を1つ以上有する抗ウイルス・ポリペプチドは、配列ID番号1と少なくとも80%の配列同一性、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有している。一実施態様では、このポリペプチドは、上記の修飾を含む以外は、配列ID番号1(元のシアノビリン−N)としてこの明細書に提示した配列に対応している。
システインを置換または挿入する好ましい部位は、配列ID番号1の位置5、9〜21、25、29〜40、45〜49、52、57、59〜72、79〜91、96〜101、C末端、N末端であり、より好ましいのは、配列ID番号1の位置9〜21、29〜40、45〜49、57、59〜72、79〜91、96〜101である。このように挿入または置換(置換のほうが好ましい)を行なうシステインの数は、1〜4個であることが好ましく、1個または2個であることがさらに好ましい。さらに別の実施態様では、ポリペプチドは、システインが1個または2個挿入または置換(置換のほうが好ましい)されている配列ID番号1に対応するポリペプチドである。その挿入または置換の位置は、10〜20、31〜39、46〜48、60〜71、80〜901、97〜100の中から選択する。より好ましいのは、位置11、14、16、19、20、31、32、33、38、46、61、62、67、68、82、83の中から選択することである。特に好ましい位置は、位置62または位置14であり、その場合にポリペプチドは、これら2つの位置の一方または両方で置換されている。
そのようなポリペプチドとして、この明細書の末尾にある配列表に掲載した配列ID番号2〜6に示した置換を有するものが挙げられる。配列ID番号2〜6については、後でさらに詳しく説明する。このような置換は、1〜4個、または1〜2個、または1個含まれていることが好ましく、それ以外は、ポリペプチドの配列が、配列ID番号1と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の相同性を有している。一実施態様では、ポリペプチドは他の点では配列ID番号1と一致している。選択したいくつかの実施態様では、ポリペプチドは配列ID番号6または配列ID番号7を有する。
本発明の接合体は、上記のCV−N変異体ポリペプチドの抗ウイルス断片として、このようなポリペプチドの少なくとも9個、好ましくは少なくとも20個、より好ましくは少なくとも40個の連続したアミノ酸を含んでいて、上記の置換または挿入のうちの少なくとも1つにまたがっているものも含むことができる。この断片は、天然のシアノビリン−N(配列ID番号1)の残基41〜78に対応する領域と、上記の置換または挿入のうちの少なくとも1つを含むことができる。この断片は、配列ID番号1の11、14、16、19、20、31、32、33、38、46、61、62、67、68、82、83の中から選択した残基にシステイン置換を含んでいることが好ましい。一実施態様では、断片は位置62にシステイン置換を含んでいる。
本発明の別の特徴によると、本発明による上記の抗ウイルス・シアノビリン−Nポリペプチド変異体をコードするポリヌクレオチド、またはその断片と、そのようなポリヌクレオチドを含む組み換えベクターおよび形質転換された宿主細胞が提供される。好ましい実施態様では、ポリヌクレオチドは、配列ID番号1に対応していて、システインが1個または2個挿入または置換(置換のほうが好ましい)されたポリペプチドをコードしている。挿入または置換の位置は、10〜20、31〜39、46〜48、60〜71、80〜90、97〜100の中から選択する。より好ましいのは、位置11、14、16、19、20、31、32、33、38、46、61、62、67、68、82、83の中から選択することである。特に好ましい位置は、位置62または位置14であり、その場合にポリペプチドは、これら2つの位置の一方または両方で置換されている。選択したいくつかの実施態様では、ポリヌクレオチドは、この明細書に記載した配列表の配列ID番号12または配列ID番号13に示したコード配列を含んでいる。
さらに別の特徴によると、これら変異体のポリマー接合体が提供される。さらに詳しく説明すると、このポリマー接合体は、少なくとも1つの水溶性ポリマーに共有結合した上記の抗ウイルス・ポリペプチド変異体を含んでいる。特に好ましい一実施態様では、水溶性ポリマーは、システインの置換部位または挿入部位に共有結合したポリ(アルキレンオキシド)(例えばポリエチレングリコール(PEG))である。さらに別の一実施態様によれば、水溶性ポリマーは、シアノビリン−N変異体の挿入部位または置換部位に共有結合したポリエチレングリコールである。
より詳細には、本発明により、
(i)天然シアノビリン−N(配列ID番号1)と少なくとも70%の配列同一性を有していて、5、9〜21、25、29〜40、45〜49、52、57、59〜72、79〜91、96〜101、C末端、N末端からなるグループの中から選択した少なくとも1つの位置に置換または挿入によるシステインを有するか、あるいは3、48、74、84、99からなるグループの中から選択した少なくとも4つの残基に置換されたアルギニンを有する抗ウイルス・ポリペプチド;またはその断片であって少なくとも9個のアミノ酸と少なくとも1個の上記置換残基または挿入残基を有する断片と;
(ii)少なくとも1つの上記置換残基または挿入残基の位置において上記ポリペプチドまたはその断片に共有結合した水溶性ポリマーとを含む抗ウイルス・ポリペプチド−ポリマー接合体が提供される。
水溶性ポリマーは、上記のように、システインが挿入または置換(置換のほうが好ましい)されている部位に結合していることが好ましい。特に好ましい置換部位は、配列ID番号1の位置11、14、16、19、20、31、32、33、38、46、61、62、67、68、82、83である。
水溶性ポリマーは、さまざまな結合(例えばアミド、第二級アミン、エステル、ジスルフィド、エーテル、チオエーテル、尿素、カルバミン酸塩)を通じて結合させることができる。
接合体は、一般に、結合した1〜4個、好ましくは1〜2個の水溶性ポリマーを含んでいる。選択したいくつかの実施態様では、そのようなポリマーが1個結合している。好ましいタイプの水溶性ポリマーとしては、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(アクリロモルホリン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、これらのコポリマーが挙げられる。特に好ましいのは、ポリアルキレンオキシド(例えばポリエチレングリコール(PEG))である。ポリマーは、広い範囲の分子量を持つことが可能である。例えば平均分子量は、約350ダルトン〜約200,000ダルトンの範囲、好ましくは約2,000〜約200,000ダルトンの範囲、より好ましくは約5,000〜約40,000ダルトンの範囲が可能である。
接合体に含まれるPEGポリマーは、さまざまな構造的形態を取ることができる。例えば線状ポリエチレングリコール、末端にキャップを有するポリエチレングリコール、分岐したポリエチレングリコール、フォーク状のポリエチレングリコールなどの形態がある。ポリマーは、生体内の生理学的条件下で分解する1つ以上の結合を含むこともできる。
一実施態様では、接合体は、配列ID番号1に対応するポリペプチドの位置62で置換されたシステイン残基に結合したPEGポリマーを含んでいる。ポリマーの平均分子量は、10〜40kDaの範囲であることが好ましく、20〜30kDaの範囲であることがさらに好ましく、25〜35kDaの範囲であることが最も好ましい。一実施態様では、平均分子量は約30,000ダルトンである。
本発明のさらに別の特徴によれば、治療または予防に有効な量の上記タンパク質−ポリマー接合体と、医薬的に許容可能な基剤とを含む医薬組成物が提供される。本発明の医薬組成物を製剤化し、以下の経路を通じて供給することができる。すなわち、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、大脳内静脈注射、吸入、鼻腔内投与、局所投与、経皮投与、経口投与、眼内投与、膣投与、直腸投与といった経路である。
上記のポリマー−シアノビリン変異体接合体を粒子、磁性ビーズ、流動マトリックス、コンドーム、膜、避妊用頚部キャップ、膣リング、スポンジ、フォーム、ゲルのいずれかに固着させたもの、あるいはこれのいずれかと組み合わせたものも提供される。
さらに別の特徴によれば、少なくとも1つの高マンノース・エンベロープ・ウイルスによる感染を治療、予防、緩和するため、そのような治療を必要としている対象に上記の医薬組成物を投与する方法が提供される。本発明の接合体は、例えば免疫不全ウイルス、インフルエンザ・ウイルス、はしかウイルス、ヘルペス・ウイルス6、マルブルク・ウイルス、エボラ・ウイルスによる感染を治療、予防、緩和するのに使用できる。
当業者にとって、本発明のこれらの特徴ならびに他の特徴は、添付の図面を参照してこの明細書の全体を読むことによって明らかになろう。
インビトロ抗HIVアッセイにおける元のシアノビリン−N、代表的なCV−N位置変異体、PEG化−CV−N変異体の活性をAZTと比較して示した棒グラフである。 本発明によるPEG化−CV−N位置変異体と非PEG化−CV−N位置変異体の相対的免疫原性を示す棒グラフである。
定義
この明細書では、以下の用語は以下に示した意味で用いる。
この明細書と添付の請求項では、単数形“1つの”、“その”には、文脈から違うことがはっきりとわかる場合を除き、複数形も含まれる。
この明細書では、“PEG”すなわち“ポリエチレングリコール”にあらゆる水溶性ポリ(エチレンオキシド)が含まれるものとする。本発明で用いる非常に一般的なPEGは、−CHCHO(CHCHO)CHCH−(ただしnは少なくとも2)という構造を含んでいるが、PEG部全体の末端基または実際の構造はいろいろなものが可能である。“PEG”は、−CHCHO−というサブユニットが過半を占める(すなわち50%を超える)ポリマーである。一般に用いられる1つのPEGは、末端にキャップを有するPEGである。その場合、このPEGの一方の端部は比較的不活性な基(一般にはメトキシ(−OCH)などのアルコキシ基)で覆われているのに対し、別の端部の少なくとも1つは、ヒドロキシル基または活性基になっていてさらに化学的に修飾することが可能である。本発明で使用する特別な形態のPEGとしては、さまざまな分子量、構造、幾何学的形態(分岐したPEG、多数のアームを有するPEG、線状のPEG、フォーク状のPEGなど)のPEGが挙げられる。これについてはあとで詳しく説明する。
天然には生成されない本発明の水溶性ポリマー(例えばPEG)の文脈における“公称平均分子量”は、ポリマーの重量平均分子量を意味し、一般にはサイズ排除クロマトグラフィ、光散乱、1,2,4−トリクロロベンゼン中での固有粘度によって測定する。本発明のポリマーは一般に多分散性であり、多分散値は約1.05未満という低い値になっている。
個々の官能基と組み合わせて用いる場合の“活性な”または“活性化した”という用語は、別の分子上の求電子部または求核部と容易に反応する反応性官能基を意味する。これは、反応させるために強力な触媒または実際にはほとんどありえない反応条件を必要とする基(すなわち“非反応性の”基または“不活性な”基)とは対照的である。
“保護された”と“保護基”という用語は、ある反応条件において、分子中の化学的に活性な特定の官能基の反応を阻止する部分(すなわち保護基)が存在することを意味する。保護基を何にするかは、保護する化学的に反応性のある基のタイプ、ならびに用いる反応条件と、存在する場合の分子内の別の反応基または保護基によって異なる。これまでに知られている保護基は、Greene,T.W.他、『有機合成における保護基』、第3版、ジョン・ワイリー&サンズ社、ニューヨーク、ニューヨーク州、1999年に見いだすことができる。
この明細書では、“官能基”という用語またはその同意語は、それが保護された形態も含むものとする。
この明細書では、“結合”または“リンカー”(L)という用語は、ポリマー区画の末端などの部分を、タンパク質、ポリペプチド、小分子、表面の反応基または反応中心と互いに結びつける際に必要に応じて用いる原子または原子群を意味する。リンカーは、加水分解に対して安定なものでもよいし、生理学的に加水分解可能な結合または酵素による分解が可能な結合を含んでいてもよい。
“アルキル”は、一般に長さが原子1〜15個の飽和炭化水素鎖を意味する。このような炭化水素鎖は、分岐鎖でも直鎖でもよいが、一般に直鎖のほうが好ましい。アルキル基の具体例としては、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、3−メチルペンチルなどが挙げられる。
“低級アルキル”は、炭素原子を1〜6個含むアルキル基を意味し、直鎖でも分岐鎖でもよい。具体的には、メチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチルなどがある。
“アルケニル”は、炭素−炭素二重結合を1つ以上含む一般に長さが原子1〜15個の炭化水素鎖を意味する。このような炭化水素鎖は、分岐鎖でも直鎖でもよいが、一般に直鎖のほうが好ましい。
“シクロアルキル”は、飽和環式炭化水素を意味し、その中には、架橋した環式化合物、融合した環式化合物、スピロ環式化合物が含まれる。3〜約12個の炭素原子、より好ましくは3〜約8個の炭素原子で構成されていることが好ましい。“シクロアルケニル”は、炭素−炭素二重結合を1つ以上有する環式炭化水素基を意味する。
“非干渉性置換基”は、分子中に存在しているとき、その分子に含まれる他の官能基と一般に反応しない基である。
アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基に関して用いる“置換された”という用語は、1個以上の非干渉性置換基で置換された基を意味する。具体的な非干渉性置換基としては、C3〜C8シクロアルキル(例えばシクロプロピル、シクロブチルなど);シアノ;アルコキシ、低級フェニル;置換されたフェニルなどがある。
“アルコキシ”は、−O−R基(ただしRは、場合によってはアルキルまたはアルケニルで置換されている)を意味する。アルコキシは、C1〜C6(例えばメトキシ、エトキシ、プロピルオキシなど)であることが好ましい。
“アリール”は、それぞれの環に5個または6個の炭素原子を有する1つ以上の芳香族環を含む基を意味する。この用語には、融合した多重アリール環(例えばナフチル)または融合していない多重アリール環(例えばビフェニル)が含まれる。アリール環は、1つ以上の環式炭化水素、ヘテロアリール環、複素環と融合していてもしていなくてもよい。
“置換されたアリール”は、置換基として非干渉性の基を1個以上含むアリールを意味する。フェニル環上での置換に関しては、置換基はどの位置でもよい(すなわちオルト、メタ、パラ)。
“ヘテロアリール”は、1〜4個のヘテロ原子(N、O、Sまたはこれらの組み合わせが好ましい)を含むアリール基である。具体的には、フラン、ピロール、ピリジン、イミダゾール、融合系(インドールなど)が挙げられる。ヘテロアリール環は、1つ以上の環式炭化水素、複素環、アリール環、ヘテロアリール環と融合していてもよい。“置換されたヘテロアリール”は、置換基として非干渉性の基を1個以上含むヘテロアリールを意味する。
“アラルキル”は、アリール基でさらに置換されたアルキル基(低級(C1〜C4、より好ましくはC1〜C2)アルキルが好ましい)を意味する。具体的にはベンジルとフェネチルがある。
“ヘテロ環”または“ヘテロ環式”は、5〜12原子(5〜7原子が好ましい)からなる1つ以上の環で、環を構成する少なくとも1つの原子が炭素ではないものを意味する。この環は、不飽和であってもなくてもよく、芳香族としての性質を持っていてもいなくてもよい。好ましいヘテロ原子は、イオウ、酸素、窒素である。芳香族複素環の具体例はすでに示した。非芳香族複素環としては、例えばピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンなどが挙げられる。
“置換されたヘテロ環”は、非干渉性置換基からなる1つ以上の側鎖を有するヘテロ環である。
“求電子部”は、求核部と反応することのできる求電子中心(すなわち電子を求める中心)を有する原子または原子群を意味する。
“生理学的に加水分解可能な”結合は、生理学的条件下で水と反応する(すなわち加水分解する)比較的弱い結合である。ある結合が水中で加水分解する傾向は、2つの中心原子をつないでいる結合の一般的なタイプだけでなく、その中心原子に結合している置換基にも依存する。加水分解する不安定な結合、すなわち弱い結合として適切なものとしては、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、オリゴヌクレオチドなどが挙げられる。
“酵素によって分解する結合”は、1つ以上の酵素によって分解する結合を意味する。
“加水分解に対して安定な”結合は、水中で実質的に安定な化学結合(一般に共有結合)を意味する。すなわちこの結合は、生理学的条件下で認識できる程度まで長期間にわたって加水分解することがない。加水分解に対して安定な結合の具体例としては、炭素−炭素結合(例えば脂肪族鎖に含まれるもの)、エーテル、アミド、ウレタンなどが挙げられる。一般に、加水分解に対して安定な結合は、加水分解の速度が生理学的条件下で1日につき約1〜2%未満である。代表的な化学結合の加水分解速度は、たいていの標準的な化学の教科書に見いだすことができる。
“医薬的に許容可能な賦形剤または基剤”は、場合によっては本発明の組成物に含まれる可能性があって対象に好ましくない顕著な毒性効果を引き起こさない賦形剤を意味する。
“医薬的に有効な量”または“生理学的に有効な量”は、この明細書に記載の治療用組成物の中に存在していて、血流または標的組織において活性剤が望むレベルになるのに必要なポリマー−シアノビリン変異体接合体の量を意味する。正確な量は多数の因子の影響を受ける。因子としては、例えば、具体的な薬または治療剤が何であるか、治療用組成物の成分と物理的特性、予定する患者集団、患者について考慮すべき事柄などがある。しかし当業者であれば、この明細書に記載した情報に基づいて容易に量を決めることができる。
本発明によるポリマーの文脈における“二官能性”は、2つの反応性官能基を有するポリマーを意味する。なおその2つの反応性官能基は、同じでも異なっていてもよい。
本発明によるポリマーの文脈における“多官能性”は、3つ以上の官能基が結合したポリマーを意味する。なおその3つ以上の官能基は、同じでも異なっていてもよい。本発明の多官能性ポリマーは、一般に、約3〜100個の官能基、または3〜50個の官能基、または3〜25個の官能基、または3〜15個の官能基、または3〜10個の官能基を備えているか、あるいはポリマー骨格に結合した3、4、5、6、7、8、9、10個いずれかの数の官能基を備えている。“ポリペプチドポリマー接合体”という用語は、少なくとも1つの水溶性ポリマーに共有結合したポリペプチド(例えばシアノビリン(または生物活性のあるその断片))を意味する。
シアノビリン変異体、その断片、ポリマー接合体に関してこの明細書で用いる“抗ウイルス活性”は、測定可能な程度のシアノビリン抗ウイルス活性を意味する(例えば元のシアノビリンの生物活性の少なくとも約15%〜約100%またはそれ以上)。
“アミノ酸”は、アミノ基とカルボキシル基の両方を含むあらゆる化合物を意味する。アミノ基はカルボキシ基の隣の位置(α)に来ることが非常に一般的であるが、分子内の任意の位置に来ることが可能である。アミノ酸は別の官能基(例えばアミノ、チオ、カルボキシル、カルボキサミド、イミダゾールなど)を含んでいてもよい。アミノ酸は合成したものでも天然のものでもよく、ラセミ形または光学活性な形(D型または天然に起こるL型、ただし後者のほうが好ましい)のいずれかで存在することができる。
“核酸”は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)を意味する。
“発現”という用語は、遺伝子を転写して対応するmRNAを産生させ、このmRNAを翻訳して対応する遺伝子産物(すなわちペプチド、ポリペプチド、タンパク質)を産生させることを意味する。“アンチセンスRNAの発現”という用語は、DNAを転写し、第1のRNA分子として第2のRNA分子にハイブリダイズすることのできるものを産生させることを意味する。RNA−RNAハイブリッドの形成により、遺伝子産物を産生させる第2のRNA分子の翻訳が抑制される。
“ハイブリダイゼーション”は、核酸の鎖が塩基の対形成を通じて相補的な鎖と結合する能力を意味する。ハイブリダイゼーションは、2本の核酸鎖の相補的な核酸配列が適切な条件下で互いに接触したときに起こる。
“機能的にリンクしている”という表現は、2つ以上の核酸領域または核酸配列が機能的な空間的配置になっていることを意味する。例えばプロモータ領域と核酸配列の相対位置は、核酸配列の転写がそのプロモータ領域によって指示されるように決めることができる。したがってプロモータ領域は、核酸配列と“機能的にリンクしている”。
“ポリアデニル化シグナル”または“ポリAシグナル”は、コード領域に対して3’側に位置していて、そのコード領域から転写したmRNAの3’末端にアデニレート・ヌクレオチドを付加するのを促進する核酸配列を意味する。
“調節配列”は、コード配列の上流(5’)、内部、下流(3’)のいずれかに位置する核酸配列を意味する。コード配列の転写と発現は、一般に、調節配列の存在または不在による影響を受ける。“転写”は、DNA鋳型からRNAのコピーを作り出すプロセスを意味する。
“プロモータ”または“プロモータ領域”は、一般にコード配列の上流(5’)に見られる核酸配列を意味し、核酸配列をmRNAに転写する指示を与えることができる。プロモータまたはプロモータ領域は、一般にRNAポリメラーゼの認識部位と、転写の適切な開始に必要な他の因子とを提供する。この明細書では、プロモータまたはプロモータ領域に、プロモータに対してランダムな突然変異誘発や位置指定突然変異誘発などを行なうことによって調節領域に挿入または欠失が起こったプロモータ変異体も含まれる。プロモータの活性または強度は、そのプロモータによって産生されるRNAの量、あるいは細胞または組織に蓄積するタンパク質の量を、転写活性が以前に測定されているプロモータと比較することによって決定できる。
“タンパク質”または“ポリペプチド”という用語には、5個以上のアミノ酸鎖を有する分子が含まれる。タンパク質に対しては翻訳後修飾などの修飾を行なえることが従来技術において周知である(例えばジスルフィド結合の形成、グリコシル化、リン酸化、オリゴマー化など)。したがってこの明細書では、“タンパク質”または“ペプチド分子”という用語に、任意の生物学的または非生物学的なプロセスによって修飾されたあらゆるタンパク質が含まれる。
“タンパク質断片”は、アミノ酸配列に元のタンパク質のアミノ酸配列の一部が含まれるペプチド分子またはポリペプチド分子である。タンパク質またはその断片で、そのタンパク質に由来しない1つ以上の追加ペプチド領域を含むものは、“融合”タンパク質である。
“タンパク質変異体”は、元のアミノ酸配列を修飾したアミノ酸配列を有するタンパク質である。典型的な変化としては、アミノ酸の置換、付加、欠失のほか、通常はつながらない2つの配列の融合などが挙げられる。
この明細書でポリペプチドやタンパク質を記述するのに用いる用語は一般的な規則に従っており、ペプチド内の各アミノ酸でアミノ基は左側、カルボキシル基は右側に来るものとする。アミノ末端基とカルボキシル末端基は特に示さないことがしばしばあるが、特に断わらない限り、生理学的pHの値で取ると考えられている形(すなわち−NH 、−C(O)O)になっているものと理解する。
“組み換えベクター”は、プラスミド、コスミド、ウイルス、自律的に複製する配列、ファージ、線状になった一本鎖のDNAまたはRNAヌクレオチド配列、環状になった一本鎖のDNAまたはRNAヌクレオチド配列、線状になった二本鎖のDNAまたはRNAヌクレオチド配列、環状になった二本鎖のDNAまたはRNAヌクレオチド配列といった媒体を意味する。組み換えベクターは、任意の供給源に由来するものが可能であり、ゲノムと一体化することや、自律的に複製することができる。
“実質的に相同”とは、デフォルト・パラメータを用いてこの明細書に記載したBestFitプログラム(バージョン10;ジェネティックス・コンピュータ・グループ社、ウィスコンシン大学バイオテクノロジー・センター、マディソン、ウィスコンシン州)によって測定したときに少なくとも90%の配列同一性を有する2つの配列を意味する。
2つ以上のポリヌクレオチド断片またはポリペプチド断片は、2つ以上の配列をコンピュータ・プログラム(例えばBestFitまたはALIGN)を用いて互いに対応するようにして並べたとき、ヌクレオチド塩基またはアミノ酸残基が全塩基位置または全残基位置に対して少なくとも指定された割合でそれぞれ一致しているときに少なくとも所定の割合で“配列同一性”を有している。(ALIGNプログラムは、配列比較プログラムであるFASTAバージョン1.7セット(PearsonとLipman、1988年;Pearson1990年)に含まれる。)
修飾した配列は、所定の配列と特に指定した位置でだけ異なる場合に、その配列に“対応する”と表現する。
“実質的に精製された”は、天然の状態で通常は付随している他の実質的にすべての分子から分離された分子を意味する。より詳細には、実質的に精製された分子は、調製物中に存在する優勢な種である。実質的に精製された分子は、天然の混合物中に存在する他の分子(溶媒は別)の60%を超える割合、好ましくは75%を超える割合、より好ましくは90%を超える割合、最も好ましくは95%を超える割合が除去されている。“実質的に精製された”という表現は、元の状態で存在する分子には使用しない。
“ベクター”は、外来性DNAを宿主生物の内部に運び込むプラスミド、コスミド、バクテリオファージ、ウイルスを意味する。
“形質転換”は、核酸をレシピエントとなる宿主に導入することを意味する。“組み換え宿主細胞”、“宿主細胞”、“宿主”という用語は、細菌細胞、菌類、動物、動物細胞、植物、種子、植物の任意の部分または組織(例えば植物細胞、プロトプラスト、カルス、根、塊茎、種子、茎、葉、苗、胚、花粉)を意味する。この用語には、直接的に対象とする細胞と、その子孫が含まれる。偶然の突然変異や環境の違いのため、すべての子孫が親細胞と正確に一致するとは限らないことを理解されたい。しかしそのように変化した子孫は、その子孫が元の形質転換された細胞に与えた性質を保持している限りはこの用語に含まれる。この明細書では、そのような性質として、例えば組み換えCV−Nまたはその変異体を産生する能力が挙げられよう。
I.発明の全体像
本発明の1つの側面は、可溶性ポリマー(例えばPEG)との接合に利用できる特定の部位だけを有するように修飾したCV−Nタンパク質に関する。天然のCV−Nアミノ酸に対する置換または挿入に例えばシステイン残基を用いると、スルフヒドリル特異的PEG試薬(例えばPEG−マレイミドまたはPEG−オルトピリジルジスルフィド)を使用して特定のシステインに対する部位特異的修飾を行なうことができる。このようにして、PEG化位置がよくわかったPEG−シアノビリン−変異体を調製することができる。
本発明による代表的なシアノビリン変異体の調製法を実施例2〜5で説明する。これら変異体は、PCRに基づいた方法で生成したが、多数ある遺伝子工学技術のどれを利用してもよい。
本発明は、このように修飾したタンパク質から調製した接合体にも関する。以下に説明するように、本発明のCV−N変異体は、PEG化したとき、精製すると、抗ウイルス活性が大きくて、毒性と免疫原性が低下していて、生体内の循環時間が天然のCV−Nよりも長く、特性がよくわかった高純度PEG−CV−N変異体組成物になる。
II.シアノビリン−Nタンパク質変異体
変異体は、1つ以上の水溶性ポリマーを特異的に化学的結合させたとき、得られるポリマー接合体の抗ウイルス特性が保持されるように設計する。タンパク質におけるアミノ酸置換に関する一般的な議論の後、本発明による好ましいCV−N変異体の説明を行なう。
A.アミノ酸置換
天然の配列の1個以上のアミノ酸を電荷と極性が似た別のアミノ酸で置換してサイレント変化を起こせること(すなわち保存されたアミノ酸置換)は従来からよく知られている。天然のポリペプチド配列内で保存された置換を行なうアミノ酸は、そのアミノ酸が属するクラスの別のメンバーの中から選択することができる。
天然のタンパク質に見られる20種類のアミノ酸は、一般に、極性アミノ酸(S、T、C、Y、D、N、E、Q、R、H、K)または非極性アミノ酸(G、A、V、L、I、M、F、W、P)に分類される。これらアミノ酸はさらに、4つの主要なクラスに分類することができる。すなわち、酸性、塩基性、中性/極性、中性/非極性である。最初の3つのクラスは、上記の“極性”という一般的な項目に入る。これら4つのクラスは以下の特徴を有する。
酸性:生理学的pHの水溶液中で分子のかなりの割合(例えば少なくとも25%)が、(Hイオンを失うために)負に帯電する。
塩基性:生理学的pHの水溶液中で分子のかなりの割合(例えば少なくとも25%)が、(Hイオンと結合するために)正に帯電する。酸性残基と塩基性残基の両方とも水溶液によって引きつけられ、水性媒体中でペプチドが立体配座する際に外面の位置を探す。
中性/極性:この残基は生理学的pHで帯電していないが、水溶液によってやはり引きつけられ、生理学的pHの水性媒体中でペプチドが立体配座する際に外面の位置を探す。
中性/非極性:この残基は生理学的pHで帯電しておらず、水溶液によって反発され、水性媒体中でペプチドが立体配座する際に内面の位置を探す。この残基は“疎水性”とも表記される。
アミノ酸残基はさらに、残基の側鎖置換基と小さいか大きいかに基づき、環式/非環式および芳香族/非芳香族に分類することができる。残基は、含まれる炭素原子(カルボキシルの炭素も含む)の合計が4個以下の場合に小さいと考えられる。
天然に存在するタンパク質のアミノ酸を上記のスキームでさらに細かく分類すると、以下のようになる。
酸性:アスパラギン酸、グルタミン酸
塩基性/非環式:アルギニン、リシン
塩基性/環式:ヒスチジン
中性/極性/小:トレオニン、セリン、システイン
中性/極性/大/非芳香族:アスパラギン、グルタミン
中性/極性/大/芳香族:チロシン
中性/非極性/小:アラニン
中性/非極性/大/非芳香族:バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン
中性/非極性/大/芳香族:フェニルアラニン、トリプトファン
プロリンは技術的に中性/非極性/大/環式で非芳香族に属する。このプロリンは、ペプチド鎖の二次立体配座に対する効果が知られているために特別なケースであると考えられている。したがってプロリンはこのように定義されたグループに含まれるが、それ自体が1つのグループをなしていると見なされる。
アミノ酸のハイドロパシー指数がタンパク質上の相互作用生物学的機能に与える役割を考慮するとよい。例えばKyteとDoolittle、J.Mol.Biol.、第157巻、105〜132ページ、1982年を参照のこと。アミノ酸の相対的ハイドロパシー特性が、得られるタンパク質の二次構造に影響を与え、今度はその二次構造がそのタンパク質と他の分子(例えば酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原など)の相互作用を規定することが認められている。また、タンパク質の局所的な最大平均親水性は、そのタンパク質の生物学的特性と相関することが知られているため、似たアミノ酸の置換を親水性に基づいて効果的に行なえることも従来からわかっている。例えばアメリカ合衆国特許第4,554,101号を参照のこと。
それぞれのアミノ酸には、表1に示したようなハイドロパシー指数と親水値が割り当てられている。
ある種のアミノ酸は、ハイドロパシー指数または親水値が似た他のアミノ酸で置換でき、その結果として生物活性が似たタンパク質が得られることが従来から知られている。ハイドロパシー指数または親水値が±2以内のアミノ酸の置換が好ましい。より好ましいのは、ハイドロパシー指数または親水値が±1以内のアミノ酸の置換であり、±0.5以内のアミノ酸の置換が最も好ましい。
すでに大まかに説明したように、保存されたアミノ酸置換は、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似度(例えば疎水性、親水性、電荷、サイズなど)に基づいている。上記のさまざまな特性を考慮した具体的な置換は当業者には周知であり、例えばアルギニン/リシン;グルタミン酸/アスパラギン酸;セリン/トレオニン;グルタミン/アスパラギン;バリン/ロイシン/イソロイシンなどがある。
本発明によるCV−N変異体は、タンパク質の中に自然の状態では含まれていない一般的なアミノ酸を含むこともできる。そのようなアミノ酸としては、例えば、β−アラニン、他のオメガ−アミノ酸(4−アミノブチル酸など);α−アミノイソブチル酸(Aib)、サルコシン(Sar)、オルニチン(Orn)、シトルリン(Cit)、t−ブチルアラニン(t−BuA)、t−ブチルグリシン(t−BuG)、N−メチルイソロイシン(N−MeIle)、フェニルグリシン(Phg)、シクロヘキシルアラニン(Cha)、ノルロイシン(Nle)、システイン酸(Cya)、メチオニンスルホキシド(MSO)などがある。これらのアミノ酸も上記のスキームに従って以下のように分類することができる。Sarとβ−アラニンは、中性/非極性/小;t−BuA、t−BuG、N−MeIle、Nle、Chaは、中性/非極性/大/非芳香族;Ornは、塩基性/非環式;Cyaは、酸性;Cit、アセチルリシン、MSOは、中性/極性/大/非芳香族;Phgは、中性/非極性/大/芳香族となる。
さまざまなオメガ−アミノ酸は、サイズに従って中性/非極性/小(β−アラニン、4−アミノブチル酸)または大(他のすべて)に分類される。したがって、これらアミノ酸を用いた保存された置換を決定することができる。
本発明の1つの好ましい特徴によれば、生物学的機能の等価なポリペプチドまたはその断片は、約25個以下の保存されたアミノ酸置換を含んでいる。保存されたこのアミノ酸置換の数は、約15個以下であることがより好ましく、約10個以下であることが最も好ましい。さらに好ましい実施態様では、ポリペプチドが1〜10個、または1〜7個、または1〜5個の保存された置換を含んでいる。選択したいくつかの実施態様では、ポリペプチドが1、2、3、4、5個いずれかの保存されたアミノ酸置換を含んでいる。それぞれの場合において、置換は元のCV−Nの好ましいアミノ酸残基(以下に示す)において起こることが好ましい。
保存されない置換としては、付加および欠失と、保存された置換に関する上記の基準に合致しない置換がある。保存されない置換は、タンパク質の領域のうち、CV−Nがgp120や他の高マンノース・タンパク質と結合できるマンノース結合部位から三次元的に見て離れた領域に限定されていることが好ましい(後出の説明を参照のこと)。タンパク質に含まれる保存されないアミノ酸置換は15個以下であることが好ましい。保存されないアミノ酸置換の数は、10個以下であることがより好ましい。さらに好ましい実施態様では、ポリペプチドに含まれる保存されないアミノ酸置換が5個以下である。選択したいくつかの実施態様では、ポリペプチドに含まれる保存されないアミノ酸置換が0、1、2、3個いずれかである。
B.修飾するのに好ましい部位
一般に、修飾のための特定の部位を選択するとき、PEG化部位は、PEG分子の存在によるタンパク質の活性部位または結合部位への影響が最少になるように選択する。活性部位の外に位置する突然変異はタンパク質の主要な活性を一般には変化させないため、その突然変異の効果は一般に予測可能である。さらに、タンパク質上で溶媒がアクセスできる領域は、そのタンパク質分子の他の残基との相互作用が限られているか相互作用がない。したがってこのような位置の突然変異は、タンパク質内の他のどのアミノ酸の立体配座にも影響を与えないであろう。
この明細書の場合、CV−Nを修飾するには、CV−Nと標的ウイルス・タンパク質(例えばgp120)の結合を可能にするマンノース結合部位との相互作用が最少である残基が一般に好ましい。最近の研究によれば、そのような結合部位として、高親和性結合部位(例えば残基41〜44、50〜56、74〜78)と低親和性結合部位(例えば残基1〜7、22〜26、92〜95)があることが示唆されている。例えばC.A.Bewley他、J.Am.Chem.Soc.、第123巻、3892〜3902ページ、2001年5月2日号と、I.Botos他、J.Biol.Chem.、第277巻(37)、34336〜34342ページ、2002年9月13日号を参照のこと。(アミノ酸の位置とは、この明細書に配列ID番号1として示した元のシアノビリン−Nタンパク質でのアミノ酸残基の位置のことである。)
すでに指摘したように、部位特異的修飾にとって好ましい突然変異は、あるアミノ酸からシステイン残基への変換、あるいはシステイン残基の挿入である。天然のタンパク質中のシステイン残基は一般にジスルフィド結合に含まれているため、変異体システインだけが一般に修飾に利用できる。そのために選択性が高くなる。
別の方法では、タンパク質中のリシン残基の大部分をアルギニンに変換し、アミン反応ポリマー試薬を用いた置換に利用できるよう、1個だけリシン残基を残すかN末端を残すことが好ましい。この変換は、以下に説明するようにリシン/アルギニンが保存された置換であるため、一般にタンパク質の性質に最少の効果しか及ぼさない。しかし多数の置換が一般には含まれるため、上記のシステイン置換法のほうが一般には好ましい。
したがって一実施態様では、システイン残基が、上記の結合部位以外の領域に位置する残基と置換される(あるいはそのような領域に挿入される)。そのような残基としては、配列ID番号1のアミノ酸9〜21、29〜40、45〜49、57、59〜72、79〜91、96〜101がある;より好ましいのは、配列ID番号1のアミノ酸10〜20、31〜39、46〜48、60〜71、80〜90、97〜100である。
システインで置換するのが特に好ましいのはグルタミン残基、セリン残基、トレオニン残基である。グルタミンとセリンは、グリコシル化部位として知られているため、ポリマーを結合させる好ましい候補である。またセリンとトレオニンは、システインと(すでに説明した)同じクラスに属する。したがって、システインで置換するのが好ましい残基は、14と62(グルタミン残基;結合部位の隣ではあるが残基79も考えられる)、11、16、20、32、33、38、46、67、68、82(セリン残基)、19、31、61、83(トレオニン残基;結合部位の近くではあるが残基21、57、97も考えられる)である。
CV−Nの特に好ましい突然変異体としては、グルタミン62またはグルタミン14がシステインで置換されたCV−Nがある(Gln62CysまたはGln14Cys)。
すでに指摘したように、リシン残基をアルギニンで置換することも選択的結合のための有効な戦略になりうる。したがって一実施態様では、残基3、48、74、84、99のすべて、または1つを除くすべてが、アルギニンで置換される。(リシン残基のすべてが置換されると、反応はタンパク質のN末端に向かう。)この場合、置換は保存されていてポリマーの結合は伴わないため、結合部位内の置換(例えば残基3)が考えられる。
これらの好ましい置換部位は、この明細書の末尾にある配列表の配列ID番号2〜6に示してある。上記のいずれかの置換を含むタンパク質は、配列ID番号2で表わされる。(例えば配列ID番号2において、該当する置換が1つでも存在しているのであれば、アミノ酸3はリシン、アルギニンから選択し;アミノ酸9はチロシン、システインから選択し、アミノ酸10はアスパラギン、システインから選択し、などとなる。)上記のいずれかの位置(すなわち残基9〜21、29〜40、45〜49、57、59〜72、79〜91、96〜101のうちの任意の位置)にシステイン置換を含むタンパク質は配列ID番号3で表わされる。(例えば配列ID番号3において、該当する置換が1つでも存在しているのであれば、アミノ酸3はリシン;アミノ酸9はチロシン、システインから選択し;アミノ酸10はアスパラギン、システインから選択し、などとなる。)上記のより好ましい(すなわち残基10〜20、31〜39、46〜48、60〜71、80〜90、97〜100のうちの任意の位置(これらは複合配列中で太字になっている)の)システイン置換を含むタンパク質は配列ID番号4で表わされる。(例えば配列ID番号4において、該当する置換が1つでも存在しているのであれば、アミノ酸3はリシン;アミノ酸9はチロシン;アミノ酸10はアスパラギン、システインから選択し、などとなる。)上記の最も好ましい(すなわち残基11、14、16、19、20、31、32、33、38、46、61、62、67、68、82、83のうちの任意の位置(これらは複合配列中で太字かつイタリックになっている)の)システイン置換を含むタンパク質は配列ID番号5で表わされる。最後に、上記のいずれかのアルギニン置換を含むがシステイン置換は含まないタンパク質は配列ID番号6で表わされる。
本発明により、天然のシアノビリン−Nアミノ酸配列のC末端またはN末端に1個以上のアミノ酸残基(システインであることが好ましい)が付加されたシアノビリン−Nタンパク質変異体も提供される。
考慮できるさらに別の置換としては、位置24、26、27、76、77、78のうちの1つ以上におけるシステイン置換、あるいは位置30におけるアラニン、グルタミン、バリンのいずれかによる置換が挙げられる。
この明細書に記載したようにして修飾したシアノビリン−Nタンパク質変異体は、天然のシアノビリン−N(配列ID番号1)と少なくとも70%配列相同性有していることが好ましい。相同性は、80%、90%、95%、99%であることがより好ましい。非必須アミノ酸残基、あるいは関係のないアミノ酸残基の付加、置換、欠失があるシアノビリン−Nタンパク質変異体も考えられる。タンパク質構造中の修飾を設計して評価するコンピュータ化した方法が従来技術で知られている。例えばDahiyatとMayo、Science、第278巻、82〜87ページ、1997年を参照のこと。
本発明のシアノビリン−Nタンパク質変異体は、従来技術で知られている任意の方法で調製することができる。例えばランダム法(化学的突然変異誘発またはDNAシャッフリングによる)や、天然のシアノビリン−N配列に特異的突然変異誘発を起こして1個以上のアミノ酸置換を実現する方法がある。好ましい1つの方法は、クイックチェンジ突然変異誘発キット(ストラタジーン社、ラ・ジョラ、カリフォルニア州)を製造者のプロトコルにしたがって使用する方法である。
本発明のシアノビリン−Nタンパク質変異体は、融合タンパク質でもよい。本発明のシアノビリン−Nタンパク質変異体は、例えば融合タンパク質の検出が容易になるよう“タグ付き”エピトープを含むことができる。あるいは融合タンパク質は、調節機能、酵素機能、細胞シグナル伝達機能、細胞間輸送機能を提供することができる。
上記のシアノビリン−Nタンパク質変異体は、化学合成によって製造すること、あるいは適切な細菌宿主または真核生物宿主の中で発現させて得ることができるが、後者が好ましい。発現させるための適切な方法は、Sambrook他の下記文献、または他の同様の文献に記載されている。本発明の融合タンパク質またはペプチド分子は、組み換え手段によって産生させることが好ましい。
上記タンパク質の断片は、この明細書に記載したようにして水溶性ポリマーと接合させることもできる。そのような断片としては、上記のシアノビリン−Nタンパク質変異体の少なくとも約9個の連続したアミノ酸領域を含むポリペプチド分子が挙げられる。このポリペプチド分子は、上記のシアノビリン−Nタンパク質変異体の少なくとも約10個の連続したアミノ酸領域を含むことが好ましく、連続した20、25、35、50、75、80個のアミノ酸領域を含むことがさらに好ましい。ただしこのアミノ酸領域は、上記の挿入または置換のうちの少なくとも1つにまたがっている、あるいは上記の挿入または置換のうちの少なくとも1つを含んでいる。
III.核酸分子をコードしているシアノビリン−Nタンパク質変異体
本発明の別の特徴によれば、本発明のシアノビリン−Nタンパク質変異体をコードしている核酸分子、その相補体、これらにハイブリダイズする核酸分子も提供される。このような核酸分子は、例えば配列ID番号1の9〜21、29〜40、45〜49、57、59〜72、79〜91、96〜101の中から選択した位置に1〜4個のシステインが置換または挿入されている上記の好ましい変異体をコードしていることが好ましい。位置は、10〜20、31〜39、46〜48、60〜71、80〜90、97〜100の中から選択することがより好ましく、14と62(グルタミン残基)、11、16、20、32、33、38、46、67、68、82(セリン残基)、19、21、31、57、61、83(トレオニン残基)の中から選択することが最も好ましい。核酸分子は、配列ID番号1のリシン残基のすべて、または1つを除くすべてがアスパラギンに変換された変異体をコードしていてもよい。すでに指摘したように、このような変異体は、水溶性ポリマーを部位特異的に結合させて治療に有効なCV−N−ポリマー接合体を産生させるのに役立つ。
核酸配列は、上に説明した1つ以上の保存されたアミノ酸の変化、欠失、置換、付加があるために上記の好ましいどのタンパク質またはペプチドとも異なるタンパク質をコードすることもできる。タンパク質は、配列ID番号1と少なくとも70%の配列相同性を有していることが好ましい。より好ましいのは、配列ID番号1と約80%、90%、95%の配列相同性を有していることである。
アミノ酸の変化は、以下の表2に示すコドンに従って核酸配列のコドンを変化させることによって実現できる。アミノ酸の変化は、タンパク質またはペプチドをコードしている核酸配列を突然変異させることによっても実現できる。核酸配列に対する突然変異は、特異的に、あるいはランダムに導入することができるが、どちらの方法も分子生物学の当業者にはよく知られている。突然変異には、欠失、挿入、切断、置換、融合、モチーフ配列のシャッフリングなどがある。多数の位置指定突然変異誘発技術が存在している。一般にはオリゴヌクレオチドを用いて構造核酸配列内の特定の位置に突然変異を導入する。具体的な方法としては、一本鎖レスキュー、単一部位除去、ニック保護、PCRなどがある。ランダムな突然変異または非特異的な突然変異は、化学物質(例えばニトロソグアニジンや2−アミノプリン)によって(全体的な概説としては、SingerとKusmierek、Ann.Rev.Biochem.、第52巻、655〜693ページ、1982年を参照のこと);または生物学的な方法(例えば突然変異株の継代培養)によって(Greener他、Mol.Biotechnol.、第7巻、189〜195ページ、1997年)発生させることができる。
このような保存されたアミノ酸置換をコードすることのできるコドンは従来技術において公知になっていることを理解されたい。遺伝コードは縮重しているため、特定のアミノ酸をコードするのにさまざまなヌクレオチド・コドンを利用することができる。宿主細胞は好みのコドン利用パターンを示すことがしばしばある。核酸配列は、個々の宿主細胞のコドン利用パターンを利用して構成することが好ましい。このようにすると、形質転換された宿主細胞内の核酸配列の発現が一般に増大する。上記の核酸配列を含む宿主細胞または宿主生物の核酸配列を変化させ、その宿主細胞または宿主生物の好みのコドン利用法が反映されるようにできる。植物においてコドンを最もうまく利用するための核酸配列の変更は、アメリカ合衆国特許第5,689,052号に記載されている。核酸配列をさらに変化させることにより、遺伝子操作する元のタンパク質と比較したときに特性が同じか優れたタンパク質をコードすることができる。
アミノ酸のコード化またはアミノ酸の変化は、表2に示したコドンに従う核酸配列のコドンを用いて実現することができる。
例えばBoyd他、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、第41巻(7)、1521〜1530ページ、1997年7月に記載されているように、大腸菌が好んで用いるコドン表を利用して元のCV−Nのアミノ酸配列をDNA配列に逆翻訳し、以下の5’から3’へのコード配列を得る(配列ID番号9)(Genbank登録番号L48551):
本発明によれば、位置指定突然変異誘発は、望む修飾を含むPCRプライマーを用いて実現することができる。例えば実施例2と3に示すように、位置62のグルタミンがシステインで置換された(Gln62Cys)CV−N変異体をコードする配列を生み出す突然変異誘発は、クイックチェンジ突然変異誘発キットを製造者のプロトコルにしたがって使用することによって実現される。反応に用いるPCRプライマーは、以下の配列を有する。変化したシステイン・コドンは強調して示してある。
同様に、位置14のグルタミンがシステインで置換された(Gln14Cys)CV−N変異体をコードする配列は、以下のプライマーを用いて生成させた。変化したシステイン・コドンは強調して示してある。
したがってこれら変異体をコードしていて大腸菌の中での発現が最適化されたポリヌクレオチドには、以下の配列(配列ID番号12と13)がそれぞれ含まれる。
本発明によるどの核酸も追加の核酸配列とリンクさせて融合タンパク質をコードしているようにすることができる。追加の核酸配列は、少なくとも1つのアミノ酸、ペプチド、タンパク質をコードしていることが好ましい。可能な融合の組み合わせは多数存在する。例えばコードされた融合タンパク質は、融合タンパク質の検出が容易になるよう“タグ付き”エピトープ(例えばGST、GFP、FLAG、ポリHIS)を含むことができる。このような核酸分子融合体は、1〜約50個のアミノ酸をコードしていることが好ましい。より好ましいのは約5〜約30個の追加アミノ酸をコードしていることであり、さらに好ましいのは約5〜約20個のアミノ酸をコードしていることである。
融合によって調節機能、酵素機能、細胞シグナル伝達機能、細胞間輸送機能を提供することもできる。例えば色素体トランジット・ペプチドをコードしている配列を付加して融合タンパク質を種子内の葉緑体に向かわせることができる。このような融合パートナーは、約1〜約1000個の追加アミノ酸をコードしていることが好ましい。より好ましいのは約5〜約500個の追加アミノ酸をコードしていることであり、さらに好ましいのは約10〜約250個のアミノ酸をコードしていることである。
別の一実施態様では、核酸分子は、本発明の修飾されたシアノビリン−Nタンパク質をコードしている核酸配列、その相補体、これらの任意の断片と85%を超える割合で核酸配列同一性を有する。同一性の割合は、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%を超えることが好ましい。
%同一性は、配列分析ソフトウエア・パッケージ(登録商標)(バージョン10;ジェネティックス・コンピュータ・グループ社、ウィスコンシン大学バイオテクノロジー・センター、マディソン、ウィスコンシン州)の“BestFit”プログラムまたは“Gap”プログラムを用いて決定することが好ましい。“Gap”では、NeedlemanとWunschのアルゴリズムを利用し、一致する数が最大でギャップの数が最少になる2つの配列のアラインメントを見いだす。“BestFit”は、2つの配列間で類似性が最大の区画の最適なアラインメントを実現した後、SmithとWatermanの局所的相同性アルゴリズムを用いてギャップを挿入することにより一致の数を最大化する。%同一性の計算は、LASERGENEバイオインフォーマティックス計算パッケージ(デフォルト・パラメータ、DNAスター社、マディソン、ウィスコンシン州)のメガライン・プログラムを用いて実行することもできる。%同一性は、“BestFit”プログラムにおいてデフォルト・パラメータを用いることによって決定することが最も好ましい。
本発明により、上記の核酸分子およびその相補体とハイブリダイズする核酸分子の断片が提供されるほか、上記の核酸分子、その相補体、これら分子の断片と80%、85%、90%、95%、99%を超える割合で配列同一性を有する核酸分子の断片も提供される。
核酸ハイブリダイゼーションは、当業者にはよく知られたDNA操作技術である。所定の核酸ペアのハイブリダイゼーション特性は、そのペアが似ているか一致しているかを示す。核酸分子は、厳しさが弱い条件、中程度の条件、強い条件のいずれかで、本発明のシアノビリン−Nタンパク質変異体をコードする核酸配列またはそのような核酸配列の相補体とハイブリダイズすることが好ましい。このような配列の断片も考慮の対象となる。
ハイブリダイゼーション条件としては、一般に、約0.1〜約10×SSC(蒸留水の中に3Mの塩化ナトリウムと0.3Mのクエン酸ナトリウムを含むpH7.0の20×SSC貯蔵溶液から希釈したもの)と、約2.5〜約5×デンハルト溶液(蒸留水の中に1%(w/v)ウシ血清アルブミン、1%(w/v)フィコール(登録商標)、1%(w/v)ポリビニルピロリドンを含む50×貯蔵溶液から希釈したもの)と、約10mg/ml〜約100mg/mlの魚の精子DNAと、約0.02%(w/v)〜約0.1%(w/v)のSDSの中で約20℃〜約70℃にて数時間〜一晩にわたって培養するという核酸ハイブリダイゼーションが挙げられる。厳しい条件は、6×SSC、5×デンハルト溶液、100mg/mlの魚の精子DNA、0.1%(w/v)のSDSの中で55℃にて数時間という条件によることが好ましい。
ハイブリダイゼーションの後には、一般にいくつかの洗浄ステップが続く。洗浄組成物は、一般に0.1〜約10×SSCと0.01%(w/v)〜約0.5%(w/v)のSDSを約20℃〜約70℃にて15分間培養したものを含んでいる。核酸区画は、少なくとも1回0.1×SSCの中で65℃にて洗浄した後もハイブリダイズしたままであることが好ましい。例えば洗浄ステップにおける塩の濃度は、低ストリンジェンシー条件である50℃で約2.0×SSCという濃度から高ストリンジェンシー条件である65℃で約0.2×SSCという濃度までの中から選択することができる。さらに、洗浄ステップの温度は、低ストリンジェンシー条件での室温(約22℃)から高ストリンジェンシー条件での約65℃まで上昇させることができる。温度と塩の濃度の両方を変えること、あるいはその一方を一定にして他方を変えることができる。
低ストリンジェンシー条件を利用し、標的核酸配列との配列同一性の低い核酸配列を選択することができる。約6.0×SSC〜約10×SSCで温度範囲が約20℃〜約55℃という条件を用いることができる。核酸プローブは、約6.0×SSC、約45℃という低ストリンジェンシー条件で上記の核酸配列の1つ以上とハイブリダイズすることが好ましい。好ましい一実施態様では、核酸プローブは、中ストリンジェンシー条件(例えば約2.0×SSC、約65℃)で上記核酸配列の1つ以上とハイブリダイズする。特に好ましい一実施態様では、核酸プローブは、高ストリンジェンシー条件(例えば約0.2×SSC、約65℃)で上記核酸配列の1つ以上とハイブリダイズする。
核酸分子の断片は、本発明による核酸分子のかなりの部分で、それどころか実際には大部分で構成することができる。一実施態様では、断片は、本発明による核酸分子の連続した約300〜約30個のヌクレオチド、連続した約280〜約50個のヌクレオチド、連続した約250〜約60個のヌクレオチド、連続した約200〜約80個のヌクレオチド、連続した約150〜約50個のヌクレオチド、連続した約100〜約25個のヌクレオチド、連続した約50〜約10個のヌクレオチドのいずれかである。別の一実施態様では、本発明の核酸配列の連続した少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250個のヌクレオチドを含んでいる。
IV.組み換えベクターと構造体
本発明には、本発明の核酸分子を含有する組み換えベクターまたは構造体、あるいは本発明のシアノビリン−Nタンパク質変異体をコードする組み換えベクターまたは構造体も含まれる。本発明の組み換えベクターと構造体は、外来性および/または異種の遺伝材料を宿主細胞に移入するのに用いることができる。このベクターは線状プラスミドでも閉じた環状プラスミドでもよい。このベクター系は、単一のベクターまたはプラスミド、あるいは2つ以上のベクターまたはプラスミドにすることが可能である。後者の場合、そのベクターまたはプラスミドを合わせたものの中に、宿主のゲノムに導入する全DNAが含まれる。組み換えベクターの調製法は、従来技術において周知である。
A.ベクター
構造体またはベクターは、プロモータを含むことができる。例えば組み換えベクターは、一般に5’から3’の方向に、興味の対象である核酸配列の転写を指示するプロモータと、注目の核酸配列を含んでいる。適切なプロモータとしては、この明細書に記載したものが挙げられる。組み換えベクターはさらに、必要に応じ、3’転写ターミネータ、3’ポリアデニル化シグナル、他の非翻訳核酸配列、トランジット核酸配列、標的核酸配列、選択マーカー、エンハンサー、オペレータを含んでいる。
ベクターとしては、自律的に複製するベクターが可能である。すなわち、染色体外構造体として存在するベクターで、その複製が染色体の複製とは独立であるもの(例えばプラスミド)や、染色体外エレメント、ミニ染色体、人工染色体などがある。ベクターは、自己複製を保証する任意の手段を含むことができる。ベクターは、自律的な複製を行なうため、そのベクターが問題の宿主細胞内で自律的に複製を行なうことを可能にする複製起点をさらに含むことができる。あるいはベクターは、細胞に導入されたときにゲノムと一体化し、そのベクターが組み込まれた染色体とともに複製されるようなものも可能である。この一体化は、相同的組み換えまたは非相同的組み換えの結果であってもよい。
ベクターまたは核酸を相同的組み換えによってゲノムと一体化することは、宿主とは関係がなく、ベクターの核酸配列に依存する。一般にベクターは、相同的組み換えによる宿主ゲノムとの一体化を指示する核酸配列を含んでいる。このような核酸配列により、ベクターを宿主細胞のゲノムの1本以上の染色体の正確な位置に組み込むことが可能になる。正確な位置への組み込み確率を大きくするため、ベクターは2つの核酸配列を含んでいて、それぞれの核酸配列が、対応する宿主細胞の標的配列とかなりの程度相同な十分な数の核酸を有することが好ましい。その数は、約400bp〜約1500bpであることが好ましく、約800bp〜約1000bpであることがさらに好ましい。これら核酸配列は、宿主細胞の標的配列と相同な任意の配列でよく、さらに、タンパク質をコードしていてもいなくてもよい。
哺乳動物の細胞での複製に適したベクターとしては、ウイルス・レプリコン、またはCV−N変異体ポリペプチドをコードする適切な配列を宿主のゲノムに確実に組み込む配列が可能である。例えば外来DNAを発現させるのに用いる別のベクターは、ワクシニア・ウイルスである。このような異種DNAは、一般に、ウイルスにとって不可欠ではない遺伝子(例えばチミジンキナーゼ遺伝子(tk)。これは選択マーカーにもなる)の中に挿入される。次にCV−N変異体ポリペプチドの発現が、生きた組み換えワクシニア・ウイルスに感染した細胞または動物の中で起こる。
一般に、宿主細胞と適合性のある種に由来するレプリコンと調節配列を含むプラスミド・ベクターが、細菌宿主と組み合わせて使用される。このベクターは、通常は、複製部位と、形質転換された細胞内で表現型の選択を可能にするマーキング配列とを含んでいる。例えば大腸菌は、一般にpBR322を用いて形質転換される。このpBR322はアンピシリンとテトラサイクリンに抵抗する遺伝子を含んでいるため、形質転換された細胞を容易に同定する手段となる。pBR322プラスミド、または他の微生物のプラスミドまたはファージも、一般に、選択マーカー遺伝子を発現させる微生物が利用できるプロモータを含んでいる、あるいは含むように修飾されている。
B.プロモータ
本発明の文脈で使用するプロモータは、ベクターを挿入する細胞のタイプに基づいて選択する。細菌、酵母、哺乳動物の細胞、植物で機能するプロモータは、すべて従来技術で知られている。プロモータは、調節特性(例えば転写活性の増大、誘導性、組織特異性、発生段階の特異性)に基づいて選択することもできる。使用可能なさらに別のプロモータは、例えばアメリカ合衆国特許第5,378,619号、第5,391,725号、第5,428,147号、第5,447,858号、第5,608,144号、第5,614,399号、第5,633,441号、第5,633,435号、第4,633,436号に記載されている。
例えば哺乳動物に適したプロモータが従来技術で知られており、その中にはウイルス・プロモータ(例えばサルウイルス40(SV40)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、アデノウイルス(ADV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ウシ・パピローマ・ウイルス(BPV))と、哺乳動物の細胞に由来するプロモータが含まれる。好ましい他のプロモータとしては、造血幹細胞に特異的なプロモータがある。具体的には、CD34、グルコース−6−ホスホターゼ、インターロイキン−1α、CD11cインテグリン遺伝子、GM−CSF、インターロイキン−5Rα、インターロイキン−2、c−fos、h−ras、DMD遺伝子プロモータである。
細菌宿主で使用するのに適した誘導プロモータとしては、β−ラクタマーゼとラクトースからなるプロモータ系、アラビノース・プロモータ系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモータ系、ハイブリッド・プロモータ(例えばtacプロモータ)などがある。しかし公知の他の細菌系誘導プロモータも適している。細菌系で使用するプロモータも、一般に、興味の対象であるポリペプチドをコードしているDNAと機能的にリンクしたシャイン−ダルガルノ配列を含んでいる。
藻類宿主に適したプロモータの具体例は、光合成生物から得られる集光性タンパク質・プロモータ、クロレラ・ウイルス・メチルトランスフェラーゼ・プロモータ、CaMV 35 Sプロモータ、バクテリオファージλからのPLプロモータ、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのTiプラスミドからのノパリンシンターゼ、細菌のtrpプロモータである。
昆虫細胞または昆虫で使用するベクターでは、バキュロウイルス転写プロモータを用いることができる。そのプロモータには、例えば、オートグラファ・カリフォルニカMNPV、ボンビクス・モリNPV、トリコプルシア・ニMNPV、ラキプルシア・ウMNPV、ガレリア・メロネラMNPVなどのウイルスDNAが含まれる。このバキュロウイルス転写プロモータは、バキュロウイルス前初期遺伝子IEIプロモータまたはIENプロモータ;39KとHindIII−kフラグメント後初期遺伝子からなるグループの中から選択したバキュロウイルス後初期遺伝子プロモータ領域と組み合わせた前初期遺伝子;バキュロウイルス後期遺伝子プロモータのいずれかである。
C.組み換えベクター内の他の要素
望む調節特性(例えば転写の開始、停止シグナル)が生まれるよう、さまざまなシス作用非翻訳5’調節配列とシス作用非翻訳3’調節配列を組み換え核酸ベクターの中に含めることができる。調節配列は、興味の対象であるシアノビリン−Nタンパク質変異体をコードしているDNA配列、あるいは異なる遺伝子供給源に由来する便利な転写停止領域によって与えられる。
転写エンハンサーは、組み換えベクターの一部(例えば核酸配列の発現を増大させるのに役立つ1つ以上の5’非翻訳リーダー配列)として組み込むこともできる。このようなエンハンサー配列は、得られるmRNAの翻訳効率を増大させる、あるいは変化させる上で望ましい可能性がある。好ましい5’核酸配列としては、dSSU 5’、PetHSP70 5’、GmHSP17.9 5’がある。このような配列は、遺伝子を発現するように選択したプロモータに由来するものが可能である。あるいはこのような配列を特別に変化させてmRNAの翻訳を増大させることもできる。このような領域は、ウイルスRNAから、適切な真核生物のゲノムから、合成遺伝子配列からも得ることができる。導入遺伝子の発現最適化の概要に関しては、Koziel他、Plant Mol.Biol.、第32巻、393〜405ページ、1996年を参照のこと。
組み換えベクターは、トランジット・ペプチドをコードしている核酸配列をさらに含むことができる。このペプチドは、あるタンパク質を細胞外空間に向けるのに、あるいは細胞の内部または外部にある他の区画に向けるのに役立つ。(例えばヨーロッパ特許第0218571号、アメリカ合衆国特許第4,940,835号、第5,610,041号、第5,618,988号、第6,107,060号を参照のこと。)
組み換えベクター内の核酸配列はイントロンを含むことができる。イントロンは、構造核酸配列とは異種のものが可能である。
本発明の核酸分子は、適切なリーダー配列と機能的にリンクさせることも可能である。リーダー配列は、宿主による翻訳にとって重要なmRNAの非翻訳領域である。リーダー配列は、タンパク質またはその断片をコードしている核酸配列の5’末端と機能的にリンクしている。ポリアデニル化配列も本発明による核酸配列の3’末端と機能的にリンクしていてよい。ポリアデニル化配列は、転写されたときに宿主によって認識されて転写されたmRNAにポリアデノシン残基を付加する配列である。
本発明の核酸分子は、プロペプチドをコードしている領域にもリンクしていてよい。プロペプチドは、プロタンパク質またはプロ酵素のアミノ末端に見られるアミノ酸配列である。プロタンパク質からプロペプチドを開裂させると成熟した生化学的に活性なタンパク質になる。プロポリペプチドは一般に不活性であるが、プロポリペプチドまたはプロ酵素から触媒または自己触媒によりプロペプチドを開裂させて成熟した活性なポリペプチドに変換することができる。
組み換えベクターは、タンパク質またはペプチドの発現に有利な1つ以上の因子をコードしている1つ以上の配列をさらに含むことができる。そのような因子としては、例えば、アクチベータ(例えばトランス作用因子)、シャペロン、プロセシング・プロテアーゼなどがある。アクチベータは、ポリペプチドをコードしている核酸配列の転写を活性化するタンパク質である。シャペロンは、別のタンパク質が適切に折り畳まれるのを助けるタンパク質である。プロセシング・プロテアーゼは、プロペプチドを開裂させて生化学的に活性な成熟ポリペプチドを生成させるプロテアーゼである。これら因子の1つ以上をコードしている核酸は、タンパク質またはその断片をコードしている核酸と機能的にリンクしていないことが好ましい。
V.トランスジェニック生物
本発明による1つ以上の核酸分子または組み換えベクターを用いて宿主細胞または宿主生物を形質転換することができる。本発明は、5’から3’の方向に、本発明の異種核酸分子、すなわち本発明のシアノビリン−Nタンパク質変異体をコードしている異種核酸分子と機能的にリンクしているプロモータを含む形質転換された宿主細胞にも関する。追加の核酸配列(例えば3’転写ターミネータ、3’ポリアデニル化シグナル、他の非翻訳核酸配列、トランジット核酸配列、標的核酸配列、選択マーカー、エンハンサー、オペレータ)を宿主細胞に導入することができる。組み換えベクター、構造核酸配列、プロモータ、他の調節エレメントを含む本発明の好ましい核酸配列は、すでに説明した。
本発明の別の一実施態様は、形質転換されたこのような宿主細胞を得るため、適切な宿主細胞を選択するステップと、その宿主細胞を組み換えベクターを用いて形質転換するステップと、その形質転換された宿主細胞を得るステップを一般に含む方法に関する。
形質転換された宿主細胞としては、一般に、本発明に適合する任意の細胞が可能である。形質転換された宿主細胞は、植物そのものまたは植物に由来するものや、哺乳動物の細胞、哺乳動物、魚類の細胞、魚類、鳥類の細胞、鳥類、藻類の細胞、藻類、菌類の細胞、菌類、細菌の細胞に由来するものが可能である。好ましい宿主および形質転換体としては、菌類の細胞(例えばアスペルギルス)、酵母、哺乳動物(特にウシとブタ)、昆虫、細菌、藻類が挙げられる。このような細胞または生物を形質転換する方法は従来技術において公知になっている。例えばヨーロッパ特許第238023号;AbelsonとSimon(編)『酵母の遺伝学と分子生物学入門』、Methods Enzymol.、第194巻(アカデミック出版社、ニューヨーク)の中のBeckerとGuarenteによる182〜187ページ;BennettとLaSure(編)『続・菌類における遺伝子操作』(アカデミック出版社、カリフォルニア州、1991年);Hinnen他、PNAS、第75巻、1920ページ、1978年;Ito他、J.Bacteriology、第153巻、163ページ、1983年;Malardier他、Gene、第78巻、147〜156ページ、1989年;Yelton他、PNAS、第81巻、1470〜1474ページ、1984年を参照のこと。
発現用の宿主として利用できる哺乳動物の細胞系は従来技術において公知であり、アメリカ基準培養物コレクション(ATCC、マナサス、ヴァージニア州)から入手できる不死化した多数の細胞系がある。例えば、ヒーラ細胞、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビー・ハムスターの腎臓(BHK)細胞や、他の多くの細胞系がある。
菌類宿主細胞としては、例えば酵母の細胞、菌類、糸状菌の細胞が可能である。一実施態様では、菌類宿主細胞は酵母の細胞であり、好ましい一実施態様では、その酵母宿主細胞は、カンジダ・クルイベロミセス、サッカロミセス、シゾサッカロミセス、ピキア、ヤロウィアといった属の細胞である。別の一実施態様では、菌類宿主細胞は糸状菌の細胞であり、好ましい一実施態様では、その糸状菌の細胞は、アクレモニウム、アスペルギルス、フサリウム、フミコラ、ミセリオフトラ、ムコール、ニューロスポラ、ペニシリウム、チエラビア、トリポクラジウム、トリコデルマといった属の細胞である。
適切な宿主細菌としては古細菌と真正細菌があるが、特に真正細菌が好ましく、エンテロバクテリアセ(腸内細菌)が最も好ましい。有用な細菌の具体例としては、大腸菌、エンテロバクター、アゾトバクター、エルウィニア、バチルス、シュードモナス、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、セラチア、シゲラ、リゾビア、ビトレオスキラ、パラコッカスなどがある。適切な大腸菌宿主としては、大腸菌W3110(ATCC27325)、大腸菌294(ATCC31446)、大腸菌Bと大腸菌X1776(ATCC31537)(アメリカ基準培養物コレクション、マナサス、ヴァージニア州)などが挙げられる。上記細菌のうちの任意のものの突然変異細胞も使用することができる。これら宿主は、細菌発現ベクターとともに用いることができる。細菌発現ベクターとしては、大腸菌のクローニング・発現ベクターであるブルースクリプト(登録商標)(ストラタジーン社、ラ・ジョラ、カリフォルニア州);pINベクター(Van HeekeとSchuster、1989年)、pGEXベクター(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)などがある。これらは、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)を用いて外来ポリペプチドを融合タンパク質として発現させるのに用いることができる。
好ましい昆虫宿主細胞は、鱗翅目の昆虫(例えばスポドプテラ・フルギペルダまたはトリコプルシア・ニ)に由来する。好ましいスポドプテラ・フルギペルダ細胞系は、細胞系Sf9(ATCC CRL 1711)である。他の昆虫細胞系(例えばボンビクス・モリというカイコ)も用いることができる。これらの宿主細胞は、バキュロウイルス発現ベクター(BEV)とともに用いることが好ましい。バキュロウイルスは組み換え昆虫ウイルスであり、バキュロウイルス・プロモータの後に、選択した外来遺伝子のコード配列がこのウイルスの遺伝子(例えばポリヘドリン)の代わりに挿入されている(アメリカ合衆国特許第4,745,051号)。
核酸を細胞に導入する方法は当業者には周知である。一般的な方法としては、化学的方法、微量注入、電気穿孔(アメリカ合衆国特許第5,384,253号)、粒子加速、ウイルス・ベクター、受容体を媒介としたメカニズムなどがある。菌類細胞は、プロトプラスト形成、プロトプラストの形質転換、細胞壁の再生などの方法で形質転換することができる。哺乳動物の細胞を形質転換するさまざまな方法もよく知られている。
藻類の細胞はさまざまな方法で形質転換することができる。例えば、マイクロプロジェクタイルの打ち込み、プロトプラスト誘導、電気穿孔、微量注入、ガラス・ビーズの存在下での激しい撹拌などの方法がある。緑藻宿主細胞を形質転換する適切な方法は、ヨーロッパ特許第108580号に記載されている。珪藻フェオダクチラム・トリコルナタム属の細胞を形質転換する適切な方法は、WO 97/39106に記載されている。葉緑体Cを含有する藍藻は、アメリカ合衆国特許第5,661,017号に記載されている方法を利用して形質転換することができる。
核酸を植物に導入する方法もよく知られている。適切な方法としては、細菌感染(例えばアグロバクテリウム)、細菌人工染色体バイナリー・ベクター、核酸の直接送達(例えばPEGを媒介とした形質転換)、乾燥/抑制を媒介とした核酸の取り込み、電気穿孔、シリコンカーバイド繊維を用いた撹拌、核酸でコーティングした粒子の加速などがある(Potrykus他、Am.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.、第42巻、205ページ、1991年に概説がある)。例えば電気穿孔がトウモロコシのプロトプラストの形質転換に用いられてきた。
本発明のシアノビリン−Nタンパク質変異体をコードしている核酸を移入すると、形質転換された細胞またはトランスジェニック生物の内部でそのタンパク質が発現または過剰発現する可能性がある。このような発現または過剰発現は、外来性遺伝子材料が一時的に、または安定に移された結果である可能性がある。
発現したタンパク質は、特定のタンパク質またはその断片に対して特異的な従来技術で公知の方法を利用して検出することができる。検出法としては、特異的抗体の利用、酵素産物の形成、酵素基質の消失などがある。例えばタンパク質が酵素活性を有する場合には、酵素アッセイを利用することができる。また、そのタンパク質に対して特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が利用できる場合には、そのタンパク質に対する抗体を用いたイムノアッセイを利用することができる。酵素アッセイやイムノアッセイの実施法は当業者には周知である。
得られるタンパク質は従来技術で公知の方法を利用して回収できる。例えばタンパク質は、遠心分離、濾過、抽出、スプレー乾燥、蒸発、沈殿などの方法によって栄養培地から回収することができる。次に、回収したタンパク質をさまざまなクロマトグラフィ法(例えばイオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、アフィニティ・クロマトグラフィなど)によってさらに精製するとよい。必要に応じて疎水性RP−HPLC媒体(例えばシリカゲル)を用いた逆相高性能液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)によってタンパク質をさらに精製する。さまざまな方法や手段を組み合わせて実質的に精製された組み換えポリペプチドまたはタンパク質を得ることもできる。
VI.タンパク質−ポリマー接合体
本発明によれば、上記のシアノビリン−Nタンパク質変異体が少なくとも1つの水溶性ポリマーに結合したタンパク質−ポリマー接合体が提供される。この変異体では、配列ID番号1の9〜21、29〜40、45〜49、57、59〜72、79〜91、96〜101の中から選択した位置に1〜4個のシステインが置換または挿入されていることが好ましい。位置は、10〜20、31〜39、46〜48、60〜71、80〜90、97〜100の中から選択することがより好ましく、14と62(グルタミン残基)、11、16、20、32、33、38、46、67、68、82(セリン残基)、19、21、31、57、61、83(トレオニン残基)の中から選択することが最も好ましい。選択したいくつかの実施態様では、変異体はこのような置換を1個または2個含んでいる。核酸分子は、配列ID番号1のリシン残基のすべて、または1つを除くすべてがアスパラギンに変換された変異体をコードしていてもよい。すでに指摘したように、このような変異体は、水溶性ポリマーを部位特異的に結合させて治療に有効なCV−N−ポリマー接合体を産生させるのに役立つ。
接合体は、配列ID番号1の配列の一部に対応する断片または、配列ID番号1の配列の一部と少なくとも70%が相同な断片を水溶性ポリマーに結合させた状態で含むことができる。なおこの断片は、すでに説明したように、ポリマーが結合するための修飾された少なくとも1つの部位を含んでいる。断片は、測定可能な程度のシアノビリン抗ウイルス活性を保持している断片である(天然のシアノビリン−Nの生物活性の少なくとも約15%〜約100%またはそれ以上)。断片は、少なくとも9個のアミノ酸を含んでいることが好ましい。より好ましいのは少なくとも20個のアミノ酸を含んでいることであり、最も好ましいのは少なくとも40個のアミノ酸を含んでいることである。一実施態様では、断片は、配列ID番号1の残基40〜80に対応する配列を含んでおり、その中にはこの明細書に記載した好ましいアミノ酸置換またはアミノ酸挿入が1箇所以上組み込まれている。
タンパク質変異体に結合させる適切な水溶性ポリマーの具体例としては、ポリ(アルキレングリコール)(例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(“PPG”)、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマーなど)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、多糖、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、これらのコポリマー、ターポリマー、混合物などがある。
好ましい一実施態様では、シアノビリン−Nタンパク質変異体をポリ(アルキレンオキシド)ポリマー(例えばPEG)に結合させる。PEGは、すでに説明したように、置換または付加を通じて付け加えられたシステイン残基と結合していることが好ましい。
本発明のタンパク質−ポリマー接合体は、少なくとも測定できる程度の特異的活性を維持していることが好ましい。すなわち本発明のタンパク質−ポリマー接合体は、天然のシアノビリン−Nの特異的活性の約15%〜約100%またはそれ以上になっている。本発明の好ましい一実施態様では、本発明のタンパク質−ポリマー接合体の生物活性は、修飾されていない天然のシアノビリン−Nの生物活性の少なくとも20%以上になる。接合体の生物活性は、天然のシアノビリン−Nの生物活性の少なくとも約30%になることが好ましい。この値は、少なくとも約40%であることがより好ましく、少なくとも約50%であることがさらに好ましく、少なくとも約60%以上であることがそれ以上に好ましい。
生物活性は、一般に、結合するタンパク質の分子量が大きくなるほど低下する。以下に説明するように、生物活性と向上した薬物動態の組み合わせは、高分子量ポリマー成分と生体内で開裂可能な結合とを有するタンパク質−ポリマー接合体を調製することによって実現できる。この場合、開裂していない接合体の生物活性レベルは低い可能性がある。そのような結合としては、例えばエステル、カルバミン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、リン酸エステル、ヒドラゾン、アセタール、ケタール、オルトエステルなどの結合がある。この場合、すでに説明したようにアミノ酸置換が保存された置換になっているとポリマーの開裂によって活性部位または構造的にそれと似た部位が再現されるため、タンパク質の活性部位または結合部位またはその近傍における置換が実現できる。結合するアミノ酸を元の形態で再現する開裂メカニズム、または変化が最少の形態で再現する開裂メカニズムを利用することが好ましい。例えばアメリカ合衆国特許第6,413,507号を参照のこと。
本発明による抗ウイルス接合体の生物活性は、例えば実施例5と6に記載した抗ウイルス・アッセイやRIA(ラジオイムノアッセイ)を利用して明らかにすることができる。本発明による変異体または接合体の抗HIV活性を調べるのに適したアッセイは以下の文献に記載されている:Boyd, M.「エイズ治療用の新しい薬を同定するための戦略:臨床評価のための新薬候補の発見と臨床前開発を容易にする国家計画」、『エイズの病因学、診断、治療、予防』、第2版、De Vita他編、J.B.リピンコット社、1988年、305〜317ページ;Weislow他、J.Natl.Cancer Inst.、第81巻、577〜586ページ、1989年。
A.水溶性ポリマー
A1.骨格の組成
ペプチドではない水溶性のさまざまな一官能性、二官能性、多官能性ポリマーのうちの任意のものを用いて本発明のCV−N変異体接合体を形成することができる。そのようなポリマーとしては、例えば、アルキレングリコール、オレフィンアルコール、ビニルピロリドン、ヒドロキシアルキルメタクリルアミド、ヒドロキシアルキルメタクリレート、糖類、α−ヒドロキシ酸、ホスファゼン、オキサゾリン、N−アクリロイルモルホリンの中から選択した1つ以上のモノマーのホモポリマーまたはコポリマーが挙げられる。
好ましい一実施態様では、ポリマーはポリ(アルキレンオキシド)ポリマーである。ポリ(アルキレンオキシド)をベースとしていて1〜約300個の末端部を有する水溶性ポリマー骨格が本発明では特に役に立つ。適切なポリマーの具体例としては、他のポリ(アルキレングリコール)(例えばポリ(プロピレングリコール)(“PPG”))、そのコポリマー(例えばエチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマー)、そのターポリマー、その混合物などが挙げられる。ポリマー骨格のそれぞれの鎖の分子量は異なる可能性があるとはいえ、一般には約800Da〜約100,000Daであり、約6,000Da〜約80,000Daであることがしばしばある。
本発明で有用な好ましいポリ(アルキレンオキシド)骨格はポリエチレングリコール(すなわちPEG)である。しかし他の関連ポリマーも本発明を実施するのに適しているため、PEGまたはポリ(エチレングリコール)という用語を使用する際には、それだけでなく関連ポリマーも含まれるものと理解すべきである。PEGという用語には、あらゆる形態のポリ(エチレングリコール)(例えば、線状PEG、アームを多数有するPEG、フォーク状PEG、分岐式PEG、ペンダント状PEG(すなわちポリマー骨格に1個以上の官能基がぶら下がっているPEGまたは関連ポリマー)や、分解可能な結合を内部に含むPEGが含まれる。これについてはあとで詳しく説明する。
一般式−CHCHO−(CHCHO)−CHCH−(ただしnは約3〜約4000であり、一般には約20〜約2000である)を有するPEGは、本発明を実施するためのポリマーの一例である。一般に、本発明の接合体を形成するのに用いるPEGポリマーは、分子量が約350Da〜約200,000Daである。一般に、本発明によるポリマー接合体のポリマー部分の数平均分子量は約100ダルトン(Da)〜約100,000Daであるが、約500ダルトン〜約100,000ダルトンであることが好ましい。さらに好ましいのは、本発明で使用するPEGの分子量が約350ダルトン〜約40,000ダルトンになっていることである。シアノビリン変異体に共有結合させる代表的なPEG部は、以下に示すいずれかの平均分子量を持つことができる:750ダルトン、1000ダルトン、5000ダルトン、7500ダルトン、10,000ダルトン、15,000ダルトン、20,000ダルトン、25,000ダルトン、30,000ダルトン、35,000ダルトン、40,000ダルトン。
本発明で使用するのが特に好ましい1つのポリマーは、末端にキャップを有するポリマーである。これは、少なくとも1つの末端部に比較的不活性な基(例えば低級C1〜C6アルコキシ基)がかぶさっているポリマーを意味する。PEGの特に好ましい1つの形態は、メトキシ−PEG(一般にmPEGと表記される)である。これは、ポリマーの1つの末端部がメトキシ(−OMe)基になった線状PEGである。他端は、ヒドロキシル基か、あるいは化学的に修飾して本発明のCV−N変異体と共役できるようにした他の官能基である。これについてはあとで説明する。
ポリマーは、1つ以上の弱い結合、すなわち分解可能な結合をポリマー骨格中に含むこともできる。これについてはあとでさらに詳しく説明する。
A2.官能基
本発明で有用なポリ(アルキレンオキシド)ポリマーとしては、CV−Nタンパク質変異体上の望む位置で選択的に反応させるのに有効な官能基によって少なくとも1つの末端が活性化されるポリ(アルキレンオキシド)ポリマーが挙げられる。一実施態様では、官能基は、チオール基(すなわちスルフヒドリル選択部)と選択的に反応する。チオール基は、例えばシステイン中に存在している。従来技術で知られているそのような任意のスルフヒドリル選択官能基を使用することができる。少なくとも1つの反応性末端(例えばマレイミド、ビニルスルホン、チオール、ヨードアセトアミド、オルトピリジルジスルフィド)を有するPEG誘導体は、本発明のCV−N変異体に含まれるシステイン残基をPEG化するのに適した試薬である。例えば、アメリカ合衆国特許第5,739,208号、第6,602,498号、国際特許公開WO01/62827に記載されている誘導体を参照のこと。本発明のこの特別な実施態様で使用する具体的なスルフヒドリル選択PEGとしては、すでに説明したものが挙げられる。例えば、mPEG−フォーク式マレイミド(mPEG(MAL))、mPEG2−フォーク式マレイミド(mPEG2(MAL))、mPEG−マレイミド(mPEG−MAL)、mPEG2−マレイミド(mPEG2−MAL)(シアウォーター社)である。活性化されたこれらPEGの構造は、それぞれ以下の通りである:mPEG−CONHCH[CHCONH(CHCHO)CHCH−MAL]、mPEG2−リシン−NH−CH[CHCONH(CHCHO)CHCH−MAL]、mPEG−MAL、mPEG2−リシン−NH−CHCHNHC(O)CHCHMAL。
CV−N変異体を修飾して(すなわち、特定のリシンおよび/またはN末端で反応させるため、すべての、または1つを除くすべてのリシン残基をアルギニンに変換する修飾を行なって)アミン反応試薬と選択的に反応させる場合には、アミン反応試薬を用いることもできる。そのような試薬としては、例えばNHSエステル(アメリカ合衆国特許第6,214,966号)(例えばmPEG−スクシンイミジルプロピオン酸(SPA))、炭酸ベンゾトリアゾール(アメリカ合衆国特許第6,376,604号)、アセタールとアルデヒド(アメリカ合衆国特許第5,990,237号)(例えばmPEG−プロピオンアルデヒド)が挙げられる。
特に好ましい機能化PEGとしては、反応性末端にスルフヒドリル選択的反応基を有する線状のmPEG、あるいは両端に反応性末端(その反応基は同じでも異なっていてもよい)を持つ線状の二官能性PEG(すなわちダンベル型PEG)がある。反応基は、チオール特異的またはチオール選択的であることが好ましい。
このカテゴリーに入る1つのPEG誘導体は、以下に示すmPEG−MALである。このポリマー誘導体は、末端にキャップを有する線状のPEGであり、チオール基と選択的に結合する末端部を有する。本発明の一実施態様では、CV−N変異体に結合させるためのポリマーは、ポリマーの末端と、MAL部の窒素原子との間にリンク基を持たないmPEG−MALである。このタイプのポリマーは、本発明によるCV−N変異体との結合に用いるのが特に好ましい。このタイプのポリマーは国際特許公開WO01/62827(シアウォーター社)に記載されている。
上記のPEG誘導体を用いたカップリング反応は、以下に示すようにして進行する。ただし“HS”は、本発明のCV−N変異体に置換または挿入されたシステイン上のチオール基またはスルフヒドリル基を表わす。
別の方法として、ポリマー骨格は、リンカーを通じてマレイミド環の窒素原子に共有結合させることもできる。リンカーは、アメリカ合衆国仮特許出願シリアル番号第60/437,211号に記載されているように、一般にマレイミド環の窒素原子に隣接した非環式飽和炭化水素鎖または脂環式飽和炭化水素鎖を含んでいる。炭化水素鎖の鎖の長さは炭素原子約20個までであり、アルキレン鎖、二価のシクロアルキル基、またはこれらの組み合わせを含むことができる。リンカーは、ポリマー骨格の隣に加水分解に対して安定な結合(例えばカルバミン酸塩結合)を含むこともできる。
マレイミドに隣接したリンカーの非環式または脂環式の飽和炭化水素部分は、長さが少なくとも炭素原子3個分ある鎖を含んでいることが好ましい。鎖の長さは、少なくとも炭素原子4個であることがより好ましく、少なくとも炭素原子5個であることが最も好ましい。炭素が1個の鎖と2個の鎖も含まれる。鎖の長さは、マレイミドの窒素原子と、結合の非炭化水素部分(存在する場合)またはポリマー骨格とをつないでいる最短の原子鎖を形成する炭素原子の数として測定する。鎖の長さには、結合の構造に応じ、非環式炭化水素鎖、脂環式飽和炭化水素、またはこれらの組み合わせを含めることができる。一般に、結合の飽和炭化水素部分に含まれる炭素原子の合計数は、鎖の置換基も含め、4〜約20個である。この数は、4〜約12個であることが好ましく、4〜約10個であることがさらに好ましく、5〜約8個であることが最も好ましい。本発明には、合計で例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12個の炭素原子を含む炭化水素結合が含まれる。
本発明の炭化水素鎖を含む具体的な結合を以下の表3に示す。
A3.ポリマー構造のバリエーション
本発明の接合体では線状ポリマー(例えば線状mPEG)を利用することができる。アームを多数有するポリマーまたは分岐したポリマー(例えばアメリカ合衆国特許第5,932,462号に記載されているPEGポリマー)を用いて本発明の接合体を形成することもできる。
本発明の一実施態様では、ポリマー誘導体は“多官能性”である。これは、ポリマー骨格が、1つの官能基(例えばマレイミド)で機能化または活性化される少なくとも3つの端部(できれば約300の端部)を有することを意味する。
一般に、アームを多数有するポリマーまたは分岐したポリマーは、接続用の介在原子を通じて1つの活性部(例えばCV−N変異体)に直接的または間接的に共有結合した分岐中心点またはコア部(例えば下に示す構造のC)から延びる2本以上のポリマー“アーム”を備えている。例えば分岐したPEGポリマーの一例は以下の構造:
(ただしPEGとPEGは、この明細書に記載した任意の形態または幾何学的形状のPEGポリマーであり、互いに同じでも異なっていてもよく、L’は加水分解に対して安定な結合である)を有する。
このようなポリマーは、2本のポリマー・アーム、3本のポリマー・アーム、4〜8本のポリマー・アーム、あるいはさらに多くのポリマー・アームを持つことができる。分岐したこのようなPEGは、エチレンオキシドをさまざまなポリオール(例えばグリセロール、グリセロール・オリゴマー、ペンタエリトリトール、ソルビトール)に付加することによって調製できる。分岐中心部は、いくつかのアミノ酸(例えばリシン)に由来するものであってもよい。分岐したポリ(エチレングリコール)は、一般式R(−PEG−OH)(Rはコア部に由来し、例えばグリセロール、グリセロール・オリゴマー、ペンタエリトリトールであり、mはアームの数を表わす)で表わすことができる。
例えば上記の一般式に含まれる分岐したPEGポリマーの一例は、以下の構造:
(ただしPOLYとPOLYはPEGポリマー(例えばメトキシポリ(エチレングリコール))であり;R”は非反応性部分(例えばH、メチル、PEG)であり;PとQは非反応性結合である)を含むことができる。好ましい一実施態様では、上記の構造特性を有する分岐したPEGポリマーは、リシン置換を2つ有するメトキシポリ(エチレングリコール)、またはその誘導体である。本発明のCV−N変異体に結合させるための分岐した代表的なPEGポリマーとしては、ネクター社(アラバマ州)から入手できるものが挙げられる。2置換されたリシン・コアを有する代表的な2つのポリマーは、フォーク状のmPEG2(MAL)とmPEG2MALである。その構造を以下に示す。
すでに説明したように、ポリマーは、上記のmPEG2(MAL)のようなフォーク状構造になっていてもよい。一般に、フォーク状構造を有するポリマーは、ポリマー中の加水分解に対して安定な分岐点から延びる共有結合を介して2つ以上の反応基に結合したポリマー鎖を持つことを特徴とする(例えばアメリカ合衆国特許第6,362,254号を参照のこと。なおこの特許の内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。このようなポリマーを用いて2つのタンパク質分子を効果的に単一のPEG分子に結合させることができる。すなわち、R−S−PEG−S−R(ただしRとRは、同じタンパク質または異なるタンパク質を表わし、Sは、元のタンパク質に存在しているシステインのチオ基か、位置指定突然変異誘発によって導入されたシステインのチオ基を表わす)となる。
上記の代表的なmPEG2(MAL)構造において、中心にあってリシンのアミドの窒素に結合しているCHは、加水分解に対して安定な分岐点であると考えられる。フォーク状PEGの一例は、PEG−Y−CHZ(ただしYは結合基であり、Zは生物学的に活性な薬(例えばCV−N変異体)に共有結合させるための活性な末端基である)である。Z基は、決められた数の原子からなる鎖を介してCHと結合している。国際特許公開WO 99/45964(その内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)には、本発明で使用するのに適したさまざまなフォーク状PEG構造が記載されている。Z官能基を分岐した炭素原子に結合させる原子鎖は係留基として機能する。その原子鎖は、例えばアルキル鎖、アルケニル鎖、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、あるいはこれらの組み合わせを含むことができる。フォーク状PEGを本発明のCV−N変異体に結合させるときに用いる好ましいZ結合基としては、マレイミド、チオール、ビニルスルホン、ヨードアセトアミド、オルトピリジルジスルフィドなどがある。
PEGポリマーは、PEG鎖の末端ではなくPEG骨格の長さに沿って共有結合した反応基(例えばヒドロキシル、より好ましくはマレイミド、チオール、ビニルスルホン、ヨードアセトアミド、オルトピリジルジスルフィド)を有するペンダント式PEG分子の形態を取ることもできる。このようなペンダント式反応基は、PEG骨格に直接に結合させること、または結合部(例えばアルキル鎖やアルケニル鎖)を通じて結合させることができる。
本発明のシステイン−変異体接合体を調製する際に用いるのが好ましいポリマーは、チオール基(例えばシステインに含まれているもの)との結合に適した1つ以上の末端を有する上記の代表的な幾何学的形態のいずれかになろう。代表的なカップリング反応と得られる接合体を以下に示す。ただしLは、PEGまたはそれ以外の親水性ポリマー骨格と、ポリマーの末端にあるスルフヒドリル特異的反応基との間に必要に応じて設けるスペーサ基またはリンカー基である。
B.タンパク質−ポリマー接合体の構造
本発明のタンパク質−ポリマー接合体は、一般に1つ以上のポリ(アルキレンオキシド)鎖(PEG鎖が好ましい)を含んでいる。それぞれの鎖は、分子量が約200−約40,000ダルトンである。生物学的利用能を大きくするにはより低分子量のPEGが好ましいが、高分子量のPEG鎖(例えば平均分子量が5,000、10,000、15,000、20,000、25,000、30,000、40,000ダルトンまたはそれ以上のもの)は、特に注射製剤の場合に半減期を長くするのに好ましい。要するに、薬物動態パラメータ(例えば(元のものよりも)高分子量のタンパク質−ポリマー接合体に関する曲線の下の面積(AUC))の顕著な改善は、低下する活性を相殺する以上のことをもたらす可能性がある。
PEG化タンパク質は、その出発点となった修飾されていないタンパク質と比べて半減期(t1/2)が相対的に長くなっていることが好ましい。システイン−PEG化タンパク質の半減期は、修飾されていない親タンパク質の半減期と比べて少なくとも1.5〜2倍になっていることが好ましい。この値は、約2〜3倍であることがより好ましく、約5〜10倍あることがさらに好ましく、約100倍であることが最も好ましいが、一般には約6倍である。
共有結合しているPEG分子の数と全分子量をタンパク質1つ当たりどれくらいにするかは、タンパク質にどの程度の安定性(例えば血清半減期)を望むかによって異なる可能性がある。半減期が一般に短い比較的小さなタンパク質(例えばCV−N)では、タンパク質をPEG化してそのタンパク質の全分子量を30,000〜40,000MW以上に大きくすることが望ましかろう。後述するように(実施例9)、PEG化して30kDaのPEGを有するCV−Nにすると、20kDaのPEGを用いた接合体よりも生物活性は劣っていたが、より優れた薬理学的特性が得られた。
タンパク質1つ当たりのポリマーの数は一般に1〜4個である。これは、すでに説明したように、例えばタンパク質変異体中の好ましいシステイン置換の数に対応する。選択したいくつかの実施態様では、接合体は、結合したポリマーをタンパク質1つ当たり1個または2個含んでいる。結合したポリマーの位置は、変異体のシステイン部がどこにあるかによって決まる。あるいはポリマーは、変異体のリシン残基に結合される。その場合、他のすべてのリシンはアルギニンで置換されている。ポリマーは、タンパク質の末端に結合させることもできる。一般に、タンパク質変異体を作るために行なう修飾により、ポリマーはランダムではなく部位特異的に結合される。
本発明の別の一実施態様では、タンパク質−ポリマー接合体は、中心となるPEGによって互いに結合された2つのシアノビリン−Nタンパク質を含んでいる。より詳細には、このような接合体は、構造タンパク質−Y−PEG−Z−タンパク質(YとZは加水分解に対して安定な結合基であり、シアノビリン−Nタンパク質変異体をPEG部に結合している)として表わすことができる。特別な一実施態様では、結合YとZは、活性化されたスルホン試薬またはマレイミド試薬をシアノビリン−Nタンパク質変異体上のチオール基と反応させることによって形成する。
ポリ(アルキレンオキシド)をベースとしたポリマーと本発明によるシアノビリン−Nタンパク質変異体の結合は、従来技術で知られている任意の共有結合によって実現することができる。そのような結合としては、アミド、第二級アミン、エステル、ジスルフィド、エーテル、チオエーテル、尿素、カルバミン酸塩、あるいは上記の任意の結合などがある。どの結合になるかは、もちろんCN−V変異体内の結合部位に応じて異なる。別の一実施態様では、この明細書に示した代表的などの構造においても、シアノビリン−Nタンパク質変異体とポリマー分岐点の間の化学的結合を分解可能なものにできる(すなわち加水分解に対して不安定)。
接合したポリマー(上記のあらゆるポリマーが含まれる)のポリマー骨格中には、1つ以上の弱い結合、すなわち分解可能な結合も含めることができる。すなわちポリマーは、そのポリマーをCN−V変異体と結合させる結合に加え、そのポリマーをさらに分解するため、ポリマー内部に加水分解または別の手段によって分解可能な追加の結合を含むことができる。その結果、最初に投与したCN−V接合体におけるよりも小さなポリ(アルキレンオキシド)を有するタンパク質−ポリマー接合体が生体内で生成する。
例えばPEGは、ポリマー骨格中に加水分解するエステル結合を持つものを調製することができる。以下に示すように、この加水分解によってポリマーが開裂してより低分子量の断片になる。
-PEG-CO2-PEG- + H2O → -PEG-CO2H + HO-PEG-
ポリマー骨格中に含まれていて加水分解によって分解する他の結合としては、カルバミン酸塩結合、硫酸塩結合、アシルオキシアルキルエーテル結合;例えばアミンとアルデヒドの反応によって生じるイミン結合(例えばOuchi他、Polymer Preprints、第38巻(1)、582〜583ページ、1997年を参照のこと。なおその内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする);カルバミン酸塩結合、リン酸エステル結合、ヒドラゾン結合、アセタール結合、ケタール結合、オルトエステル結合などがある。生理学的に開裂可能なこのような結合は、保管や投与の際に残ったままになっている必要がある。例えばタンパク質−開裂可能な結合−ポリマー接合体は、最終医薬組成物を製造する際や、適切な送達ビヒクル(もし用いるのであれば)に溶かす際や、経路に関係なく投与する際に完全な状態で残っていなければならない。
さらに詳細には、すでに説明したように、生物分解可能な結合を持っていて本発明で役に立つタンパク質−ポリマー接合体は、以下の構造で表わすことができる:PEG−W−PEG−シアノビリン変異体(PEGとPEGは同じでも異なっていてもよい)またはPEG−W−シアノビリン変異体(Wは生体内で分解可能な結合を表わす)。
本発明による上記の開裂可能なタンパク質−ポリマー接合体は、そのままの状態だと、分子のPEG部分のサイズのため、またはシアノビリン−Nタンパク質変異体上の活性部位がPEG鎖によって立体障害となっているため、実質的に生物学的に不活性になっている可能性がある。しかしそのような接合体を生理学的条件下で開裂させてシアノビリン−Nタンパク質変異体または生物学的に活性なタンパク質−ポリマー接合体を放出させることにより、吸収後に全身循環させることができる。
例えば大きくて比較的不活性な接合体(すなわち1つ以上の高分子量PEG鎖(例えば分子量が約10,000を超える1つ以上のPEG鎖)が結合している接合体)を投与すると、生体内で加水分解され、元々存在していたPEG鎖の一部を有する生物活性な接合体が生成される。このようにして、タンパク質−ポリマー接合体を幾分かより効果的にすることができる。例えば当初の形態のポリマー接合体は、例えば吸入によって最初に投与したときはゆっくり吸収される可能性がある。しかし加水分解によって分解可能な結合が生体内で開裂すると、遊離したシアノビリン−Nタンパク質変異体(分解可能な結合の位置によってはこうなる)、または小さなポリエチレン・タグを結合させたシアノビリン−Nタンパク質変異体が放出されるため、肺を通じた吸収および/または血液中の循環がより容易になる。
第1の具体的な構造では、PEG部分は、この明細書に記載した多数ある構造の中の任意の構造を取ることができる。一般に分子量は約10,000であるため、接合体を投与しても急速には吸収されない。分子のPEG部分は、分子量が約5000ダルトン未満であることが好ましい。より好ましい分子量は2000ダルトン未満であり、さらに好ましい分子量は1000ダルトン未満である。ここで第2の具体的な構造PEG−W−タンパク質を参照すると、PEG部分は、一般に分子量が少なくとも約10,000ダルトン以上である。
C.タンパク質−ポリマー接合体の調製
ポリペプチド上の反応基(特にアミノ基またはチオール基)と結合させるための官能基を有する水溶性ポリマーは、上のセクションA2で説明した。水溶性ポリマー(ポリ(アルキレンオキシド)であることが好ましい)を本発明のシアノビリン−Nタンパク質変異体と結合させるための反応条件は、用いる具体的なポリマー部分、シアノビリン−Nタンパク質変異体上の結合部位、反応基の具体的なタイプ(すなわち、リシンか、それともシステインか)、望むPEG化の程度などによって異なるが、当業者であれば容易に決定することができる。
PEG−ポリマーを活性化させて本発明のシアノビリン−Nタンパク質変異体上のチオール(スルフヒドリル)基と結合させるのに適した反応基としては、すでに説明したように、チオール、ビニルスルホン、ヨードアセトアミド、マレイミド、ジチオ−オルトピリジンなどが挙げられる。特に好ましい試薬としては、PEG−ビニルスルホン、PEG−マレイミドがある。本発明で使用する別の代表的なビニルスルホンは、アメリカ合衆国特許第5,739,208号に記載されている。なおその内容は、参考として明確な形でこの明細書に組み込まれているものとする。
好ましい実施態様では、本発明の組成物は、選択的にPEG化したシアノビリン−Nタンパク質変異体を含んでいる。すなわち接合体はPEG化の位置と程度に関して実質的に均一である。これは、システイン基の部位選択的PEG化または部位指定PEG化により、PEG部分がシアノビリン−Nタンパク質変異体の予定した標的位置にほぼ結合したタンパク質−ポリマー接合体組成物が得られることを意味する。PEG化の予定部位がどこであるかに応じ、シアノビリン−Nタンパク質変異体内の標的としない反応部位がPEG化されるのを阻止するための保護/脱保護合成戦略が必要となる可能性がある。本発明によるシアノビリン−Nタンパク質変異体の好ましい点突然変異に関してすでに説明したように、このような部位指定カップリング化学により、シアノビリン−Nタンパク質変異体上の特定の反応部位(例えばC末端、N末端、興味の対象となる特定の残基位置)がかなりの程度置換された接合体が得られる。接合体組成物は、1種類のポリマー−タンパク質接合体を含んでいることが好ましい。
次に、望むのであれば組成物をさらに精製し、実質的に純粋なタンパク質−ポリマー接合体からなる組成物を得る。実質的に純粋なタンパク質−ポリマー接合体とは、純度が少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%のタンパク質−ポリマー接合体を含む組成物を意味する。すなわち組成物は、少なくとも約90重量%のタンパク質−ポリマー接合体種を含んでおり、残りは、接合していないタンパク質、接合していないポリマー、二量体副産物などである。本発明のタンパク質−ポリマー接合体は、一般にイオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティ・クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィなどの精製技術を1つ以上利用して精製する。例えばゲル濾過を利用してPEG化されたタンパク質をPEG化されていないタンパク質から分離することや、アニオン交換により、反応しないPEGをPEG化されたタンパク質から除去することができる。
得られるタンパク質−ポリマー接合体の全体的均一度(すなわち存在している異なるタンパク質−ポリマー種の数(位置異性体も含む))は、クロマトグラフィ、電気泳動、質量分析、MALDI−MS、NMR分光のうちの1つ以上の方法を利用して評価できるが、MALDI−MSを利用するのが特に好ましい。
本発明による代表的なポリマー接合体の調製は実施例4と5に記載されている。実施例4には、グルタミン62がシステインで置換されたCV−N突然変異体において20キロダルトンの線状PEG(mPEG−オルトピリジル−ジスルフィド)がシステインに部位選択的に結合した接合体の調製法を記載してある。得られる接合体組成物は、1つのPEG−CV−N種(すなわち、CV−Nタンパク質内の位置62にポリエチレングリコールが特異的に結合したモノPEG化CV−N)だけを含んでいる。実施例5には、同様に、グルタミン62がシステインで置換されたCV−N突然変異体を30キロダルトンのmPEG−マレイミドに結合させることによるCV−N接合体の調製法を記載してある。得られる接合体組成物は、PEGがCV−N変異体の62システイン位置に部位選択的に結合した1つのPEG−CV−N種だけを含んでいる。
D.生物活性
本発明による2つの接合体(PEG30kDa−CV−N(Q62C)およびPEG20kDa−CV−N(Q62C)と表記する)のインフルエンザ・ウイルス(実施例7)とHIV(実施例8)に対する生物活性を公知の方法に従って試験管内で評価し、大きな生物活性が見られることを明らかにした。前者の場合、接合体のED50は天然のタンパク質と同程度であった。生体内における免疫原性と急性毒性のテスト(実施例9、10)により、接合体PEG30kDa−CV−N(Q62C)は天然のタンパク質と比べて免疫原性と毒性が有意に少ないことがわかった。
この結果は、天然のタンパク質のリシン残基および/またはN末端をランダムにPEG化した場合に得られた結果(後出の比較例1を参照のこと)とは対照的である。この方法では、XTTをベースとした細胞保護アッセイに基づくと、非常に低い収率、および/または生物活性のレベルが極めて低い接合体が得られる。
V.医薬組成物
本発明のさらに別の特徴によれば、本発明のシアノビリン−N変異体−ポリマー接合体は、高マンノース・エンベロープを有するウイルスによる感染症の治療、予防、緩和に有効な医薬組成物にすることができる。この点に関し、“高マンノース”とは、少なくとも6個、一般には6〜9個のマンノースが結合したマンノース環を意味する。現在知られている高マンノース・エンベロープを有するウイルスとしては、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザ・ウイルス、はしかウイルス、ヘルペス・ウイルス6、マルブルク・ウイルス、エボラ・ウイルスなどがある。
このようなウイルスによる感染症を治療、予防、緩和するため、本発明の組成物を治療または予防に有効な量投与する操作を含む方法も提供される。
本発明の医薬組成物は、具体的な投与法や投与形態が何であるかに応じ、そのまま投与すること、あるいは添加する賦形剤、溶媒、安定剤、アジュバント、希釈剤などとともに製剤化することができる。本発明のタンパク質変異体および/または接合体は、非経口で投与してもよいし、それ以外の経路で投与してもよい。具体的な投与経路としては、経口、眼、膣、直腸、口、局所、鼻、皮下、筋肉内、静脈内、大脳内、経皮、肺などがある。
本発明の医薬組成物は、一般に、治療または予防に有効な量の本発明による少なくとも1つのタンパク質−ポリマー接合体と、1種類以上の医薬的に許容可能な基剤とを含んでいる。本発明の製剤(例えば非経口投与用製剤)は、液体状の溶液または懸濁液になっていることが最も一般的である。一般に、非経口投与用の医薬組成物は、非毒性かつ不活性な医薬的に許容可能な基剤の中でpHが約5〜8、より好ましくは6〜8の状態で製剤化する。肺に投与するための吸入可能製剤は、一般に液体または粉末であるが、粉末製剤のほうが一般には好ましい。本発明の医薬組成物は、凍結乾燥させた固体として製剤化することもできる。この固体は、投与前に生理学的に適切な溶媒を用いて再構成する。本発明によるタンパク質および/またはタンパク質−ポリマー接合体の組成物としては、上記のものほど好ましくはないが、シロップ、クリーム、難航、錠剤などもある。
“医薬的に許容可能な基剤”という表現は、治療薬(例えば抗体、ポリペプチド、遺伝子、他の治療薬)を投与するための基剤を意味する。この表現は、それ自体は、組成物を受け入れた個体にとって害となる抗体の産生を誘導せず、しかも過度の毒性なしに投与することのできるあらゆる医薬用基剤を意味する。適切な基剤は、大きくてゆっくりと代謝される巨大分子であり、具体的にはタンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、不活性なウイルス粒子などがある。医薬的に許容可能な基剤が何であるかは、投与する組成物と、組成物を投与するのに用いる具体的な方法にも影響される。したがって本発明による医薬組成物にとって適切な製剤は多数存在している(例えば『レミントンの薬理科学』、第17版、1985年を参照のこと)。
治療用組成物に含まれる薬理学的に許容可能な基剤は、液体(例えば水、生理食塩水、グリセロール、エタノール)を含むことができる。さらに、補助物質(例えば湿潤剤、乳化剤、pH緩衝物質など)がこのような基剤の中に存在していてもよい。一般に、医薬組成物は、注射可能な液体溶液または懸濁液として調製する。注射する前に液体ビヒクルの中で溶液または懸濁液にするのに適した固体形態のものも調製できる。医薬的に許容可能な基剤の定義にはリポソームも含まれる。
この明細書では、“治療または予防に有効な量”という表現は、望む疾患または症状を治療、改善、予防したり、検出可能な治療効果または予防効果を示したりする治療薬の量を意味する。この効果は、例えば化学マーカーまたは抗原のレベルによって検出できる。治療効果には、物理的症状の減少(例えば体温の低下)も含まれる。対象にとっての正確な有効量は、その対象の大きさと健康状態、疾患の性質と程度、投与するために選択した薬または薬の組み合わせによって異なる。したがって正確な有効量をあらかじめ指定するのは有効でない。しかし所定の状況における有効量はルーチンの実験によって決めることができ、医師が判断する。
どの組成物であれ、治療に有効な投与量は、最初は、(例えば腫瘍細胞の)細胞培養物アッセイまたはモデル動物(通常はマウス、ウサギ、イヌ、ブタ)において推定することができる。モデル動物を利用して適切な濃度範囲と投与経路を決めることもできる。次に、このような情報を利用してヒトにおける有効な投与量と投与経路を決めることができる。
治療に有効な投与量とは、症状または状態を改善したり、感染から保護したりする活性成分(例えば本発明のシアノビリン−Nタンパク質変異体および/またはタンパク質−ポリマー接合体)の量を意味する。治療効果と毒性は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬理学的方法(例えばED50(集団の50%にとって治療上有効な投与量)やLD50(集団の50%が死ぬ投与量))によって測定することができる。治療効果と毒性効果の投与比が治療指数であり、ED50/LD50として表わすことができる。治療指数が大きな医薬組成物が好ましい。細胞培養物アッセイと動物での研究から得られたデータを利用し、ヒトで使用する場合の投与量の範囲を決める。このような組成物に含まれる投与量は、ED50を含む循環濃度の範囲にあって毒性がないかほとんどない量であることが好ましい。投与量は、利用する投与形態、患者の感受性、投与経路に応じ、この範囲内で変化する。
正確な投与量は、治療を必要としている対象または患者に関係するさまざまな因子を考慮して決定することになろう。投与量は、活性成分が十分なレベルになるか、望む効果が維持されるように調節する。考慮するとよい因子としては、疾患の程度、対象の全体的な健康状態、年齢、体重、対象の性別、食事、投与の時刻と頻度、薬の組み合わせ、反応の感度、治療に対する寛容度/応答などが挙げられる。長時間にわたって作用する医薬組成物は、個々の製剤の半減期とクリアランス速度に応じ、3〜4日ごと、または毎週、または2週間に一度投与するとよい。タンパク質−ポリマー接合体のクリアランス速度(すなわち半減期)は、患者の個別の必要性に合わせ、例えばタンパク質上のPEG部分の数および/またはサイズを変えることによって変化させることができる。
タンパク質の医薬的プロファイルは接合によって改善するため、タンパク質−ポリマー接合体の投与量は、一般に、接合していないタンパク質の場合と分子レベルで見て同じ投与量またはそれ以下になる。通常の投与量は、投与経路に応じて0.1〜100μgの間で変えることができ、合計投与量は約1gまでにする。具体的な投与量と投与法に関する参考情報は文献に記載されており、当業者であれば一般に利用することができる。
本発明のPEG化タンパク質は非経口(例えば筋肉内注射または静脈内注射)で投与し、胃腸管を避けることが好ましい。他の投与法としては、パッチおよび/または局所クリーム組成物による経皮投与と経粘膜投与がある。経粘膜投与には、鼻腔製剤中に本発明のPEG化タンパク質を含有する鼻腔スプレー製剤も含まれる。この鼻腔製剤は、鼻の粘膜と接触してその粘膜を通じて心臓血管系に直接拡散する。肺の内部に送達するためのエーロゾル製剤も用いることができる。
本発明のシアノバリン−Nタンパク質変異体とタンパク質−ポリマー接合体は、その変異体または接合体を興味の対象となる部位に固定または送達するための装置に含めることもできる。そのような装置としては、粒子、磁性ビーズ、流動マトリックス、コンドーム、膜、避妊用頚部キャップ、膣リング、スポンジ、フォーム、ゲルなどがある。さらに詳細には、本発明のタンパク質変異体またはタンパク質−ポリマー接合体は、加水分解に対して安定な結合または不安定な結合を通じて装置の表面に共有結合させることができる。あるいは本発明のタンパク質変異体またはタンパク質−ポリマー接合体は、例えばそのタンパク質変異体またはタンパク質−ポリマー接合体を利用したフォームまたはゲルの形成を通じて機械的装置に組み込み、その装置のコア構造と一体化した一部にすることもできる。次に、このような装置を通常の方法で利用して、その変異体および/または接合体を特定の位置に固定したり、その変異体および/または接合体を望む場所に送達したりすることができる。
当業者は、一般的な参考文献を参照することにより、この明細書に記載した公知の技術またはそれと同等な技術の詳しい説明を得ることができる。そのような参考文献として、Poly(ethylene glycol)Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applications, Harris (ed.), Plenum Press, New York (1992); Wong, Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking, CRC Press (1991); Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc. (1995); Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2d ed.), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (1989); Birren et al., Genome Analysis: A Laboratory Manual, volumes 1 through 4, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (1997-1999); Plant Molecular Biology: A Laboratory Manual, Clark (ed.), Springer, New York (1997); Richards et al., Plant Breeding Systems (2d ed.), Chapman & Hall, The University Press, Cambridge (1997); and Maliga et al., Methods in Plant Molecular Biology, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (1995) などがある。
実施例1
以下の実施例により本発明を説明するが、本発明がこれら実施例に限定されることはない。
比較例1
シアノビリン−Nの非特異的PEG化
シアノビリン−Nの修飾を、このタンパク質のアミノ基を非特異的にPEG化することによって実現した。使用したPEG化試薬は、mPEG−スクシンイミジルプロピオン酸、30kDa(SPA、ネクター・セラピューティクス社、アラバマ州)またはmPEG−プロピオンアルデヒド、2kDa、5kDa、30kDa(ネクター・セラピューティクス社、アラバマ州)であった。SPA試薬の非特異的結合は、アメリカ合衆国特許第5,672,662号に記載されている方法に従って実施した。プロピオンアルデヒド試薬を用いたCV−Nの修飾は、還元剤の存在下で従来法(例えばWirth, P.他、Bioorg. Chem.、第19巻、133ページ、1991年を参照のこと)に従って実施した。
XTTに基づいた細胞保護アッセイ(CEM−SS細胞/HIV−1RF)を利用し、得られたPEG修飾CV−Nサンプルを調べた。PEG−CV−N組成物はすべて、元のCV−Nまたは対照CV−N突然変異体と比べると、不活性であるか活性が極めて低かった。
実施例2
シアノビリン−Nをコードしている配列に対する突然変異誘発
元のシアノビリンで報告されている活性部位(Bewley,C.A.、Structure(Camb)、第9巻(10)、931〜940ページ、2001年)からの距離を考慮し、システイン残基で置換するのに特に好ましい位置としてグルタミン14とグルタミン62を選択した。置換のために最初に選択した部位はグルタミン62である。
シアノビリン−Nをコードしている遺伝子を国立がん研究所から入手した(アメリカ合衆国特許出願第2002/0127675号を参照のこと。なおこの特許の内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。この遺伝子は、配列ID番号9というコード配列を含んでおり、pET26(b)発現ベクター(ノヴァジェン社、マディソン、ウィスコンシン州)にクローニングされていた。この発現ベクターは、ペリプラズムのトランスロケーションを指示するpelBシグナル配列を含んでいる。
クイックチェンジ突然変異誘発キット(ストラタジーン社、ラ・ジョラ、カリフォルニア州)を製造者のプロトコルに従って使用し、突然変異誘発させた。反応に使用したPCRプライマーは以下の配列であった。
2つのPCR反応物を用意した。それぞれ、10×反応緩衝液(100mMのKCl、100mMの(NHSO、100mMのトリス−HCl、pH8.8、20mMのMgSO、1%トリトンX−100、1mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA))を5μl、上記の各プライマーを1μl、dNTPを1μl、元のCV−Nを25または50ng、Pfu DNAポリメラーゼを1μlを含むほか、減菌脱イオン水を最終容積が50.0μlになるまで加えた。これら反応物を熱サイクラー(エッペンドルフ社、マスターサイクラー・パーソナル)の中で培養した。反応条件は、95℃で30秒の1サイクル、95℃で30秒の16サイクルの後、1分間にわたって55℃にし、11分20秒にわたって68℃にするというものであった。このプロセスの後、反応物を1時間にわたって37℃にすることにより、修飾されずに残ったDNAを1μlのDpnIエンドヌクレアーゼで消化させた。プラスミドDNAをXL1−ブルー大腸菌の中に導入して形質転換させ、30μg/mlのカナマイシンを含むルリア・ブロス−寒天培地の上に載せた後、一晩にわたって37℃にした。
Q62C突然変異がシアノビリン−Nをコードしている配列に組み込まれたかどうかを明らかにするため、個々のコロニーを選択し、プロメガ・ウィザード・ミニプレップ精製キット(プロメガ社、マディソン、ウィスコンシン州)を製造者の指示に従って利用してプラスミドDNAを回収した。次に、ResGen(ハンツビル、アラバマ州)により、プラスミドDNAのシークエンシングを行なった。(配列ID番号12に示した)Q62C突然変異の組み込みが確認された。
実施例3
CV−N(Q62C)の発現と精製
実施例2に記載したようにして調製したCV−N(Q62C)のDNAを用いてBL21(DE3)大腸菌(ノヴァジェン社、マディソン、ウィスコンシン州)を形質転換した。CV−N(Q62C)タンパク質突然変異体をMori(Mori他、Prot.Expr.and Purif.、第12巻(2)、151〜158ページ、1998年3月)の方法に従って発現させた。
要するに、選択的LB−寒天プレート上で増殖させたBL21(DE3)大腸菌中のCV−Nの単一のコロニーを、0.5%グルコースと、1.6mMの減菌濾過MgSOと、30μg/mlのカナマイシンとを含むスーパーブロス(1リットルにつき、トリプトン32g、酵母抽出物20g、NaCl5g)の中に接種し、振盪式インキュベータ(ニュー・ブランズウィック・サイエンティフィック社、ニュー・ブランズウィック、ニュージャージー州)の中で225rpmで揺すりながら37℃にて一晩にわたって増殖させた。翌日、一晩にわたって培養したものを上と同じ組成のスーパーブロス5リットルを添加して1:50に希釈した。6リットルの発酵容器(BioFlo3000、ニュー・ブランズウィック・サイエンティフィック社、ニュー・ブランズウィック、ニュージャージー州)の中でCV−N(Q62C)を発現させた。その時の条件は、300rpmでの撹拌、溶けた酸素30%、37℃、pH7.0である。600nmでの光学密度(OD600)を測定することによって細胞の成長をモニターした。OD600がほぼ1.2に達したとき、最終濃度1.0mMのイソプロピル−チオガラクトシダーゼ(IPTG)を用いてCV−N(Q62C)の発現を誘導した。約2時間にわたって発現を継続させると、培養物のOD600が約1.6に達した。次に、4℃にて7000×gで10分間遠心分離することによって細胞を回収した。
利用したこの最初の精製法は、Moriらの方法(上記文献)をいくつかの点で変更した方法に基づいている。精製の第1段階はペリプラズム分画化であり、ペリプラズムに見つかるタンパク質だけを分離した。回収した細胞ペレットを、30mMのトリス−HCl、pH8.0と、20%スクロース(w/v)と、1mMのEDTAを含む溶液(元の培養物の容積の1/20の容積)の中に再び懸濁させた。細胞を4℃にて30分間にわたって軽く揺すった。細胞を4℃にて4000×gで15分間にわたって遠心分離した。この段階からの上清を、ペリプラズム分画と名づけた。次に細胞ペレットを、氷で冷やした5mMのMgSO:1mMのEDTA(元の培養物の1/20の容積)の中に再び懸濁させ、4℃にて30分間にわたって軽く揺すった。次にこの懸濁液を4℃にて15,000×gで20分間にわたって遠心分離した。上清を浸透分画と名づけ、ペレットを廃棄した。
次に分画をSDS−PAGEで分析し、どの分画がCV−N(Q62C)を含んでいるかを調べた。興味の対象であるタンパク質は主として浸透分画に見つかったため、この分画だけをさらに精製した。
ペアになっていないシステイン残基が存在していることでタンパク質が二量体化しやすくなるため、タンパク質溶液をメルカプトエチルアミン(MEA、シグマ社)で還元した後に精製した。タンパク質溶液の容積を測定し、MEAを添加して最終濃度を50mMにした。次にこの溶液を37℃の水浴の中に90分間入れた。
還元後、3,000MWCOポリエーテルスルホン膜(ミリポア社、ベッドフォード、マサチューセッツ州)を含む撹拌した細胞(アミコン・モデル8200、ミリポア社、ベッドフォード、マサチューセッツ州)を用い、タンパク質溶液を限外濾過により濃縮した。タンパク質を55psiのアルゴン下で濃縮して最終容積を約20mlにした。
スーパーデックス75ハイロード16/60カラム(アマーシャム・バイオサイエンシーズ・ノース・アメリカ社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を用いたゲル濾過クロマトグラフィでタンパク質を精製した。このクロマトグラフィならびにその後のすべてのクロマトグラフィによる分離は、アクタプライム・クロマトグラフィ・システム(アマーシャム・バイオサイエンシーズ・ノース・アメリカ社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)で実施した。それぞれの分離において、2mlの濃縮タンパク質溶液をカラムに充填した。分離は、pH4.0、10mMのクエン酸塩緩衝液(10mMのクエン酸、10mMのクエン酸ナトリウム)を1.5ml/分の流量にして実施した。あとからの注入が90mlから始まって120mlのになるまで続けることにより、3mlの分画を回収した。SDS−PAGEを利用してCV−N(Q62C)を含む分画を同定し、あとからの注入が100mlになったところからタンパク質が着実に溶離し始めたことを明らかにした。
酸沈殿ステップの後にカチオン交換クロマトグラフィを利用し、以後の調製においてCV−N(Q62C)も精製した。
元のシアノビリンのグルタミン14の位置がシステインで置換されている位置14突然変異体(Q14C)も同様にして発現させた。使用した発現系における発現レベルが高いという理由で上記の位置62突然変異体を選択し、以下に示す具体的なポリマー接合体を調製した。
実施例4
PEG−o−ピリジルジスルフィドを用いたCV−N(Q62C)の修飾
ゲル濾過による精製の後、古相酵素免疫検定法(ELISA)を利用してCV−N(Q62C)の濃度を測定した。標準曲線を得るため、元のCV−Nを96ウエル・プレートの(リン酸緩衝液を用いて)連続希釈した1列のウエルに添加し、濃度を2μg/ml〜0.01μg/mlにした。CV−N(Q62C)をPBSで1:5〜1:640に連続的に希釈し、それぞれのCV−N(Q62C)希釈液60μlを同じプレートのウエルに添加した。プレートを湿った容器の中で室温(22〜24℃)にて一晩にわたって培養した。翌日、プレートを脱イオン水で3回リンスした後、200μlの遮断用緩衝液で室温にて30分間にわたって反応を阻止した。プレートを上記のようにして洗浄した後、60μlのウサギ・ポリクローナル抗CV−N抗体(NCI)とともに2時間にわたって培養した。NCIは、遮断用緩衝液を用いて元の1mg/mlという濃度からあらかじめ1:3000に希釈したものを用いた。プレートを脱イオン水で3回リンスし、200μlの遮断用緩衝液で室温にて10分間にわたって反応を阻止した後、さらに3回リンスした。1:3000に希釈したヤギ抗ウサギIgG−セイヨウワサビ・ぺルオキシダーゼ接合体(GAR−HRP)60μlを、CV−N(Q62C)を含むそれぞれのウエルに添加した。プレートを室温にて1.5時間にわたって培養した後、上記のようにしてリンスし、停止させた。
色をつけるために3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(0.4mg/ml)とH(クエン酸緩衝液中に0.02%)(カークガード・アンド・ペリー・ラボラトリーズ社、ゲサースバーグ、メリーランド州)の等量混合物75μlをそれぞれのウエルに添加し、色が一旦適切な濃さになった後、1MのHSOを25μlそれぞれのウエルに添加することによって反応を停止させた。450nmにおける吸光度を測定し、各ウエル内の元のCV−Nの濃度の対数を同じウエルで測定した吸光度に対してプロットすることによって標準曲線を得た。CV−N(Q62C)の濃度はこのグラフから決定した。
部位特異的PEG化:上記のスルフヒドリル特異的ポリマー、すなわち20kDaメトキシ−PEG−オルトピリジル−ジスルフィド(mPEG20kDa−OPSS、シアウォーター社、ハンツビル、アラバマ州)を用いてCV−N(Q62C)を修飾した。反応の説明に関しては、例えばC.Woghiren他、Bioconj.Chem.、第4巻、314ページ、1993年を参照のこと。精製したCV−N(Q62C)にmPEG20kDa−OPSSのモル数を5倍過剰にしたものを添加してCV−N(Q62C)−PEG接合体を得た。反応は、室温にて一晩にわたって行なわせた。
分析:SDS−PAGEとマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI−TOFF)質量分析器(ヒューレット−パッカード社)により、CV−N(Q62C)の修飾を確認した。データは、PEG化シアノビリン種が形成されたことを確かに示しており、PEG鎖が上記のシアノビリン突然変異体の62システイン残基に部位選択的に共有結合していた。
CV−N(Q62C)−PEG接合体の精製:mPEG20kDa−OPSSを用いて修飾したCV−N(Q62C)(今後はPEG−CV−N(Q62C)と呼ぶ)を反応しなかったCV−N(Q62C)から分離した。そのためにはまず最初に上記の限外濾過を利用して溶液を濃縮し、次いで上に大まかに説明したのと同じ条件でゲル濾過を行なった。
反応しなかったmPEG20kDa−OPSSがゲル濾過カラムからPEG−CV−N(Q62C)と同じ容積溶離したため、2つの種を分離するのに追加の精製ステップが必要となった。20mlのCMセファロース・カチオン交換カラム(アマーシャム・バイオサイエンシーズ・ノース・アメリカ社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を用い、PEG−CV−N(Q62C)を反応しなかったPEG試薬から分離した。5カラム分の容積の10mMクエン酸塩緩衝液(緩衝液A)を用いてカラムを平衡させた後、濃縮したPEG−CV−N(Q62C)を5ml充填した。次にカラムを新たな5カラム分の容積の緩衝液Aで洗浄した。ステップ勾配を利用し、PEG−CV−N(Q62C)を反応しなかったmPEG20kDa−OPSSから分離した。第1のステップは、60%の10mMクエン酸塩緩衝液と0.25MのNaCl、pH4.0(緩衝液B)が2カラム分の容積に相当する時間であった。第2のステップは、100%緩衝液Bが3カラム分の容積に相当する時間であった。最後に、2カラム分の容積の10mMクエン酸塩と1MのNaCl、pH4.0を用いてカラムを再び平衡させた。2カラム分の容積の緩衝液Aを用いてこの方法を終わらせた。
SDS−PAGEとMALDI−TOFFを利用してサンプルの純度を測定した。
実施例5
mPEG30kDa−マレイミドを用いたCV−N(Q62C)の修飾
酸沈殿ステップの後にカチオン交換クロマトグラフィを行なってCV−N(Q62C)を精製した。精製したタンパク質溶液のpHを中性に調節し、モル数を2倍過剰にしたmPEG30kDa−マレイミド(ネクター社、ハンツビル、アラバマ州)を用いて位置Q62Cでの部位特異的PEG化を実施した(アメリカ合衆国特許第6,602,498号を参照のこと)。アニオン交換クロマトグラフィの後にゲル濾過を行なうことにより、mPEG30kDa−MAL−CV−N(Q62C)接合体を、反応しなかったPEG−MAlと修飾されなかったCV−Nから分離した。
タンパク質の純度と反応の収率を逆相HPLCによってモニターした。BCAタンパク質アッセイを利用してタンパク質の濃度を測定した。反応の収率は、精製後に約70%であった。
以下に示すように、CV−Nの部位特異的システイン突然変異体は、いろいろな分子量のスルフヒドリル−反応性PEGと共役させたとき、かなり大きな活性を保持していた(実施例6〜8)。この接合体は、修飾されていないCV−Nと比べて毒性と免疫原性も有意に低下していた(実施例9〜10)。
実施例6
PEG20kDa−CV−N(Q62C)の生物活性の測定
インフルエンザ・ウイルス不活性化アッセイの利用
10%ウシ胎仔血清、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、0.25μg/mlのアンホテリシンを含むダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)の中に入れたマーディン−ダービー犬の腎臓(MDCK)細胞(4×10細胞/ml)を、96ウエル・プレートのウエルに100μl/ウエルの割合で入れた。翌日、血清なしのDMEMを用いてテスト・サンプル(CV−N、CV−N突然変異体、PEG20kDa−CV−N突然変異体、PEG20kDa−OPSS)の連続希釈物(10−2〜10−8)を調製し、最終容積を100μlにした。次に、50%組織培養物感染投与量(TCID50)の200倍のインフルエンザA/Udorn(H3N2)(NIH)を含む100μlのDMEMをテスト・サンプル希釈液に添加し、この混合物を室温にて1時間にわたって培養した。テスト・サンプル/インフルエンザ溶液にN−トシル−L−フェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)−トリプシン溶液(シグマ−オールドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州)を補足し、最終濃度を1.25μg/mlにした。次に、得られたこの溶液100μlを、あらかじめリン酸緩衝液(PBS)で洗浄しておいたMDCK細胞に添加した。
対照として、MDCK細胞も以下のもので処理した:培地のみ、ウイルスのみ、テスト・サンプルを10−2に希釈したもの。
5日目、顕微鏡(Nikon TS100)を用いてウエルを調べ、細胞の50%が感染からまだ保護されている最大の希釈度を計算した。データは、インフルエンザの感染からMDCK細胞の50%を保護するのに必要な投与量として示す(ED50)。
実施例7
HIVに対するPEG20kDa−CV−N(Q62C)の生物活性
アメリカ合衆国特許第5,843,883号(第20欄、20〜55行)に記載されている方法を利用して国立がん研究所でバイオアッセイを行なった。なおこの特許の内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。PEG20kDa−CV−N(Q62C)接合体はED50が46ng/mlであったのに対し、元のCV−NはED50が1ng/mlであった。
実施例8
CV−N突然変異体−PEG接合体の抗HIV活性
CEM−SS細胞とHIV−1のRF株を用いたXTTベースのインビトロ細胞保護アッセイを利用し、修飾した元のタンパク質、修飾した突然変異タンパク質、上記のPEG接合体の抗HIV活性を評価した。
本発明によるPEG化CV−N突然変異体の抗HIV活性を図1に示す。活性は、テスト化合物がCEM−SS細胞の50%をHIV RF株による感染から保護する濃度(IC50)として表わした。図1では、IC50は、AZTの活性を1.0とした場合の相対値として示してある。細胞に基づくアッセイではアッセイごとに大きな変動があるため、全サンプルのIC50値を各試行ごとにAZTに対して正規化した。
30k PEG CV−N突然変異体(すなわちPEG30kDa−MAL−CV−N(Q62C))は、他の代表的な接合体(すなわちPEG20kDa−OPSS−CV−N(Q62C))よりも活性が低かったとはいえ、より大きなPEG分子を用いると生体内で有利になるため、前者の化合物を選択してさらにテストを行なった。
実施例9
CV−N突然変異体PEG接合体の急性毒性テスト
元のCV−NとPEG30kDa−MAL−CV−N(Q62C)接合体の急性毒性を比較するため、生体内に投与する量を増やしていく実験を行なった。そのため、3日連続でHsd:ICR(CD−1)マウスに修飾したCV−Nと修飾していないCV−Nを静脈内に投与した。
元のCV−Nを大量に投与すると、そのグループのマウスがすべて死んだ。しかし同じ量のPEG30kDa−CV−N突然変異化合物を与えたマウスは、わずかな光線過敏反応を示しただけで、観察期間が終わって安楽死させたときにはまだ健康であった。
実施例10
CV−N突然変異体PEG接合体の免疫原性
修飾していないCV−N(Q62C)によってマウスに強力な免疫応答が誘導され、50%終末点力価は16384であった(図2)。それに対してCV−N(Q62C)−MAL 20kは50%終末点力価が1825であり、CV−N(Q62C)−MAL 30kは50%終末点力価がわずかに512であった。この値はベースラインの読み取り値のほんの2倍である。

Claims (23)

  1. 天然シアノビリン−N(配列番号1)と少なくとも90%の配列同一性を有し、少なくとも62位に置換または挿入によるシステインを有する抗ウイルス・ポリペプチド。
  2. 配列番号1に対応しており、5、9〜21、25、29〜40、45〜49、52、57、59〜61、63〜72、79〜91、96〜101、C末端、N末端からなるグループの中から選択した少なくとも1つの位置に置換または挿入によるシステインをさらに有するか、あるいは3、48、74、84、99からなるグループの中から選択した少なくとも4つの残基に置換されたアルギニンを有する、請求項1に記載の抗ウイルス・ポリペプチド。
  3. 5、9〜21、25、29〜40、45〜49、52、57、59〜61、63〜72、79〜91、96〜101、C末端、N末端からなるグループの中から選択した位置に置換または挿入による1〜3個のシステインを有する、請求項2に記載の抗ウイルス・ポリペプチド。
  4. 上記位置の選択を、9〜21、29〜40、45〜49、57、59〜61、63〜72、79〜91、96〜101からなるグループの中から行なう、請求項3に記載の抗ウイルス・ポリペプチド。
  5. 上記位置の選択を、10〜20、31〜39、46〜48、60、61、63〜71、80〜90、97〜100からなるグループの中から行なう、請求項4に記載の抗ウイルス・ポリペプチド。
  6. 上記位置の選択を、11、14、16、19、20、31、32、33、38、46、61、67、68、82、83からなるグループの中から行なう、請求項4に記載の抗ウイルス・ポリペプチド。
  7. 置換又は挿入された1個または2個のシステインを有する、請求項3に記載の抗ウイルス・ポリペプチド。
  8. 請求項1に記載の抗ウイルス・ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド。
  9. 請求項2に記載の抗ウイルス・ポリペプチドをコードしている、請求項に記載のポリヌクレオチド。
  10. 請求項7に記載の抗ウイルス・ポリペプチドをコードしている、請求項に記載のポリヌクレオチド。
  11. 請求項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
  12. 請求項11に記載のベクターを含む宿主細胞。
  13. (i)少なくとも62位に置換または挿入によるシステインを有し、並びに5、9〜21、25、29〜40、45〜49、52、57、59〜61、63〜72、79〜91、96〜101、C末端、及びN末端からなるグループの中から選択した少なくとも1つの位置に置換または挿入によるシステインをさらに有するか、あるいは3、48、74、84、及び99からなるグループの中から選択した少なくとも4つの残基に置換されたアルギニンを有する、配列番号1に対応している抗ウイルス・ポリペプチド;及び
    (ii)少なくとも62位において上記ポリペプチドに共有結合したポリアルキレンオキシド
    を含む抗体ウイルス・ポリペプチド−ポリマー接合体
  14. ポリアルキレンオキシドが62位に結合している、請求項13に記載の接合体。
  15. 結合した1〜4個のポリアルキレンオキシドを含む、請求項14に記載の接合体。
  16. 結合した1個または2個のポリアルキレンオキシドを含む、請求項15に記載の接合体。
  17. 上記ポリアルキレンオキシドがポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1316のいずれか一項に記載の接合体。
  18. 上記ポリエチレングリコールの平均分子量が350ダルトン〜100,000ダルトンの範囲である、請求項17に記載の接合体。
  19. 上記ポリエチレングリコールの平均分子量が5,000ダルトン〜40,000ダルトンの範囲である、請求項18に記載の接合体。
  20. 上記ポリエチレングリコールの平均分子量が20,000ダルトン〜40,000ダルトンの範囲である、請求項19に記載の接合体。
  21. 上記抗ウイルス・ポリペプチドが、アミド、第二級アミン、エステル、ジスルフィド、エーテル、チオエーテル、尿素、カルバミン酸塩からなるグループの中から選択した結合を通じて上記ポリアルキレンオキシドに共有結合している、請求項13に記載の接合体。
  22. 上記ポリエチレングリコールが1つ以上の分解可能な結合を含む、請求項17に記載の接合体。
  23. 治療または予防に有効な量の請求項13〜22のいずれか一項に記載したポリマー接合体と、医薬的に許容可能な基剤とを含む医薬組成物。
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