JP4902489B2 - 高強度Cr−Mo鋼の溶接金属 - Google Patents
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CP=[C]×[Nb]/([Cr]/52+[Mo]/96+[Nb]/93+[V]/51)×1000
式(1)
式(1)中、[C]、[Nb]、[Cr]、[Mo]、[Nb]および[V]は、溶接金属中のC、Nb、Cr、Mo、NbおよびVの含有率(質量%)を示す。
ここで、安定的とは、ステップクーリング後のシャルピー試験において、vE-50の最小値(min.)でも55J以上確保できることを言う。
12000[Si]+170[Mn]+150000[O]<9800
式(2)
Cは、溶接金属の焼入れ性に大きな影響を及ぼし、室温および高温における強度ならびに靱性を確保するために重要な役割を有する元素であり、過度の添加はCrを主成分とする炭化物量を増加させるため、脆化特性を劣化させる。そこで、溶接金属中のC含有量は0.04〜0.10質量%である。C含有量が0.04質量%未満であると、強度及び靱性が低下する。好ましくは0.05質量%以上である。また、0.10質量%を超えると、脆化特性が劣化する。好ましくは0.08質量%以下である。
Siは、脱酸作用により溶接金属を清浄にし歩留まった場合はフェライトを固溶強化させ、また、溶接ビードのなじみ性を改善する役割を有する元素である。そこで、溶接金属中のSi含有量は0.15〜0.5質量%である。溶接金属中のSi含有量が0.5質量%を超えると強度が高くなり靭性の劣化を招き、また、耐焼戻し脆化特性が低下する。好ましくは0.4質量%以下である。また、Si含有量が0.15質量%未満であると、溶接ビードのなじみ性が不十分であるため溶接の作業性が低下する。好ましくは0.2質量%以上である。
Mnは、溶接金属の靱性を改善する役割を有する元素であり、特に、Vを含有する溶接金属の靱性を改善する効果を有し、また、ステップクーリング前の溶接金属の靱性を確保するために重要な元素である。そこで、溶接金属中のMn含有量は0.5〜1.0質量%である。溶接金属中のMn含有量が1.0質量%を超えると焼戻し脆化特性が低下する。好ましくは0.9質量%以下である。また、Mn含有量が0.5質量%未満であると、靱性が不十分となる。好ましくは0.6質量%以上である。
Crは、耐熱性に優れた高強度Cr−Mo鋼の主成分であり、溶接金属の強度を確保するために重要な元素である。そこで、溶接金属中のCr含有量は2.00〜3.25質量である。溶接金属中のCr含有量が3.25質量%を超えると、焼入性が増大して靱性が低下するとともに、粒界に粗大炭化物が増加して焼戻し脆化特性が劣化する。好ましくは3.0質量%以下である。また、Cr含有量が2.00質量%未満であると、所望の強度を得ることができない。好ましくは2.1質量%以上である。
Moは、Crとともに、耐熱性に優れた高強度Cr−Mo鋼の主成分であり、溶接金属の機械的強度を確保するために重要な元素である。そこで、溶接金属中のMo含有量は0.9〜1.2質量%である。溶接金属中のMo含有量が1.2質量%を超えると、焼入性が増大して靱性が低下する。好ましくは1.1質量%以下である。また、Mo含有量が0.9質量未満であると、所望の強度を得ることができない。好ましくは1.0質量%以上である。
Nbは、その含有量が微量であっても、室温および高温における強度ならびにクリープ強度を改善する役割を有する元素である。そこで、溶接金属中のNb含有量は、0.01〜0.03質量%である。溶接金属中のNb含有量が0.03質量%を超えると、強度が高くなりすぎて、靱性が低下する。好ましくは0.025質量%以下である。また、Nb含有量が0.01質量%未満であると、室温および高温における強度ならびにクリープ強度を改善する効果が得られない。好ましくは0.015質量%以上である。
Vは、溶接金属中におけるSR処理後の粒内に微細なMC炭化物を優先的に析出させ、溶接金属の靱性および焼戻脆化特性を改善する役割を有する元素である。また、Vは溶接金属の室温及び高温強度並びにクリープ強度を高める効果も有している。そこで、溶接金属中のV含有量は、0.2〜0.7質量%である。溶接金属中のV含有量が0.7質量%を超えると、強度が高くなりすぎて、靱性及び耐焼戻し脆化特性が低下する。好ましくは0.6質量%以下である。また、V含有量が0.2質量%未満であると、靱性および焼戻脆化特性の改善効果を十分に得ることができない。好ましくは0.3質量%以上である。
Bは、溶接金属の靭性確保に有効な元素であり、さらに適量の含有により、Crを主成分とする炭化物量を低減させる役割を有する元素である。そこで、溶接金属中のB含有量は、0.003質量%以下とし、0質量%は含まない。溶接金属のB含有量が0.003質量%を超えると、溶接金属中に固溶したNを固定するため、結果として微細なMC炭化物を増加させることになる。好ましくは0.002質量%以下(0質量%含まない)である。
Oは、溶接金属の組織を微細化させて靱性の確保に有効な元素である。また、溶接金属中のOは、旧オーステナイト粒径の微細化による耐SR割れ性の改善にも有効な元素である。そこで、溶接金属中のO含有量は、0.02〜0.05質量%である。溶接金属中のO含有量が0.05質量%を超えると、酸化物系介在物が増加するため、靭性が低下する。好ましくは0.04質量%以下である。また、O含有量が0.02質量%未満であると、靱性の改善効果を得ることができない。好ましくは0.03質量%以上である。
CP=[C]×[Nb]/([Cr]/52+[Mo]/96+[Nb]/93+[V]/51)×1000
式(1)
式(1)中、[C]、[Nb]、[Cr]、[Mo]、[Nb]および[V]は、溶接金属中のC、Nb、Cr、Mo、NbおよびVの含有率(質量%)を示す。
12000[Si]+170[Mn]+150000[O]<9800
式(2)
すなわち、溶接金属において、酸化物系介在物の個数密度を支配するものは、酸素量と酸化物系介在物のサイズである。ここで、酸素は一定量必要なので、個数密度を低減するには、サイズを比較的大きくすればよい。また酸化物介在物のサイズは、酸化物系介在物の融点または界面エネルギーに依存するとされる。そこで、本発明においては、酸化物系介在物を構成する元素(=脱酸元素)はSi、Mnであり、これら両元素とOのバランスによって、形成される酸化物種を制御することで、酸化物介在物のサイズが制御でき、同程度の酸素量でも個数密度が制御できたものと考えられる。
この被覆アーク溶接方法は、必須成分として、C、Si、Mn、Cr、Mo、Nb、V、B、およびOを特定の量含有し、残部がFeおよび不可避的不純物で構成される溶接金属を形成するために、前記のC、Si、Mn、Cr、Mo、Nb、VおよびBの各成分と、残部がFeおよび不可避的不純物と、さらに、アーク安定剤及びスラグ生成剤等を含む被覆剤とを、固着剤によって心線に被覆させて構成される被覆アーク溶接棒を使用して被覆アーク溶接する方法である。このとき、溶接電流の好ましい範囲は、140〜190Aである。
Cは溶接金属の室温及び高温強度、並びに靱性を確保するために重要な元素であり、溶接金属中のC含有量を0.04〜0.10質量%にするために、歩留まりを考慮して溶接棒全体におけるC含有量を調整する必要がある。そこで、被覆アーク溶接棒中のC含有量は0.04〜0.12質量%にすることが好ましい。さらに好ましくはC含有量は0.05〜0.11質量%である。
Siはビードのなじみ性を改善する役割を有する元素であり、溶接金属中のSi含有量を0.15〜0.5質量%にするために、歩留まりを考慮して被覆アーク溶接棒全体におけるSi含有量を調整する必要がある。従って、被覆アーク溶接棒中のSi含有量は1.0〜1.8質量%にすることが好ましい。さらに好ましくは1.4〜1.7質量%である。
Mnは、特に、Vが添加された溶接金属の靱性を向上させる効果を有する成分であり、溶接金属中のMn含有量を0.5〜1.0質量%とするために、歩留まりを考慮して被覆アーク溶接棒全体におけるMn含有量を調整する必要がある。従って、被覆アーク溶接棒中のMn含有量は0.8〜1.8質量%にすることが好ましい。さらに好ましくは、1.0〜1.5質量%である。
Crは、耐熱性に優れた高強度Cr−Mo鋼の主成分であり、溶接金属の機械的強度を確保するために重要な元素であり、溶接金属中のCr含有量を2.00〜3.25質量%とするために、歩留まりを考慮して被覆アーク溶接棒全体のCr含有量を調整する必要がある。そこで、被覆アーク溶接棒におけるCr含有量は2.0〜3.3質量%にすることが好ましい。さらに好ましくは2.2〜3.0質量%である。
Moは、Crとともに、耐熱性に優れた高強度Cr−Mo鋼の主成分であり、溶接金属の機械的強度を確保するために重要な元素であり、溶接金属中のMo含有量を0.9〜1.2質量%とするために、歩留まりを考慮して被覆アーク溶接棒全体のMo含有量を調整する必要がある。そこで、被覆アーク溶接棒におけるMo含有量は0.9〜1.2質量%にすることが好ましい。さらに好ましくは1.0〜1.1質量%である。
Nbは、その含有量が微量であっても、室温および高温における強度ならびにクリープ強度を改善する役割を有する元素であり、溶接金属中のNb含有量を0.01〜0.03質量%とするために、歩留まりを考慮して被覆アーク溶接棒全体のNb含有量を調整する必要がある。そこで、被覆アーク溶接棒におけるNb含有量は0.04〜0.08質量%にすることが好ましい。さらに好ましくは0.05〜0.07質量%である。
Vは、溶接金属中におけるSR処理後の粒内に微細なMC炭化物を優先的に析出させ、溶接金属の靱性および焼戻脆化特性を改善する役割を有する元素であり、溶接金属中のV含有量を0.2〜0.7質量%とするために、歩留まりを考慮して被覆アーク溶接棒全体のV含有量を調整する必要がある。そこで、被覆アーク溶接棒におけるV含有量は0.3〜1.0質量%にすることが好ましい。さらに好ましくは0.4〜0.8質量%である。
Bは、溶接金属の靭性確保に有効な元素であり、さらに適量の含有により、Crを主成分とする炭化物量を低減させる役割を有する元素であり、溶接金属中のB含有量を0.003質量%以下とするために、歩留まりを考慮して被覆アーク溶接棒全体のB含有量を調整する必要がある。そこで、被覆アーク溶接棒におけるB含有量は0.0002〜0.005質量%にすることが好ましい。さらに好ましくは0.0002〜0.004質量%である。
CuおよびNiは、溶接金属の靱性を確保するために有効な元素であるが、焼戻し脆化を促進させる側面をも有する成分であり、溶接金属中のCu含有量およびNi含有量はそれぞれ0.05質量%未満に制限することが好ましい。そこで、被覆アーク溶接棒全体のCu含有量およびNi含有量をそれぞれ0.05質量%未満にすることが好ましい。さらに0.03質量%未満に制限することが好ましい。
PおよびSは、不純物として旧γ粒界に偏析し、焼戻し脆化を促進させる成分であり、溶接金属中のP含有量およびS含有量をそれぞれ0.012質量%未満に制限することが好ましい。そこで、被覆アーク溶接棒全体のP含有量およびS含有量をそれぞれ0.012質量%未満にすることが好ましい。さらに好ましくは0.010質量%未満に制限することが好ましい。
さらに、固着剤としては、珪酸ソーダ又は珪酸カリを含有する水ガラスを使用することができる。
直径が4.0mmの心線に、被覆材を被覆塗装した後に、乾燥・焼成して表1に示す成分組成を有する被覆アーク溶接棒とした。
溶接は、電流170A、電圧25Vで、8層16パスで行った。なお、予熱・パス間温度は200〜250℃とした。
得られた試験片について、吸光光度法(B)、燃焼-赤外線吸収法(C・S)、不活性ガス融解−熱伝導度法(N・O)、誘導結合プラズマ発光分光分析法(前述の元素以外)によって化学成分分析を行った。また、下記の方法にしたがって、溶接金属の被見面積1mm2における酸化物介在物の個数を測定した。
得られた溶接金属の中央部から試験片を切り出し、まず、走査型電子顕微鏡(CarlZeiss社製、SUPRA 35)を用いて、倍率1000倍で試験片を観察し、被見面積0.006mm2の画像を20視野撮影した。次に、得られた画像を画像解析ソフト(Media Cybernetic社製、Image−Pro Plus)を用いて解析し、酸化物径を算出し、直径1μm以上のものの個数密度(個/mm2)を算出した。
また、ステップクーリング後の試験片について、下記の表3に示す条件で電解抽出を行い、得られた残渣について、ICP発光分析法によって、Cr析出量、Nb析出量を分析した。
この図5から、直径1μm以上の酸化物介在物の個数が2000未満である実施例1〜4、および実施例6〜9の溶接金属は、vE-50の最小値(min.)が47(J)以上の結果を示し、良好な脆化特性を安定的に有することが分かる。これに対して、酸化物介在物の個数が2000未満である比較例1、3〜5および7〜8は、vE-50の最小値(min.)が47(J)以下の結果を示し、良好な脆化特性を安定的に有しないものであることが分かる。
2 裏当金
3 開先部
4 溶接金属
5 試験片
Claims (6)
- 被覆アーク溶接によって形成される溶接金属において、C:0.04〜0.10質量%、Si:0.15〜0.5質量%、Mn:0.5〜1.0質量%、Cr:2.00〜3.25質量%、Mo:0.9〜1.2質量%、Nb :0.01〜0.03質量%、V:0.2〜0.7質量%、B:0.003質量%以下(0質量%含まない)、およびO:0.02〜0.05質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、溶接金属原質部のみから電解抽出される残渣におけるCr析出量が0.3質量%未満、かつNb析出量が0.005質量%以上であることを特徴とする高強度Cr−Mo鋼の溶接金属。
- さらに、前記不可避的不純物におけるCuおよびNiの含有量がそれぞれ0.05質量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の高強度Cr−Mo鋼の溶接金属。
- さらに、前記不可避的不純物におけるPおよびSの含有量がそれぞれ0.012質量%未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高強度Cr−Mo鋼の溶接金属。
- 下記式(1)で算出されるパラメータCPが、5〜50であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度Cr−Mo鋼の溶接金属。
CP=[C]×[Nb]/([Cr]/52+[Mo]/96+[Nb]/93+[V]/51)×1000 式(1)
式(1)中、[C]、[Nb]、[Cr]、[Mo]、[Nb]および[V]は、溶接金属中のC、Nb、Cr、Mo、NbおよびVの含有率(質量%)を示す。 - 直径1μm以上の酸化物系介在物が、被見面積1mm2当り2000個未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度Cr−Mo鋼の溶接金属。
- 溶接金属中のSiの含有率[Si]、Mnの含有率[Mn]およびOの含有率[O]が、下記式(2)で表される関係を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度Cr−Mo鋼の溶接金属。
12000[Si]+170[Mn]+150000[O]<9800
式(2)
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