JP4902255B2 - 防水・止水材用改質アスファルト組成物、およびその製造方法 - Google Patents

防水・止水材用改質アスファルト組成物、およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、改質アスファルト組成物およびその製造方法に関し、さらに詳細には、重合体ラテックスに溶融アスファルトを添加したアスファルトエマルジョンに、軽量フィラーおよびポリイソシアネート化合物を配合してなり、軽量で各種構造物の防水材、止水材などを含む幅広い用途に有用な改質アスファルト組成物およびその製造方法に関する。
コンクリートビルの屋上や、産業廃棄物処分場、地下構築物などの土木建築用に使用される防水・止水材としては、主に(1)アスファルトと高分子ラテックスを主成分とするアスファルトエマルジョン、(2)セメントを主成分とするポリマーセメントモルタル、(3)ポリ塩化ビニル樹脂シートや、エチレンプロピレン系ゴムまたはスチレンブタジエン系ゴムの加硫ゴムシート、(4)ウレタン系ポリマーを用いたコーティング材などが使用されている。これらの防水・止水材については、近年における生産性向上、省力化、環境保全などに対するニーズの高まりを反映して、施工期間の短縮、メンテナンスの軽減、防水・止水性能の改善などに対する要求がますます厳しくなっている。しかしながら、従来の防水・止水材のうち、(1)アスファルトと高分子ラテックスを主成分とするアスファルトエマルジョンは、特に乾燥硬化速度が遅いため施工作業性が悪く、また下地への密着性も低い。また、(2)ポリマーセメントモルタルは、乾燥硬化速度が遅く、しかも材質的にも脆いため、防水・止水性能が十分とはいえない。また、(3)ポリ塩化ビニル樹脂シートや加硫ゴムシートのシート状防水材は、段差のある下地への密着性が悪く、そのため防水・止水性能が不十分となるのみならず、シートを加熱して下地へ密着させる際の安全性、作業性なども悪いのが欠点である。さらに、(4)ウレタン系ポリマーを用いたコーティング材は、塗膜の寸法安定性が悪く、その結果、防水・止水性能の面で満足できないものである。しかも、これらの防水・止水材は、防水・止水性能を向上させるために、通常、積層塗装されるが、現状の防水・止水材では乾燥硬化速度が遅いため、積層の作業工程に時間がかかり、生産性、省力化が悪くなる。また、地下構造物のみならず配筋組み立て時の防水層への接触など他種工による防水層への損傷、工具類の落下などによって防水層が破壊され性能が低下するなどの大きな問題も発生している。生産性、省力化向上には、アスファルトなどの瀝青乳剤中にセメントを添加したセメント入り瀝青乳剤に、水溶性ポリイソシアネートを配合した硬化性組成物も提案されているが(特許文献1:特公昭59−38990号公報参照)、該組成物は、セメントの硬化反応を利用するものであるため、十分硬化させるには、例えば24時間以上を要し、施工作業性に関する上記課題は依然解決されていない。また、作業時の防水層への衝撃に対して傷が付きにくく、防水・止水性能の両面で満足しうる防水・止水材の開発が強く望まれている。
特許文献2(特開平8−157553号公報)には、乾燥硬化性に優れ、その結果、積層塗装時間が短く、施工作業性に優れ、かつ防水・止水性能にも優れた改質アスファルト組成物が提案されている。しかしながら、このアスファルト組成物は比重が大きいため、厚みの付けにくい部分、例えばオーバーハングの下部などで、その部分にこの組成物を用いて厚みを付けようとすると、その周辺は自然に規定以上の厚みがついてしまい、最終的には、規定値以上の厚みは自重に耐えられなくなり、垂れが発生し、その部分は材料がなくなり、更に膜厚が薄くなる、という現象を生じやすい。
特公昭59−38990号公報 特開平8−157553号公報
本発明は、アスファルト組成物の比重を軽量化し、また、厚付けしても短時間で硬化・成膜し、低温下でも柔軟性を保持し、さらに耐衝撃性を付与した改質アスファルト組成物を提供することを目的とする。
本発明は、(A)(a1)重合体ラテックスを固形分換算で5〜90質量%、および(a2)アスファルト95〜10質量%[ただし、(a1)+(a2)=100質量%]を主成分とする改質アスファルトエマルジョンに対し、
(B)軽量フィラーを、(A)成分(固形分換算)100容積に対して、0.1〜2容積倍、ならびに
(C)ポリイソシアネート化合物を(A)成分(固形分換算)100質量部に対し0.1〜40質量部、
配合してなる改質アスファルト組成物に関する。
ここで、(A)成分は、好ましくは、(a1)重合体ラテックスと溶融された(a2)アスファルトを混合してなり、かつ(a1)重合体ラテックスのゲル分が60%以下である。
また、(A)成分の粘度は、好ましくは100〜50,000mPa・sである。
本発明の組成物においては、上記(A)成分の粘度が100〜50,000mPa・sとなるように、(A)成分中にさらに増粘剤を配合してもよい。
さらに、(B)軽量フィラーは、好ましくは嵩比重0.005〜0.5である。
次に、本発明は、上記(A)成分、(B)成分および(C)成分を、使用直前に調合する上記改質アスファルト組成物の製造方法に関する。
また、本発明は、(A)成分と(B)成分をあらかじめ混合し、使用直前にこれと(C)成分を調合してなる上記改質アスファルト組成物の製造方法に関する。
本発明の改質アスファルト組成物は、改質アスファルトに軽量フィラーを配合することにより、比重が軽量化できて、その分、厚付けが可能となり、耐衝撃性を向上させることができる。また、付加効果として消音性・断熱性も向上した防水・止水材が提供できる。
さらに、硬化剤にイソシアネート系を用いることにより、厚付けしても短時間で硬化・成膜し、低温下でも柔軟性を保持した組成物を提供することができる。
(A)改質アスファルトエマルジョン
本発明の(A)成分に用いられる(a1)重合体ラテックスとしては、例えばポリブタジエンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレンゴムラテックス、塩化ビニル系ラテックス、塩化ビニリデン系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体ラテックス、アクリレート−酢酸ビニル共重合体ラテックス、アクリレート−スチレン共重合体ラテックス、アクリレート−エチレン共重合体ラテックス、シリコーン−アクリレート共重合体ラテックス、オレフィン系ラテックス、ポリウレタンラテックスなどのゴムラテックスあるいは樹脂ラテックスを挙げることができる。また、これら重合体ラテックスは、カルボキシル基、アミド基、N−メチロール基、グリシジル基、水酸基、スルホン酸基などの官能基を少なくとも1種以上有することもできる。
本発明において、特に好ましい重合体ラテックスは、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスおよびカルボキシル変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスである。
ここで、(a1)重合体ラテックスのゲル分は、通常、60%以下、好ましくは0〜50%、さらに好ましくは0〜40%である。
ここで、ゲル分の測定は、トルエン不溶解分の測定で、(1)重合体ラテックスの塗膜を作製し、0.3gを三角フラスコに採取、(2)100mlのトルエンを加えて1時間攪拌し、(3)15時間±1時間放置、(4)再度、1時間攪拌して、ろ紙で全量ろ過し、(5)予め計量したアルミ皿に分取して、トルエンを乾燥させて、トルエンへの溶解量を求め、(6)トルエンの不溶解分を算出し求めた値である。ゲル分が60%を超えると、(a1)重合体ラテックスと(a2)アスファルトとを乳化してアスファルトエマルジョンを作製する場合に、高濃度のアスファルトエマルジョンを製造することができない。
なお、(a1)重合体ラテックスのゲル分を60%以下にするには、分子量の調整や官能基の調整などによって行なうことができる。
また、高ゲル分の重合体ラテックスと低ゲル分の重合体ラテックスを2種以上混合することで、平均のゲル分を60%以下にした重合体ラテックスを使用することができる。
なお、上記重合体ラテックスを構成する重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−80〜+10℃であり、さらに好ましくは−70〜0℃、特に好ましくは−65〜−10℃である。この場合、Tgが−80℃未満では、得られる改質アスファルト組成物の塗膜強度が低下し、また耐汚染性も不十分となり、一方+10℃を超えると、塗膜が硬くなり、耐寒性が低下する。ここで、本発明における重合体ラテックスのTgは、理学電気社製の示差走査熱量分析計(DSC)を用い、次の条件(i)
および(ii)で測定したものである。
(i) 重合体ラテックス約5gをガラス板に薄く引き伸し、25℃で7日間乾燥させ、重合体フィルムを得る。
(ii) 得られた乾燥重合体フィルムのTgを、昇温速度:20℃/分、雰囲気:窒素ガス、およびサンプル量20mgの条件で測定する。
上記重合体ラテックスの固形分は、通常、45〜75質量%である。
本発明において、重合体ラテックスは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
本発明における重合体ラテックスの使用量は、固形分として、アスファルトエマルジョン(固形分)に対して5〜90質量%であり、好ましくは30〜90質量%、さらに好ましくは50〜85質量%である。この場合、重合体ラテックスの使用量が5質量%未満では、最終的に得られる改質アスファルト組成物の塗膜の温度依存性が大きくなり、塗膜にふくれが生じやすくなり、また下地への密着性も低下し、一方90質量%を超えると、コストに見合う防水・止水性能が得られない。
なお、上記重合体ラテックスには、界面活性剤が配合されていてもよい。配合される界面活性剤としては、ロジン酸塩、脂肪酸塩、高級アルコール硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルジスルフォサクシネート、アルキルフォスフェート塩、ポリオキシエチレンサルフェート塩などのアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、ポリオキシアルキルアミンなどのカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアミンエステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルキルアルカノールアミド、アルキルポリグルコシド、アルキルグリセリンエーテルなどのノニオン性界面活性剤などを挙げることができる。また、上記界面活性剤は、親油性基がフッ素原子を有するフッ素系界面活性剤であることもできる。これらの界面活性剤のうち、ロジン酸塩、脂肪酸塩およびポリオキシエチレンサルフェート塩が好ましい。上記界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
界面活性剤の使用量は、改質アスファルトエマルジョン(固形分)に対して、好ましくは0.01〜5.0質量%であり、さらに好ましくは0.05〜4.5質量%、特に好ましくは0.1〜3.0質量%である。この場合、界面活性剤の使用量が0.01質量%未満では、アスファルトエマルジョンの経時的な粘度安定性が低下し、一方、5.0質量%を超えると、得られる改質アスファルト組成物の耐吸水性が低下し、初期の防水・止水性能を持続することが困難となる。
次に、本発明の(A)成分に用いられる(a2)アスファルトとしては、特に限定されるものではなく、天然アスファルトでも石油アスファルトでもよい。このようなアスファルトとしては、例えばアスファルテン、パラフィン、ナフテン、芳香族レジンなどを主成分とするスレートアスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルトなどを挙げることができる。
本発明に用いられる(a2)アスファルトの針入度は、通常、20〜200、好ましくは40〜150、さらに好ましくは60〜120である。針入度が20未満では、動粘度が高く、安定的なエマルジョンを作製することができず、一方、200を超えると、製品後の塗膜物性において、ベタツキが大きく、塗膜としての強度が発現しにくい。
ここで、針入度は、JIS K2207に準拠して測定した値である。
本発明における(a2)アスファルトの使用量は、(A)改質アスファルトエマルジョン中に、95〜10質量%、好ましくは90〜30質量%、さらに好ましくは85〜50質量%[ただし、(a1)+(a2)=100質量%]である。この場合、アスファルトの使用量が10質量%未満では、防水・止水性能が低下し、一方、95質量%を超えると、得られる改質アスファルト組成物の温度依存性が大きくなり、アスファルト改質としての柔軟性が得られず、また塗膜が経時変化しやすく、さらに低温における伸びが小さくなり脆い塗膜となる。
本発明における(A)改質アスファルトエマルジョンは、重合体ラテックス中に、例えば90〜150℃で加熱溶融したアスファルトを添加し、混合したのち、冷却することにより調製される。このように、加熱溶融したアスファルトを重合体ラテックス中に添加、混合することにより、予め調製されたアスファルトエマルジョン中に重合体ラテックスを添加、混合する場合にくらべて、特に防水・止水性能が改善される。
このようにして得られる(A)改質アスファルトエマルジョン中の粒子は、平均粒子径が1〜30μm、好ましくは3〜30μm、さらに好ましくは5〜20μmである。1μm未満では、高固形分(70質量%以上)のアスファルトエマルジョンが作製できず、一方、30μmを超えると、貯蔵安定性が損なわれる。
なお、(A)改質アスファルトエマルジョン中の粒子は、粒子径分布で1〜50μmに70%以上占めていることが好ましい。
ここで、粒子径は、マイクロトラックMT3300EXII(日機装社製)を用いて、体積平均50%での粒子径を測定した値である。
なお、(A)改質アスファルトエマルジョンの粒子径は、界面活性剤の添加量や乳化・分散時間により、容易に調整することができる。
このようにして調製された(A)改質アスファルトエマルジョンの粘度は、通常、100〜50,000mPa・s、好ましくは200〜30,000mPa・s、さらに好ましくは300〜20,000mPa・sである。100mPa・s未満では、軽量フィラーが局在化し易くなり、一方、50,000mPa・sを超えると、施工作業性が低下する。
上記粘度は、トキメック社製のB形回転粘度計を用いて測定された値である。
この粘度は、ポリカルボン酸系、ポリアクリル酸系、ポリエーテル系、水溶性ポリマーなどの増粘剤の添加により調整することができる。
なお、本発明における(A)アスファルトエマルジョンの全固形分は、通常、65〜90質量%であり、好ましくは70〜88質量%、さらに好ましくは75〜85質量%である。この場合、全固形分が65質量%未満では、硬化工程で発生するエマルジョンの水分が多く、成膜終了までに長時間を要し、得られる改質アスファルト組成物の全固形分も低くなり、その結果、乾燥硬化性が低下し、積層塗膜を作るための施工作業性が悪くなる。一方、90質量%を超えると、アスファルトエマルジョンが経時的に粘度変化を生じやすく、またアスファルトエマルジョンの粘度が高くなって、得られる改質アスファルト組成物の塗工適性も低下する。
なお、(A)改質アスファルトエマルジョンの塗膜の伸び率は、常態(23℃、湿度50%R.H.の雰囲気下)で300%以上、好ましくは500%以上、さらに好ましくは600%以上である。300%未満では、軽量フィラーを含有したときの柔軟性が低下する。
ここで、塗膜の伸び率の測定は、JIS A6021建築用塗膜防水材に準拠して測定された値である。
塗膜の伸び率を常態で300%以上にするには、重合体ラテックスの成分や改質アスファルトエマルジョンの(a1)成分と(a2)成分の比率によって容易に調整できる。
(B)軽量フィラー
本発明に用いられる(B)軽量フィラーは、本発明の改質アスファルト組成物において、組成物を軽量化するとともに、軽量フィラーが、外部から受けた衝撃を吸収し、空気層の介在による遮音、遮熱の効果を果たすものである。
(B)軽量フィラーとしては、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、カーボンバルーン、フェノールバルーン、アルミナバルーン、ポリスチレンバルーン、ポリエチレンバルーン、セラミックスビーズ、バーミキュライト、パーライト、熱膨張性マイクロカプセル、多孔質ケイ酸カルシウムなどが挙げられるが、ポリスチレンバルーン、ポリエチレンバルーンなどの弾性を有する材料が好ましい。
(B)軽量フィラーは、さらに好ましくは、非吸水状態のものである。このような(B)軽量フィラーは、吸水せず、防水性能を維持することができる。また、アスファルトエマルジョンと軽量フィラーを独立に存在させることができ、断熱効果を付与することができる。さらに、表面に官能基を付与することにより、改質アスファルトエマルジョンと軽量フィラーとの密着性を向上させることができる。
(B)軽量フィラーの市販品としては、積水化成品工業社製のエスレンビーズなどが挙げられる。
(B)軽量フィラーの嵩比重は、0.005〜0.5(発泡率で2〜200倍に相当)、好ましくは0.006〜0.1(発泡率で10〜150倍に相当)、さらに好ましくは0.05〜0.01(発泡率で20〜100倍に相当)である。0.005未満では、軽量フィラーが局在化し、均一に組成物中に存在しなくなり、0.5を超えると得られる組成物は垂直面への施工時に厚みが付き難い。
なお、(B)軽量フィラーの平均粒径は、通常、0.3〜3.0mm、好ましくは0.5〜2.5mm、さらに好ましくは0.8〜2.0mmであり、0.3mm未満では、得られる組成物を用いて施工しても厚み確保が難しく、また耐衝撃性が低下する。一方、3.0mmを超えると、得られる組成物を用いて施工しても、改質アスファルト層が部分的に薄くなり、連続した塗膜が形成しにくい。
また、(B)軽量フィラーのアスペクト比(長径/短径比)は、1〜2、好ましくは1〜1.8、さらに好ましくは1〜1.5程度である。2を超えると、連続層を形成し難く、連続した塗膜が形成しにくい。
ここで、上記平均粒径は、軽量フィラー粒子を任意に5回取り出し、50倍で拡大写真を撮り、それぞれ短辺と長辺の長さを求め、短辺と長辺の比率を算出し、5個の平均値を求めた値である。
(B)軽量フィラーの使用量は、(A)成分(固形分換算)100容積部に対し、0.1〜2容積倍、好ましくは0.5〜1.5容積倍、さらに好ましくは0.8〜1.2容積倍である。0.1容積倍未満では、得られる組成物を用いて施工しても、厚み確保が難しく、また耐衝撃性が低下する。一方、2容積倍を超えると、得られる組成物の柔軟性が確保できず、かつ連続層が形成しがたい。
(C)ポリイソシアネート化合物
次に、本発明において使用される(C)ポリイソシアネート化合物は、本発明のアスファルト組成物において、得られる組成物を施工することにより、厚さ5mm以上の柔軟性のある固化物を作製することができ、また短時間で固化物を形成するという役目を果たすものである。この(C)ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物である。
この(C)ポリイソシアネート化合物としては、例えばフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4'−ビフェニルジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニルジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;ビフェニルトリイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレントリイソシアネートなどのトリイソシアネート化合物;これらの重合物などを挙げることができる。
本発明におけるポリイソシアネート化合物の配合量は、改質アスファルトエマルジョン100質量部(固形分)に対して0.1〜40質量部であり、好ましくは0.3〜30質量部、さらに好ましくは0.5〜25質量部である。この場合、ポリイソシアネート化合物の配合量が0.1質量部未満では、得られる改質アスファルト組成物の乾燥硬化性が低く、積層塗工するのに時間がかかり、施工作業性が低下し、さらに厚付けしたときに成膜せず、一方、40質量部を超えると、塗膜中に水とイソシアネートの反応に起因する炭酸ガスが発生し、緻密な塗膜を形成せず、またアスファルトエマルジョンとの相溶性が悪くなり、その結果、得られる改質アスファルト組成物の粘度が経時的に変化しやすくなり、塗工適性が低下する。
本発明において、(C)ポリイソシアネート化合物は、アスファルトエマルジョンの調製後から最終組成物の使用直前までの適宜の段階で配合することができるが、最終組成物を例えば防水材として使用する直前に配合することが望ましい。
なお、本発明において、(A)成分と(C)成分からなる防水材組成物[上記(B)成分を除いたもの]は、(B)成分を含有していても、柔軟性を有する材料であり、該防水材単独で、JIS A6021に準拠して測定した伸び率は、300%以上、好ましくは500%以上である。伸び率が300%未満では、本発明により得られるアスファルト組成物は、衝撃負荷により、亀裂が発生する場合がある。この伸び率は、(A)成分中の重合体ラテックスの種類や量により、容易に調整することができる。
増粘剤
なお、本発明の改質アスファルト組成物は、(A)アスファルトエマルジョン調製時に増粘剤を添加することができる。この増粘剤は、(A)成分に添加することにより、軽量フィラーの局在化の防止や垂直面への厚塗り性の向上など作用効果をなすものである。増粘剤としては、メチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、カゼイン、ポリアクリル酸またはその誘導体を用いて乳化したブロック共重合体ラテックス(特公昭52−22651号公報)などのほか、水溶性ポリカルボン酸(塩)やカチオン系ポリマーであるジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロライド四級塩重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド四級塩重合物などが挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
増粘剤の使用量は、(A)成分の粘度が100〜50,000mPa・sとなる範囲で適宜使用することができる。
さらに、本発明の改質アスファルト組成物には、必要に応じて、セメント、石油樹脂、ロジン樹脂などの粘着付与剤;重油、ピッチ、タールなどの他の瀝青物質;炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、クレー、マイカ、ゴム粉などの(B)成分以外の充填剤;炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維などの補強材;硅砂、砕石、砂利などの骨材;酸化チタン、カーボンブラックなどの顔料;スチレン化フェノール、ジフェニルアミン、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノールなどの老化防止剤;ヒンダードアミン、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収剤;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、(ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバシペート、ジオクチルセバシペート)ポリエチレングリコール、ブチルセロソルブ、カルビトールアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどの可塑剤;トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの希釈剤;ジメチルポリシロキサン乳化物などの消泡剤;メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物;酸化亜鉛、酢酸カルシウム、酢酸ジルコニウム、アジリジン、メラミン樹脂などの架橋剤;ベンゾイソチアゾリン、メチルイソアゾリン、過酸化水素などの防腐剤;三酸化アンチモンなどの難燃剤;水酸化ナトリウム、ゼオライト、珪藻土などの発泡防止剤、保護コロイド、などを後添加し、性状を最適化することもできる。
組成物の調製
上記したように、本発明の改質アスファルト組成物においては、(C)ポリイソシアネート化合物は、アスファルトエマルジョンの調製後から最終組成物の使用直前までの適宜の段階で配合することができるが、最終組成物を例えば防水材として使用する場合は直前に配合することが望ましい。
従って、本発明の改質アスファルト組成物を調製するには、
(1)上記(A)成分(増粘剤を含む場合がある)、(B)成分および(C)成分を、使用直前に調合するか、
(2)(A)成分(増粘剤を含む場合がある)と(B)成分をあらかじめ混合し、使用直前にこれと(C)成分を調合することが好ましい。
本発明の改質アスファルト組成物を、例えば地上建造物の屋上防水材や地下構造物への外壁防水材として用いる場合の施工方法は、まずコンクリート下地に好ましくはアスファルトプライマーなどのプライマーを、通常、約0.1〜0.2kg/m塗布し、乾燥したのち、本発明の改質アスファルト組成物を、膜厚が、通常、約5〜20mmとなるように、1〜2回で積層塗布する。この塗布に際しては、刷毛、ローラー刷毛、コテ、スポンジバケなどの適宜の塗布手段や吹付け手段を用いることができる。なお、塗布後の乾燥に当っては、特に加熱を行なう必要はない。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例中における、部および%は特に断らないかぎり質量基準である。
以下の実施例において、使用した成分は、次のとおりである。
(A)成分
JSR 0561:JSR社製、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、固形分69質量%、ゲル含量=3%未満
JSR 0548:JSR社製、カルボン酸変性スチレン−ブタジエンゴムラテックスゴムラテックス、ゲル含量=85%
JSR 0858:JSR社製、スチレン−ブタジエンゴムラテックスゴムラテックス、ゲル含量=28%
JSR 2108:JSR社製、スチレン−ブタジエンゴムラテックスゴムラテックス、ゲル含量=3%未満
アスファルト:コスモアスファルト社製、針入度が80〜100のストレートアスファルト
(B)成分
φ1.5mmPSビーズ:積水化成品工業社製、エスレンHNB 30倍発泡品、嵩比重=0.03
φ3mmPSビーズ:積水化成品工業社製、エスレンHNB 50倍発泡品、嵩比重=0.05
セラミックスビーズ:サンケムテック社製、φ1.5mm、嵩比重=0.3
バーミキュライトGS:ニッタイ社製、嵩比重=0.14
パーライトL号:富士タルク工業社製、嵩比重=0.18
(C)成分
ポリイソシアネート化合物:日本ポリウレタン工業社製、(ウッドキュア300)
その他の添加剤
ポルトランドセメント:太平洋セメント社製、普通ポルトランドセメント
ポリカルボン酸ソーダ(増粘剤):イーテック社製、QL180
また、実施例、各種の測定項目は、次のようにして測定したものである。
(A)成分の粘度(mPa・s):
トキメック社製、B形回転粘度計を用いて測定した。
塗膜の作製厚み(mm):
剥離紙の上に15mm厚の型枠を作り、その中に改質アスファルト組成物を流し込んだ際の厚み。
重合体ラテックス中のゲル分の測定方法:
前掲
軽量フィラーの嵩比重の測定方法:
ヨシミツ社製の比重カップを用いて、水に対しての比重換算をして算出した。
耐衝撃性(耐衝撃試験):
1.試験体の作製
(1)剥離紙の上に、規定の厚みになるように型枠をつくり、200×300(mm)の大きさに防水材を均一に流し込む。
(2)23℃×50%R.H.雰囲気下で7日間養生させる。
2.試験方法
(1)図1のように試験体を設置し、20℃雰囲気下に1時間以上養生する。
(2)まず、高さ0.5mからおもりを落下させ、防水層に穴あきがなければ、1m、1.5mと高さを変更して、防水層への穴あき状態を確認する。
○:合格(耐衝撃性3、4を満足する)
△:合格下限(耐衝撃性2を満足する)
×:不合格(耐衝撃性1である)
折り曲げ性(柔軟性):
1-1.試験体の作製
(1)縦500×横500×厚み15(mm)の型枠に、均一に流し込む。
(2)23℃×50%R.H雰囲気下に7日間(以上)養生する。
(3)これを試験体とする。
1-2.試験片の作製
(1)試験体を幅30mm×長さ150mmでカットしたものを6個作製する。
1-3.試験方法
1-3-1.標準状態での折り曲げ試験
(1)23℃×60%R.H雰囲気下で図2のようにφ30mmの棒で折り曲げ、その時の塗膜の状態(亀裂発生の状態)を確認する。
○:合格(5回以上の折り曲げでも亀裂が発生しない)
△:合格下限(2〜4回で亀裂が発生する)
×:不合格(1回の折り曲げで亀裂が発生する)
硬化性:
(C)成分を混合して、硬化成膜(指触でエマルジョンが付かない)の状態を確認した。
○:合格(8時間以内に硬化する。)
△:合格下限(8時間以内に硬化せず、24時間以内に硬化する。)
×:不合格(24時間を超えても、液状部分がある。)
加圧透水試験:
1.試験体の作製
(1)縦500×横500×厚み15(mm)の型枠に、均一に流し込む。
(2)23℃×50%R.H雰囲気下に7日間(以上)養生する。
(3)これを試験体とする。
2.試験片の作製
(1)試験体をφ300mmでカットしたもの作製する。
(2)試験機のボルト穴部分をポンチなどで穴を開ける。
3.試験方法
(1)試験体を図3のように、加圧透水試験機に取り付ける。
(2)ボルトを締め込み、0.3MPaの水圧を1時間作用させ、試験機底部の穴から漏水が無いかを確認する。
(注)試験機のパッキン部分からの漏れがないように、常にボルトの締め込みを行う。
○:合格 (漏水がない。)
×:不合格(漏水する。)
垂れ(歩留まり性):200×300(mm)スレート板を垂直に立て、改質アスファルト組成物を塗布して、垂れが発生する厚みを測定した。
厚み5mm以上の歩留まり性を合格とする。
比重の測定方法:ヨシミツ社製の比重カップを用いて、水に対しての比重換算をして算出した。
塗膜の伸び率:JIS A6021に準拠し、(A)成分のみの塗膜を作製し、測定した。
伸び率300%以上を合格とする。
作業性:200mm×300mmのスレート板の両端に幅10mm×高さ15mmのスペーサーを取り付け、型枠を作り、軽量フィラー含有改質アスファルトエマルジョンに増粘剤およびポリイソシアネート化合物を混合し、その型枠の中に流し込み、コテで押さえ込み、この型枠に沿った状態にするまでの状態を判定した。
また、24時間後、型枠を脱型して、隅々まで材料が行渡っているか確認した。
○:合格(コテの押さえ込み10回以内で型枠にあった状態にできる。)
△:合格下限(コテの押さえ込みが10回を超え20回以内で型枠にあった状態にできる。)
×:不合格(コテの押さえ込みが20回を超えても型枠にあった状態にできない。または、脱型後、材料が行渡っていない。)
実施例1[(A)成分の種類を変えた実施例・比較例]
内容積1リットルのステンレス製容器に、表3に示す組成の材料を配合して、アスファルトエマルジョンを調製した。すなわち、(A)アスファルトエマルジョンは、まず重合体ラテックスを固形分換算で15質量部およびロジン酸カリウム系界面活性剤を重合体ラテックス+アスファルト=100質量部に対して0.9質量部、ステンレス製容器に配合し、ラボスターラーにて300rpmで攪拌しつつ、50℃まで加温したのち、この液中に、攪拌下で、130℃にて加熱溶融したストレートアスファルトを85質量部徐々に添加し、その後、所定の固形分(80質量%)にするために水、さらに増粘剤としてポリカルボン酸ソーダ2質量部を添加し、冷却して調製した。このようにして調製された(A)アスファルトエマルジョンに、使用直前に、(B)軽量フィラーとしてφ1.5mmPSビーズを(A)成分/(B)成分の容積比で1/1、および(C)ポリイソシアネート化合物を10質量部、表3のように加えて、評価した。結果を表3に示す。なお、表3中、(A)成分の粘度は、増粘剤を加えない時点での(A)成分単独の粘度である。
実施例2〜7、比較例1〜2
表3に示す配合処方で、実施例1と同様にしてアスファルト組成物を調製し、評価した。結果を表3に示す。
比較例1は重合体ラテックスを含まず、溶融アスファルトのみで作製した。
比較例2は、溶融アスファルトを含まず、重合体ラテックスのみで作製した。
実施例8〜14、比較例3〜4[(B)成分を変えた実施例・比較例]
表4の配合処方とする以外は、実施例1と同様にして、アスファルト組成物を調製し、評価した。結果を表4に示す。なお、表4の実施例2、表5の実施例2は、表3の実施例2と同じである。
実施例15〜19、比較例5〜7
増粘剤を添加し、あるいは添加せずに、表5に示す配合処方とする以外は、実施例1と同様にして、アスファルト組成物を調製し、評価した。結果を表5に示す。
なお、増粘剤(ポリカルボン酸ソーダ、イーテック社製のQL180)の添加は、(A)成分調製時に、ラボスターラーで攪拌しつつ目標粘度になるまで添加して行った。
なお、実施例15〜19、比較例5〜7に用いられた(A)改質アスファルトエマルジョンは同じ組成であり、当該エマルジョンの粒子径は、表2のとおりであった。
本発明の改質アスファルト組成物は、コンクリートビルなどの地上建造物の屋上や壁面、地下鉄やトンネルなどの地下構築物の壁面、産業廃棄物処理場の法面や底面などに使用される防水材あるいは止水材;セメントコンクリート、セメント二次製品、陶磁器、骨材、木材、紙、金属、プラスチック、ゴム、ガラス、繊維などに使用される結合剤、接着剤、保護コーティング材あるいはグラウト材;シーリング材;道路舗装用バインダーなどとして有用である。
耐衝撃試験の概略図である。 折り曲げ試験の概略図である。 加圧透水試験の概略図である。

Claims (7)

  1. (A)(a1)重合体ラテックスを固形分換算で5〜90質量%、および(a2)アスファルト95〜10質量%[ただし、(a1)+(a2)=100質量%]を主成分とする改質アスファルトエマルジョンに対し、
    (B)ポリスチレンバルーンおよびポリエチレンバルーンから選ばれた軽量フィラーを、(A)成分(固形分換算)100容積に対して、0.5〜2容積倍、ならびに
    (C)ポリイソシアネート化合物を(A)成分(固形分換算)100質量部に対し0.1〜40質量部、
    配合してなる防水・止水材用改質アスファルト組成物。
  2. (A)成分が(a1)重合体ラテックスと溶融された(a2)アスファルトを混合してなり、かつ(a1)重合体ラテックスのゲル分が60%以下である請求項1記載の防水・止水材用改質アスファルト組成物。
  3. (A)成分の粘度が100〜50,000mPa・sである請求項1または2に記載の防水・止水材用改質アスファルト組成物。
  4. (A)成分の粘度が100〜50,000mPa・sとなるように、(A)成分中にさらに増粘剤を配合してなる請求項1〜3いずれかに記載の防水・止水材用改質アスファルト組成物。
  5. (B)軽量フィラーが嵩比重0.006〜0.1である請求項1〜4いずれかに記載の改質アスファルト組成物。
  6. (A)成分、(B)成分および(C)成分を、使用直前に調合する請求項1〜5いずれかに記載の防水・止水材用改質アスファルト組成物の製造方法。
  7. (A)成分と(B)成分をあらかじめ混合し、使用直前にこれと(C)成分を調合する請求項1〜5いずれかに記載の防水・止水材用改質アスファルト組成物の製造方法。
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