JP4901486B2 - Pid制御方法及びpid制御装置 - Google Patents
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請求項1は、予め設定される目標値SVと制御対象から得られる測定値PVとの偏差eにより操作量を算出するPID制御方法において、
前記制御対象に基づいて設定されるパラメータにより決定された制御可能範囲内において、前記目標値SVと前記測定値PVとの前記偏差eより偏差変化速度Δeを決定し、
前記偏差変化速度Δeから偏差変化速度の最大値Δe max を決定し、
前記偏差変化速度の最大値Δe max 、一次遅れ定数T、及び前記測定値PVが前記制御可能範囲に達してからの時間t、から以下の数式により、前記偏差変化速度の最大値Δe max 、前記偏差e、ARW及び比例帯に基づいてオーバーシュートを生じさせないで前記目標値SVに到達することのできる理想偏差変化速度R IDEAL を算出し、前記偏差変化速度Δeと前記理想偏差変化速度R IDEAL とに基づいて補正偏差e’を算出してこの補正偏差e’をI演算に用いることを特徴とするPID制御方法であり、
請求項2は、
予め設定される目標値SVと制御対象から得られる測定値PVとの偏差eにより操作量を算出するPID制御装置において、
前記制御対象に基づいて設定されるパラメータより制御可能範囲を決定するアンチリセットワインドアップ記憶器及び比例帯記憶器と、
前記制御可能範囲内において、前記目標値SVと前記測定値PVとの前記偏差eより偏差変化速度Δeを決定する偏差変化速度算出器と、
前記偏差変化速度Δeから偏差変化速度の最大値Δe max を決定する最大偏差変化速度記憶器と、
前記偏差変化速度の最大値Δe max 、前記偏差e、一次遅れ定数T、及び前記測定値PVが前記制御可能範囲に達してからの時間t、から以下の数式により、前記偏差変化速度の最大値Δe max 、前記偏差e、ARW及び比例帯に基づいてオーバーシュートを生じさせないで前記目標値SVに到達することのできる理想偏差変化速度R IDEAL を算出する理想偏差変化速度算出器と、
前記偏差変化速度Δeと前記理想偏差変化速度R IDEAL とに基づいて補正偏差e’を算出してこの補正偏差e’をI演算に出力する偏差補正器とを備えることを特徴とするPID制御装置である。
(1)目標値SVを中心に規定値I0を加算又は減算した範囲を制御可能範囲とする。
(2)I0は、例えばPbとARWとの積であり、ARWが最大値100%をとるとき、Pbと同値となるとする。
(3)前記条件を前提において、制御可能範囲での最適な測定値の変化は一次遅れに従う形であると仮定する。
(4)前記(3)を満たす場合、測定値PVが制御可能範囲に達してからの時間tと測定値y(t)の関係式は以下の式となる。これが、オーバーシュートを防ぎつつ目標値に到達することのできる測定値の条件となり、図2に式(1)のグラフを示す。
(5)前記式(1)から、時間tでの測定値の変化速度Rは以下の式となる。
ここで、この発明のPID制御装置及びPID制御方法において、P演算器、I演算器及びD演算器で行われる演算は、図4に一例で示されるような従来のPID制御装置及びPID制御方法で行われる演算とほぼ同様である。前記従来のPID制御装置及びPID制御方法で行われる演算とは、詳しくは、P演算器では、比例帯Pb及び測定値PVと目標値SVとの偏差eに基づいて制御操作量を決定し、I演算器では、偏差eを積分した積分値、すなわち偏差の総和と積分時間Itとに基づいて制御操作量を決定し、D演算器では、予め設定される微分サンプリング時間ΔDt毎の偏差eを微分した微分値と微分時間とに基づいて制御操作量を決定するという演算である。この発明のPID制御装置及びPID制御方法においては、I演算器に入力される偏差eが補正偏差e’に変更されている点が重要である。
ここで目標値は、制御対象における制御される物理量についての、実現しようとする値である。その物理量として例えば温度、圧力等を挙げることができる。制御対象としては、例えば温度の制御を必要とする装置例えば恒温槽、反応槽、一定温度に維持されねばならない部屋例えば冷凍室、リビングルーム、又は寝室等、一定温度の環境に維持されねばならない機械、器具、装置その他の物等を挙げることができる。
目標値は、通常、この目標値を入力する入力手段により入力されて目標値記憶手段に格納される。言い換えると、この目標値記憶手段は、例えば通信又はキーボード等の入力手段を通じて目標値として入力された設定値を記憶するメモリーを具えて成る。
測定値記憶手段は、測定対象において経時的に測定される物理量を測定値として一定期間一時的に記憶するメモリーを具えて成る。測定対象における物理量の測定は各種のセンサーにより行われる。例えば測定対象において測定されるべき物理量が温度である場合には、測定値は、温度を電気信号として出力することのできる温度センサーにより測定される。偏差算出器は、目標値記憶手段に格納されている測定対象についての設定された目標値と、測定値とを比較してその偏差を出力する。偏差は、測定値毎に演算されて偏差算出器に備えられたメモリーに一定期間格納される。
理想偏差変化速度算出器12では、前記偏差e、前記最大偏差変化速度Δemax、制御可能範囲を示す値I0(例えば比例帯記憶器13で制御対象9によって決定される比例帯及びARW記憶器14から出力されるARWとの積)が入力され、式(5)より理想的な偏差変化速度RIDEALを算出する。ここで、比例帯記憶器は、一般的にいうと、予め設定された比例帯を記憶するメモリーである。この比例帯は、比例制御、すなわちP制御と呼ばれる制御の制御範囲を示し、測定対象によって予め決定される値である。この比例帯は入力手段、例えば通信又はキーボード等を通じて比例帯記憶器に格納される。また、ARW記憶器は、一般的にいうと、積分動作を有効とする範囲を限定してオーバーシュートを未然に防ぐために積分動作における偏差の積算を開始する偏差の値を記憶するメモリーであり、測定対象に応じて予め決定される値である。このARWは、例えば通信又はキーボード等の入力手段により入力されている。ここで、前記比例帯及びARWは、自動的にPID制御のパラメータを算出するオートチューニング等により決定され、例えばこの発明のPID制御装置及びPID制御方法を温度制御に用いる場合には、制御対象の加熱又は放熱特性等を考慮して決定される。
式(6)の補助係数Fは、式(5)から導出される理想的な偏差変化速度RIDEALが、実際の偏差変化速度Δeと比べてどの程度差異があるかに応じて決定される。例えば、前記補正偏差e’を算出する場合に、仮に偏差eが正の値であっても、重み付けを大きくすることにより補正偏差e’を負にすることができ、偏差変化速度Δeを理想的な偏差変化速度RIDEALに近づけることができる。
更に言うと、この発明のPID制御装置及びPID制御方法は、図2に示されるグラフに沿って制御するのではなく、実際の偏差変化速度Δeと理想的な偏差変化速度RIDEALとを比較し、その測定時点における偏差eを補正することにより、結果的に測定値PVが図2に示されるグラフの変位に漸近していくこととなる。
この発明のPID制御装置及びPID制御方法を用いて、図1に従って温度制御を行った。
制御条件
・制御対象 25×20×100mmの真鍮製角型ブロック
・ヒーター容量 200W
・初期温度 25〜28℃
・制御機器設定 目標値(SV) 100℃
比例帯(Pb) 30℃
積分時間(It) 100秒
微分時間(Dt) 12.5秒
ARW 100%
制御レベル(重み付け) 5
実施例の操作手順を以下に説明する。
制御対象から得られた測定値3と目標値2との偏差eを、偏差算出器4で算出し、P演算器5、D演算器6、偏差変化速度算出器10、理想偏差変化速度算出器12に出力する。
P演算器5は、一般的なP制御を行う。
D演算器6は、一般的なD制御を行う。
偏差変化速度算出器10は、前回のサンプリングで得た偏差と今回得た偏差を比較し、偏差変化速度Δeを算出し、最大偏差変化速度記憶器11、偏差補正器15に出力する。
最大偏差変化速度記憶器11は、現時点で最も大きい偏差変化速度と今回得た偏差変化速度を比較し、今回の偏差変化速度が大きければ、最大偏差変化速度を更新し、理想偏差変化速度算出器に出力する。
理想偏差変化速度算出器12は、偏差、偏差変化速度、最大偏差変化速度及びI0(この場合はARW記憶器14と比例帯記憶器13の積)から、理想的な偏差変化速度RIDEALを算出し、偏差補正器15に出力する。
偏差補正器15は、偏差変化速度と理想的な偏差変化速度とを比較し、制御レベル記憶器16で得られた重み付けをもって補正偏差e’を得、I演算器に出力する。
I演算器は、得られた偏差e’を偏差の総和Σeに加算し、積分時間It、偏差の総和Σe、比例帯PbからI制御による操作量を算出し、制御演算器8に出力する。
制御演算器8は、比較例と同じ、一般的なPID制御の処理を行う。
図4に示される従来のPID制御方法及びPID制御装置を用いてシミュレーションを行った。詳しくは、図1における偏差変化速度算出器10、最大偏差変化速度算出器11、理想偏差変化速度算出器12及び偏差補正器15を採用せず、偏差算出器4から偏差eを補正することなくI演算器7に直接出力して温度制御シミュレーションを行った。
制御条件
・制御対象 25×20×100mmの真鍮製角型ブロック
・ヒーター容量 200W
・初期温度 25〜28℃
・制御機器設定 目標値(SV) 100℃
比例帯(Pb) 30℃
積分時間(It) 100秒
微分時間(Dt) 12.5秒
ARW 100%
比較例の操作手順を以下に説明する。
制御対象から得られた測定値3と目標値2の偏差eを、偏差算出器4で算出し、P演算器5、D演算器6、I演算器7に出力する。
P演算器5は、得られた偏差eと比例帯記憶器13に記憶された比例帯(Pb)とを比較し、P演算による操作量を算出し、制御演算器8に出力する。
D演算器6は、微分サンプリングΔDt(D制御が独自に持つサンプリング時間である。)ごとに、偏差eと、前回サンプリング時に得た前回の偏差e2から、微分サンプリングごとの偏差の変化量を演算し、その変化量と微分時間Dt、前回のD制御による操作量Der2、比例帯PbからD制御による操作量を算出し、制御演算器8に出力する。
I演算器は、得られた偏差eを偏差の総和Σeに加算し、積分時間It、偏差の総和Σe、比例帯PbからI制御による操作量を算出し、制御演算器8に出力する。
制御演算器8は、P,D,I演算器から出力された操作量を加算し、リミットなどの処理を経て制御対象に出力する。
2 目標値記憶手段
3 測定値記憶手段
4 偏差算出器
5 P演算器
6 D演算器
7 I演算器
8 制御演算器
9 制御対象
10 偏差変化速度算出器
11 最大偏差変化速度算出器
12 理想偏差変化速度算出器
13 比例帯記憶器
14 ARW記憶器
15 偏差補正器
16 制御レベル記憶器
Claims (2)
- 予め設定される目標値SVと制御対象から得られる測定値PVとの偏差eにより操作量を算出するPID制御方法において、
前記制御対象に基づいて設定されるパラメータにより決定された制御可能範囲内において、前記目標値SVと前記測定値PVとの前記偏差eより偏差変化速度Δeを決定し、
前記偏差変化速度Δeから偏差変化速度の最大値Δe max を決定し、
前記偏差変化速度の最大値Δe max 、一次遅れ定数T、及び前記測定値PVが前記制御可能範囲に達してからの時間t、から以下の数式により、前記偏差変化速度の最大値Δe max 、前記偏差e、ARW及び比例帯に基づいてオーバーシュートを生じさせないで前記目標値SVに到達することのできる理想偏差変化速度R IDEAL を算出し、前記偏差変化速度Δeと前記理想偏差変化速度R IDEAL とに基づいて補正偏差e’を算出してこの補正偏差e’をI演算に用いることを特徴とするPID制御方法。
- 予め設定される目標値SVと制御対象から得られる測定値PVとの偏差eにより操作量を算出するPID制御装置において、
前記制御対象に基づいて設定されるパラメータより制御可能範囲を決定するアンチリセットワインドアップ記憶器及び比例帯記憶器と、
前記制御可能範囲内において、前記目標値SVと前記測定値PVとの前記偏差eより偏差変化速度Δeを決定する偏差変化速度算出器と、
前記偏差変化速度Δeから偏差変化速度の最大値Δe max を決定する最大偏差変化速度記憶器と、
前記偏差変化速度の最大値Δe max 、前記偏差e、一次遅れ定数T、及び前記測定値PVが前記制御可能範囲に達してからの時間t、から以下の数式により、前記偏差変化速度の最大値Δe max 、前記偏差e、ARW及び比例帯に基づいてオーバーシュートを生じさせないで前記目標値SVに到達することのできる理想偏差変化速度R IDEAL を算出する理想偏差変化速度算出器と、
前記偏差変化速度Δeと前記理想偏差変化速度R IDEAL とに基づいて補正偏差e’を算出してこの補正偏差e’をI演算に出力する偏差補正器とを備えることを特徴とするPID制御装置。
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JP2007000053A JP4901486B2 (ja) | 2007-01-04 | 2007-01-04 | Pid制御方法及びpid制御装置 |
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