JP4900162B2 - トルクリミッター付き一方向クラッチ - Google Patents
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例えば、エンジン補機が空調用圧縮機である場合、エンジンのクランクシャフトのトルクが伝達される伝動ベルトが掛け渡されるプーリと、空調用圧縮機の回転軸との間に一方向クラッチが配設され、プーリから回転軸へトルクを伝達させたり遮断させることによってエンジンの回転変動を吸収するようになっている。
また、プーリから回転軸へ所定値以上のトルクが作用したときにトルク伝達を遮断するトルクリミッター付き一方向クラッチが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示されたようなトルクリミッター付き一方向クラッチにおいては、図6に示すように、一方向クラッチの外輪体141と内輪体142との対向周面のうち、一方の周面、例えば、内輪体142の外周面に外輪体141の内周面と協働して複数のくさび状空間を周方向に所定間隔を隔てて形成するカム面143が形成されている。
また、複数のくさび空間には、これと同数のローラ161と、これら各ローラ161をくさび状空間に噛み込むロック方向に個別に付勢するコイルばね160とが保持器150のポケットに収納された状態で配設されている。
また、カム面143の周方向一側に隣接してトルクリミット用凹部146が形成され、外輪体141と内輪体142との間に所定値以上のトルクが作用したときに、ローラ161がカム面143の一側を乗り越えて転動しトルクリミット用凹部146内に受け入れられることで外輪体141と内輪体142とのトルク伝達を遮断するようになっている。
また、外輪体141と内輪体142との間に所定値以上のトルクが作用し、ローラ161がカム面143を乗り越えて転動しトルクリミット用凹部146内に受け入れられる際、ローラ161が保持器150の柱部152の一側面に当たりながらトルクリミット用凹部146内に転動する。このため、内輪体142に対し保持器150がフリー方向及びロック方向の両方向に回り止めされていると、保持器150が変形されて損傷される恐れがある。
保持器150の変形を回避するため、保持器150のフリー方向への回動は阻止し、ロック方向への回動を所定角度の範囲において許容する構造にしなければならなず、構造が複雑化し、内輪体142や保持器150の製作が厄介となり、コスト高となる。
前記複数のくさび空間には、これと同数のローラと、これら各ローラを前記くさび状空間に噛み込むロック方向に個別に付勢するコイルばねとが保持器のポケットに収納された状態で配設され、
前記一方の部材の前記カム面の周方向一側にはトルクリミット用凹部が形成され、前記内輪体と前記外輪体との間に所定値以上のトルクが作用したときに、前記ローラが前記カム面を乗り越えて転動し前記トルクリミット用凹部内に受け入れられることで前記内輪体と前記外輪体とのトルク伝達を遮断するトルクリミッター付き一方向クラッチであって、
前記カム面及び前記トルクリミット用凹部がそれぞれ形成される一方の部材の周面に対向する前記保持器の周面には、前記トルクリミット用凹部の一側面に当接することで前記保持器のフリー方向への回動を阻止して前記コイルばねの反力を受ける係合突起が突設される一方、
前記トルクリミット用凹部は、前記カム面上から前記トルクリミット用凹部内に配置されたときの前記ローラの内輪体に対するころがり公転角度に対応して前記係合突起が移動可能な形状に形成されることで、前記ローラの公転角度に対応して前記保持器のロック方向への回動が許容されることを特徴とする。
内輪体と外輪体との間に所定値以上のトルクが作用したときには、ローラがカム面を乗り越えて転動しトルクリミット用凹部内に受け入れられる。これによって、内輪体と外輪体とのトルク伝達が遮断される。
この際、保持器のポケットを区画形成している柱部の一側面にローラが当たった状態でローラがトルクリミット用凹部内に転動される。すると、ローラの変位角度に相当する角度において、保持器の係合突起がトルクリミット用凹部内を移動すると共に、保持器がロック方向へ回動される。このため、保持器の変形や損傷を防止することができる。
この発明の実施例1を図1〜図5にしたがって説明する。
図1はこの発明の実施例1に係るトルクリミッター付き一方向クラッチを備えたプーリユニットを示す側断面図である。図2はトルクリミッター付き一方向クラッチの横断面図である。図3は保持器のポケットにローラ及びコイルばねが収納された状態を拡大して示す平面図である。図4は保持器のポケットにローラ及びコイルばねが収納された状態を拡大して示す横断面図である。図5はローラがトルクリミット用凹部に配置された状態を示す説明図である。
また、プーリ11の外周面には伝動ベルト18が掛け渡される断面波形状のベルト溝12が形成されている。なお、伝動ベルト18は、車載エンジンのクランクシャフトのプーリに掛け渡され、クランクシャフトのトルクをプーリ11に伝達するようになっている。
そして、複列の転がり軸受20は、その内輪22が圧縮機1側の突出筒部3の外周面に圧入され、かつ止め輪27によって抜け止めされる一方、外輪21がプーリ11側の筒状体13の内周面に圧入されて取り付けられている。
そして、一方向クラッチ40は、その内輪体42がプーリ11側の筒状体13の外周面に圧入され、かつ止め輪28によって抜け止めされている。
一方、圧縮機1側の回転軸4の端部寄り外周面には、環状部材30がその中心部に形成されたボス部31においてトルク伝達可能に嵌挿され、回転軸4の軸端部から一体同心に突出された雄ネジ部にナット5が締め付けられることによって、環状部材30のボス部31が固定されている。そして、一方向クラッチ40の外輪体41は、環状部材30の外周部に適宜の連結部材によってトルク伝達可能に連結されている。これによって、プーリ11側からのトルクが、一方向クラッチ40と環状部材30を介して圧縮機1側の回転軸4に伝達されるようになっている。
この実施例1において、外輪体41と、内輪体42との対向周面の間に複数(図2では6個)のくさび状空間を周方向に所定間隔を隔てて形成するための平坦面(又は曲面)のカム面43が内輪体42の外周面の周方向に所定間隔を隔てて形成される一方、外輪体41の内周面は円形をなしている。
保持器50の各柱部52の一側面(くさび空間の狭い側に対向する面)には、コイルばね45の基端巻回部が嵌挿される突起53が突設されている。
一方、トルクリミット用凹部46は、カム面43上からトルクリミット用凹部46内に配置されたときのローラ61の内輪体42に対するころがり公転角度に対応して係合突起55が移動可能な略円弧形状に形成されている。これによって、ローラ61の公転角度に対応して保持器50のロック方向への回動が許容されるようになっている。なお、ローラ61の内輪体42に対するころがり公転角度は、カム面43上からトルクリミット用凹部46内へのローラ変位角度に相当する。
そして、ローラ61がトルクリミット用凹部46内に配置されたときに、転がり軸受70によって、外輪体41と内輪体42とを同心上に保持するようになっている。
したがって、エンジンの作動時において、クランクシャフトのトルクが伝動ベルト18によってプーリ11に伝達されると、プーリ11と一体に回転する筒状体13と共に、トルクリミッター付き一方向クラッチ40の内輪体42が回転される。この内輪体42のトルクは、ローラ61によって外輪体41に伝達され、外輪体41と一体に回転する環状部材30によって圧縮機1の回転軸4にトルク伝達されて回転軸4が回転される。
すなわち、エンジンの作動時において、プーリ11の回転速度が回転軸4の回転速度よりも速いときには、トルクリミッター付き一方向クラッチ40がロック状態となるので、回転軸4はプーリ11と一体回転する。
また、プーリ11の回転速度が回転軸4の回転速度よりも遅くなると、トルクリミッター付き一方向クラッチ40のローラ61がロック位置から外れてくさび状空間の広い側へ移動してフリー状態に切替わる。これにより、プーリ11の回転変動が吸収される。
この場合、ローラ61がカム面43の一側を乗り越えて転動しトルクリミット用凹部46内に受け入れられて配置される。そして、ローラ61がトルクリミット用凹部46内に配置されることによって、プーリ11側から回転軸4へのトルク伝達が遮断される。
また、トルクリミット用凹部46は、カム面43上からトルクリミット用凹部46内に配置されたときのローラ61の変位角度に対応して係合突起55が移動可能な略円弧形状に形成されている。
このため、外輪体41と内輪体42との間に所定値以上のトルク(負荷トルク)が作用し、ローラ61がカム面43の一側を乗り越えてトルクリミット用凹部46内に配置される際、ローラ61が保持器50の柱部52の一側面に当たった後は、図5に示すように、ローラ61と共に保持器50が同方向(ロック方向)へ回動される。
前記したようにこの実施例1においては、保持器50の内周面の係合突起55と、内輪体42の外周面のトルクリミット用凹部46による簡単な構造によって、保持器50のフリー方向への回動を阻止してコイルばね60の反力を受け、ロック方向への回動は所定角度の範囲において許容することができ、保持器50の変形や損傷を防止することができる。
例えば、前記実施例1においては、内輪体42の外周面にカム面43及びトルクリミット用凹部46を形成して外輪体41の内周面とカム面43によってくさび状空間を形成したが、外輪体41の内周面にカム面及びトルクリミット用凹部を形成してもこの発明を実施可能である。
但し、この場合、外輪体41の内周面のトルクリミット用凹部に対応して保持器50の外周面に係合突起が形成される。
2 ケーシング
3 突出筒部
4 回転軸
10 プーリユニット
11 プーリ
20 複列の転がり軸受
40 トルクリミッター付き一方向クラッチ
41 外輪体
42 内輪体
43 カム面
46 トルクリミット用凹部
50 保持器
52 柱部
55 係合突起
60 コイルばね
61 ローラ
Claims (1)
- 径方向内外に同心状に配設される内輪体と外輪体とを同期回転させるロック状態と相対回転させるフリー状態とに切り換えるために、前記内輪体と前記外輪体との両部材の対向周面のうち、一方の部材の周面には他方の部材の周面と協働して複数のくさび状空間を周方向に所定間隔を隔てて形成するカム面が形成され、
前記複数のくさび空間には、これと同数のローラと、これら各ローラを前記くさび状空間に噛み込むロック方向に個別に付勢するコイルばねとが保持器のポケットに収納された状態で配設され、
前記一方の部材の前記カム面の周方向一側にはトルクリミット用凹部が形成され、前記内輪体と前記外輪体との間に所定値以上のトルクが作用したときに、前記ローラが前記カム面を乗り越えて転動し前記トルクリミット用凹部内に受け入れられることで前記内輪体と前記外輪体とのトルク伝達を遮断するトルクリミッター付き一方向クラッチであって、
前記カム面及び前記トルクリミット用凹部がそれぞれ形成される一方の部材の周面に対向する前記保持器の周面には、前記トルクリミット用凹部の一側面に当接することで前記保持器のフリー方向への回動を阻止して前記コイルばねの反力を受ける係合突起が突設される一方、
前記トルクリミット用凹部は、前記カム面上から前記トルクリミット用凹部内に配置されたときの前記ローラの内輪体に対するころがり公転角度に対応して前記係合突起が移動可能な形状に形成されることで、前記ローラの公転角度に対応して前記保持器のロック方向への回動が許容されることを特徴とするトルクリミッター付き一方向クラッチ。
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