JP4899972B2 - 不良充填反応管の特定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、反応原料ガスを供給しながら気相接触反応を行うときに用いられる触媒等の固形充填物が充填された多数の反応管を含む固定床管型反応器(多管式反応器)において、不良充填が検知された反応管を特定する方法、及びこの方法を用いた、不良充填が検知された反応管から固形充填物を抜き出す方法に関する。
不飽和アルデヒドを分子状酸素または分子状酸素含有ガス下、複合酸化触媒を使用して、気相接触酸化し、対応する不飽和カルボン酸を製造する際には、一般的に多管式反応器が用いられる。多管式反応器には、数千から数万本の反応管が含まれている。従って、製造効率を向上させるためには、これら全ての反応管における反応状態を最適に設定することが極めて重要である。反応状態は、例えば、ガスの流量に影響を受ける。
ガスの流量が、最適条件の範囲を上回る反応管においては、原料物質の転化率が低下し、収率が低下する。一方ガスの流量が最適条件の範囲を下回る反応管においては、過度の反応が起こり副反応が多くなり、選択率が低下し、加えて反応管出口部分では酸素不足になり、触媒の劣化を引き起こすだけでなくコーキングをも引き起こす。
全ての反応管において、ガスの流量を最適条件とするためには、触媒等の固形充填物を反応管に充填する際、固形充填物の充填量(充填層高)および充填による圧力損失が、各反応管間で均一になるように調節することが重要である。しかしながら、実際には、固形充填物の形状や粒径にばらつきがあったり、固形充填物の充填速度が必ずしも一定でなかったりするために、充填層高および圧力損失を全ての反応管の間で均一にすることは困難である。
そこで、現実的には、触媒等の性能や反応器の能力を考慮して、予め充填層高及び圧力損失の目標値を設定しておき、この目標値をはずれ、充填層高が高くなったり、圧力損失が高くなった反応管などの不良充填反応管については、充填された固形充填物を抜き出し、再度固形充填物を充填するという作業を行う。
圧力損失の基準値の範囲を超える反応管は、各反応管の差圧を、平均初期差圧と比較することによって検知することが知られている(特許文献1)。また、充填層高の基準値の範囲を超える反応管は、通常、反応管上端から固形充填物層上面までの距離をメジャー等で測定し、平均値と比較することによって検知する。
これまで、不良充填が検知された反応管から固形充填物を抜き出す際に、該反応管の、固形充填物を抜き出そうとする端部が、不良充填の検知に用いた端部と異なる場合には、実際に固形充填物を抜き出すべき不良充填管を図面を用いるなどして特定していた。しかしながら、このような方法では、固形充填物を抜き出すべき反応管を間違えたり、不良充填が検知された反応管を特定するのに時間がかかったりする場合があり、作業効率の改善が求められている。
なお、不良充填反応管から触媒を抜き出す方法としては、反応管の上部から吸引する方法、反応管の下部から触媒を抜き出す方法などが知られている(特許文献2)。
特開2005−334852 特開2000−129271
本発明は、多管式反応器において、固形充填物の不良充填が検知された反応管を確実に特定し、該反応管より間違いなく固形充填物を抜き出す技術を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、不良充填が検知された反応管の、不良充填の検知に用いた端部より圧空を流し、他方の端部よりその圧空を観測することにより、不良充填が検知された反応管が確実に特定されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の不良充填反応管の特定方法は、多管式反応器における固形充填物の不良充填を検知し、不良充填が検知された反応管の、不良充填の検知に用いた端部より圧空を流し、他方の端部よりその圧空を観測することにより、該他方の端部において該反応管を特定することを特徴とする。
不良充填の検知は、充填層高の測定又は反応管の差圧の測定により行われることが好ましい。
また、反応管の不良充填の検知に用いた端部より流す圧空の流量は、10〜100L/minであることが好ましい。
本発明の不良充填反応管の特定方法は、単独触媒または不活性物質で希釈されている触媒を使用する場合に好適であり、特に酸化触媒を使用する場合に好適であり、また球状、円柱状、円筒状、リング状、星型状または不定形の形状を有する固形充填物を使用する場合に好適である。
また、本発明の不良充填反応管の特定方法は、プロパン、プロピレンまたはイソブチレン等の気相接触酸化反応に用いられる多管式反応器に好適である。
また、本発明の固形充填物を抜き出す方法は、多管式反応器の反応管に充填された固形充填物の不良充填を検知し、不良充填が検知された反応管から固形充填物を抜き出す方法であって、反応管の、不良充填の検知に用いる端部と、固形充填物を抜き出す端部とが異なるときに、上記の不良充填反応管の特定方法により前記の不良充填が検知された反応管を特定することを特徴とする。
また、反応管が縦方向に配置されている多管式反応器において、前記の不良充填の検知に用いる端部が上部である場合には、他の端部である下部より不良充填が検知された反応管を特定し、下部より固形充填物を抜き出すことが好ましい。
本発明の不良充填反応管の特定方法、及び固形充填物を抜き出す方法は、充填層高が目標値を外れており、不良充填が検知された反応管にも適用できるし、充填層高は目標値を満たしているが、圧力損失が目標値を外れており、不良充填が検知された反応管にも適用できる。本発明によれば、多管式反応器の反応管への固形充填物の充填において、所望の充填ができなかった不良充填反応管より固形充填物を抜き出す際に、固形充填物を抜き出すべき反応管を、短時間で簡便に特定することができ、しかも固形充填物を抜き出すべき反応管を間違えることもない。すなわち、不良充填反応管の固形充填物の交換の作業効率が飛躍的に向上する。
本発明の不良充填反応管の特定方法は、多管式反応器における固形充填物の不良充填を検知し、不良充填が検知された反応管の、不良充填の検知に用いた端部より圧空を流し、他方の端部よりその圧空を観測することにより、該他方の端部において該反応管を特定することを特徴とする。
多管式反応器とは、通常の化学製品の製造あるいは処理技術において使用されている多管式反応器をいう。例えば、特開昭54−21966号公報、特開昭56−108525号公報、特開昭59−39342号公報、特開昭59−82943号公報、特開昭62−121644号公報、特開平5−125010号公報、特公平7−73674号公報に開示された多管式反応器が挙げられる。
多管式反応器の反応管は、一般的に縦方向に配置されているが、横方向に配置されたものや、特開平9−141083号公報に開示されているように斜めに配置されたものでもよい。中でも本発明の不良充填反応管の特定方法は、反応管が縦方向に配置された多管式反応器に好適である。
反応管の材質も特に制限されず、ステンレス製、カーボンスチール製など通常接触反応に用いられる材質であればよい。反応管の内径Dは、10mm〜60mm、好ましくは15mm〜50mm、より好ましくは20mm〜40mmである。反応管は、一般的には全長にわたって直線状で同径のものであるが、湾曲しているものや軸方向で径が変化するものなども使用される。
本発明の不良充填反応管の特定方法は、気相接触酸化反応に用いられる多管式反応器に好適である。特に、プロパン、プロピレンまたはイソブチレンの気相接触酸化反応に用いられる多管式反応器に好適である。
固形充填物は、通常多管式反応器の反応管に充填され、通常の接触反応やその他の化学的処理反応に用いられるものであれば制限されない。このような反応としては、特開2000−1484号公報、特開平9−323950号公報、特公平3−57906号公報、特開平11−130722号公報に開示された反応等が挙げられる。このような反応における反応流体は、ガス、溶液、エマルジョンなど、通常多管式反応器で使用される形態のものが用いられる。
固形充填物としては、触媒と必要に応じて用いられる触媒希釈用の不活性物質(以下、「希釈剤」ともいう)などが挙げられる。例えば、本発明において使用される固形充填物としては、単独触媒または不活性物質で希釈されている触媒が好ましく挙げられる。
触媒の種類は、特に制限されないが、例えば酸化触媒が好ましく挙げられる。
また、触媒の反応管への充填仕様は触媒の種類、触媒の量、触媒の形状(形、大きさ)、触媒の希釈方法(希釈剤の種類、希釈剤の量)、反応帯域の長さ等の各要素を総合的に勘案し、決定するとよい。
触媒の形状(形、大きさ)は特に制限さず、球状、円柱状、円筒状、リング状、星型状または不定形の形状などの何れの形でもよい。触媒の成型法についても特に制限はない。例えば、押し出し成型法または打錠成型法で成型された成型触媒も使用でき、また触媒成分を、炭化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタンなどの不活性な担体に担持して構成させた担持触媒を使用してもよい。
また、希釈剤の種類としては、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリル酸生成反応条件下で安定であり、オレフィン等の原料物質及び不飽和アルデヒド、不飽和脂肪酸等の生成物と反応性がない材質のものであれば何でもよく、具体的には、アルミナ、シリコンカーバイド、シリカ、酸化ジルコニア、酸化チタン等、触媒の担体に使われるものがよい。また、希釈剤の形状は、触媒の形状と同様に制限はなく、球状、円柱状、リング状、小片状、網状、不定形の形状などの何れでもよい。希釈剤は、充填層における触媒全体の活性を調整して、発熱反応時の異常発熱防止のために用いられる。
希釈剤の使用量は、目的とする触媒活性により適宜決定されるものである。また、一つの反応管における反応帯域において、触媒の充填仕様を層状で異ならせても良い。例えば、反応管上部に充填する触媒の充填仕様と、反応管下部に充填する触媒の充填仕様とを異
ならせてもよい。一般に、一つの反応管における反応帯数は2〜3までの数で設定するとよい。
また、例えば、反応管の充填層を区分して、反応原料ガス入口付近は触媒活性を低くして、発熱を抑えるために希釈剤の使用量を増やし、反応ガス出口付近は触媒活性を高くして反応を促進させるために希釈剤の使用量を減らす方法が好ましい。
固形充填物の不良充填とは、所望の反応を行うために設計された充填に関する目標値を充足しない充填状態をいい、目標値は所望の反応を効率的に行うのに必要な範囲に設計される。充填に関する目標値として、充填層高、圧力損失等の目標値が挙げられる。不良充填の検知は、反応管の一方の端部で行われる。例えば、縦方向に反応管が配置された多管式反応器においては、反応管の上部より不良充填を検知することが好ましい。不良充填の検知は、具体的に以下のようにして行うことができる。
充填層高を測定することにより、不良充填を検知する方法としては、反応管の端部から固形充填物層面までの距離をメジャー等で測定し、平均値と比較する方法が挙げられる。
圧力損失を測定することにより、不良充填を検知する方法としては、反応管の差圧を測定する方法が挙げられる。反応管の差圧の測定による不良充填の検知は、具体的には以下のように行うことができる。先ず多管式反応器内にある全反応管のうち、少なくとも20%の反応管が選定される。この反応管の選定は、多管式反応器の全体について、無作為抽出的に行われるのがよい。選定された全ての反応管に、例えば1500NL/Hなど、その多管式反応器を用いる気相接触反応で実際に採用されている流量など所定流量のガスを流して各反応管に生じる差圧を測定し、その値を、同流量のガスを所定本数の所定の固形充填物が充填された反応管それぞれに流したとき生じる差圧の平均値(平均差圧)と比較して、平均差圧に比して異常な差圧を示す反応管を検知する。異常な差圧とは、例えば、差圧が平均差圧の±5%を超えるものであることが挙げられる。
差圧の測定方法は、特に限定されるものではないが、例えばマスフローメーターで一定流量のガスを反応管に流し、そのときの圧力を測定する方法を挙げることができる。このとき反応管に流すガスは、特に制限されないが、安全上の理由から空気が望ましく、その流量は、実際の反応の定常時に流れるガス量であることが望ましい。
続いて、不良充填が検知された反応管の、不良充填の検知に用いた端部より圧空を流す。圧空の流量は、10〜100L/minが好ましく、20〜50L/minがより好ましい。流量が10L/minを下回ると圧空の観測が難しくなるおそれがあり、100L/minを上回ると固形充填物粉が反応管から過度に放出されるおそれがある。
続いて、不良充填の検知に用いた端部とは異なる他方の端部より、上記で流した圧空を観測することにより、該他方の端部において、不良充填が検知された反応管を特定することができる。
圧空を観測する方法としては、反応管の圧空出口側の端部に手をかざす方法等が挙げられる。
圧空が観測されれば、その反応管を不良充填反応管であると特定することができる。
本発明の不良充填反応管の特定方法は、反応管の、不良充填の検知に用いる端部と、固形充填物を抜き出す端部とが異なるときに用いることが好ましい。例えば、縦方向に配置された反応管を有する多管式反応器においては、反応管の上部を不良充填の検知に用い、下部から固形充填物を抜き出す場合に、本発明の不良充填反応管の特定方法を用いることにより、下部において不良充填が検知された反応管を特定することができ、間違えること
なく固形充填物を抜き出すことができる。
固形充填物を抜き出す方法としては、通常用いられている方法により行うことができ、反応管の形状や配置に応じて、最適な方法を選択すればよい。反応管が縦方向に配置された多管式反応器の反応管から固形充填物を抜き出す場合には、反応管の下部より抜き出すことが好ましい。反応管の上部から吸引などにより固形充填物を抜き出す方法は、吸引の途中で吸引装置に固形充填物が詰まり、それを取り除くための余計な作業が発生する可能性がある。反応管の下部から固形充填物を抜き出す方法は特に制限されないが、自然落下で抜き出す方法が好ましい。
なお、不良充填反応管のうち、コーキングなどの程度が小さいものは、反応管底部の固形充填物の押さえを外すことにより比較的容易に抜き出すことができるが、コーキングなどの程度が大きくなるにつれ、反応管に超音波振動やその他の振動を与えたり、また必要に応じて、常用の機材により掻き出したりすることにより抜き出される。
〔実施例1〕
多管式反応器の反応管1000本に、触媒を目標層高2950〜3000mm充填したところ、目標層高をはずれる反応管が45本検知された。
反応管の上部より圧空を流量20L/minで流し、該反応管の下部にて圧空の吹き出しを手をかざして確認し、上記で検知された反応管を特定した。続いて、特定した反応管の下部より、触媒を抜き出した。
同様な作業を上記で検知された45本の反応管すべてについて実施したところ、これらの反応管の全てから、1本の間違いもなく1時間で触媒を抜き出することができた。
〔実施例2〕
多管式反応器の反応管1000本に、触媒を層高2950〜3000mm充填し、全反応管の差圧を測定したところ、6.3〜7.5kPaであった。平均差圧をもとに目標差圧を6.5〜7.3kPaに設定した。目標差圧の±5%をはずれる不良充填反応管が5本存在した。
反応管の上部より、圧空を流量30L/minで流し、該反応管の下部にて圧空の吹き出しを手をかざして確認し、上記で検知された反応管を特定した。その特定反応管の下部より、触媒を抜き出した。
同様な作業を上記で検知された5本の反応管について実施したところ、これらの反応管の全てから、1本の間違いもなく20分間で触媒を抜き出すことができた。
〔比較例1〕
実施例2と同様に、多管式反応器の反応管1000本に、触媒を層高2950〜3000mm充填し、全反応管の差圧を測定したところ、6.2〜7.5kPaであった。平均差圧をもとに目標差圧を6.5〜7.3kPaとした。目標差圧の±5%をはずれる反応管が6本検知された。
反応管の上部から圧空を流す代わりに、反応管の下部より、上記で検知され6本の反応管を図面より特定し、触媒を抜き出したところ、作業速度が低下し、さらに正常充填反応管の触媒も抜き出してしまった。結果として、作業効率が著しく低下し、作業完了までに2時間を要した。
〔比較例2〕
実施例1と同様に、多管式反応器の反応管1000本に、触媒を目標層高2950〜3000mm充填したところ、目標層高をはずれる反応管が44本検知された。
反応管の上部より吸引装置を用いて触媒を抜き出したところ、吸引の途中で触媒が詰まってしまい、触媒のつまりを取り除く作業が増えたため、作業完了に2時間を要した。

Claims (11)

  1. 多管式反応器における固形充填物の不良充填を検知し、不良充填が検知された反応管の、不良充填の検知に用いた端部より圧空を流し、他方の端部よりその圧空を観測することにより、該他方の端部において該反応管を特定することを特徴とする、不良充填反応管の特定方法。
  2. 不良充填は、充填層高の測定により検知される請求項1に記載の不良充填反応管の特定方法。
  3. 不良充填は、反応管の差圧の測定により検知される請求項1に記載の不良充填反応管の特定方法。
  4. 圧空の流量が10〜100L/minである請求項1〜3のいずれか一項に記載の不良充填反応管の特定方法。
  5. 固形充填物が、単独触媒または不活性物質で希釈されている触媒である請求項1〜4のいずれか一項に記載の不良充填反応管の特定方法。
  6. 触媒が、酸化触媒である請求項5に記載の不良充填反応管の特定方法。
  7. 固形充填物が球状、円柱状、円筒状、リング状、星型状または不定形の形状を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の不良充填反応管の特定方法。
  8. 多管式反応器が、気相接触酸化反応に用いられる請求項1〜7のいずれか一項に記載の不良充填反応管の特定方法。
  9. 気相接触酸化反応が、プロパン、プロピレンまたはイソブチレンの気相接触酸化反応である請求項8に記載の不良充填反応管の特定方法。
  10. 多管式反応器の反応管に充填された固形充填物の不良充填を検知する工程と、不良充填が検知された反応管を、請求項1〜9のいずれか一項に記載の特定方法により、不良充填反応管として特定する工程と、特定された不良充填反応管の、不良充填の検知に用いた端部とは異なる端部から固形充填物を抜き出す工程とを含む、不良充填が検知された反応管から固形充填物を抜き出す方法
  11. 前記多管式反応器の反応管が縦方向に配置され、前記の不良充填の検知に用いる端部が上部である、不良充填が検知された反応管から固形充填物を抜き出す方法であって、前記の固形充填物を抜き出す端部が下部であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
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