以下に、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1には、本発明の実施の形態に係る車両用防曇装置(以下、防曇装置10とする)の概略構成を示している。
防曇装置10は、一例として車室内を暖房する車両用空調装置(以下、エアコン12とする)及び、リヤデフォッガ14によって構成されている。図2に示されるように、本実施の形態に係る車両16は、フロントウインドガラス18とリヤウインドガラス20を備えた一般的構成となっており、防曇装置10では、一例として第1のウインドガラスをフロントウインドガラス18として、第2のウインドガラスをリヤウインドガラス20として、エアコン12によってフロントウインドガラス18の防曇を行い、リヤデフォッガ14によってリヤウインドガラス20の防曇を行う。
図3に示されるように、エアコン12は、コンプレッサ22、コンデンサ24、エキスパンションバルブ26及びエバポレータ28によって冷媒を循環する冷凍サイクルが形成され、コンプレッサ22によって圧縮されて高温、高圧となっている冷媒が、コンデンサ24で冷却されることにより液化されてエバポレータ28へ送り込まれる。エバポレータ28では、液化されている冷媒が気化することにより、エバポレータ28を通過する空気が冷却されると共に、空気中の水分がエバポレータ28に結露することにより除湿が行われる。エキスパンションバルブ26は、冷媒を急激に減圧することにより霧状にしてエバポレータ28へ送りこみ、エバポレータ28での冷媒の気化を促進する。
エアコン12は、車両16のインストルメントパネル30(図2参照)内に配設されるブロワユニット32とエアコンユニット34を備えている。ブロワユニット32には、ブロワファン36が設けられ、エアコンユニット34には、エバポレータ28が配設されている。
また、ブロワユニット32には、車室内に開口された内気導入口38Aと車外に開口された外気導入口38Bが形成され、内気導入口38A又は外気導入口38Bを選択的に開閉可能とする切換ダンパ40が配設されている。
エアコン12では、空気の導入モードとして内気循環モードと外気導入モードが設定されており、内気循環モードが選択されることにより、切換ダンパ40によって内気導入口38Aを開放して外気導入口38Bを閉塞し、外気導入モードが選択されることにより、内気導入口38Aを閉塞して外気導入口38Bを開放する。
これにより、ブロワユニット32では、ブロワモータ42によってブロワファン36が回転駆動されることにより、導入モードに応じて内気又は外気を吸引してエアコンユニット34へ送り込む。
図1に示されるように、車両16は、内燃機関であるエンジン44を備え、エンジン44の駆動力によって走行可能となっている。なお、車両16としては、エンジン44に加えて、走行用の駆動源として電気モータを備えたハイブリッド車であっても良い。
図3に示されるように、エアコン12には、エンジン44(図1参照)の発する熱によって暖房を行うためのヒータコア46を備え、このヒータコア46が、エアコンユニット34内に配設され、エバポレータ28を通過した空気がヒータコア46を通過可能となっている。また、エアコンユニット34には、エバポレータ28とヒータコア46の間に、エアミックスダンパ48が配設されており、エバポレータ28を通過した空気が、エアミックスダンパ48によってヒータコア46を通過する空気と、ヒータコア46をバイパスする空気に分けられる。
エアコンユニット34では、ヒータコア46を通過することにより加熱された空気と、ヒータコア46をバイパスすることにより加熱されていない空気と、が混合され、車室内を空調する空調風が生成される。このときに、エアコン12では、エアミックスダンパ48の開度Sを制御することにより、空調風の温度を制御している。なお、エアミックスダンパ48の全閉状態(開度S=0°)では、MAX COOLとなり、全開状態では、MAX HOTとなる。
エアコンユニット34には、空調風の吹出し口として、車両16のフロントウインドガラス18(図2参照)へ向けて開口されたセンタデフロスタ吹出し口やサイドデフロスタ吹出し口などのデフロスタ吹出し口50、車室16A内の乗員へ向け開口されたセンタレジスタ吹出し口やサイドレジスタ吹出し口などのレジスタ吹出し口52及び、乗員の足元へ向けて開口された前席足元吹出し口や後席足元吹出し口などの足元吹出し口54が形成されている。
また、エアコンユニット24には、デフロスタ吹出し口50、レジスタ吹出し口52ないし足元吹出し口54を選択的に開閉可能とするモード切換ダンパ56が設けられている。
エアコン12では、空調風の吹出しモードとして、デフロスタ吹出し口50から空調風を吹き出すDEFモード、レジスタ吹出し口52から吹き出すFACEモード、足元吹出し口54から吹き出すFOOTモード、デフロスタ吹出し口50と足元吹出し口54から吹き出すDEF/FOOTモード及び、レジスタ吹出し口52と足元吹出し口54から吹き出すBI−LEVELモードが設定されており、エアコン12では、吹出しモードが設定ないし選択されることにより、該当吹出しモードに応じてモード切換ダンパ56が作動するようになっている。
一方、図1に示されるように、車両16には、エンジン44とエンジンラジエータ58との間でエンジン冷却液(例えば冷却水、以下、冷却水とする)が循環される冷却水回路60及び、エンジン44とヒータコア46との間で冷却水が循環される冷却水回路62が設けられている。また、エンジン44には、ウォータポンプ64が設けられており、例えば、エンジン44の駆動力によってウォータポンプ64が駆動されることにより、エンジン44から冷却水回路60、62のそれぞれへ冷却水が送り出され、エンジンラジエータ58又はヒータコア46を経た冷却水が、ウォータポンプ64からエンジン44へ戻される。
エンジン44は、エンジンラジエータ58との間で冷却水が循環されることにより冷却されて温度上昇が抑えられ、ヒータコア46へ循環される冷却水によって車室16A内の暖房が可能となっている。なお、冷却水回路60には、サーモスタット及びバイパス路(何れも図示省略)が設けられており、冷却水の水温に応じてサーモスタットがエンジンラジエータ58との間で循環される冷却水の流量を制御して、冷却水の水温を所定の温度範囲に保つようにしている。
一方、エアコン12には、エアコン12の作動を制御するエアコンECU(以下、ECU66とする)が設けられている。なお、ECU66は、図示しないCPU、ROM、RAMなどがバスによって接続されたマイクロコンピュータ、入出力インターフェイス及び各種のドライバ回路を含む一般的構成となっている。
このECU66には、コンプレッサ22を駆動するコンプレッサモータ68、ブロワファン36を駆動するブロワモータ42及び、切換ダンパ40、エアミックスダンパ48、モード切換ダンパ56を駆動するアクチュエータ70A、70B、70Cが接続されている。
ECU66は、コンプレッサモータ68のオン/オフ及び回転数を制御することにより空調能力を制御し、ブロワモータ42のオン/オフ及び回転数を制御することにより、空調風の風量(ブロワ風量)を制御する。また、ECU66は、空気の導入モードに応じてアクチュエータ70Aを駆動し、吹出しモードに応じてアクチュエータ70Cを駆動する。
一方、ECU66には、室内温度を検出する室温センサ72、外気温を検出する外気温センサ74、日射量を検出する日射センサ76、エバポレータ28を通過した空気の温度を検出するエバポレータ後温度センサ78等が接続されている。
また、エンジン44には、エンジン44から送り出される冷却水の温度(水温)を検出する水温センサ80が設けられており、水温センサ80がECU66に接続されている。
ECU66は、図示しない操作パネルのスイッチ操作によって設定温度などの運転条件が設定されて空調運転が指示されると、運転条件及び各種のセンサによって検出する環境条件に基づいて目標吹出し温度を演算する。この目標吹出し温度は、設定温度、室温、外気温、日射量などに基づいて、一般的演算式を用いて演算することができる。
また、ECU66は、目標吹出し温度を演算すると、目標吹出し温度に基づいてエアミックスダンパ48の開度を設定し、設定した開度が得られるようにアクチュエータ70Bを駆動し、目標吹出し温度の空調風が得られるようにしている。
さらに、ECU66では、オートモードが選択されていると、目標吹出し温度に基づいて、空調風の吹出しモード、ブロワ風量等を設定し、設定に基づいてアクチュエータ70A、70C及びブロワモータ42を作動する。なお、このようなエアコン10の基本的動作は、公知の一般的構成を適用でき、ここでは詳細な説明を省略する。
ところで、車両16に設けられているエンジン44には、排気ガスを導出する排気管82が接続されており、エンジン44から排出される排気ガスが、排気管82を介して大気中に放出される。なお、排気ガスの排気経路には、図示しない触媒、マフラ等が設けられており、大気へ排出される排気ガスの浄化及び消音が図られる一般的構成となっている。
この排気管82には、排気熱回収手段として排気熱回収器84が設けられている。排気熱回収器84は、冷却水回路62内でエンジン44とヒータコア46の間に設けられ、エンジン44からヒータコア46へ流れる冷却水が通過する。このとき、排気熱回収器84では、冷却水と排気ガスとの間で熱交換が可能となっている。すなわち、排気熱回収器84内には、冷却水が循環される図示しない流路が形成されている。
また、排気熱回収器84内には、排気ガスが冷却水との間で熱交換を行わずに通過するバイパス回路86及びバイパス回路86を開閉するバルブ88が設けられている。
排気熱回収器84では、バルブ88によってバイパス路86が閉じられることにより、排気ガスと冷却水との間での熱交換が促進され、バイパス路86が開かれることにより、排気ガスと冷却水の熱交換が抑えられる。すなわち、排気熱回収器84では、バルブ88の開閉によって排気熱回収量が切換えられる。
車両16には、エンジン44の駆動を制御する図示しないエンジンECUが設けられており、例えば、このエンジンECUが、エンジン44の始動時にバルブ88を閉じることにより排気ガスと冷却水との間で熱交換を行うことにより冷却水を加熱して、エンジン44の暖機促進を図る。また、エンジンECUでは、例えば、冷却水の温度が低下したときにECU66からの要求に応じてバルブ88の開閉を行うことにより、排気ガスによる冷却水の加熱が行われるようにしている。
ECU66は、このエンジンECUから、バルブ88が開かれているか閉じられているかの情報を取得するようにしており、バルブ88から閉じられているか開かれているかなどによって排気熱回収量が多いか少ないかを判定可能となっている。なお、水温センサ80は、このエンジンECUに接続され、ECU66からエンジンECUから冷却水の水温を取得するものであっても良い。
防曇装置10を形成するエアコン12は、DEFモードが選択されることにより、ヒータコア46によって加熱した空調風(温風)を、デフロスタ吹出し口50から、フロントウインドガラス18へ向けて吹き出す。これにより、フロントウインドガラス18が加熱されて、曇り除去及び曇り防止が図られる。
また、図1及び図2に示されるように、防曇装置10を形成するリヤデフォッガ14は、加熱手段としてリヤウインドガラス20に埋め込まれている熱線(デフォッガ)90を備えている。熱線90は、通電されることにより発熱して、リヤウインドガラス20を加熱し、リヤウインドガラス20の曇り除去、曇り防止を図る。
図1に示されるように、熱線90は、給電回路92を介してECU66に接続されている。また、リヤデフォッガ14は、例えば、インストルメントパネル30(図2参照)の所定位置に配置されているデフォッガスイッチ94を備え、このデフォッガスイッチ94がECU66に接続されている。
ECU66は、デフォッガスイッチ94がオン操作されることにより、所定電圧(例えば、補機バッテリから供給される12v)を熱線90へ供給(通電)し、デフォッガスイッチ94のオフ操作によって熱線90への通電を停止する。なお、リヤデフォッガ14は、図示しないタイマの計測時間が所定時間に達したときに熱線90への通電が停止(リヤデフォッガ14のオフ)されるタイマ機能を備えたものであっても良い。
一方、エアコン12には、オートDEFモードが設定されている。車両16では、例えば、冬季などの外気温が低く、冷却水の水温も低くなっているときに、エンジン44の始動するときに暖機運転を行う冷却水の水温の上昇を図る。このような環境下では、フロントウインドガラス18の曇り除去と共に、車室16A内の暖房が要求される。
防曇装置10に設けられているエアコン12では、エンジン暖機時にオートDEFモードが選択されることにより、空調風の吹出し口を段階的に切換えることにより、フロントウインドガラス18の防曇と車室16A内の暖機(暖房の立ち上げ)を行う。
このとき、ECU66では、例えば、MAX HOT(エアミックスダンパ48の全開)状態で、デフロスタ吹出し口50からフロントウインドガラス18へ向けて吹出すDEFモードを選択し、フロントウインドガラス18の曇り除去を図る。
この後、ECU66は、所定のタイミングでDEFモードからマルチモードに切換え、デフロスタ吹出し口50とレジスタ吹出し口52と足元吹出し口54から車室16A内の乗員へ向けて空調風を吹き出すことにより、乗員に暖房感を与えながら車室16A内の暖房を行う。これにより、フロントウインドガラス18の防曇と共に、車室16A内の暖房の立ち上げを行う。
さらに、ECU66は、マルチモードからFOOTモードに切換えることにより、足元吹出し口54から空調風(温風)が吹き出されるようにしている。これにより、車室16A内の暖房が立ち上がった状態で、乗員に向けて温風が吹き出されることによる違和感が生じるのを防止して、乗員に快適な暖房感を与えるようにしている。
すなわち、図4(A)に示されるように、オートDEFモードでは、DEFモード、マルチモード、FOOTモードの順に吹出しモードを切り換えるようにしている。
これにより、外気温の低い冬季などにエンジン44を始動して暖機運転を行ったときに、フロントウインドガラス18の曇り除去と共に、車室16A内の急速な暖房感が得られるようにしている。
一方、車両16では、排気熱回収器84によってエンジン44の排気熱を回収し、回収した排気熱による冷却水の加熱が可能となっており、これにより、エアコン12の暖房能力の上昇を図ることができる。
エアコン12では、例えば、オートDEFモードなどでフロントウインドガラス18の防曇を行うときに、排気熱回収が行われていると、フロントウインドガラス18の温度上昇及び車室16A内の暖房の促進を図ることができる。また、車室16Aが暖房されることにより、リヤデフォッガ14を用いたときに、リヤウインドガラス20の加熱促進を図ることができる。
ここで、防曇装置10では、排気熱回収が行われているときには、エアコン12によるフロントウインドガラス18の防曇に、リヤデフォッガ14によるリヤウインドガラス20の防曇処理を連動させるようにしている。
例えば、ECU66は、給電回路92によって熱線90への供給電圧Vを制御することにより、熱線90の発熱量を制御するようにしている。なお、以下では、熱線90への供給電圧Vを制御するものとして説明するが、これに限らず、熱線90へ供給する電圧のPWM制御を行って平均電圧を制御して発熱量(消費電力)の制御を行うなど任意の制御方法を適用することができる。
エアコン12とリヤデフォッガ14の連動制御は、例えば、排気熱回収量が多い状態で、エアコン12をオートDEFモードで動作させているときにリヤデフォッガ14がオンされることにより実行され、エアコン12の吹出しモードの切換えに応じて、給電回路92から熱線90へ出力する供給電圧Vを制御する。
例えば、図4(A)及び図4(B)に示されるように、エアコン12が、デフロスタ吹出し口50からフロントウインドガラス18へ空調風を吹き出すDEFモードであるときに、熱線90への標準電圧Vs(例えば、Vs=12v)を供給し、リヤウインドガラス20の迅速な加熱を行う。また、エアコン12の吹出しモードがDEFモードからマルチモードに切り換わると、熱線90の供給電圧Vを設定電圧Vs1(Vs>Vs1、例えば、Vs1=8v)に低下させ、熱線90の発熱を抑える。
さらに、エアコン12がマルチモードからFOOTモードへ切り換わったときには、供給電圧Vを、さらに、設定電圧Vs2まで下げる(Vs>Vs1>Vs2、例えば、Vs2=4v)。なお、図4(A)及び図4(B)では、排気熱回収量が多いときを実線で示し、排気熱回収量が少ないときを破線で示している。
このように、防曇装置10では、排気熱回収が行われているときに、エンジン暖機時に車室16Aの暖房の進行に合わせて熱線90の発熱量を抑えることにより、車室16A内が、リヤウインドガラス20に曇りが生じない暖房状態となっているにもかかわらず、不要に熱線90が電力を消費してしまうのを抑えるようにしている。
以下に、実施例として防曇装置10を用いたフロントウインドガラス18及びリヤウインドガラス20の防曇制御を説明する。
〔実施例1〕
先ず、実施例1を説明する。この実施例1では、オートDEFモードでの吹出しモードの切換えを冷却水の水温Twに基づいて行う。すなわち、図4(A)及び図4(C)に示されるように、冷却水の水温Twが、設定水温T1(Tw≦T1)に達するまでは、デフロスタ吹出し口50から空調風を吹き出すDEFモードに設定し、水温Twが設定水温T1(Tw>T1)を超えると、設定水温T2に達するまで(T1<Tw≦T2)は、空調風の吹出し口を、デフロスタ吹出し口50、レジスタ吹出し口52及び足元吹出し口54に切換え、マルチモードでの空調運転を行う。
さらに、ECU66は、冷却水の水温Twが、設定水温T2を超える(Tw>T2)と、温風の吹出し口を足元吹出し口54に切換え、オートDEFモードでの運転を終了し、FOOTモードでの暖房運転を行う。
また、車両16では、排気熱回収を行うことにより冷却水の水温Twの上昇の促進を図ることができるようになっており、ECU66では、オートDEFモードでの水温Twに対する設定水温T1、T2を、排気熱回収量が少ないときの設定水温Ts1、Ts2と、排気熱回収量が多くなっているときの設定温度Tse1(Tse1<Ts1)、Tse2(Tse 2 <Ts2)を設定している。
すなわち、図4(A)及び図4(C)に示されるように、排気熱回収量が多いときには、DEFモードからマルチモードに切換えるタイミングを、設定水温Ts1より低い設定温度Tse1とし、マルチモードからFOOTモードに切換えるときを、設定水温Ts2より低い設定水温Tse2(Tse2<Ts2)としている。
ここで、図4(C)には、水温センサ80によって検出される冷却水の水温Twを実線で示し、排気熱回収量が多いときに、ヒータコア46を流れる冷却水の水温の一例を二点鎖線で示しており、本実施の形態に適用した設定水温Ts1、Ts2と設定水温Tse1、Tse2の間では、ヒータコア46を流れる冷却水の水温が略同じとなるようにしている。
これにより、排気熱回収量が多いか少ないかにかかわらず、ヒータコア46に流れる水温が略同じタイミングで、吹出しモードの切換えが行われるようにしている。すなわち、MAX HOTで空調運転を行う時の吹出し風の温度は、ヒータコア46を流れる冷却水の水温に応じて変化し、この冷却水の水温が排気熱回収量に応じて変化するが、排気熱回収量にかかわらず、吹出し風の温度に応じたタイミングで吹出しモードが切り換るようにしている。
また、防曇装置10では、排気熱回収が行われている状態で、エアコン12がオートDEFモードで動作しているときに、デフォッガスイッチ94がオンされると、エアコン12の吹出しモードの切換えに応じて熱線90の発熱を制御するようにしている。
ここで、図5から図7を参照しながら、実施例1に係る防曇制御を説明する。
図5には、エアコン10でのオートDEFモードでの処理の概略を示している。このオートDEFモードは、エンジン44及びエンジン44内の冷却水の水温Twが低い状態で、エンジン44を始動することによりエンジン44の暖機が行われているときに実行される。
すなわち、オートDEFモードの制御は、乗員が車室16A内の暖房とフロントウインドガラス18の防曇を要求する環境下で実行され、最初のステップ100で吹出しモードをDEFモードに設定し、ステップ102でDEFモードでの空調運転を開始する。このとき、冷却水の水温Twが低いのでエアミックスダンパ48を最大開度で空調運転を行う(MAX HOOT)。
また、車両16には、排気熱回収器84が設けられており、エンジン44の排気熱を回収して、冷却水の加熱を行うことができるようになっている。
ここで、ステップ104では、排気熱回収量を判定し、ステップ106では、排気熱回収量が多いか否かを確認する。すなわち、排気熱回収器84では、バルブ88が開かれて、エンジン44の排気ガスがバイパス路86を通過していると、排気ガスと冷却水との間の熱交換量(排気熱回収量)が少なくなるが、バルブ88が閉じられることにより、排気ガスと冷却水との間の熱交換が促進されて排気熱回収量が増加し、冷却水の昇温が図られる。
図6(A)には、排気熱回収量の判定の一例を示している。このフローチャートでは、最初のステップ130で排気熱回収器84内に設けているバルブ88の開閉状態を読込み、ステップ132では、バルブ88が閉じられているか否かを確認する。
ここで、バルブ88が開かれているときには、ステップ132で否定判定してステップ134へ移行し、排気熱回収量が少ないと判定する。また、排気熱回収器84のバルブ88が閉じられているときには、ステップ132で肯定判定してステップ136へ移行し、排気熱回収量が多いと判定する。
なお、エンジン44の排気熱となる排気ガスエネルギーは、エンジン回転数、エンジントルク、エンジン44の吸入空気量などをパラメータとして変化する。ここから、単に排気熱回収器84のバルブ88の開閉のみでなく、上記パラメータに基づいて演算した排気ガスエネルギーと、排気熱回収器84の回収効率などから、排気熱回収量を演算するようにしても良く、より好ましい。
また、排気熱回収器84での排気熱回収量が多いか少ないかを簡略化して判定するときには、車両16の走行速度を用いる方法がある。
図6(B)には、一例として車両16の走行速度から排気熱回収量が多いか否かの判定の概略を示している。このフローチャートでは、ステップ132で肯定判定されるとステップ138へ移行する。このステップ138では、例えば、車速センサなどを用いて検出される車両16の走行速度vを読込み、次のステップ140では、走行速度vが予め設定している速度(設定速度)vsを超えているか否かを確認する。
このときに、走行速度vが設定速度(動点)vsを超えていると(v≧vs)、ステップ140で肯定判定してステップ142へ移行し、排気熱回収量が多いと判定する。これにより、より的確な排気熱回収量の判定が可能となる。
一方、図5のフローチャートでは、排気熱回収量が少ないときには、ステップ106で否定判定してステップ108へ移行する。このステップ108では、冷却水の水温Twに対する設定水温T1、T2として設定水温Ts1、Ts2を適用するように設定する。
これに対して排気熱回収量が多いと判断されるときには、ステップ106で肯定判定してステップ110へ移行する。このステップ110では、冷却水の水温Twに対する設定水温T1、T2として設定水温Tse1、Tse2を適用するように設定する。すなわち、排気熱回収量の多いときには、排気熱回収量の少ないときに比べて、水温Twに対する設定水温T1、T2を下げる。
この後、ステップ112では、水温センサ80によって検出するエンジン44から送り出される冷却水の水温Twを読込み、次のステップ114では、水温Twが設定水温T1(設定水温Ts1又は設定水温Tse1)に達したか否かを確認する。
ここで、エンジン44の暖機が進行することにより冷却水の水温Twが設定水温T1に達すると(Tw≧T1)、ステップ114で肯定判定してステップ116へ移行する。
このステップ116では、フロントウインドガラス18が防曇の可能な温度に達していると判断して、吹出しモードをDEFモードからマルチモードに移行する。これにより、デフロスタ吹出し口50、レジスタ吹出し口52、足元吹出し口54から車室16A内の乗員へ向けて、温風が吹き出され、車室16A内の室温が所望の温度に達していない状態であるときでも、乗員に暖房不足感を生じさせるのを防止することができる。
また、ステップ118では、冷却水の水温Twを読込み、ステップ120では、水温Twが設定水温T2(設定水温Ts2又は設定水温Tse2)に達したか否かを確認する。
ここで、冷却水の水温Twが設定水温T2に達すると、ステップ120で肯定判定してステップ122へ移行する。このステップ122では、吹出しモードをマルチモードからFOOTモードに切換え、足元吹出し口54から温風を吹き出すようにして、オートDEFモードでの処理を終了する。すなわち、車室16A内が温まった状態でレジスタ吹出し口52から乗員へ向けて温風が吹き出されることにより、乗員に暖房の利き過ぎ感を生じさせてしまうのを防止する。
一方、防曇装置10では、エアコン12がオートDEFモードでの空調運転を開始するときに、デフォッガスイッチ94のオン操作がなされると、フロントウインドガラス18の防曇と並行して、リヤウインドガラス20の防曇制御を行う。
図7には、このときの処理の概略を示している。このフローチャートは、デフォッガスイッチ94がオンされると実行され、最初のステップ150では、エアコン12がオートDEFモードでの空調運転を開始したか否かを確認する。
ここで、エアコン12がオフしていたり、オートDEFモードでの空調運転ではなく、通常の空調運転を行っていると、ステップ150で否定判定してステップ152へ移行する。
このステップ152では、熱線90への供給電圧Vを標準電圧Vsに設定して通電を開始する。これにより、熱線90が発熱してリヤウインドガラス20が加熱されることにより、リヤウインドガラス90の防曇が図られる。
また、ステップ154では、リヤデフォッガ14のオフタイミングとなったか否かを確認する。ここで、リヤウインドガラス20の防曇が終了し、デフォッガスイッチ94がオフされたり、オン時間が設定時間に達することによりステップ154で肯定判定してステップ156へ移行し、熱線90への通電を停止する(リヤデフォッガ14のオフ)
一方、エアコン12がオートDEFモードでの動作を開始していると、ステップ150で肯定判定してステップ158へ移行する。このステップ158では、排気熱回収量が多いか否かを確認する。このときに、排気熱回収量が少なければ、ステップ158で否定判定してステップ152へ移行し、リヤデフォッガ14の通常制御を実行する。
これに対して、排気熱回収量が多い判断されるときには、ステップ158で肯定判定して、リヤデフォッガ14の連動制御を開始する。
この連動制御は、先ず、ステップ160で熱線90への供給電圧Vを最大としている標準電圧Vsに設定して、この供給電圧Vでの熱線90への通電を開始する(ステップ162)。これにより、熱線90の発熱によるリヤウインドガラス20の加熱(防曇処理)が開始される。
次のステップ164では、エアコン12の吹出しモードがDEFモードからマルチモードに切り換わったか否かを確認する。
ここで、フロントウインドガラス18の防曇が進行し、オートDEFモードで作動しているエアコン12の吹出しモードがDEFモードからマルチモードに切り換わると、ステップ164で肯定判定してステップ166へ移行する。
このステップ166では、熱線90への供給電圧Vを標準電圧Vsより低い設定電圧Vs1に設定し、ステップ168では、設定電圧Vs1での熱線90の通電が開始される。これにより、熱線90の発熱と共に電力消費が抑えられる。
また、ステップ170では、エアコン12の吹出しモードがマルチモードからFOOTモードに切り換わったか否かを確認し、冷却水の水Twの上昇及び車室16A内の暖房が進行することにより、吹出しモードがマルチモードからFOOTモードへ切り換わると、ステップ170で肯定判定してステップ172へ移行する。
このステップ172では、熱線90への供給電圧Vを設定電圧Vs1よりも低い設定電圧Vs2に設定し、設定電圧Vs2での熱線90への通電を開始する(ステップ174)。
なお、ステップ176では、前記したステップ154と同様に、リヤデフォッガ14のオフタイミングとなってか否かを確認し、リヤデフォッガ14のオフタイミングとなると、ステップ176で肯定判定してステップ156へ移行し、熱線90への通電を停止して、リヤデフォッガ14をオフする。
このように、防曇装置10では、排気熱回収を行いながらエアコン12がフロントウインドガラス18の防曇と共に車室16A内の暖房の立ち上げ行いながら、リヤウインドガラス20の防曇を行うときには、冷却水の水温Twの上昇に伴って吹出しモードが切り換わるのに合わせて、熱線90への供給電圧Vを下げる。
これにより、リヤウインドガラス20の防曇を図りながら、熱線90の電力消費を抑えることができる。また、熱線90の電力消費を抑えることができるので、仮にリヤデフォッガ14の切り忘れ(デフォッガスイッチ94の切り忘れ)が生じても、消費電力が大きく増加してしまうのを防止することができる。
〔実施例2〕
次に実施例2を説明する。なお、実施例2の基本的処理は、前記した実施例1と同じであり、実施例1と同等の処理の説明は省略する。
前記した実施例1では、エアコン12の吹出しモードの切換えに合わせて、熱線90の供給電圧Vを段階的に下がるようにしたが、実施例2では、エアコン12がDEFモードからマルチモードに切り換わると、熱線90への供給電圧Vを徐々に低下させ、エアコン12がオートDEFモードでの処理を終了して、FOOTモードで車室16A内の暖房を行うときに、熱線90への供給電圧Vが設定電圧Vs2となるようにしている。
すなわち、図8(A)から図8(C)に示されるように、排気熱回収量が多い状態(図8(A)、図8(B)に実線で示す)で、エアコン12がオートDEFモードで動作していると、エアコン12の吹出しモードがDEFモードからマルチモードに切り換わると、熱線90で供給電圧Vの抑制を開始する。このときに、例えば、冷却水の水温Twの上昇に合わせて供給電圧Vが下降するようにする。また、熱線90への供給電圧Vの低減は、エアコン12がFOOTモードに切り換わったときに、供給電圧Vが設定電圧Vs2となるようにする。
図9には、このときのリヤデフォッガ14の作動制御の概略を示している。このフローチャートでは、エアコン12がオートDEFモードで作動し、かつ、排気熱回収量が多いと判定(ステップ150、158で肯定判定)されると、熱線90への通電電圧制御を開始する。
この通電電圧制御では、先ず、供給電圧Vを標準電圧Vsに設定し(ステップ160)、設定電圧での通電を行う(ステップ162)。この後、エアコン12がDEFモードからマルチモードに切り換るとステップ164で肯定判定してステップ180へ移行する。
このステップ180では、冷却水の水温Twを読込み、次のステップ182で冷却水の水温Twに基づいて供給電圧Vを設定する。このとき、冷却水の水温Twが上昇するのに伴って供給電圧Vが低下するように供給電圧を設定し、ステップ184では、設定した供給電圧Vでの通電を行う。
また、ステップ170では、エアコン12の吹出しモードがマルチモードからFOOTモードに切り換ったか否かを確認する。すなわち、冷却水の水温Twが設定温度T2に達し、エアコン12が、通常の暖房制御に移行したか否かを確認する。
ここで、エアコン12の吹出しモードがFOOTモードに切り換ると、ステップ170で肯定判定してステップ172へ移行し、供給電圧を設定電圧Vs2に設定し、設定した供給電圧Vでの通電を行う(ステップ174)。
これにより、図8(A)から図8(C)に示されるように、エアコン12の吹出しモードがDEFモードであるときには、熱線90へ標準電圧Vsでの通電が行われ、フロントウインドガラス18の防曇に合わせて、リヤウインドガラス20の防曇が行われる。
また、エアコン12の吹出しモードがマルチモードに移行すると、熱線90への供給電圧Vを徐々に下降させて、リヤウインドガラス20の防曇性を確保しながら、消費電力の低減が図られる。
なお、本実施の形態では、エアコン12がオートDEFモードで吹出しモードを切換えるときに、排気熱回収量に応じて設定水温T1、T2を設定すると共に、排気熱回収量が多いときに、リヤデフォッガ14の熱線90へ供給する電力(電圧)を制御するようにしたが、本発明はこれに限るものではない。
例えば、エアコン12が排気熱回収量に応じて吹出しモードの切換えタイミングを制御するときに、リヤデフォッガ14が排気熱回収量にかかわらず、エアコン12がオートDEFモードで動作しているときの吹出しモードの切換えが行われるのに合わせて、熱線90への供給電圧Vを下降するように通電制御を行うものであっても良い。
これにより、排気熱回収量にかかわらず、リヤウインドガラス20の防曇性を確保しながら、消費電力の低減を図ることができる。
また、本実施の形態では、排気熱回収量に応じて、エアコン12の吹出しモードの切換えを制御するようにしたが、排気熱回収量にかかわらず、例えば、エアコン12が、水温センサ80の検出する冷却水の水温Twに基づいた一定のタイミングで吹出しモードの切換えを行い、リヤデフォッガ14では、排気熱回収量が多いときにのみ、熱線90への供給電圧Vを制御するようにしても良い。
例えば、図10(A)から図10(C)に示されるように、エアコン12は、排気熱回収量にかかわらず、設定水温Ts1、Ts2で吹出しモードの切換えを行い、リヤデフォッガ14では、排気熱回収量が多いと判定されるときにのみ、エアコン12の吹出しモードの切換えに応じて熱線90への供給電圧Vを制御するようにする。
これにより、リヤウインドガラス20の確実な防曇を図りながら、電力消費を抑えることができる。
すなわち、排気熱回収量にかかわらず、水温センサ80によって検出する冷却水の水温Twに基づいて空調を行うと、図10(C)に二点鎖線で示すように、排気熱回収量の多いときには、ヒータコア46に流れる実際の冷却水の水温が高くなる。これにより、排気熱回収量の少ないときに比べて、フロントウインドガラス18の温度上昇及び車室16A内の室温の上昇が促進され、これに伴って、リヤウインドガラス20の温度も上昇することになる。
ここで、排気熱回収量が多いときに、リヤデフォッガ14の熱線90への供給電圧Vを制御しても、リヤウインドガラス20の確実な防曇性の確保が可能となる。また、供給する通常の通電制御を行うときに比べて、電力消費を抑えることができる。
また、以上説明した本実施の形態は、本発明を限定するものではない。例えば、本実施の形態では、第1のウインドガラスをフロントウインドガラス18とし、第2のウインドガラスをリヤウインドガラス20として説明したが、本発明は、これに限らず、第1及び第2のウインドガラスとしてフロントウインドガラス18を適用しても良い。
また、本発明は、車両用空調装置と通電されることにより発熱する加熱手段を用いてウインドガラスの防曇が行われると共に、内燃機関の排気熱を回収して車室内の暖房が行われる任意の構成の車両に適用することができる。