以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係わる画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
図1に示すように、この画像形成装置10は、所定の読取位置(プラテン上)に載置される原稿30の画像を読取り、電気的な画像信号(画像データ)に変換する読取部(スキャナ部)11、読取部11により原稿30を読取走査して得られた画像データや、PC(パーソナル・コンピュータ)等の外部装置から入力された画像データに対して画像処理を施す画像処理部12、画像データや動作プログラム等の各種情報を記憶する記憶部13、画像処理部12により画像処理された画像信号(印刷データ)に基づき電子写真プロセスを実行して記録媒体(記録用紙)に該印刷データに対応する画像を形成(印刷)する画像形成部14、タッチパネル機能を有する大型ビットマップディスプレイ等から成る表示/操作部15、原稿読取(スキャン)、複写(コピー)、印刷(プリント)、ファクシミリ(FAX)通信等の各機能に係わる該当各部(FAX通信機能部については図示せず)の動作制御等、装置全体の制御を行なう制御部16、外部装置との間の通信インタフェースを司る外部インタフェース(I/F)部17を備えて構成される。
この画像処理装置10は、読取部11による原稿30の読取画像データや、外部I/F部17を通じてPC等の外部装置から入力される画像データを画像処理部12により画像処理して印刷データ(画像信号)を生成し、該印刷データを基に画像形成部14で記録用紙に画像を印刷して出力する制御機能を有する。
この画像形成装置10において、画像形成部14は、例えば、図2に示すように、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),黒(ブラック:K)の各色のトナー(C),(M),(Y)),(K)を用いて、それぞれ、C色,M色,Y色,K(黒)色の画像(トナー像)を形成する画像形成ユニット50C,50M,50Y,50Kを備えている。
各画像形成ユニット50C,50M,50Y,50Kは、それぞれ、画像処理部12から入力される当該各ユニットに対応する色成分(C成分,M成分,Y成分,K成分)の画像信号に基づきレーザ光による画像露光を行う露光部51C,51M,51Y,51K、上記画像露光により各色成分の画信号に応じた静電潜像が形成される像担持体としての感光体ドラム52C,52M,52Y,52K、静電潜像の形成前に感光体ドラム52C,52M,52Y,52Kの周面を帯電する帯電部53C,53M,53Y,53K、それぞれ異なる色(C,M,Y,K)のトナーが充填されており、感光体ドラム52C,52M,52Y,52K上に形成された上記静電潜像に該当する色のトナーを供給して当該各色のトナー像を形成する現像部54C,54M,54Y,54K、各色のトナー像を後述の転写ベルト61に転写した後の感光体ドラム52C,52M,52Y,52K上の残存トナーを掻き落として各ドラム(感光体ドラム52C,52M,52Y,52K)周面を清掃するドラムクリーナ部55C,55M,55Y,55Kを備える。
また、画像形成部14には、現像部54C,54M,54Y,54Kで現像された各色のトナー像を順次多重転写(一次転写)する中間転写ベルト(以下、転写ベルト)61、転写ベルト61に多重転写されたトナー像を後述の如く搬送される記録用紙90に転写(二次転写)する転写部62、該転写部62によって上記トナー像が転写された記録用紙90上に当該トナー像を定着する定着部63、転写部62での転写(二次転写)後に転写ベルト61上に残ったトナーを掻き落とすクリーニングブレード64、記録用紙90を収容する給紙カセット65、定着部63でトナー像が定着された記録用紙90を排出する排紙トレイ68、転写部62での二次転写に合わせて給紙カセット65から記録用紙90を1枚ずつ繰出して当該転写部62の転写位置まで搬送すると共に、該転写部62でトナー像が転写された記録用紙90を定着部63を経由して排紙トレイ68まで搬送する用紙搬送手段(図示せず)が設けられる。
また、画像形成部14には、上記各画像形成ユニット50C,50M,50Y,50Kの各感光体ドラム52C,52M,52Y,52Kに対応してベルト搬送ローラ71C,71M,71Y,71Kが設けられる。
この画像形成部14において、転写ベルト61は、感光体ドラム52Cとベルト搬送ローラ71C間、感光体ドラム52Mとベルト搬送ローラ71M間、感光体ドラム52Yとベルト搬送ローラ71Y間、感光体ドラム52Kとベルト搬送ローラ71K間、並びに、転写部62を構成するベルト搬送ローラ621と従動ローラ622間を通るように掛け渡される。
そして、画像処理部12から入力する画像信号(印刷データ)に基づく通常の印刷動作時には、ベルト搬送ローラ71C,71M,71Y,71Kをそれぞれ各感光体ドラム52C,52M,52Y,52Kに圧接し、かつ、転写部62のベルト搬送ローラ621を従動ローラ622に圧接した状態で、ベルト搬送ローラ71C,71M,71Y,71K及び621を回動して転写ベルト61を矢印で示す方向に回転させながら周知の電子写真プロセスを実施する。
このように、画像形成部14では、通常の印刷動作において、転写ベルト61は、各画像形成ユニット50C,50M,50Y,50Kの各感光体ドラム52C,52M,52Y,52Kに当接(コンタクト)した状態に保たれる。
更に、この画像形成装置10の画像形成部14においては、各画像形成ユニット50C、50M、50Yにおけるそれぞれの感光体ドラム52C,52M,52Yに対して転写ベルト61が当接された状態から、必要に応じて、これら各感光体ドラム52C,52M,52Yと転写ベルト61を離間(リトラクト)した状態に駆動するリトラクト機構を備える。
同様に、転写部62においても、ベルト搬送ローラ621と従動ローラ622が当接された状態から、ベルト搬送ローラ621及び転写ベルト61を従動ローラ622からリトラクトした状態に駆動するリトラクト機構を備える。
図3は、例えば、画像形成ユニット50Cを例に挙げたリトラクト機構の概念構成を示す図である。
図3において、同図(a)は、感光体ドラム52Cに対して転写ベルト61を当接(コンタクト)させた状態を示し、同図(b)は、感光体ドラム52Cに対して転写ベルト61を離間(リトラクト)させた状態を示している。
図3において、感光体ドラム52Cに対向設置されるベルト搬送ローラ71Cは、支持部材72に回動可能に支持されるとともに、該支持部材72の下部に設けられる弾性部材73が支持部材72に対して及ぼす力によって図の上方に付勢されている。
一方、支持部材72の外部にはステッピングモータ75Cが設けられ、該ステッピングモータ75Cの回転軸に取り付けられた偏心カム74が支持部材72の底面上の位置まで突き出して設けられている。
かかる構成において、ステッピングモータ75Cを回転駆動して偏心カム74を図3(a)に示す姿勢に回動させることにより、該偏心カム74が支持部材72の底面に当接しない状態のまま弾性部材73が支持部材72を上方に押し上げ、これによって、ベルト搬送ローラ71Cを介して転写ベルト61を感光体ドラム52Cに当接(コンタクト)させることができる。
一方、ステッピングモータ75Cを回転駆動して偏心カム74を図3(b)に示す姿勢に回動させることにより、偏心カム74が弾性部材73による上方への押上げ力に抗して支持部材72を下方に押し下げて感光体ドラム52Cとベルト搬送ローラ71C間を離間させ、これによって、転写ベルト61を感光体ドラム52Cから離間(リトラクト)した状態に保つことができる。
図3においては、C色画像形成ユニット50Cにおけるリトラクト機構(ステッピングモータ75Cで偏心カム74を回動する機構)の構成を示しているが、M,Yの各画像形成ユニット50M,50Yにおける感光体ドラム52M,52Yとベルト搬送ローラ71M,71Y間、並びに、転写部62における従動ローラ622とベルト搬送ローラ621間にも、これと同等のリトラクト機構(それぞれ、ステッピングモータ75M,75Y,623で偏心カム74を回動する機構)がそれぞれ設けられる。
これにより、画像形成装置10では、C,M,Yの各色の画像形成ユニット50C,50M,50Y及び転写部62において、各感光体ドラム52C,52M,52C及び従動ローラ622に対して、それぞれ、転写ベルト61をコンタクトさせた状態〔図3(a)参照〕とリトラクトさせた状態〔図3(b)参照〕とに選択的に駆動することができる。
図2において、各ベルト搬送ローラ71C,71M,71Y及び621近傍に矢印をもって付す“R”及び“C”の各符号は、それぞれ、該当各ベルト搬送ローラ71C,71M,71Y及び621の“リトラクト方向”及び“コンタクト方向”を指している。
本発明の画像形成装置10において、上記リトラクト機構は、各色の画像形成ユニット50C,50M,50Yで該当する色のトナーが所定期間以上継続して消費されなかった場合に該当各画像形成ユニット50C,50M,50Yの現像部54C,54M,54Yで発生する劣化トナーを排出するために利用される。
すなわち、本発明の画像形成装置10において、制御部16(図1参照)には、画像形成装置10の運用中、各画像形成ユニット50C,50M,50Yの現像部54C,54M,54Yで対応する色成分の画像情報に基づく電子写真プロセスが実施されない期間が所定期間以上続いた場合(トナーの劣化が発生した場合)、この条件を満たす画像形成ユニット50(50C,50M,50Y)の感光体ドラム52(52C,52M,52Y)を転写ベルト61からリトラクトさせ、該リトラクト状態で、該当する感光体ドラム52へ静電潜像を形成し、この静電潜像を現像部54(54C,54M,54Y)により各色のトナー像として現像することにより劣化トナーを排出させるトナー排出プロセスを実行させる劣化トナー排出制御部161が設けられる。
ここで、劣化トナー排出制御部161は、上記トナー排出プロセスとして、上述の如く感光体ドラム52を転写ベルト61からリトラクトさせた状態でのいわゆるドラムリトラクトモードによるトナー排出プロセスを実施するばかりでなく、各画像形成ユニット50(50C,50M,50Y)の感光体ドラム52(52C,52M,52Y)の転写ベルト61へのコンタクトを維持した状態で該当する感光体ドラム52へ静電潜像を形成し、この静電潜像を現像部54(54C,54M,54Y)により各色のトナー像として現像することにより劣化トナーを排出するドラムコンタクトモードによる劣化トナー排出プロセスを実施する制御機能も併せ持っている。
上記ドラムリトラクトモードまたはドラムコンタクトモードによるトナー排出プロセスを選択的に実行するために、劣化トナー排出制御部161は、各画像形成ユニット50C,50M,50Yの現像部54C,54M,54Yにおけるトナーの使用量を基にトナーの劣化状態をチェックする処理機能と、トナーが劣化した画像形成ユニット50で該劣化トナーを排出する際のドラムクリーナ部55に対するトナー供給量をチェックする処理機能を有する。
そして、上記各処理機能によりチェックされる、現像部54におけるトナー使用量とドラムクリーナ部55へのトナー供給量とに基づいて上記ドラムリトラクトモードまたはドラムコンタクトモードを選択的に設定して該当モードによるトナー排出プロセスを実施する。
図4は、本発明に係わる画像形成装置10の制御系の機能構成を示すブロック図である。
図4に示すように、画像形成装置10の画像処理部12には、読取部11で原稿30を読取走査して得た画像信号等の入力画像信号を画像処理して各色成分(C成分,M成分,Y成分,K成分)の画像信号(印刷データ)を生成、出力する画像処理回路〔ビデオASIC(Application Specific Integrated Circuit)〕121と、画像処理回路121が出力する各色成分の画像信号毎に印刷する画素として有効な画素(有彩画素)の画素数を計数し、該計数値(ICDCカウント値)を出力する画素カウンタ(ICDCカウンタ)122を備える。
また、画像形成部14を構成するC,M,Y,Kの各画像形成ユニット50C,50M,50Y,50Kには、それぞれ、感光体ドラム52C,52M,52Y,52Kの回転数を計数してその計数値を出力するドラム回転カウンタ(図示せず)が設けられる。
制御部16において、劣化トナー排出制御部161は、ICDCカウンタ122が出力する各色成分のICDCカウント値を取り込むと共に、C,M,Yの各画像形成ユニット50C,50M,50Yのドラム回転カウンタが、それぞれに出力する感光体ドラム52C,52M,52Yの回転数の計数値を取り込んで、該各感光体ドラム52C,52M,52Yが所定回転する間のICDCカウント値の累計値を基に各画像形成ユニット50C,50M,50Yの現像部54C,54M,54Yにおける各色のトナーの使用量を各々算出し、該トナー使用量が予め設定した値(後述する閾値A)よりも小さいかどうかにより劣化トナーとして排出するか否かを決定する。
また、劣化トナー排出制御部161は、上記の如く算出された感光体ドラム所定回転数当りのICDCカウント値(累計値)が、別に設定した値(後述する閾値B)より小さいかどうかにより該当する画像形成ユニットのドラムクリーナ部55へのトナー供給量が過多であるかどうかをチェックし、そのチェック結果に応じて、上記劣化トナーの排出に関するドラムリトラクトモードかドラムコンタクトモードを決定する。
ドラムリトラクトモードにおいて、劣化トナー排出制御部161は、リトラクト対象の画像形成ユニット50C,50M,50Yに対応するステッピングモータ75C,75M,75Y宛のリトラクト指令をリトラクトドライバ18に送出することにより、該リトラクトドライバ18によって該ステッピングモータ75C,75M,75Yをその回転軸に支持される偏心カム74が図3(b)に示す姿勢になるように回転駆動し、これにより、ベルト搬送ローラ71C,71M,71Yを感光体ドラム52C,52M,52Yから離間させることにより該感光体ドラム52C,52M,52Yを転写ベルト61に対してリトラクトさせる。
一方、ドラムコンタクトモード(通常印刷処理時も同様)において、劣化トナー排出制御部161は、C,M,Yの各画像形成ユニット50C,50M,50Yに対応するステッピングモータ75C,75M,75Y宛にそれぞれコンタクト指令を送出し、リトラクトドライバ18によりこれらステッピングモータ75C,75M,75Yをその回転軸に支持される偏心カム74が図3(a)に示す姿勢になるように回転駆動し、これにより、ベルト搬送ローラ71C,71M,71Yを転写ベルト61を挟んで感光体ドラム52C,52M,52Yにコンタクトさせた状態にさせる一方、転写部62に対応するステッピングモータ623宛にはリトラクト指令を送出し、リトラクトドライバ18により該ステッピングモータ623をその回転軸に支持される偏心カム74が図3(b)に示す姿勢になるように回転駆動することによって、ベルト搬送ローラ621及び転写ベルト61を従動ローラ622からリトラクトさせる。
また、通常印刷処理時、制御部16は、各画像形成ユニット50C,50M,50Y,50Kを対象とする電子写真プロセスの制御を実施し、該電子写真プロセスに合わせて、給紙カセット(給紙カセット1)65aあるいは給紙カセット(給紙カセット2)65bに対応するモータ67aあるいは67b宛の給紙開始指令または給紙停止指令を用紙搬送ドライバ19に送出し、該用紙搬送ドライバ19を通じてモータ67aあるいは67bを回転、回転停止して給紙ローラ66a,66bを回転、回転停止することで該当する給紙カセット65a,65bからの記録用紙90の給紙、給紙停止の制御を行う。
また、上記ドラムコンタクトモードにおいて、劣化トナー排出制御部161は、モータ67aあるいは67b宛に給紙停止指令を送出することにより該当する給紙カセット65a,65bからの記録用紙90の給紙を停止するように制御する。
図1〜図4に示す構成を踏まえて、以下、本発明の画像形成装置10の印刷処理動作について説明する。
まず、この画像形成装置10における通常印刷処理時の概略動作について、原稿30を複写する場合を例に挙げて説明する。
この画像形成装置10において、プラテン上に原稿30をセットした状態で表示/操作部15でコピー開始操作行われると、読取部11は、該原稿30を光源によって照射し、原稿30からの反射光像を縮小光学系を介してCCD等から成る画像読取素子上に走査露光して、該画像読取素子により原稿30の反射光像を所定のドット密度で読取る。
読取部11によって読取られた原稿反射光像は、多色の原稿反射率データとして画像処理部12に送られる。
画像処理部12は、読取部11から送られてくる原稿反射率データを取り込んで画像処理回路(ビデオASIC)121により画像処理を施すことにより各色成分の原稿階調データ(C,M,Y,K)を生成し、該生成した各色成分の原稿階調データ(画像信号:印刷データ)を画像形成部14に送出する。
画像処理部12で生成された、C,M,Y,Kの各成分の画像信号は画像形成部14のそれぞれ対応する画像形成ユニット50C,50M,50Y,50Kの各露光部51C,51M,51Y,51Kに送られる。
露光部51C,51M,51Y,51Kは、それぞれ対応する画像信号に応じて、対応する各感光体ドラム52C,52M,52Y,52K上にレーザ光による画像露光を行い、上記各成分に対応する静電潜像を形成する。
感光体ドラム52C,52M,52Y,52K上に形成された静電潜像は、シアン色トナーを充填した現像部54C、マゼンタ色トナーを充填した現像部54M、イエロー色トナーを充填した現像部54Y、黒(K)色トナーを充填した現像部54Kによって、それぞれ、シアン色トナー、マゼンタ色トナー、イエロー色トナー、黒色トナーにより現像されて各々トナー像化される。
感光体ドラム52C,52M,52Y,52K上にそれぞれ形成された各色(シアン色,マゼンタ色,イエロー色,黒色)のトナー像は、該感光体ドラム52C,52M,52Y,52Kの下部に当接、搬送される転写ベルト61上に順次重ね合わせた状態で転写(多重転写)される。
ここで、転写ベルト61は、上述した方法で、ベルト搬送ローラ71C,71M,71Y,71K及び621等により感光体ドラム52C,52M,52Y,52Kの周速と同一の移動速度で図2の矢印方向に沿って回動され、当該回動に合わせて、上記各感光体ドラム52C,52M,52Y,52Kから転写ベルト61上への各トナー像の多重転写が行われる。
転写ベルト61上に転写された多重トナー像は、転写部62において、所定のタイミングで搬送されてくる記録用紙90上に圧接力及び静電吸引力によって転写される。
なお、記録用紙90は、装置本体内に配置された複数の給紙カセット65(図4の例では、給紙カセット1及び2)から、所定のサイズのものがフィードローラ66(同、66a,66b)によって繰り出され、更に、複数の搬送ロール及びレジストロール(図示せず)によって、所定のタイミングで転写ベルト61の2次転写位置(転写部62)まで搬送される。
そして、転写部62では、転写ベルト61上から記録用紙90へと上記多重転写トナー像が一括して転写される。
転写ベルト61上から多重転写トナー像の転写がなされた記録用紙90は、次いで、転写ベルト61から分離された後、定着部63へと搬送され、該定着部63の加熱ローラ631及び加圧632によって、熱及び圧力でトナー像が記録用紙90上に定着され、排紙トレイ68に排出される。
このように、入力画像信号中の各色成分毎に電子写真プロセスを実施する複数の画像形成ユニット50(50C,50M,50Y,50K)を備える画像形成装置10では、入力画像信号によって、各画像形成ユニット50のトナーの消費量が異なってくる。
一方で、この画像形成装置10は、各画像形成ユニット50においてトナーの消費がなされない状態においても、その現像部54が駆動した状態(ON状態)に維持されるのが前提となっており、このため、エリアカバレッジの低い画像信号が入力される画像形成ユニット50、つまり、自ユニットの色成分の画像信号が到来しない期間が長く(所定期間以上)続く画像形成ユニット50の現像部54ではトナーの劣化が生じることになる。
このための対策として、本発明の画像形成装置10では、制御部16(劣化トナー排出制御部161)が、各画像形成ユニット50の現像部54内の劣化トナーを上述したリトラクト機構の駆動を通して排出する制御を行う。
図5は、本発明の画像形成装置10における劣化トナー排出処理動作を示すフローチャートである。
図5に示すように、画像形成装置10の運用中(通常印刷処理の実施中)、劣化トナー排出制御部161は、各画像形成ユニット50の現像部54内のトナー劣化状態を監視している(ステップS101a)。
このトナー劣化状態監視処理の具体例として、劣化トナー排出制御部161は、ICDCカウンタ122が各色成分の画像信号の画素数をカウントするのに合わせて該カウント値を当該ICDCカウンタ122から取り込む一方、各画像形成ユニット50でドラム回転数カウンタが該当する感光体ドラム52の回転数をカウントするのに合わせて該カウント値(ドラム回転数)を当該ドラム回転数カウンタから取り込む。
そのうえで、該取り込んだICDCカウント値とドラム回転数に基づき、現像部54がON状態の時に感光体ドラム52が例えば1000回転する間のICDCカウント値の累計値を各画像形成ユニット50毎に算出し、該算出されたドラム1000回転当りのICDCカウント値が予め設定されている閾値Aよりも小さいか否かを各画像形成ユニット50毎にチェックする(ステップS101b)。
ここで、いずれの画像形成ユニット50についても、算出したドラム1000回転当りのICDCカウント値が閾値Aよりも大きい場合(ステップS101bNO)、トナーの劣化が発生していないものとして処理を終了する。
これに対して、いずれかの画像形成ユニット50に関して、算出したドラム1000回転当りのICDCカウント値が閾値Aよりも小さいと判定された場合(ステップS101bYES)、劣化トナー排出制御部161は、トナーの劣化が発生しているものと判定し、該画像形成ユニット50を劣化トナー排出対象として当該劣化トナーを排出するための準備としてまず、トナー排出量を算出する(ステップS102)。
ここで、トナー排出量は、劣化トナー排出対象の画像形成ユニット50に関してステップS101bで算出したドラム1000回転当りのICDCカウント値に基づいて算出される。
次いで、劣化トナー排出制御部161は、劣化トナー排出対象の画像形成ユニット50のドラムクリーナ部55へのトナー供給量をチェックする(ステップS103a)。
このステップS103bにおけるトナー供給量チェック処理は、ステップS102で算出されたトナー排出量が、当該量のトナーを後述するドラムリトラクトモードで排出するプロセスを実施した場合に、劣化トナー排出対象の当該画像形成ユニット50のドラムクリーナ部55が次の画像形成プロセスに支障を来たすことのない(画像劣化を来たすことのない)レベルで感光体ドラム52を清掃可能なトナー量であるか否かをチェックするための処理であり、具体的には、上記ステップS101bで既に算出しているドラム1000回転当りのICDCカウント値の累計値が、予め設定しておいた閾値B(閾値B<閾値A)よりも小さいか否かがチェックされる(ステップS103b)。
ここで、ドラム1000回転当りのICDCカウント値の累計値が閾値Bよりも大きい場合(ステップS103bNO)、劣化トナー排出制御部161は、ドラムコンタクトモードによる劣化トナー排出サイクル(図7参照)を実施する(ステップS106)。
これに対し、ドラム1000回転当りのICDCカウント値の累計値が閾値Bよりも小さい場合(ステップS103bYES)、次いで、劣化トナー排出制御部161は、劣化トナー排出対象の画像形成ユニット50の感光体ドラム52の使用予定時間をチェックする(ステップS104a)。
具体的には、劣化トナー排出対象の画像形成ユニット50に対応する色成分の画像信号を蓄積しておき、該画像信号を基に、現時点から次の画素を印刷開始するまでに要する時間を感光体ドラム50の未使用時間(ドラム未使用時間)として算出する処理を開始する。
この処理において、ドラム未使用時間が算出できず、ドラム未使用時間が不明であると判定された場合(ステップS104bYES)、劣化トナー排出制御部161は、ドラムコンタクトモードによる劣化トナー排出サイクルを実施する(ステップS106)。
これに対し、ドラム未使用時間が算出できた場合(ステップS104bNO)、次いで、劣化トナー排出制御部161は、該画像形成ユニット50の感光体ドラム52をリトラクトさせる時間と、該リトラクト状態で劣化トナー排出サイクルを実施する時間と、感光体ドラム52をリトラクト状態からコンタクト状態に復帰させる時間の累計値をドラムリトラクトモードによる劣化トナー排出サイクル総時間として算出し、ドラム未使用期間が劣化トナー排出サイクル総時間よりも長いか否かをチェックする(ステップS104c)。
ここで、ドラム未使用期間が劣化トナー排出サイクル総時間よりも短い場合(ステップS104cNO)、劣化トナー排出制御部161は、ドラムコンタクトモードによる劣化トナー排出サイクルを実施する(ステップS106)。
これに対して、ドラム未使用期間が劣化トナー排出サイクル総時間よりも長い場合(ステップS104cYES)、劣化トナー排出制御部161は、ドラムリトラクトモードによる劣化トナー排出サイクル(図6参照)を実施する(ステップS105)。
次に、本発明の画像形成装置10におけるドラムリトラクトモードでの劣化トナー排出サイクル(図5のステップS105)、及び、ドラムコンタクトモードでの劣化トナー排出サイクル(同、ステップS106)について具体例を挙げて説明する。
まず初めに、図6を参照して、ドラムリトラクトモードでの劣化トナー排出サイクルについて説明する。
図6は、M色画像形成ユニット50Mを劣化トナー排出対象とするドラムリトラクトモードによる劣化トナー排出サイクルの動作概要を示す概念図である。
先に述べた図5におけるステップS101b→ステップS103bYES→ステップS104bNO→ステップS104cYESの処理を経て、M色画像形成ユニット50Mが劣化トナー排出対象として決定されると、劣化トナー排出制御部161は、図6に示すように、まず、該画像形成ユニット50Mに対応するステッピングモータ75Mを回転駆動〔図3(b)参照〕することにより、感光体ドラム52Mを転写ベルト61に対してリトラクトさせる(図6:S105a)。
次に、画像処理部12の画像処理回路121でマゼンタ成分の所定濃度のベタの画像信号(例えば、全印刷領域が濃度Mパーセントの画像から成る画像信号)を生成して画像形成ユニット50Mの露光部51Mに供給し、該画像信号に基づく劣化トナー排出のためのトナー像形成プロセスを開始させる(図6:S105b)。
このプロセスにおいて、劣化トナー排出制御部161は、感光体ドラム52Mを上記の如くリトラクトした状態で、該感光体ドラム52Mを図示しない駆動手段により回動させながら、露光部51Mで上述したベタの画像信号に基づき感光体ドラム52M上に静電潜像を形成し、次いで、現像部54Mからマゼンタトナーを供給して該静電潜像をマゼンタトナー像として現像し、その後、該感光体ドラム52M上に形成されたトナー像をドラムクリーナ部55Mで掻き落として清掃(図6:S105c)する処理を行うように各部を駆動制御する。
このドラムリトラクトによるトナー像形成プロセスは、該劣化トナー排出対象のM色画像形成ユニット50Mに関して図5のステップS102で算出したトナー排出量に相当する量のトナーを供給(排出)し終えるまで続行される。
そして、上記トナー排出量に相当する量のトナーを供給し終えたことが検知されると、その時点で、劣化トナー排出制御部161は、当該M色画像形成ユニット50Mに対応するステッピングモータ75Mを回転駆動〔図3(a)参照〕することにより、ベルト搬送ローラ71Mを転写ベルト61を挟んで感光体ドラム52Mにコンタクトさせた状態に戻し(図6:S105d)、以後、通常の印刷処理プロセスに復帰するように各部を制御する。
なお、上述したドラムリトラクト状態でのトナー像形成プロセスは、該M色画像形成ユニット50Mにおける感光体ドラム52Mの未使用時間がドラムリトラクトモード劣化トナー排出サイクル総時間よりも長いことが確認された(図5のステップS104cYES)時にのみ実施されるため、この間(M色画像形成ユニット50Mにおけるドラムリトラクトによるトナー像形成プロセス実施期間)も、ドラムコンタクト状態にあるC,Y,Kの各画像形成ユニット50C,50Y,50Kを用いた印刷処理プロセスは通常通りに行うことができる。
図6においては、M色画像形成ユニット50Mにおけるドラムリトラクトによる劣化トナー排出サイクルの実施態様について述べたが、他の各画像形成ユニット50C,50Yについても、同様に、ドラムリトラクトによる劣化トナー排出サイクルを実施することができる。
このように、本発明では、各画像形成ユニット毎に、感光体ドラム52を転写ベルト61からリトラクトさせるリトラクト機構を設け、対応する色成分の画像情報に基づく電子写真プロセスが実施されない期間が所定期間以上続く画像形成ユニット50がトナー排出対象として選定されると、当該画像形成ユニット50において感光体ドラム52を転写ベルト61からリトラクトさせた状態で、感光体ドラム52に静電潜像を形成し、該静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成するプロセスを経て劣化トナーを排出するサイクルを実施可能な構成としたため、劣化トナーが生じた画像形成ユニット50のみをドラムリトラクト状態にして劣化トナー排出サイクルを実施することにより、トナーが劣化状態にない他の画像形成ユニットによる通常の印刷処理を続けたまま劣化トナーを排出でき、用紙搬送を中断してトナー排出サイクルを実施する必要がないことから、高い生産性を維持できる。
次に、本発明の画像形成装置10におけるドラムコンタクトモードでの劣化トナー排出サイクルについて図7を参照して説明する。
図7は、C色画像形成ユニット50Cを劣化トナー排出対象とするドラムコンタクトモードによる劣化トナー排出サイクルの動作概要を示す概念図である。
先に述べた図5におけるステップS101bNO、ステップS103bNO、ステップS104bYES及びステップS104cNOのいずれかの処理を経て、C色画像形成ユニット50Cが劣化トナー排出対象として決定されると、劣化トナー排出制御部161は、図7に示すように、例えば、給紙カセット65(給紙カセット1)に対応するモータ67aの回転駆動を止めることにより、該給紙カセット65からの給紙を停止する(図7:S106a)。
次に、C,M,Yの各画像形成ユニット50C,50M,50Yに対応するステッピングモータ75C,75M,75Yの回転駆動〔図3(a)参照〕を現在のままに保持し、各感光体ドラム52C,52M,52Yを転写ベルト61に対してコンタクトさせた状態を維持する。
また、この時、転写部62のベルト搬送ローラ621に対応するステッピングモータ633をリトラクトドライバ18により回転駆動〔図3(b)参照〕することにより、ベルト搬送ローラ621をリトラクトさせる(図7:S106b)。
この状態、転写ベルト61を回動させながら、画像処理部12の画像処理回路121でシアン成分の濃度Mパーセントのベタの画像信号を生成してC色画像形成ユニット50Cの露光部51Cに供給し、該画像信号に基づく劣化トナー排出のためのトナー像形成プロセスを開始させる(図7:S106c)。
このプロセスにおいて、劣化トナー排出制御部161は、ベルト搬送ローラ71C,71M,71Y,71Kを回転駆動して転写ベルト61を同図の矢印方向に回動させながら、露光部51Cで上述したベタの画像信号に基づき感光体ドラム52C上に静電潜像を形成し、次いで、現像部54Cからシアントナーを供給して該静電潜像をシアントナー像として現像し、その後、該感光体ドラム52C上のシアントナー像を転写ベルト61に転写させる。
その後、転写ベルト61の回動につれて該転写ベルト61上のシアントナー像が転写部62(ベルト搬送ローラ621がリトラクト状態にある)を経由し、更に、クリーニングブレード64を通過する際に、該クリーニングブレード64によりシアントナー像を掻き落として該転写ベルト61を清掃する(図7:S106d)動作を行うように各部を駆動制御する。
このドラムコンタクトによるトナー像形成プロセスは、該劣化トナー排出対象のC色画像形成ユニット50Cに関して図5のステップS102で算出したトナー排出量に相当する量のトナーを供給し終えたことが検知されるまで繰り返し続行される。
そして、上記トナー排出量に相当する量のトナーを供給し終えたことが検知されると、その時点で、劣化トナー排出制御部161は、転写部62のベルト搬送ローラ6221を転写ベルト61を挟んで従動ローラ622にコンタクトさせた状態に戻し(図7:S106e)、以後、通常の印刷処理プロセスに復帰するように各部を制御する。
図7においては、C色画像形成ユニット50Cを対象にしたドラムコンタクトによる劣化トナー排出サイクルの実施態様について述べたが、画像形成ユニット50C,50Yについても、同様に、ドラムコンタクトによる劣化トナー排出サイクルを実施することができる。
このように、本発明では、上述したドラムリトラクトによる劣化トナー排出サイクル(図6参照)の他、各画像形成ユニット50の感光体ドラム52を転写ベルト61に対してコンタクトさせた状態で劣化トナーを排出するプロセスを実施(図7参照)する制御機能も有する。
すなわち、本発明によれば、感光体ドラム52の所定回転数当りの画素数を基に算出されたトナー消費量が所定量(閾値A)に満たないことで劣化トナー排出対象とされた画像形成ユニット50に関して、同じく、感光体ドラム52の所定回転数当りの画素数を基に算出されたドラムクリーナ部55へのトナー供給量(図5のステップS103b参照)の移動平均が、図6に示したドラムリトラクト状態での劣化トナー排出サイクルでは当該画像形成ユニット50のドラムクリーナ部55のクリーニング能力を超える量となった場合(閾値Bより大きい場合)には、当該画像形成ユニット50を対象に上述したドラムコンタクトモードによる劣化トナー排出サイクルを実施することができる。
このように、各画像形成ユニット50におけるトナー消費量と、ドラムクリーナ部55に対するトナー供給量とに基づいてドラムリトラクトモードまたはドラムコンタクトモードによる劣化トナー排出サイクルを選択的に実施可能な本発明の構成によれば、ドラムリトラクトモードでの劣化トナー排出サイクルを実行することで上述の如く生産性低下を防止できると共に、ドラムコンタクトモードでの劣化トナー排出サイクルを実行することで、劣化トナー排出対象の画像形成ユニット50のドラムクリーナ部55では対処しきれない量の劣化トナーの排出も確実にしつつ、ドラムクリーナ部55に対するトナー供給が過多となるのを防止でき、結果的に、生産性低下防止と、ドラムクリーナ部55のクリーニング性能低下防止の両立が可能となる。
この他、本発明は、上記し、且つ図面に示す実施例に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
例えば、上記実施例では、黒色画像形成ユニット50Kについてはドラムリトラクトモードによる劣化トナー排出サイクルの適用外としたが、該画像形成ユニット50Kについてもリトラクト機構を設け、ドラムリトラクトモードによる劣化トナー排出サイクル、あるいは、ドラムコンタクトモードによる劣化トナー排出サイクルを実施する構成としても良い。
また、上記実施例において、感光体ドラム52を転写ベルト61からリトラクトさせる機構は、感光体ドラム52に対応するベルト搬送ローラ71を該感光体ドラム52から離間させるのに追従して転写ベルト61を感光体ドラム52からリトラクトさせる機構を採用しているが、これに限らず、感光体ドラム52を画像形成ユニット毎移動させて転写ベルト61からリトラクトさせる機構等、種々の機構を採用することができる。
また、上記実施例では複合機への適用例を挙げたが、本発明は、複数の画像形成ユニットを有するタンデム方式の画像形成装置全般的に適用可能である。
10…画像形成装置、11…読取部、12…画像処理部、121…画像処理回路(ビデオASIC)、122…画素カウンタ(ICDCカウンタ)、13…記憶部、14…画像形成部、15…表示/操作部、16…制御部、161…劣化トナー排出制御部、17…外部インタフェース(I/F)部、18…リトラクトドライバ、19…用紙搬送ドライバ、30…原稿、50C,50M,50Y,50K…画像形成ユニット、51C,51M,51Y,51K…露光部、52C,52M,52Y,52K…感光体ドラム、53C,53M,53Y,53K…帯電部、54C,54M,54Y,54K…現像部、55C,55M,55Y,55K…ドラムクリーナ部、61…転写ベルト、62…転写部、621…ベルト搬送ローラ、622…従動ローラ、63…定着部、631…加熱ローラ、632…加圧ローラ、64…クリーニングブレード、65,65a,65b…給紙カセット、66,66a,66b…給紙ローラ、67a,67b…モータ、68…排紙トレイ、71C,71M,71Y,71K…ベルト搬送ローラ、72…支持部材、73…弾性部材、74…偏心カム、75C,75M,75Y,623…ステッピングモータ、90…記録用紙