JP4899162B2 - 走査型プローブ顕微鏡用プローブ及びそれを用いた走査型プローブ顕微鏡 - Google Patents
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Description
従来の走査型プローブ顕微鏡では、容量や電流といった試料表面の局所的な電気特性を検知するにあたり、シリコン製の片持ち梁(カンチレバー)の先端に形成されたチップに、約100nm程度の厚みの金属膜を被覆した構造を導電性プローブとして一般的に利用している(例えば、特許文献1参照。)。
またこのプローブと、対象測定物である試料表面との間の距離は、プローブ背面にレーザー光を照射し、その反射スポット位置を測定することにより制御している(この方式は「光てこ」方式と呼ばれている。)。
(1)導電性を確保するための金属膜の厚みは100nm程度と薄く、バルク金属にくらべると高インピーダンスである。さらに、導電性プローブと被測定試料間に働く摩擦によって、この金属膜は剥離してしまい、残ったシリコン製の片持ち梁が接続することになるため、結果としてさらに高インピーダンスになる。このため、電気的測定をするには非常に不向きとなる。
(2)半導体試料を測定する場合、プローブ背面に照射したレーザー光の光起電力効果によって、試料(半導体)中にキャリアが誘起され、したがって試料表面の局所的な電気構造が本来の状態から乱されてしまう。
(1a)バルク金属と同程度の低インピーダンス、
(2a)対象測定物である試料表面をトレースするプローブの位置を計測するために、光てこ方式などの光学的手段を用いない、
の2点が望まれている。
本発明の目的は、上記従来要望点に鑑み、接触抵抗をバルク金属と同程度の低インピーダンスにすると共に、光学的手段以外の手段により、対象測定物である試料表面をトレースするプローブの位置を計測する走査型プローブ顕微鏡用プローブ及びそれを用いた走査型プローブ顕微鏡を提供することにある。
(1)少なくとも、一端を先鋭化した金属バネと、圧電素子と、これらを支持する複数のホルダーから構成されるプローブであって、
前記金属バネはその一部が圧電素子に接し、前記金属バネの先端が、被測定試料表面に対して垂直方向を主成分とした向きに移動自在に配置されるように、前記金属バネの基部は第1ホルダーに固着され、前記圧電素子は別の独立した第2ホルダーに保持され、上記第2ホルダーは、前記圧電素子と前記金属バネの接触状態を変化せしめるように、その位置が調節可能となっていることを特徴とする。
(2)前記金属バネは、前記圧電素子との接触部位と前記金属バネの先端の間において、その先端が被測定試料表面に対して垂直となる曲げ部を有していることを特徴とする。
(4)前記圧電素子が、水晶振動子であることを特徴とする。
(5)前記水晶振動子が、2つの板状バネ部(以下プロンジ)を有する音叉状に構成されており、前記金属バネはそのプロンジの長手軸線の方向に対して直角方向を向くように、前記プロンジの外縁部に接触していることを特徴とする。
(6)前記圧電素子が、それに固有の共振周波数近傍で前記金属バネを励振することを特徴とする。
(8)前記金属バネを励振する前記圧電素子によって、前記金属バネの振動状態を電気的に検出することを特徴とする請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡。
(9)前記圧電素子の振動を検出する手段によって検出される信号が、前記金属バネ先端と前記被測定試料との力学的相互作用の変化によってもたらされるところの前記圧電素子の共振振動の振幅又は共振周波数又は共振のQ値のいずれか1つであることを特徴とする。
(11)前記金属バネ先端と前記被測定試料との間の電気的情報を検出するに際して、前記金属バネを励振する前記圧電素子が、その振動状態においてある一定範囲の位相を保持した状態の場合にのみ、前記電気的情報を取り込むことを特徴とする。
バルク金属から形成されている金属バネは低インピーダンスなので、電気的測定するにあたり従来の金属膜を被覆した構造の導電性プローブと比べ、金属膜の剥離等が発生しないこととなり、長期に渡り測定感度が向上できる。
また、金属バネを励振する水晶振動子によって振動の検出を電気的に行うので、従来用いられていた光学系を必要としなくなり、このため、半導体試料を測定する場合、光起電力効果による試料表面の局所的電気構造の擾乱の恐れが無くなる。
プローブAは、金属バネ1、音叉型水晶振動子2、第2ホルダー3、第3ホルダー4、第4ホルダー5、第1ホルダー6、プローブホルダー7から構成される。
金属バネ1は、その先鋭化された先端1aが図面上で−Z(Z軸下向き)方向を向くように中折れ部を有している。この金属バネ1は、例えば直径〜50μm程度のW(タングステン)、Pt(白金)/Ir(イリジウム)あるいはNi(ニッケル)などの金属線材をL字状に折り曲げ加工し、その一端を例えば錐形のように先鋭化することにより形成する。この先端1aの先鋭化は、金属線材に薬液エッチングによる電解研磨プロセス加工、あるいは放電加工プロセス加工等を施すことによって達成される。さらに、加工された先端1aの先端曲率半径は、薬液の濃度・印加電圧・エッチング時間、あるいは放電電圧・加工時間等によって制御することが可能であり、従って、先端3aの曲率半径は再現性よく実現できる。金属バネ1は、圧電素子である音叉型水晶振動子2との接触部位と前記金属バネの先端の間において、その先端が被測定試料表面に対して垂直となる曲げ部を有している。
ホルダー7は、第4ホルダー5と第1ホルダー6と後記する第3ホルダー4を移動自在に保持するための大きな平面を有する。
このように、音叉型水晶振動子2は、その上下左右方向の位置をそれぞれ第2ホルダー3及び第3ホルダー4によって移動することが出来るので、金属バネ1との接触状態を調整することが可能である。
その際、金属バネ1を励振する圧電素子の音叉型水晶振動子2によって、金属バネ1の振動状態を電気的に検出する。
圧電素子の音叉型水晶振動子2で振動を検出する手段によって検出される信号は、金属バネ1先端と被測定試料との力学的相互作用の変化によってもたらされるところの圧電素子の音叉型水晶振動子2の共振振動の振幅又は共振周波数又は共振のQ値のいずれか1つとする。
金属バネ1先端と被測定試料との間の電気的情報を検出するに際して、金属バネ1を励振する圧電素子の音叉型水晶振動子2が、その振動状態においてある一定範囲の位相を保持した状態の場合にのみ、電気的情報を取り込むようにする。
ここで、音叉型水晶振動子2の共振特性に影響を与えるのは、前記金属バネ1固有の共振周波数である。金属バネ1固有の共振周波数が、音叉型水晶振動子2の共振周波数に等しければ、金属バネ1の励振に際して音叉型水晶振動子2の共振特性は最も良好となり、高い共振Q値を保持することができる。
次に示す図2は、本発明による走査型プローブ顕微鏡用プローブを用いた、走査型プローブ顕微鏡の実施例を示す図である。
f0に合わせた周波数f0の交流電圧を供給している。
圧電効果による音叉型水晶振動子2からの電流信号は振動検出器13に入力され、音叉型水晶振動子2の振動の振幅、あるいは音叉型水晶振動子2の共振周波数、あるいは音叉型水晶振動子2の共振のQ値などの、音叉型水晶振動子2の共振状態に関わる出力信号として用いられる。
さらに金属バネ1の一端には、電気情報計測器14が接続されており、金属バネ1の先鋭化された先端部1aと被測定試料8の間を流れる電流や、あるいはその両者間の静電容量などの物理量を計測することが出来る。
図2に示す本発明の走査型プローブ顕微鏡において、測定の対象となるのは被測定試料8表面の局所的な電気特性である。一方、上で述べたように金属バネ1は音叉型水晶振動子2によって励振されており、その先端部1aは上下方向に振動している。
1a 金属バネの先端
2 音叉型水晶振動子(圧電素子)
3 第2ホルダー
3b 第2ホルダー用移動ガイド
3c 第2ホルダー用固定ネジ
4 第3ホルダー
4b 第3ホルダー用移動ガイド
4c 第3ホルダー用固定ネジ
5 第4ホルダー
5b 第4ホルダー用移動ガイド
5c 第4ホルダー用固定ネジ
6 第1ホルダー
6c 第1ホルダー用固定ネジ
7 プローブホルダー
8 被測定試料
9 走査用圧電素子
10 交流電圧源
11 直流電圧源
12 発振器
13 振動検出器
14 電気情報計測器
15 走査制御装置
16 比較検波器
17 画像化装置
Claims (11)
- 少なくとも、一端を先鋭化した金属バネと、圧電素子と、これらを支持する複数のホルダーから構成されるプローブであって、前記金属バネはその一部が圧電素子に接触し、前記金属バネの先端が、被測定試料表面に対して垂直方向を主成分とした向きに移動自在に配置されるように、前記金属バネの基部は第1ホルダーに固着され、前記圧電素子は別の独立した第2ホルダーに保持され、上記第2ホルダーは、前記圧電素子と前記金属バネの接触状態を変化せしめるように、その位置が調節可能となっていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用のプローブ。
- 前記金属バネは、前記圧電素子との接触部位と前記金属バネの先端の間において、その先端が被測定試料表面に対して垂直となる曲げ部を有していることを特徴とする請求項1記載のプローブ。
- 前記金属バネが、金属線材により形成されていることを特徴とする請求項1記載のプローブ。
- 前記圧電素子が、水晶振動子であることを特徴とする請求項1記載のプローブ。
- 前記水晶振動子が、2つの板状バネ部(以下プロンジ)を有する音叉状に構成されており、前記金属バネはそのプロンジの長手軸線の方向に対して直角方向を向くように、前記プロンジの外縁部に接触していることを特徴とする請求項1記載のプローブ。
- 前記圧電素子が、それに固有の共振周波数近傍で前記金属バネを励振することを特徴とする請求項1記載のプローブ。
- 前記金属バネにおいて、その固定端から先端までの距離、及び前記金属バネの断面積・材質で決まる前記金属バネのバネ定数が、前記圧電素子のバネ定数と等しくなるよう、前記金属バネの基部を保持する第1ホルダー上の固定端位置を可変せしめることを可能とする機構を有することを特徴とする請求項1記載のプローブ。
- 前記金属バネを励振する前記圧電素子によって、前記金属バネの振動状態を電気的に検出することを特徴とする請求項1記載のプローブ。
- 前記圧電素子の振動を検出する手段によって検出される信号が、前記金属バネ先端と前記被測定試料との力学的相互作用の変化によってもたらされるところの前記圧電素子の共振振動の振幅又は共振周波数又は共振のQ値のいずれか1つであることを特徴とする請求項1記載のプローブを用いた走査型プローブ顕微鏡。
- 前記金属バネ先端と前記被測定試料との間の電気的情報を検出するに際して、前記金属バネ先端が前記被測定試料に最近接した時にのみ前記電気的情報を取り込むことを特徴とする請求項1記載のプローブを用いた走査型プローブ顕微鏡。
- 前記金属バネ先端と前記被測定試料との間の電気的情報を検出するに際して、前記金属バネを励振する前記圧電素子が、その振動状態においてある一定範囲の位相を保持した状態の場合にのみ、前記電気的情報を取り込むことを特徴とする請求項1記載のプローブを用いた走査型プローブ顕微鏡。
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