JP2000277581A - 半導体評価装置 - Google Patents

半導体評価装置

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JP2000277581A
JP2000277581A JP11083004A JP8300499A JP2000277581A JP 2000277581 A JP2000277581 A JP 2000277581A JP 11083004 A JP11083004 A JP 11083004A JP 8300499 A JP8300499 A JP 8300499A JP 2000277581 A JP2000277581 A JP 2000277581A
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Yutaka Majima
豊 真島
Mitsumasa Iwamoto
光正 岩本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 半導体表面に積極的に絶縁層を設けることな
く、試料表面と探針が非接触でキャリア濃度と、表面準
位密度と、試料と探針間の絶縁体中に存在する電荷密度
の定量測定を実現することができる半導体評価装置を提
供する。 【解決手段】 先端部を導電性材料で形成した探針と、
探針を試料との間でXYZの各方向に相対的に移動可能
な探針ホルダーと、探針ホルダーを試料に対して相対的
に移動させる手段と、探針と試料間に電圧を印加する接
続手段と、試料と探針の相対距離を周期的に変化させた
時に誘起される変位電流を検出する変位電流検出手段
と、検出された変位電流の探針と試料間電圧依存性に基
づき、測定点の表面の半導体のキャリア濃度と、表面準
位密度と、試料と探針間の絶縁体中に存在する電荷密度
と、を定量的に評価する手段を具備する半導体評価装
置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体の評価装置
に関する。
【0002】
【従来の技術】先端の鋭い探針により試料表面を走査す
ることで、試料表面の情報を10-6〜10 -10 mの分解能で
調べる技術として、様々なタイプの走査形プローブ顕微
鏡が提案されている。走査形プローブ顕微鏡の代表的な
ものとしては、探針と試料間のトンネル電流を利用する
走査形トンネル顕微鏡(以下、「STM」と称す)や探針
と試料間に働く微小な力を使用する原子間力顕微鏡(以
下、「AFM」と称す)や探針と試料の間の静電容量を計
測する走査形静電容量顕微鏡(以下、「SCM」と称す)
などがある。
【0003】SCMは主としてAFMをベースにしており、AF
Mにより探針を試料表面に走査させながら同時に静電容
量の情報を取得するが、静電容量情報は発振回路、共振
回路、検波回路からなるキャパシタンスセンサーにより
探針−試料間のキャパシタンス変化をLC共振回路の共振
周波数の変化として検出する。この静電容量の電圧依存
性を測定できる特徴を利用してSCMは、これまでに半導
体のキャリア密度の評価装置として用いられてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】SCMでは、LC共振回路
を用いてキャパシタンスの変化を測定しているので、容
量変化の絶対値が分からないという問題がある。従っ
て、SCMを用いて半導体キャリア密度を決定するために
は、SCMの探針を交換するたびに静電容量の変化量の校
正を行なう必要がある。また、SCMでは導電性材料から
なる探針を試料表面に接触させ走査させるため、半導体
あるいは金属試料のキャパシタンスを測定するために
は、試料表面に絶縁層を設ける必要があるという問題が
あった。
【0005】本発明の主な目的は、かかる従来技術にお
ける課題に鑑み、半導体表面に積極的に絶縁層を設ける
ことなく、試料表面と探針が非接触でキャリア濃度と、
表面準位密度と、前記試料と前記探針間の絶縁体中に存
在する電荷密度の定量測定を実現することができる半導
体評価装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の基本的な形態によれば、少なくとも先端部
を導電性材料で形成した探針と、該探針を一端側に取り
付けると共に、半導体試料との間でXYZの各方向に相
対的に移動可能な探針ホルダーと、前記探針ホルダーを
前記半導体試料に対して相対的に移動させる手段と、前
記探針と前記試料間に電圧を印加する接続手段と、前記
半導体試料と前記探針の相対距離を周期的に変化させた
時に誘起される変位電流を検出する変位電流検出手段
と、該検出された変位電流の前記探針と前記試料間電圧
依存性に基づき、該測定点の表面のキャリア濃度を定量
的に評価する手段を具備することを特徴とする半導体評
価装置が提供される。
【0007】また、本発明の他の形態によれば、上述し
た半導体評価装置の前記探針を水平方向に走査するとき
に、前記試料に対する該探針の平均高さを一定に保つよ
う制御し、前記探針の水平方向走査時の前記変位電流と
前記探針の変位量を画像信号データとして読み込み、1
次元の変位電流ならびに前記探針のZ軸方向の変位量の
断面画像あるいは2次元の変位電流ならびに変位量の画
像として表示する手段と、前記プローブ装置の探針を前
記画像を用いて決定された場所に位置決めし、前記変位
電流の電圧依存性を測定することにより、所望の該測定
点表面のキャリア濃度を定量的に評価する手段を具備す
ることを特徴とする半導体評価装置が提供される。
【0008】本発明の基本的な形態においては、微細な
探針を例えば半導体表面を有する試料に近づけ、前記半
導体試料と該探針の相対距離を周期的に変化させると、
該探針と前記半導体試料間の静電容量の変化と、該探針
と前記半導体試料表面の表面電位差に応じた変位電流が
外部回路に流れる。該探針と半導体試料間に印加する電
圧を変化させて変位電流を測定することにより、半導体
のキャリア濃度と、表面準位密度と、前記試料と前記探
針間の絶縁体中に存在する電荷密度、の定量測定が可能
となる。なお、本発明の他の構成上の特徴および作用の
詳細については、添付図面を参照しつつ以下に記述され
る実施例を用いて説明する。
【0009】
【実施例】図1に本発明の半導体評価装置の一実施例を
示す全体システム構成を示す。図中1は測定対象の任意
の半導体部分を有する試料、例えばシリコン基板、LS
I等の集積回路を示す。探針2の下方には試料1が配置
され、探針2の少なくとも先端部は導電性を有してお
り、探針先端部と探針ホルダー3は低電気抵抗で接続さ
れている。
【0010】この探針の先端部の曲率半径は、変位電流
検出感度および変位電流の空間分解能を決める上で重要
である。この曲率半径は例えば1×10-4〜1×10-7mが
好ましい。探針2の先端曲率半径は電解研磨法用いると
先端曲率半径を制御よく形成することが可能となるので
好ましい。電解研磨法にて探針2を作製することが可能
な材質としては例えばタングステン(W)、金(Au)、
白金(Pt)等がある。
【0011】試料1は絶縁体4bを介して、XY方向に
粗動可能なXY粗動ステージ8により保持されており、
XY粗動ステージ8は基台9に固定されている。探針ホ
ルダー3は、絶縁体4a、電気的シールド6aを介し
て、例えばピエゾ・アクチュエータを用いたXYZステ
ージ5によって3次元方向に微動可能に保持されると共
にさらにZ粗動ステージ7によって粗動可能に保持され
る。このZ粗動ステージ7は、支持台10に固定され
る。これらXY粗動ステージ8、XYZステージ5、Z
粗動ステージ7によってX,Y,Z方向に粗移動と微移
動が可能となり、試料1と探針2の位置は変化する。な
お、移動の仕方はこの例に限らず、例えば、探針2を固
定して試料1を移動させても良いし、あるいは両者共
に、X,Y,Z方向に相対的に移動可能にしてもよい。
【0012】可変電源16で配線11、探針ホルダー3
を通して探針2に電圧を印加し、発振器18で発生させ
例えば正弦波電圧を探針接近制御/探針走査制御/探針
振動制御部19に入力し、配線13を通してXYZステ
ージ5のZ軸方向に例えば探針2と試料表面の距離d(t)
が、 d(t)=d0+d1sinωt ……… (式1) (ただし、d0は平均距離、d1は振幅、ωは角周波数、t
は時間とする)となるような正弦波の周期的な振動が加
わるようにする。
【0013】この際、試料1と配線12を通して結線さ
れた高速電流アンプ17に流れる電流については、文献
Y. Majima, S. Miyamoto, Y. Oyama, M. Iwamoto: Jpn.
J.Appl. Phys. 37 (1998) 4557-4560.に記載があるよ
うに、トンネル電流と変位電流が重畳されたものとな
る。すなわち、トンネル電流は、距離依存性が大きいの
で、試料1と探針2間の距離が周期的に変化する際、ト
ンネル電流は試料1と探針2間の距離が最小となる近辺
で集中して流れる。一方、変位電流は、試料1表面と探
針2間の表面電位差と試料1と探針2間の間の静電容量
の変化に起因して流れる。従って、変位電流は試料1と
探針2間の距離が最小または最大となる時には静電容量
の変化が無くなるのでゼロとなる。
【0014】以上述べたようにトンネル電流と変位電流
は、それぞれが流れる位相が異なるため、2位相ロック
インアンプ20を用いて両者を分離することが可能とな
る。高速電流アンプ17では、電流を例えば107〜109 V
/Aのゲインで電流から電圧に変換するので、2位相ロッ
クインアンプには、電圧信号に変換された電流が入力
し、参照信号として発振器18からTTLレベルの信号を
入力する。また、2位相ロックインアンプの位相は、探
針2を振動させる周波数等により変化するので、試料1
と探針2間の距離を大きくとり、トンネル電流が流れな
いで、変位電流のみが流れる状態にして、トンネル電流
成分がゼロとなるように調節する。
【0015】ところで、トンネル電流成分は試料1と探
針2間の距離が最小となる近辺でのみ一方向に流れ、変
位電流成分は試料1と探針2間距離の周期的な変化に伴
い交流的に流れる。従って、高速電流アンプ17の電圧
出力を直流電圧計21で計測することは、トンネル電流
成分を2位相ロックインアンプとは別途に計測すること
に相当する。これらの2位相ロックインアンプ20で分
離されたトンネル電流成分、変位電流成分、直流電圧計
で測定されたトンネル電流成分は、探針電圧印加/電流
測定制御部22に入力され、システム制御/計算部23
にてデータとして保存、解析される。
【0016】以上述べたように、図1のシステムの基本
構成は、公知の走査形プローブ顕微鏡、例えばSTMと同
等のもので構成されるが、係るSTMとの相違点は以下の
3点である。(1)Z軸方向に周期的に振動を加えてい
る点。すなわちこの振動は、いわゆるAFMのカンチレバ
ーの撓りのように振幅が原子間力やケルビンフォース等
の外部刺激によって依存するものではなく、例えばピエ
ゾ・アクチュエータ5を用いてZ軸ピエゾに周期的な電
圧を重畳することによる強制振動であり、振幅を正確に
制御・把握できる点。(2)2位相ロックインアンプを
用いて変位電流成分とトンネル電流成分に分離測定して
いる点。(3)直流電圧計を用いて探針2の振動と同期
して周期的に変化するトンネル電流成分を測定している
点。
【0017】また、係るSTMに以下の2点の改良点を行
うことにより、低ノイズの変位電流測定が実現できる。
(1)探針2をZ軸方向に振動させるためにピエゾに印
加される交流電圧に起因して流れる変位電流を減少させ
るためにXYZステージ5の周囲(絶縁体4aとXYZ
ステージ5の間も含む)に電気的シールド6aおよび電
気的シールド6bを施しており、さらに電気的シールド
6aおよび6bと接地された支持台10の間を同軸ケー
ブル14aおよび同軸ケーブル14bの中心線で電気的
に接続し、同軸ケーブル14のシールド線は支持台10
と電気的に接続しており、XYZステージ5を変位させ
る信号が送られる同軸ケーブル束13では、駆動信号が
同軸ケーブルの中心線で電気的に接続され、同軸ケーブ
ル束13のシールド線は支持台10と電気的に接続して
いる点。(2)可変電源16と探針ホルダ11との間の
結線と試料1と高速電流アンプ17の結線には同軸ケー
ブル11および同軸ケーブル12の中心線を用い、同軸
ケーブル11および12のシールド線は接地された支持
台10あるいは基台9と電気的に接続している点。
【0018】次に図1の装置を用いた変位電流測定方法
について説明する。まず、試料1を絶縁体4bに装着
し、次いでXY粗動ステージ8をXYの水平方向に動か
して試料1の位置を移動する。この時の移動制御は、例
えば光学顕微鏡を用いて、測定対象部位が存在するであ
ろう大まかな目標領域の上に探針2が位置するように行
われる。Z粗動ステージ7で探針2を試料1の表面ぎり
ぎりまで光学顕微鏡を用いて降下させる。次に探針2に
可変電源16を用いて数V程度の電圧を印加し、探針2
と試料1の間に予め設定したトンネル電流(例えば5×1
0-13〜1×10-8A)が流れるまで、Z粗動ステージを例
えばステッピングモータを用いてさらに降下させる。次
にXYZステージ5を探針2と試料1の距離が遠ざかる
ようにZ軸方向に変位させる。次いで発振器18から周
期的な波形、例えば正弦波を出力し、XYZステージ5
をZ軸方向に周期的に振動させる。この周期的な振動の
周波数は、正確に探針2と試料1の距離を振動させるた
めに、絶縁体4a、探針ホルダ3、探針2等が接続され
たXYZステージの共振周波数よりも低くする必要があ
る。
【0019】また、振幅は正確な振動が実現できる振幅
である必要がある。先に述べたようにトンネル電流は探
針2と試料1間の距離に対して指数関数的に変化するの
で、距離依存性が大きい。従って、例えば、距離d(t)の
誤差が3×10-9m以上あるとトンネル電流の再現性が得
られない。また、特にトンネル電流と変位電流の大きさ
が同等になりる場合には、距離d(t)の誤差が1×10-9
以上あると、ロックインアンプ20によるトンネル電流
と変位電流が不正確となり、両者を分離測定することが
難しくなる。
【0020】次いで、XYZステージ5のZ軸方向に振
動させた探針2と試料1の距離を周期的に変化させた状
態で、直流電圧計21で計測されるトンネル電流が予め
設定した値となるように、XYZステージ5のZ軸方向
の振動の中心をZ軸方向に変位させる。この際、直流電
圧計21で計測されるトンネル電流の代わりに、2位相
ロックインアンプ20にて分離されたトンネル電流を用
いて、XYZステージ5のZ軸方向の振動の中心をZ軸
方向に変位させてもよい。
【0021】次に、Z軸方向の振動の中心位置を固定
し、探針2に印加する電圧を可変電源16を用いてステ
ップ状あるいはランプ状に予め設定した電圧領域で変化
させ、探針2に印加された電圧と2位相ロックインアン
プ20にて分離された変位電流の関係を測定し、システ
ム制御部/計算部23にデータとして記録する。また、
この変位電流を計測する際に2位相ロックインアンプ2
0にて分離されたトンネル電流と直流電圧計によるトン
ネル電流も、同時に測定・記録することが好ましい。探
針2に印加する電圧をランプ状に変化させる場合には、
電圧の変化速度(単位はV/sec)と試料1と探針2間の
静電容量の積で与えられる電流が、測定しようとしてい
る変位電流の大きさよりも小さくなるような、電圧の変
化速度を採用することが好ましい。また、2位相ロック
インアンプ20にて分離されるトンネル電流は、2位相
ロックインアンプ20にて分離される変位電流よりも小
さくなるような測定条件で行なうことが、変位電流を正
確に測定する上で好ましい。
【0022】次に、探針2に印加された電圧と2位相ロ
ックインアンプ20にて分離された変位電流の関係か
ら、測定点の主キャリアが電子である場合と正孔である
場合の判別方法を説明する。図2に探針2に印加された
電圧と2位相ロックインアンプ20にて分離された変位
電流の代表的な関係を示す。図2では試料1としてp型
シリコン(Si)を用いている。図2中探針電圧が-1.4〜-2
Vの直線で外挿できる領域は蓄積領域であり、探針電圧
に対する変位電流の傾きが緩やかとなる探針電圧が-1〜
0.5Vは空乏領域、再び探針電圧に対する変位電流の傾き
が急になる探針電圧が0.5〜1.5Vは反転領域である。
【0023】一方、n型シリコンでは、探針2に印加さ
れた電圧と2位相ロックインアンプ20にて分離された
変位電流の関係は、探針電圧が反転したような特性が観
察される。すなわち、蓄積領域は正の電圧領域で観察さ
れ、蓄積領域から探針電圧が負方向に減少すると、空乏
領域が観察され、さらに探針電圧が負方向に減少すると
反転領域が観察される。測定点の主キャリアの判別は蓄
積領域と反転領域の二つの直線で外挿できる特性が観察
された場合には、変位電流の探針電圧に対する傾きが大
きい領域が蓄積領域であることから判別できる。すなわ
ち、傾きが大きい蓄積領域が負の探針電圧側にある場合
は、主キャリアは正孔(例えばp型Si)、正側にある場
合には電子(例えばn型Si)となる。また、反転領域が
見られず、直線で外挿できる領域が一つである場合に
は、探針電圧が正方向に増加すると徐々に傾きが緩やか
になる場合には主キャリアは正孔(例えばp型Si)、逆
に探針電圧が負方向に増加すると徐々に傾きが緩やかに
なる場合には電子(例えばn型Si)となる。
【0024】次に変位電流と探針電圧の理論値の導出方
法について説明する。まず、試料1表面の電界強度の面
内分布を導出する。試料1表面と探針2の間に形成され
る静電容量は、文献Y. Majima, S. Miyamoto, Y. Oyam
a, M. Iwamoto: Jpn. J. Appl. Phys. 37 (1998) 4557-
4560.に記載があるように電気影像法を用いて求めるこ
とができる。この電気影像法では、試料1表面と探針2
表面それぞれの電位と電界の境界条件を満たす点電荷を
たしあわせることにより試料1表面と探針2の間に形成
される静電容量を導出する。従って、試料1表面に形成
する電界の面内分布E(x)(ただし、探針2をある先端半
径を有する球と仮定し、球の中心から平らな試料1表面
に垂線をおろした点Pをx=0とし、E(x)は、試料1上
で点Pから水平方向にxの距離にある点における電界の
大きさをあらわす)で、電気影像法により導出される点
電荷が形成する電界をたしあわせることにより導出する
ことが可能である。
【0025】次いで、半導体中に形成されるビルトイン
ポテンシャルの面内分布φ(x)と、φ(x)を形
成するために半導体表面に誘起される空間電荷Q
12(x)の導出方法を示す。試料1表面が半導体であ
る場合には、探針2に印加される電圧Vは、半導体試
料表面のビルトインポテンシュルφ(x)と、試料1
表面と探針2の間の空間に形成される電圧Δ(x)と、
探針2の仕事関数と半導体のフェルミレベルの差に起因
した電圧φ31の、3つ項の和 V=φ(x)+Δ(x)+φ31 ……… (式2) としてあらわされる。
【0026】ところで、試料1表面に形成される電界は
面内分布E(x)を持つことから、φ(x)およびΔ
(x)は面内分布を有する。このφ(x)の面内分布
は、探針2に印加される電圧Vを電界の面内分布E(x)
で割った、V/E(x)の位置に半導体試料表面と平行に
平板電極が存在すると仮定して、各xの値において、上
記(式2)を満たす解を計算することにより得られる。
V/E(x)の位置に半導体試料表面と平行に平板電極が
存在する際のφ(x)およびQ12(x)の導出は例
えば文献S. M. Sze: Physics of Semiconductor Devic
es, (John Willey &Sons, New York, 1981)7章に記載の
関係を用いることにより計算することができる。次いで
2位相ロックインアンプ20により分離測定される変位
電流I(V)を導出する。探針2に電圧Vが印加され、
探針2と試料1の距離が、上記(式1)のd(t)で与
えられる場合に、探針2に半導体試料表面から誘起され
る電荷量Q(d(t))は、
【0027】
【数1】
【0028】となる。このとき、変位電流I(V)は、
探針が試料にもっとも近づいたときの誘起電荷量ともっ
とも遠ざかったときの誘起電荷量の差に振動周波数の2
倍をかけたものとなるので、
【0029】
【数2】
【0030】で与えられる。ただし、fは探針2の振動
周波数である。
【0031】図3に変位電流I(V)−探針電圧V特性
のp型シリコンのキャリア(正孔)濃度依存性の典型的
な計算結果を示す。図3よりキャリア濃度に変位電流I
(V)−探針電圧V特性は大きく依存することが分か
る。特に、探針電圧が0〜1V程度の空乏領域におい
て、変位電流I(V)−探針電圧V特性は大きく変化す
る。
【0032】次に、図3に示したような変位電流I
(V)−探針電圧V特性を計算するためには、探針2の
先端曲率半径を予め見積もっておく必要がある。そこ
で、ここでは探針2の先端曲率半径を見積もる方法につ
いて記述する。探針2の先端曲率半径は文献Y. Majima,
S. Miyamoto, Y. Oyama, M. Iwamoto: Jpn. J. Appl.
Phys. 37 (1998) 4557-4560.に記載されている探針2と
試料1間の静電容量の変化量と探針2と試料1間の相対
距離の関係から先端曲率半径を求める方法を採用し、図
1記載のシステムを用いることにより見積もることがで
きる。また、この静電容量の変化量と相対距離の関係か
ら先端曲率半径を求める方法を使用して先端曲率半径の
変化を試料1交換時に調べることにより、探針2の寿命
を知ることができる。すなわち探針2の曲率半径は、試
料2との接触等により増大することが予想されるが、探
針2の先端曲率半径を試料1交換時等に定期的に調べる
ことにより、この曲率半径の変化をモニターし、新しい
探針に交換する必要性の有無を知ることができる。
【0033】次に測定点の表面のキャリア濃度と、前記
試料と前記探針間の絶縁体中に存在する電荷密度と、を
変位電流I(V)−探針電圧V特性から定量的に見積も
る方法について説明する。まず、図2に相当する変位電
流I(V)−探針電圧V特性を測定する。次いで前記の
測定点の主キャリアが電子である場合と正孔である場合
の判別方法を用いて主キャリアを判別する。図3の変位
電流I(V)−探針電圧V特性の理論値から明らかなよ
うに、蓄積領域における変位電流I(V)の探針電圧V
に対する傾きはキャリア濃度依存性があまり無い。そこ
で、適当なキャリア濃度と、前記の探針2の曲率先端半
径を見積もる方法により求めた曲率先端半径、さらには
XYZステージのZ軸ピエゾに印加する交流電圧より見
積もられる振幅d0を用いることにより、蓄積領域におけ
る変位電流I(V)の探針電圧V に対する傾きの測定結
果と傾きが等しくなるような平均距離d1を計算により導
出する。次いで蓄積領域から反転領域に移行する探針電
圧領域で、変位電流I(V )−探針電圧V特性の測定結
果と、前記の変位電流と探針電圧の理論値の導出方法に
より得られた計算結果の偏差が最小となるキャリア濃度
を導出する。
【0034】ところで、測定結果と計算結果の偏差が小
さくなるキャリア密度を導出する工程では、計算結果を
探針電圧V軸方向と変位電流I(V)軸方向に平行移動
させて測定結果とのずれを補正する必要がある。まず、
探針電圧V軸方向のずれは、探針2の仕事関数と半導
体のフェルミレベルの差に起因した電圧φ31に起因す
るものである。
【0035】以上述べたように、キャリア密度、探針電
圧V軸方向のずれ、変位電流I(V )軸方向のずれの、
3つの項をパラメータとして、蓄積領域と空乏領域にお
いて測定結果と計算結果の偏差が小さくなるように計算
機を用いて計算を行なうことにより、前記3つの項を定
量的に求めることができる。
【0036】次に、変位電流I(V)軸方向のずれΔI
は、試料1と探針2間の絶縁体中に存在する電荷密度に
起因する。ここで、ΔIは変位電流の探針電圧依存性を
計算する際のフラットバンド条件に相当する点のZ軸方
向への変位電流の移動量を指す。試料1と探針2間の絶
縁体中に存在する電荷から発生して試料1と探針2に収
束する電束は距離d(t)は、電荷の存在する位置とd(t)に
依存し、距離d(t)が周期的に変化する際、電束の試料1
と探針2への収束条件が変化するので、変位電流の探針
電圧依存性は、変位電流I(V)軸方向にずれることに
なる。ここで、x=0における試料表面のZ方向の位置
をZ=0とし、試料1と探針2間の絶縁体の位置Zにお
ける電荷密度のをρ(z)とする。さて、電荷密度ρ
(z)の試料1と探針2それぞれの収束条件は、d0を能
動的に変化させることにより、変化する。従って、ΔI
のd0依存性を測定し、面内分布を考慮した上で電荷密度
ρ(z)から発生する電束の収束条件を計算し、ΔIの
d0依存性の測定結果と計算結果のずれが最小となる電荷
密度ρ(z)を求めることにより、試料1と探針2間の
絶縁体中に存在する電荷密度ρ(z)を定量的に求める
ことができる。ここでいう絶縁体中に存在する電荷と
は、例えば半導体表面あるいは探針表面に存在する酸化
膜中に存在する電荷を指す。
【0037】図4に変位電流I(V)−探針電圧V特性
の測定結果例と計算結果例を示す。図4より測定結果と
計算結果は、蓄積領域と空乏領域において非常に良く一
致することが分かる。この時、計算結果を導出する際に
用いたキャリア(正孔)濃度は4×1015 cm-3であった。
このp型シリコン基板のキャリア濃度を4探針法により
求めたところ、2×1015 〜1×1016 cm-3であり、本方法
により求められた値とよく一致していることが分かる。
また、同様の測定をn型シリコンで行い、変位電流I(V
)−探針電圧V特性の測定結果と変位電流と探針電圧
の理論値の導出方法により得られた計算結果の偏差が最
小となるキャリア濃度を導出したところ、キャリア(電
子)濃度は1.8×1016 cm-3と求まり、4探針法により求
めた値と良く一致した。
【0038】次に表面準位の導出方法を示す。図4の反
転領域において測定結果と計算結果は探針電圧の増加に
伴い徐々にずれていくことが分かる。この測定結果と計
算結果のずれは表面準位に入った電荷量に依存する。表
面準位には半導体がp型である場合には正孔、n型であ
る場合には電子が入る。この表面準位はエネルギー方向
に分布する。p型半導体である場合には、探針金属のフ
ェルミレベルが半導体の伝導体よりもエネルギー的に低
い場合、半導体の伝導体から探針金属のフェルミレベル
と同じ準位まで表面準位は満たされる。また、p型にお
ける表面準位が存在する下限は真性フェルミレベルであ
る。探針電圧が正方向に増加すると、伝導体における表
面準位から徐々に満たされていく。
【0039】したがって、伝導体から真性フェルミレベ
ルまでの表面準位のエネルギー方向の分布は、図4の反
転領域における測定結果と計算結果のずれを用いて、伝
導体の位置から真性フェルミレベル方向に向かって、計
算により順に導出することができる。このような手順に
より、表面準位を定量的に評価することができる。ま
た、半導体がn型である場合には、表面準位は価電子体
から真性フェルミレベルを上限として電子が入る順位が
存在し、探針金属のフェルミレベルよりもエネルギー的
に低い領域の表面準位に電子が満たされる。したがっ
て、探針電圧が負方向に減少した際の、変位電流の測定
結果と計算結果のずれから、p型半導体と同様な手順に
より、表面準位を定量的に評価することができる。
【0040】ところで、表面準位には、一般に探針から
試料表面への電荷のトンネル過程により電荷が満たされ
る。したがって、表面準位に入る電荷量は、試料−探針
間の距離依存性を有するため、表面準位への電荷の遷移
確率を導入することにより、表面準位の誤差を小さくす
ることができる。ところで、遷移確率としては、トンネ
ル過程であるため、例えば指数関数が適当である。
【0041】次に図1半導体評価装置において、探針2
をZ軸方向に振動させた上で、水平方向に走査させ、変
位電流および探針の平均変位量の画像を得る方法につい
て説明する。トンネル電流は試料1と探針2間距離に大
きく依存し、変位電流の距離依存性よりも変化が急峻で
あるため、探針2と試料表面に対する高さd(t)がd(t)=d
0+d1sinωt(ただし、d0は平均高さ、d1は振幅、ωは
角速度、tは時間とする)となるような正弦波の周期的
な振動を加えた際に、トンネル電流を一定に保ちながら
水平方向に走査することは、試料1に対する探針2の平
均高さd0を一定に保って水平方向に走査することに相当
する。
【0042】図1に記載された本半導体評価装置では、
探針電圧として適当な値を選択固定し、直流電圧計21
あるいは2位相ロックインアンプにより分離されるトン
ネル電流が一定となるようにZ軸方向にフィードバック
をかけて水平方向に走査し、探針2の水平走査時の変位
電流と探針2の変位量を画像信号データとしてシステム
制御/計算部に読み込み、例えば1次元あるいは2次元
の画像として表示することが可能である。
【0043】ところで、例えばp型半導体と、n型半導
体と、金属が同一試料内に存在するような集積回路にお
いては、例えばp型半導体では蓄積領域で、n型半導体
では空乏領域に相当する探針電圧の設定が可能である、
図2より明らかなように、同じ探針電圧において、蓄積
領域である半導体の変位電流の絶対値は、空乏領域であ
る半導体の絶対値よりも大きい。従って、変位電流の1
次元像から、p型半導体とn型半導体と金属の横方向プ
ロファイルを知ることができ、変位電流の2次元像から
p型半導体とn型半導体と金属の平面パターンを知るこ
とができる。特に、異なる2つの探針電圧印加時の、変
位電流の1次元像あるいは2次元像を比較すると、例え
ば同一ポイントにおける変位電流の変化量が金属表面で
は最大となるので、p型半導体とn型半導体と金属表面
の領域の識別が容易になる。さらに、これらの1次元あ
るいは2次元の変位電流の測定結果を用いて、探針2を
1次元あるいは2次元画像を用いて決定された場所に位
置決めし、変位電流の探針電圧依存性を測定することに
より、該測定点表面の金属あるいは半導体の識別さらに
は、表面が半導体である場合には、キャリア濃度を定量
的に評価することが可能である。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、探
針を振動させた際に流れる変位電流を測定することによ
り、半導体試料のキャリア濃度を定量的に測定すること
ができる。また、変位電流の2次元像を用いることによ
り、LSI等の配線を含む集積回路において、p型半導体と
n型半導体と金属表面の領域の識別が可能となり、変位
電流像から所望の地点を決定した上で、変位電流の探針
電圧依存性を測定することによりキャリア密度の解析を
行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体評価装置の全体システム構成を
示す図である。
【図2】変位電流の探針電圧依存性の測定結果を示す典
型的な図である。試料1はp型シリコンである。
【図3】変位電流−探針電圧特性のキャリア濃度依存性
の計算結果を示す典型的な図である。
【図4】変位電流の探針電圧依存性の測定結果と蓄積領
域および空乏領域における変位電流の測定結果と計算結
果の偏差が最小となるようなキャリア濃度を求めた際の
変位電流−探針電圧特性を示す図である。
【符号の説明】
1…測定対象の試料 2…探針 3…探針ホルダー 4a…絶縁体 4b…絶縁体 5…XYZステージ 6a…絶縁体4aとXYZステージにそれぞれの面で接
続された蓋の形状をした電気的シールド(電気的シール
ド6bとは非接触) 6b…Z粗動ステージと接続された電気的シールド(X
YZステージ、電気的シールド6aとは非接触) 7…Z粗動ステージ(Z軸方向に粗動するためのパルス
モーターを含む) 8…XY粗動ステージ 9…基台 10…支持台 11…同軸ケーブルからなる可変電源で発生させた電圧
を探針ホルダーに印加するための電気結線 12…同軸ケーブルからなる試料と高速電流アンプの電
気結線 13…同軸ケーブルの束からなるXYZステージを変位
させるための電圧をXYZステージに同軸ケーブルの中
心線を用いて印加するための電気結線 14a…同軸ケーブルからなる電気的シールド6bに誘
起された電荷を接地された支持台に逃がして接地するた
めの電気結線 14b…同軸ケーブルからなる電気的シールド6aに誘
起された電荷を接地された支持台に逃がして接地するた
めの電気結線 15…Z粗動ステージのパルスモーターを駆動するため
の電気配線 16…可変電源 17…高速電流アンプ 18…発振器 19…探針接近制御/探針走査制御/探針振動制御部 20…2位相ロックインアンプ 21…直流電圧計 22…探針電圧印加/電流測定制御部 23…システム制御/計算部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4M106 AA10 AA20 BA14 CA11 CB02 CB07 CB30 DH01 DH11 DH16 DH60 DJ03 DJ04 DJ05 DJ11 DJ23

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも先端部を導電性材料で形成し
    た探針と、該探針を一端側に取り付けると共に、試料と
    の間でXYZの各方向に相対的に移動可能な探針ホルダ
    ーと、前記探針ホルダーを前記試料に対して相対的に移
    動させる手段と、前記探針と前記試料間に電圧を印加す
    る接続手段と、前記試料と前記探針の相対距離を周期的
    に変化させた時に誘起される変位電流を検出する変位電
    流検出手段と、該検出された変位電流の前記探針と前記
    試料間電圧依存性に基づき、該測定点の表面の半導体の
    キャリア濃度と、表面準位密度と、前記試料と前記探針
    間の絶縁体中に存在する電荷密度と、を定量的に評価す
    る手段を具備することを特徴とする半導体評価装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の半導体評価装置と、前
    記探針を水平方向に走査する時に前記試料に対する該探
    針の平均高さを一定に保つよう制御し、前記探針の水平
    走査時の前記変位電流と前記探針の平均変位量を画像信
    号データとして読み込み、1次元の変位電流ならびに前
    記探針のZ軸方向の変位量の断面画像あるいは2次元の
    変位電流ならびに変位量の画像として表示する手段と、
    前記プローブ装置の探針を前記画像を用いて決定された
    場所に位置決めし、前記変位電流の電圧依存性を測定す
    ることにより、所望の該測定点表面のキャリア濃度と、
    表面準位密度と、前記試料と前記探針間の絶縁体中に存
    在する電荷密度と、を定量的に評価する手段を具備する
    ことを特徴とする半導体評価装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006242868A (ja) * 2005-03-04 2006-09-14 Fujitsu Ltd 濃度測定方法および濃度測定処理プログラム
JP2008224477A (ja) * 2007-03-14 2008-09-25 Japan Science & Technology Agency 走査型プローブ顕微鏡
JP2010135528A (ja) * 2008-12-04 2010-06-17 Fujitsu Ltd 電子デバイスの電気特性評価方法及び電子デバイスの電気特性評価装置

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