JP3936148B2 - 単一電子素子評価装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、単一電子素子のアイランドと探針が非接触で、アイランド上に量子化した電荷量と静電容量と浮遊電荷の測定を実現することができる単一電子素子評価装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
先端の鋭い探針により試料表面を走査することで、試料表面の情報を10-6〜10-11 mの分解能で調べる技術として、従来、様々なタイプの走査形プローブ顕微鏡が提案されている。この走査形プローブ顕微鏡の代表的なものとしては、探針と試料間のトンネル電流を利用する走査形トンネル顕微鏡(以下、「STM」と称す)や、探針と試料間に働く微小な力を使用する原子間力顕微鏡(以下、「AFM」と称す)や、探針と試料間の静電容量を計測する走査形静電容量顕微鏡(以下「SCM」と称す)などがある。
【0003】
SCMは主としてAFMをベースにしており、AFMにより探針を試料表面に走査させながら同時に静電容量の情報を取得するが、静電容量情報は発振回路、共振回路、検波回路からなるキャパシタンスセンサーにより、探針−試料間のキャパシタンス変化をLC共振回路の共振周波数の変化として検出する。この静電容量の電圧依存性を測定できる特徴を利用して、SCMはこれまでに半導体のキャリア密度の評価装置として用いられてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしでなら、SCMでは、LC共振回路を用いてキャパシタンスの変化を測定しているので、試料の容量変化は評価できるものの、試料表面の電荷量が分からないという問題がある。すなわち、SCMでは、単一電子素子のアイランド上の電荷量を測定することができない。また、SCMでは導電性材料からなる探針を試料表面に接触させ走査させるため、単一電子素子の容量を測定するためには、試料表面に絶縁層を設ける必要があるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑み、単一電子素子表面に積極的に絶縁層を設けることなく、測定点のアイランドの電荷量と、アイランドと基板及び探針間の静電容量と、アイランドと容量を介して接続された探針及び基板間のトンネル抵抗と、アイランドの補償電荷とを評価する手段を具備する単一電子素子評価装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕単一電子素子評価装置において、少なくとも先端部を導電性材料で形成した探針と、導電性基板と、この導電性基板上に導電性材料で形成したアイランドと、前記探針を一端側に取り付けると共に、この探針と前記導電性基板との間でXYZの各方向に相対的に移動可能な探針ホルダーと、この探針ホルダーを前記導電性基板に対して相対的に移動させる手段と、前記探針と前記導電性基板間に探針電圧を印加する手段と、前記導電性基板と前記探針の相対距離を周期的に変化させた時に誘起される変位電流を検出する変位電流検出手段と、前記探針と導電性基板間の相対距離を周期的に変化させた時に検出された変位電流の探針電圧依存性に基づき、測定点のアイランドの電荷量と、前記アイランドと容量を介して接続された前記探針及び導電性基板間の静電容量と、前記アイランドと容量を介して接続された前記探針及び導電性基板間のトンネル抵抗と、前記アイランドの補償電荷とを評価する手段を具備することを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の単一電子素子評価装置において、前記探針を水平方向に走査する時に前記導電性基板に対する前記探針の平均高さを一定に保つよう制御し、前記探針の水平走査時の前記変位電流と前記探針の平均変位量を画像信号データとして読み込み、1次元の変位電流ならびに前記探針のZ軸方向の変位量の断面画像あるいは2次元の変位電流ならびに変位量の画像として表示する手段と、前記探針ホルダーの探針を前記画像を用いて決定された場所に位置決めし、前記変位電流の探針電圧およびバイアス電圧依存性を測定することにより、所望の該測定点のアイランドの電荷量と、前記アイランドと容量を介して接続された前記探針及び少なくとも一つ以上の導電体間の静電容量と、前記アイランドと容量を介して接続された前記探針及び導電性基板間のトンネル抵抗と、前記アイランドの補償電荷とを評価する手段を具備することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0009】
本発明の基本的な形態は、先端部を導電性材料で形成した探針と、導電性基板とを設けて、この導電性基板上に導電性材料で形成したアイランドを有するいわゆる単一電子トランジスタにおけるような量子構造体を有する試料に探針を近づけ、前記試料とこの探針の相対距離を周期的に変化させると、この探針と前記試料間の静電容量の変化と、この探針と前記導電性基板への電束の収束条件の変化に応じて外部回路に流れる前記アイランド上の電荷の変位電流を測定するものである。
【0010】
この探針と導電性基板間に印加する電圧を変化させて変位電流を測定することにより、アイランドの電荷量と、アイランドと容量を介して接続された探針及び導電性基板間の静電容量と、アイランドの補償電荷の定量測定が可能となる。本単一電子素子評価装置における変位電流測定方法には、本出願人による変位電流測定手法〔Phys.Rev.B.62(2000)1971−1977〕、および既に提案された、特願平11−83004号などを適用することができる。
【0011】
ところで、図1に示すような微小な静電容量を有するダブル・バリア・トンネリング・接合(Double Barrier Tunneling Junction)におけるトンネル電流の端子間電圧依存性を測定すると、クーロンブロッケードに起因した階段状の単一電子トンネル電流が観察される〔Phys.Rev.B.44(1991)5919−5922〕。
【0012】
図1において、1は探針、2は導電性基板、3はアイランドである。
【0013】
このように非常に小さなキャパシタンスを有する単一電子トンネル接合では、アイランド3に対して接合を介して電子一個のトンネル現象に起因した出し入れを行った際に、アイランド3に対する充電エネルギーの変化が、温度揺らぎkB T(T:絶対温度、kB :ボルツマン定数)に比べて無視できない大きさになる。このような状況下では、電子1個がトンネルすることによってアイランド3上の電子数が変化し、その結果エネルギー的に損をするようなトンネルは禁止される。この現象がクーロンブロッケードであり、単一電子トンネル現象の基本原理となる。
【0014】
ダブル・バリア・トンネリング・接合において、アイランド3上に存在する電子数の計算は、本発明において測定する変位電流の電圧依存性の理論曲線を得る上で大変重要である。
【0015】
ここでは、簡単のために、ダブル・バリア・トンネリング・接合として、図2に示されるような回路を仮定して、アイランド3上にある電子数の数を見積もることとする。アイランド3上にn個の電子が存在し、正の単位電荷を有する電子が接合1と接合2を介してトンネルし、アイランド上の電子がn=n±1に変化する際のトンネル頻度Γj ±(n)は、
【0016】
【数1】
Figure 0003936148
【0017】
で表される。ただし、jは接合の番号、Rj は接合jのトンネル抵抗、eは単位電荷(e>0)、ΔEj ±は接合jにおいて正の単位電荷を有する電子数がn=n±1となるようにトンネルした場合のエネルギー変化である。また、ΔEj ±は静電エネルギーより、
【0018】
【数2】
Figure 0003936148
【0019】
【数3】
Figure 0003936148
【0020】
【数4】
Figure 0003936148
【0021】
ただし、Qはアイランド上にあるトンネルが起こる前の電荷量、Cj は接合jにおける静電容量、CΣはC1 +C2 、ΔUはトンネルが起こる前と後の静電エネルギー変化、Vは電極2を基準として電極1に印加した電圧である。ΔEj ±の第二項は接合jを電子1個が横切ったときのポテンシャル変化である。ところで、導電性基板上で導電性基板から離れた場所にある電荷はアイランドに対して補償電荷を誘起する。このアイランドの補償電荷Q0 は、アイランド周囲の電荷から発生する電束の収束条件によって決まり、|Q0 |<e/2の値を取る。したがって、アイランド上の電荷量はne(nは整数)で表される電荷量にアイランド上の補償電荷Q0 を加えた、Q=(ne−Q0 )で表されると考えることができるので、
【0022】
【数5】
Figure 0003936148
【0023】
【数6】
Figure 0003936148
【0024】
となる。したがって、接合1と接合2を流れるトンネル電流は、それぞれ、
【0025】
【数7】
Figure 0003936148
【0026】
【数8】
Figure 0003936148
【0027】
となる。ただし、σ(n)はアイランド上にn個の電子があるときの確率に比例する分布関数であり、
【0028】
【数9】
Figure 0003936148
【0029】
を満たす。また、電子数がnから1個増えるときと、電子数がn+1から1個減るときに流れるトンネル電流は同じであるから、
【0030】
【数10】
Figure 0003936148
【0031】
となる。上記の式を用いると、σ(n)のn依存性を数値的に計算することが可能であり、アイランド上に存在する平均電子数N〔V,d(t)〕は、
【0032】
【数11】
Figure 0003936148
【0033】
となる。ただし、d(t)は、電極1と電極2の距離である。
【0034】
ところで、電極1及び電極2に誘起される電荷量Q1 〔V,d(t)〕は、それぞれ、
【0035】
【数12】
Figure 0003936148
【0036】
となる。ただし、C3 〔d(t)〕は電極1と電極2の間の静電容量、C2 〔d(t)〕は、電極2とアイランド間の静電容量である。
【0037】
ここで、電極1と電極2の間の距離を
【0038】
【数13】
Figure 0003936148
【0039】
のように変化させることを考える。ただし、d0 は平均距離、d1 は振幅、ωは角周波数(ω=2πf)である。また、電極1と電極2の間には、m個のアイランドが存在するとする。このとき、電極1を通して流れる変位電流の平均値ID1(V)および電極2を通して流れる変位電流の平均値ID2(V)はそれぞれ、
【0040】
【数14】
Figure 0003936148
【0041】
となる。上式より変位電流は、電圧に比例する右辺の括弧で囲まれた第1項および第2項と、アイランド上の電荷の変化に起因して流れる右辺の括弧で囲まれた第3項の和で表されることが分かる。
【0042】
したがって、クーロンブロッケードに起因してアイランド上の電荷が量子化することにより流れる電流成分は、第3項に相当することになる。また、式(14)と式(14′)を比較するとアイランド上の荷電に起因した電流成分は、電圧に比例する第1項および第2項に対して、式(14)では逆向きとなり、式(14)では同じ向きとなる。したがって、どちらの電流に流れる電流を測定するかによって、クーロンブロッケードに起因した変位電流の波形は、大きく変化することになる。
【0043】
また、変位電流の平均値ID1(V)と変位電流の平均値ID2(V)は異なり、ID1(V)とID2(V)の和〔式(14)と式(14′)の和〕ID3(V)は
【0044】
【数15】
Figure 0003936148
【0045】
となり、プローブの振動に伴うアイランド上の電子数の変化に相当した電流となる。
【0046】
ところで、図2に示された等価回路から明らかなように、接合1と接合2のトンネル抵抗の比R2 /R1 は接合1と接合2の電圧分担比に対応するため、アイランド上の電子数を決定する上で重要である。
【0047】
図3は、トンネル抵抗比R2 /R1 を1000,10,1,0.1,0.001と変化させ、アイランド上に存在する平均電子数N〔V,d(t)〕の電圧依存性を計算した典型的な例である。ただし、R2 /R1 以外の解析条件は、C1 =2.1aF,C2 =1.2aF,T=70K,Q0 =0である。
【0048】
図3より抵抗値比R2 /R1 の変化によりアイランド上の平均電子数は大きく変化することが分かる。R2 /R1 ≫1ではほとんどの電圧が接合1に加わり、接合2には電圧が加わらないため、平均電子数が1個分変化する電圧間隔は単位電荷をC1 で割った値(e/C1 )である約76mVとなり、電圧が正の時にアイランド上には正の電荷が存在することになる。一方、R2 /R1 ≪1ではほとんどの電圧が接合2に加わり、接合1には電圧が加わらないため、平均電子数が1個分変化する電圧間隔は単位電荷をC2 で割った値(e/C1 )である約133mVとなり、電圧が正の時にアイランド上には負の電荷が存在することになる。
【0049】
図4はアイランド上の浮遊電荷Q0 を変化させたときの平均電荷量の電圧依存性を示している。
【0050】
ただし、解析条件は、トンネル抵抗比R2 /R1 =0.001,C1 =2.1aF,C2 =1.2aF,T=70Kである。
【0051】
図4よりアイランド上の浮遊電荷により、平均電荷量の電圧依存性は電圧軸方向に平行移動することが分かる。
【0052】
上記(14)式の第3項から明らかなように、変位電流成分はアイランド上の平均電荷数に大きく依存する。ところで、本発明では上記(13)式で示したように、電極1と電極2の間隔を周期的に変化させている。アイランドが電極1に固定されているとすると、アイランドと電極2の間隔が変化することになる。トンネル抵抗R2 は間隔の増大に対して指数関数的に変化することが知られているので、接合2に相当する抵抗はアイランドと電極2の間隔が狭い時は小さく、広くなると大きくなる。したがって、トンネル抵抗比R2 /R1 は、間隔が狭い時はR2 /R1 ≪1、間隔が広い時はR2 /R1 ≫1となるような実施条件が存在する。
【0053】
図5は、直径7nmのアイランドが電極1と電極2の間に1個だけ存在し、電極2であるプローブの曲率先端半径rを100,50,20,10nmとしたときの変位電流の平均値を上記(14)式を用いて求めたものである。解析条件は,T=70K,C1 =2.08aFであり、その他の解析条件は表1に示す。
【0054】
【表1】
Figure 0003936148
【0055】
図5より、曲率半径が、例えば100nmのように大きく、電極1と電極2の間の静電容量が大きいときには上記(14)式の右辺の括弧で囲まれた第1項の影響が大きく、電圧の増加に対して変位電流は増加することが分かる。一方、曲率半径が10nmのように小さくなると、電圧の増加に対して変位電流は減少することが分かる。このように曲率半径が小さくなった際に、変位電流の電圧依存性が負の傾きを持つ理由は、上記(14)式の右辺の括弧で囲まれた第3項のアイランド上の電子数の変化が負方向に変位電流を流すためであることが分かる。
【0056】
したがって、電極2の曲率半径の減少によって、変位電流の電圧依存性は正から負へ連続的に変化する。さらに、図5において曲率半径が50nmの場合には、変位電流の電圧依存性は周期的に増減を繰り返している。これは、電圧の増加に対して変位電流が単調に比例して増加する上記(14)式の右辺の括弧で囲まれた第1項および第2項と、電圧の増加に対して変位電流が徐々に周期的に減少する上記(14)式の右辺の括弧で囲まれた第3項の寄与が拮抗しているために、変位電流は周期的に増減を繰り返しているものである。
【0057】
以上述べたように、変位電流の電圧依存性は、式(14)の変位電流を測定するかあるいは式(14′)の変位電流を測定するか、プローブが最も基板に接近したときと遠ざかった時の、トンネル抵抗比、R2 /R1 の大小関係、アイランドの補償電荷、測定温度など、実施条件によって大きく変化するが、変位電流の周期的な変化を解析し、実験結果にフィッティングすることにより、アイランドと容量を介して接続された探針1及び導電性基板2間の静電容量と、アイランドと容量を介して接続された探針1及び導電性基板2間のトンネル抵抗と、アイランドの補償電荷とを求めることができる。
【0058】
なお、本発明の他の構成上の特徴および作用の詳細については、以下に図6を参照しながら実施例を説明するが、本発明はこれら例に限られるものではない。
【0059】
〔実施例〕
図6は本発明の実施例を示す半導体評価装置の一実施例を示す全体システム構成図である。
【0060】
この図において、1は少なくとも先端部を導電性材料で形成した探針、2は導電性基板、3はその導電性基板2上に導電性材料で形成したアイランド、4は前記探針1を一端側に取り付けると共に、前記導電性基板2との間でXYZの各方向に相対的に移動可能な探針ホルダー(ここでは、導電性AFMカンチレバー)、5は探針ホルダー4を前記導電性基板2に対して相対的に移動させる手段、6は前記探針1と前記導電性基板2間に探針電圧を印加する手段(ここでは、直流電源)、7は前記導電性基板2と前記探針1の相対距離を周期的に変化させた時に誘起される変位電流を検出する変位電流検出手段(ここでは、電流計と2位相ロックインアンプ)、8はその検出された変位電流の探針電圧依存性に基づき、その測定点のアイランド3の電荷量と、前記アイランド3と容量を介して接続された探針1及び導電性基板2間の静電容量と、前記アイランド3と容量を介して接続された探針1及び導電性基板2間のトンネル抵抗と、前記アイランド3の補償電荷とを評価する手段(ここでは、電気的特性評価装置)を具備することを特徴とする。
【0061】
このように、導電性基板2は測定対象の任意の導体部分を有する電極を有する基板、例えば、シリコン、金属等を示す。探針1の下方には電極を有する導電性基板2が配置され、探針1の少なくとも先端部は導電性を有している。また、導電性基板2と探針1の間には導体部分を有するアイランド3が存在する。このアイランド3の直径は、クーロンブロッケードが観察される温度を決定する上で重要である。この直径は、例えば10nm以下が好ましく、常温にて本発明を実施する場合は5nm以下であることが特に好ましい。アイランド3の材質としては、金、銀、半導体微粒子、有機分子、フラーレン、共役系高分子等がある。
【0062】
この探針1の先端部の曲率半径は、変位電流検出感度および変位電流の空間分解能を決める上で重要である。この曲率半径は例えば1×10-4〜1×10-9mが好ましい。探針1の先端曲率半径は、電解研磨法を用いると先端曲率半径を制御よく形成することが可能となるので好ましい。電解研磨法にて探針1を作製することが可能な材質としては、例えばタングステン(W)、金(Au)、白金(Pt)等がある。導電性基板2とアイランド3の間は絶縁体で隔てられており、導電性基板2とアイランド3の距離は、例えば0.5〜20nmが好ましい。
【0063】
本実施例は、文献:Y.Majima,S.Miyamoto,Y.Oyama,M.Iwamoto:Jpn.J.Appl.Phys.37(1998)4557−4560.と、Y.Majima,Y.Oyama and M.Iwamoto:Phys.Rev.B62(2000)1971−1977.と、特開2000−277581に記載があるトンネル電流と変位電流を同時に分離計測するシステムを用いることができる。
【0064】
以下、具体例について説明する。
【0065】
1.5nmの膜厚を有するSiO2 膜が表面に存在するp−Si(111)基板(キャリア濃度は3×1015cm-3)からなる導電性基板2上に粒径が約7nmの金のコロイド粒子(真空治金製)からなるアイランド3を800nm2 に1個の割合で分散させた試料に対して、超高真空中にて温度を70Kまで冷却し、探針1の振幅d1 が5nmとなるように、周波数3432Hzにて振動させ、アイランド3に探針1を近づけたときの変位電流I(V)−探針電圧V特性の測定結果例を図7に示す。図7よりクーロンブロッケードに起因した階段状の変位電流が観測されていることが分かる。また、階段状変位電流は、ほぼ原点に対して対称となっており、周期性があるものの、若干周期性に乱れがあることから、2つの周期が重畳されていることが分かる。
【0066】
図8に上記(14)式を用いて求められる解析結果を測定結果にフィッティングした例を示す。解析条件はT=70K,C1 =2.08aF,Q0 =0Cであり、探針1が最もアイランド3に近づいた時のC2 、トンネル抵抗比R2 /R1 、C3 はそれぞれ、1.43aF,0.001,2.58fF、探針1が最もアイランド3から遠ざかった時のC2 、トンネル抵抗比R2 /R1 ,C3 はそれぞれ、0.96aF,1000,2.42fFであり、130個のアイランド3が探針1下に存在し、探針1とアイランド3の距離の最小値が1.4nm、最大値が11.4nmに変化することを仮定している。図8より、解析結果は、実験結果と非常に良く一致することが分かる。
【0067】
次に、探針1をZ軸方向に振動させた上で、水平方向に走査させ、変位電流および探針1の平均変位量の画像を得る方法について説明する。
【0068】
本実施例の装置では、非接触原子間力顕微鏡(nc AFM)のいわゆるFM検出法を用いたダイナミックモードを用いているため、凹凸像を探針1の高さの変化として検出することができ、さらに、外部回路を流れる変位電流像を測定することができる。この装置を用いて、本実施例の試料を観察したところ、凹凸像からアイランド3の粒径が約7nmであり、導電性基板上のアイランドの密度が800nm2 に1個であることが、凹凸像より観察された。また、探針1がアイランド3の直上にある場合と無い場合で変位電流像が大きく変化することが確認された。これは、アイランド3上にクーロンブロッケードに起因した電荷が存在することを意味する。この凹凸像並びに変位電流像から、先端曲率半径が10nmのカンチレバーをアイランド3直上に位置決めして、変位電流の電圧依存性を測定したところ、探針1の振動周波数が50kHzにて、図9に示すような、クーロンブロッケードに起因した階段状の変位電流が、一つのアイランド3におけるクーロンブロッケード現象から観察された。
【0069】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0070】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、探針を振動させた際に流れる変位電流を測定することにより、アイランドの電荷量と、アイランドと導電性基板及び探針間の静電容量と、アイランドと容量を介して接続された探針及び導電性基板間のトンネル抵抗と、アイランドの補償電荷とを評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる微小な静電容量を有するダブル・バリア・トンネリング・接合におけるトンネル電流の端子間電圧依存性を測定するための模式図である。
【図2】図1に示すダブル・バリア・トンネリング・接合にかかる回路図である。
【図3】トンネル抵抗比を変化させ、アイランド上に存在する平均電子数の電圧依存性を計算した典型的例を示す図である。
【図4】アイランド上の浮遊電荷を変化させたときの平均電荷量の電圧依存性を示す図である。
【図5】直径7nmのアイランドが電極1と電極2の間に1個だけ存在し、電極2であるプローブの曲率先端半径rを100,50,20,10nmとしたときの変位電流の平均値を示す図である。
【図6】本発明の実施例を示す半導体評価装置の一実施例を示す全体システム構成図である。
【図7】所定の条件下でアイランドに探針を近づけたときの変位電流−探針電圧V特性の測定結果例を示す図である。
【図8】(14)式を用いて求められる解析結果を測定結果にフィッティングした例を示す図である。
【図9】クーロンブロッケードに起因した階段状の変位電流が、一つのアイランドにおけるクーロンブロッケード現象から観察された様子を示す図である。
【符号の説明】
1 先端部を導電性材料で形成した探針
2 導電性基板
3 アイランド
4 探針ホルダー
5 探針ホルダーを移動させる手段
6 探針電圧を印加する手段(直流電源)
7 変位電流検出手段(電流計と2位相ロックインアンプ)
8 電気的特性評価装置

Claims (2)

  1. (a)少なくとも先端部を導電性材料で形成した探針と、
    (b)導電性基板と、
    (c)該導電性基板上に導電性材料で形成したアイランドと、
    (d)前記探針を一端側に取り付けると共に、該探針と前記導電性基板との間でXYZの各方向に相対的に移動可能な探針ホルダーと、
    (e)該探針ホルダーを前記導電性基板に対して相対的に移動させる手段と、
    (f)前記探針と前記導電性基板間に探針電圧を印加する手段と、
    (g)前記導電性基板と前記探針の相対距離を周期的に変化させた時に誘起される変位電流を検出する変位電流検出手段と、
    (h)前記探針と導電性基板間の相対距離を周期的に変化させた時に検出された変位電流の探針電圧依存性に基づき、測定点のアイランドの電荷量と、前記アイランドと容量を介して接続された前記探針及び導電性基板間の静電容量と、前記アイランドと容量を介して接続された前記探針及び導電性基板間のトンネル抵抗と、前記アイランドの補償電荷とを評価する手段を具備することを特徴とする単一電子素子評価装置。
  2. 請求項1記載の単一電子素子評価装置において、前記探針を水平方向に走査する時に前記導電性基板に対する前記探針の平均高さを一定に保つよう制御し、前記探針の水平走査時の前記変位電流と前記探針の平均変位量を画像信号データとして読み込み、1次元の変位電流ならびに前記探針のZ軸方向の変位量の断面画像あるいは2次元の変位電流ならびに変位量の画像として表示する手段と、前記探針ホルダーの探針を前記画像を用いて決定された場所に位置決めし、前記変位電流の探針電圧およびバイアス電圧依存性を測定することにより、所望の該測定点のアイランドの電荷量と、前記アイランドと容量を介して接続された前記探針及び少なくとも一つ以上の導電体間の静電容量と、前記アイランドと容量を介して接続された前記探針及び導電性基板間のトンネル抵抗と、前記アイランドの補償電荷とを評価する手段を具備することを特徴とする単一電子素子評価装置。
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