JP4894307B2 - 潜熱輸送装置用作動液および潜熱輸送装置の作動方法 - Google Patents

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Description

本発明は、潜熱輸送装置用の作動液、およびそれを用いた潜熱輸送装置の作動方法に関する。
従来、装置内に封入された作動液の蒸発、沸騰、凝縮等の現象を利用して潜熱輸送を行う潜熱輸送装置が知られている。潜熱輸送装置としては、例えば、ヒートパイプおよび二相密閉型熱サイフォン装置が挙げられる。ヒートパイプは内部に設けたウィック(毛細管構造体)による毛細管力を利用して熱を伝達し、二相密閉型熱サイフォンは重力、遠心力を利用して熱を伝達する装置であり、何れもポンプ等の外部動力を使わずに作動液を循環できる点が大きな特徴である。
ヒートパイプは、半導体素子や電子機器の発熱部の冷却装置等、比較的小型の冷却装置に適用され、二相密閉型熱サイフォンは、ウィックを必要とせず構造が簡単であることから、ガス−ガス型熱交換器、道路の融雪促進および凍結防止等に広く利用されている。
以下、ヒートパイプを例に作動液として要求される性能について説明する。
ヒートパイプはパイプ状容器の一端を蒸発部とし、他端を凝縮部として熱を伝える伝熱素子である。一般にヒートパイプの伝熱特性は、ヒートパイプ本体に封入されている作動液に左右される。一般に、常圧下での沸点付近で使用するときに良い特性を示すと言われている。
ヒートパイプの原理は簡単である。パイプの一端が温められると、そこで作動液が蒸発して熱を吸収する。蒸発した気体はパイプの中を拡散し、他端(低温部)で潜熱を放出して凝縮する。液体は重力や毛管力で再びパイプの一端(高温部)へ戻り、高温部から低温部へ熱が輸送される。
ヒートパイプは、主に(1)作動液、(2)ウィックまたは毛管構造、および(3)容器またはコンテナの3要素より構成される。作動液として要求される必要条件は以下の通りであるが、まず考えなければならないのは、作動蒸気温度範囲である。
1)ウイックおよびコンテナ材料に対する適合性がある。
2)熱安定性がよい。
3)ウイックおよびコンテナ材料に対する濡れ性がよい(接触角が0または非常に小さい。)。
4)作動温度範囲内で蒸気圧が高すぎたり低すぎたりしない。
5)蒸発潜熱が大きい。
6)熱伝導率が大きい。
7)気液両相において粘性率が小さい。
8)表面張力が大きい。
9)凝固点、または融解点が適正である。
一般に、最大熱輸送量を決定する作動液の特性値としては、下式Aで表されるメリット数M(kJ/(m・s))が使用される。メリット数Mが大きいほど作動液の最大熱輸送量が大きくなる。
M=ρσL/μ ・・・式A
ただし、ρは作動液の密度(kg/m)、σは作動液の表面張力(N/m)、Lは作動液の蒸発潜熱(kJ/kg)、μは作動液の粘度(Pa・s)である。)メリット数は温度によって変化する。
従来、ヒートパイプの作動液としては、水、アンモニア、メタノール、クロロフルオロカーボン類(CFC類)、ヒドロクロロフルオロカーボン類(HCFC類)等が用いられている。しかし、水は寒冷地では凍結する問題がある。また、アンモニアはヒートパイプ容器の材質との適合性を考慮する必要があるだけでなく、悪臭、毒性の点でも取扱いが煩雑である。メタノールについても、アルミニウムおよびステンレス容器を腐食させる問題がある。また、CFC類やHCFC類は、オゾン層破壊の原因となることから規制対象となっている化合物である。
これらの課題を解決する目的から、以下の方法が提案されている。
例えば、特許文献1においては、ヒートパイプやサーモサイフォンの作動流体としてn−パーフルオロヘキサンが使用することが提案されている。また、特許文献2においては、C14等のパーフルオロカーボンを95%以上含有し、該パーフルオロカーボンよりも低沸点のフッ化炭素化合物の含量を1%以下にしたヒートパイプ用作動液が提案されている。しかし、これらの作動液は熱伝達効率が悪く、地球温暖化効果が大きいという問題がある。
また、特許文献3にはヒドロフルオロエーテルを主成分とする蒸発系熱伝達作動液が記載されており、ヒドロフルオロエーテルとして、具体的にはC−O−CH、C−O−C、CCF(OC)CF(CFが記載されている。しかし、これらの化合物は地球温暖化には影響を及ぼさないものの、作動液の性能としては必ずしも十分ではなかった。
特開昭59−12288号公報(特許請求の範囲) 特許第2726542号公報(特許請求の範囲) 特開2001−342458号公報(特許請求の範囲)
本発明は、オゾン層の破壊、地球温暖化といった環境への悪影響を引き起こすおそれがなく、−50〜150℃の作動温度で安定して高い性能を示す潜熱輸送装置用作動液の提供を目的とする。
発明は、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(CHFCFOCHCF、以下、HFE−347という。)を含有する潜熱輸送装置用作動液を提供する。
また、本発明は、上記作動液を用いた潜熱輸送装置を、作動温度が−50〜150℃で作動させる潜熱輸送装置の作動方法を提供する。
本発明の潜熱輸送装置用作動液は、従来の作動液に対してメリット数が大きく、熱伝達効率が非常に優れる。また、潜熱輸送装置の部材として用いられるステンレスやアルミニウムに対して、高い耐酸化性および耐腐蝕性を有する。さらに、従来のシステムにそのままの形態で使用できるという利点も有する。そして、オゾン層の破壊、地球温暖化といった環境への悪影響を引き起こすおそれがない。
本発明は潜熱輸送装置用の作動液である。潜熱輸送装置とは、装置内に封入された作動液の蒸発、沸騰、凝縮等の現象を利用して潜熱輸送を行う装置であって、代表的な装置としては、ヒートパイプおよび二相密閉型熱サイフォン装置が挙げられる。
本発明の作動液は、下記式1で表される化合物を含有する。式1において、XおよびYはそれぞれ独立にフッ素原子、ジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基である。
X−CHFCF−O−CHCF−Y ・・・式1
上記式1で表される化合物は、熱輸送量が大きい、粘度が低い、凝固点が低い、適度な蒸気圧を有する、不燃性である、安定性が高い、一般的な材料との適合性に優れる、接触する物品を腐食させにくい等の点で作動液として優れる。
式1で表される化合物としては、具体的には、HFE−347、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン(CFCHFCFOCHCF、以下、HFE−449という。)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−3−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)−プロパン(CFCHFCFOCHCFCHF、以下、HFE−55−10という。)が挙げられる。
本発明の作動液において、HFE−347等の式1で表される化合物の含有割合は50質量%以上であるのが好ましく、特には80質量%以上、さらには90質量%以上であるのが好ましい。
また、本発明の作動液において、HFE−347等の式1で表される化合物が100質量%に満たない場合に含まれるその他の成分としては、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、含フッ素アルコール類、ケトン類、含フッ素エーテル類(ただし、式1で表される化合物を除く。)からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。なかでも、炭化水素類およびアルコール類を含有する場合は、作動液のメリット数を大きくできる点で特に好ましい。
本発明の作動液が上記その他の成分を含有する場合、作動液の蒸発、凝縮時の温度変化、ならびに気液両相の組成変化を最小にし、安定した作動状態を確保する目的から、当該作動液の組成は共沸組成または共沸様組成とするのが好ましい。
ここで、共沸様組成とは、露点と沸点の温度差が0.5℃以内である組成比をいう。なかでも、蒸気温度差が0.1℃以内であるものは特に好ましい。
上記炭化水素類としては、炭素数6〜8の鎖状(直鎖状もしくは分枝状)または環状の飽和炭化水素類が好ましい。また、炭化水素類としては、具体的にはn−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンが挙げられる。
本発明の作動液が炭化水素類を含有する場合は、作動液のメリット数を大きくするという観点から、その含有割合は0.5〜50質量%、特には1〜10質量%とするのが好ましい。
また、HFE−347と炭化水素類との共沸組成物または共沸様組成物としては以下の組成物が知られているが(特開2000−7603号公報参照。)、これらは本発明の作動液として好ましく用いられる。
1)HFE−347 64.1質量%とシクロペンタン 35.9質量%の共沸組成物。
2)HFE−347 49〜73質量%とシクロペンタン 27〜51質量%の共沸様組成物。
3)HFE−347 55.5質量%とn−ペンタン 44.5質量%の共沸組成物。
4)HFE−347 38〜64質量%とn−ペンタン 36〜62質量%の共沸様組成物。
5)HFE−347 77.6質量%とn−ヘキサン 22.4質量%の共沸組成物。
6)HFE−347 91.9質量%とn−ヘプタン 8.1質量%の共沸組成物。
上記ハロゲン化炭化水素類としては、炭素数1〜4の飽和塩素化炭化水素類、炭素数2または3の不飽和塩素化炭化水素類が好ましい。また、ハロゲン化炭化水素類としては、具体的には、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等のヒドロクロロフルオロカーボン類(以下、HCFC類という。)、ジフルオロメタン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4−へプタフルオロシクロペンタン等のヒドロフルオロカーボン類(以下、HFC類という。)、塩化メチレン、トリクロロエチレン等のクロロカーボン類(以下、CC類という。)、1−ブロモプロパンが挙げられる。
上記ハロゲン化炭化水素は、凝固点の降下やメリット数を大きくする目的から含有させることができ、その含有割合は0.1〜50質量%とするのが好ましい。
上記アルコール類としては炭素数1〜4のアルコール類が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよびn−ブタノールからなる群から選ばれる一種以上のアルコールが挙げられる。本発明の作動液がアルコール類を含有する場合は、少量の含有割合でメリット数を著しく大きくできる、不燃性である等の利点を有する。アルコール類の含有割合は0.5〜15質量%、特には1〜10質量%とするのが好ましい。
本発明の作動液としては、特には、HFE−347等の式1で表される化合物と、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよびn−ブタノールからなる群から選ばれる一種以上のアルコールとからなる組成物であって、HFE−347の含有割合が90〜99質量%であり、上記アルコールの含有割合が1〜10質量%である組成物が好ましい。
HFE−347とアルコール類との共沸組成物または共沸様組成物としては以下の組成物が知られており(特開平4−227695公報、特開平10−324897号公報参照。)、これらは本発明の作動液として特に好ましく用いられる。
1)HFE−347 82.1質量%とメタノール 7.9質量%の共沸組成物。
2)HFE−347 90〜96質量%とメタノール 4〜10質量%の共沸様組成物。
3)HFE−347 94.5質量%とエタノール 5.5質量%の共沸組成物。
4)HFE−347 90〜97質量%とエタノール 3〜10質量%の共沸様組成物。
5)HFE−347 95.6質量%と2−プロパノール 4.4質量%の共沸組成物。
6)HFE−347 95.0〜98.5質量%と2−プロパノール 1.5〜5.0質量%の共沸様組成物。
上記含フッ素アルコール類としては、炭素数が2〜4の部分フッ素化アルコールが好ましく、具体的には1,1,1−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等が挙げられる。含フッ素アルコール類の含有割合は0.5〜20質量%とするのが好ましい。
また、HFE−347と含フッ素アルコール類との共沸組成物としては以下の組成物が知られているが、これは本発明の作動液として好ましく用いられる。
1)HFE−347 88.5質量%と1,1,1−トリフルオロエタノール 11.5質量%の共沸組成物。
次に、上記ケトン類としては炭素数が3であるものが好ましく、具体的にはアセトンが挙げられる。HFE−347とアセトンの混合物は、以下の共沸組成を有する。
HFE−347 74.4質量%とアセトン 25.6質量%の共沸組成物。
この共沸組成物は本発明の作動液として好ましく用いられる。
上記含フッ素エーテル類としては、一般式C2a+1−O−C2b+1(aは1〜6の整数であり、bは1〜4の整数である。)で表される化合物が好ましい。パーフルオロプロピルメチルエーテル(COCH)、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)およびパーフルオロブチルエチルエーテル(COC)は特に好ましい。この他、CFCHOCHF(HFE−245mf)、CFCFCHOCHF(HFE−347mcf)も使用できる。
上記含フッ素エーテル類(式1で表される化合物を除く。)の含有割合は0.1〜50質量%とするのが好ましい。
また、HFE−347と上記含フッ素エーテル類との共沸組成物としては、HFE−347 69.2質量%とパーフルオロブチルメチルエーテル 30.8質量%の共沸組成物が知られているが、これは本発明の作動液として好ましい。
本発明の潜熱輸送装置用作動液は、そのままでも熱や酸化物に対する安定性は高いが、耐酸化性向上剤および耐熱性向上剤、または金属不活性剤等の安定剤を含有する場合は、各安定性が顕著に高くなるため、必要に応じて含有させるのが好ましい。
通常、上記安定剤の含有割合は、ヒートパイプ用作動液の性能を低下させない範囲で添加可能であるが、作動液中において5質量%以下であり、1質量%以下であるのが好ましい。
耐酸化性向上剤および耐熱性向上剤としては、具体的には、N,N’−ジフェニルフェニレンジアミン、p−オクチルジフェニルアミン、p,p−ジオクチルジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、N−(p−ドデシル)フェニル−2−ナフチルアミン、ジ−1−ナフチルアミン、ジ−2−ナフチルアミン、N−アルキルフェノチアジン、6−(t−ブチル)フェノール、2,6−ジ−(t−ブチル)フェノール、4−メチル−2,6−ジ−(t−ブチル)フェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、およびそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
金属不活性剤としては、具体的には、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、2,5−ジメチルカプトチアジアゾール、サリシリジン−プロピレンジアミン、ピラゾール、ベンゾトリアゾール、トルトリアゾール、2−メチルベンズアミダゾール、3,5−イメチルピラゾ−ルおよびメチレンビス−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
本発明の作動液を用いた潜熱輸送装置は、作動温度−50〜200℃で作動させることができる。本発明の作動液を用いた場合は、上記温度範囲で安定して高い性能を発現する。作動温度が0〜150℃、特には0〜100℃である場合は、より高い性能を発現することからより好ましい。
以下、本発明を、実施例を参照して説明する。
(1)HFE−347
<−50〜150℃におけるメリット数の算出>
以下の溶剤について、式1にしたがい−50〜150℃におけるメリット数を算出した。結果を図1に示す。
例1:HFE−347、
例2(比較例):n−パーフルオロヘキサン、
例3(比較例):AK−225(旭硝子社製品名、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンと1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンの混合物)、
例4(比較例):HFE−7100(3M社製品名、C−O−CH)、
例5(比較例):HFE−7200(3M社製品名、C−O−C)。
図1より、HFE−347は、HCFC類であるAK−225とほぼ同程度のメリット数を有することがわかる。また、HFE−347のメリット数は、n−パーフルオロヘキサンのメリット数の約1.5〜4倍であり、HFE−7100やHFE−7200のメリット数の約1.2〜1.4倍である。よって、HFE−347を作動液として用いた場合は、優れた熱伝達効率を発現すると考えられる。
<25℃および標準沸点におけるメリット数の算出>
表1に示す溶剤について、25℃におけるメリット数および標準沸点におけるメリット数を算出した。例6〜12は実施例、例13〜16は比較例である。なお、例7〜14の作動液は共沸様組成物である。
本発明の作動液はいずれも大きなメリット数を有しており、従来の作動液に比べて極めて大きな熱輸送量を有していることがわかる。また、例7および例8のようにアルコール類を添加した場合、または例9〜11のように炭化水素類を添加した場合は、メリット数がさらに大きくなることがわかる。
Figure 0004894307
(2)HFE−449、HFE−55−10
<−50〜200℃におけるメリット数の算出>
以下の溶剤について、式1にしたがい−50〜200℃におけるメリット数を算出した。結果を図2に示す。
例17:HFE−449、
例18:HFE−55−10、
例19(比較例):n−パーフルオロヘキサン(C14)。
図2より、HFE−449のメリット数は、全ての作動温度範囲にわたり、n−パーフルオロヘキサンのメリット数よりも同等以上の性能を有していることがわかる。一方、HFE−55−10は温度50℃以上の作動温度範囲において、n−パーフルオロヘキサンのメリット数よりも優れた性能を有しており、温度80℃以上の作動温度範囲においては最も大きなメリット数を有することがわかる。よって、HFE−449またはHFE−55−10を作動液として用いた場合は、優れた熱伝達効率を発現すると考えられる。
<25℃および標準沸点におけるメリット数の算出>
表2に示す溶剤について、25℃におけるメリット数および標準沸点におけるメリット数を算出した。例20〜25は参考例、例26は比較例である。
本発明の作動液はいずれも大きなメリット数を有しており、従来の作動液に比べて極めて大きな熱輸送量を有していることがわかる。また、例22、23および例25のようにアルコール類を添加した場合、または例24のように炭化水素類を添加した場合は、メリット数がさらに大きくなることがわかる。
Figure 0004894307
<ノート型パソコンの冷却への適用>
本発明の作動液を小型ヒートパイプの形態でノート型パソコンの冷却に応用した具体的態様について説明する。直径1.5mm、長さ20cmの銅製パイプの内面にステンレスのメッシュ構造物を配設し、その内部に作動液としてHFE−347(例1)を封入する。そのパイプの一端を蒸発部分として、ノートパソコンの発熱部分であるCPUに接触させる。他端を凝縮部分として放熱板を溶接し、その放熱板を液晶パネル裏側の放熱板に接触させる。以上の構成により、ノートパソコンのCPUで発生した熱は、作動液HFE−347の気化により凝縮部分に伝達される。その熱は放熱板を介して外部に放散され、同時に気化された作動液は凝縮液化される。液化したHFE−347は、メッシュ構造のウイッグを毛細管作用で移動して、蒸発部に循環される。以上の構成により、ノート型パソコンは非常にコンパクトに構成されしかも従来のものに比べて放熱効果も優れている。更に、寒冷地および高温地での耐用性に優れたパソコンを提供できる。
本発明の作動液は、コンピュータ、通信機器、整流装置や電動機等に用いられる半導体素子、電子機器、電力機器等の冷却、旋盤やボール盤等の工作機械の軸受け等の冷却、または空調用熱交換器等に用いられる。
メリット数と作動温度との相関を示すグラフ(HFE−347) メリット数と作動温度との相関を示すグラフ(HFE−449、HFE−55−10)

Claims (6)

  1. 1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(CHFCFOCHCF、以下、HFE−347という。)を含有する潜熱輸送装置用作動液。
  2. HFE−347の含有割合が50質量%以上である請求項に記載の潜熱輸送装置用作動液。
  3. さらに炭素数1〜4のアルコールを含有する請求項1または2に記載の潜熱輸送装置用作動液。
  4. 作動液が、HFE−347と、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよびn−ブタノールからなる群から選ばれる一種以上のアルコールとからなる組成物であって、HFE−347の含有割合が90〜99質量%であり、上記アルコールの含有割合が1〜10質量%である組成物からなる請求項に記載の潜熱輸送装置用作動液。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の作動液を用いた潜熱輸送装置を、作動温度が−50〜150℃で作動させる潜熱輸送装置の作動方法。
  6. 潜熱輸送装置がヒートパイプである請求項に記載の潜熱輸送装置の作動方法。
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