JP4894307B2 - 潜熱輸送装置用作動液および潜熱輸送装置の作動方法 - Google Patents
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ヒートパイプは、半導体素子や電子機器の発熱部の冷却装置等、比較的小型の冷却装置に適用され、二相密閉型熱サイフォンは、ウィックを必要とせず構造が簡単であることから、ガス−ガス型熱交換器、道路の融雪促進および凍結防止等に広く利用されている。
ヒートパイプはパイプ状容器の一端を蒸発部とし、他端を凝縮部として熱を伝える伝熱素子である。一般にヒートパイプの伝熱特性は、ヒートパイプ本体に封入されている作動液に左右される。一般に、常圧下での沸点付近で使用するときに良い特性を示すと言われている。
ヒートパイプは、主に(1)作動液、(2)ウィックまたは毛管構造、および(3)容器またはコンテナの3要素より構成される。作動液として要求される必要条件は以下の通りであるが、まず考えなければならないのは、作動蒸気温度範囲である。
2)熱安定性がよい。
3)ウイックおよびコンテナ材料に対する濡れ性がよい(接触角が0または非常に小さい。)。
4)作動温度範囲内で蒸気圧が高すぎたり低すぎたりしない。
5)蒸発潜熱が大きい。
6)熱伝導率が大きい。
7)気液両相において粘性率が小さい。
8)表面張力が大きい。
9)凝固点、または融解点が適正である。
M=ρσL/μ ・・・式A
ただし、ρは作動液の密度(kg/m3)、σは作動液の表面張力(N/m)、Lは作動液の蒸発潜熱(kJ/kg)、μは作動液の粘度(Pa・s)である。)メリット数は温度によって変化する。
例えば、特許文献1においては、ヒートパイプやサーモサイフォンの作動流体としてn−パーフルオロヘキサンが使用することが提案されている。また、特許文献2においては、C6F14等のパーフルオロカーボンを95%以上含有し、該パーフルオロカーボンよりも低沸点のフッ化炭素化合物の含量を1%以下にしたヒートパイプ用作動液が提案されている。しかし、これらの作動液は熱伝達効率が悪く、地球温暖化効果が大きいという問題がある。
また、本発明は、上記作動液を用いた潜熱輸送装置を、作動温度が−50〜150℃で作動させる潜熱輸送装置の作動方法を提供する。
本発明の作動液は、下記式1で表される化合物を含有する。式1において、XおよびYはそれぞれ独立にフッ素原子、ジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基である。
X−CHFCF2−O−CH2CF2−Y ・・・式1
上記式1で表される化合物は、熱輸送量が大きい、粘度が低い、凝固点が低い、適度な蒸気圧を有する、不燃性である、安定性が高い、一般的な材料との適合性に優れる、接触する物品を腐食させにくい等の点で作動液として優れる。
本発明の作動液において、HFE−347等の式1で表される化合物の含有割合は50質量%以上であるのが好ましく、特には80質量%以上、さらには90質量%以上であるのが好ましい。
ここで、共沸様組成とは、露点と沸点の温度差が0.5℃以内である組成比をいう。なかでも、蒸気温度差が0.1℃以内であるものは特に好ましい。
本発明の作動液が炭化水素類を含有する場合は、作動液のメリット数を大きくするという観点から、その含有割合は0.5〜50質量%、特には1〜10質量%とするのが好ましい。
1)HFE−347 64.1質量%とシクロペンタン 35.9質量%の共沸組成物。
2)HFE−347 49〜73質量%とシクロペンタン 27〜51質量%の共沸様組成物。
3)HFE−347 55.5質量%とn−ペンタン 44.5質量%の共沸組成物。
4)HFE−347 38〜64質量%とn−ペンタン 36〜62質量%の共沸様組成物。
5)HFE−347 77.6質量%とn−ヘキサン 22.4質量%の共沸組成物。
6)HFE−347 91.9質量%とn−ヘプタン 8.1質量%の共沸組成物。
上記ハロゲン化炭化水素は、凝固点の降下やメリット数を大きくする目的から含有させることができ、その含有割合は0.1〜50質量%とするのが好ましい。
1)HFE−347 82.1質量%とメタノール 7.9質量%の共沸組成物。
2)HFE−347 90〜96質量%とメタノール 4〜10質量%の共沸様組成物。
3)HFE−347 94.5質量%とエタノール 5.5質量%の共沸組成物。
4)HFE−347 90〜97質量%とエタノール 3〜10質量%の共沸様組成物。
5)HFE−347 95.6質量%と2−プロパノール 4.4質量%の共沸組成物。
6)HFE−347 95.0〜98.5質量%と2−プロパノール 1.5〜5.0質量%の共沸様組成物。
また、HFE−347と含フッ素アルコール類との共沸組成物としては以下の組成物が知られているが、これは本発明の作動液として好ましく用いられる。
1)HFE−347 88.5質量%と1,1,1−トリフルオロエタノール 11.5質量%の共沸組成物。
HFE−347 74.4質量%とアセトン 25.6質量%の共沸組成物。
この共沸組成物は本発明の作動液として好ましく用いられる。
また、HFE−347と上記含フッ素エーテル類との共沸組成物としては、HFE−347 69.2質量%とパーフルオロブチルメチルエーテル 30.8質量%の共沸組成物が知られているが、これは本発明の作動液として好ましい。
通常、上記安定剤の含有割合は、ヒートパイプ用作動液の性能を低下させない範囲で添加可能であるが、作動液中において5質量%以下であり、1質量%以下であるのが好ましい。
(1)HFE−347
<−50〜150℃におけるメリット数の算出>
以下の溶剤について、式1にしたがい−50〜150℃におけるメリット数を算出した。結果を図1に示す。
例1:HFE−347、
例2(比較例):n−パーフルオロヘキサン、
例3(比較例):AK−225(旭硝子社製品名、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンと1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンの混合物)、
例4(比較例):HFE−7100(3M社製品名、C4F9−O−CH3)、
例5(比較例):HFE−7200(3M社製品名、C4F9−O−C2H5)。
表1に示す溶剤について、25℃におけるメリット数および標準沸点におけるメリット数を算出した。例6〜12は実施例、例13〜16は比較例である。なお、例7〜14の作動液は共沸様組成物である。
本発明の作動液はいずれも大きなメリット数を有しており、従来の作動液に比べて極めて大きな熱輸送量を有していることがわかる。また、例7および例8のようにアルコール類を添加した場合、または例9〜11のように炭化水素類を添加した場合は、メリット数がさらに大きくなることがわかる。
<−50〜200℃におけるメリット数の算出>
以下の溶剤について、式1にしたがい−50〜200℃におけるメリット数を算出した。結果を図2に示す。
例17:HFE−449、
例18:HFE−55−10、
例19(比較例):n−パーフルオロヘキサン(C6F14)。
表2に示す溶剤について、25℃におけるメリット数および標準沸点におけるメリット数を算出した。例20〜25は参考例、例26は比較例である。
本発明の作動液はいずれも大きなメリット数を有しており、従来の作動液に比べて極めて大きな熱輸送量を有していることがわかる。また、例22、23および例25のようにアルコール類を添加した場合、または例24のように炭化水素類を添加した場合は、メリット数がさらに大きくなることがわかる。
本発明の作動液を小型ヒートパイプの形態でノート型パソコンの冷却に応用した具体的態様について説明する。直径1.5mm、長さ20cmの銅製パイプの内面にステンレスのメッシュ構造物を配設し、その内部に作動液としてHFE−347(例1)を封入する。そのパイプの一端を蒸発部分として、ノートパソコンの発熱部分であるCPUに接触させる。他端を凝縮部分として放熱板を溶接し、その放熱板を液晶パネル裏側の放熱板に接触させる。以上の構成により、ノートパソコンのCPUで発生した熱は、作動液HFE−347の気化により凝縮部分に伝達される。その熱は放熱板を介して外部に放散され、同時に気化された作動液は凝縮液化される。液化したHFE−347は、メッシュ構造のウイッグを毛細管作用で移動して、蒸発部に循環される。以上の構成により、ノート型パソコンは非常にコンパクトに構成されしかも従来のものに比べて放熱効果も優れている。更に、寒冷地および高温地での耐用性に優れたパソコンを提供できる。
Claims (6)
- 1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(CHF2CF2OCH2CF3、以下、HFE−347という。)を含有する潜熱輸送装置用作動液。
- HFE−347の含有割合が50質量%以上である請求項1に記載の潜熱輸送装置用作動液。
- さらに炭素数1〜4のアルコールを含有する請求項1または2に記載の潜熱輸送装置用作動液。
- 作動液が、HFE−347と、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよびn−ブタノールからなる群から選ばれる一種以上のアルコールとからなる組成物であって、HFE−347の含有割合が90〜99質量%であり、上記アルコールの含有割合が1〜10質量%である組成物からなる請求項1に記載の潜熱輸送装置用作動液。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の作動液を用いた潜熱輸送装置を、作動温度が−50〜150℃で作動させる潜熱輸送装置の作動方法。
- 潜熱輸送装置がヒートパイプである請求項5に記載の潜熱輸送装置の作動方法。
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