JP4893259B2 - 方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤の塗布方法および方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤の塗布方法および方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、変圧器その他の電気機器の鉄心材料に用いられる方向性電磁鋼板の製造技術、より具体的には方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤の塗布方法および方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特にフォルステライト質被膜形成のために用いられる焼鈍分離剤の主剤であるマグネシアとして好適な粉体特性を規定すると共に、塗布後の水和量を一定範囲に調整することにより、方向性電磁鋼板の被膜特性および磁気特性の有利な向上を図ろうとするものである。
方向性電磁鋼板は、主として変圧器その他の電気機器の鉄心材料として使用され、磁気特性として磁束密度が高く、鉄損および磁気歪が小さいことが要求される。
磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を得るには、{110}<001>方位いわゆるゴス方位に高度に集積させた二次再結晶組織を得ることが肝要である。このような二次再結晶を効果的に発現させるためには、まず、一次再結晶粒の成長を抑制するインヒビターと呼ばれる析出分散相を、均一かつ適切なサイズに分散させることが必要とされている。
このようなインヒビターとしては、MnS,MnSe,AlNおよびBNに代表される硫化物、Se化合物および窒化物などのような鋼中への溶解度が低いものが用いられており、熱間圧延前のスラブ加熱時にインヒビターを完全に固溶させ、その後の工程で微細に析出させる方法が採用されている。
また、最近では、二次再結晶発現の重要なポイントして、インヒビターの存在の他に、一次再結晶組織において隣り合う結晶粒の方位差角が注目されるようになってきており、方位差角が20〜45°である粒界(高エネルギー粒界)が重要な役割を果たしていることが、非特許文献1に報告されている。これに基づいて、インヒビターを使用しない方向性電磁鋼板の研究が再び盛んに行われるようになってきており、鋼スラブにインヒビター成分が含有されなくても、工業的に方向性電磁鋼板が製造できる技術(インヒビターレス法)が開発されている。
「Acta Material 45巻(1997)1285頁」
但し、いずれの場合でも、方向性電磁鋼板の製造方法としては、鋼スラブを、熱間圧延後、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、脱炭・一次再結晶焼鈍後、鋼板にマグネシアを主剤とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶および純化を目的とした最終仕上げ焼鈍を行うという工程が一般的である。そして、かくして得られた方向性電磁鋼板の表面には、特殊な場合を除いてフォルステライト(Mg2SiO4)を主体とする絶縁被膜、いわゆるフォルステライト質被膜と呼称される被膜が形成されているのが普通である。
このフォルステライト質被膜は、焼鈍分離剤として塗布されたマグネシアと、脱炭・一次再結晶焼鈍時に鋼板表層に生成したSiO2(シリカ)を主体とする酸化層が反応することにより形成される。この被膜は、表面の電気的絶縁だけでなく、その低熱膨張性に起因した引張応力を鋼板に付与することにより、鉄損さらには磁気歪をも効果的に改善する。
さらに、一般に方向性電磁鋼板は、フォルステライト質被膜の上にガラス質の絶縁コーティングが施されるが、フォルステライト質被膜は、絶縁コーティングと地鉄部分とを密着させる一種のバインダーとしての働きもある。なお、この絶縁コーティングは非常に薄く透明であるため、フォルステライト質被膜が製品の最終的な外観を決定する。従って、その外観の良否は製品価値を大きく左右し、例えば地鉄が一部露出したような被膜を持つものは製品として不適当とされるなど、被膜性状が製品歩留りに及ぼす影響は極めて大きい。従って、形成されたフォルステライト質被膜は、外観が均一で欠陥のないこと、またせん断、打ち抜きおよび曲げ加工などにおいて被膜のはく離が生じないように密着性に優れることが要求される。さらに、その表面は平滑で、鉄心として積層したときに高い占積率を有することも必要とされる。
また、マグネシアには、上記した働き以外に、鋼板中の析出物の分解・成長挙動や結晶粒の成長挙動を変化させて、磁気特性に影響を及ぼす働きもある。例えば、マグネシアをスラリー化した際に、持ち込まれる水分が多すぎると、鋼板が酸化されて磁気特性が劣化したり、被膜に点状欠陥が生成したりする。さらに、マグネシア中に含まれる不純物が焼鈍中に鋼中に侵入することにより、一次再結晶挙動が変化することも知られている。従って、焼鈍分離剤の不純物成分や粉体特性の良否は、方向性電磁鋼板の被膜特性と磁気特性を左右する重要な要因となっている。
このため、従来から焼鈍分離剤用のマグネシアの品質改善のために、様々な方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、マッフル炉で高温焼成されたマグネシアの不純物濃度、水和量およびふるい通過性を特定することによって、良好なフォルステライト被膜を形成する方法が開示されている。
特公昭54−14566号公報
特許文献2には、CaO,SO3,B等の不純物濃度や比表面積、粒径、クエン酸活性度の分布を所定の範囲に収めることによって、良好な被膜を形成する技術が開示されている。
特公昭57−45472号公報
特許文献3には、BET比表面積が30m2/g以下の水酸化マグネシウムを焼成し、引き続き吸湿させて、表面積:100Å2当たりのOH基の数を15〜30の範囲にした、BET比表面積が15〜30m2/gの酸化マグネシウム:70〜90wt%と、BET比表面積が1〜10m2/gの酸化マグネシウム:10〜30wt%とを成分とするMgOを用いることにより、鋼板との接着力を高めることによって、被膜特性と磁気特性を向上させる方法が開示されている。
特公昭57−8188号公報
特許文献4には、X線回折の回折線幅の拡がりから測定したMgO粒径が0.08〜0.18μmであるMgOを用いることによって、磁気特性を改善する方法が開示されている。
特開昭58−193373号公報
さらに、前述したように、マグネシアはスラリー状にして鋼板に塗布されるが、マグネシアは水と反応して水酸化マグネシウムが生成され、これが鋼板への持込み水分となり、それが多すぎるとフォルステライト被膜の形成や磁気特性に悪影響を及ぼす。この持込み水分の影響は非常に大きいことが知られており、その影響を低減するための方法も種々提案されている。
例えば、特許文献5には、水和水分を1〜4%としたMgOに、TiO2とA12S3またはZnSを添加した焼鈍分離剤を用いて、フォルステライト被膜と鉄損を改善する方法が開示されている。
特開昭53−15205号公報
特許文献6には、MgOを1300℃以上の高温で焼成して不活性化し、これをスラリーとする際は温水中で水和させて450℃以上の温度での灼熱減量率を2.0〜10%とすることで、良好なフォルステライト被膜の形成を図る技術が開示されている。
特公昭60−33896号公報
特許文献7には、マグネシアを塗布後に、昇温速度:80℃/s以上で加熱して乾燥させることによって、水和水分を低減する方法が提案されている。
特許第2634847号公報
特許文献8には、CaO,SO3,B等の不純物濃度や粒径、水和量、クエン酸活性度(CAA40%)に加え、N2ガス吸着等温線や水蒸気吸着等温線の分布を特定の範囲とすることによって、被膜特性と磁気特性を向上させる技術が開示されている。また、特許文献9には、細孔容積を特定の範囲に制御することによって、被膜特性と磁気特性を向上させる技術が開示されている。
しかしながら、N2ガス吸着等温線と細孔容積は、いずれもマグネシアの水和し易さや水分の放出過程に着目した指標であり、ある程度有効ではあるものの、測定精度や測定の簡便さに問題があった。
特許第3695008号公報 特許第3707144号公報
さらに、特許文献10には、温度:20℃、水和時間:80分以下での水和量曲線が、該文献中の図1で囲まれる領域を満足するものを用いるという技術が開示されている。しかしながら、鋼板への持込水分量は、「MgOの活性度、スラリー化したときの滞留時間、スラリー水温、スラリー混合時の撹拌速度等によって大きく左右される」との記載はあるものの、実際に鋼板に塗布・乾燥した後の水和量は規定していないため、磁気・被膜特性の改善効果は不十分であった。また、規定されたMgO水和量の範囲も広いため、充分な効果を得ることができないという問題があった。
特開平10−88241号公報
上記の各技術により、方向性電磁鋼板の特性は向上・安定化してきたものの、未だ十分な効果が得られているとは言い難く、マグネシアの製造ロットの違いで製品不良が発生することも多々あり、マグネシアの各粉体特性の変化が製品特性にどのような影響を及ぼしているかは、まだ完全には解明されていないといえる。
これまでマグネシアを評価する指標として、CaO,Cl,B,SO3などの不純物濃度やクエン酸活性度、BET比表面積および粒度分布、さらにはN2ガス吸着等温線や細孔容積などの粉体特性が用いられてきた。
しかしながら、これらの特性でMgOの適用可否を的確に判断することは難しく、製品特性に及ぼす各粉体特性の影響が、従来言われていた傾向と異なる場合もあった。従って、マグネシアについて、より適切な評価指標を見出すことが強く望まれていた。
本発明は、上記の事情に鑑みて開発されたもので、方向性電磁鋼板製造時における焼鈍分離剤用マグネシアの新しい評価方法を提示すると共に、この評価方法で評価した特性値を満足するマグネシアを適正なスラリー状態で用いることにより、被膜特性ひいては磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を安定して得ることにある。
すなわち、本発明は、被膜特性ひいては磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を安定して得るために、所定の粉体特性を有するマグネシアを主剤とする方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤の有利な塗布方法を、方向性電磁鋼板の製造方法と共に提案することを目的とする。
以下、本発明の解明経緯について説明する。
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく、被膜形成に最適なマグネシア条件について種々検討を行った。
その結果、不純物のCl濃度が0.01〜0.04mass%、CaO濃度が0.25〜0.70mass%、B濃度が0.05〜0.15mass%、SO3濃度が0.05〜0.50mass%、CAA40%が50〜90秒である粉体を選択し、ついで20℃,30分と20℃,180分の水和試験を行い、前者の水和量が1.5〜2.5mass%でかつ後者の水和量が3.0〜5.0mass%であるマグネシアを用いることで、良好なフォルステライト被膜が得られる頻度が向上するとの知見を得た。
さらに、実際の生産ラインにおいて焼鈍分離剤スラリーは、一定量を塗布して消費した後、ほぼその消費量に見合う量を新たに調合して、残存スラリーに継ぎ足すことで、使用している。従って、水和温度については一定に制御できるものの、水和時間を一定にすることは困難なため、水和量をコイル全長にわたって一定値にすることは極めて難しい。というのは、マグネシアの水和量は、水和温度が高くなる、あるいは水和時間が長くなるにつれて、高くなるからである。この理由は、水和量の増加は、水和が進行することで、マグネシアの一部が水酸化マグネシウムになることで生じることによる。但し、水和温度と平均水和時間を制御することによって、水和量をある一定範囲、例えば2.5±0.3%程度の範囲になるようにすることは可能である。
なお、特公昭61−47887号公報では、1100℃以上で焼成した非水和の酸化マグネシウム:50〜99wt%に、水酸化マグネシウムに1〜50wt%とアルミ化合物0.1〜0.5wt%を配合して、上記非水和の酸化マグネシウムに吸着せしめた焼鈍分離剤を用いる技術を提案しているが、この技術では、作業(水和)時間が24Hrと長くても全く水和量が変化しないことが該公報中の第3図から分かる。しかしながら、本発明にいたる検討で、水和量が水和時間に対して全く変化しないマグネシアでは、良好なフォルステライト被膜を得るのは難しいことが判明した。この理由は、水和時間が長くなっても水和量がほとんど変わらないマグネシアでは、仕上げ焼鈍中のフォルステライト被膜形成能(反応性)が低いためと考えられる。
実生産ラインにおいて、水和量をほぼ一定にする必要性に着目した点においては、本発明は特公昭61−47887号公報と同じである。しかしながら、マグネシアとして、不純物濃度などと共に、20℃,30分と20℃,180分での水和量が異なるマグネシアを用い、マグネシアの消費量と新液スラリーの調合ピッチなどを考慮して、スラリーの水和温度と平均水和時間を制御することによって、該粉体をスラリー状にして塗布・乾燥させた後のマグネシアの水和量を一定範囲にすることが、本発明の新規な点である。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.鋼板表層にSiO2を含む酸化膜を有する方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍板に、マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤を塗布、乾燥することからなる方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤の塗布方法において、
前記焼鈍分離剤中のマグネシアとして、不純物のCl濃度が0.01〜0.04mass%、CaO濃度が0.25〜0.70mass%、B濃度が0.05〜0.15mass%、SO3濃度が0.05〜0.50mass%、CAA40%が50〜90秒を満足し、さらに20℃,30分の水和試験による水和量が1.5〜2.5mass%でかつ20℃,180分の水和試験による水和量が3.0〜5.0mass%である粉体を用い、
スラリーの水和温度と平均水和時間の調整により、該粉体を水でスラリー状にして塗布、乾燥させた後のマグネシアの水和量が1.0mass%以上 3.5mass%以下になるように水和させた焼鈍分離剤を、鋼板表面に塗布、乾燥することを特徴とする方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤の塗布方法。
2.最終板厚とした鋼板に、脱炭焼鈍を施し、鋼板表層にSiO2を含む酸化膜を形成したのち、マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤を塗布、乾燥してから、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
前記焼鈍分離剤中のマグネシアとして、不純物のCl濃度が0.01〜0.04mass%、CaO濃度が0.25〜0.70mass%、B濃度が0.05〜0.15mass%、SO3濃度が0.05〜0.50mass%、CAA40%が50〜90秒を満足し、さらに20℃,30分の水和試験による水和量が1.5〜2.5mass%でかつ20℃,180分の水和試験による水和量が3.0〜5.0mass%である粉体を用い、
スラリーの水和温度と平均水和時間の調整により、該粉体を水でスラリー状にして塗布、乾燥させた後のマグネシアの水和量が1.0mass%以上 3.5mass%以下になるように水和させた焼鈍分離剤を、鋼板表面に塗布、乾燥することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
焼鈍分離剤用マグネシアとして、本発明で規定した粉体特性を満足するもの用い、かつ実生産ラインにおいて、スラリーの水和温度と平均水和時間により、該粉体を水でスラリー状にして塗布・乾燥させた後のマグネシアの水和量を一定範囲に制御することにより、被膜特性と磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を得ることができる。
以下、本発明の基礎となった実験結果ついて説明する。なお、鋼板の成分組成に関する「%」表示は特に断らない限りmass%(質量%)を意味するものとする。
(実験1)
C:0.065%,Si:3.34%,酸可溶性Al:0.026%,N:0.0087%,Mn:0.074%,Se:0.018%,Sb:0.04%およびCu:0.10%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるけい素鋼スラブ15本を、1400℃で30分加熱後、熱間圧延して2.2mmの板厚にした。ついで、1000℃,45秒間のノルマ焼鈍後、1.5mm厚に冷延し、1100℃,45秒間の中間焼鈍後、2回目の冷間圧延により最終冷延板厚:0.22mmとした。このとき、最終冷間圧延は、少なくとも1パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が180〜250℃になるような圧延とした。その後、H2−H20−N2中、850℃の温度で脱炭・一次再結晶焼鈍を施したのち、マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤を塗布、乾燥してから、最終仕上げ焼鈍を行った。
このとき、マグネシアとしては表1に示される粉体特性を持つ15種類の粉体(No.1〜15)を用いた。表1中、CAA40(s)は、特公昭57−45472号公報に開示の方法を用いて測定した(0.4Nのクエン酸、30℃での測定)。また、各マグネシア100質量部に対してTiO2を8質量部、Sr(OH)2・8H20を2質量部、SnO2を2質量部添加して、焼鈍分離剤とした。
その後、最終仕上げ焼鈍として、850℃から1150℃までを15℃/hの昇温速度で加熱し、引き続き1200℃,5時間の純化焼鈍を施した。その後、未反応分離剤を除去したのち、りん酸マグネシウム、コロイダルシリカおよびクロム酸を主成分とする絶縁コーティングを施して製品板とした。
かくして得られた方向性電磁鋼板の磁気特性(磁束密度B8,鉄損W17/50)、被膜欠陥発生率および被膜密着性について調べた結果を、表1に併記する。
なお、被膜欠陥発生率は、レーザー式の表面検査装置を用いて評価し、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
Figure 0004893259
表1から明らかなように、No.1からNo.13までの比較では、CaOとSO3濃度が高いNo.2を除き、20℃,30分の水和試験による水和量が1.5〜2.5wt%、かつ20℃,180分の水和試験による水和量が3.0〜5.0wt%あるマグネシアを用いた場合(No.7〜13)には、被膜欠陥発生率が低下して、良好な被膜を得ることができた。また、磁気特性も良好な値が得られた。一方、上記水和量範囲を満足しても、CaOとSO3濃度が高いNo.2では被膜欠陥発生率が高くなり、また上記水和量範囲を満足していないNo.1,3〜6ではさらに被膜欠陥発生率が高くなって密着性も劣化していた。
しかし、No.14,15は、水和量が上記の範囲を満足し、Cl,CaO,B,SO3の量やCAA40値がNo.7〜13と同等であったにもかかわらず、被膜特性と磁気特性は良くなかった。
この原因を調べるために、各ラインの操業条件や通板日を調べたところ、No.14,15の マグネシアは、No.1〜13のマグネシアとは異なる日時に塗布されており、その日はかなり気温が高くて暑い日であったことが分かった。
通常、マグネシアスラリーの水和温度は20℃に設定されているが、暑い日には配管や鋼板の温度が高くなるなどして、マグネシアの水和が進行しやすい状況にあると思われる。従って、No.14,15のマグネシアを塗布した際には、実際に塗布、乾燥された後の水和量が高くなり、その影響で良好な被膜および磁気特性が得られなかったものと推察された。
そこで、上記の推定を検証するために、ライン速度や鋼板の板幅、焼鈍分離剤の塗布量などによって決まる焼鈍分離剤スラリー消費量を勘案して、新液スラリーの調合ピッチによって決まる平均水和時間とスラリーの水和温度を制御することによって、マグネシア水和量を一定範囲で変化させ、実際の塗布・乾燥後の水和量が方向性電磁鋼板の被膜特性および磁気特性に及ぼす影響について調査した。
(実験2)
C:0.073%,Si:3.41%,酸可溶性Al:0.023%,N:0.0080%,Mn:0.067%,Se:0.02%,Sb:0.037%およびCu:0.08%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるけい素鋼スラブ10本を、1430℃で30分加熱後、熱間圧延して2.4mmの板厚にした。ついで、1000℃,60秒間のノルマ焼鈍後、1.6mm厚に冷延し、1100℃,30秒間の中間焼鈍後、2回目の冷間圧延により最終冷延板厚:0.22mmとした。このとき、最終冷間圧延は、少なくとも1パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が180〜250℃になるような圧延とした。その後、H2−H20−N2中、850℃の温度で脱炭・一次再結晶焼鈍を施した後、マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤を塗布、乾燥してから、最終仕上げ焼鈍を行った。
このとき、マグネシアとしては表2に示される粉体特性をもつ2種類の粉体(記号A,B)を用いた。その際、CAA40(s)は、前記した特公昭57−45472号公報に開示の方法を用いて測定した。また、各マグネシア:100質量部に対してTiO2を10質量部、Sr(OH)2・8H20を3質量部、Sn02を4質量部添加して焼鈍分離剤とした。
さらに、スラリーの水和温度と平均水和時間を制御することによって、焼鈍分離剤スラリーを塗布、乾燥させた後のマグネシアの水和量が表3に示す一定範囲になるようにした。
その後、最終仕上げ焼鈍として、850℃から1150℃までを15℃/hの昇温速度で加熱し、引き続き1200℃,5時間の純化焼鈍を施した。その後、未反応分離剤を除去したのち、りん酸マグネシウム、コロイダルシリカおよびクロム酸を主成分とする絶縁コーティングを施して製品板とした。
かくして得られた方向性電磁鋼板の磁気特性(磁束密度B8,鉄損W17/50)、被膜欠陥発生率および被膜密着性について調べた結果を、表3に併記する。
なお、被膜欠陥発生率は、レーザー式の表面検査装置を用いて評価し、被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
Figure 0004893259
Figure 0004893259
表3から明らかなように、スラリーの水和温度と平均水和時間を調整することにより、塗布、乾燥させた後のマグネシアの水和量を1.0mass%以上 3.5mass%以下の範囲に制御した場合に、良好な被膜特性および磁気特性を得ることができた。
このような結果が得られた理由について、発明者らは次のように考えている。
焼鈍分離剤用マグネシアの反応性、すなわち被膜形成能の評価法として、従来はクエン酸活性度(CAA)を用いるのが一般的であった。この方法では、CAA40やCAA70,CAA80などの種々の反応段階での値やそれらの比を用いた評価法が提案されている。また、その他にも、BET比表面積やN2ガス吸着等温線、水蒸気吸着等温線などを用いる方法も提案されている。しかしながら、焼鈍分離剤用マグネシアは、水でスラリー化して用いるものであるから、水和試験による水和量の時間変化の程度が、これまでの方法より最も工程条件に近い条件で、反応性を評価できたためであろうと考えられる。
また、マグネシアの粉体持性だけでなく、実際にコイル状の鋼板に持ち込まれる水和・水分量が被膜特性および磁気特性に大きく影響するので、塗布された後のマグネシア水和量を、可能な限り厳密に制御することが、被膜特性および磁気特性の向上ならびに安定化に大きく寄与するものと考えられる。
さて、本発明で対象とする方向性電磁鋼板の成分組成については、従来公知の方向性電磁鋼板であればいずれもが適合する。
例えば、Cは0.01%以上 0.10%以下が好適範囲である。すなわち、C量が0.01%に満たないと良好な一次再結晶組織が得られず、一方0.10%を超えると脱炭焼鈍時の脱炭負荷が増大して生産性が低下する。
また、Siは2.0%以上 4.0%以下が好適範囲である。すなわち、Siは製品の電気抵抗を高めて渦電流損を低減させる上で有用な成分であるが、含有量が2.0%に満たないと最終仕上げ焼鈍中にα−γ変態によって結晶方位が損なわれ、一方4.0%を超えると冷延性に問題が生じるためである。
上記したC,Siの他にインヒビター構成元素を添加する。インヒビターとしてはAlN,MnS,MnSe等が良く知られているが、これらのいずれを用いてもよい。例えば、MnSおよび/またはMnSeを用いる場合には、Mn:0.05〜0.20%、Seおよび/またはS:0.01〜0.03%が好適範囲である。すなわち、Mn量が0.05%未満、またはS,Seの単独もしくは合計量が0.01%未満であると、インヒビター機能が不十分となり、一方、Mn量が0.20%を超え、またSeやS量が0.03%を超えると、スラブ加熱の際に必要とする温度が高くなりすぎて実用的でない。また、AlNをインヒビターに用いる場合は、Al:0.01〜0.04%、N:0.0050〜0.012%が好適範囲である。これらの上限を超える量では、AlNの粗大化を招いて抑制力を失い、一方これらの下限に満たない場合にはAlN量が不足する。
また、磁気特性を向上させるための補助インヒビターとして、SbあるいはSnを添加することができる。Sbは、含有量が0.005%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.10%を超えると脱炭性が非常に悪くなるので、0.005〜0.10%が好適範囲である。他方、Snは、含有量が0.03%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.30%を超えると良好な一次再結晶組織が得にくくなるので、0.03〜0.30%が好適範囲である。
さらに、Cuも磁気特性の向上・安定化に有効な元素である。しかし、含有量が0.05%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.20%を超えると酸洗性や熱間圧延時の脆性が劣化するので、0.05〜0.20%が好適範囲である。
上記した元素の他に、磁気特性あるいは被膜特性の改善成分として、Mo,Cr,Ni,P,Biなどを単独または複合して添加することが可能である。
Moは、含有量が0.005%未満ではその添加効果に乏しく、一方0.10%を超えると脱炭性が悪化するので、0.005〜0.10%が好適範囲である。
Crは、含有費が0.04%未満ではその添加効果に乏しく、一方0.30%を超えると良好な一次再結晶組織が得にくくなるので、0.04〜0.30%が好適範囲である。
Niは、含有量が0.03%未満ではその添加効果に乏しく、一方0.50%を超えると熱間強度が低下するので、0.03〜0.50%が好適範囲である。
Pは、含有量が0.008%未満ではその添加効果に乏しく、一方0.40%を超えると良好な一次再結晶組織が得にくくなるので、0.008〜0.40%が好適範囲である。
Biは、含有量が0.005%未満ではその添加効果に乏しく、一方0.20%を超えると良好な一次再結晶組織が得にくくなるので、0.005〜0.20%が好適範囲である。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の好適製造条件について説明する。
従来から用いられている製鋼法で、上記成分に調整した溶鋼を、連続鋳造法あるいは造塊法で鋳造し、必要に応じて分塊工程を挟んでスラブを製造する。また、直接鋳造法を用いて100mm以下の厚さの薄鋳片を直接製造してもよい。
ついで、スラブを、通常の方法に従い加熱した後、熱間圧延により熱延コイルとする。
上記の熱間圧延後、必要に応じて熱延板焼鈍を行ったのち、1回の冷間圧延あるいは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により、最終板厚の冷延板とする。冷間圧延は、常温で行っても良いし、あるいは常温よりも高い温度、例えば150〜300℃程度に上げて圧延する温間圧延としてもよい。また、冷間圧延途中で150〜300℃の範囲での時効処理を1回または複数回行ってもよい。
このような最終板厚とした鋼板に、湿水素雰囲気中で脱炭(一次再結晶)焼鈍を施す。この脱炭焼鈍により、残留C量を0.004%以下まで低減することが望ましい。また、その際、鋼板表層にシリカ(SiO2)を含む酸化膜を形成させることが重要である。なお、このような脱炭焼鈍に引き続いて、30〜200ppm程度鋼板を窒化させる処理を行ってもよい。
その後、この脱炭焼鈍を施した鋼板表面に、マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤をスラリー状にして塗布した後、乾燥させる。ここで、良好な被膜特性を得るためには、マグネシアの粉体特性として、不純物のCl濃度が0.01〜0.04%、Ca濃度が0.25〜0.70%、B濃度が0.05〜0.15%、SO3濃度が0.05〜0.50%、CAA40%値が50〜90秒である粉体を選択し、さらに20℃,30分の水和試験による水和量が1.5〜2.5mass%でかつ20℃,180分の水和試験による水和量が3.0〜5.0mass%である粉体を使用することが肝要である。
さらに、実際に、該粉体を水でスラリー状にして鋼板に塗布、乾燥させた後のマグネシアの水和量が1.0mass%以上 3.5mass%以下になるように水和させることが必要がある。ここで、実ラインでの水和量は、スラリーの水和温度と平均水和時間によって調整する必要がある。すなわち、生産ラインにおいて焼鈍分離剤スラリーは、一定量を塗布して消費した後、ほぼその消費量に見合う量を新たに調合して、残存スラリーに継ぎ足すことで、使用している。従って、水和温度については一定に制御できるものの、水和時間を一定にすることは困難なため、水和量をコイル全長にわたって一定値にすることは極めて難しい。なぜなら、マグネシアの水和量は、水和温度が高くなるあるいは水和時間が長くなるにつれて、高くなるからである。
但し、水和温度と平均水和時間を制御することによって、水和量をある一定範囲、例えば、2.5±0.3%などの範囲になるよう調整することは可能である。
ここで、平均水和時間は、例えば次のようにして求めることができる。
例として、図1に示すように、スラリーを調合する際、スラリーを貯留するタンク容量の1/3の量を1回に調合する場合を考える。この図において、スラリーの塗布開始までは、前記1/3の量ずつ30分毎に調合する。この塗布開始時(a1)における平均水和時間は、
1=1/3×1.5hr+1/3×1hr+1/3×0.5hr=1hr
となる。そして、鋼板への塗布1時間経過ごとに1/3の量が消費され、その都度1/3の量を調合して継ぎ足すとすると、1回目の継ぎ足し時には、
2=2/3(残り)×(1+1)hr*+1/3×0hr=1.33hr
(* 塗布開始時の平均水和時間:1hr+継ぎ足しまでの1hr)
となる。同様に、2回目の継ぎ足し時には、
3=2/3×(1.33+1)+1/3×0hr=1.56hr
となる。よって、この例でのn回目の継ぎ足し時の平均水和時間an+1は、
n+1=2/3(an+1)
という漸化式で表される。ここで、a1=1であるから、
n+1=2−(2/3)n
という一般式で、この例における平均水和時間を求めることができる。
なお、上記粉体特性を有するマグネシアを使用し、該粉体をスラリー状にして塗布・乾燥させた後のマグネシアの水和水分量を1.0mass%以上 3.5mass%以下の範囲に制御するには、スラリーの水和温度を5〜22℃にして、上記した平均水和時間を制御する。平均水和時間は、スラリー1回ごとの調合量、新液スラリーの調合間隔、スラリーの単位時間当たりの消費量によって決まる。従って、これらの要因を勘案して塗布・乾燥させた後のマグネシアの水和量が上記の範囲となるように、平均水和時間を制御すればよく、好適にはこの平均水和時間が20〜90分の範囲になるようにするのが望ましい。
また、磁気特性や被膜特性改善のために使用する焼鈍分離剤中の副剤は、従来から公知のものを用いることができるが、一般的にはTiO2,SnO2,MoO3,WO3,CuO,MnOのような酸化物、MgSO4・7H2O,SrSO4,SnSO4のような硫化物、Sr(0H)2・8H20やLiOHのような水酸化物、Na2B407のようなB系化合物、Sb203,Sb2(SO4)3のようなSb系化合物などが知られている。これらの化合物を添加する場合の添加量は、マグネシア100質量部に対して、0.5〜15質量部とすることが望ましく、1種または2種以上をそれぞれ単独または複合して添加することができる。但し、トータルでの添加量は、マグネシア100質量部に対して、20質量部以下とすることが望ましい。
さらに、焼鈍分離剤は、鋼板片面当たり4〜10 g/m2程度の範囲で塗布するのが好ましい。というのは、塗布量が4g/m2より少ないとフォルステライトの生成が不十分となり、一方10g/m2を超えるとフォルステライト質被膜が過剰に生成し厚くなるため、占積率の低下を招くからである。
ついで、従来から公知の方法で、二次再結晶焼鈍および純化焼鈍からなる最終仕上げ焼鈍を行う。
その後、鋼板表面に、りん酸塩系の絶縁コーティング、好ましくは張力を付与する絶縁コーティングを施して製品とする。絶縁被膜の種類については、特に限定されず、従来公知の絶縁被膜いずれもが適合する。例えば、特開昭50−79442号公報や特開昭48−39338号公報に記載されている、りん酸塩−クロム酸−コロイダルシリカを含有する塗布液を鋼板に塗布し、800℃程度で焼き付ける方法が好適である。
さらに、最終冷延後、最終仕上げ焼鈍後あるいは絶縁コーティングの被成後に、既知の磁区細分化処理を行うことは、さらなる鉄損の低減に有効である。
実施例1
C:0.072%,Si:3.41%,Mn:0.072%,Se:0.019%,酸可溶性Al:0.024%,N:83ppm,Cu:0.10%,Sb:0.041%およびNi:0.2%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる複数の方向性電磁鋼板用スラブを、1420℃で30分間加熱後、熱間圧延を施して板厚:2.2mmの熱延板とした。ついで、1000℃,l分間の熱延板焼鈍後、1回目の冷間圧延により板厚:1.6mmとし、1100℃,1分間の中間焼鈍後、2回目の冷間圧延により最終板厚:0.22mmに仕上げた。このとき、2回目の冷間圧延は、少なくとも2パスは圧延ロール出側直後の鋼板温度が150〜250℃になるような圧延とした。
ついで、冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、H2−H20−N2雰囲気中にて、840℃,2分間の脱炭・一次再結晶焼鈍を行って、鋼板表層にシリカ(SiO2)を含む酸化層を形成した後、マグネシア:100質量部に対して、TiO2を10質量部、Sr(0H)2・8H20を3質量部配合した焼鈍分離剤を水でスラリー状にして塗布した。このとき用いたマグネシアの粉体特性およびスラリーの水和温度と平均水和時間を変更することによって制御した、塗布・乾燥後の水和量を表4に示す。
その後、窒素雰囲気中にて850℃,20hの保定焼鈍に続いて、窒素:25%,水素:75%の雰囲気中、15℃/hの速度で1150℃まで昇温する二次再結晶焼鈍を施した後、水素雰囲気中にて1200℃,5時間の純化焼鈍を行う最終仕上げ焼鈍を行ってから、りん酸マグネシウム、クロム酸およびコロイダルシリカを主成分とする絶縁コーティングを施した。
かくして得られた各製品板について、磁気特性(磁束密度B8,鉄損W17/50)、被膜外観および被膜密着性について調べた結果を、表4に併記する。
なお、被膜外観は被膜欠陥発生率で、また被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
Figure 0004893259
表4から明らかなように、本発明に従う条件で製造した発明例はいずれも、良好な磁気特性および被膜特性が得られている。
実施例2
C:0.039%,Si:3.36%,Mn:0.068%,Se:0.020%,Cu:0.12%,Sb:0.025%,Mo:0.012%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる複数の方向性電磁鋼板用スラブを、1410℃で30分間加熱後、熱間圧延を施して板厚:2.5mmの熱延板とした。ついで、1000℃,1分間の熱延板焼鈍後、1回目の冷間圧延により板厚:0.6mmとし、1000℃,1分間の中間焼鈍後、2回目の冷間圧延により最終板厚:0.22mmに仕上げた。
ついで、冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、H2−H20−N2雰囲気中にて、820℃,2分間の脱炭・一次再結晶焼鈍を行って、鋼板表層にシリカ(SiO2)を含む酸化層を形成した後、マグネシア:100質量部に対して、TiO2を2質量部、SrSO4を2質量部、MgSO4・7H20を0.5質量部配合した焼鈍分離剤を水でスラリー状にして塗布した。このとき用いたマグネシアの粉休特性、およびスラリーの水和温度と平均水和時間を変更することによって制御した塗布・乾燥後の水和量を表5に示す。
その後、窒素雰囲気中にて850℃で50h保定して、二次再結晶焼鈍を施したのち、水素雰囲気中にて25℃/hの速度で1180℃まで昇温後、1180℃,5時間の純化焼鈍を行う最終仕上げ焼鈍を行ってから、りん酸マグネシウム、クロム酸およびコロイダルシリカを主成分とする絶縁コーティングを施した。
かくして得られた各製品板について、磁気特性(磁束密度B8,鉄損W17/50)、被膜外観および被膜密着性について調べた結果を、表5に併記する。
なお、被膜外観は被膜欠陥発生率で、また被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
Figure 0004893259
表5から明らかなように、本発明に従う条件で製造した発明例は、いずれも良好な磁気特性および被膜特性を示している。
実施例3
C:0.041%,Si:3.32%,酸可溶性:68ppm,N:44ppm,Sb:0.046%,Mn:0.11%,S+0.405Se:18ppm,Cu:0.12%およびCr:0.05%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる複数の方向性電磁鋼板用スラブを、1200℃に加熱後、熱間柾延により板厚:2.2mmの熱延板とした。ついで、1050℃,1分間の熱延板焼鈍を行ってから、冷間圧延により最終板厚:0.29mmの冷延板とした。
ついで、冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、H2−H20−N2雰囲気中にて、840℃,2分間の脱炭・一次再結晶焼鈍を行って、鋼板表層にシリカ(SiO2)を含む酸化膚を形成した後、マグネシア:100質量部に対して、Ti02を3質量部、SrSO4を2質量部配合した焼鈍分離剤を水でスラリー状にして塗布した。このとき用いたマグネシアの粉体特性、およびスラリーの水和温度と平均水和時間を変更することによって制御した塗布・乾燥後の水和量を表6に示す。
その後、窒素雰囲気中にて850℃で50h保定して、二次再結晶焼鈍を施したのち、水素雰囲気中にて25℃/hの速度で1100℃まで昇温後、アルゴン雰囲気中にて1200℃,5時間の純化焼鈍を行う最終仕上げ焼鈍を行ってから、りん酸マグネシウム、クロム酸およびコロイダルシリカを主成分とする絶縁コーティングを施した。
かくして得られた各製品板について、磁気特性(磁束密度B8,鉄損W17/50)、被膜外観および被膜密着性について調べた結果を、表6に併記する。
なお、被膜外観は被膜欠陥発生率で、また被膜密着性は、被膜の曲げ密着性として、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜が剥離しない最小径で評価した。
Figure 0004893259
表6から明らかなように、本発明に従う条件で製造した発明例は、いずれも良好な磁気特性および被膜特性を示している。
スラリーを調合する際、スラリーを貯留するタンク容量の1/3の量を1回に調合する場合における平均水和時間の算出要領を示した図である。

Claims (2)

  1. 鋼板表層にSiO2を含む酸化膜を有する方向性電磁鋼板用の脱炭焼鈍板に、マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤を塗布、乾燥することからなる方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤の塗布方法において、
    前記焼鈍分離剤中のマグネシアとして、不純物のCl濃度が0.01〜0.04mass%、CaO濃度が0.25〜0.70mass%、B濃度が0.05〜0.15mass%、SO3濃度が0.05〜0.50mass%、CAA40%が50〜90秒を満足し、さらに20℃,30分の水和試験による水和量が1.5〜2.5mass%でかつ20℃,180分の水和試験による水和量が3.0〜5.0mass%である粉体を用い、
    スラリーの水和温度と平均水和時間の調整により、該粉体を水でスラリー状にして塗布、乾燥させた後のマグネシアの水和量が1.0mass%以上 3.5mass%以下になるように水和させた焼鈍分離剤を、鋼板表面に塗布、乾燥することを特徴とする方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤の塗布方法。
  2. 最終板厚とした鋼板に、脱炭焼鈍を施し、鋼板表層にSiO2を含む酸化膜を形成したのち、マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤を塗布、乾燥してから、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
    前記焼鈍分離剤中のマグネシアとして、不純物のCl濃度が0.01〜0.04mass%、CaO濃度が0.25〜0.70mass%、B濃度が0.05〜0.15mass%、SO3濃度が0.05〜0.50mass%、CAA40%が50〜90秒を満足し、さらに20℃,30分の水和試験による水和量が1.5〜2.5mass%でかつ20℃,180分の水和試験による水和量が3.0〜5.0mass%である粉体を用い、
    スラリーの水和温度と平均水和時間の調整により、該粉体を水でスラリー状にして塗布、乾燥させた後のマグネシアの水和量が1.0mass%以上 3.5mass%以下になるように水和させた焼鈍分離剤を、鋼板表面に塗布、乾燥することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
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