JP4891552B2 - 有機薄膜トランジスタ及びその製造方法 - Google Patents

有機薄膜トランジスタ及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタ(TFT)、及びその製造方法に関する。
有機活性層を備えた薄膜トランジスタ(TFT)は、シリコンベースTFTの安価な代替品として近年大きな注目を集めてきている。有機材料を用いてデバイスを構成することにより、印刷法、スピンコート法、浸漬法などの湿式法によって簡便に薄膜や回路を形成することが可能となる。すなわちシリコンベースTFTの製造プロセスで必要とされるコストのかかる工程を経ることなくデバイスを製造することが可能であり、製造コストの大幅なコストダウンや大面積化等が期待される。加えて有機材料ベースのデバイスの利点には機械的フレキシビリティー、軽量化という点も挙げられる。現状、有機材料はキャリアの移動度の観点からは無機半導体材料の性能には及ばないものの、幾つかの前述の利点により、有機半導体デバイスは大きな注目を集めている。
有機TFTの構成とその動作について説明する。
図1A(図1Aは本発明の有機薄膜トランジスタの構成例であるが、材料以外の構造に関する説明を、該図1Aを借りて説明する)は代表的な有機TFTの断面図である。図1A中の一対の電極(ソース電極およびドレイン電極)の間に電圧をかけると、有機半導体層を通じてソース電極とドレイン電極の間に電流が流れる。この際、絶縁層により有機半導体層と隔てられたゲート電極に電圧を印加すると、電界効果によって有機半導体層の電導度が変化し、したがってソース・ドレイン電極間に流れる電流を変調することができる。これは絶縁層に近接する有機半導体層内の蓄積層の幅がゲート電圧によって変化し、チャネル断面積が変化するためであると考えられている。
このような有機TFTの半導体材料としては、例えば低分子材料ではペンタセン(非特許文献1)、フタロシアニン(非特許文献2)、フラーレン(特許文献1、非特許文献3)、アントラジチオフェン(特許文献2)、チオフェンオリゴマー(特許文献3、非特許文献4)、ビスジチエノチオフェン(非特許文献5)などが、また高分子材料ではポリチオフェン(非特許文献6)、ポリチエニレンビニレン(非特許文献7)などの幾つかの材料が提案されている。
上記の材料は、TFTデバイス用の有機半導体として魅力的なキャリア移動度を有している。
しかし、商用としての有機半導体を用いたTFTデバイスに適用するには、これらの材料を幾つかの点で改良することが求められている。
例えば、ペンタセンは約1cm/Vsの移動度を有すると報告されている。しかし、ペンタセンは溶媒に難溶性であり、ペンタセンのフィルムを溶液から形成することは困難である。また、ペンタセンは、酸素を含有する雰囲気下では経時酸化する傾向が有り、酸化に対して不安定である。同様にフタロシアニン、フラーレンなども溶媒への溶解性が低く、一般に真空蒸着法を用いて半導体層を作製せねばならず、製造工程の低コスト化、大面積化等の有機ベースのデバイスに特徴的な恩恵を享受することができない。
加えて、これら材料には基板の変形によって膜の剥がれ、割れ等が生じる場合があるという問題もある。
また、湿式塗工が可能であり、比較的高移動度を有する材料としてポリアルキルチオフェン系材料が注目されているが(非特許文献8)、デバイスのオンオフ比が低いことや、酸化されやすく特性が経時変化してしまうという欠点を有する。
以上のように、幾つかの材料がTFT用の有機半導体材料として提案されているものの、必要とされる全ての特性を満たした有機半導体材料は未だに得られていないのが現状である。
好ましい有機半導体材料においては、良好なトランジスタ特性を示すことに加えて、良好なフィルムがウェットプロセスにより作製され得るような溶媒への溶解性を示し、加えて耐酸化性をはじめとする保存安定性が求められる。
特開平8−228034号公報 特開平11−195790号公報 特許第3145294号公報 Synth.Met.,51,419,1992. Appl.Phys.Lett.,69,3066,1996. Appl.Phys.Lett.,67,121,1995. Chem.Mater.,4,457,1998. Appl.Phys.Lett.,71,3871,1997. Appl.Phys.Lett.,69,4108,1996. Appl.Phys.Lett.,63,1372,1993. Appl.Phys.Lett.,69,4108,1996.
本発明は、これら問題を解決するためになされたもので、プロセッシビリティーが高く簡便な方法で素子を作製でき、キャリア移動度が高くオンオフ比の大きい良好なトランジスタ特性を示し、かつ経時変化しにくい安定な有機TFT、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の構造を有する重合体を有機TFTの半導体層として用いることが上記目的に対して有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、
本発明の第1は、有機半導体材料と、この有機半導体材料を通じて電流を流す為の対をなす電極を設けてなる構造体と、第三の電極とからなる有機薄膜トランジスタにおいて、前記有機半導体材料は、一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体を含むことを特徴とする有機薄膜トランジスタに関する。
Figure 0004891552
(式中、Ar1は、下記一般式(II)又は一般式(III)であり、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、アルキル基を表す。)
Figure 0004891552
Figure 0004891552
本発明の第2は、前記第三の電極は、前記構造体に絶縁体を介して設けたことを特徴とする請求項1記載の有機薄膜トランジスタに関する。
本発明の第3は、請求項1又は2記載の有機薄膜トランジスタを製造する方法であって、前記有機半導体材料を含む溶液を塗布して塗膜を形成するステップ、及び、前記塗膜を乾燥させて前記有機半導体材料を含む有機半導体層を形成するステップを含むことを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法に関する。
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
図1A、B、C、Dは、本発明に係る有機TFTの概略構造の一例を示す図である。
本発明に係る有機TFTの有機半導体層1は、前記一般式で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とする。デバイスには基板2より上に空間的に分離されたゲート電極3、ソース電極4、ドレイン電極5が設けられており、ゲート電極3と有機半導体層1の間には絶縁層(ゲート絶縁膜6)が設けられている。TFTデバイスはゲート電極3への電圧の印加により、ソース電極4とドレイン電極5の間の有機半導体層1内を流れる電流がコントロールされる。
即ち、本発明のデバイスにおいては、有機半導体層(以下、活性層とも記載する)は前記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とする有機半導体材料からなる
本発明の有機半導体材料は、 、R 、R 、R 、R として置換基を有していてもよい。これら置換基の炭素数が増加すれば溶解性はより向上するが、その反面キャリア移動度は低下してしまうため、溶解性が損なわれない範囲で所望の特性が得られるような置換基を選択することが好ましい。
好適な置換基の例としては炭素数が1〜25の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。更に好適には、炭素数が2〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。
アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を一例として挙げることができる
上記重合体は、アルキル基の存在により溶媒への溶解性が向上するが、溶解性を向上させることは、フィルムの湿式成膜過程の製造許容範囲が大きくなることから重要である。
例えば塗工溶媒の選択肢の拡大、溶液調製時の温度範囲の拡大、溶媒の乾燥時の温度及び圧力範囲の拡大となり、これらプロセッシビリティーの高さにより、結果的に高純度で均一性の高い高品質な薄膜が得られる可能性が高くなる。
上記一般式(I)に示される繰り返し単位を含む重合体の製造方法は、例えばカルボニル化合物とホスホネートを用いたWittig−Horner反応、カルボニル化合物とホスホニウム塩を用いたWittig反応、ビニル置換体とハロゲン化物を用いたHeck反応、ビニルボロン酸誘導体とハロゲン化物を用いた鈴木−宮浦カップリング反応などを用いることができ、公知の方法により製造可能である。
特に、Wittig−Horner反応及びWittig反応は、反応操作の簡便さのために有効である。
一例として、Wittig−Horner反応を用いた本発明の有機薄膜トランジスタに使用される重合体の製造方法について説明する。
本発明の有機薄膜トランジスタに使用される重合体は、下記の反応式
Figure 0004891552
に示すように、化学量論的に等しいホスホン酸ジエステル化合物及びジカルボニル化合物が存在する溶液を、その2倍モル量以上の塩基と混合させることによって、ホスホン酸ジエステル化合物及びジカルボニル化合物の重合反応を進行させて得られる。
上記ジカルボニル化合物は、公知の種々の反応により合成することが可能である。例として下記Vilsmeier反応、
Figure 0004891552
アリールリチウム化合物と、DMF、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、各種酸塩化物、各種酸無水物等をはじめとするホルミル化或いはアシル化試薬との下記反応、
Figure 0004891552
下記Gatterman反応、
Figure 0004891552
及び、下記ヒドロキシ化合物の各種酸化反応、
Figure 0004891552
等を一例として挙げることができ、これらの反応を用いて所望のジカルボニル化合物を合成することができる。
また、上記ホスホン酸ジエステル化合物についても、公知の種々の反応により合成することが可能であるが、下記Michaelis−Arbuzov反応
Figure 0004891552
を用いて合成することが特に容易である。
なお、さらに詳細な重合体の製造方法は、特願2003−185402号に記載されている。
上記一般式に示される重合体の好ましい分子量はGPCによるポリスチレン換算数平均分子量で1000〜1000000であり、より好ましくは2000〜500000である。
分子量が小さすぎる場合には、クラックの発生等成膜性が悪化し実用性に乏しくなる。
また分子量が大きすぎる場合には、一般の有機溶媒への溶解性が悪くなり、溶液の粘度が高くなって塗工が困難になり、やはり実用性上問題になる。
本発明の半導体材料は種々の一般的有機溶媒、例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロホルム、トルエン、ジクロロベンゼン及びキシレン等に対し、良好な溶解性を示す。
従って本発明の高分子材料を溶解できる適当な溶媒により適当な濃度の溶液を作製し、これを用いて湿式成膜法により半導体薄膜を作製することができる。
特にテトラヒドラフランを主成分とし、トルエン、キシレン、ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタンのうち少なくとも一種を混合した溶媒が好ましい。
有機半導体層を形成するための湿式成膜法としては、スピンコート法、ディッピング法、ブレード塗工法、スプレー塗工法、キャスト法、インクジェット法、印刷法等の公知の湿式成膜技術によって薄膜化することができる。
これら各種成膜法に対し、上記記載の溶媒種から適切な溶媒が選択される。
本発明に係る有機半導体材料は、固体もしくは溶液の状態では、空気中でも実質的に酸化されることはない。
本発明の有機TFTにおいて、上記重合体にて形成される有機半導体層は、図1A〜Dに示す様にいずれの構造においてもソース電極およびドレイン電極に挟まれるようになっている。有機半導体層の厚みは、均一なフィルム(即ち、材質のキャリア輸送特性に悪影響を及ぼすギャップやホールがない薄膜)が形成されるような厚みに選択される。
有機半導体層の厚みは、約200nm〜約5nmが好ましく、特に約100nm〜約5nmが好適である。
本発明の有機TFTは、通常、ガラス、シリコン、プラスチックよりなる基板に形成される。デバイスにフレキシビリティー、軽量、安価等の特性が所望される場合、通常はプラスチック基板が用いられる。
また、図1A、Bに示すトランジスタ構造の場合には、導電性の基板を用いることにより、ゲート電極を兼ねる事が可能である。
また、絶縁層はゲート電極及び半導体層の間に配置される。好適な絶縁材は当業者には周知である。例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン等の無機系材料や、またはフレキシビリティー、軽量、安価なデバイスが所望される場合にはポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、シアノエチルプルラン等をはじめとする高分子化合物や、各種絶縁性LB膜等の種々の有機系材料が挙げられ、これらの材料を2つ以上合わせて用いてもよい。特に材料は限定しないが、導電率が低いものが好ましい。
これら絶縁層の作製法としては特に制限はなく、たとえばCVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、蒸着法、スピンコーティング法、ディッピング法、印刷法、インクジェット法、およびLB法などが挙げられ、いずれも使用可能である。
また、シリコンをゲート電極と基板を兼ねて用いる場合にはシリコンの熱酸化により得られる酸化シリコンが好適である。
本発明のデバイスは、3つの空間的に分離された電極(ソース、ドレイン、ゲート電極)を有する。ゲート電極は、絶縁層と接触している。各電極は周知の従来技術を用いて基板上に形成される。
ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極の材質としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、およびこれらの合金や、インジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機および有機半導体、たとえばシリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられる。
ソース電極およびドレイン電極は、上記導電性物質の中でも有機半導体層との接触面においてオーミックに接続されるものが好ましい。
次に、前記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とする有機半導体材料を用いた有機薄膜トランジスタの製造方法、及びそれにより得られる有機薄膜トランジスタに関して、詳細に説明する。
本発明の有機薄膜トランジスタの有機半導体膜は湿式法にて成膜される。
具体的には、前記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とする有機半導体材料の溶液を塗布した後、その溶液に含まれる溶媒を乾燥させることによって、有機半導体層を形成することができる。
上記有機半導体層は、表面エネルギー密度(単位面積当たりの表面エネルギー)が25mN/m(ミリニュートン毎メートル)以上40mN/m以下の値を持つゲート絶縁膜(層)上に積層することが好ましく、ゲート絶縁膜の表面エネルギー密度が上記範囲の場合には、有機半導体層のスピンコーティングによる製膜性及び閾値電圧特性等の点で好ましい。
ここで、上記表面エネルギー密度は、ジスマンプロット法により求められるものである。該ジスマンプロット法とは、ジスマン氏が行なった溶液の液滴と固体表面との接触角から表面エネルギー密度を求める方法である。
即ち、表面張力の異なる各種溶液を用い、それぞれ固体表面での液滴の接触角を測定する。
表面張力を横軸に、液滴の接触角の余弦(cos)を縦軸にプロットすると、直線関係が得られる。得られた直線を外挿し、cosθ=1(交点)を与える横軸(表面張力値)をその固体の臨界表面張力(又は限界表面張力)と呼び、固体表面が液体に対して濡れやすいか否か(濡れ性)を定量化するときに使われる。
本発明では、この臨界表面張力を単に固体表面の表面エネルギー密度と呼ぶ。
上記ゲート絶縁膜の表面エネルギー密度は、シランカップリング剤を用いてゲート絶縁膜の表面を改質することによって、調整することができる。
具体的には、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等の蒸気で満たされた密閉容器に被処理物を挿入し、室温で所望の時間の間放置し、その後ポストベークすることによって、被処理物の表面改質を行なうことができる。
湿式法に関しては、スピンコーティング、孔版印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷法などの周知の印刷法によって成膜することができる。
スピンコーティングは、回転による遠心力を用い、基板に塗膜を得る方法である。
しかしながら、スピンコーティングには、回転により、回転体(基板)と空気界面での相対的な位置変化にともなう、いわゆる風の影響により、溶媒の急激な乾燥が生じ、均一な塗布成膜ができないという問題がある。
従って、カップスピン法にて成膜することが好ましい。
カップスピン法は、次の工程(1)及び(2)によって行なわれる方法である。
(1)カップ(容器)の底面に、基板を固定し、コーティング溶液を配置させる。
(2)その後、容器を密閉し(蓋をする)、容器ごと回転し、成膜する。
このカップスピンの利点は、密閉空間内では、回転体と空気の相対的な位置変化が生じず、風の影響を受けない。また、溶媒の蒸気で密閉空間が飽和され、急激な乾燥を防止することができる。
本発明の有機半導体材料のスピンコート法による成膜には、特にこのカップスピン法が好ましい。
また、有機半導体膜の表面粗さとトランジスタ性能との間には相関関係があり、平坦で均一な膜ほどキャリア(ホール又は電子)の移動度(トランジスタ材料の物性)が向上する。
各種、成膜条件により、有機半導体膜の表面粗さとキャリアの移動度を調べたところ、有機半導体層の表面粗さが、PV値で1nm以下の平坦な膜が好適であった。
表面粗さの測定法(定義)は、次の工程(1)及び(2)によって行なわれる方法である。
(1)走査型プローブ顕微鏡(AFM)を用い、走査領域0.5μm×0.5μmの範囲で、膜の表面形状を測定する。
(2)ベースライン補正後、走査領域における最大高さ及び最小低さの差(表面における最大の凹凸差)をPV値(peak to valley:山谷差)とし、このPV値で膜の平坦さを定量化する。
また、塗膜の乾燥による成膜では、膜の平坦さが、用いる有機溶媒に影響されることを見出した。
有機溶媒として重要な性質としては、溶質との溶解性、表面張力、粘度、蒸気圧(沸点)などが挙げられる。
各種の有機溶媒を用い、成膜後の平坦性を測定したところ、テトラヒドロフラン(THF)がもっとも平坦な膜を与えることを見出した。
さらに、溶媒の乾燥過程を考慮すると、一成分の溶媒より、多成分の溶媒を用いることで、溶媒の蒸発状態を制御することができる。本発明においては、THFを主成分とし、他の溶媒を第二の成分としてTHFに添加することによって、良好な結果を得ることができる。
さらに、塗膜をポストベーク処理することで、膜内に残存する溶媒を除去することができる。残存する溶媒は、有機半導体の性能に影響を及ぼす。そして、残存する溶媒の積極的な除去としては、加熱乾燥法が挙げられる。
本発明の有機半導体材料に関しては、加熱温度と移動度との関係から、溶媒乾燥の処理温度を余り高くすることは好ましくない。これらの有機半導体材料については、150℃以下の処理温度で乾燥させることが望ましい。
次に、トランジスタの性能評価について図2及び3を用いて説明する。有機半導体の電界効果によるキャリア移動度は、以下の式
Figure 0004891552
を用いて算出される。ただし、Cinはゲート絶縁膜の単位面積当たりのキャパシタンス、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Vはゲート電圧、Idsはソース・ドレイン電流、μはキャリアの移動度、Vthはチャネルが形成し始めるゲートの閾値電圧である。
図2は、ソース・ドレイン間の電圧Vds=−20Vにおける有機TFTの特性を示すグラフである。
図2に示すように、ソース・ドレイン間に−20Vを印加して、ゲート電圧を10から−20V挿引した際のソース・ドレイン電流を測定する。
なお、図2に示すグラフ中、V=−20VにおけるIds値が、有機TFTのオン電流となる。
また、図3に示すように、上記条件で測定されたソース・ドレイン電流の平方根をゲート電圧に対しプロットして直線近似を行なう。
近似曲線においてソース・ドレイン電流の平方根が0Aになるゲート電圧値を閾値電圧Vthと定義する。
本発明の一つの態様によれば、コストパフォーマンスに優れ、高い移動度を有し、閾値電圧が制御され、かつ従来公知のポリチオフェン系材料を用いた場合と比較して、オンオフ比に優れた良好な特性を示す優れた有機薄膜トランジスタが提供される。
本発明の別の態様によれば、従来公知のペンタセン、フタロシアニン材料では不可能であった溶媒への良好な溶解性が得られ、湿式成膜技術にて簡便に製造できるコストパフォーマンスに優れた有機薄膜トランジスタが提供される。
本発明のまた別の態様によれば、湿式成膜技術にて簡便に製造できる為にコストパフォーマンスに優れ、かつ良好な特性を示す、優れた絶縁ゲート型の有機薄膜トランジスタの提供が可能となる。
本発明のさらに別の態様によれば、良好な特性を示す優れた有機薄膜トランジスタのコストパフォーマンスに優れた湿式製造方法が提供される。
本発明によれば、プロセッシビリティーが高く簡便な方法で素子を作製でき、キャリア移動度が高くオンオフ比の大きい良好なトランジスタ特性を示し、かつ経時変化しにくい安定な有機TFT、及びその製造方法を提供することができた。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1
下記の有機半導体材料を用いて、図1Bに示される構造の薄膜デバイスを作製した。なお、下記重合体の製造方法の詳細は特願2004−174088号に記載されている。
Figure 0004891552
p−ドープされてゲートとして作用するシリコン基板表面を熱酸化してSiOの絶縁層を50nm形成した後、酸化膜を片面だけ除去し、除去した面にAlを蒸着してゲート電極とした。
次に該SiOの絶縁層上に上記重合体の約1.0wt%のTHF/パラキシレン=8/2の混合溶媒からなる溶液をスピンコートして乾燥することにより有機半導体層を作製した。引き続きチャネル長30μm、チャネル幅10mmとなるようにソース電極およびドレイン電極のAu膜を蒸着した。
このようにして作製したデバイスのトランジスタ特性を図4に示す。
図4に示すように、作製したデバイスは良好なトランジスタ特性を示した。
また、以下の式を用いて有機半導体の電界効果によるキャリア移動度を算出した。
Figure 0004891552
(ただし、Cinはゲート絶縁膜の単位面積あたりのキャパシタンス、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Vはゲート電圧、Idsはソースドレイン電流、μは移動度、Vthはチャネルが形成し始めるゲートの閾値電圧である。)
作製したTFTの移動度は2.6×10−3(cm/Vsec)であった。
またオンオフ比(Vds=−20V、V=−20VにおけるIdsと、Vds=−20V、Vg=+10〜−20Vの範囲内で観測された最小のIdsの比)は1.8×10で、閾値電圧は−1.6Vであった。以上のように、作製した有機TFTは非常に優れた特性を示した。
実施例2
下記の有機半導体材料を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりTFTを作製した。なお、下記重合体の製造方法の詳細は、特願2004−174088号に記載されている。
Figure 0004891552
作製したデバイスのトランジスタ特性を図5に示す。
図5から明らかなように、作製したデバイスは良好なトランジスタ特性を示した。
また、作製したTFTの移動度は1.8×10−3(cm/Vsec)であり、オンオフ比は1.8×10で、閾値電圧は−1.2Vであった。以上のように、作製した有機TFTは非常に優れた特性を示した。
実施例3
下記の有機半導体材料を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりTFTを作製した。なお、下記重合体の製造方法の詳細は特願2004−174088号に記載されている。
Figure 0004891552
作製したデバイスは良好なトランジスタ特性を示した。
作製したTFTの移動度は1.4×10−3(cm/Vsec)であり、オンオフ比は2.1×10で、閾値電圧は−3.0Vであった。以上のように、作製した有機TFTは非常に優れた特性を示した。
比較例1
有機半導体材料として代表的なポリ−3−ヘキシルチオフェンを用いた以外は実施例1と同様の方法によりデバイスを作製した。
作製した有機TFTにおける移動度は7.8×10−5(cm/Vsec)であり、オンオフ比は10程度しかなかった。
比較例2
SCIENCE Vol.290,15 DECEMBER 2000,p.2123にて示されている典型的な有機半導体材料として、下記構造式

Figure 0004891552
で示されるジオクチルフルオレンジチオフェン共重合体を用いて、実施例1と同様の方法によりデバイスを作製した。作製した有機TFTにおける移動度は6.4×10−4(cm/Vsec)であり、オンオフ比は2.1×10であった。
比較例からわかるように、
本発明のTFTは移動度、オンオフ比ともに優れた特性を有する事が示された。
本発明の有機薄膜トランジスタの4種類の構成例の模式図である。 トランジスタの性能評価を説明するためのグラフである。 図2に示すトランジスタの特性を別の表示方法で示したグラフである。 実施例1で作製された有機薄膜トランジスタのトランジスタ特性を示すグラフである。 実施例2で作製された有機薄膜トランジスタのトランジスタ特性を示すグラフである。
1 有機半導体層
2 基板
3 ゲート電極
4 ソース電極
5 ドレイン電極
6 ゲート絶縁膜

Claims (3)

  1. 有機半導体材料と、この有機半導体材料を通じて電流を流す為の対をなす電極を設けてなる構造体と、第三の電極とからなる有機薄膜トランジスタにおいて、前記有機半導体材料は、一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体を含むことを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
    Figure 0004891552
    (式中、Ar1 は、下記一般式(II)又は一般式(III)であり、R 、R 、R 、R 、R は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。)
    Figure 0004891552

    Figure 0004891552
  2. 前記第三の電極は、前記構造体に絶縁体を介して設けたことを特徴とする請求項1記載の有機薄膜トランジスタ。
  3. 請求項1又は2記載の有機薄膜トランジスタを製造する方法であって、前記有機半導体材料を含む溶液を塗布して塗膜を形成するステップ、及び、前記塗膜を乾燥させて前記有機半導体材料を含む有機半導体層を形成するステップを含むことを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
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