JP4891485B2 - 改質された水道水並びに水道水の改質方法 - Google Patents

改質された水道水並びに水道水の改質方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、改質された水道水並びに水道水の改質方法に関し、詳しくはタウリンを配合することにより改質されたことを特徴とする塩素含有水道水並びにタウリンを配合することを特徴とする塩素含有水道水の改質方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
飲用、洗顔・化粧用、さらには動物の飼育、植物の給水、金魚等の淡水魚介類の養殖等には、通常、上水道水(以下、「水道水」という)が用いられている。しかし、水道法施行規則によって水道水には、消毒のために塩素を混入することが義務付けられており(遊離残留塩素が0.1ppm以上、病原生物で汚染される恐れがあるときは0.2ppm以上)、かかる残留塩素に因る塩素臭(カルキ臭)等が従来より問題となっている
特に、近年、河川の水質悪化はますます進んでいる。その原因として生活廃水、工場廃水の増加、開発による森林破壊等挙げられている。こうした汚染された河川を水源とする水道水にあっては消毒用の塩素の増量を余儀なくされ、水の硬度も上昇し、結果として水道水は「まずい水」の代名詞ともなっている。
【0003】
水道水に含まれる塩素の量は、水道法の水質基準に関する省令によって200ppm以下とされているが、地域差はあるものの一般的には通常の浄水施設で10〜20ppm、一般家庭の蛇口では0.2〜2ppm程度であると言われており、一般家庭における水道水は飲用時に明らかに塩素臭が感じられ、味覚も劣るのが現状である。
また、かかる残留塩素が存在し硬度が高めの水道水を用いて洗顔をした場合、或いはこのような水道水を用いた化粧水を使用した場合には、皮膚が刺激されて肌が敏感な人にとっては肌荒れの原因にもなる。
【0004】
そこで、飲用や洗顔用として水道水を使用する場合の残留塩素対策として、最近では塩素が残留する水道水をオゾンによって高度処理した処理水の使用や、塩素臭がなく硬度が低い瓶詰めミネラルウオーターの使用、家庭用浄水器の使用も見られるが、高度処理水では過大の電力消費、ミネラルウオーターでは採水、運搬といった労力等、浄水器では器具の購入やフィルターの随時交換等、いずれにおいても何らかの支障やコスト高が問題となっており、個々の家庭或いは料飲店等で日常的に頻繁に使用できる状況ではない。
【0005】
一方、動物、特に金魚等の淡水魚介類の飼育用水、又は植物の給水・散水用水として塩素が含有された水道水をそのまま使用した場合、金魚類は直ちに死亡に至るか若しくは著しく衰弱して死亡率が非常に高くなり、植物は長期の給水・散水により種々の悪影響が発生するので、その対策として日照下数時間以上放置する等の前処理を行ったうえで使用するか、或いは塩素を除去するためのハイポ(チオ硫酸ナトリウム五水和物)などの還元性物質の使用が不可欠となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、残留塩素を含みしかも硬度が比較的高い水を、特別な機器を必要とせず、簡便でしかも経済的な方法で、飲用、洗顔用、動植物の飼育・給水用等に適した水質に改質された水道水の提供、或いは水道水の改質方法の提供を目的とする。
本発明者らは、前期問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、意外にも塩素を含有する水道水にタウリンを配合することにより、上記課題を解決できるとの知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、タウリンを配合することにより改質されたことを特徴とする水道水であり、タウリンの配合量が、水の量を基準として0.01〜8重量%であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、タウリンを配合することを特徴とする水道水の改質方法であり、タウリンの配合量が、水の量を基準として0.01〜8重量%であることを特徴とする。
さらに、上記の改質された水道水を用いることを特徴とする洗顔又は化粧用水、動物の飼育用水又は植物の給水用水、淡水魚介類の養殖用水である。
【0009】
【発明の実施の形態】
(1)タウリン
本発明で使用するタウリン、すなわちアミノエタンスルホン酸(H2NCH2CH2SO3H)は、広く動植物界に分布し、ウシの胆汁中に多量に存在し、イカ、タコ、貝類のエキス分中にも多量に含まれる含硫アミノ酸である。
タウリンに関しては、従来より、細胞の活性化作用(賦活作用)や各種臓器、例えば心筋、胆のう、肝臓の強壮作用を有しこれらの作用により美容上の効果や二日酔いの防止に優れた効果を発揮することが知られている。このようなタウリンの種々の薬理作用、効果の発現を期待して多くのタウリン含有製剤が、注射剤、ドリンク剤、錠剤、粉末剤などの形態で市販されている。
【0010】
本発明は、上記薬効の他に、タウリンの有する優れた水質改善効果、すなわち水道水の塩素臭の抑制並びに硬度の軽減作用を有し、その結果、味覚が向上し、人肌を刺激せず、動植物の生育に適した水を提供することができる旨の新たな知見に基づいて達成されたものである。
かかるタウリンの水質改善のメカニズムは定かではない。しかし、タウリンは化学的にはアミノ酸の1種ゆえ、イオン的には陰陽両性の性質を有する。こうしたタウリンの性質が水中の微量物質に作用、すなわち主として、タウリンのアミノ基が遊離塩素と化学反応することによる水道水中の塩素の捕捉によって、前述のような水質改善効果を発揮するものと推測される。
【0011】
タウリン自体は、無味無臭の物質である。そのため飲料、調味料等の各種食品に配合してもそれらが本来有する味覚や臭覚に影響を及ばすことはない。
また、前述のとおりタウリンは種々の薬理効果を有するゆえに健康飲料や薬用として多方面で多量使用されてきた実績があり、従って飲用水の水質浄化や改質に使用しても安全性が高く、この点においても従来のハイポ(チオ硫酸ナトリウム)等の塩素除去剤に比べて優れていると言える。
もちろん、改質された水道水を飲用に供する場合は、味覚劣化の抑制と同時に、タウリンを体内に摂取することによる前述のような種々の薬理効果も期待できることは言うまでもない。
【0012】
(2)改質水道水
改質された水道水を得るには、残留塩素を含有する水道水(0.2〜2ppm)の量を基準として、好ましくはタウリンを0.01〜8重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%の量を配合する。かかる配合量で残留塩素による味覚劣化の抑制や水の硬度の軽減を図ることができ、水道水が改質される。ただし、かかる量的範囲は、抽出に使用する水が残留塩素が0.2〜10mg/Lの常温(20℃)水道水を基準とした場合であり、また、水道水の温度上昇に伴ってタウリンの溶解度も上昇するので限定的なものではない。
タウリンの配合方法は、水道水に粉末状のタウリンを攪拌条件下で添加し、均一に溶解させる。また、所要のタウリンをあらかじめ濃厚溶液にし添加することもできる。濃厚溶液を作る場合は、水道水を加温することにより迅速に溶解ができるので好ましい。
【0013】
(3)洗顔用水、化粧用水
本発明のタウリンによる水道水の改質作用を利用して、肌荒れの原因となる微量塩素やカルシウム、マグネシウムなど金属イオンの硬度物質の除去・軽減ができるため洗顔や化粧用水にも応用することができる。さらに、タウリンの有する細胞賦活効果も享受することができ、これらの相乗効果的作用によって皮膚の健康を促進し美容に大きな効果がある。
洗顔用水は、水道水に直接、粉末状のタウリンを添加するか、上記(2)で得られたタウリン水溶液を添加して調製することができる。この場合のタウリンの濃度は0.01〜8重量%が好ましい。
なお、予めタウリンが配合された石鹸やシャンプーを用いて水道水で洗顔しても同様の効果が発揮される。
化粧用水の場合は、市販の化粧水に上記(2)で得られたタウリンを含む水溶液を添加して調製する。
【0014】
(4)動物の飼育用水、植物の給水用水、淡水魚介類の飼育用水
上記(2)で得られたタウリン水溶液をそのまま動物の飼育用又は植物の給水用水とすることができる。
ここで、対象となる動物としては、馬、牛、羊、豚、鶏等の家畜の他、犬、猫、小鳥等の愛玩動物、金魚、鯉等の淡水魚介(貝)類、トカゲ、ヘビ等の爬虫類、カエル、サンショウウオ等の両生類、クワガタムシ、カブトムシ等の昆虫類が例示される。
【0015】
特に、金魚の場合は6ヶ月間、改質していない水道水とタウリンで改質した水道水で同様の条件で飼育した場合に、改質水道水で飼育した方が死亡率が低く、金魚の色艶の向上も見られる。これはエラから吸収されたタウリンが細胞賦活効果を発揮したためと推測される。魚介類の養殖用水の場合は、所望によりミネラル、塩類、各種の薬用物質を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
また、対象となる植物としては、セントポーリア、シクラメン、菊等の鉢花の他、アジサイ、ハイビスカスなどの花木、ゴムの木、ヤシ、シダなどの観葉植物、レタス、トマト、大根などの野菜類などが例示される。
【0016】
【実施例】
以下 参考例、実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。
〔実施例1A〕
A、B、C、Dの4個のビーカーを用意し、Aには水道水(和歌山市の上水道水;残留塩素は1mg/L)、Bにはこの水道水を用いたタウリン0.1重量%水溶液、同様にCには同様にタウリン0.5重量%水溶液、Dにはタウリン1.0重量%水溶液を各々500mL入れて評価対象の試料を調製した。なお、タウリンは東京化成工業株式会社製の特級試薬を用いた。
各試料を5人のパネリストが試飲し、塩素臭と味覚についての官能テストを行った。結果は表1のとおりである。
【0017】
【表1】
Figure 0004891485
【0018】
〔実施例1B〕
上記実施例1Aと同一試料の水質の硬度の測定を行った。測定はJIS K0101(工業用水試験方法)の硬度の測定に準拠して全硬度を測定した。
結果は表2に示すとおりである。
【0019】
【表2】
Figure 0004891485
【0020】
〔実施例2〕
次亜塩素酸ソーダを用いてA、B、C、Dの4つの各60リットル水槽にAには2ppm、Bには1ppm、Cには0.5ppm、Dには0.25ppmの塩素濃度となるように設定した飼育用水をいれ、各々の水槽内で金魚(ワキン)を2匹づつ飼育し観察した。
また、これらとは別に上記A、B、C、Dの水槽と全く同じ形状であるA'、B'、C'、D'の4つの各60リットル水槽を準備し、水槽A'には水槽Aと同じ塩素濃度の水とタウリン30g、同様に水槽B'には水槽Bと同じ塩素濃度の水とタウリン15g、水槽C'には水槽Cと同じ塩素濃度の水とタウリン8g、水槽D'には水槽Dと同じ塩素濃度の水とタウリン4gを加え、各々ワキンを2匹ずつ飼育し、それぞれの生育状況を各水槽A、B、C、D内の金魚と比較観察した。
結果を表3に示す。
【0021】
【表3】
Figure 0004891485
【0022】
〔実施例3〕
0.5ppmの塩素を含む水道水を100リットルの容器に入れ、一昼夜屋外に放置し、塩素濃度を0.05ppm以下とし、この水を二等分して水槽Aに50リットル、水槽Bにも50リットルの水を入れ、さらに水槽Bにのみタウリン5gを加えた。
A、Bの各水槽に赤色の金魚(ワキン)を10匹ずつ入れ、6ヶ月問飼育して両水槽の差を比較した。なお、他の飼育条件は同じとなるよう、A、Bの水槽は同一構造である、すなわち、水槽の底部に小石を敷き詰め、槽外上部には活性炭とフィルター(株式会社バンビ製の商品名「アクアマット」)からなる濾過装置を配し、水槽の水を底部より上部にポンプで循環する形式で排泄物等の除去と同時に溶存酸素の供給ができる構造となっているものを使用した。
また、1ヶ月に1度の頻度で、上記と同様の操作で飼育用水を作って水の入れ替えを行い、飼料の種類、投与回数、量の条件をA、Bの水槽とも同一とした。
結果を表4に示す。
【0023】
【表4】
Figure 0004891485
【0024】
〔実施例4〕
タウリン0.05%を含む水道水83重量部と、無水エチルアルコール7重量部及びグリセリン10重量部とからなる化粧水を用い、1人のパネラーが1日2回(朝の洗顔後と入浴後)の使用を1週間続けた。
その後、1週間使用しない期間を設けた。
次いで、別途調合したタウリンを含まない水道水83重量部と、無水エチルアルコール7重量部及びグリセリン10重量部とからなる化粧水を用いて、同一のパネラーが、上記と同様に1日2回(朝の洗顔後と入浴後)の使用を1週間続けた。
両化粧水の使用に関する比較結果を表5に示す。
【0025】
【表5】
Figure 0004891485
【0026】
【発明の効果】
▲1▼本発明によれば、タウリンの有する優れた水質改善効果、すなわち水道水の塩素臭の抑制並びに硬度の軽減作用により、味の悪い水道水を優れた味覚の美味い水道水に改質することができる。
また、特別な機器を必要とせず、簡便でしかも経済的な方法で改質を行うことができる。
タウリンを極微量使用するに過ぎないので極めて経済的であり、しかも無味・無臭かつ無害なタウリンの極微量の使用のため、改質された水道水は種々の用途に適用が可能であり、従って応用範囲が広い。
さらに、改質された水道水を飲用に供する場合は、タウリンを体内に摂取することによる種々の薬理効果も期待できる。
【0027】
▲2▼本発明の洗顔又は化粧用水は、タウリンの作用により塩素の肌への刺激を抑え、水の硬度も軽減されているので肌荒れすることがなく、さらに、タウリンの有する細胞賦活効果も享受することができるので、皮膚の健康を促進し美容に大きな効果がある。
【0028】
▲3▼本発明の動物の飼育用又は植物の給水用水は、タウリンの作用により塩素が無害化されており、また水の硬度も軽減されているので、そのまま飼育又は給水に使用することができ、さらにタウリンの持つ細胞賦活化作用により生存率が高まり、金魚等の淡水魚介類の飼育では体表面の色、艶も向上する。

Claims (7)

  1. タウリンを配合することを特徴とする水道水の硬度の軽減方法。
  2. タウリンの配合量が、水の量を基準として0.01〜8重量%である請求項1記載の方法。
  3. タウリンを配合することにより改質された水道水からなる淡水魚介類の養殖用水。
  4. 淡水魚介類が金魚である請求項3記載の養殖用水。
  5. タウリンの配合量が、水の量を基準として0.01〜8重量%である請求項3又は4のいずれか1項に記載の養殖用水。
  6. 水の量を基準として0.01〜8重量%のタウリンが配合された改質水道水を用いることを特徴とする色艶に優れた金魚の養殖方法。
  7. 養殖用水として水の量を基準として0.01〜8重量%のタウリンが配合された改質水道水を用いることを特徴とする金魚の色艶の向上方法。
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