JP4890055B2 - 電子デバイス - Google Patents

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Description

この発明は、電子デバイスおよびHFET(Heterostructure Field Effect Transistor;ヘテロ構造電界効果トランジスタ)に関し、特に、GaNヘテロ構造FETに好適なものである。
従来、電子デバイスとしては、図5に示すGaNへテロ構造FETがある(例えば、非特許文献1を参照)。
図5は、上記GaNヘテロ構造FETの断面図を示している。このGaNヘテロ構造FETは、図5に示すように、サファイア基板2001上に、厚さ約3μmのアンドープGaNからなるGaN層2002と、厚さ20nmのアンドープAl0.5Ga0.5NからなるAl0.5Ga0.5N層2003とが順次形成されている。そのAl0.5Ga0.5N層2003上に、Ti/Al/Ni/Auからなるソースオーミック電極2005と、Ni/Auからなるゲートショットキー電極2006と、Ti/Al/Ni/Auからなるドレインオーミック電極2007とを順次形成している。GaN層2002とAl0.5Ga0.5N層2003の境界の領域に2DEG(2Dimensional Electron Gas;2次元電子ガス)2004が発生する。2DEGの濃度は8×1012cm−2である。また、素子分離のためのアイソレーションメサ2012を形成している。
ところで、上記従来のGaNヘテロ構造FETにおいて、ゲートショットキー電極2006とドレインオーミック電極2007との間の電界が半導体の破壊電界を上回ると、デバイスの絶縁破壊が起こる。半導体がGaNの場合は、破壊電界Emaxが約5MV/cmである。ここで、ドレインオーミック電極2007とゲートショットキー電極2006との間隔がLdgであり、ドレイン・ゲート印加電圧がVdgであれば、平均の電界はVdg/Ldgで表される。しかし、電界分布は一般的に不均一であり、電界が最大となるのはゲートショットキー電極2006辺りにある。この最大の電界は通常平均の電界より高いから、通常のデバイスの耐圧は(Ldg×Emax)より低い。
図6に示すGaNヘテロ構造FETのデバイス構造は、図5に示す従来のGaNヘテロ構造FETの構造と同じものである。図6にはデバイス構造と共に電位分布を示している。この電位分布はシミュレーションによって計算したものである。図6に示すヘテロ構造FETの断面図を用いて、この発明が解決しようとする課題を以下に詳しく説明する。
サファイア基板2101の上に、厚さ3μmのアンドープGaNからなるGaN層2102と厚さ20nmのアンドープAl0.5Ga0.5NからなるAl0.5Ga0.5N層2103を形成し、そのAl0.5Ga0.5N層2103上に、ソースオーミック電極2105とゲートショットキー電極2106およびドレインオーミック電極2107を形成している。上記GaN層2102とAl0.5Ga0.5N層2103の境界の領域に2DEG2104が発生する。このときの2DEGの濃度は8×1012cm−2である。ここで、ドレインオーミック電極2107とゲートショットキー電極2106との間隔Ldgは3μm、ドレイン・ソース印加電圧Vdsは400V、ゲート・ソース印加電圧Vgsは−10Vである。このバイアス条件の場合は、デバイスがオフ状態(チャネルが空乏化され、電流が流れない状態)である。
図6において、等電位線の間隔が狭いところは電界が高いことを示している。図6から明らかなように、ゲートショットキー電極2106近傍では電界が高くなることが分かる。シミュレーション結果によって、このバイアス条件では最大電界が9.48MV/cmもあり、破壊電界Emax(約5MV/cm)を大きく上回ることが分かる。実物のGaNヘテロ構造FETに同じバイアス条件の電圧を印加すると絶縁破壊が起こる。
電位がゲート電極の近い領域に集中する程度はデバイスのチャネル辺りにある固定電荷(fixed charge)濃度に依存する。実用的なGaNヘテロ構造FETには、AlGaN層の組成または不純物ドーピングによって、この固定電荷濃度がある程度制御できる。固定電荷濃度が高い場合は、デバイスがオン状態の時の2DEG濃度nsが高くてオン抵抗が低いので、オフ状態の時の電界集中程度が高くて耐圧が低くなる。しかしながら、オン状態での抵抗が低くてオフ状態での耐圧が高いことが望ましい。
なお、GaNヘテロ構造FETは、GaAsやSiのFETと異なって、フィールドプレート(Field plate)構造は有効ではない。このようなGaNヘテロ構造FETにフィールドプレートを用いる場合は、半導体層の最大電界が低いが、フィールドプレート下側の絶縁膜の電界が高いために、絶縁膜で絶縁破壊が起こるという問題がある(通常の絶縁膜の破壊電界はGaAsやSiの破壊電界より高いが、GaNの破壊電界と同じ程度である)。
「オーバーラッピングゲート構造の高ブレークダウンGaN HEMT(High Breakdown GaN HEMT with Overlapping Gate Structure)」、第21巻、エレクトロン・デバイス・レターズ(Electron Device Letters)、アイトリプルイー(IEEE)、2000年、p.421−423
そこで、この発明の課題は、電極間の電界分布を均一化することにより高耐圧化を図れる電子デバイスを提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明の電子デバイスは、半導体層と、
上記半導体層上に形成された第1の電極と、
上記半導体層上に形成されると共に上記第1の電極に対して上記半導体層の表面に沿って隣り合う第2の電極と、
上記第2の電極に対向する上記第1の電極の対向部を覆うと共に上記半導体層の誘電率よりも高い誘電率を有する誘電体層とを備え、
上記第1の電極の対向部は、直線状に延在する平坦な対向面を有し、
上記第2の電極は、上記第1の電極の対向部の上記平坦な対向面に対向する対向部が、この対向部の両端に亘って直線状に延在する平坦な対向面を有し、
上記誘電体層は、
上記半導体層の表面に平行な面による断面形状が上記第1の電極から上記第2の電極に向かって先細の先細部を有すると共に、上記半導体層の表面に平行な面による断面形状が略波形である。

この発明の電子デバイスによれば、上記半導体層の誘電率よりも高い誘電率を有する誘電体層が上記第1の電極の対向部を覆っていることで、第1の電極と第2の電極との間の耐圧を向上できる。さらに、上記誘電体層は、第1の電極から第2の電極に向かって先細の先細部を有するので、第1の電極に近いほど電界の集中を緩和する効果が高くなり、特に、第1の電極に電界が集中し易い場合に、電極間の電界分布を均一化して高耐圧化を図れる。
また、一実施形態の電子デバイスでは、上記誘電体層の先細部は、上記第2の電極に達している。
この実施形態の電子デバイスでは、上記誘電体層の先細部が第2の電極に達しているので、第1の電極から第2の電極に亘る領域において、電極間の電界分布を均一化して高耐圧化を図れる。
また、一実施形態の電子デバイスでは、上記誘電体層の上記先細部は、上記第1の電極の対向面のエッジが上記半導体層の表面に沿って延在する方向の寸法が、上記第1の電極と第2の電極との間の距離よりも小さい。
この実施形態の電子デバイスでは、半導体層の表面の単位面積当たりについて、誘電体層の断面形状の波形の波数を増やして、誘電体層の先細部の数を増やし、誘電体層による電界分布の均一化を促進できる。
また、一実施形態の電子デバイスでは、上記誘電体層は、誘電率が略一定値εであると共に上記半導体層の表面の法線方向の寸法が略一定値tであり、
上記半導体層のシート電荷濃度をNsとし、
上記第1の電極と第2の電極との間の距離をLdgとし、
上記第1の電極と第2の電極との間に印加する最大電圧をVdgとし、
電子の電荷をqとし、
上記半導体層の表面の法線方向をy方向とし、上記第1の電極の対向部の直線状のエッジが上記半導体層の表面に沿って延在する方向をz方向とし、上記y方向とz方向とに直交する方向をx方向とし、
上記先細部は、上記x方向における上記第1の電極側の端の上記z方向の寸法がw0であるとすると、
上記第1の電極側の端から上記x方向にx1だけ離れた位置での上記先細部の上記z方向の寸法w(x1)を、MKSA単位系において、
w(x1)=[1−x1・q・Ns・Ldg/(ε・Vgd・t)]・w0 … (1)
上式(1)で算出される値とする。
この実施形態の電子デバイスでは、上記誘電体層の先細部のz方向の幅w(x1)を上式(1)のように設定することで、先細部による電界均一化の効果を最も良く発揮することが可能となり、特に高耐圧化を図れる。
また、一実施形態の電子デバイスは、上記誘電体層は、上記半導体層の上に積層された複数の誘電体膜を有し、
各誘電体膜の厚さtiと誘電率εiとの積(ti・εi)の総和をΣi(ti・εi)とし、
上記半導体層のシート電荷濃度をNsとし、
上記第1の電極と第2の電極との間の距離をLdgとし、
上記第1の電極と第2の電極との間に印加する最大電圧をVdgとし、
電子の電荷をqとすると、MKSA単位系において、
Σi(ti・εi) ≧ q・Ns・(Ldg)/Vdg … (2)
上式(2)を満たす。
この実施形態の電子デバイスでは、上記誘電体層が有する各誘電体膜の厚さtiと誘電率εiとの積(ti・εi)の総和Σi(ti・εi)が上式(2)を満たすことで、誘電体層による電界均一化の効果を促進でき、高耐圧化を図れる。
また、一実施形態の電子デバイスでは、上記誘電体層は、上記第2の電極に対向する上記第1の電極の対向面の略全体を覆っている。
この実施形態の電子デバイスによれば、誘電体層による電界均一化の効果を促進でき、高耐圧化を図れる。
また、一実施形態の電子デバイスでは、上記半導体層を、III−N化合物半導体で作製した。
この実施形態の電子デバイスによれば、III−N化合物半導体で作製された電子デバイスの高耐圧化を図れる。
この発明によれば、半導体層の誘電率よりも高い誘電率を有する誘電体層が第1の電極の対向部を覆っていることで、第1の電極と第2の電極との間の耐圧を向上でき、さらに、上記誘電体層は、第1の電極から第2の電極に向かって先細の先細部を有するので、第1の電極に近いほど電界の集中を緩和する効果が高くなり、特に、第1の電極に電界が集中し易い場合に、電極間の電界分布を均一化して高耐圧化を図れる。
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
まず、この発明の実施形態を説明する前に、誘電体層で電界を均一化する比較例および誘電体層のグレーティングについて、説明する。
(比較例)
図3に示すように、この比較例としてのGaNヘテロ構造FETは、サファイア基板301の上に、厚さ3μmのアンドープGaNからなるアンドープGaN層302と厚さ20nmのアンドープAl0.2Ga0.8NからなるアンドープAlGaN層303が形成されている。このアンドープAlGaN層303の上に、ソースオーミック電極305、ゲートショットキ電極306、およびドレインオーミック電極307が同じ半導体表面に形成されている。アンドープAlGaN層303の上に、厚さ800nm、比誘電率εr=32の誘電体からなる誘電体層308が形成されている。アンドープGaN層302とアンドープAlGaN層303の境界の領域に、2DEG(2次元電子ガス)304が発生する。この2DEG304の濃度は6×1012cm−2である。
図3の比較例では、ゲートショットキ電極306とドレインオーミック電極307との間の距離(ゲート・ドレイン間距離)Lgdは、3.5μmである。また、ドレインオーミック電極307とソースオーミック電極305との間の印加電圧Vdsは(耐圧と同じく)405Vであり、ゲートショットキ電極306とソースオーミック電極305との間の印加電圧Vgsは、−10Vである。このバイアス条件の場合は、この比較例のデバイスがオフ状態であり、チャネルが空乏化されて電流が流れない状態である。
図3に示す比較例の100V,200V,300Vのシミュレーションによる各等電位線の分布と、図6に示す従来例の100V,200V,300Vの各等電位線の分布とを比較すれば、誘電体層308を有する比較例の方が、電界の均一性がよいことが分かる。これは、マクスウェル(Maxwell)式「div(εE)=ρ」によれば、電荷密度ρが存在して、誘電率εが高くなるほど電界Eの勾配が小さくなることとして説明できる。
(グレーデッド誘電体層の説明)
次に、誘電体層のグレーディングについて説明する。
前述の比較例のように、厚さ一定の誘電率が高い誘電体層308を有するGaNヘテロ構造FETは電界の均一化に有効である。しかし、厚さ一定の誘電体層は最適ではない。電位の変化が1次元の場合はMaxwell式が次式(1)のようになる。
E・dε/dx + ε・dE/dx = ρ … (1)
理想的な場合は電界の変化が無くて、電界の微分dE/dxがゼロである。したがって、1次元の場合は誘電率が理想的に次式(2)のように変わるとよい。
dε/dx = ρ/E = ρ・L/V … (2)
式(2)では、Lは隣り合う2つの電極間の間隔であって、Vは2つの電極間の印加電圧である。
電子デバイスがGaNヘテロ構造FETの場合は式(2)をより詳しく次の式(3)のように表せる。すなわち、GaNヘテロ構造FETの場合、電界が最も高い領域はゲート電極とドレイン電極の間にあるので、このゲート電極とドレイン電極との間の領域での誘電体層の膜厚あるいは誘電率のグレーディングが有効である。GaNヘテロ構造FETの場合は、上記式(2)が次式(3)のようになる。なお、式(3)では、MKSA単位系を採用している。
Figure 0004890055
式(3)では、式(2)の「V」がドレイン電極とゲート電極との間の印加電圧Vdgとなる。また、式(3)では、「y」は誘電体層の底面をゼロとし上面をtとするゲート電極とドレイン電極との間の半導体層の表面に垂直な方向の座標を表す。また、式(3)では、「x」は、ゲート電極とドレイン電極との間の半導体層の表面の法線方向をy方向とし、ドレイン電極に対向するゲート電極の対向部のエッジが上記半導体層の表面に沿って延在する方向をz方向とし、上記y方向とz方向とに直交する方向をx方向としたときのx方向の座標である。また、式(3)では、qは電子の電荷であり、Nsは半導体層のシート荷電濃度であり、Ldgはドレイン電極とゲート電極との間の距離であり、Vdgはドレイン電極とゲート電極との間に印加する電圧である。
したがって、誘電体層の誘電率εが一定の場合は誘電体層の厚さt(x)は、理想的には次式(4)のように変化させたグレーディング構造にする。
dt(x)/dx = −q・Ns・Ldg/(ε・Vgd) … (4)
一方、誘電体層の厚さtが一定である場合は誘電率ε(x)は理想的には次式(5)のように変化させたグレーディング構造にする。
dε(x)/dx = −q・Ns・Ldg/(Vgd・t) … (5)
式(4)と式(5)は、誘電率が高い誘電体が電界に最も強い影響を与えると仮定している。この仮定が合うようにするには、次の2つの条件を満たす必要がある。
(A) 誘電体層の誘電率ε2が下側の半導体層の誘電率ε1よりも高い。
(B) 積(ε2×t2)が積(ε1×t1)よりも大きい、または、
積(ε2×t2)が積(ε1×Ldg)よりも大きい。
(t1=誘電体層の厚さ、t2=半導体層の厚さ)
実用的には、高誘電体層の式(5)のような誘電率グレーディング、あるいは、高誘電体層の式(4)のような厚さのグレーディングは困難である。
しかし、本発明者らは、次の実施の形態のように、誘電率と厚さが一定の高誘電体層を略波形にパタ−ニングにすることによって、前述した誘電率あるいは厚さのグレーディングと同じような効果があることを見い出した。
(実施の形態)
次に、図1に、この発明の電子デバイスの一実施形態としてのAlGaN/GaN系HFET(Heterostructure Field Effect Transistor;ヘテロ構造電界効果トランジスタ)を示す。この実施形態は、サファイア基板101の上に、厚さ3μmのアンドープGaNからなるアンドープGaN層102と厚さ20nmのアンドープAl0.2Ga0.8NからなるアンドープAlGaN層103が形成されている。このアンドープAlGaN層103の上に、Ti/Al/Ni/Auの積層からなるソースオーミック電極105、第1の電極としてのWN/Auの積層からなるゲートショットキ電極106、および第2の電極としてのTi/Al/Ni/Auの積層からなるドレインオーミック電極107が同じ半導体表面に形成されている。アンドープAlGaN層103の上に、厚さ800nm、比誘電率εr=32の誘電体からなる誘電体層108が形成されている。この誘電体層108はTa層からなる。Taは、破壊電界が5MV/cmと高いので、本発明に用いる誘電体層として適切な材料である。
この実施形態は、アンドープGaN層102とアンドープAlGaN層103で構成するアイソレーションメサ112を有する。アンドープGaN層102とアンドープAlGaN層103の境界の領域に、2DEG(2次元電子ガス)104が発生する。この2DEG104の濃度は6×1012cm−2である。
上記誘電体層108は、アンドープAlGaN層103の誘電率よりも高い誘電率を有し、基部108Aと複数の先細部109を有する。この誘電体層108は、誘電率が略一定値εであると共に上記アンドープAlGaN層103の表面103Aの法線方向の寸法(つまり厚さ)が略一定値t(m)である。
誘電体層108の基部108Aは、ソースオーミック電極105の上面の略半分とゲートショットキ電極106の上面の略全面を覆っている。誘電体層108の基部108Aは、ドレインオーミック電極107に対向するゲートショットキ電極106の対向部106Aを覆っている。この誘電体層108は、アンドープAlGaN層103の表面103Aに平行な面による断面形状が略波形である。
誘電体層108の先細部109は、アンドープAlGaN層103の表面103Aに平行な面による断面形状がゲートショットキ電極106からドレインオーミック電極107に向かって先細になっている。また、この先細部109は、先端部109Aがドレインオーミック電極107に達していて、先端部109Aはドレインオーミック電極107の上面に被さっている。
この実施形態によれば、上記アンドープAlGaN層103の誘電率よりも高い誘電率を有する誘電体層108がゲートショットキ電極106の対向部106Aを覆っているので、ゲートショットキ電極106とドレインオーミック電極107との間の耐圧を向上できる。さらに、上記誘電体層108は、ゲートショットキ電極106からドレインオーミック電極107に向かって先細の先細部109を有する。これにより、特に、電界が集中し易いゲートショットキ電極106に近いほど電界の集中を緩和する効果が高くなり、ゲートショットキ電極106とドレインオーミック電極107間の電界分布を均一化して高耐圧化を図れる。つまり、この実施形態によれば、ゲート・ドレイン間の最大電界が低くて、耐圧が高い。HFETの2DEG(2次元電子ガス)濃度が高くても電界の集中が起こらないので、チャネルの抵抗が低いにもかかわらず耐圧が高い。
また、誘電体層108の先細部109は、ゲートショットキ電極106の対向部106Aの直線状のエッジ106A−1がアンドープAlGaN層103の表面103Aに沿って延在する方向(z方向)の寸法の最大値が、ゲートショットキ電極106とドレインオーミック電極107との間の距離Ldgよりも小さい。この実施形態では、距離Ldgを3.5μmとした。
次に、この実施形態のHFETの製造方法の概略を説明する。まず、サファイア基板101上にGaN層102、AlGaN層103の各半導体層を順に成長する。結晶成長方法としてはMBE(Molecular Beam Epitaxy)またはMOCVD(Metal Oraganic Chemical Vapor Deposition)が有効である。
次に、アイソレーションメサ112をドライエッチングで形成する。次に、AlGaN層103に、ソース電極105とドレイン電極107を形成して、コンタクト抵抗が低くなるように熱処理する。次に、ゲートショットキ電極106を形成する。次に、Ta層108を全面にデポ(デポジション:堆積)して、ウェットエッチング、またはリフトオッフでパターニングを行う。デポ方法としてはスパッターまたはスピンオンプロセスが有効である。スピンオンの場合はデポした後に熱処理を行う。
(実施例)
次に、この実施形態のより好ましい一例では、誘電体層108の先細部109の最適の幅w(x)は次式(6)で表される。
この幅w(x)とは、アンドープAlGaN層103の表面103Aの法線方向をy方向とし、ゲートショットキ電極106がドレインオーミック電極107に対向する対向部106Aの直線状のエッジ106A−1が上記アンドープAlGaN層103の表面103Aに沿って延在する方向をz方向とし、上記y方向とz方向とに直交する方向をx方向としたときに、上記ゲートショットキ電極106側の端109Bから上記x方向にx1(m)だけ離れた位置での先細部109の上記z方向の寸法(m)である。
w(x)=[1−x・q・Ns・Ldg/(ε・Vgd・t)]・w0 … (6)
式(6)は、MKSA単位系を採用している。式(6)において、上記誘電体層108は、誘電率が略一定値εであると共に上記半導体層の表面の法線方向の寸法が略一定値tであり、先細部109は、x方向におけるゲートショットキ電極106側の端109Bのz方向の寸法がw0であるとしている。また、式(6)において、上記アンドープAlGaN層103のシート電荷濃度をNsとし、ゲートショットキ電極106とドレインオーミック電極107との間の距離をLdgとし、ゲートショットキ電極106とドレインオーミック電極107との間に印加する最大電圧をVdgとし、電子の電荷をqとしている。なお、この誘電体層108の厚さ(y方向寸法)は、q・Ns(Ldg)/(ε・Vgd)よりも厚いことが望ましい。
このより好ましい一例では、誘電体層108の先細部109の幅w(x)が式(6)で表され、かつ、先細部109のゲートショットキ電極106側の端109Bとゲートショットキ電極106との距離が0.25ミクロンであり、先細部109の後端109Bは最大幅w0としての約1.8μmの幅である。一方、先細部109の幅w(x)は、ドレインオーミック電極107の端面107Aにおいて、約0.2ミクロンである。また、誘電体層108の厚さは800nmで一定である。
図2Aにこのより好ましい一例をアンドープAlGaN層103の表面103Aの法線方向の上方から下方に見た様子を示し、図2Bにこのより好ましい一例の断面を示す。図2Bは図2AのU−U断面を示す断面図である。図2Aおよび図2Bでは、ドレインオーミック電極107とソースオーミック電極105との間に525(V)を印加し、ゲートショットキ電極106とソースオーミック電極105との間に−10(V)を印加した場合の等電位線を示している。このバイアス条件では、トランジスタがオフの状態(チャネルが空乏化されて電流が流れない状態)である。なお、この等電位線はシミュレーションによって計算したものである。
図2A,図2Bに示す好ましい一例の各等電位線の分布と、図5A,図5Bに示す比較例の各等電位線の分布とを比較すれば、好ましい一例の如く先細部109を有する波形にパターニングした誘電体層108を備えたことで、電界の均一性を向上できることが分かる。図5A,図5Bに示す比較例は、前述した図3に示す比較例と同じ構成である。図3では比較例のドレインオーミック電極307とソースオーミック電極305との間に405Vを印加したが、図5A,図5Bでは同じ比較例のドレインオーミック電極307とソースオーミック電極305との間に405Vを印加した。
すなわち、好ましい一例を示す図2A,図2Bと比較例を示す図4A,図4Bは共にドレインオーミック電極とソースオーミック電極との間に525(V)を印加し、ゲートショットキ電極とソースオーミック電極との間に−10(V)を印加した。図4A,図4Bに示す各等電位線の分布に比べて図2A,図2Bに示す各等電位線の分布が均一化されたことで、比較例の耐圧405Vに比べて、上記好ましい一例では耐圧を525Vに向上させることができた。
なお、上記実施形態では、上記アンドープAlGaN層103上に1つの誘電体層108を形成したが、この誘電体層108を、上記アンドープAlGaN層103上に積層した複数の誘電体膜で構成してもよい。この場合、各誘電体層の厚さtiと誘電率εiとの積(ti・εi)の総和をΣi(ti・εi)とすると次式(7)を満たすことが望ましい。なお、式(7)において、MKSA単位系を採用している。
Σi(ti・εi)≧q・Ns・(Ldg)/Vdg … (7)
式(7)において、Nsは上記アンドープAlGaN層103のシート電荷濃度であり、Ldgは上記ゲートショットキ電極106とドレインオーミック電極107との間の距離であり、Vdgは上記ゲートショットキ電極106とドレインオーミック電極107との間に印加する最大電圧であり、qは電子の電荷である。
上記誘電体層108が有する各誘電体膜の厚さtiと誘電率εiとの積(ti・εi)の総和Σi(ti・εi)が上式(7)を満たすことで、誘電体層108による電界均一化の効果を促進でき、高耐圧化を図れる。
尚、上記実施形態では、電子デバイスがAlGaN/GaN系HFETである場合を説明したが、この発明は、他のHFET、SAW(Surface Acoustic Wave;表面弾性波)デバイスやMEMS(Micro electro mechanical system;微小電気機械システム)等、半導体層の表面に2つ以上の電極が形成された電子デバイスに適用可能である。もっとも、半導体デバイス(FETやダイオード等)では電界が非常に高くなるので、本発明が特に有効である。また、GaN系のHFETはゲート電極とドレイン電極とが同じ表面に存在していて加わる電圧が高いので、本発明が最も有効な電子デバイスである。
この発明の電子デバイスの実施形態としてのAlGaN/GaN系HFET(ヘテロ構造電界効果トランジスタ)を示すを示す斜視図である。 上記実施形態の電位分布を示す平面図である。 上記実施形態の電位分布を示す図2AのU−U断面図である。 上記実施形態の比較例を示す断面図である。 上記比較例の電位分布を示す平面図である。 上記比較例の電位分布を示す図4AのU−U断面図である。 従来例のHFETを示す断面図である。 上記従来例の電位分布を示す断面図である。
符号の説明
101 サファイア基板
102 アンドープGaN層
103 アンドープAlGaN層
105 ソースオーミック電極
106 ゲートショットキ電極
106A 対向部
106A−1 直線状のエッジ
107 ドレインオーミック電極
108 誘電体層
108A 基部
109 先細部
109A 先端部
109B 端

Claims (7)

  1. 半導体層と、
    上記半導体層上に形成された第1の電極と、
    上記半導体層上に形成されると共に上記第1の電極に対して上記半導体層の表面に沿って隣り合う第2の電極と、
    上記第2の電極に対向する上記第1の電極の対向部を覆うと共に上記半導体層の誘電率よりも高い誘電率を有する誘電体層とを備え、
    上記第1の電極の対向部は、直線状に延在する平坦な対向面を有し、
    上記第2の電極は、上記第1の電極の対向部の上記平坦な対向面に対向する対向部が、この対向部の両端に亘って直線状に延在する平坦な対向面を有し、
    上記誘電体層は、
    上記半導体層の表面に平行な面による断面形状が上記第1の電極から上記第2の電極に向かって先細の先細部を有すると共に、上記半導体層の表面に平行な面による断面形状が略波形であることを特徴とする電子デバイス。
  2. 請求項1に記載の電子デバイスにおいて、
    上記誘電体層の先細部は、上記第2の電極に達していることを特徴とする電子デバイス。
  3. 請求項1に記載の電子デバイスにおいて、
    上記誘電体層の上記先細部は、
    上記第1の電極の上記対向部の直線状のエッジが上記半導体層の表面に沿って延在する方向の寸法が、上記第1の電極と第2の電極との間の距離よりも小さいことを特徴とする電子デバイス。
  4. 請求項1に記載の電子デバイスにおいて、
    上記誘電体層は、誘電率が略一定値εであると共に上記半導体層の表面の法線方向の寸法が略一定値tであり、
    上記半導体層のシート電荷濃度をNsとし、
    上記第1の電極と第2の電極との間の距離をLdgとし、
    上記第1の電極と第2の電極との間に印加する最大電圧をVdgとし、
    電子の電荷をqとし、
    上記半導体層の表面の法線方向をy方向とし、上記第1の電極の対向部の直線状のエッジが上記半導体層の表面に沿って延在する方向をz方向とし、上記y方向とz方向とに直交する方向をx方向とし、
    上記先細部は、上記x方向における上記第1の電極側の端の上記z方向の寸法がw0であるとすると、
    上記第1の電極側の端から上記x方向にx1だけ離れた位置での上記先細部の上記z方向の寸法w(x1)を、MKSA単位系において、
    w(x1)=[1−x1・q・Ns・Ldg/(ε・Vgd・t)]・w0 … (1)
    上式(1)で算出される値とすることを特徴とする電子デバイス。
  5. 請求項1に記載の電子デバイスにおいて、
    上記誘電体層は、上記半導体層の上に積層された複数の誘電体膜を有し、
    各誘電体膜の厚さtiと誘電率εiとの積(ti・εi)の総和をΣi(ti・εi)とし、
    上記半導体層のシート電荷濃度をNsとし、
    上記第1の電極と第2の電極との間の距離をLdgとし、
    上記第1の電極と第2の電極との間に印加する最大電圧をVdgとし、
    電子の電荷をqとすると、MKSA単位系において、
    Σi(ti・εi) ≧ q・Ns・(Ldg)/Vdg … (2)
    上式(2)を満たすことを特徴とする電子デバイス。
  6. 請求項1に記載の電子デバイスにおいて、
    上記誘電体層は、
    上記第2の電極に対向する上記第1の電極の対向面の略全体を覆っていることを特徴とする電子デバイス。
  7. 請求項1に記載の電子デバイスにおいて、
    上記半導体層を、III−N化合物半導体で作製したことを特徴とする電子デバイス。
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