JP4889329B2 - 電圧形インバータの制御装置 - Google Patents

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本発明は電圧形インバータの制御装置に関し、詳しくは、半導体スイッチング素子のオンオフにより所望の大きさ及び周波数の交流電圧を出力する電圧形インバータによって電動機を駆動する場合に、電圧形インバータの出力電圧に含まれる誤差や歪を補償するための制御装置に関するものである。
通常の電圧形インバータは、上下アームを構成するスイッチング素子を交互に導通して所望の大きさ及び周波数の交流電圧を発生している。しかし、スイッチング素子にはターンオフ時の動作遅れがあり、これによって上下アームのスイッチング素子が同時に導通するアーム短絡を防ぐために、スイッチングパターンに短絡防止期間(デッドタイム)が設けられている。しかし、このデッドタイムによって電圧形インバータの出力電圧は出力電圧指令に対して誤差を持つことになり、これによる出力電圧の歪みが電動機駆動時のトルクリプルの原因となっている。
上述したデッドタイムに起因する出力電圧歪みを補償するための従来技術として、特許文献1に記載されているように、インバータの出力電圧指令及び出力電流に基づいて出力電圧歪を推定し、この推定値に基づいて出力電圧指令に加える補償信号の振幅(補償量)を調節する方法が知られている。
以下、この従来技術を、図2を参照しつつ略述する。
図2において、101は電圧指令に比例した電圧を出力する電圧形PWMインバータであり、102はこのインバータ101によって駆動される電動機である。
前記インバータにおいて、破線で示したブロック102aは、前述したデッドタイムによる出力電圧歪Δvが出力電流iの極性に応じて発生することをモデル化して示したものである。
また、103は、回転磁界座標系のd軸電圧指令v 、q軸電圧指令v 及び位相基準信号θ(=ωt)が入力されて固定子座標系の出力電圧指令vを出力する座標変換器、104は出力電圧指令vと補償信号Δvとを加算する加算器、105はインバータ101の出力電流iを検出する電流検出器、106は電流検出器105による検出電流iを回転磁界座標系のd軸電流i及びq軸電流iに変換する座標変換器、107はd軸電圧指令v 、q軸電圧指令v 、d軸電流i及びq軸電流iに基づいて電圧歪成分(補償残留成分)を推定する歪成分推定器、108は推定した電圧歪成分と出力電流iに基づいて補償量を調節する補償量調節器、108aは極性反転器、108bは出力電流iの極性検出器、108cは出力電流iの極性に応じた極性反転器108aの出力信号を積分する積分器、109は出力電流iの極性に応じた補償信号Δvを出力する補償器である。
上記構成において、出力電圧歪Δvは、電圧指令からインバータ101の出力電圧までの経路において歪成分が作用するモデルにより推定することができ、歪成分推定器107は、d軸電圧指令v 、q軸電圧指令v 、d軸電流i及びq軸電流iに基づき、外乱オブザーバの原理に従って電圧歪成分を推定する。そして、この電圧歪成分が零に近づくように、補償量調節器108により補償器109の補償信号Δvを制御し、出力電圧指令vに加算することで、出力電圧歪の最小化を図っている。
すなわち、上記補償信号Δvを出力電圧指令vに加算し、出力電圧歪をフィードフォワード制御することにより、出力電圧vにΔvが含まれるのを抑制して出力電圧歪を補償する。補償信号の振幅(補償量)は、電圧歪成分の振幅に一致する場合が最も補償効果が大きく、それより過大あるいは過小でも歪成分が残留するので、この従来技術では、補償量調節器108により補償量の過不足を判別し、その判別結果により補償器109を介して補償量を最適値に制御している。
特許第3536114号公報(段落[0007]〜[0012]、図1等)
上記従来技術において、外乱オブザーバとしての歪成分推定器107により推定した電圧歪成分には、電動機102の逆起電力(速度起電力)も含まれるため、推定した歪成分をそのまま用いて電圧指令値を補償することができない。このため、補償量調節器108及び補償器109を用いて補償量を調整する必要がある。
これらの補償量調節器108及び補償器109では、電圧歪成分の波形に基づいて積分やその積分値の差演算等を行って過補償または不足補償を判別し、その判別結果に応じて補償量を決定するという複雑な処理を行っており、これらが回路構成の複雑化や演算負荷の増大を招いていた。
そこで、本発明の解決課題は、複雑な回路構成や演算処理を要することなく出力電圧歪を常に最小化することができる電圧形インバータの制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、半導体スイッチング素子のオンオフにより所望の大きさ及び周波数の交流電圧を出力して電動機を駆動する電圧形インバータの制御装置であって、
インバータの出力電圧指令及び出力電流を用いてインバータの出力電圧歪成分を逐次推定する電圧歪成分推定手段と、インバータの出力電圧を前記出力電圧歪成分により補償する補償手段と、を備えた電圧形インバータの制御装置において、
前記電圧歪成分推定手段は、
インバータの出力電流から出力電圧を推定し、この出力電圧と出力電圧指令とを用いて、インバータのデッドタイムに起因した出力電圧誤差と、前記電動機の逆起電力成分及び回転磁界座標系のd軸による干渉成分からなる逆起電力相当分と、を含む外乱電圧を推定する第1の推定手段と、
インバータの周波数指令と出力電流とから前記逆起電力相当分を推定する第2の推定手段とを有し、
前記補償手段は、
第1の推定手段により推定した前記外乱電圧と、第2の推定手段により推定した前記逆起電力相当分とを用いて前記出力電圧指令を補正するものである。
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した電圧形インバータの制御装置において、
前記電動機の回転速度をV/f一定制御により制御するものである。
請求項3に記載した発明は、半導体スイッチング素子のオンオフにより所望の大きさ及び周波数の交流電圧を出力して電動機を駆動する電圧形インバータの制御装置であって、
インバータの周波数指令から出力電圧指令を生成するV/f変換手段と、
前記出力電圧指令とインバータの出力電流とを用いて、インバータのデッドタイムに起因した出力電圧誤差と、前記電動機の逆起電力成分及び回転磁界座標系のd軸による干渉成分からなる逆起電力相当分と、を含む外乱電圧を推定する外乱推定オブザーバと、
前記周波数指令と出力電流とから前記電動機の逆起電力相当分を推定する逆起電力推定手段と、
前記外乱推定オブザーバにより推定した外乱電圧と前記逆起電力推定手段により推定した逆起電力相当分とを用いて前記出力電圧指令を補正する手段と、を備えたものである。
本発明によれば、インバータの出力電圧指令及び出力電流を用いてインバータのデッドタイムに起因した出力電圧誤差と電動機の逆起電力成分とを含む外乱電圧を推定すると共に、インバータの周波数指令及び出力電流を用いて電動機の逆起電力成分を推定する。
そして、これらの外乱電圧及び逆起電力成分を用いてインバータの出力電圧指令を補正することにより、従来技術のように補償量の過不足の判別や補償器による補償量の調整を要することなく、簡単にインバータの出力電圧歪を補償することができる。
このため、電動機のトルクリプルの発生を防止すると共に交流電源の高調波を低減し、制御精度を高めることができる。
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の構成を示すブロック図である。図1において、1は所望の大きさ及び周波数の交流電圧を出力する電圧形PWMインバータ、2はインバータ1の各相(U,V,W相)の交流出力端子に接続された誘導電動機、3は誘導電動機2への一次角周波数指令(インバータ1に対する周波数指令)ω を設定する周波数設定器、4は一次角周波数指令ω を積分して位相基準信号θ を出力する積分回路、5は回転磁界座標系のd軸電圧指令v1d 及びq軸電圧指令v1q を位相基準信号θ に基づいて固定子座標系の各相電圧指令v ,v ,v に変換する座標変換器、6はインバータ1の出力電流i,i,iを検出する電流検出器、7は固定子座標系の前記出力電流i,i,iを位相基準信号θ に基づいて回転磁界座標系のd軸電流i及びq軸電流iに変換する座標変換器、8は一次角周波数指令ω からd軸電圧指令v1d 及びq軸電圧指令v1q を出力するV/f変換器、9はd軸電圧指令v1d 、q軸電圧指令v1q 、d軸電流i及びq軸電流iから外乱電圧vdisを推定して出力する第1の推定手段としての外乱推定オブザーバ(なお、後述するようにv1d =0とおく)、10は一次角周波数指令ω 及びd軸電流iから逆起電力相当量vcmpを推定して出力する第2の推定手段としての逆起電力推定器、11,12はd軸電圧指令v1d 、q軸電圧指令v1q に外乱推定オブザーバ9からの外乱電圧vdisと逆起電力推定器10からの逆起電力相当量vcmpをそれぞれ加算してインバータ1の出力電圧指令を補償するための加算器である。
次に、この実施形態の動作について説明する。
周知のように、図1に示す実施形態における制御方法はV/f一定制御と呼ばれる誘導電動機2の制御方法であり、誘導電動機2の一次角周波数ωと一次電圧vとの比率を一定に保って誘導電動機2の回転速度を広範囲にわたり効率よく制御する方法である。
まず、周波数設定器3により設定された一次角周波数指令ω は、V/f変換器8に入力され、一次角周波数指令ω に対応する一次電圧指令(出力電圧指令)が出力される。ここで、d軸電圧指令v1d は、誘導電動機2が発生するトルクには直接影響しないものとして、0とする。従って、V/f変換器8からは、一次角周波数指令ω に対応するq軸電圧指令v1q が一次電圧指令として出力される。以下、必要に応じてq軸電圧指令v1q を一次電圧指令v1q 、q軸電圧v1qを一次電圧v1q、q軸電流iを一次電流iともいうものとする。
インバータ1の出力電圧歪の補償については後述することとして、一次電圧指令v1q は座標変換器5に入力され、積分器4からの位相基準信号θ を用いた座標変換により正弦波の出力電圧指令v ,v ,v が生成される。これらの電圧指令v ,v ,v をインバータ1の内部で搬送波信号と比較して得たPWM信号に従い、インバータ1のスイッチング素子をオンオフ動作させることにより、インバータ1の出力電圧v,v,vが制御されて電動機2に供給されることになる。
一方、インバータ1のデッドタイムによる出力電圧歪は、回転磁界座標系において外乱推定オブザーバ9により推定した外乱電圧により補償される。
ここで、数式1により与えられる回転磁界座標系で表現された誘導電動機の電圧方程式より、誘導電動機1の一次電流i1qと一次電圧v1qとの関係を求めると、数式2となる。
Figure 0004889329
Figure 0004889329
これらの数式において、
φ2d,φ2q:d軸電動機磁束及びq軸電動機磁束,
1d,i1d:誘導電動機の一次側のd軸電圧及びd軸電流,
1q,i1q:誘導電動機の一次側のq軸電圧及びq軸電流,
ω:一次角周波数,
ω:回転角周波数(電気角速度),
:一次抵抗値,
:二次抵抗値,
σ:漏れインダクタンス,
:励磁インダクタンス,
p:微分演算子
である。
数式2において、右辺第2項はd軸による干渉成分、第4項は逆起電力成分となる。なお、右辺第3項は、低速において影響が無いためゼロとして考える。
インバータ1のデッドタイムによる誤差電圧及び上記干渉成分や逆起電力成分の和を外乱電圧vdisと定義すると、数式2から数式3を得ることができる。
Figure 0004889329
ここで、従来技術と同様に構成された外乱オブザーバにより、外乱電圧vdisを推定することを考える。すなわち、数式3に示した一次電流i1qと一次電圧v1qとの関係に基づき、誘導電動機2に印加されているインバータ1の出力電圧(=(R+R+pLσ) i1q)を一次電流i1qから推定する。
そして、次の数式4に示すように、推定した出力電圧(=(R+R+pLσ) i1q)と一次電圧指令v1q との差分をとり、時定数Tのローパスフィルタを通してゲインKを乗じ、外乱電圧推定値^vdisとして出力する。なお、数式4において、記号「^」を付した値は何れも推定値である。
Figure 0004889329
前述したように、外乱電圧推定値^vdisには、デッドタイムによる誤差電圧の他に誘導電動機2の逆起電力成分やd軸による干渉成分が含まれており、これらを含んだ外乱電圧推定値^vdisが加算器11によって一次電圧指令v1q に加算されることになる。よって、逆起電力推定器10により、数式2における右辺第2項の干渉成分と第4項の逆起電力成分とを演算し、両者の和を逆起電力相当量vcmpとして加算器12において前記加算器11の出力に加えることにより、干渉成分と逆起電力成分とを補償する。このように、逆起電力推定器10は逆起電力成分だけでなく干渉成分の補償作用も持っている。
なお、逆起電力推定器10における逆起電力相当量vcmpの演算に当たり、数式2をそのまま用いると回転角周波数ωを直接検出する必要があって回路構成が複雑になるため、定常状態ではω≒ωであることを利用してωをωで代用し、φ2d=L1dと置き換えて計算することが望ましい。
これにより、数式2の右辺第2項と第4項との和(ωσ1d+ωφ2d)である逆起電力相当量vcmpは、
cmp=ωσ1d+ωφ2d=ωσ1d+ω1d=ω1d(Lσ+L
となり、漏れインダクタンスLσを無視すれば、数式5が得られる。
Figure 0004889329
前述した逆起電力推定器10は数式5の演算を実行するものである。
上記のようにして推定した外乱電圧^vdis及び逆起電力相当量vcmpは、加算器11,12により一次電圧指令v1q にそれぞれ加えられるので、結果的には、外乱電圧から逆起電力相当量を除いたデッドタイムによる誤差電圧のみを電圧歪成分として推定し、一次電圧指令v1q を補償するシステムを構成することができる。これにより、インバータ1の出力電圧歪を常に最小化することができる。
その結果として、誘導電動機2のトルクリプルの発生を防止すると共に、交流電源の高調波を低減して制御精度を高めることもできる。
なお、本実施形態ではインバータにより誘導電動機を駆動する場合を対象としたが、本発明は、同期電動機等の他の電動機の駆動システムにも適用可能である。また、本実施形態ではインバータの制御方法としてV/f一定制御を示したが、ベクトル制御等の他の制御方法にも適用可能である。
本発明の実施形態を示すブロック図である。 従来技術を示すブロック図である。
符号の説明
1:電圧形PWMインバータ
2:誘導電動機
3:周波数設定器
4:積分回路
5,7:座標変換器
6:電流検出器
8:V/f変換器
9:外乱推定オブザーバ
10:逆起電力推定器
11,12:加算器

Claims (3)

  1. 半導体スイッチング素子のオンオフにより所望の大きさ及び周波数の交流電圧を出力して電動機を駆動する電圧形インバータの制御装置であって、
    インバータの出力電圧指令及び出力電流を用いてインバータの出力電圧歪成分を逐次推定する電圧歪成分推定手段と、インバータの出力電圧を前記出力電圧歪成分により補償する補償手段と、を備えた電圧形インバータの制御装置において、
    前記電圧歪成分推定手段は、
    インバータの出力電流から出力電圧を推定し、この出力電圧と出力電圧指令とを用いて、インバータのデッドタイムに起因した出力電圧誤差と、前記電動機の逆起電力成分及び回転磁界座標系のd軸による干渉成分からなる逆起電力相当分と、を含む外乱電圧を推定する第1の推定手段と、
    インバータの周波数指令と出力電流とから前記逆起電力相当分を推定する第2の推定手段とを有し、
    前記補償手段は、
    第1の推定手段により推定した前記外乱電圧と、第2の推定手段により推定した前記逆起電力相当分とを用いて前記出力電圧指令を補正することを特徴とする電圧形インバータの制御装置。
  2. 請求項1に記載した電圧形インバータの制御装置において、
    前記電動機の回転速度をV/f一定制御により制御することを特徴とする電圧形インバータの制御装置。
  3. 半導体スイッチング素子のオンオフにより所望の大きさ及び周波数の交流電圧を出力して電動機を駆動する電圧形インバータの制御装置であって、
    インバータの周波数指令から出力電圧指令を生成するV/f変換手段と、
    前記出力電圧指令とインバータの出力電流とを用いて、インバータのデッドタイムに起因した出力電圧誤差と、前記電動機の逆起電力成分及び回転磁界座標系のd軸による干渉成分からなる逆起電力相当分と、を含む外乱電圧を推定する外乱推定オブザーバと、
    前記周波数指令と出力電流とから前記電動機の逆起電力相当分を推定する逆起電力推定手段と、
    前記外乱推定オブザーバにより推定した外乱電圧と前記逆起電力推定手段により推定した逆起電力相当分とを用いて前記出力電圧指令を補正する手段と、
    を備えたことを特徴とする電圧形インバータの制御装置。
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