JP4889112B2 - 自動薄切装置 - Google Patents

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Description

本発明は、生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切して薄切片を作製する自動薄切装置に関するものである。
従来より、理化学実験や顕微鏡観察に用いられる薄切片標本を作製する装置として、ミクロトームが一般的に知られている。この薄切片標本は、厚さが数μm(例えば、3μm〜5μm)の薄切片を、スライドガラス等の基板上に固定させたものである。ここで、ミクロトームを利用して薄切片試料を作製する一般的な方法について説明する。
まず、ホルマリン固定された生物や動物等の生体試料をパラフィン置換した後、更に周囲をパラフィンで固めて強固にして、ブロック状態の包埋ブロックを作製する。次に、この包埋ブロックを専用の薄切り装置であるミクロトームにセットして、粗削りを行う。この粗削りによって、包埋ブロックの表面が平滑面となると共に、実験や観察の対象物である包埋された生体試料が表面に露出した状態となる。
粗削りが終了した後、本削りを行う。これは、ミクロトームが有する切断刃により、包埋ブロックを上述した厚みで極薄にスライスする工程である。これにより、薄切片を得ることができる。この際、包埋ブロックを可能な限り薄くスライスすることで、薄切片の厚みを細胞レベルの厚みに近付けることができるので、より正確な観察データを得ることができる。よって、可能な限り厚さが薄い薄切片を作製することが求められている。
次いで、本削りによって得られた薄切片を伸展させる伸展工程を行う。つまり、本削りによって作製された薄切片は、上述したように極薄の厚みでスライスされたものであるので、皺がついた状態や、丸まった状態(例えば、Uの字状)となってしまう。そこで、この伸展工程によって、皺や丸みを取って伸ばす必要がある。
一般的には、水とお湯を利用して伸展させている。始めに、本削りによって得られた薄切片を水に浮かべる。これにより、生体試料を包埋しているパラフィン同士のくっつきを防止しながら、薄切片の大きな皺や丸みを取ることができる。その後、薄切片をお湯に浮かべる。これにより、薄切片が伸び易くなるので、水による伸展では取りきれなかった残りの皺や丸みを取ることができる。
そして、お湯による伸展が終了した薄切片をスライドガラス等の基板で掬って該基板上に載置する。なお、この時点で仮に伸展が不十分であった場合には、基板ごとホットプレート等に乗せてさらに熱を加える。これにより、薄切片をより伸展させることができる。
最後に、薄切片を乗せた基板を乾燥器内に入れて乾燥させる。この乾燥により、伸展で付着した水分が蒸発すると共に、薄切片が基板上に固定される。その結果、薄切片標本を作製することができる。
ところで、上述した工程のほとんどが高度な技術や経験を要するものであるため、一般には熟練した作業者が手作業で対応している。しかしながら、近年では作業者の負担を少しでも軽減するために、上述した工程の一部分を自動で行う薄切片試料作製装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
この薄切片試料作製装置は、セットされた包埋ブロックを切断して薄切片を作製する工程と、作製した薄切片をキャリアテープによって搬送してスライドガラス上に転写させる工程と、スライドガラスごと薄切片を伸展装置まで搬送して伸展を行う工程とを、自動的に行っている装置である。この薄切片試料作製装置を利用することで、作業者の負担を若干減らすことができる。
特開2004−28910号公報
しかしながら、上記特許文献1記載の薄切片試料作製装置では、まだ以下の課題が残されていた。
始めに、高品質な薄切片標本を作製するためには、包埋ブロックを薄切して薄切片を作製する際に、所定の厚さで薄切すると共に、切断面が極力綺麗で平坦な面となるように薄切する必要がある。そのため、作業者は、切断速度等に注意を払うことに加え、切断刃の切れ味に特に注意を払っている。仮に切断刃の切れ味が悪いまま薄切を行った場合には、包埋ブロックを希望する厚さ(例えば、3〜5μm)に薄切することが難しかった。また、場合によっては、薄切片が破損する恐れがあった。更には、薄切片に負荷がかかりすぎてしまい、後に行う伸展工程で復元(伸展)できないほど圧縮(変形)してしまう恐れがあった。このように、いくつかの不都合が生じるので、作業者は切断刃を定期的に交換する必要がある。
ところが、取り扱う包埋ブロックの数が膨大であり、また、1つの包埋ブロックから複数枚の薄切片を作製するので、切断刃を頻繁に交換する必要があった。特に、本削りを行う場合には、切れ味の良い切断刃を使用する必要があるので、通常新しいものに交換している。従って、作業者にかかる負担が大きいものであった。
また、特許文献1に記載されている装置を利用することで、作業者の負担を若干減らすことができるが、切断刃の交換に関しては従来通りに作業者が行う必要があった。そのため、やはり作業者にかかる負担が大きく、扱い難いものであった。
加えて切断刃は、通常所定のすくい角が付くようにセットされている。そのため、切断刃を交換する際に、該切断刃を常に保持していないと重力によりずれ落ちて正規の位置にセットすることができない。従って、作業者は、切断刃がずれないように慎重に保持しながら交換作業を行う必要があり、余計に負担がかかるものであった。
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、所定のすくい角が付いた状態で自動的に切断刃を交換しながら包埋ブロックを薄切して薄切片を作製することができ、作業者にかかる負担を極力低減することができる自動薄切装置を提供することである。
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る自動薄切装置は、生体試料が包埋された包埋ブロックを、所定のすくい角が付いた状態で薄切して薄切片を作製する自動薄切装置であって、一端側が刃先とされた長尺な切断刃と、前記包埋ブロックの表面に対して前記すくい角が付いた状態で配置されたホルダと、該ホルダの先端に設けられ、前記刃先が外側に露出しながら複数枚の前記切断刃が一列に並んだ状態で載置される載置面と、該載置面に沿って設けられ、載置面に載置された前記切断刃の基端側を吸着して切断刃の姿勢を保持する吸着部材と、前記ホルダに設けられ、前記載置面に一列に並んで載置された複数の前記切断刃のうち、所定位置に位置した切断刃を載置面に押さえ付けて前記薄切用の切断刃とする第1の押さえ部材と、前記載置面に対して複数の前記切断刃を1枚ずつ順次送り出すように搬送して、載置面に一列に並んだ切断刃をスライド移動させる搬送手段と、前記包埋ブロックと前記ホルダとを相対的に移動させ、前記第1の押さえ部材で押さえ付けられた前記切断刃により前記包埋ブロックを薄切して前記薄切片を切り出させる移動手段と、前記ホルダに設けられ、前記第1の押さえ部材に隣接して、前記薄切時に使用した前記切断刃を前記載置面に再度押さえ付けて粗削り用の切断刃とする第2の押さえ部材と、前記薄切が所定回数終了した後、前記搬送手段を作動させて薄切に使用した前記切断刃を前記スライド移動により前記第2の押さえ部材に搬送して交換させると共に、該切断刃を前記粗削り用の切断刃として再び使用させる制御部と、を備え、前記粗削り用の切断刃で前記包埋ブロックを粗削りした後、前記第1の押さえ部材で押さえ付けられた前記切断刃で前記前記薄切片を作製することを特徴とするものである。
この発明に係る自動薄切装置においては、まず搬送手段がホルダの載置面に対して切断刃を1枚ずつ送り出すように搬送する。すると最初に送り出された切断刃は、次に送り出された切断刃に押されるので載置面に沿ってスライド移動する。このように、切断刃は、載置面を一例に並んだ状態でスライド移動する。この際、切断刃は、刃先がホルダの外側に露出した状態となっている。そして、スライド移動した切断刃が載置面の所定位置に位置すると、第1の押さえ部材によって載置面に押さえ付けられて強固に固定される。これにより、この押さえ付けられた切断刃を薄切時に使用する切断刃として用いることができる。
切断刃を固定すると、移動手段が包埋ブロックとホルダとを相対的に移動させて、押さえ付けた切断刃により包埋ブロックを薄切する。これにより、包埋ブロックから薄切片を切り出して作製することができる。しかも、ホルダは包埋ブロックの表面に対して所定のすくい角が付いているので、切断刃も同様にすくい角が付いた状態となっている。よって、所定のすくい角で滑らかに薄切を行うことができる。また、この薄切が所定回数終了すると、制御部は第1の押さえ部材による押さえ付けを解くと共に、搬送手段を作動させて新たな切断刃を載置面に搬送する。これにより、既に載置面に載置されていた切断刃は、新たな切断刃に押されてスライド移動する。そして、新たな切断刃が所定位置に位置すると、この切断刃を第1の押さえ部材が押さえ付けて次の薄切用の切断刃とする。つまり、薄切を所定回数行う毎に、切断刃の交換を自動的に行うことができる。従って、作業者の手を煩わせることなく切断刃を交換することができ、作業者にかかる負担を極力低減することができる。また、常に切れ味の良い切断刃により薄切を行うことができるので、高品質な薄切片を作製することができる。
特に、第1の押さえ部材によって押さえ付けられている切断刃を含め、載置面上に載置されている切断刃は、基端側(刃先とは逆側)が吸着部材によって吸着されている。従って、ホルダがすくい角の付いた状態で斜めになっていたとしても、切断刃は重力の影響を受けて載置面上をずれ落ちることがなく、姿勢が保持されて安定した状態となっている。そのため、すくい角が付いた状態で切断刃を円滑に交換することができる。
また、切断刃の姿勢が安定に保持されているので、第1の押さえ部材で切断刃を押さえ付けた際に、ホルダから外側に露出する刃先の突出量を常に同じ値に維持することができる。これにより、刃先のばらつきをなくすことができる。そのため、切断刃を交換した際に常に同じ条件で包埋ブロックを薄切することができ、同じ品質の薄切片を連続的に作製することができる。
更に、搬送手段の作動により先ほど薄切に使用された切断刃が所定位置からスライド移動してくると、第2の押さえ部材がこの切断刃を再度載置面に押さえ付けて強固に固定する。これにより、一度薄切に使用された切断刃を粗削り用の切断刃として用いることができる。そして、包埋ブロックの薄切を開始する際に、まず第2の押さえ部材で押さえ付けられた粗削り用の切断刃で包埋ブロックの粗削りを行う。そして、粗削りが終了した後、第1の押さえ部材で押さえ付けられた薄切用の切断刃で本削りを行って、薄切片を作製する。
このように、本削りで使用した切断刃を粗削り用の切断刃として再利用できるので、切断刃を無駄に交換するのではなく、有効に利用しながら交換を行うことができる。従って、ランニングコストを抑えることができる。
また、本発明に係る自動薄切装置は、上記本発明の自動薄切装置において、前記吸着手段が、複数の磁石であり、磁力により前記切断刃の基端側を吸着することを特徴とするものである。
この発明に係る自動薄切装置においては、載置面に沿って複数の磁石が設けられており、これら複数の磁石による磁力により切断刃は吸着されている。このように磁石という簡単で安価な構成で吸着手段を構成できるので、構成の単純化及び低コスト化を図ることができる。
また、本発明に係る自動薄切装置は、上記本発明のいずれかの自動薄切装置において、前記搬送手段が、前記切断刃を複数収納する収納ケースと、収納ケースと前記ホルダとの間に前記すくい角が付いた状態で配置され、前記載置面に面一とされて前記切断刃が搬送される搬送面を有する搬送路と、前記収納ケースから切断刃を1枚ずつ搬出して前記搬送面に一旦載置すると共に、該搬送面に沿って切断刃を搬送して前記載置面に送り出す搬送機構と、を備え、前記吸着手段が、前記搬送面に沿って設けられ、搬送される前記切断刃の基端側を吸着して切断刃の姿勢を保持することを特徴とするものである。
この発明に係る自動薄切装置においては、搬送手段を作動させると、搬送機構が収納ケースから切断刃を1枚搬出して搬送路の搬送面に一旦載置する。続いて、搬送機構は、載置した切断刃を搬送面に沿って搬送して、そのままホルダの載置面に送り出す。特に、搬送路は、ホルダと同様にすくい角が付いた状態で配置されていると共に、搬送面と載置面とが面一となっている。そのため、すくい角が予め付いた状態で切断刃を載置面に送り出すことができる。従って、切断刃を円滑にホルダに受け渡すことができる。
特に、この搬送面に沿って吸着手段が設けられているので、切断刃は搬送中に重力の影響を受けてずれ落ちることがなく、姿勢が保持されて安定した状態となっている。そのため、すくい角が付いた状態で切断刃を確実に載置面に送り出すことができる。また、搬送路を介して切断刃をホルダの載置面に対して確実に搬送することができるので、収納ケースの位置に関係なく、ホルダを自由な位置に配置することができる。従って、設計の自由度を向上することができる。
本発明に係る自動薄切装置によれば、所定のすくい角が予め付いた状態で自動的に切断刃を交換しながら包埋ブロックを薄切して薄切片を作製することができ、従来負担であった作業者による切断刃の交換作業をなくして、作業者にかかる負担を極力低減することができる。また、常に切れ味の良い切断刃で薄切を行えるので、高品質な薄切片を作製することができる。更に、刃先の突出量を同じ状態にしながら切断刃を交換することができるので、同じ品質の薄切片を連続的に作製することができる。
以下、本発明に係る自動薄切装置の一実施形態を、図1から図19を参照して説明する。この自動薄切装置は、図1に示すように、生体試料Sが包埋材Nによって包埋された包埋ブロックBを、所定のすくい角θが付いた状態で薄切(例えば、3μm〜5μmの極薄に薄切)して薄切片Mを作製する装置である。
なお、包埋ブロックBは、ホルマリン固定された生体試料S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィン等の包埋剤Nによってブロック状に固めたものである。これにより、生体試料Sがパラフィン内に包埋された状態となっている。また、生体試料Sとしては、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野等で適時選択されるものである。また、本実施形態では、包埋ブロックBが箱状に形成されたカセットK上に固定されているものとして説明する。
また、作製された薄切片Mは、その後、水やお湯等の液体状に浮かべて、薄切時に生じた皺やカール等の歪みを除去する伸展工程を経た後、スライドガラス等の基板Gに掬い取られる。そして、伸展時に付着した水分を乾燥させることで、図2に示す薄切片標本Pとなる。
本実施形態の自動薄切装置1は、図3に示すように、切断刃2と、該切断刃2を着脱自在に固定するホルダ3と、該ホルダ3に切断刃2を搬送する搬送手段4と、包埋ブロックBとホルダ3とを相対的に移動させて包埋ブロックBから薄切片Mを切り出させる移動手段5と、これら各構成品を総合的に制御する制御部6と、を備えている。
包埋ブロックBは、カセットKを介して薄切片Mの厚みを調整するZステージ10上に取り付けられている。また、このZステージ10は、ガイドレール11に沿って移動する移動ステージ12上に取り付けられている。ガイドレール11は、水面に取り付けられており、切断刃2に向かうX方向に延びている。この際、ガイドレール11は、切断刃2を越えた反対側にまで延びた状態となっている。移動ステージ12は、図示しないモータ等の駆動源によって、ガイドレール11上を往復移動するようになっている。また、Zステージ10は、内部に図示しないピエゾ素子が組み込まれており、電圧が印加されることで鉛直なZ方向に一定量上昇するように高さ制御されている。この際、Zステージ10は、移動ステージ12がガイドレール11を1往復する毎に、一定量だけ上昇するように制御部6に制御されている。
これにより、包埋ブロックBは、移動ステージ12の移動に伴って切断刃2に向けて移動して、該切断刃2によって切断されるようになっている。この際、Zステージ10によって高さ制御されているので、所定の厚み(例えば、5μm)で表面が薄切される。その結果、図1に示すシート状の薄切片Mが作製される。なお、移動ステージ12の往復移動と、該往復移動に同期したZステージ10の上昇とによって複数枚の薄切片Mを次々と作製することが可能である。
上述したガイドレール11、移動ステージ12及びZステージ10は、包埋ブロックBとホルダ3とを相対的に移動させ、後述する第1の押さえプレート(第1の押さえ部材)22或いは第2の押さえプレート(第2の押さえ部材)23で押さえ付けられた切断刃2により包埋ブロックBを薄切して薄切片Mを切り出させる移動手段5として機能している。
なお、本実施形態では、切断刃2に対して包埋ブロックB側を移動させる構成としたが、この場合に限られるものではない。例えば、包埋ブロックB側を固定し、該包埋ブロックBに対してホルダ3側を移動させても構わないし、包埋ブロックB側とホルダ3側とを共に移動させるように移動手段5を構成しても構わない。いずれにしても、包埋ブロックBとホルダ3とを、相対的に移動させるように構成すれば構わない。
また、本実施形態では、内部にピエゾ素子を組み込んだZステージ10を例にしているが、この場合に限られず、移動ステージ12と同様にモータ等の駆動源で移動するように構成しても構わない。
上記切断刃2は、図4及び図5に示すように、一端側が刃先2aとされた長尺な磁性体の切断刃2である。また、この切断刃2には、間隔を空けて楕円状の貫通孔2bが2つ形成されている。なお、本実施形態では、刃先2aが両刃となっている切断刃2を例にしている。また、この切断刃2のサイズの一例としては、長さLが80mm、幅Wが8mm、厚さTが0.25mmである。このように構成された切断刃2は、後述する収納ケース30内に多段に積層された状態で収納されている。これについては、後に詳細に説明する。
上記ホルダ3は、図6から図8に示すように、包埋ブロックBの表面に平行な水平面に対して所定のすくい角θ(例えば、27°前後)が付いた状態で配置されており、下側プレート20と、上側プレート21と、第1の押さえプレート22と、第2の押さえプレート23とで主に構成されている。
下側プレート20は、先端側が幅広となった平面視略T型に形成されている。そして、下側プレート20の先端には、刃先2aが外側に露出しながら複数枚の切断刃2が一列に並んだ状態で載置される載置面20aが形成されている。本実施形態では、同時に4枚の切断刃2が載置されるようになっている。
また、下側プレート20には、載置面20aに隣接した状態で該載置面20aに沿ってシート板24が接合されている。そして、このシート板24の端面には、間隔を空けて複数の磁石(吸着手段)25が埋め込まれて固定されている。この磁石25は、載置面20aに載置された切断刃2の基端側(刃先2aと逆側)を磁力により吸着して、切断刃2の姿勢を保持している。この複数の磁石25により、切断刃2は常に基端側がシート板24の端面に密着した状態で載置されるようになっている。
なお、本実施形態では、1つの切断刃2を常に3つ或いは4つの磁石25によって吸着できるように、磁石25の数及びその間隔が調整されている。
第1の押さえプレート22及び第2の押さえプレート23は、互いに隣接した状態で下側プレート20の略中央付近に設けられている。これら両押さえプレート22、23は、載置面20aに一列に並んで載置された複数の切断刃2のうち、所定位置に位置した切断刃2を載置面20aに押さえ付けて固定している。
第1の押さえプレート22を具体的に説明すると、図6及び図7に示すように、下側プレート20に固定されたシャフト26に回転自在に連結されている。また、第1の押さえプレート22の一端側は、下側プレート20との間に介在されたコイルバネ27によって付勢されている。第1の押さえプレート22は、このコイルバネ27によるバネ力を受けて、シャフト26を中心に回転して先端側が載置面20aに向けて押されるようになっている。その結果、上述したように、切断刃2を載置面20aに押し付けて固定している。
また、この第1の押さえプレート22は、制御部6の指示を受けて作動する図示しないロッドによって一端側がコイルバネ27に抗する力で押されるようになっている。これにより、先端側がシャフト26を中心に逆方向に回転して、適宜切断刃2の押し付けが解除されるようになっている。この第1の押さえプレート22で押さえ付けられた切断刃2は、包埋ブロックBを薄切する際に用いられるもので、本削り用の切断刃2として使用される。
なお、第2の押さえプレート23は、第1の押さえプレート22と同様の構成であるので、説明を省略する。また、第2の押さえプレート23で押さえ付けられた切断刃2は、包埋ブロックBを薄切する際に用いられるもので、粗削り用の切断刃2として使用される。
上側プレート21は、図6及び図8に示すように、第1の押さえプレート22及び第2の押さえプレート23の両側において、下側プレート20に重ね合わされるプレートであって、切断刃2の厚さより若干大きな隙間を空けた状態で載置面20aに対向する対向面21aを先端に有している。そして切断刃2は、この隙間に収納された状態で載置されている。また、上側プレート21には、図6に示すように、切断刃2の貫通孔2bと略同じ幅の溝部21bが、端部から載置面20aに沿ってそれぞれ形成されている。
また、第1の押さえプレート22、第2の押さえプレート23、上側プレート21及び下側プレート20は、図7及び図8に示すように、共に先端側が斜めにカットされており、切断刃2の刃先2aに向かって徐々に先鋭化した形になっている。
このように構成されたホルダ3は、制御部6の指示を受けてX方向に延びるガイドレール11に対して、所定の引き角(例えば、70°)傾いた方向にスライド移動するように構成されている。具体的には、第1の押さえプレート22で押さえ付けられた切断刃2と、第2の押さえプレート23で押さえ付けられた切断刃2とが、移動ステージ12によって移動する包埋ブロックBの軌跡上に位置するようにスライド移動するようになっている。これにより、切断刃2を選択しながら包埋ブロックBを粗削りしたり、本削りしたりできるようになっている。この際制御部6は、粗削り用の切断刃2で包埋ブロックBを粗削りした後に、本削り用の切断刃2で包埋ブロックBを本削りするように、ホルダ3のスライド移動を制御している。
上記搬送手段4は、ホルダ3の載置面20aに対して複数の切断刃2を1枚ずつ順次送り出すように搬送して、載置面20aに一列に並んだ切断刃2をスライド移動させるものであって、図9に示すように、収納ケース30と、収納ケース30とホルダ3との間にすくい角θが付いた状態で配置され、ホルダ3の載置面20aに面一とされて切断刃2が搬送される搬送面41aを有する搬送路40と、収納ケース30から切断刃2を1枚ずつ搬出して搬送面41aに一旦載置すると共に、搬送面41aに沿って切断刃2を搬送して載置面20aに送り出す搬送機構50とを、備えている。
収納ケース30は、図10から図12に示すように、複数の切断刃2を多段に積層した状態で内部に収納している。具体的に説明すると、収納ケース30は、ケース本体31と、該ケース本体31から切断刃2を1枚だけ取り出すためのレバー部32とで構成されている。ケース本体31は、略直方体状に形成されており、上面には長手方向に沿って長溝31aが形成されている。また、内部に収納された切断刃2は、ケース本体31の底部に設けられた図示しない付勢手段により上面側に常に付勢されている。また、ケース本体31の一方の側面には、長手方向に沿ってガイド溝31bが対向した状態で形成されている。更に、ケース本体31の側面には、切断刃2が通過する図示しない開口部が形成されており、ケース本体31に収納されている切断刃2のうち1番上方に位置する切断刃2がこの開口部を通って外側に搬出されるようになっている。
上記レバー部32は、断面略コ形状に形成されており、爪部32aが一対のガイド溝31bに嵌った状態でケース本体31の上面に被さっている。そしてレバー部32は、爪部32aがガイド溝31bにガイドされた状態でケース本体31の長手方向に移動自在とされている。また、レバー部32には、ケース本体31の上面に形成された長溝31a内に入り込む突起部32bが形成されている。この突起部32bは、ケース本体31に収納された複数の切断刃2のうち1番上方に位置する切断刃2にのみに接触するように長さが調整されている。これにより、レバー部32を移動させることで、1番上方に位置する切断刃2のみを押しだして、ケース本体31に形成された上記開口部からケース本体31の外側に搬出することができるようになっている。
このように構成されたケース本体31は、すくい角θが付いた状態で、即ち、上面と包埋ブロックBの表面に平行な水平面とのなす角度がすくい角θとなるように傾いた状態で、図示しない架台によって固定されている。
上記搬送路40は、図13から図15に示すように、下側プレート41と、該下側プレート41に重なるように接合された上側プレート42とで構成されている。そして下側プレート41の上面の一部が、上記搬送面41aとされている。また、下側プレート41には、搬送面41aに隣接した状態で該搬送面41aに沿ってシート板43が接合されている。そして、このシート板43の端面には、間隔を空けて複数の磁石25が埋め込まれて固定されている。この磁石25は、搬送面41aに載置された切断刃2の基端側(刃先2aと逆側)を磁力により吸着して、切断刃2の姿勢を保持している。この複数の磁石25により、切断刃2は常に基端側がシート板42の端面に密着した状態で載置されるようになっている。また、搬送面41aには、長手方向に沿って後述する第2の搬送レバー52の先端部52aが入り込む溝部41bが形成されている。この溝部41bは、切断刃2の貫通孔2bの幅よりも若干大きな幅で形成されている。
上側プレート42は、下側プレート41の全体に亘って重ね合わされている。また、下側プレート41に対向する対向面42aには、重ね合わせた時に切断刃2を収納する空間を作り出す凹部42bが長手方向に亘って形成されている。これにより切断刃2は、この空間内に収納された状態で搬送面41aに載置されると共に、搬送されるようになっている。また、上側プレート42にも、下側プレート41と同様に、後述する第2の搬送レバー52の先端部52aが入り込む貫通溝42cが長手方向に沿って形成されている。
このように構成された搬送路40は、上述したようにすくい角θが付いた状態で、即ち、搬送面41aと包埋ブロックBの表面に平行な水平面とのなす角度がすくい角θとなるように傾いた状態で、後述する搬送機構50の基礎プレート53上に固定されている。この際、搬送路40は、搬送面41aが収納ケース30に収納されている1番上方の切断刃2の底面と面一になると共に、ホルダ3の載置面20aと面一になるように位置が調整されている。
上記搬送機構50は、図16から図19に示すように、第1の搬送レバー51及び第2の搬送レバー52を備えており、これら両搬送レバー51、52を利用して、収納ケース30から切断刃2を1枚搬出すると共に、搬出した切断刃2を搬送面41aに沿って搬送して、ホルダ3の載置面20aに送り出している。この際、搬送機構50は、第1の搬送レバー51を用いて収納ケース30から搬送面41aに切断刃2の搬出を行っていると共に、第2の搬送レバー52を用いて搬出された切断刃2を搬送面41aに沿って搬送して載置面20aに送り出している。このように搬送機構50は、2つの搬送レバー51、52を適宜使い分けながら、切断刃2の搬送を行っている。
詳細に説明すると、まず搬送路40が固定されている基礎プレート53上には、搬送路40に対して平行にガイドレール54が固定されている。そして、このガイドレール54には、該ガイドレール54に沿って移動可能なリニアガイド55が固定されている。また、リニアガイド55には、移動プレート56が固定されている。
また、基礎プレート53には、一対のプーリ57、58が固定されており、これら一対のプーリ57、58には搬送ベルト59が巻回されている。この際、ガイドレール54に平行な方向に搬送ベルト59が移動するように、一対のプーリ57、58の位置が調整されている。また、一対のプーリ57、58のうち一方のプーリ57は、駆動モータ60に連結されており、駆動モータ60の作動に伴って回転するようになっている。これにより、搬送ベルト59は、ガイドレール54に対して平行な方向に往復移動されるようになっている。
そして移動プレート56は、この搬送ベルト59に連結されており、搬送ベルト59の移動に伴って往復移動するようになっている。この際移動プレート56は、リニアガイド55を介してガイドレール54にガイドされているので、がたつき等がなく滑らかに移動するようになっている。なお、移動プレート56が一方のプーリ57に最も接近している位置(図16に示す状態)を初期位置として、以下説明する。
移動プレート56の一端面には、2つの駆動モータ61、62が固定されている。この2つの駆動モータ61、62の出力軸61a、62aは、移動プレート56を貫通して該移動プレート56の他端面側に位置するカムプレート63、64に接続されている。このカムプレート63、64は、出力軸61a、62aの軸線Lからの距離が変化するように外形が形成されたプレートである。つまり、カムプレート63、64は、偏芯しながら出力軸61a、62aの軸線L回りに回転するようになっている。また、2つのカムプレート63、64上には、第1のLアングル65と第2のLアングル66とがそれぞれ回転ローラ67、68を介して乗った状態になっている。この回転ローラ67、68は、両Lアングル65、66に対してそれぞれ回転可能に固定されている。
よって、駆動モータ61、62が作動してカムプレート63、64が偏芯しながら回転すると、回転ローラ67、68を介して両Lアングル65、66が直線的に移動するようになっている。つまり、カムプレート63、64及び回転ローラ67、68は、駆動モータ61、62の回転力を直線運動に変換する変換機構としてそれぞれ機能している。
また、両Lアングル65、66には、移動プレート56の他端面側に固定されたガイドレール70に沿って移動するリニアガイド71が取り付けられている。そのため、両Lアングル65、66は、カムプレート63、64の回転に伴って、ガイドレール70にガイドされながら滑らかに直線移動するようになっている。
しかも、2つのLアングル65、66は、2つの駆動モータ61、62の作動によりそれぞれ別々に直線移動するようになっている。但し、ガイドレール54に平行な方向の移動に関しては、2つのLアングル65、66は移動プレート56の移動に伴って同時に移動するようになっている。
2つのLアングル65、66のうち第1のLアングル65には、上述した第1の搬送レバー51が固定されている。この搬送レバー51は、板状に形成されたものであり、移動プレート56が初期位置に位置している状態で第1のLアングル65が最下点に位置(搬送路40に最も接近した位置)したときに、収納ケース30のレバー部32に引っかかる位置まで下降するようになっている。そして、この状態で搬送ベルト59と共に移動プレート56を移動させることで、第1のLアングル65及び第1の搬送レバー51を介してレバー部32を押しながら移動させることができ、ケース本体31から切断刃2を1枚搬出することができるようになっている。なお、搬出された切断刃2は、搬送路40の搬送面41aに載置された状態となる。
一方、2つのLアングル65、66のうち第2のLアングル66には、上述した第2の搬送レバー52が先端に固定された直線プレート72が固定されている。この直線プレート72は、移動プレート56が初期位置に位置しているときに、搬送面41aに載置された切断刃2の貫通孔2bの上方に第2の搬送レバー52が位置するように長さが調整されている。また、第2の搬送レバー52は、基端側が円柱状に形成されていると共に、先端部52aが切断刃2の貫通孔2b内を貫通できるように、絞り加工されている。
この第2の搬送レバー52は、第2のLアングル66が最下点に位置したときに、図15に示すように、先端部52aが上側プレート42の貫通溝42c内に入り込みながら切断刃2の貫通孔2bを貫通するようになっている。この際、第2の搬送レバー52の先端部52aは、下側プレート41の溝部41b内まで入り込んでいる。よって、第2の搬送レバー52の先端部52aは、搬送路40に接触することなく、切断刃2の貫通孔2bに嵌った状態となっている。そして、図16に示すように、この状態で搬送ベルト59と共に移動プレート56を移動させることで、第2のLアングル66、直線プレート72及び第2の搬送レバー52を介して切断刃2を移動させることができ、搬送面41aに沿って搬送を行うことができるようになっている。
また、切断刃2は、図9に示すように、この搬送によって搬送路40からホルダ3の載置面20aに送り出される。この際、第2の搬送レバー52の先端部52aは、ホルダ3の上側プレート21に形成された溝部21bに入り込んだ状態となる。そのため、切断刃2を確実にホルダ3の載置面20aに搬送できるようになっている。
上述したように搬送手段4は、搬送機構50の第1の搬送レバー51及び第2の搬送レバー52を適宜使い分けながら、収納ケース30から1枚ずつ切断刃2を搬出すると共に、搬送面41aに沿って搬送させた後、ホルダ3の載置面20aに送り出している。また、これらの動作を繰り返すことで、切断刃2を1枚ずつ順次載置面20aに送り出すことができ、切断刃2をスライド移動させながら載置面20aに一列に並べることができるようになっている。
また、上述した搬送手段4は、制御部6によって作動が制御されている。つまり、プーリ57を駆動する駆動モータ60、2つのLアングル65、66をそれぞれ直線移動させるための駆動モータ61、62は、共に制御部6によって作動が制御されている。
この際、制御部6は、移動手段5による薄切が所定回数終了すると、搬送手段4の各駆動モータ60、61、62を作動させて新たな切断刃2を搬送することで、薄切に使用した切断刃2をスライド移動による交換を行うようにプログラミングされている。これについては、後に詳細に説明する。
次に、このように構成された自動薄切装置1を利用して、包埋ブロックBから薄切片Mを作製する場合について説明する。
始めに初期状態として、包埋ブロックBは、カセットKを介して移動ステージ12上に固定されていると共に、Zステージ10によって最適な高さ調整がなされているものとする。また、収納ケース30には、複数枚の切断刃2が多段に積層された状態で収納されているものとする。また、搬送機構50の2つのLアングル65、66は、共に最上点(搬送路40から最も離間した位置)に位置しているものとする。更に、移動プレート56は、初期状態に位置しているものとする。
このような初期状態のもと、包埋ブロックBの薄切を開始する。
まず、制御部6は、駆動モータ61を作動させてカムプレート63を半回転回転させる。これにより、図18に示すように、第1のLアングル65は、回転ローラ67を介して直線的に移動して最上点から最下点に移行する。そのため、第1のLアングル65に固定されている第1の搬送レバー51が、収納ケース30のレバー部32に引っかかる位置まで下降した状態となる。この際、ガイドレール70に沿って第1のLアングル65が滑らかに移動するので、第1の搬送レバー51も同様にガタ等がなく滑らかに移動する。
続いて、制御部6は、駆動モータ60を作動させてプーリ57を回転させる。すると、搬送ベルト59と共に移動プレート56がホルダ3に向かって移動する。これにより、図17に示すように、第1のLアングル65に固定された第1の搬送レバー51を移動させることができ、収納ケース30のレバー部32を搬送路40に向かって移動させることができる。すると、ケース本体31内に収納されている複数の切断刃2のうち、1番上方に位置している切断刃2がレバー部32の突起部32bに押されて、開口部を介してケース本体31の外側に押し出される。
このように、搬送機構50は、収納ケース30から切断刃2を1枚搬出すると共に、搬出した切断刃2を搬送路40の搬送面41aに一旦載置する。
切断刃2を1枚搬出すると、制御部6は駆動モータ61を再度作動させて、カムプレート63をさらに半回転させる。すると、第1のLアングル65は、回転ローラ67を介して直線的に移動して、最下点から最上点に移行する。これにより、第1の搬送レバー51は、元の位置に戻り、第1の搬送レバー51との当接が解かれる。
続いて制御部6は、駆動モータ60を作動させて搬送ベルト59及び移動プレート56を逆方向に移動させ、図16に示すように、搬送面41aに載置された切断刃2の貫通孔2bの上方に第2の搬送レバー52を位置させる。
続いて制御部6は、駆動モータ62を作動させてカムプレート64を半回転させる。これにより、図19に示すように、第2のLアングル66は、先ほど作動した第1のLアングル65と同様に、回転ローラ68を介して直線的に移動して、最上点から最下点に移行する。そのため、直線プレート72を介して第2のLアングル66に固定された第2の搬送レバー52の先端部52aが、上側プレート42の貫通溝42cに入り込みながら切断刃2の貫通孔2bを貫通する。なお、第2の搬送レバー52の先端部52aは、下側プレート41の溝部41b内にも一部が入り込んだ状態となっている。
続いて制御部6は、先程と同様に駆動モータ60によりプーリ57を回転させ、搬送ベルト59と共に移動プレート56をホルダ3に向かって移動させる。これにより、第2のLアングル66に固定された第2の搬送レバー52を移動させることができる。この際、第2の搬送レバー52が切断刃2の貫通孔2bの端面を押しながら移動するので、該切断刃2を搬送面41aに沿って搬送してそのままホルダ3の載置面20aに送り出すことができる。特に、搬送路40は、ホルダ3と同様にすくい角θが付いた状態となっていると共に、搬送面41aと載置面20aとが面一になっている。そのため、すくい角θが予め付いた状態で切断刃2を載置面20aに送り出すことができる。
しかも、搬送路40には、搬送面41aに沿って複数の磁石25が設けられているので、切断刃2は搬送面41aに載置された瞬間からホルダ3側に送り出されるまで、基端側が磁力により吸着されている。そのため、切断刃2は、搬送中に重力の影響を受けてずれ落ちることがなく、姿勢が保持されて安定した状態となっている。よって、すくい角θが付いた状態で切断刃2を確実に載置面20aに送り出すことができる。また、基端側が磁石25によって吸着されているので、搬送中に刃先2aが上側プレート42に接触することがない。そのため、切断刃2の品質を維持した状態でホルダ3側に送り出すことができる。
また、ホルダ3の載置面20aに送り出された切断刃2は、図6及び図8に示すように、刃先2aが露出した状態で載置されている。しかも、切断刃2は、搬送路40の場合と同様に、載置面20aに沿って設けられた複数の磁石25によって基端側が吸着された状態となっている。従って、ホルダ3がすくい角θの付いた状態で斜めになっていても、同様に重力の影響を受けて載置面20a上をずれ落ちることがなく、姿勢が安定している。
制御部6は、上述したように1枚目の切断刃2をホルダ3の載置面20aに搬送した後、同様の動作を搬送手段4に行わせて、2枚目の切断刃2を載置面20aに搬送させる。すると、最初に搬送された切断刃2は、次に搬送された切断刃2に押されるので、載置面20aに沿って移動する。つまり切断刃2は、載置面20aを一列に並んだ状態でスライド移動する。
また、切断刃2は単に載置面20aに載置されているだけでなく、上側プレート21と下側プレート20とで作り出される空間内に収納された状態で載置されている。そのため、2枚目の切断刃2が最初の切断刃2を押すときに、最初の切断刃2の上に乗り上がってしまうことがない。従って、確実に最初の切断刃2を押して、スライド移動させることができる。
そして、スライド移動した切断刃2が載置面20aの所定位置に位置すると、図7に示すように、第1の押さえプレート22によって載置面20aに押さえ付けられて強固に固定される。これにより、この押さえ付けた切断刃2を、本削り用の切断刃2として用いることができる。しかも、磁石25によって姿勢が安定した状態でスライド移動してきた切断刃2を押さえ付けているので、ホルダ3から露出する刃先2aの突出量は決められた値となっている。
次いで、切断刃2を固定すると、図3に示すように制御部6は移動ステージ12をガイドレール11に沿って移動させる。これより、押さえ付けた本削り用の切断刃2により包埋ブロックBを薄切することができる。これにより、包埋ブロックBから薄切片Mを作製することができる。しかも、所定のすくい角θが付いた切断刃2で薄切できるので、滑らかに薄切を行うことができる。加えて、上述したように、刃先2aの突出量が決められた値に維持されているので、高品質な薄切片Mを作製することができる。
また、この薄切が所定回数終了すると、制御部6は図示しないロッドを作動させて、第1の押さえプレート22の一端側をコイルバネ27に抗する力で押す。これにより、切断刃2の押し付けを解除することができる。また、これと同時に制御部6は、搬送手段4を作動させて新たな切断刃2を載置面20aに搬送させる。これにより、既に載置面20aに載置されていた切断刃2は、新たな切断刃2に押されてスライド移動する。そして、新たな切断刃2が所定位置に位置すると、この切断刃2を第1の押さえプレート22が再度押さえ付けて、次の本削り用の切断刃2とする。
このように、薄切を所定回数行う毎に、切断刃2の交換を自動的に行うことができる。従って、作業者の手を煩わせることなく切断刃2の交換を行うことができ、作業者にかかる負担を極力低減することができる。また、常に切れ味の優れた切断刃2を使用して薄切を行えるので、高品質な薄切片Mを作製することができる。
また、交換した切断刃2に関しても、刃先2aの突出量が先程と同様に決められた値となっている。従って、刃先2aのばらつきをなくしながら切断刃2を交換することができる。そのため、切断刃2を交換しても、常に同じ条件で包埋ブロックBを薄切することができ、同じ品質の薄切片Mを連続的に作製することができる。
ところで、搬送手段4により、先程薄切に使用された本削り用の切断刃2がスライド移動してくると、第2の押さえプレート23がこの切断刃2を再度載置面20aに押さえ付けて強固に固定する。これにより、一度薄切に使用された切断刃2を、粗削り用の切断刃2として用いることができる。
例えば、包埋ブロックBを新たなものに交換した場合には、本削りの前に粗削りを行う。この場合には、まず制御部6は、包埋ブロックBが移動してくる軌跡上に粗削り用の切断刃2が位置するようにホルダ3を移動させて位置を調整する。そして、移動ステージ12をガイドレール11に沿って移動させて、粗削り用の切断刃2で包埋ブロックBの粗削りを複数回行う。そして、粗削りが終了した後、制御部6は、包埋ブロックBが移動してくる軌跡上に本削り用の切断刃2が位置するようにホルダ3を再度移動させて位置を調整する。これにより、粗削りが終了した包埋ブロックBを本削りして、薄切片Mを作製することができる。
このように、本削りで使用した切断刃2を粗削り用の切断刃2として再利用できるので、切断刃2を無駄に交換するのではなく、有効に利用しながら交換を行うことができる。従って、ランニングコストを抑えることができる。
なお、交換された切断刃2は、図示しない回収機構によってホルダ3の載置面20aから搬出された後、廃棄される。この際、ホルダ3の上側プレート21には溝部21bが形成されているので、回収機構はこの溝部21bを介して切断刃2の貫通孔2b内に入り込んで、切断刃2を回収することも可能である。
上述したように本実施形態の自動薄切装置1によれば、所定のすくい角θが予め付いた状態で自動的に切断刃2を交換しながら包埋ブロックBを薄切して薄切片Mを作製することができる。従って、従来負担であった作業者による切断刃2の交換作業をなくして、作業者にかかる負担を極力低減することができる。また、常に切れ味の良い切断刃2で薄切を行えるので、高品質な薄切片Mを作製することができる。更に、刃先2aの突出量を同じ状態にしながら切断刃2を交換することができるので、同じ品質の薄切片Mを連続的に作製することができる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、複数の磁石25を利用して切断刃2を吸着するように構成したが、1枚の帯状の磁石を載置面20a及び搬送面41aに沿って設けても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。また、磁石25による磁力を利用して切断刃2を吸着する構成としたが、磁石25に限定されるものでない。例えば、複数の吸引ノズルで吸着手段を構成し、切断刃2を吸引力で吸着するようにしても構わない。但し、本実施形態の自動薄切装置1によれば、磁石25という簡単で安価な構成で吸着手段を構成できるので、構成の単純化及び低コスト化を図ることができ、より好ましい。
また、収納ケース30、搬送路40及び搬送機構50からなる搬送手段4により、切断刃2をホルダ3に搬送した構成にしたが、例えば、切断刃2を把持しながら自由に搬送可能な多関節型のハンドロボットからなる搬送手段により切断刃2を1枚ずつホルダ3の載置面20aに搬送しても構わない。但し、本実施形態のように構成することで、予めすくい角θが付いた状態で切断刃2をホルダ3に搬送できるので、切断刃2の受け渡しをスムーズに行うことができる。特に、搬送路40を介して切断刃2をホルダ3の載置面20aに対して確実に搬送できるので、収納ケース30の位置に関係なくホルダ3を自由な位置、例えば、できるだけ包埋ブロックBに近い位置等に配置することができる。従って、設計の自由度を向上することができる。
本発明に係る自動薄切装置により包埋ブロックから薄切片が作製される状態を示す斜視図である。 図1に示す薄切片がスライドガラス上に固定された薄切片標本となった状態を示す斜視図である。 本発明に係る自動薄切装置の一実施形態を示す簡略構成図である。 図3に示す自動薄切装置で用いられる切断刃の上面図である。 図4に示す切断刃の側面図である。 図3に示す自動薄切装置を構成するホルダの上面図である。 図6に示すホルダの断面矢視A−A図である。 図6に示すホルダの断面矢視B−B図である。 図3に示す自動薄切装置を構成するホルダ及び搬送手段の上面図である。 図9に示す搬送手段を構成する収納ケースの側面図である。 図10に示す収納ケースの上面図である。 図10に示す収納ケースの正面図である。 図9に示す搬送手段を構成する搬送路の上面図である。 図13に示す状態から上側プレートを取り外した状態を示す図である。 図13に示す搬送路の断面図である。 図9に示す搬送手段を構成する搬送機構の上面図である。 図16に示す搬送機構の側面図である。 図16に示す搬送機構の断面矢視C−C図である。 図16に示す搬送機構の断面矢視D−D図である。
符号の説明
B 包埋ブロック
M 薄切片
S 生体試料
θ すくい角
1 自動薄切装置
2 切断刃
2a 切断刃の刃先
3 ホルダ
4 搬送手段
5 移動手段
6 制御部
20a ホルダの載置面
22 第1の押さえプレート(第1の押さえ部材)
23 第2の押さえプレート(第2の押さえ部材)
25 磁石(吸着手段)
30 収納ケース
40 搬送路
41a 搬送路の搬送面
50 搬送機構

Claims (3)

  1. 生体試料が包埋された包埋ブロックを、所定のすくい角が付いた状態で薄切して薄切片を作製する自動薄切装置であって、
    一端側が刃先とされた長尺な切断刃と、
    前記包埋ブロックの表面に対して前記すくい角が付いた状態で配置されたホルダと、
    該ホルダの先端に設けられ、前記刃先が外側に露出しながら複数枚の前記切断刃が一列に並んだ状態で載置される載置面と、
    該載置面に沿って設けられ、載置面に載置された前記切断刃の基端側を吸着して切断刃の姿勢を保持する吸着部材と、
    前記ホルダに設けられ、前記載置面に一列に並んで載置された複数の前記切断刃のうち、所定位置に位置した切断刃を載置面に押さえ付けて前記薄切用の切断刃とする第1の押さえ部材と、
    前記載置面に対して複数の前記切断刃を1枚ずつ順次送り出すように搬送して、載置面に一列に並んだ切断刃をスライド移動させる搬送手段と、
    前記包埋ブロックと前記ホルダとを相対的に移動させ、前記第1の押さえ部材で押さえ付けられた前記切断刃により前記包埋ブロックを薄切して前記薄切片を切り出させる移動手段と、
    前記ホルダに設けられ、前記第1の押さえ部材に隣接して、前記薄切時に使用した前記切断刃を前記載置面に再度押さえ付けて粗削り用の切断刃とする第2の押さえ部材と、
    前記薄切が所定回数終了した後、前記搬送手段を作動させて薄切に使用した前記切断刃を前記スライド移動により前記第2の押さえ部材に搬送して交換させると共に、該切断刃を前記粗削り用の切断刃として再び使用させる制御部と、を備え、
    前記粗削り用の切断刃で前記包埋ブロックを粗削りした後、前記第1の押さえ部材で押さえ付けられた前記切断刃で前記前記薄切片を作製することを特徴とする自動薄切装置。
  2. 請求項1に記載の自動薄切装置において、
    前記吸着手段は、複数の磁石であり、磁力により前記切断刃の基端側を吸着することを特徴とする自動薄切装置。
  3. 請求項1又は2に記載の自動薄切装置において、
    前記搬送手段は、前記切断刃を複数収納する収納ケースと、
    収納ケースと前記ホルダとの間に前記すくい角が付いた状態で配置され、前記載置面に面一とされて前記切断刃が搬送される搬送面を有する搬送路と、
    前記収納ケースから切断刃を1枚ずつ搬出して前記搬送面に一旦載置すると共に、該搬送面に沿って切断刃を搬送して前記載置面に送り出す搬送機構と、を備え、
    前記吸着手段が、前記搬送面に沿って設けられ、搬送される前記切断刃の基端側を吸着して切断刃の姿勢を保持することを特徴とする自動薄切装置。
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