以下に、本発明の弾性表面波アクチュエータの実施形態について図1〜図15を用いて説明する。
(実施形態1)
本実施形態の弾性表面波アクチュエータ(SAWアクチュエータ)は、図1(a)に示すように、圧電基板2、及び該圧電基板2の表面に所定距離隔てて対向配置されるとともに圧電基板2に弾性表面波を発生させる一対の交差指電極3,4を備える固定子(ステータ)1と、圧電基板2の表面に載置されて前記弾性表面波により移動させられる移動子(スライダ)5と、移動子5を固定子1に所定の圧力Nで接触させる予圧手段(図示せず)とを具備している。そして、交差指電極3は、対向する交差指電極4が励振する弾性表面波を対向する交差指電極4側に反射するように構成され、交差指電極4は、対向する交差指電極3が励振する弾性表面波を対向する交差指電極3側に反射するように構成され、一対の交差指電極3,4の等価反射面間の距離は、交差指電極で励振される弾性表面波の半波長の整数倍に略等しい値に設定されている。
ここで、移動子5は、図1(b)に示すように、例えばシリコン等の硬質材料を用いて形成されており、略直方体状の本体5aと、固定子1からの推力を得やすくするために固定子1と対向する本体5aの面(本実施形態では下面)に突設された複数の突起5bとを一体に備えている。尚、突起5bは必ずしも必要なものではなく、要は、移動子5が固定子1からの推力を十分に得ることができればよい。
また、図示しない予圧手段としては、例えば、板ばねやスプリングコイル等の弾性体や、予め移動子5に設けた鉄等の磁性片を吸着する磁石等が用いられ、移動子5を圧力Nにて固定子1に接触させるように構成されている。
固定子1は、上記の圧電基板2と、第1交差指電極3と、第2交差指電極4とで構成されている。ここで、圧電基板2は、固定子1の下地材となるものであり、例えばLiNbO3(ニオブ酸リチウム)単結晶等の電気機械結合係数が高い圧電材料を用いて形成された矩形状の圧電結晶板である。尚、このような圧電基板としては、全てが圧電材料により形成されたものに限らず、非圧電材料の基板の表面にZnO等の圧電薄膜を形成したものを用いてもよい。
第1交差指電極3は、図1(a)に示すように、互いに異極となる一対の交差指3a,3bが所定間隔で複数対列設された形状の所謂櫛歯状電極(IDT、櫛形電極ともいう)であり、圧電基板2の表面の長手方向における一端側(図1(a)における左端側)に形成されている。また、第1交差指電極3の交差指3aは、スイッチSW1を介して外部の高周波電源AC1の一端に接続され、交差指3bは高周波電源AC1の他端に接続されている。そして、高周波電源AC1により第1交差指電極3に高周波電圧が印加された際には、第1交差指電極3の電気的エネルギーが機械的エネルギーに変換されて圧電基板2に弾性表面波(レイリー波)が励振される。一方、第2交差指電極4は、第1交差指電極3と同様に、互いに異極となる一対の交差指電極4a,4bが所定間隔で複数対列設された形状であり、図1(a)に示すように圧電基板2の表面の長手方向における他端側(図1(a)における右端側)に形成されて、交差指4aがスイッチSW2を介して高周波電源AC2の一端に接続され、交差指4bが高周波電源AC2の他端に接続されている。ここでは、これらのスイッチSW1,SW2が弾性表面波を発生させる交差指電極の切り換えを行う切換手段となっている。尚、図1において交差指電極3,4は簡略化して示してある。
ここで、第1交差指電極3と第2交差指電極4は、各交差指電極3,4の等価反射面間の距離が、各交差指電極3,4により励振される弾性表面波の半波長の略整数倍となるように圧電基板1の表面に対向配置されている。つまり、弾性表面波の波長をλ、等価反射面間の距離をDとすると、D≒nλ/2(n:整数)が成り立つように等価反射面間の距離Dを設定するのである。ここで、等価反射面とは、複数の交差指で徐々に弾性表面波を反射する交差指電極において、一面で弾性表面波を反射したと仮定した場合の面をいう。
上述したように等価反射面間の距離Dを設定することで、第1交差指電極3で励振されて第2交差指電極4へ向かう弾性表面波W1と、各交差指電極3,4で同回数反射されて第2交差指電極4へ向かう弾性表面波W3、W5、W7…W2n−1のいずれもが同一の位相を有するとともに、第2交差指電極4で反射されて第1交差指電極3へ向かう弾性表面波W2、W4、W6…W2nのいずれもが同一の位相を有するように設定している。
次に、各交差指電極3,4の設計方法について第1交差指電極3を例に挙げて説明する。第1交差指電極3は、同極の交差指3a,3a(又は交差指3b,3b)の間隔(ピッチ)lによって共振周波数が決定され、一対の異極の交差指3a,3bの組数mによって反射率の周波数特性が変化する。そのため、シミュレーションを行うことにより間隔lと組数mから交差指電極の共振周波数や、アドミタンス特性(コンダクタンス及びサセプタンス)、反射率の周波数特性を得ることができ、これにより所望の共振周波数や、反射率の周波数特性を有する交差指電極の設計を行える。
例えば、間隔l=132.64μm、組数m=20とした場合は、シミュレーション結果から、交差指電極の共振周波数(つまりはコンダクタンスのピーク)f0=28.9MHzとなり、この場合は、図2(a)に示すような反射率特性を有する交差指電極が得られ、この交差指電極は、周波数が28.9MHzの弾性表面波に対して約0.21の反射率を有していることがわかる。ここで、間隔lを大きくすると共振周波数が低くなり、これに伴なって反射率の周波数特性が全体的に低周波数側へシフトし、間隔lを小さくした際には共振周波数が高くなり、これに伴なって反射率の周波数特性が全体的に高周波数側へとシフトするため、反射率の周波数特性が所望の値に近くなるように間隔lを仮設定する。
間隔lの仮設定によって大まかな反射率の周波数特性を設定した後には、組数mを変化させることで反射率の大きさの設定を行う。図2(b)のグラフは、それぞれ組数mのみを異ならせた交差指電極の反射率特性を示しており、aは組数m=5、bは組数m=10、cは組数m=15、dは組数m=20、eは組数m=30で、それぞれの間隔lは132.64μmである。そして、このような組数mの値と反射率の最大値とをプロットすると、図2(c)に示すようなグラフが得られる。つまり、組数mを増やせば、反射率の最大値を大きくすることができ、組数mが30を越えると反射率が約1となることがわかる。また、図2(b)を参照すれば明らかなように、組数mを変化させた際には、反射率の最大値をとる周波数が徐々に低周波数側へシフトするため、反射率が最大値をとる周波数が所望の値からずれた際には、組数mを決定した後に、所望の周波数で反射率が最大になるように再度間隔lの設定を行い、最適な間隔lに設定し直すのである。
このように間隔l、組数mの設定を行うことで所望の共振周波数及び反射率の周波数特性を有する交差指電極3,4の設計を行うことができる。
以上述べた固定子1において、高周波電源AC1により第1交差指電極3に高周波電圧を印加してエネルギーPの弾性表面波W1を励振させた際には、固定子1には次のような波が生じることになる。尚、弾性表面波W1と同じ周波数の弾性表面波に対する第1交差指電極3の反射率をη(0<η≦1)、第2交差指電極4の反射率をγ(0<γ≦1)とし、また伝搬による弾性表面波の減衰は少ないため無視する。
すなわち、第1交差指電極3で励振された弾性表面波W1は、図1(a)に示すように、第2交差指電極4へ向かい、第2交差指電極4に到達すると弾性表面波W1の一部が第2交差指電極4により第1交差指電極3側へ反射されてエネルギーγPの弾性表面波W2となる。そして弾性表面波W2が第1交差指電極3に到達すると、第1交差指電極3により一部が第2交差指電極4側へ反射されてエネルギーγηPの弾性表面波W3となる。同様に、弾性表面波W3は、一部が第2交差指電極4で反射されてエネルギーγ2ηPの弾性表面波W4となって第1交差指電極3へ向い、以降、このような反射が繰り返される。
そして、上述したように弾性表面波W1、W3、W5、W7…W2n−1がそれぞれ同位相であり、弾性表面波W2、W4、W6、…W2nがそれぞれ同位相であるので、第1交差指電極3から第2交差指電極4へ向かう弾性表面波(つまりは進行波)WFのエネルギーPFは、弾性表面波W1、W3、W5、W7…W2n−1のエネルギーの総和となり、エネルギーPF=P{1+γη+(γη)2+(γη)3+…+(γη)2n−1}となる。また、第2交差指電極4から第1交差指電極3へ向かう弾性表面波(つまりは反射波)WRのエネルギーPRは、弾性表面波W2、W4、W6、…W2nのエネルギーの総和となり、エネルギーPR=γP{1+γη+(γη)2+(γη)3+…+(γη)2n−1}となる。ここで、n→∞とし、γη<1であるとすると、エネルギーPF、PRは次式のように表わすことができる。
また、固定子1に生じる波の全エネルギーPSは、進行波WFのエネルギーPFと反射波WRのエネルギーPRの合計となり、このうち移動子5の第1交差指電極3側への移動に寄与する固定子1の表面に沿った沿面方向のエネルギー(以下、進行波成分と称す)PHは、進行波WFのエネルギーPFと反射波WRのエネルギーPRとの差分となり、移動子5の移動に寄与しない固定子1の表面の面方向のエネルギー(以下、定在波成分と称す)PVは、全エネルギーPSと進行波成分PHとの差分となり、これらPS、PH、PVは次式のように表わすことができる。
一方、高周波電源AC2により第2交差指電極4に高周波電圧を印加してエネルギーPの弾性表面波を励振させた場合も同様の結果を得ることができる。この場合、第2交差指電極4で励振される弾性表面波と同じ周波数の弾性表面波に対する第1交差指電極3の反射率をη’(0<η’≦1)、第2交差指電極4の反射率をγ’(0<γ’≦1)とし、伝搬による弾性表面波の減衰は少ないため無視すると、固定子1に生じる波の全エネルギーPS’と、進行波成分PH’と、定在波成分PV’とは次式のように表わすことができる。
上記の数2,3から明らかなように、本実施形態の弾性表面波アクチュエータでは、上記の反射率η,η’,γ,γ’を調整することで、進行波成分PHと定在波成分PV並びに進行波成分PH’と定在波成分PV’の比率を設定することができる。
そして、本実施形態では、進行波WFのエネルギーPFが、反射波WRのエネルギーPRよりも大きくなるように、第2交差指電極4の反射率γを設定するのであるが、反射率γの設定は、上述したように交差指電極の間隔l及び組数mとを適宜設定することで行うことができる。また、反射率γは、進行波WFのエネルギーPFに対して、反射波WRのエネルギーPRが、0.5倍以上0.98倍以下となるように設定することが好ましく、このときの反射率γの値は、上記の数2を参照すると0.5≦γ≦0.98の範囲内の値とすればよい。この点は第1交差指電極3の反射率ηについても同様であり、反射率ηの値は、0.5≦η≦0.98の範囲内の値とすればよい。
次に、この弾性表面波アクチュエータの動作について説明する。まず、スイッチSW1をオンして高周波電源AC1から第1交差指電極3に高周波電圧を印加した際には、第1交差指電極3の電気的エネルギーによって圧電基板2に歪が生じ、これにより電気的エネルギーが機械的エネルギーに変換されて弾性表面波であるレイリー波が発生する。このレイリー波は、圧電基板2の表面(上面)を介して、第1交差指電極電極3から第2交差指電極4側へ伝搬し、数2に示すようなエネルギーを有する弾性表面波となる。そして、このような弾性表面波は、圧力Nに抗して移動子5を持ち上げることができる大きさの定在波成分PVを有しているので、移動子5に圧力Nがかけられていても移動子5が固定子1上を移動できるようにすることができ、しかも十分な大きさの進行波成分PHを有しているので、移動子5は、この弾性表面波の伝搬に伴う固定子1の微小振動から推力を得て、第1交差指電極3側へと移動することになる。
一方、スイッチSW1をオフし、スイッチSW2をオンして高周波電源AC2から第2交差指電極4に高周波電圧を印加した際には、第1交差指電極3と同様に圧電基板2に歪が生じ、これによりレイリー波が発生する。このレイリー波は、圧電基板2の表面(上面)を介して、第2交差指電極4から第1交差指電極3側へと伝搬し、数3に示すようなエネルギーを有する弾性表面波となる。そして、このような弾性表面波は、第1交差指電極3の場合と同様に、十分な大きさの定在波成分PV’と進行波成分PH’とを有していることにより、移動子5は、この弾性表面波の伝搬に伴う固定子1の微小振動から推力を得て、第2交差指電極4側へと移動する。
この後に、スイッチSW2をオフして高周波電源AC2からの電力供給を中止し、再びスイッチSW1をオンして高周波電源AC1の高周波電圧を第1交差指電極3に印加すると、数2に示す弾性表面波によって再び移動子5が固定子1上を第1交差指電極3側へ移動する。すなわち、本実施形態の弾性表面波アクチュエータでは、スイッチSW1,SW2のオンオフの切り換えによって、移動子5が固定子1の長手方向(左右方向)に反復移動することになる。
以上述べたように本実施形態の弾性表面波アクチュエータによれば、第1交差指電極3と第2交差指電極4と等価反射面間の距離Dを、各交差指電極3,4で発生される弾性表面波の半波長の略整数倍に等しい値とすることで、第1交差指電極3で励振されて第2交差指電極4へ向かう弾性表面波W1と、各交差指電極3,4で同回数反射されて第2交差指電極4へ向かう弾性表面波W3、W5、W7…W2n−1とが同一の位相を有するとともに、第2交差指電極4で励振されて第1交差指電極3へ向かう弾性表面波と、各交差指電極3,4で同回数反射されて第1交差指電極3へ向かう弾性表面波とが同一の位相を有しているので、同方向へ進む弾性表面波が同位相で重ね合わされ、これにより固定子1上に弾性表面波のエネルギーを蓄積することができ、結果として低電力であっても予圧手段の圧力Nに抗して移動子5を持ち上げることができる大きさの定在波成分PVを有する弾性表面波を移動子5に与えることができる。
また、弾性表面波アクチュエータによれば、各交差指電極3,4の反射率を各交差指電極3,4の間隔l及び組数mにより設定して、第1交差指電極3に高周波電圧を印加した際に、第1交差指電極3から第2交差指電極4へ向かう弾性表面波W1、W3、W5、W7…W2n−1の総エネルギーPFが、第2交差指電極から第1交差指電極3へ向かう弾性表面波W2、W4、W6、…W2nの総エネルギーよりも大きくなるので、第1交差指電極3により弾性表面波を励振させた際に、移動子5を十分な量のエネルギーを有する進行波成分PHにより移動させることができる。以上述べたように、本実施形態の弾性表面波アクチュエータでは、低電力であっても移動子5を確実に移動させることができるのである。尚、この点は、第2交差指電極4により弾性表面波を励振させた際でも同様である。また尚、上記の例では、各交差指電極3,4の反射率が所定値となるように、各交差指電極3,4の間隔l及び組数mの値が設定されているが、このような反射率の調整は、組数mの値を固定して間隔lの値のみを変更することで行ってもよいし、間隔lの値を固定して組数mの値のみを変更することで行ってもよい。
以上述べた本実施形態の弾性表面波アクチュエータでは、固定子1を固定することで、固定子1上を移動子5が移動する例について説明したが、逆に移動子5を固定することで、固定子1を移動させるようにしてもよい。また、固定子1の表面は平面に限られるものではなく、球面等の曲面であってもよい。
(実施形態2)
本実施形態の弾性表面波アクチュエータは、上記実施形態1の弾性表面波アクチュエータと同様に、固定子1と、移動子5と、予圧手段とを具備しているものの、同方向に進む弾性表面波の位相を調整する位相調整手段としてインダクタLからなる位相調整用電気回路部を備えている点で異なっている。尚、その他の構成は上記実施形態1と同様であるから、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
位相調整用電気回路部となるインダクタLは、図3(a)に示すように、第2交差指電極4の交差指4a,4b間に接続されている。このようにインダクタLを接続した場合、反射前の弾性表面波に対して反射後の弾性表面波の位相が遅れるので、弾性表面波のみかけの反射位置がREから左側(第1交差指電極3へ近付く方向)のRLへシフトしたとみなすことができる。つまり、インダクタLは、該交差指電極で弾性表面波を反射する際に、弾性表面波の位相をインピーダンスの値(特にリアクタンス成分の値に関与するインダクタンスの値)に応じて変化させるのである。
ここでインダクタLのインダクタンスの値による位相の遅れをφとすると、D及びθが、2D−φλ/2π=nλを満たすときに弾性表面波W1、W3、W5、W7…W2n−1をそれぞれ同位相にするとともに、弾性表面波W2、W4、W6、…W2nをそれぞれ同位相にすることができ、このときのみかけの反射位置RE,RL間の距離はφλ/4πとなる。尚、2D−φλ/2πの値は厳密な意味でnλの値に等しい必要はなく、おおよそ等しい値であればよい。
したがって、等価反射面間の距離Dが実施形態1で述べたD≒nλ/2(n:整数)を満たしていなくても、インダクタンスの値による位相の遅れφが、2D−φλ/2π=nλを満たすようなインダクタLを交差指電極に接続することによって、弾性表面波W1、W3、W5、W7…W2n−1をそれぞれ同位相にするとともに、弾性表面波W2、W4、W6、…W2nをそれぞれ同位相にすることができる。
以上述べたように、上記実施形態1では、各交差指電極3,4の等価反射面間の距離Dの値を各交差指電極3,4で励振する弾性表面波の波長λの半数の略整数倍の値とすることで、弾性表面波W1、W3、W5、W7…W2n−1がそれぞれ同位相になるとともに、弾性表面波W2、W4、W6、…W2nがそれぞれ同位相となるように設定しているのに対して、本実施形態では、インダクタLを接続することによって、弾性表面波W1、W3、W5、W7…W2n−1がそれぞれ同位相になるとともに、弾性表面波W2、W4、W6、…W2nがそれぞれ同位相となるように設定しているのである。
したがって、本実施形態の弾性表面波アクチュエータによれば、同方向に進む弾性表面波の位相を調整する位相調整手段としてインダクタLからなる位相調整用電気回路部を備えているので、第1交差指電極3で励振されて第2交差指電極4へ向かう弾性表面波W1と、各交差指電極3,4で同回数反射されて第2交差指電極4へ向かう弾性表面波W3、W5、W7…W2n−1とが同一の位相を有するとともに、第2交差指電極4で励振されて第1交差指電極3へ向かう弾性表面波と、各交差指電極3,4で同回数反射されて第1交差指電極3へ向かう弾性表面波とが同一の位相を有するようにすることが可能となり、これにより同方向へ進む弾性表面波が同位相で重ね合わされて、固定子1上に弾性表面波のエネルギーが蓄積され、結果として低電力であっても予圧手段の圧力Nに抗して移動子5を持ち上げることができる大きさの定在波成分PVを有する弾性表面波を移動子5に与えることができるという効果を奏する。
ところで、位相調整手段としては、上記のインダクタLに限られるものではなく、キャパシタCからなる位相調整用電気回路部を用いることができ、この場合、図3(b)に示すように、第2交差指電極4の交差指4a,4b間にキャパシタCを接続する。このようにキャパシタCを接続した場合、反射前の弾性表面波に対して反射後の弾性表面波の位相が進むことになるので、弾性表面波のみかけの反射位置がREから右側(第1交差指電極3から離れる方向)のRCへシフトしたとみなすことができる。つまり、キャパシタCは、インダクタLと同様に、該交差指電極で弾性表面波を反射する際に、弾性表面波の位相をインピーダンスの値(特にリアクタンス成分の値に関与するキャパシタンスの値)に応じて変化させるのである。
ここでキャパシタCのキャパシタンス値による位相の進みをψとすると、D及びψが、2D+ψλ/2π=nλを満たすときに弾性表面波W1、W3、W5、W7…W2n−1と弾性表面波W2、W4、W6、…W2nとをそれぞれ同位相とすることができ、このときのみかけの反射位置RE,RC間の距離はψλ/4πとなる。尚、2D+ψλ/2πの値は厳密な意味でnλの値に等しい必要はなく、おおよそ等しい値であればよい。
したがって、位相調整用電気回路部としてキャパシタCを用いることによっても、インダクタLを用いた場合と同様の効果を得ることができる。
(実施形態3)
実施形態1では、主に交差指電極3,4の反射率η,γを設定することにより、弾性表面波を発生している一方の交差指電極から弾性表面波を発生していない他方の交差指電極へ向かう弾性表面波の総エネルギーPFが、前記他方の交差指電極で反射されて前記一方の交差指電極へ向かう弾性表面波の総エネルギーPRよりも大きくなるように設定していたが、本実施形態では、図4(a)に示すように各交差指電極の反射率γに加えて、予圧手段により移動子5に与えられる圧力Nを用いていることに特徴がある。その他の構成は実施形態1と同様であるので、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。また、図4(a)では、交差指電極3,4は簡略化して示し、高周波電源AC1,AC2及びスイッチSW1,SW2は省略している。
すなわち、移動子5が接触された部位を弾性表面波が通過した際には、圧力Nによって弾性表面波のエネルギーが減衰されるので、移動子5にかかる圧力Nと、弾性表面波の透過率とは、図4(b)のグラフに示すようになる。すなわち、圧力Nの増加に伴い、弾性表面波の透過率が減少することになるのである。
ここで、固定子1において、高周波電源AC1により第1交差指電極3に高周波電圧を印加してエネルギーPの弾性表面波W1を励振させた際に、移動子5にかけられた圧力Nによる弾性表面波の減衰率α(0<α<1)を考慮すると、固定子1には次のような波が生じることになる。尚、弾性表面波W1と同じ周波数の弾性表面波に対する第1交差指電極3の反射率をη(0<η≦1)、第2交差指電極4の反射率をγ(0<γ≦1)とし、また固定子1上での弾性表面波の減衰は少ないため無視する。
すなわち、第1交差指電極3で励振された弾性表面波W1は、図4(a)に示すように、第2交差指電極4へ向かう途中に、移動子5にかけられている圧力NによりエネルギーがαPに減衰した弾性表面波W1’となり、第2交差指電極4に到達すると弾性表面波W1’の一部が第2交差指電極4により第1交差指電極3側へ反射されてエネルギーγαPの弾性表面波W2となる。そして弾性表面波W2は圧力Nによりエネルギーがγα2Pに減衰した弾性表面波W2’となり第1交差指電極3に到達すると、第1交差指電極3により一部が第2交差指電極4側へ反射されてエネルギーγηα2Pの弾性表面波W3となる。同様に、弾性表面波W3は、圧力Nによりエネルギーがγηα3Pに減衰した弾性表面波W3’となり一部が第2交差指電極4で反射されてエネルギーγ2ηα3Pの弾性表面波W4となって第1交差指電極3へ向い、以降、このような反射が繰り返される。
そのため、第1交差指電極3から第2交差指電極4へ向かう弾性表面波(つまりは進行波)WFのエネルギーPFは、弾性表面波W1、W3、W5、W7…W2n−1のエネルギーの総和であるから、PF=P{1+γηα2+(γηα2)2+(γηα2)3+…+(γηα2)2n−1}となる。また、第2交差指電極4から第1交差指電極3へ向かう弾性表面波(つまりは反射波)WRのエネルギーPRは、弾性表面波W2、W4、W6、…W2nのエネルギーの総和であるから、PR=γαP{1+γηα2+(γηα2)2+(γηα2)3+…+(γηα2)2n−1}となる。ここで、n→∞とし、γηα2<1である点を考慮すると、エネルギーPF、PRは次式のように表わすことができる。
したがって、固定子1に励振される全ての波の全エネルギーPSは、進行波WFのエネルギーPFと反射波WRのエネルギーPRの合計となり、このうち進行波成分PHは、進行波WFのエネルギーPFと反射波WRのエネルギーPRとの差分となり、定在波成分PVは、全エネルギーPSと進行波成分PHとの差分となり、これらPS、PH、PVは次式のように表わすことができる。
上記の式から明らかなように、本実施形態の弾性表面波アクチュエータでは、第1交差指電極3の反射率ηと、第2交差指電極4の反射率γと、予圧手段による減衰率αとを調整することで、進行波成分PHと定在波成分PVとの比率を設定することができる
そして、本実施形態では、進行波WFのエネルギーPFが、反射波WRのエネルギーPRよりも大きくなるように、反射率η,γ及び減衰率αを設定するのであるが、反射率η,γの設定は上述したように交差指電極の間隔l及び組数mとを適宜設定することで行うことができ、減衰率αの設定は上述したように予圧手段の圧力Nの値を適宜設定することで行うことができる。このとき、反射率γと減衰率αの値は、進行波WFのエネルギーPFに対して、反射波WRのエネルギーPRが、0.5倍以上0.98倍以下となるように設定することが好ましく、上記の数4を参照すると、0.5≦γα≦0.98とすればよい。
以上述べた本実施形態の弾性表面波アクチュエータによれば、固定子1上に励振される弾性表面波の進行波成分PHと定在波成分PVとの比率は、予圧手段による弾性表面波の減衰率αの影響を受けるため、予圧手段により移動子5を固定子1に接触させる圧力Nの値を変更することによって、予圧手段によって進行波成分PHと定在波成分PVとの比率を設定でき、これにより固定子1に交差指電極3,4を形成した後でも、これらの成分PH、PVの比率の微調整等を行えるという効果を奏する。
(実施形態4)
ところで、上記実施形態1,3では、第1交差指電極3及び第2交差指電極4は、ともに図1(c)に示すような、一般的な交差指電極であり、このような交差指電極に高周波電圧を印加した際には、所望の方向(図1(a)に示す第1交差指電極3では第2交差指電極4側となる右方向)だけでなく、所望の方向以外の方向、例えば所望の方向に対して反対側の方向(図1(a)における左方)にも弾性表面波が励振される。
そこで、本実施形態は、図5(a)に示すように、各交差指電極3,4の代わりに、反射用電極61,71を備える交差指電極6,7を設けたことに特徴があり、第1交差指電極6と第2交差指電極7の等価反射面間の距離は、実施形態1と同様に各交差指電極6,7で励振される弾性表面波の半波長の略整数倍に設定して、弾性表面波のエネルギーが固定子1上に蓄積されるようにしている。尚、その他の構成は実施形態1と同様であるから、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。また、図5(a)では、交差指電極6,7は簡略化して示し、高周波電源AC1,AC2及びスイッチSW1,SW2は省略している。
第1交差指電極6は、励振用電極60と、励振用電極60で励振された弾性表面波のうち所望の方向以外に進む弾性表面波を所望の方向へ反射させる反射部となる反射用電極61とを備えることで、所望の方向(図5(a)における右方向)に向けて励振される弾性表面波の振幅が、所望の方向以外に向けて励振される弾性表面波の振幅よりも大きくなるように構成された一方向性電極である。励振用電極60は、図5(b)に示すように、互いに異極となる一対の交差指60a,60bを所定間隔で複数対列設された形状の所謂櫛歯状電極(IDT)であり、図5(a)に示すように圧電基板2の表面の長手方向における一端側(図5(a)における左端側)に形成されている。反射用電極61は、励振用電極60と同様に、互いに異極となる一対の交差指61a,61bが所定間隔で複数対列設された形状を有し、図5(a)とに示すように励振用電極60よりも、圧電基板2の表面の長手方向における一端側に形成されている。そして、励振用電極60の交差指60aは、外部の高周波電源AC1の一端に接続され、交差指60bは高周波電源AC1の他端に接続されている。
一方、第2交差指電極7は、上記第1交差指電極6と同様に、励振用電極70と反射用電極71とを有する一方向性電極である。励振用電極70は、励振用電極60と同様に異極となる一対の交差指70a,70bを所定間隔で複数対列設された形状を有しており、図5(a)に示すように圧電基板2の表面の長手方向における他端側(図5(a)における右端側)に形成されている。反射用電極71は、励振用電極70と同様に、異極となる一対の交差指71a,71bが所定間隔で複数対列設された形状を有し、図5(a)とに示すように励振用電極70よりも、圧電基板2の表面の長手方向における他端側に形成されている。
以下に、このような一方向性電極について第1交差指電極6を例に挙げて説明する。まず、励振用電極60の設定は、実施形態1と同様にして行われ、例えば同極の交差指の間隔lが132.64μm、組数mが20となるように設定して、図6(a)に示すように、その共振周波数が28.9MHzとなるとともに、反射率がRAとなるようにしている。
次に反射用電極61の設定を行うのであるが、励振用電極60で励振されて右側へ進む弾性表面波Waと、左側に進む弾性表面波WbのエネルギーをそれぞれP/2とし、励振用電極60の反射率をRA、反射用電極61の反射率をRBとすると、この第1交差指電極6から右側へ進む弾性表面波のエネルギーの総和は、P/2+〔(1−RA)RB/{2(1−RARB)}]Pとなる。ここで、RBが1に近付くほど、前記の式で表わされる第1交差指電極6から右側へ進む弾性表面波のエネルギーの総和はPに近付くので、反射用電極61は、励振用電極60により励振される弾性表面波に対する反射率が1に近い程好ましい。したがって、シミュレーションにより28.9MHzの周波数の弾性表面波に対して1に近い反射率を有するように反射用電極61の間隔lと組数mとを設定すればよく、例えば間隔lを136.5μm、組数mを40とした場合には、図6(a)中にRBで示すように、28.9MHzの周波数の弾性表面波に対して0.999の反射率を有する反射用電極61を得ることができる。尚、28.9MHzの周波数の弾性表面波に対する励振用電極60の反射率は、図6(a)を参照すると約0.20である。ここで、この第1交差指電極6全体としての反射率RTは、次式で与えられ、図6(a)に示すようになっている。
このようにして間隔l及び組数mがそれぞれ設定された励振用電極60と反射用電極61とは、所定の間隔を隔てて圧電基板2上に配置される。ここで、これら電極60,61間の距離を変化させた際には、この距離が励振用電極60により励振される弾性表面波の半波長の略整数倍となったときに励振用電極60の駆動周波数の高周波電流に対するアドミタンスが最大値になるという結果が得られている。これは、励振用電極60で励振されて第2交差指電極7へ進む弾性表面波と、励振用電極60で励振された後に反射用電極61で反射されて第2交差指電極7へ進む弾性表面波とが同位相となって重なり合って電流が流れやすくなるためである。したがって、これら電極60,61間の距離は、上述の距離を採用することが好ましい。
このようにして第1交差指電極6の設計が為され、第2交差指電極7に対しても同様にして設計を行うが、第2交差指電極7の励振用電極70と反射用電極71のそれぞれの間隔l及び組数mを、第1交差指電極6と同じ値とすると、例えば周波数28.9MHzの弾性表面波に対する各交差指電極6,7の反射率RTは、0.999となるので、進行波成分PHが大幅に減少して、移動子5を移動させるために必要な弾性表面波のエネルギーが不足し、移動子5を移動させることができなくなるおそれがある。
そこで、第2交差指電極7の励振用電極70及び反射用電極71では、それぞれの間隔lと組数mとを次のように設定している。すなわち、励振用電極70の共振周波数を第1交差指電極6において反射率が低くなる値となるとともに、28.9MHzの周波数に対して低い反射率を有するように間隔lと組数mとを設定する。例えば同極の交差指の間隔lが133.84μm、組数mが20となるように設定して、励振用電極70の共振周波数が28.64MHzとなるようにしている。
次に反射用電極71の設定を第1交差指電極6と同様にして行う。この反射用電極71は、励振用電極70により励振される弾性表面波に対する反射率が1に近い程好ましいため、シミュレーションにより28.64MHzの周波数の弾性表面波に対して1に近い反射率を有するように反射用電極71の間隔lと組数mとを設定する。例えば間隔lを約137.69μm、組数mを40とすることで、28.64MHzの周波数の弾性表面波に対して0.999の反射率を有する反射用電極71を得ることができる。
以上にようにして第1交差指電極6及び第2交差指電極7が設計され、第1交差指電極6の反射率RTと第2交差指電極7の反射率RUの周波数特性は、図6(b)のグラフに示すような値になっている。図6(b)のグラフからも明らかなように、第1交差指電極6は、自身で励振する周波数28.9MHzの弾性表面波に対しては約1の反射率を有し、第2交差指電極7で励振される周波数28.64MHzの弾性表面波に対しては約0.64の反射率を有している。また、第2交差指電極7も、自身で励振する周波数28.64MHzの弾性表面波に対しては約1の反射率を有し、第1交差指電極6で励振される周波数28.9MHzの弾性表面波に対しては約0.64の反射率を有している。
したがって、第1交差指電極6の励振用電極60に所定の高周波電圧を印加した際には、図5(b)に示すように、励振用電極60から右側に進む弾性表面波Waと左側に進む弾性表面波Wbとが励振され、これら弾性表面波Wa,Wbはともに28.9MHzの周波数とP/2のエネルギーを有している。実施形態1,2では、弾性表面波Wbはそのまま圧電基板2の左端部へ伝播して熱となり、無駄となっていたが、本実施形態では、反射用電極61を設けているので、この弾性表面波Wbを反射用電極61で右方向へ反射して有効利用することができる。そのため、同じ電力であれば、実施形態1,2に比べて約2倍の大きさのエネルギーを有する弾性表面波を第1交差指電極6により励振させることが可能になる。この点は第2交差指電極7についても同様である。
また、各交差指電極6,7において互いに異なる共振周波数を有するように間隔lを設定していることによって、第2交差指電極7が第1交差指電極6で励振される周波数28.9MHzの弾性表面波に対しては0.64の反射率を有しているため、第1交差指電極6を励振させた際には、十分な大きさの定在波成分PVと進行波成分PHとを有する弾性表面波を移動子5に与えることができる。また、同様に第1交差指電極6が第2交差指電極7で励振される周波数28.64MHzの弾性表面波に対しては約0.64の反射率を有しているので、第2交差指電極7を励振させた際にも、十分な大きさの定在波成分PVと進行波成分PHを有する弾性表面波を移動子5に与えることができる。
以上述べたように本実施形態の弾性表面波アクチュエータによれば、実施形態1と同様の利点に加えて、励振用電極と反射用電極とを備える一方向性電極からなる交差指電極6,7を用いることで、実施形態1の交差指電極3,4に比べておよそ2倍のエネルギーを有する弾性表面波を励振することができ、これにより実施形態1よりさらに低電力であっても予圧手段の圧力Nに抗して振動できる大きさの定在波成分PVを有する弾性表面波を移動子5に与えることができる。しかも各交差指電極6,7において共振周波数を異ならせることで、反射波による進行波成分PHの減少を抑えて、移動子5を移動させるのに十分な進行波成分PHが得られるようにしているから、移動子5の移動を確実に行える。
ところで、一方向性電極の構成としては上記のものに限られるものではなく、例えば図7(a)に示すようにすることもできる。図7(a)に示す一方向性電極80は、励振用電極81と反射用電極82とで構成されており、これら励振用電極81及び反射用電極82は上記の励振用電極60及び反射用電極61と同様のものであるが、反射用電極82が交差指状ではなく、はしご状に形成されている点で異なっている。
また、他の一方向性電極の構成としては、図7(b)に示すようにすることもできる。この一方向性電極83は、図7(b)に示すように、異極となる一対の交差指84a,84bを所定間隔で複数対列設された励振用電極84と、この励振用電極84の隣接する交差指84a,84b間の部位に設けられた反射用電極85とで構成されている。ここで、反射用電極85は、所定間隔で列設されたコ字状又はI字状の電極群からなる。
或いは、図7(c),(d)に示すような一方向性電極86を用いることもできる。この一方向性電極86は、異極となる一対の交差指87a,87bを所定間隔で複数対列設されたAl膜からなる励振用電極87と、この励振用電極84の各交差指84a,84b間の左側の部位を覆うようにして圧電基板2上に形成されたSiO2膜からなる反射部88とで構成されている。
これら図7(a)〜(d)に示す一方向性電極80,83,86は、いずれも構成が異なるものであるが、その動作については本実施形態の各交差指電極6,7と同様であるから説明は省略する。
(実施形態5)
本実施形態の弾性表面波アクチュエータは、図8(a)に示すように、圧電基板2、及び該圧電基板2の表面に所定距離隔てて対向配置されるとともに圧電基板2に弾性表面波を発生させる一対の交差指電極6A,7Aとを備える固定子1と、圧電基板2の表面に載置されて前記弾性表面波により移動させられる移動子5と、移動子5を固定子1に所定の圧力Nで接触させる予圧手段(図示せず)とを具備し、各交差指電極6A,7Aは、励振用電極62,72と、反射用電極63,73とを有し、励振用電極62,72には、それぞれ高周波交流電源AC1,AC2が接続され、反射用電極63,73には、それぞれ弾性表面波に対する交差指電極6A,7Aの反射率を調整する反射率調整手段となる電気回路部Z1,Z2が接続されている。尚、上記実施形態4と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。また尚、図面の簡略化のため、図8(a)では、交差指電極6A,7Aは簡略化して示している。この点は、図9〜図13においても同様である。
第1交差指電極6Aは、励振用電極62と、反射用電極63とで構成された一方向性電極であり、図8(a)に示すように圧電基板2の表面の長手方向における一端側(図8(a)における左端側)に形成されている。励振用電極62は、上記の励振用電極60と同様に、互いに異極となる一対の交差指62a,62bが所定間隔で複数対列設された形状の櫛歯状電極であり、励振用電極62の交差指62a,62b間には、スイッチSW11を介して高周波電源AC1が接続されている。反射用電極63は、励振用電極62と同様に互いに異極となる一対の交差指63a,63bが所定間隔で複数対列設された形状の櫛歯状電極であり、反射用電極62の交差指62a,62b間には、スイッチSW12を介して電気回路部Z1が接続されている。
一方、第2交差指電極7Aは、第1交差指電極6Aと同様に励振用電極72と、反射用電極73とで構成された一方向性電極であり、図8(a)に示すように圧電基板2の表面の長手方向における他端側(図8(a)における右端側)に形成されている。励振用電極72は、励振用電極62と同様に異極となる一対の交差指72a,72bが所定間隔で複数対列設された形状の櫛歯状電極であり、励振用電極72の交差指72a,72b間には、スイッチSW21を介して高周波電源AC2が接続されている。反射用電極73は、励振用電極72と同様に互いに異極となる一対の交差指73a,73bが所定間隔で複数対列設された形状の櫛歯状電極であり、反射用電極73の交差指73a,73b間には、スイッチSW22を介して電気回路部Z2が接続されている。
そして、第1交差指電極6Aは、上記実施形態3の第1交差指電極6と同様に、励振用電極62と反射用電極63の各間隔l及び組数mが設定されている。一方、第2交差指電極7Aは、上記実施形態3の第2交差指電極7とは異なり、励振用電極72と反射用電極73の各間隔l及び組数mは、第1交差指電極6Aの励振用電極62と反射用電極73の各間隔l及び組数mと同じ値に設定されている。
したがって、本実施形態の弾性表面波アクチュエータでは、各交差指電極6A,7Aの励振用電極62,72は、同じ共振周波数を有するように設定されるとともに、各励振用電極62,72の励振する弾性表面波に対する各交差指電極6A,7Aの反射率が略1となるように設定されているのである。
電気回路部Z1,Z2は、弾性表面波に対する交差指電極6A,7Aの反射率をインピーダンスの値に応じて変化させる反射率調整用電気回路部であり、例えば、抵抗が用いられている。そして、電気回路部Z1,Z2は、スイッチSW12,SW22のオン/オフによって、それぞれ対応する反射用電極63,73への接続/非接続が切り換えられるようになっている。
ここで、図8(b)に示すように、交差指電極の交差指間に抵抗を接続することによって、交差指電極の共振周波数近傍の周波数を有する弾性表面波に対する反射率を低減できることがシミュレーションの結果により得られている。図8(b)中にR1で示すグラフは、共振周波数が15MHzとなるとともに、共振周波数近傍の周波数を有する弾性表面波に対して1に近い反射率を有するように間隔l及び組数mが設定された(例えば、間隔l=277.8μm、組数m=30)交差指電極の反射率特性を示すグラフであり、R2で示すグラフは、該交差指電極の交差指間に所定の抵抗値(例えば100Ω)を有する抵抗を接続した場合の反射率特性を示すグラフである。
図8(b)を参照すれば明らかなように、交差指電極の交差指間に抵抗を接続した際には、その交差指電極の共振周波数近傍の反射率が低減されている(例えば、共振周波数に対する反射率が0.84になっている)ことがわかる。
つまり、本実施形態の弾性表面波アクチュエータでは、スイッチSW12がオフである場合には、電気回路部Z1は反射用電極63に接続されていないために、反射用電極63における第2交差指電極7Aが励振する弾性表面波に対する反射率は略1となる。一方、スイッチSW12がオンである場合には、電気回路部Z1が反射用電極63に接続されるために、反射用電極63における第2交差指電極7Aが励振する弾性表面波に対する反射率が低減されることになる。
また、スイッチSW22がオフである場合には、電気回路部Z2は反射用電極73に接続されていないために、反射用電極73における第2交差指電極6Aが励振する弾性表面波に対する反射率は略1となる。一方、スイッチSW22がオンである場合には、電気回路部Z2が反射用電極73に接続されるために、反射用電極73における第1交差指電極6Aが励振する弾性表面波に対する反射率が低減されることになる。
以下に、本実施形態の弾性表面波アクチュエータの動作について説明する。ここで初期状態では、スイッチSW11,SW12,SW21,SW22がいずれもオフであるとする。
移動子5を第1交差指電極6A側に移動させる場合には、初期状態からスイッチSW11,SW22をオンにすることで、第1交差指電極6Aの励振用電極に高周波電源AC1の駆動電圧(高周波電圧)を印加するとともに、第2交差指電極7Aの反射用電極73に電気回路部Z2を接続すればよい。この場合、励振用電極62が励振する弾性表面波に対する第2交差指電極7Aの反射率が低減されることによって、上述したように、第1交差指電極6Aから第2交差指電極7Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和は、第2交差指電極7Aで反射されて第1交差指電極6Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和よりも大きくなり、その結果、移動子5が第1交差指電極6A側へと移動することになる。
一方、移動子5を第2交差指電極7A側に移動させる場合には、初期状態からスイッチSW12,SW21をオンにすることで、第2交差指電極7Aの励振用電極に高周波電源AC2の駆動電圧(高周波電圧)を印加するとともに、第1交差指電極6Aの反射用電極63に電気回路部Z1を接続すればよい。この場合、励振用電極72が励振する弾性表面波に対する第1交差指電極6Aの反射率が低減されることによって、上述したように、第2交差指電極7Aから第1交差指電極6Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和は、第1交差指電極6Aで反射されて第2交差指電極7Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和よりも大きくなり、その結果、移動子5が第2交差指電極7A側へと移動することになる。
すなわち、本実施形態の弾性表面波アクチュエータでは、スイッチSW11,SW22をオン、スイッチSW12,SW21をオフにすることで、移動子5を第1交差指電極6A側に移動させることができ、スイッチSW11,SW22をオフ、スイッチSW12,SW21をオンにすることで、移動子5を第2交差指電極7A側に移動させることができる。
以上述べたように本実施形態の弾性表面波アクチュエータによれば、実施形態4と同様の利点に加えて、電気回路部Z1,Z2の接続/非接続によって各交差指電極6A,7Aの反射率を容易に変更できるので、実施形態4のように、一対の交差指電極6,7における対向する交差指電極が励振する弾性表面波に対する反射率が略1とならないように各交差指電極6,7の間隔lや組数mを設計する必要がなくなり、弾性表面波アクチュエータの設計を容易に行えるという効果を奏する。
ところで、上記の例では、電気回路部Z1,Z2として抵抗を用いた例を示しているが、このような電気回路部Z1,Z2としては、抵抗に加えて、コイル(インダクタ)やコンデンサ(キャパシタ)を有するものを用いてもよい。この場合、上記実施形態2で述べたように、電気回路部Z1,Z2がそれぞれ接続された交差指電極で弾性表面波を反射する際に、弾性表面波の位相を、各電気回路部Z1,Z2のインピーダンス値に応じて変化させることができる。これにより、例えば各交差指電極6A,7Aの等価反射面間の距離Dを設定する代わりに、電気回路部Z1,Z2のインピーダンス値により位相を変更することで、同方向に進む弾性表面波の位相が同位相となるように設定を行える。また、波の総量が多い場合には、電気回路部Z1,Z2によって弾性表面波の位相を変えることで、同方向に進む弾性表面波の位相をずらして、波の総量を抑えることが可能となる。
また、交差指電極6A,7Aの構成としては上記のものに限られるものではなく、例えば図9(a)〜(e)に示すようにすることもできる。尚、図9(a)〜(e)では、高周波電源AC1、電気回路部Z2、及び各スイッチSW11,SW12,SW21,SW22の図示を省略している。
図9(a)に示す例では、各交差指電極6A,7Aの励振用電極62,72、及び反射用電極63,73の組数が異なっており、図9(b)に示す例では、反射用電極63ではなく、励振用電極62に電気回路部Z2を接続している点で異なっている。図9(c)に示す例では、各交差指電極6A,7Aの反射用電極63,73の構成が異なっており、一対の交差指を1組として、異極となる1組の交差指を交互に列設した形状となっている。図9(d)に示す例では、各交差指電極6A,7Aの代わりに、図7(b)に示す励振用電極84及び反射用電極85からなる一方向性電極83と同様のものを採用し、図9(e)に示す例では、各交差指電極6A,7Aの代わりに、図7(c),(d)に示す励振用電極87及び反射部88からなる一方向性電極86と同様のものを採用している。
これら図9(a)〜(e)に示す弾性表面波アクチュエータの例は、いずれも構成が異なるものであるが、その動作については本実施形態の弾性表面波アクチュエータと同様であるから説明は省略する。
一方、図8(a)に示す弾性表面波アクチュエータでは、各交差指電極6A,7Aに、高周波電源AC1,AC2及び電気回路部Z1,Z2をそれぞれ設けているが、高周波電源AC1と電気回路部Z1とを交差指電極6A,7Aで共用するようにしてもよい。
この場合、図10(a),(b)に示すように一対の交差指電極6A,7Aと、高周波電源AC1と、電気回路部Z1との配線を行う。すなわち、図10(a),(b)の弾性表面波アクチュエータでは、第1交差指電極6Aの励振用電極62の交差指62aを第1切り換えスイッチSW31の第1接点SW31aに接続し、反射用電極63の交差指63aを第2切り換えスイッチSW32の第2接点SW32bに接続し、第2交差指電極7Aの励振用電極72の交差指72aを第1切り換えスイッチSW31の第2接点SW31bに接続し、反射用電極73の交差指73aを第2切り換えスイッチSW32の第1接点SW32bに接続している。さらに、各電極62,63,72,73の交差指62b,63b,72b,73bを高周波電源AC1の一端及び電気回路部Z1の一端に接続し、高周波電源AC1の他端を第1切り換えスイッチSW31に接続し、電気回路部Z1の他端を第2切り換えスイッチSW32に接続している。
この場合、第1切り換えスイッチSW31を第1接点SW31a側に切り換えることで、第1交差指電極6Aの励振用電極62に高周波電源AC1が接続され、第1切り換えスイッチSW31を第2接点SW31b側に切り換えることで、第2交差指電極7Aの励振用電極72に高周波電源AC1が接続されるようになっている。また、第2切り換えスイッチSW32を第1接点SW32a側に切り換えることで、第2交差指電極7Aの反射用電極73に電気回路部Z1が接続され、第2切り換えスイッチSW32を第2接点SW32b側に切り換えることで、第1交差指電極6Aの反射用電極63に電気回路部Z1が接続されるようになっている。
したがって、図10(a)に示すように、各切り換えスイッチSW31,SW32をそれぞれ第1接点SW31a,SW32a側に切り換えることで、第1交差指電極6Aの励振用電極62に高周波電源AC1の駆動電圧(高周波電圧)が印加されるとともに、第2交差指電極7Aの反射用電極73に電気回路部Z1が接続される。この場合、励振用電極62が励振する弾性表面波に対する第2交差指電極7Aの反射率が低減されることによって、上述したように、第1交差指電極6Aから第2交差指電極7Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和は、第2交差指電極7Aで反射されて第1交差指電極6Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和よりも大きくなり、その結果、移動子5が第1交差指電極6A側へと移動することになる。
一方、図10(b)に示すように、各切り換えスイッチSW31,SW32をそれぞれ第2接点SW31b,SW32b側に切り換えることで、第2交差指電極7Aの励振用電極72に高周波電源AC1の駆動電圧(高周波電圧)が印加されるとともに、第1交差指電極6Aの反射用電極63に電気回路部Z1が接続される。この場合、励振用電極62が励振する弾性表面波に対する第2交差指電極7Aの反射率が低減されることによって、上述したように、第1交差指電極6Aから第2交差指電極7Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和は、第2交差指電極7Aで反射されて第1交差指電極6Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和よりも大きくなり、その結果、移動子5が第1交差指電極6A側へと移動することになる。
すなわち、図10(a),(b)に示す弾性表面波アクチュエータでは、各切り換えスイッチSW31,SW32を第1接点SW31a,SW32a側に切り換えることで、移動子5を第1交差指電極6A側に移動させることができ、各切り換えスイッチSW31,SW32を第2接点SW31b,SW32b側に切り換えることで、移動子5を第2交差指電極7A側に移動させることができるようになっている。
このような弾性表面波アクチュエータでは、図8(a)に示す例とは異なり、高周波電源AC1と電気回路部Z1とを交差指電極6A,7Aで共用しているので、部品点数の削減及び製造コストの低減を図ることができる。
ところで、本実施形態の弾性表面波アクチュエータでは、反射率調整手段となる電気回路部Z1,Z2に、反射率調整用インピーダンス素子として抵抗を用いているが、抵抗を用いる代わりに、インピーダンスの値(特に可変インピーダンス部90のインピーダンスZ〔Ω〕のレジスタンス成分R〔Ω〕の値に関与する抵抗値)が調整可能な反射率調整用インピーダンス素子である可変抵抗を用いてもよい。この場合、電気回路部Z1,Z2による反射率の調整をさらに容易に行うことができるという効果を奏する。
(実施形態6)
本実施形態の弾性表面波アクチュエータは、図11(a)に示すように、電気回路部Z3,Z4が設けられている点で上記実施形態5の弾性表面波アクチュエータと異なっており、その他の構成上記実施形態5と同様であるから、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
ここで、電気回路部Z3,Z4は、上記電気回路部Z1,Z2と同様にいずれも抵抗であり、電気回路部Z3は、第1交差指電極6Aの励振用電極62の交差指62a,62b間にスイッチSW13を介して接続され、電気回路部Z4は、第2交差指電極7Aの励振用電極72の交差指72a,72b間にスイッチSW23を介して接続されている。そのため、電気回路部Z3,Z4は、スイッチSW13,SW23のオン/オフによって、励振用電極62,72への接続/非接続がそれぞれ切り換えられるようになっている。
したがって、この弾性表面波アクチュエータでは、スイッチSW12,SW13がオフである場合には、電気回路部Z1は反射用電極63に、電気回路部Z3は励振用電極62にそれぞれ接続されていないために、第1交差指電極6Aにおける第2交差指電極7Aが励振する弾性表面波に対する反射率は略1となる。
一方、スイッチSW12,SW13がともにオフである状態からスイッチSW12をオンした場合には、電気回路部Z1が反射用電極63に接続されるために、反射用電極63における第2交差指電極7Aが励振する弾性表面波に対する反射率が低減されることになる。さらにスイッチSW13をオンした場合には、電気回路部Z3が励振用電極62に接続されるために、励振用電極62における第2交差指電極7Aが励振する弾性表面波に対する反射率が低減され、これにより第1交差指電極6Aにおける第2交差指電極7Aが励振する弾性表面波に対する反射率がさらに低減されることになる。
このように本実施形態の弾性表面波アクチュエータでは、オンにするスイッチSW12,SW13の組み合わせによって第1交差指電極6Aにおける第2交差指電極7Aが励振する弾性表面波に対する反射率を調整することができるようになっているのである。この点は、第2交差指電極7A側においても同様であるから説明を省略する。
以下に、本実施形態の弾性表面波アクチュエータの動作について説明する。ここで初期状態では、各スイッチSW11〜13,SW21〜23がオフであるとする。
移動子5を第1交差指電極6A側に移動させる場合には、初期状態からスイッチSW11,SW22をオンにすることで、第1交差指電極6Aの励振用電極に高周波電源AC1の駆動電圧を印加するとともに、第2交差指電極7Aの反射用電極73に電気回路部Z2を接続すればよい。
この場合、励振用電極62が励振する弾性表面波に対する第2交差指電極7Aの反射率が低減されることによって、上述したように、第1交差指電極6Aから第2交差指電極7Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和は、第2交差指電極7Aで反射されて第1交差指電極6Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和よりも大きくなり、その結果、移動子5が第1交差指電極6A側へと移動することになる。
また、スイッチSW22に加えてスイッチSW23をオンにすることで、第2交差指電極7Aの励振用電極72に電気回路部Z4を接続するようにしてもよく、この場合、励振用電極62が励振する弾性表面波に対する第2交差指電極7Aの反射率がさらに低減されることになる。これにより、第1交差指電極6Aから第2交差指電極7Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和が、第2交差指電極7Aで反射されて第1交差指電極6Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和よりもさらに大きくなり、その結果、スイッチSW22のみをオンにした場合に比べて、移動子5が第1交差指電極6A側へ移動する速度を増すことができる。
一方、移動子5を第2交差指電極7A側に移動させる場合には、初期状態からスイッチSW21,SW12をオンにすることで、第2交差指電極7Aの励振用電極に高周波電源AC2の駆動電圧を印加するとともに、第1交差指電極6Aの反射用電極63に電気回路部Z1を接続すればよい。
この場合、励振用電極72が励振する弾性表面波に対する第1交差指電極6Aの反射率が低減されることによって、上述したように、第2交差指電極7Aから第1交差指電極6Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和は、第1交差指電極6Aで反射されて第2交差指電極7Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和よりも大きくなり、その結果、移動子5が第2交差指電極7A側へと移動することになる。
また、スイッチSW12に加えてスイッチSW13をオンにすることで、第1交差指電極6Aの励振用電極62に電気回路部Z3を接続するようにしてもよく、この場合、励振用電極72が励振する弾性表面波に対する第1交差指電極6Aの反射率がさらに低減されることになる。これにより、第2交差指電極7Aから第1交差指電極6Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和が、第1交差指電極6Aで反射されて第2交差指電極7Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和よりもさらに大きくなり、その結果、スイッチSW12のみをオンにした場合に比べて、移動子5が第2交差指電極7A側へ移動する速度を増すことができる。
すなわち、本実施形態の弾性表面波アクチュエータでは、スイッチSW11,SW22をオン、スイッチSW12,SW21をオフにすることで、移動子5を第1交差指電極6A側に移動させることができ、この状態からさらにスイッチSW23をオンにすることで移動子5の移動速度を増すことができる。また、本実施形態の弾性表面波アクチュエータでは、スイッチSW11,SW22をオフ、スイッチSW12,SW21をオンにすることで、移動子5を第2交差指電極7A側に移動させることができ、この状態からさらにスイッチSW13をオンにすることで移動子5の移動速度を増すことができる。
以上述べたように本実施形態の弾性表面波アクチュエータによれば、実施形態5と同様の利点に加えて、電気回路部Z1,Z2の接続/非接続だけではなく、電気回路部Z3,Z4の接続/非接続によっても各交差指電極6A,7Aの反射率を変更できるので、反射率の調整の自由度が増すという効果を奏する。
また、上記実施形態5で述べたように、電気回路部Z1〜Z4として、抵抗の他にコイルやコンデンサ等を有するものを用いることで、弾性表面波の位相を変更できるようにしてもよく、この場合位相の調整の自由度が増すという効果を奏する。
ところで、上記の例では、第1交差指電極6Aに高周波電源AC1及び電気回路部Z1,Z3を、第2交差指電極7Aの高周波電源AC2及び電気回路部Z2,Z4をそれぞれ設けているが、高周波電源AC1と電気回路部Z1,Z3とを交差指電極6A,7Aで共用するようにしてもよい。
この場合、図11(b)に示すように一対の交差指電極6A,7Aと、高周波電源AC1と、電気回路部Z1,Z3との配線を行う。ここで、図11(b)に示す弾性表面波アクチュエータは、上記実施形態5で述べた図10(a),(b)に示す構成に加えて、第2交差指電極7Aの励振用電極72の交差指72aと第1切り換えスイッチSW31の第2接点SW31bとの間に、第3切り換えスイッチSW33の第1接点SW33aを接続し、第1交差指電極6Aの励振用電極62の交差指62aと第1切り換えスイッチSW31の第1接点SW31aとの間に、第3切り換えスイッチSW33の第2接点SW33bを接続している。さらに、各電極62,63,72,73の交差指62b,63b,72b,73bに電気回路部Z3の一端を接続し、電気回路部Z3の他端に第3切り換えスイッチSW33を接続している。尚、第3切り換えスイッチSW33は、図示しない第3接点を有しており、電気回路部Z3を用いない場合は、第3接点に切り換えるようになっている。
この場合、図10(a),(b)に示す弾性表面波アクチュエータと同様に、第1切り換えスイッチSW31の切り換え操作に応じて、高周波電源AC1が励振用電極62又は励振用電極72に接続され、第2切り換えスイッチSW32の切り換え操作に応じて、電気回路部Z1が反射用電極73又は反射用電極63に接続されるようになっている。
また、第3切り換えスイッチSW33を第1接点SW33a側に切り換えることで、第2交差指電極7Aの励振用電極72に電気回路部Z3が接続され、第3切り換えスイッチSW33を第2接点SW33b側に切り換えることで、第1交差指電極6Aの励振用電極63に電気回路部Z3が接続されるようになっている。
以下に、図11(b)に示す弾性表面波アクチュエータの動作について説明する。この弾性表面波アクチュエータにおいて、図11(b)に示すように、各切り換えスイッチSW31,SW32をそれぞれ第1接点SW31a,SW32a側に切り換えた際には、第1交差指電極6Aの励振用電極62に高周波電源AC1の駆動電圧が印加されるとともに、第2交差指電極7Aの反射用電極73に電気回路部Z1が接続される。
この場合、励振用電極62が励振する弾性表面波に対する第2交差指電極7Aの反射率が低減されることによって、上述したように、第1交差指電極6Aから第2交差指電極7Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和は、第2交差指電極7Aで反射されて第1交差指電極6Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和よりも大きくなり、その結果、移動子5が第1交差指電極6A側へと移動することになる。
この状態からさらに第3切り換えスイッチSW33を第1接点SW33aに切り換えた際には、第2交差指電極7Aの励振用電極72に電気回路部Z3が接続されることになり、この場合、励振用電極62が励振する弾性表面波に対する第2交差指電極7Aの反射率がさらに低減される。その結果、第1交差指電極6Aから第2交差指電極7Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和が、第2交差指電極7Aで反射されて第1交差指電極6Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和よりもさらに大きくなり、これにより移動子5が第1交差指電極6A側へ移動する速度が増すことになる。
一方、各切り換えスイッチSW31,SW32をそれぞれ第2接点SW31b,SW32b側に切り換えた際には、第2交差指電極7Aの励振用電極72に高周波電源AC1の駆動電圧が印加されるとともに、第1交差指電極6Aの反射用電極63に電気回路部Z1が接続される。
この場合、励振用電極72が励振する弾性表面波に対する第1交差指電極6Aの反射率が低減されることによって、上述したように、第2交差指電極7Aから第1交差指電極6Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和は、第1交差指電極6Aで反射されて第2交差指電極7Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和よりも大きくなり、その結果、移動子5が第2交差指電極7A側へと移動することになる。
この状態からさらに第3切り換えスイッチSW33を第2接点SW33bに切り換えた際には、第1交差指電極6Aの励振用電極62に電気回路部Z3が接続されることになり、この場合、励振用電極72が励振する弾性表面波に対する第1交差指電極6Aの反射率がさらに低減される。その結果、第2交差指電極7Aから第1交差指電極6Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和が、第1交差指電極6Aで反射されて第2交差指電極7Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和よりもさらに大きくなり、これにより移動子5が第2交差指電極7A側へ移動する速度が増すことになる。
すなわち、図11(b)に示す弾性表面波アクチュエータでは、両切り換えスイッチSW31,SW32を第1接点SW31a,SW32a側に切り換えることで、移動子5を第1交差指電極6A側に移動させることができ、加えて第3切り換えスイッチSW33を第1接点SW33aに切り換えることで移動子5の移動速度を増すことができるようになっている。また、両切り換えスイッチSW31,SW32を第2接点SW31b,SW32b側に切り換えることで、移動子5を第2交差指電極7A側に移動させることができ、加えて第3切り換えスイッチSW33を第2接点SW33bに切り換えることで移動子5の移動速度を増すことができるようになっている。
このような弾性表面波アクチュエータでは、図11(a)に示す例とは異なり、高周波電源AC1と電気回路部Z1,Z3とを交差指電極6A,7Aで共用しているので、部品点数の削減及び製造コストの低減を図ることができる。
(実施形態7)
本実施形態の弾性表面波アクチュエータは、図12(a),(b)に示すように、高周波電源AC1と電気回路部Z1の接続状態が、実施形態5で述べた図10(a),(b)に示す弾性表面波アクチュエータと異なっており、その他の構成上記実施形態5と同様であるから、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
すなわち、本実施形態の弾性表面波アクチュエータでは、図12(a),(b)に示すように、各交差指電極6A,7Aの励振用電極62,72の交差指62a,72aを高周波電源AC1の一端に接続し、反射用電極73の交差指73aを切り換えスイッチSW4の第1接点SW4aに接続し、反射用電極63の交差指63aを切り換えスイッチSW4の第2接点SW4bに接続している。さらに、各電極62,63,72,73の交差指62b,63b,72b,73bを高周波電源AC1の他端及び電気回路部Z1の一端に接続し、電気回路部Z1の他端を切り換えスイッチSW4に接続している。
この場合、高周波電源AC1は、第1交差指電極6Aの励振用電極62及び第2交差指電極7Aの励振用電極72の両方に接続されており、切り換えスイッチSW4を第1接点SW4a側に切り換えることで、第2交差指電極7Aの反射用電極73に電気回路部Z1が接続され、切り換えスイッチSW4を第2接点SW4b側に切り換えることで、第1交差指電極6Aの反射用電極63に電気回路部Z1が接続されるようになっている。
以下、本実施形態の弾性表面波アクチュエータの動作について説明する。まず、弾性表面波アクチュエータでは、高周波電源AC1より両方の励振用電極62,72に駆動電圧が印加されることになる。そのため、各励振用電極62,72で弾性表面波が励振されており、電気回路部Z1が反射用電極63,73のどちらにも接続されていない場合は、各励振用電極62,72で励振される弾性表面波に対する第1交差指電極6Aの反射率と、各励振用電極62,72で励振される弾性表面波に対する第2交差指電極7Aの反射率とが略1となる。この場合、第1交差指電極6Aから第2交差指電極7Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和と、第2交差指電極7Aから第1交差指電極6Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和とが略等しくなり、その結果、移動子5はいずれの方向へも移動しないようになっている。
ここで、図12(a)に示すように、切り換えスイッチSW4を第1接点SW4a側に切り換えた際には、第2交差指電極7Aの反射用電極73に電気回路部Z1が接続され、これにより励振用電極62,72が励振する弾性表面波に対する第2交差指電極7Aの反射率が低減されることになる。これにより第1交差指電極6Aから第2交差指電極7Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和は、第2交差指電極7Aから第1交差指電極6Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和よりも大きくなり、その結果、移動子5が第1交差指電極6A側へと移動することになる。
一方、図12(b)に示すように、切り換えスイッチSW4を第2接点SW4b側に切り換えた際には、第1交差指電極6Aの反射用電極63に電気回路部Z1が接続され、これにより励振用電極62,72が励振する弾性表面波に対する第1交差指電極6Aの反射率が低減されることになる。これにより第2交差指電極7Aから第1交差指電極6Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和は、第1交差指電極6Aから第2交差指電極7Aへ向かう弾性表面波のエネルギーの総和よりも大きくなり、その結果、移動子5が第2交差指電極7A側へと移動することになる。
すなわち、図12(a),(b)に示す弾性表面波アクチュエータでは、切り換えスイッチSW4を第1接点SW4a側に切り換えることで、移動子5を第1交差指電極6A側に移動させることができ、切り換えスイッチSW4を第2接点SW4b側に切り換えることで、移動子5を第2交差指電極7A側に移動させることができるようになっている。
以上述べたように本実施形態の弾性表面波アクチュエータによれば、実施形態5と同様の利点に加えて、図10(a),(b)に示す場合に比べて高周波電源AC1用の切り換えスイッチが必要なくなるので、さらなる部品点数の削減及び製造コストの低減を図ることができる。
(実施形態8)
本実施形態の弾性表面波アクチュエータは、図13に示すように、上記実施形態5の弾性表面波アクチュエータと同様の構成を有しているが、電気回路部Z1,Z2を有する代わりに、電気回路部9A,9Bを有している点で異なっている。尚、上記実施形態5の弾性表面波アクチュエータと同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
電気回路部9Aは、図14に示すように、インピーダンス値が調整可能な可変インピーダンス部90と、速度検出部91と、位相検出部92と、位相差算出部93と、入力部94と、演算部95とを有している。
可変インピーダンス部90は、インピーダンスの値(特に可変インピーダンス部90のインピーダンスZ〔Ω〕のレジスタンス成分R〔Ω〕の値に関与する抵抗値)が調整可能な反射率調整用インピーダンス素子である可変抵抗90aと、インピーダンスの値(特に可変インピーダンス部90のインピーダンスZのリアクタンス成分X〔Ω〕の値に関与する静電容量の値)が調整可能な可変コンデンサ90bとを有しており、この可変インピーダンス部90のインピーダンスZは、R+iXで与えられる(ここでiは虚数単位)。
このような可変インピーダンス部90は、反射用電極63に接続されている。尚、可変コンデンサ90bの代わりに、インピーダンスの値として、可変インピーダンス部90のインピーダンスZのリアクタンス成分X〔Ω〕の値に関与するインダクタンス値が調整可能な可変コイルを用いてもよい。
速度検出部91は、例えば、ドップラー効果を利用した速度センサ(図示せず)等を備えており、移動子5の移動速度(固定子1に対する移動子5の相対速度)を検出し、検出値を演算部95に出力するように構成されている。位相検出部92は、固定子1の表面部位Mにおける振動(図15中にV1で示す)の位相を検出するものであって、検出値を位相差算出部93に出力するように構成されている。位相差算出部93は、位相検出部92で検出した振動V1の位相と、高周波電源AC1の高周波電圧(図15中にV2で示す)の位相との位相差θを算出するものであり、算出した位相差を演算部95に出力するように構成されている。入力部94は、移動子5の移動速度の目標値と、位相差θの目標値とを入力するためのユーザインターフェースであり、各々入力された移動子5の移動速度の目標値と位相差θの目標値とを演算部95に出力するように構成されている。
演算部95は、例えばCPU等を用いて構成され、反射率制御部95aと位相差制御部95bとを有している。ここで、反射率制御部95aは、速度検出部91の検出値より得た移動子5の速度が、入力部94により得た移動子5の移動速度の目標値に一致するように、可変抵抗90aの抵抗値(すなわち可変インピーダンス部90のインピーダンスZのレジスタンス成分Rの値)をフィードバック制御するように構成されている。
位相制御部95bは、位相差算出部93より得た位相差θが、入力部94より得た位相差θの目標値に一致するように、可変コンデンサ90bの静電容量の値(すなわち可変インピーダンス部90のインピーダンスZのリアクタンス成分Xの値)をフィードバック制御するように構成されている。ところで、位相差θは、移動子5の速度にも影響を与える。すなわち、位相差θを0、2π、4π…に近づけると、同方向に進む弾性表面波の総エネルギーが大きくなって移動子5の速度を速くすることができ、位相差θをπ、3π、5π…に近づけると、同方向に進む弾性表面波の総エネルギーが小さくなって、移動子5の速度を遅くすることができる。したがって、移動子5が目標値の速度で移動するような位相差θの値を入力することによって、位相制御部95bにより移動子5の速度を目標値に維持することが可能となる。
尚、上記の例では、使用者が、移動子5の速度を計測しながら、移動子5の速度が目標値となるように位相差θを入力する必要がある。そこで、位相制御部95bに、速度検出部91で検出した移動子5の速度と、入力部94に入力された速度の目標値とを伝送するようにするとともに、位相制御部95bに、速度検出部91で得た移動子5の速度が、入力部94で得た目標値となるように、位相差θを調整する機能を持たせるように構成すれば、入力部94に移動子5の速度の目標値を入力するだけで、位相制御部95bに移動子5の速度制御を行わせることが可能となる。
以上により電気回路部9Aは構成されており、この電気回路部9Aによれば、移動子5の速度を所望の値に設定することが可能になるとともに、位相差θを所望の値に設定することで、同方向に進む弾性表面波が同位相となるように設定することが可能になる。
つまり、電気回路部9Aは、交差指電極7Aが励振する弾性表面波に対する交差指電極6Aの反射率を所定の値に設定することで移動子5の速度を目標値に設定する反射率調整用電気回路部としての機能と、位相差θを所望の値に設定することで、移動子5の速度を目標値に設定する、又は同方向に進む弾性表面波が同位相となるように設定する位相調整用電気回路部としての機能とを有しているのである。
一方、電気回路部9Bは、電気回路部9Aと同様の構成を有しているが、可変インピーダンス部が、第2交差指電極7Aの反射用電極73に接続されている点と、位相差算出部において、図13中にMで示す固定子1の表面部位における振動(図15中にV1で示す)の位相と、高周波電源AC2の高周波電圧の位相との位相差を算出するように構成されている点とで異なっている。尚、その他の構成は上記電気回路部9Aと同様であるから説明を省略する。
以上述べたように、本実施形態の弾性表面波アクチュエータによれば、移動子5の固定子1に対する相対速度を所望の値に設定することができる。そのため、動作を長時間行ったときや経年劣化等によって弾性表面波アクチュエータの駆動特性が劣化して(例えば移動子5と固定子1との接触部分の磨耗によって駆動力が低下して)、移動子5の速度が低下してしまった際でも、反射率制御部95aにより移動子5の速度を調整することで、このような駆動特性の劣化等に起因する移動子5の速度低下を防止できるという効果を奏する。また、上記のような移動子5の速度低下は、駆動特性が劣化した際に限らず、例えば、組立誤差や製造誤差等に起因する予圧手段による圧力の変動や、製造誤差による交差指電極の寸法のばらつき、固定子の表面粗さが場所により異なることによっても生じることがあるが、これらの場合も同様に反射率制御部95aにより移動子5の速度を調整することで、移動子5の速度低下等を防止できる。このように反射率制御部95aによれば、移動子5の速度が目標値に維持されるので、駆動特性の劣化や、組立誤差等の様々な原因により移動子5の速度が低下してしまうことを防止できる。
さらに、本実施形態の弾性表面波アクチュエータによれば、固定子1の表面部位Mにおける振動V1の位相と、高周波電源AC1の高周波電圧(図15中にV2で示す)の位相との位相差θを所望の値に設定することができる。そのため、動作を長時間行ったときや経年劣化等によって弾性表面波アクチュエータの駆動特性が劣化して(例えば予圧手段の劣化による圧力Nの低下やばらつき等が生じて)、同方向に進む弾性表面波間に位相のずれが生じてしまった場合でも、位相制御部95bにより位相差θを調整することで、このような位相のずれを解消することが可能となり、これにより位相のずれに起因する移動子5の速度低下等を防止できるという効果を奏する。また、上記のような位相のずれは、駆動特性が劣化した際に限らず、例えば、組立誤差や製造誤差等に起因する予圧手段による圧力の変動や、製造誤差による交差指電極の寸法のばらつき、固定子の表面粗さが場所により異なることによっても生じることがあるが、これらの場合も同様に位相制御部95bにより位相差θを調整することで、移動子5の速度低下等を防止できる。このように位相制御部95bによれば、同方向に進む弾性表面波の位相を調整することで、移動子5の速度が目標値に維持されるので、駆動特性の劣化や、組立誤差等の様々な原因により移動子5の速度が低下してしまうことを防止できる。
一方、本実施形態の弾性表面波アクチュエータでは、上記のように駆動特性の劣化や、組立誤差等の様々な原因により移動子の速度が低下してしまうことを防止できる他、移動子5の速度を使用者の望む速度にコントロールすることができる。弾性表面波アクチュエータの使用状況、例えば弾性表面波アクチュエータを使用する機器に応じて移動子5の速度を調整でき、これにより弾性表面波アクチュエータを様々な用途に用いることが可能となる。
尚、上記の電気回路部9Aとしては、図14に示すものに限られず、例えば、可変抵抗90aと、速度検出部91と、入力部94と、演算部95の反射率制御部95aとのみを有して、移動子5の速度のみを調整可能な反射率調整用電気回路部を用いるようにしてもよい。
また尚、電気回路部9Aとしては、例えば可変コンデンサ90bと、位相検出部92と、位相差算出部93と、入力部94と、演算部95の位相制御部95bとのみを有して、位相差θのみを調整可能な位相調整用電気回路部を用いるようにしもてよい。この点は、電気回路部9Bにおいても同様である。また尚、各交差指電極6A,7Aに電気回路部9A,9Bを設ける代わりに、両交差指電極6A,7Aで電気回路部9Aを共用するようにしてもよい。
また、弾性表面波に対する交差指電極の反射率を調整する反射率調整手段を備えることも好ましい。これにより、反射率調整手段によって、弾性表面波に対する交差指電極の反射率を調整できるので、交差指電極の設計を容易に行える。
また、交差指電極は、所望の方向以外に進む弾性表面波を所望の方向へ反射させる反射部を備えた一方向性電極であることも好ましい。これにより、所望の方向以外に進む弾性表面波を所望の方向へ反射させる反射部を備えているので、同じ電力で駆動させた際に、反射部を備えていない場合よりも大きいエネルギーを有する弾性表面波を交差指電極により励振させることが可能になり、これにより、さらなる低電力化を図ることができるという効果を奏する。