以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
<<誘電体積層膜イメージセンサの概念>>
図1は、誘電体積層膜を利用して電磁波を所定波長ごとに分光する分波イメージセンサの概念を説明する図である。ここでは、電磁波の一例である光を所定波長ごとに分光する分光イメージセンサを例に説明する。
誘電体積層膜1は、図1に示すように、隣接する層間で屈折率nj(jは2以上の正の整数;以下同様)が異なり(屈折率差Δn)、所定の厚みdjを持つ層を複数積層した構造を有する積層部材である。これによって、後述するように、電磁波の内の所定の波長領域成分を反射させ残りを通過させる特性を持つようになる。
誘電体積層膜1をなす各誘電体層1_jの層数の数え方は、その両側の厚い層(第n0層1_0および第k層1_k)を層数として数えずに、たとえば、第1層目から第k層側に向けて順に数える。実質的には、両側の厚い層(第0層1_0および第k層1_k)を除いて誘電体積層膜1が構成される。
このような構造を持つ誘電体積層膜1に光を入射させると、誘電体積層膜1での干渉により、反射率(あるいは透過率)が波長λに対してある依存性を持つようになる。光の屈折率差Δnが大きいほどその効果が強くなる。
特に、この誘電体積層膜1が、周期的な構造や、ある条件(たとえば各層の厚みdの条件d〜λ/4n)を持つことで、白色光などの入射光L1が入射すると、ある特定波長域の光(特定波長領域光)の反射率だけを効果的に高めて殆どを反射光成分L2にさせ、すなわち透過率を小さくさせて、かつ、それ以外の波長域の光の反射率を低くすることで殆どを透過光成分L3にさせる、すなわち、透過率を大きくさせることができる。
ここで波長λは、ある波長域の中心波長であり、nはその層の屈折率である。本実施形態では、この誘電体積層膜1による反射率(あるいは透過率)の波長依存性を利用することで、分光フィルタ10を実現する。
<誘電体積層膜を利用した分波イメージセンサの基本構成>
図2は、誘電体積層膜を利用した分波イメージセンサの基本構成を説明する概念図である。ここで、図2は、赤外光IR(InfraRed)と可視光VL(Visible Light )とを分光する事例で示している。可視光VLよりも長波長側である赤外領域の波長λ(主に780nmより長波長側)の赤外光IRに対して、高い反射率を持たせるような誘電体積層膜1を形成することで、赤外光IRをカットし、また、このような誘電体積層膜1を形成しないことで、赤外光IRを透過させることができる。
なお、誘電体積層膜1をなす各誘電体層1_jの部材(層材)は、複数の層で誘電体積層膜1を構成することから少なくとも2種となり、3層以上の場合には各誘電体層1_jの何れもが異なる層材でなるものであってもよいし、2種(あるいはそれ以上)を交互にあるいは任意の順に積層したものであってもよい。また、誘電体積層膜1を、基本的な第1および第2の層材で構成しつつ、一部を第3(あるいはそれ以上)の層材に代えるようにしてもよい。以下、具体的に説明する。
<誘電体積層膜を利用した多波長分波イメージセンサの構成>
図3は、図2に示した分光イメージセンサ10を利用した分光イメージセンサ11の基本構成を複数の波長分離構成に適用した構成例を示す図である。
図2にて説明したように、誘電体積層膜1を形成するかしないかにより、赤外光IRをカットしたり透過させたりすることができる。これを応用して、単位画素マトリクス12を構成する複数の検知部(たとえばフォトダイオード)に対して、各波長対応の検知部に位置整合させて積層膜の一部を規則的に取り除く、すなわち、画素(セル)ごとに、赤外光をカットしたりしなかったりすることで、可視光VLのみの撮像と赤外光IRのみの撮像、あるいは可視光VLのみの撮像と赤外光IRと可視光VLとを混在させた撮像を、同時に行なうようにすることができる。
昼間におけるモノクロ画像あるいはカラー画像の撮像時に赤外光IRの影響を受けず、また、夜間などにおいて、赤外光IRによる撮像が可能となる。必要に応じて、他方の像も同時に出力することもできる。その場合でも、昼間において、可視光VLの影響を受けない赤外光IRのみの画像を得ることができる。
すなわち、多波長分波対応の分光イメージセンサ11は、上述のような赤外光IRを反射可能な誘電体積層膜1を、画素が規則的に配列された単位画素マトリクス12を構成する各画素の主要部をなすフォトダイオード上に形成することで、赤外光IRを反射させることができ、この画素から得られる画素信号に基づき、赤外光IRの影響をほぼ全く受けない可視光VLのみのモノクロ画像が得られる。特開2002−142228号公報記載の仕組みとは異なり、赤外光IRの影響をほぼ全く受けない可視光VLのモノクロ画像を得るに際して、赤外光IRの成分との間での演算処理が不要である。
さらに、誘電体積層膜1を形成したフォトダイオード上に、波長領域成分内を所定の波長領域成分に分離する光学部材の一例として、可視光VL領域において所定の波長透過特性を持つ色フィルタ14を設けることで、赤外光IRの影響をほぼ全く受けない可視光VL領域中の特定波長領域のみの像が得られる。
また、単位画素マトリクス12を構成する複数のフォトダイオード上に一体的に、可視光VL領域においてそれぞれ異なる波長透過特性を持つ色フィルタ14xを、各波長対応(色別)のフォトダイオードに位置整合させて、規則的に配列することで、可視光VL領域を波長別(色別)に分離することができ、これらの色別の画素から得られる各画素信号に基づいて合成処理をすることで、赤外光IRの影響をほぼ全く受けない可視光VLのみのカラー画像(可視光カラー画像)が得られる。特開2002−142228号公報記載の仕組みとは異なり、赤外光IRの影響をほぼ全く受けない可視光VLのカラー画像を得るに際して、赤外光IRの成分との間での演算処理が不要である。
また、同じ撮像素子(分光イメージセンサ11)において、たとえば単位画素マトリクス12の内で、部分的に誘電体積層膜1を形成しない画素を設けることで、各画素の出力をマトリクス演算することにより、可視光VLのモノクロ画像あるいはカラー画像と赤外光IRの画像をそれぞれ独立に求めることが常時可能となる。また、フォトダイオード上に一体的に形成された誘電体積層膜1の一部を、部分的に誘電体積層膜1を形成しないようにするので、部分的に誘電体積層膜1が形成されていない誘電体積層膜1をもつ別個の光学部材を撮像素子上に配設する場合とは異なり、位置合せの問題が起きない。
たとえば、赤外光IRの影響をほぼ全く受けない可視光VLのみの撮像(モノクロ撮像もしくはカラー撮像)と、赤外光IRと可視光VLとを混在させた撮像を、同時に行なうようにすることができる。また、可視光VLのみの成分(モノクロ像成分もしくはカラー像成分)と、赤外光IRと可視光VLとを混在させた成分との合成処理(詳しくは差分処理)により、可視光VLの影響をほぼ全く受けない赤外光IRのみの撮像を行なうようにすることもできる。
なお、上記において、“影響をほぼ全く受けない”とは、最終的に人間の視覚によることを考慮し、一般的に人間の視覚によって明確な差が関知できない程度であれば、“影響を若干受ける”ことがあってもよい。すなわち、赤外光IR側については通過波長領域(可視光VL)の影響を無視可能な赤外画像(物理情報の一例)を取得できればよく、可視光VL側については反射波長領域成分(赤外光IR)の影響を無視可能な通常画像(物理情報の一例)を取得できればよい。
また、色フィルタ14は、可視光VL(波長λ=380〜780nm)の3原色である青色成分B(たとえば波長λ=400〜500nmで透過率が略1、その他で略ゼロ)、緑色成分G(たとえば波長λ=500〜600nmで透過率が略1、その他で略ゼロ)、赤色成分R(たとえば波長λ=600〜700nmで透過率が略1、その他で略ゼロ)を中心とする原色フィルタであってもよい。
あるいは、黄Ye(たとえば波長λ=400〜500nmで透過率が略ゼロ、その他で略1)、マゼンダMg(たとえば波長λ=500〜600nmで透過率が略ゼロ、その他で略1)、シアンCy(たとえば波長λ=600〜700nmで透過率が略ゼロ、その他で略1)など、可視光の3原色成分に対して略ゼロの透過率を持つ補色系の色フィルタであってもよい。
補色系の色フィルタは原色系の色フィルタよりも感度が高いので、可視領域の透過光が3原色の各々の補色である補色系の色フィルタを使用することで撮像装置の感度を高めることができる。逆に、原色系の色フィルタを用いることで、差分処理を行なわなくても原色の色信号を取得でき信号処理が簡易になる利点がある。
なお、透過率が“略1”であるとは、理想的な状態をいったものであり、その波長領域での透過率がその他の波長領域での透過率よりも遙かに大きいものであればよい。一部に“1”でない透過率”があってもよい。また、透過率が“略ゼロ”であるについても、同様に理想的な状態をいったものであり、その波長領域での透過率がその他の波長領域での透過率よりも遙かに小さいものであればよい。一部に“ゼロ”でない透過率”があってもよい。
また、原色系および補色系の何れも、通過波長領域成分である可視光VL領域の内の所定色(原色もしくは補色)の波長領域成分を通過させるものであればよく、反射波長領域成分である赤外光IR領域を通過させるか否かすなわち赤外光IRに対する透過率は不問である。誘電体積層膜1によって赤外光IR成分をカットするからである。
たとえば、図3に示すように、4つの画素(セル)でなる単位画素マトリクス12の内、1つの画素12IR上だけに誘電体積層膜1を形成せず、他の赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの色別の画素12R,12G,12B上に誘電体積層膜1を形成しつつ、それぞれ対応する赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色フィルタ14R,14G,14Bを設ける。
また、感度を高くするために、図3に示すように、誘電体積層膜1を形成しなかった画素12IRにおいて、赤外光IRだけでなく可視光VLも同時に信号に寄与するように色フィルタ14Cを入れない。こうすることで、実質的に、赤外光用の画素12IRを、赤外光IR用のみでなく、赤外光IR用と可視光VL用を兼ねる画素として機能させることができる。
とりわけ、4つの画素でなる単位画素マトリクス12を、このように画素12R,12G,12B,12IRに分割することで、撮像素子(分光イメージセンサ11)全体の構成が隙間なく配置できるので、設計が容易になる。
このようにすることで、3つの画素12R,12G,12Bから得られる赤(R)、緑(G)、青(B)の各色成分に基づいて1つの画像を合成することで、赤外光IRの影響をほぼ全く受けない可視光VLのカラー画像(いわゆる通常のカラー画像)が得られ、同時に画素12IRから得られる赤外光IRと可視光VLを混在させた成分に基づき、赤外光IRに関わる像を撮像することが可能になる。
ここで、“赤外光IRに関わる像”とは、可視光VLの影響をほぼ全く受けない赤外光IRのみの像や赤外光IRと可視光VLとを混在させた像を意味する。図3に示す構成で可視光VLの影響をほぼ全く受けない赤外光IRのみの像を得るには、たとえば、画素12IRから得られる赤外光IRと可視光VLを混在させた成分と、3つの画素12R,12G,12Bから得られる赤(R)、緑(G)、青(B)の各色成分との差を取るとよい。後述するような緑色フィルタ14Gや黒色フィルタ14BKを設けなくても、可視光VLおよび赤外光IRを受光する画素12IRの出力から、3つの画素12R,12G,12Bで得られる青、赤、緑の強度を減じることで、赤外光IRの強度を求めることができるからである。
なお、光通信応用や赤外発光点を追跡することで位置検出するような応用など、可視光VLの影響をほぼ全く受けない赤外光IRだけの像を同時に撮像する応用を考えた場合、画素12IR上に、少なくとも反射波長領域成分である赤外光IRを通過させるとともに、通過波長領域成分である可視光VLの内の所定の波長成分を通過させる色フィルタ14Cを入れてもよい。
たとえば、色フィルタ14Cとして、赤外光IRと緑色光Gとを通過させる緑色フィルタ14Gを設けることで、画素12IRからは赤外光IRと緑色の可視光LGの混在の成分が得られるが、画素12Gから得られる可視光VLだけの緑色成分との差分を取ることで、可視光VL(ここでは緑色光G)の影響をほぼ全く受けない赤外光IRのみの像が得られる。緑色フィルタ14Gを設ける必要があるものの、緑色フィルタ14Gを設けずに3つの画素12R,12G,12Bで得られる青、赤、緑の強度を減じる場合よりも処理が簡易になる。
または、色フィルタ14Cとして、赤外光IRを通過させ可視光VLのみを吸収するような黒色フィルタ14BKを設けると、可視光VLをこの黒色フィルタ14BKで吸収させることで、画素12IRからは赤外光IRのみの成分が得られ、差分処理を行なわなくても、可視光VLの影響をほぼ全く受けない赤外光IRのみの像が得られることになる。
なお、現状一般的に用いられるR,G,Bの各色フィルタは、可視光帯内では、R,G,Bの各々に対して透過率が高くその他の色(たとえばRであればGやB)の透過率が低いが、可視光帯外の透過率に関しては規定外であり、通常、その他の色(たとえばRであればGやB)の透過率よりも高く、たとえば各フィルタともに赤外領域に感度を持ち、赤外領域において光の透過がある。しかしながら、本実施形態では、このような可視光帯外で透過率が高い特性であっても、影響を受けない。
<<誘電体積層膜の設計手法;赤外光カットの例>>
<厚みdjの設計手法>
図4〜図6は、誘電体積層膜1を設計する手法の基本概念を説明する図である。ここでは、誘電体積層膜1を、基本的な第1および第2の層材で構成しつつ、赤外光IRを選択的に反射させるような設計例を述べる。
図4にその構造図を示すように、本実施形態で用いる誘電体積層膜1は、両側(以下、光入射側を第0層、反対側を第k層と称する)の厚い酸化シリコンSiO2(以下SiO2と記す)に挟まれて、第1および第2の層材でなる複数の誘電体層1_jが積層されて構成されている。図示した例では、誘電体層1_jをなす第1および第2の層材として何れも一般的な材料を用いることとし、シリコンナイトライドSi3N4(以下SiNと記す)を第1の層材、酸化シリコンSiO2を第2の層材とする2種を用いて、これらを交互に積層している。また、誘電体積層膜1の構造は、上下に十分に厚い酸化シリコンSiO2層がある場合(d0=dk=∞)を仮定している。
このような誘電体積層膜1は、下記式(1)の条件を満たすことで、反射率を有効に高くすることができる。
ここでdj(jは層番号;以下同様)は、誘電体積層膜1を構成する各誘電体層1_jの厚みであり、njは、その各誘電体層1_jの屈折率であり、λ0は反射波長領域の中心波長(以下反射中心波長という)である。
誘電体積層膜1をなす各誘電体層1_jの層数の数え方は、その両側の厚い酸化シリコンSiO2を層数として数えずに、たとえば、第1層目から第k層側に向けて順に、SiN層/SiO2層/SiN層で3層、SiN層/SiO2層/SiN層/SiO2層/SiN層で5層というように数える。図4では、7層構造を示している。
また、反射波長領域である赤外光IRの反射中心波長λ0=900nmとして、奇数番目の層をなすシリコンナイトライドSiNの屈折率nα=2.03、0番目、偶数番目、およびk番目の層をなす酸化シリコンSiO2の屈折率nβ=1.46としており、屈折率差Δnは、0.57である。
また、上記式(1)に従い、シリコンナイトライドSiNの厚みdα(=d1,d3,…;j=奇数)は111nm、酸化シリコンSiO2層の厚みdβ(=d2,d4,…;j=偶数)は154nmとしている。
図5は、一般的な材料を用いた図4の構造について、層数を変えて、有効フレネル係数法で計算した反射率Rの結果(反射スペクトル図)を示し、これにより、反射スペクトルの層数依存特性が分かる。
図5の結果から、層数が増えるに従い、赤外光IRの反射中心波長λ0=900nmを中心に反射率Rが高くなっているのが分かる。さらに、このように波長900nmを反射中心波長λ0に選ぶことで、ほぼ赤外光IRと可視光VLを分けていることが分かる。ここでは、5層以上にすることで、反射率Rが0.5以上、特に、7層以上にすることで、反射率が0.7を超えて望ましいことが分かる。
図6は、誘電体層1_jの厚みの変動依存性(ばらつきとの関係)を説明する図である。ここでは、7層の場合を例に、各誘電体層1_jの厚みdjを±10%変えて計算した結果(反射スペクトル図)を示している。
条件式(1)は、フレネル係数法による理想的な計算値であるが、実際には式(1)の条件はゆるやかで幅がある。たとえば、±10%の厚みdjの誤差があっても有効に反射率を高くできることがフレネル係数法による計算で分かった。
たとえば、図6に示すように、厚みdjにばらつきの差があっても、有効に反射率Rを高くできることが分かった。たとえば、赤外光IRの反射中心波長λ0=900nmにおいて反射率Rが0.5以上という十分な反射率Rが得られているし、赤外光IR全体(主に780nmより長波長側)においても、反射が強いことが分かる。したがって、実際には、ばらつきも加味すれば、誘電体層1_jの厚みdjは、下記式(2)の範囲であれば、反射率を有効に高くする上で、十分な効果が得られることになる。
<反射中心波長λ0の設計手法>
図7〜図9は、反射中心波長λ0の条件を説明する図である。厚みdjの数値条件は、スペクトルの赤外反射領域のバンド幅ΔλIRに依存する。反射スペクトルの概念を示した図7(A)のように、赤外反射領域のバンド幅ΔλIRが広い場合には長波長側に中心波長λ0を持っていかないと可視光VLでの反射が顕著になる。また反射スペクトルの概念を示した図7(B)のように、逆に赤外反射領域のバンド幅ΔλIRが狭い場合には、短波長側に中心波長λ0を持っていかないと可視光VLに近い赤外領域での反射が起こらなくなる。
ところで図#2−1に示したシリコンSiの吸収スペクトルのグラフから、赤外領域の内、0.78μm≦λ≦0.95μmの範囲の赤外光IRを反射させれば、赤外カット効果として十分になることが分かる。これは、波長0.95μmより長波長側の光は殆どシリコンSi内部で吸収されず、光電変換されないからである。したがって0.78μm≦λ≦0.95μmの範囲の波長の赤外光IRを反射できるように反射中心波長λ0を選べばよいことになる。
また、可視光VLでも、赤(R)領域の内、640〜780nmの範囲の光は視感度が低いために反射されてもされなくても特に撮像素子の性能に影響はないと考えてよい。したがって640〜780nmの波長領域に反射が生じていても不都合がない。
さらに、赤外反射領域のバンド幅ΔλIRは、誘電体積層膜1の屈折率差Δnが大きいときには広くなり、逆に屈折率差Δnが小さいときには狭くなる。したがって、赤外反射領域のバンド幅λIRは、SiN/SiO2多層膜の場合には狭く、Si/SiO2多層膜の場合には広くなる。
これらのことから、SiN/SiO2多層膜(屈折率差Δn=0.57)の場合には、図8の反射スペクトル図に示す780nmと950nmの反射中心波長λ0の計算から、780nm≦λ0≦950nmの範囲であれば、ほぼ上述の条件を満たすことが分かる。ところで、図8は後述する図13のような積層構造で、λ0=780nmとλ0=950nmになるように、誘電体層1_jの膜厚djだけを変えて計算されたものである。
また同様に、Si/SiO2多層膜(屈折率差Δn=2.64)の場合、図9の反射スペクトル図に示すように900nm≦λ0≦1100nmの範囲であれば、ほぼ上述の条件を満たす。
以上のことから、シリコンナイトライドSiNやシリコンSiと酸化シリコンSiO2の組合せにおいては、反射中心波長λ0としては、下記式(3−1)を満たせばよいことになる。好ましくは、下記式(3−2)を満たすのがよい。これらは、900nm近傍を反射中心波長λ0とするのが理想的であることを意味する。
もちろん、上記で示した材料は一例に過ぎず、上述のような効果は必ずしも酸化シリコンSiO2とシリコンナイトライドSiN層の組み合わせに限ったことでなく、屈折率差が0.3以上、さらに望ましくは0.5以上あるような材料を選べば同様な効果があることが計算によって見積もられた。
たとえばSiN膜は、作製条件によって多少の組成のばらつきがあってもよい。また、誘電体積層膜1を構成する誘電体層1_jとしては、酸化シリコンSiO2やシリコンナイトライドSiNの他に、アルミナAl2O3やジルコニアZrO2(屈折率2.05)や酸化チタンTiO2(屈折率2.3〜2.55)や酸化マグネシウムMgOや酸化亜鉛ZnO(屈折率2.1)などの酸化物あるいはポリカーボネートPC(屈折率1.58)やアクリル樹脂PMMA(屈折率1.49)などの高分子材料、炭化珪素SiC(屈折率2.65)やゲルマニウムGe(屈折率4〜5.5)などの半導体材料も使用可能である。
高分子材料を用いることで、従来のガラス製にはない特徴を持った光学フィルタを構成することができる。すなわち、プラスチック製にすることができ、軽量で耐久性(高温、高湿、衝撃)に優れる。
<<誘電体積層膜を利用した分波イメージセンサ;第1実施形態>>
図10〜図14は、誘電体積層膜1を利用した単波長分波対応の分光イメージセンサ11の第1実施形態を説明する図である。第1実施形態は、誘電体積層膜を利用した分波イメージセンサの基本的な設計手法を用いて構成されるものである。ここでは、赤外光IRを選択的に反射させるような誘電体積層膜1を利用することで、赤外光IRをカットして可視光VL成分を受光するようにした分光イメージセンサ11の設計例を述べる。
図4〜図6を用いて説明した誘電体積層膜1をシリコン(Si)フォトディテクタなどの検知素子が形成された屈折率が誘電体積層膜1をなす各誘電体層1_jよりも大きい半導体素子層上に作製するに当たっては、半導体素子層から誘電体積層膜1までの距離、すなわち第k層の誘電体層1_kをなす酸化シリコンSiO2層の厚みdkが重要である。
これは図10の構造図に示すように、たとえばシリコンSi(屈折率4.1)でなる半導体素子層(フォトディテクタなど)の表面であるシリコン基板1_ωの表面からの反射光L4との干渉効果によって、トータルな反射光LRtotal のスペクトルが変化することを意味する。
図11は、トータルな反射光LRtotal の、誘電体層1_kをなす酸化シリコンSiO2層の厚みdkの変動依存性を説明する反射スペクトル図である。ここでは、図4に示した7層構造の誘電体積層膜1について、誘電体層1_kの厚みdkを変えて計算した結果を示している。図11内の各図において、横軸は波長λ(μm)で、縦軸は反射率Rである。
図11内の各図から分かるように、厚みdk=0.154μmのとき、すなわち赤外光IRの反射中心波長λ0に対して、条件式(1)を満たす値のときに、反射スペクトルは殆ど影響を受けず、赤外光IR(波長λ≧780nm)を強く反射していることが分かる。それに対して厚みdk=0.3〜50μmまでのスペクトルには、厚みdk=∞の反射スペクトルに比べて別の振動が生じていることが分かる。それによって赤外での反射がディップ状に低下している波長域が存在するのが分かる。
ただし、厚みdk=2.5μm以上になると、赤外でのディップの半値幅が30nm以下になり、とりわけ厚みdk=5.0μm以上になるとその半値幅が20nm以下となり、一般的なブロードな自然光に対して十分に半値幅が狭くなるので平均化された反射率となる。さらに、厚みdk=0.3〜1.0μmのスペクトルに関しては、可視光VLでの反射率が高いことも分かる。これらのことから、望ましくは、厚みdk=0.154μm付近、すなわち条件式(1)を満たす値のときが最適であると言える。
図12は、誘電体層1_kをなす酸化シリコンSiO2層の厚みdkの変動依存性を説明する反射スペクトル図であって、特に、厚みdk=0.154μm付近で、厚みdkの値を変えて計算した結果を示すものである。図12内の各図において、横軸は波長λ(μm)で、縦軸は反射率Rである。
この結果から分かるように、条件式(1)を満たす厚みdk=0.154μmを中心として、厚みdk=0.14〜0.16μmの範囲であれば、可視光VLでの反射が抑えられることが分かる。
以上のことから、分光イメージセンサ11の最適構造は、図13の構造図に示すように、実質的には、第k層の誘電体層1_kを含めて8層構造の誘電体積層膜1Aを有するものとなり、その反射スペクトルの計算結果は図14に示す反射スペクトル図のようになる。言い換えると、誘電体積層膜1Aは、シリコン基板1_ω上に、第2の層材である酸化シリコンSiO2でなる層を4周期分設けた構造をなしている。
<<誘電体積層膜を利用した分波イメージセンサ;第2実施形態>>
図15〜図18は、誘電体積層膜1を利用した単波長分波対応の分光イメージセンサ11の第2実施形態を説明する図である。第2実施形態は、第1実施形態の設計手法の変形例(その1)を適用して構成されるものであり、図10〜図14にて説明した手法を基本として、可視光領域内における反射を低減するように変形したものである。
変形例(その1)は、第k層目の誘電体層1_kとシリコン基板1_ωとの間に、第k層目の誘電体層1_kの屈折率nkとシリコン基板1_ωの屈折率nω(=4.1)に対して中間的な屈折率をもつ第3の層材を追加した点に特徴を有する。
またこの変形に対応して、誘電体積層膜1の第1層目から第7層目の定数設計に際して、赤外光IRの反射中心波長λ0を900nmではなくより低い側の852nmに変更しており、シリコンナイトライドSiNの厚みdα(=d1,d3,…;j=奇数)は105nm、酸化シリコンSiO2層の厚みdβ(=d2,d4,…;j=偶数)は146nmとしている。これは、薄いSiN層(30nm)を新たに挿入することで可視光での反射率が減少するとともに同時に可視光と赤外光の境界780nm付近の反射率も低下するので、全体を短波長側にシフトさせてこの低下分を補うため、すなわち境界付近の赤外を効率よくカットするためである。もちろん、赤外光IRの反射中心波長λ0を900nmにしたままとしてもよい。
具体的には、図15に示す第1の変形例の構造においては、第k層目の酸化シリコンSiO2とシリコン基板1_ωとの間に厚みdγが比較的薄いシリコンナイトライドSiN層1_γを第3の層材として積層した構造をなしている。ここでは、厚みdγ=0.030μmとしている。その反射スペクトルの計算結果は図16に示すようになる。
なお、第1の変形例で追加した第3の層材は、第1の層材であるシリコンナイトライドSiNと同じであるが、シリコン基板1_ωよりも大きな屈折率を持つ部材であればよく、その他の部材であってもよい。
第1例の変形例の誘電体積層膜1を有する分光イメージセンサ11は、実質的には、7層の誘電体積層膜1と、第k層の誘電体層1_k(酸化シリコンSiO2層)とシリコンナイトライドSiN層1_γの2層分を含めて、全体として9層構造の誘電体積層膜1Bを有するものとなる。
また、図17に示す第2の変形例の構造においては、第1の変形例で追加した第3の層材とシリコン基板1_ωとの間に、第3の層材よりも小さな屈折率をもつ第4の層材を積層した構造をなしている。具体的には、第3の層材である厚みdγのシリコンナイトライドSiN層1_γとシリコン基板1_ωとの間に、第4の層材として、酸化シリコンSiO2層1_δを用いて、その厚みdδ=0.010μmとしている。その反射スペクトルの計算結果は図18に示すようになる。
なお、第2の変形例で追加した第4の層材は、第2の層材である酸化シリコンSiO2と同じであるが、第3の層材(本例ではシリコンナイトライドSiN)よりも小さな屈折率を持つ部材であればよく、その他の部材であってもよい。
第2例の変形例の誘電体積層膜1を有する分光イメージセンサ11は、実質的には、7層の誘電体積層膜1に、第k層の誘電体層1_k(酸化シリコンSiO2層)とシリコンナイトライドSiN層1_γと酸化シリコンSiO2層1_δの3層分を含めて、全体として10層構造の誘電体積層膜1Cを有するものとなる。言い換えると、誘電体積層膜1Cは、シリコン基板1_ω上に、第2の層材である酸化シリコンSiO2でなる層を5周期分設けた構造をなしている。
第1例と第2例とでは、酸化シリコンSiO2層1_δの有無の違いがあるが、図16および図18から分かるように、何れも、可視光VLでの反射率が十分に低下する。また、第2例のように、酸化シリコンSiO2層1_δを追加することで、暗電流を低減できる効果が得られる。なお、酸化シリコンSiO2層1_δを追加することで、シリコンナイトライドSiN層1_γを追加することによる効果が低減することのないように、両者の厚みの関係はdδ<<dγとするのがよい。
このように、第k層目の酸化シリコンSiO2とシリコン基板1_ωとの間に、屈折率nk(=nSiO2)と屈折率nω(=nSi)に対して中間的な屈折率nγ(=nSiN)をもつ部材として薄いシリコンナイトライドSiN層1_γを中間層として追加することで、可視光VLでの反射を抑えることが可能となる。これは、以下のように考えると理解される。
まず、可視光VLの波長をλVL,その層の中間的な屈折率をNmでその層の厚みをdmとすると、条件式(1)と同様の低反射膜の理論から、条件式(4)が得られ、条件式(4)を満たすときに、十分な効果を示すことになる。
ここで、波長λVLは可視光VL全体を指すので、その波長域は式(5)で与えられる。
第1例および第2例の各変形例では、中間層としてシリコンナイトライドSiN層1_γを追加しており、屈折率nγ(=nSiN=Nm)であるから、波長域を示した式(5)は、中間層の厚みdmすなわちシリコンナイトライドSiN層1_γの厚みdγを示した式(6)のように変形できる。
中間層の厚みdmは、式(6)を満足することが理想的ではあるが、それよりも少し外れていてもよく、実験によれば、特に薄い方に対しては余裕があり、図16および図18から分かるように、一例としては、dm=30nmの場合でも効果があることを確認することができた。もちろん、第k層目の酸化シリコンSiO2とシリコン基板1_ωとの間に中間層(第3の層材)を追加するということであるから、薄い方は0nmよりも大きい(0nmを含まない)ことはいうまでもない。つまり、第k層目の酸化シリコンSiO2とシリコン基板1_ωとの間に中間層を追加するに際しては、その中間層の厚みdm,dγは、式(7)を満足すればよいことになる。
<<誘電体積層膜を利用した分波イメージセンサ;第3実施形態>>
図19〜図24は、誘電体積層膜1を利用した単波長分波対応の分光フィルタ10および分光イメージセンサ11の第3実施形態を説明する図である。ここで、図19〜図22は、第3実施形態の分光フィルタ10を構成する誘電体積層膜1を説明する図であり、図23〜図24は、第3実施形態の誘電体積層膜1を利用した単波長分波対応の分光イメージセンサ11を説明する図である。
第3実施形態は、第1実施形態の設計手法の変形例(その2)を適用して構成されるものであり、誘電体積層膜1をなす誘電体層1_jの層数を低減する点に特徴を有する。この層数低減に当たっては、誘電体積層膜1内において、この誘電体積層膜1を構成する基本的な第1および第2の層材よりも大きな屈折率をもつ部材(層材)を追加した点に特徴を有する。
この大きな屈折率をもつ部材を追加するに当たっては、基本的な2つの層材の内の屈折率の大きい方を、さらに大きな屈折率をもつ第5の層材に代えるようにすればよい。この変形例(その2)の誘電体積層膜1は、実質的には、第5の層材1_ηを含めた構造の誘電体積層膜1Dとなる。言い換えると、誘電体積層膜1Dは、シリコン基板1_ω上に、第2の層材である酸化シリコンSiO2でなる層をN周期分設けた構造をなしている。
第5の層材の厚みdηに関しても、その屈折率をnηとしたとき、条件式(1)と同様の低反射膜の理論から、条件式(8)が得られ、条件式(8)を満たすときに、十分な効果を示すことになる。
たとえば、図19の構造図に示す例では、シリコンナイトライドSiNおよび酸化シリコンSiO2よりも高い屈折率=4.1を持つ厚みdη=61nmのシリコンSi層を第5の層材として、シリコンナイトライドSiNに代えて1層だけ(中間の第3層目の誘電体層1_3に代えて)追加している。その反射スペクトルの計算結果は図20に示す反射スペクトル図のようになる。
ここで、図22では、総層数が奇数の誘電体積層膜1の丁度真ん中の層をなすシリコンナイトライドSiNをシリコンSiに変更する場合において、その総層数を変えて計算した結果を示している。
なお、図19では、誘電体積層膜1の各層の定数設計に際して、赤外光IRの反射中心波長λ0を900nmではなく1000nmに変更しており、シリコンナイトライドSiNの厚みdα(=d1,d3,…;j=奇数)は123nm、酸化シリコンSiO2層の厚みdβ(=d2,d4,…;j=偶数)は171nmとしている。
また、図21の構造図に示す例では、誘電体積層膜1の各層の定数設計に際して、赤外光IRの反射中心波長λ0を900nmにしており、シリコンナイトライドSiNの厚みdα(=d1,d3,…;j=奇数)は111nm、酸化シリコンSiO2層の厚みdβ(=d2,d4,…;j=偶数)は154nmとし、厚みdη=55nmのシリコンSi層を第5の層材として、シリコンナイトライドSiNに代えて1層だけ追加している。その反射スペクトルの計算結果は図22に示す反射スペクトル図のようになる。
第2の変形例で追加した第5の層材は、半導体素子層をなすシリコン基板1_ωと同じであるが、誘電体積層膜1をなす第5の層材以外の誘電体層1_jよりも大きな屈折率を持つ部材であればよく、その他の部材であってもよい。
図20および図22に示に示す反射スペクトルの計算結果から分かるように、誘電体積層膜1をなす第5の層材以外の誘電体層1_jよりも大きな屈折率を持つ層材を追加することで、少ない層数で十分な反射率が得られるようになる。特に5層の場合、可視光VLでのバンド幅が十分に広く、可視光VLと赤外光IRを分けるには最適であることが分かる。
第1実施形態における図10〜図12を用いて説明したことと同様に、誘電体積層膜1Dを半導体素子層(シリコン基板1_ω)上に作製するに当たっては、半導体素子層から誘電体積層膜1Dまでの距離、すなわち第k層の誘電体層1_kをなす酸化シリコンSiO2層の厚みdkが重要である。
これは図23の構造図に示すように、たとえばシリコンSi(屈折率4.1)でなる半導体素子層(フォトディテクタなど)の表面であるシリコン基板1_ωの表面からの反射光LRとの干渉効果によって、トータルな反射光LRtotal のスペクトルが変化することを意味する。
図24は、図21に示した5層構造の誘電体積層膜1Dについて、トータルな反射光LRtotal の、誘電体層1_kをなす酸化シリコンSiO2層の厚みdkの変動依存性を説明する反射スペクトル図である。図24内の各図において、横軸は波長λ(μm)で、縦軸は反射率Rである。
図24内の各図から分かるように、厚みdk=0.15μmのとき、すなわち赤外光IRの反射中心波長λ0に対して、条件式(1)を満たす値dk=0.154μm近傍のときに、反射スペクトルは殆ど影響を受けず、赤外光IR(波長λ≧780nm)を強く反射していることが分かる。それに対して厚みdk=0.3〜50μmまでのスペクトルには、厚みdk=∞の反射スペクトルに比べて別の振動が生じていることが分かる。それによって赤外での反射がディップ状に低下している波長域が存在するのが分かる。このことは、第1実施形態における図11および図12を用いて説明したことと同様である。
<<誘電体積層膜を利用した分波イメージセンサ;第4実施形態>>
図25および図26は、誘電体積層膜1を利用した単波長分波対応の分光イメージセンサ11の第4実施形態を説明する図である。
第4実施形態は、誘電体積層膜1をなす誘電体層1_jの層数を低減するようにした第3実施形態に対する変形例であって、層数をさらに低減するようにした点に特徴を有する。具体的には、層数低減に当たって、誘電体積層膜1内において、この誘電体積層膜1を構成する基本的な第1および第2の層材よりも大きな屈折率をもつ複数の部材(層材)を追加した点に特徴を有する。この大きな屈折率をもつ複数の部材を追加するに当たっては、基本的な2つの層材の内の屈折率の大きい方を、さらに大きな屈折率をもつ第5の層材に代えるようにすればよい。この変形例の誘電体積層膜1は、実質的には、複数の第5の層材1_ηを含めた構造の誘電体積層膜1Eとなる。
複数の第5の層材1_ηに関しては、第3実施形態と同様に、ベースとする誘電体積層膜1をなす第5の層材以外の誘電体層1_jよりも大きな屈折率を持つ部材であればよい。また複数の何れもが同じ部材であってもよいし、それぞれ異なる部材であってもよい。
複数の第5の層材の厚みdηpに関しても、その屈折率をnηpとしたとき、条件式(1)と同様の低反射膜の理論から、条件式(9)が得られ、条件式(9)を満たすときに、十分な効果を示すことになる。
たとえば、図25の構造図に示す例では、3層構造の誘電体積層膜1Eを構成するようにし、シリコンナイトライドSiNおよび酸化シリコンSiO2よりも高い屈折率=4.1を持つ厚みdη=61nmのシリコンSi層を第5の層材として、シリコンナイトライドSiNに代えて2層設けている。その反射スペクトルの計算結果は図26に示す反射スペクトル図のようになる。言い換えると、誘電体積層膜1Eは、シリコン基板1_ω上に、第2の層材である酸化シリコンSiO2でなる層を2周期分設けた構造をなしている。
なお、誘電体積層膜1の各層の定数設計に際して、赤外光IRの反射中心波長λ0を1000nmにしており、第5の層材でなるシリコンSi層の厚みdη(=d1,d3)は61nm、酸化シリコンSiO2層の厚みdβ(=d2)およびdkは171nmとしている。
<<誘電体積層膜を利用した分波イメージセンサ;第5実施形態>>
図27および図28は、誘電体積層膜1を利用した単波長分波対応の分光イメージセンサ11の第5実施形態を説明する図である。
第5実施形態は、第3あるいは第4実施形態の分光イメージセンサ11に対して、第2実施形態と同様に、可視光領域内における反射を低減するように変形したものである。
図27の構造図に示す例では、図25に示した第4実施形態の誘電体積層膜1Eに対して、第k層目の誘電体層1_kとシリコン基板1_ωとの間に、第k層目の誘電体層1_kの屈折率nkとシリコン基板1_ωの屈折率nω(=4.1)に対して中間的な屈折率をもつ第3の層材を追加している。なお、第2実施形態とは異なり、赤外光IRの反射中心波長λ0を1000nmにしたままとしている。もちろん、第2実施形態と同様に、赤外光IRの反射中心波長λ0を1000nmではなくより低い側に変更してもよい。
具体的には、図27に示す構造においては、第2実施形態における第1の変形例と同様に、第k層目の酸化シリコンSiO2とシリコン基板1_ωとの間に厚みdγが比較的薄いシリコンナイトライドSiN層1_γを第3の層材として積層した構造をなしている。ここでは、厚みdγ=0.030μmとしている。その反射スペクトルの計算結果は図28に示す反射スペクトル図のようになる。この変形例の誘電体積層膜1を有する分光イメージセンサ11は、実質的には、3層の誘電体積層膜1に、第k層の誘電体層1_k(酸化シリコンSiO2層)とシリコンナイトライドSiN層1_γの2層を含めて、全体として5層構造の誘電体積層膜1Fを有するものとなる。
なお、この変形例で追加した第3の層材は、第1の層材であるシリコンナイトライドSiNと同じであるが、シリコン基板1_ωよりも大きな屈折率を持つ部材であればよく、その他の部材であってもよい。
図示を割愛するが、第2実施形態における第2の変形例と同様に、この変形例で追加した第3の層材とシリコン基板1_ωとの間に、第3の層材よりも小さな屈折率をもつ第4の層材を積層した構造とすることもできる。
何れも、第2実施形態と同様に、可視光VL領域での反射率を低下させることができ、特に青色B成分(波長420nm近傍)や緑色G成分(波長520nm近傍)での反射率は若干増加するものの、赤色R成分(波長600nm近傍)での反射率を十分に低下させることができ、赤外光IRとの分離に適するようになる。
<分光イメージセンサを適用した撮像装置;CCD対応>
図29および図30は、上記実施形態で説明した分光イメージセンサ11を、インターライン転送方式のCCD固体撮像素子(IT_CCDイメージセンサ)を用いた撮像装置に適用した場合の回路図である。この撮像装置100は、本発明に係る物理情報取得装置の一例である。
ここで、図29は図3と同様に、可視光VL帯内をR,G,Bの各色成分に分けつつ赤外光IRを検知するようにした構造を示し、可視光VLの内の青色光B、緑色光G、および赤色光Rと、赤外光IRとを、それぞれ独立に検知する構造であり、実質的には1つの単位画素マトリクス12内において波長別に画素(光電変換素子)12B,12G,12Rを形成しつつ、誘電体積層膜1を有していない画素12IRを有した構造である。
たとえば、図29(A)に示すように、CCD固体撮像素子101は、単位画素マトリクス12の他に、垂直転送方向に、垂直転送CCD122が複数本並べられて設けられている。垂直転送CCD122の電荷転送方向すなわち画素信号の読出方向が縦方向(図中のX方向)である。
さらに、垂直転送CCD122と各単位画素マトリクス12との間には読出ゲート124(波長別には124B,124G,124R,124IR)をなすMOSトランジスタが介在し、また各ユニットセル(単位構成要素)の境界部分には図示しないチャネルストップが設けられる。
なお、図29から分かるように、1つの単位画素マトリクス12が、青色光B、緑色光G、赤色光B、および赤外光IRを独立に検知する構造であり、実質的には1つの単位画素マトリクス12内において波長(色)別に画素12B,12G,12R,12IRを形成した構造である。これら単位画素マトリクス12を有して構成されるセンサ部112の垂直列ごとに設けられ、各センサ部から読出ゲート124によって読み出された信号電荷を垂直転送する複数本の垂直転送CCD122によって撮像エリア110が構成される。
ここで、色フィルタ14の配列としては、たとえば、シリコン基板1_ωの受光面側における、垂直転送CCD122の縦方向(X方向)に青、緑、赤、IR、青、緑、赤、IR、…の順となり、また、複数の垂直転送CCD122の同一行方向(Y方向)にも、青、緑、赤、IR、青、緑、赤、IR、…の順となるようにする。
センサ部112の単位画素マトリクス12(各画素12B,12G,12R,12IR)に蓄積された信号電荷は、読出ゲート124に読出パルスROGに対応するドライブパルスφROGが印加されることで、同一垂直列の垂直転送CCD122に読み出される。垂直転送CCD122は、たとえば3相〜8相などの垂直転送クロックVxに基づくドライブパルスφVxよって転送駆動され、読み出された信号電荷を水平ブランキング期間の一部にて1走査線(1ライン)に相当する部分ずつ順に垂直方向に転送する。この1ラインずつの垂直転送を、特にラインシフトという。
また、CCD固体撮像素子101には、複数本の垂直転送CCD122の各転送先側端部すなわち、最後の行の垂直転送CCD122に隣接して、所定(たとえば左右)方向に延在する水平転送CCD126(Hレジスタ部、水平転送部)が1ライン分設けられる。この水平転送CCD126は、たとえば2相の水平転送クロックH1,H2に基づくドライブパルスφH1,φH2によって転送駆動され、複数本の垂直転送CCD122から転送された1ライン分の信号電荷を、水平ブランキング期間後の水平走査期間において順次水平方向に転送する。このため2相駆動に対応する複数本(2本)の水平転送電極が設けられる。
水平転送CCD126の転送先の端部には、たとえばフローティング・ディフュージョン・アンプ(FDA)構成の電荷電圧変換部を有する出力アンプ128が設けられる。出力アンプ128は、物理情報取得部の一例であって、電荷電圧変換部において、水平転送CCD126によって水平転送されてきた信号電荷を順次電圧信号に変換し所定レベルに増幅して出力する。この電圧信号は、被写体からの光の入射量に応じたCCD出力(Vout )として画素信号が導出される。以上により、インターライン転送方式のCCD固体撮像素子11が構成される。
CCD出力(Vout )として出力アンプ128から導出された画素信号は、図29(B)に示す画像信号処理部140に入力される。画像信号処理部140には、信号切替制御部の一例である画像切替制御部142からの画像切替制御信号が入力されるようになっている。CCD固体撮像素子101は、駆動制御部(駆動部の一例)146からの駆動パルスの元で駆動される。
画像切替制御部142は、画像信号処理部140の出力を赤外光IRの影響をほぼ全く受けない可視光VLのモノクロ画像やカラー画像と、可視光VLの影響をほぼ全く受けない赤外光IRの画像の何れか一方のみ、もしくはこれらの双方、あるいは可視光VLと赤外光IRの混在画像すなわち赤外光IRの輝度を加算した擬似モノクロ画像あるいは擬似カラー画像にするかの切替えを指令する。つまり、可視光VLの画像と赤外光IRに関わる画像との同時撮像出力や切替撮像出力を制御する。
この指令は、撮像装置を操作する外部入力によってもよく、また、画像信号処理部140の赤外光IRのない可視光輝度により画像切替制御部142が自動処理により切替えを指令してもよい。
ここで、画像信号処理部140は、たとえば、各画素の撮像データR,G,B,IRを同時化する同時化処理、スミア現象やブルーミング現象によって生じる縦縞のノイズ成分を補正する縦縞ノイズ補正処理、ホワイトバランス(WB;White Balance )調整を制御するWB制御処理、階調度合いを調整するガンマ補正処理、電荷蓄積時間の異なる2画面の画素情報を利用してダイナミックレンジを拡大するダイナミックレンジ拡大処理、あるいは輝度データ(Y)や色データ(C)を生成するYC信号生成処理などを行なう。これにより、赤(R),緑(G),青(B)の原色の撮像データ(R,G,B,IRの各画素データ)に基づく可視光VL帯の画像(いわゆる通常画像)が得られる。
また、画像信号処理部140は、赤外光IRの画素データを用いて、赤外光IRに関わる画像を生成する。たとえば、誘電体積層膜1を形成しなかった画素12IRにおいて、赤外光IRだけでなく可視光VLも同時に信号に寄与するように色フィルタ14Cを入れない場合には、画素12IRからの画素データを用いることで、高感度の画像が得られる。あるいは、色フィルタ14Cとして、緑色フィルタ14Gを入れる場合には、画素12IRからは赤外光IRと緑色の可視光LGの混在の像が得られるが、画素12Gから得られる緑色成分との差分を取ることで、赤外光IRのみの像が得られる。あるいは、色フィルタ14Cとして黒色フィルタ14BKを設ける場合には、画素IRからの画素データを用いることで赤外光IRのみの像が得られる。
このようにして生成された各画像は、図示しない表示部に送られ、操作者に可視画像として提示されたり、あるいはそのままハードディスク装置などの記憶装置に記憶・保存されたり、またはその他の機能部に処理済みデータとして送られる。
また、図30は、可視光VL(青色光、緑色光、および赤色光)と赤外光IRとを独立に検知する構造を示す。詳細な説明は割愛するが、基本的な構成は、図29に示したと同様であり、実質的には1つの単位画素マトリクス12(フォトダイオード群)内において可視光VL用の画素12Wを形成しつつ、誘電体積層膜1を有していない画素12IRを有した構造である。基本的には、色フィルタ14の配列が異なるだけで、その他の点は図29と同様である。
ここで、色フィルタ14の配列としては、たとえば、シリコン基板1_ωの受光面側における、垂直転送CCD122の縦方向(X方向)に可視光VL、赤外光IR、可視光VL、赤外光IR、…の順となり、また、複数の垂直転送CCD122の同一行方向(Y方向)にも、可視光VL、赤外光IR、可視光VL、赤外光IR、…の順となるようにする。
<分光イメージセンサを適用した撮像装置;CMOS対応>
図31および図32は、上記実施形態で説明した分光イメージセンサ11を、CMOS固体撮像素子(CMOSイメージセンサ)を用いた撮像装置に適用した場合の回路図である。この撮像装置100は、本発明に係る物理情報取得装置の一例である。
ここで、図31は図3と同様に、可視光VL帯内をR,G,Bの各色成分に分けつつ赤外光IRを検知するようにした構造を示し、可視光VLの内の青色光B、緑色光G、および赤色光Rと、赤外光IRとを、それぞれ独立に検知する構造であり、実質的には1つの単位画素マトリクス12内において波長別に画素(光電変換素子)12B,12G,12Rを形成しつつ、誘電体積層膜1を有していない画素12IRを有した構造である。
また、図32は、可視光VL(青色光、緑色光、および赤色光)と赤外光IRとを独立に検知する構造を示し、実質的には1つの単位画素マトリクス12(フォトダイオード群)内において可視光VL用の画素12Wを形成しつつ、誘電体積層膜1を有していない画素12IRを有した構造である。基本的には、色フィルタ14の配列が異なる(図30と同様)だけで、その他の点は図31と同様である。
分光イメージセンサをCOMSに応用した場合、単位画素マトリクス12内の1つ1つの画素(光電変換素子)12B,12G,12R,12IRに対してセルアンプを1つ持つ構造となる。よってこの場合、図31(A)および図32のような構造となる。画素信号はセルアンプで増幅された後にノイズキャンセル回路などを通して出力される。
たとえばCMOS固体撮像素子201は、入射光量に応じた信号を出力する受光素子(電荷生成部の一例)を含む複数個の画素が行および列に配列された(すなわち2次元マトリクス状の)画素部を有し、各画素からの信号出力が電圧信号であって、CDS(Correlated Double Sampling ;相関2重サンプリング)処理機能部やデジタル変換部(ADC;Analog Digital Converter)などが列並列に設けられている、いわゆる典型的なカラム型となっている。
具体的には、図31に示すように、CMOS固体撮像素子201は、複数の画素12が行および列に配列された画素部(撮像部)210と、画素部210の外側に設けられた駆動制御部207と、カラム処理部226と、出力回路228とを備えている。
なお、カラム処理部226の前段または後段には、必要に応じて信号増幅機能を持つAGC(Auto Gain Control) 回路などをカラム処理部226と同一の半導体領域に設けることも可能である。カラム処理部226の前段でAGCを行なう場合にはアナログ増幅、カラム処理部226の後段でAGCを行なう場合にはデジタル増幅となる。nビットのデジタルデータを単純に増幅してしまうと、階調が損なわれてしまう可能性があるため、どちらかというとアナログにて増幅した後にデジタル変換するのが好ましいと考えられる。
駆動制御部207は、画素部210の信号を順次読み出すための制御回路機能を備えている。たとえば、駆動制御部207としては、列アドレスや列走査を制御する水平走査回路(列走査回路)212と、行アドレスや行走査を制御する垂直走査回路(行走査回路)214と、外部との間でのインタフェース機能や内部クロックを生成するなどの機能を持つ通信・タイミング制御部220とを備えている。
水平走査回路212は、カラム処理部226からカウント値を読み出す読出走査部の機能を持つ。これらの駆動制御部207の各要素は、画素部210とともに、半導体集積回路製造技術と同様の技術を用いて単結晶シリコンなどの半導体領域に一体的に形成され、半導体システムの一例である固体撮像素子(撮像デバイス)として構成される。
図31では、簡単のため行および列の一部を省略して示しているが、現実には、各行や各列には、数十から数千の画素12が配置される。この画素12は、典型的には、受光素子(電荷生成部)としての単位画素マトリクス12と、増幅用の半導体素子(たとえばトランジスタ)を有する画素内アンプ(セルアンプ;画素信号生成部)205(色別には205B,205G,205R)とから構成される。
また、図31から分かるように、1つの単位画素マトリクス12が、青色光B、緑色光G、赤色光R、および赤外光IRを独立に検知する構造であり、実質的には1つの単位画素マトリクス12内において波長(色)別に画素12B,12G,12R,12IRを形成した構造である。
ここで、色フィルタ14の配列としては、たとえば、シリコン基板1_ωの受光面側におけるX方向に青、緑、赤、IR、青、緑、赤、IR、…の順となり、またX方向と直交するY方向にも、青、緑、赤、IR、青、緑、赤、IR、…の順となるようにする。
画素内アンプ205としては、たとえばフローティングディフュージョンアンプ構成のものが用いられる。一例としては、電荷生成部に対して、電荷読出部(転送ゲート部/読出ゲート部)の一例である読出選択用トランジスタ、リセットゲート部の一例であるリセットトランジスタ、垂直選択用トランジスタ、およびフローティングディフュージョンの電位変化を検知する検知素子の一例であるソースフォロア構成の増幅用トランジスタを有する、CMOSセンサとして汎用的な4つのトランジスタからなる構成のものを使用することができる。
あるいは、特許第2708455号公報に記載のように、電荷生成部により生成された信号電荷に対応する信号電圧を増幅するための、ドレイン線(DRN)に接続された増幅用トランジスタと、画素内アンプ205をリセットするためのリセットトランジスタと、垂直シフトレジスタより転送配線(TRF)を介して走査される読出選択用トランジスタ(転送ゲート部)を有する、3つのトランジスタからなる構成のものを使用することもできる。
画素12は、行選択のための行制御線215を介して垂直走査回路214と、また垂直信号線219を介してカラム処理部226と、それぞれ接続されている。ここで、行制御線215は垂直走査回路214から画素に入る配線全般を示す。一例として、この行制御線215は、長尺状の散乱体3に対して平行な方向に配される。
水平走査回路212や垂直走査回路214は、たとえばシフトレジスタやデコーダを含んで構成され、通信・タイミング制御部220から与えられる制御信号に応答してアドレス選択動作(走査)を開始するようになっている。このため、行制御線215には、画素12を駆動するための種々のパルス信号(たとえば、リセットパルスRST、転送パルスTRF、DRN制御パルスDRNなど)が含まれる。
通信・タイミング制御部220は、図示しないが、各部の動作に必要なクロックや所定タイミングのパルス信号を供給するタイミングジェネレータTG(読出アドレス制御装置の一例)の機能ブロックと、端子220aを介してマスタークロックCLK0を受け取り、また端子220bを介して動作モードなどを指令するデータDATAを受け取り、さらにCMOS固体撮像素子201の情報を含むデータを端子220cを介して出力する通信インタフェースの機能ブロックとを備える。
たとえば、水平アドレス信号を水平デコーダへ、また垂直アドレス信号を垂直デコーダへ出力し、各デコーダは、それを受けて対応する行もしくは列を選択し、駆動回路を介して画素12やカラム処理部226を駆動する。
この際、画素12を2次元マトリックス状に配置してあるので、画素内アンプ(画素信号生成部)205により生成され垂直信号線219を介して列方向に出力されるアナログの画素信号を行単位で(列並列で)アクセスし取り込む(垂直)スキャン読みを行ない、この後に、垂直列の並び方向である行方向にアクセスし画素信号(たとえばデジタル化された画素データ)を出力側へ読み出す(水平)スキャン読みを行なうようにすることで、画素信号や画素データの読出しの高速化を図るのがよい。もちろん、スキャン読みに限らず、読み出したい画素12を直接にアドレス指定することで、必要な画素12の情報のみを読み出すランダムアクセスも可能である。
また、通信・タイミング制御部220では、端子220aを介して入力されるマスタークロック(マスタークロック)CLK0と同じ周波数のクロックCLK1や、それを2分周したクロックやより分周した低速のクロックをデバイス内の各部、たとえば水平走査回路212、垂直走査回路214、カラム処理部226などに供給する。
垂直走査回路214は、画素部210の行を選択し、その行に必要なパルスを供給するものである。たとえば、垂直方向の読出行を規定する(画素部210の行を選択する)垂直デコーダと、垂直デコーダにて規定された読出アドレス上(行方向)の画素12に対する行制御線215にパルスを供給して駆動する垂直駆動回路とを有する。なお、垂直デコーダは、信号を読み出す行の他に、電子シャッタ用の行なども選択する。
水平走査回路212は、低速クロックCLK2に同期してカラム処理部226内の図示しないカラム回路を順番に選択し、その信号を水平信号線(水平出力線)218に導くものである。たとえば、水平方向の読出列を規定する(カラム処理部226内の個々のカラム回路を選択する)水平デコーダと、水平デコーダにて規定された読出アドレスに従って、選択スイッチ227にてカラム処理部226の各信号を水平信号線218に導く水平駆動回路とを有する。なお、水平信号線218は、たとえばカラムAD回路が取り扱うビット数n(nは正の整数)分、たとえば10(=n)ビットならば、そのビット数分に対応して10本配置される。
このような構成のCMOS固体撮像素子201において、画素12から出力された画素信号は、垂直列ごとに、垂直信号線219を介して、カラム処理部226のカラム回路に供給される。ここで、単位画素マトリクス12(各画素12B,12G,12R,12IR)に蓄積された信号電荷は、同一垂直列の垂直信号線219を介して読み出される。
カラム処理部226の各カラム回路は、1列分の画素の信号を受けて、その信号を処理する。たとえば、各カラム回路は、アナログ信号を、たとえば低速クロックCLK2を用いて、たとえば10ビットのデジタルデータに変換するADC(Analog Digital Converter)回路を持つ。
また、回路構成を工夫することで、垂直信号線219を介して入力された電圧モードの画素信号に対して、画素リセット直後の信号レベル(ノイズレベル)と真の(受光光量に応じた)信号レベルVsig との差分をとる処理を行なうことができる。これにより、固定パターンノイズ(FPN;Fixed Pattern Noise )やリセットノイズといわれるノイズ信号成分を取り除くことができる。
このカラム回路で処理されたアナログの画素信号(あるいはデジタルの画素データ)は、水平走査回路212からの水平選択信号により駆動される水平選択スイッチ217を介して水平信号線218に伝達され、さらに出力回路228に入力される。なお、10ビットは一例であって、10ビット未満(たとえば8ビット)や10ビットを超えるビット数(たとえば14ビット)など、その他のビット数としてもよい。
このような構成によって、電荷生成部としての単位画素マトリクス12(画素12B,12G,12R,12IR)が行列状に配された画素部210からは、行ごとに各垂直列について画素信号が順次出力される。そして、受光素子が行列状に配された画素部210に対応する1枚分の画像すなわちフレーム画像が、画素部210全体の画素信号の集合で示されることとなる。
出力回路228は、CCD固体撮像素子101における出力アンプ128に対応するものであって、その後段には、CCD固体撮像素子101と同様に、図31(B)に示すように、画像信号処理部140が設けられる。画像信号処理部140には、CCD固体撮像素子101の場合と同様に、画像切替制御部142からの画像切替制御信号が入力されるようになっている。
これにより、赤(R),緑(G),青(B)の原色の撮像データ(R,G,B,IRの各画素データ)もしくは可視光VL用の画素データに基づく可視光VL帯の画像(いわゆる通常画像)が得られるとともに、赤外光IRの画素データを用いることで、赤外光IRに関わる画像を得ることができる。
なお、図示を割愛するが、図29や図31を基本構成として利用しつつ、赤外光IR用の画素12IRを取り除くことで、可視光VL帯内をR,G,Bの各色成分に分けて検知するようにした構造とすることもできる。
色フィルタ14の配列としては、たとえば、シリコン基板1_ωの受光面側における、垂直転送CCD122の縦方向(X方向)に青、緑、赤、緑、青、緑、赤、緑、青、…の順となり、また、複数の垂直転送CCD122の同一行方向(Y方向)にも、青、緑、赤、緑、青、緑、赤、緑、青、…の順となるようにする。あるいは、2行2列の単位画素マトリクス12内において、2つのG色とそれぞれ1つのR色およびB色を配したいわゆるベイヤ配列とすることもできる。また、B,G,Rの3色に第4色(たとえばエメラルド)を加えることで色再現範囲を拡張するようにしてもよい。
これらの場合、可視光VL領域のみの撮像にはなるが、減色フィルタの一例として赤外線カットフィルタをセンサの前に入れる必要がなくなる。高価な赤外線カットフィルタを不要にすることで、コストを大幅に低減できる。また、厚みや重さのある赤外線カットフィルタを不要にすることで、光学系を軽量かつコンパクトにできる。もちろん、赤外線カットフィルタの挿入/抜出機構が不要であり、装置が大がかりになることもない。
もちろん、このようなコスト的に有利になるなどの点は、既存のガラス製の赤外光カットフィルタを誘電体積層膜に代えた、撮像センサと誘電体積層膜とが別体の構成(検知部と誘電体積層膜とが一体構成でない)でも言えることである。
たとえば、既存のガラス製の赤外光カットフィルタを用いる場合に比べて、コスト的に有利になるし、コンパクトになって携帯性などに優れたデジタルカメラなどの撮像装置を提供することができる。
また、赤外線カットフィルタをセンサの前に入れる構成では、ガラス基板をCCDやCMOSなどの撮像素子の前に入れることで光路の途中に空気とガラス界面が生じてしまう。したがって、透過してほしい可視光の光までがその界面で反射されてしまい、感度低下を導く問題が生じる。さらにこのような界面が多くなることで、斜め入射における(ガラス内で)屈折する角度が波長によって異なり、光路の変化による焦点ぼけを引き起こす。これに対して、誘電体積層膜を用いることで、このような波長による焦点ぼけがなくなる利点が得られる。
<<製造プロセスの具体例>>
図33は、上記実施形態で説明したセンサ構造の分光イメージセンサを製造する具体的なプロセス例を示す図である。この図33は、赤外光IR用の受光部と可視光VL用の受光部とを備えた分光イメージセンサの製造プロセス例である。
この構造の作製に当たっては、図29および図30あるいは図31および図32に示されるような一般的なCCDやCMOS構造の回路をまず形成する(図33(A))。この後に、Siフォトダイオードの上にたとえばCVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長法)などを用いてSiO2膜とSiNを順次積層する(図33(B))。
この後、たとえば4つの画素の内1つだけをRIE(Reactive Ion Etching)法などを用いてエッチングすることで、赤外光IR用の受光部に最下層のSiO2膜に達する開口部を設ける(図33(E))。
この後、誘電体積層膜1などの保護のために、一部に開口部が設けられた誘電体積層膜1上にたとえば再度CVDなどを用いてSiO2膜を積層する(図33(F))。もちろん、このプロセスは必須ではない。
なお、この際、可視光VL用の3つの画素(R,G,B成分用)をエッチングしないように、赤外光IR用の受光部に開口部が設けられたフォトレジストを用いてもよい(図33(C),(D))。この場合、誘電体積層膜1上にSiO2膜を積層する前に、フォトレジストを除去する必要がある(図33(D)→(E))。
また、図示を割愛するが、さらにその上に色フィルタやマイクロレンズを画素に対応するように形成してもよい。
さらに若干の赤外光IRが漏れて可視光VL用の光電変換素子(フォトダイオードなど)に入射する場合、全体に弱い赤外線カットフィルタを入れてもよい。たとえば50%以下の赤外線カットフィルタを入れることで、可視光VLに対して殆ど問題のないレベルまでカットしても赤外光IR用の光電変換素子(フォトダイオードなど)では、赤外光IRが集光するので十分な感度となる。
なお、このような製造プロセスでは、Si基板表面近くまでエッチングする、すなわち赤外光IR用の受光部に最下層のSiO2膜に達する開口部を設けるため(図33(E))、エッチングによるダメージが問題になることがある。この場合は、Si基板直上のSiO2層の厚みdを大きくしてダメージを低減することも可能である。
ここでdk=2.5μm以上になると、図11のように反射スペクトルの赤外光IR領域でのディップの半値幅が狭くなるので、一般的なブロードな自然光に対して平均化された反射率となるので、赤外光の反射が可能となる。したがって望ましくは第k番目の誘電体層1_kの厚みdkを2.5μm以上にするのがよい。さらに望ましくは、5μm以上の厚みにするとなおよい。
また、シリコン基板1_ω上に形成されるフォトダイオードや画素内アンプなどためのメタル配線、すなわち、単位信号生成部としての画素内アンプなどから単位信号としての画素信号を撮像部(検出領域)から読み出すための信号線をなす配線層をシリコン基板1_ω直上に形成する場合、シリコン基板1_ω直上に誘電体積層膜1を設けた構造よりは、シリコン基板1_ω上である程度離したところに誘電体積層膜1を形成する、すなわちメタル配線より上側に誘電体積層膜1を形成することで、プロセスが容易になり、コストが低く抑えられるメリットが得られる。詳しくは後述するが、誘電体積層膜1をなす層数を増やすことで、ある程度よい結果が得られる。以下、メタル配線を考慮した分光イメージセンサについて説明する。
<<誘電体積層膜を利用した分波イメージセンサ;第6実施形態>>
図34〜図40は、誘電体積層膜1を利用した単波長分波対応の分光イメージセンサ11の第6実施形態を説明する図である。第6実施形態は、図10〜図14にて説明した手法を基本として、メタル配線を考慮して、シリコン基板1_ωよりある程度距離の離れた上側において、誘電体積層膜1をシリコン基板1_ω上に、フォトダイオードなどの検知部と一体的に形成する点に特徴を有する。
たとえば、図34のように、CMOS構造を考えると、フォトダイオードなどの検知部が形成された半導体素子層上に配線層を1つ有し、その厚みが0.7μm程度ある場合において、フォトダイオードなどが形成されるシリコン基板1_ωよりも略0.7μm上に多層膜構造を一体的に形成する場合、第1層目の配線層のプロセスの後に誘電体積層膜1を形成すればよい。こうすることで、厚みdk≒0.7μmを持つ第k層内に配線層を設けることができる。
また、図35のように、半導体素子層上に配線層を3つ有し、それらの総厚みが3.2μm程度ある場合において、フォトダイオードなどが形成されるシリコン基板1_ωよりも略3.2μm上に多層膜構造を一体的に形成する場合、最上である第3層目の配線層のプロセスの後に誘電体積層膜1を形成すればよいことになる。こうすることで、厚みdk=3.2μmを持つ第k層内に配線層を設けることができる。
ここで、“略3.2μm”と記載したのは、図示のように、本例では、シリコン基板1_ω上に厚みが10nm程度のSiO2層(δ層)を設け、その上に、厚みが65nm程度のSiN層(γ層)を設けており、“3.2μm”は、これらγ,δ層を除くk層の厚さを意味するからである。
色フィルタ14やマイクロレンズなどは、この誘電体積層膜1を形成した後に形成すればよい。
これらに対応する分光イメージセンサ11として、たとえば、図36では、図17に示した第2実施形態の7層構造としつつ、第k層の誘電体層1_k(酸化シリコンSiO2層)とシリコンナイトライドSiN層1_γと酸化シリコンSiO2層1_δの3層分を持つ誘電体積層膜1Cをベースとして、第k層の誘電体層1_kの厚さを700nmにしている。また、第k層目の酸化シリコンSiO2とシリコン基板1_ωとの間に厚みdγ=65nmもしくは100nmの比較的薄いシリコンナイトライドSiN層1_γを第3の層材として積層し、さらに、この追加した第3の層材とシリコン基板1_ωとの間に、第3の層材よりも小さな屈折率をもつ第4の層材としての酸化シリコンSiO2層1_δを厚みdδ=10nmで積層した誘電体積層膜1Cにしている。
また、図37では、基本となる誘電体積層膜1を9層構造としつつ、第k層の誘電体層1_kの厚さを700nmもしくは3.2μmにしている。また、第k層目の酸化シリコンSiO2とシリコン基板1_ωとの間に厚みdγ=65nmの比較的薄いシリコンナイトライドSiN層1_γを第3の層材として積層し、さらに、この追加した第3の層材とシリコン基板1_ωとの間に、第3の層材よりも小さな屈折率をもつ第4の層材としての酸化シリコンSiO2層1_δを厚みdδ=10nmで積層した誘電体積層膜1Cにしている。
これらの反射スペクトルの計算結果は図38〜図40に示すようになる。図37や図36から分かるように、0.7μmや3.2μmほどシリコン基板1_ωり上側に誘電体積層膜1を形成することで、配線プロセスが容易になる。なお、正確には、シリコン基板1_ω直上には第4の層材であるSiO2層と第3の層材であるSiN層の順にそれぞれ10nmと65nm(あるいは100nm)の厚が存在するので、それより上側になる。
ここではSiN膜とSiO2膜とを有する誘電体積層膜1において、7層の場合と9層の場合を示したたが、図39から分かるように、7層の場合に比べて9層まで多層構造の層数を増やすと、赤外光IR領域での反射率Rが0.9を超えて十分になるのが分かる。
また図40から分かるように、第k番目の誘電体層1_kの厚みdkが3.2μmの7層構造では、赤外光反射領域でのディップが大きく、結果として反射が大きく低下していることが分かる。しかしながら、これも9層まで層数を増やすと、これらのディップが小さくなり、赤外光IR領域での反射が十分になることが分かる。
また、図38から分かるように、第3の層材であるSiN層の厚さdγが厚いと、可視光VL領域での反射が高くなる。これは、第2実施形態において説明したように、中間層として設ける第3の層材は、可視光領域内における反射を低減することを目的とするものであり、中間層とし設けた誘電体層1_γの厚みdγは、式(6)を満足することが理想的であり、薄い方には十分な余裕があるが、大きい方には余裕が少ないことによると考えられる。
このように、従来の配線プロセスを行なった後に、誘電体積層膜1を形成する方が製造が容易となり、新たなプロセスの検討が不必要となりコスト的によい。すなわち図35のようなCMOS構造を作製することで、プロセスも容易にできて、かつ有効な効果が得られることになる。誘電体積層膜1を形成してから配線プロセスをすると、誘電体積層膜1の除去などを行なうなどプロセス的に困難になるのと大きな違いである。
<色分離フィルタ配列;第1例>
図41は、色分離フィルタ配置の第1の具体例(以下第1具体例という)を示す図である。この第1具体例は、可視光カラー画像を撮像するための検知領域以外に、可視光を排除し赤外光のみを受光・検知する検知領域を設けている点に特徴を有する。
図41(A)に示すように、各色のフィルタをモザイク状に配したいわゆるベイヤー(Bayer)配列の基本形のカラーフィルタを利用しており、先ず、正方格子状に配された単位画素が赤(R),緑(G),青(B)の3色カラーフィルタに対応するように、色分離フィルタの繰返単位が2画素×2画素で配されて画素部を構成するようにする。また、可視光を排除し赤外光のみを受光・検知する検知部(検知領域)を設けるべく、2つの緑(G)のうちの一方を黒色フィルタBKに置き換える。つまり、可視光カラー画像用に原色フィルタR,G,Bの3つの波長領域(色成分)用のものと、原色フィルタR,G,Bの成分とは異なる赤外光用の黒色フィルタBKといった別個のフィルタ特性を有する4種類の色フィルタを規則的に配設している。
たとえば、偶数行奇数列には第1のカラー(赤;R)を感知するための第1のカラー画素を配し、奇数行奇数列には第2のカラー(緑;G)を感知するための第2のカラー画素を配し、奇数行偶数列には第3のカラー(青;B)を感知するための第3のカラー画素を配し、偶数行偶数列には赤外光IRを感知するための第4のカラー画素(ここでは黒色補正画素)を配しており、行ごとに異なったG/B、またはR/BKの画素が市松模様状に配置されている。このようなベイヤー配列の基本形のカラーフィルタの色配列は、行方向および列方向の何れについても、G/BまたはR/BKの2色が2つごとに繰り返される。
原色フィルタR,G,Bを通して対応する検知部で検知することで可視光カラー画像を撮像できるとともに、黒色フィルタBKを通して対応する検知部で検知することで赤外光画像を可視光カラー画像とは独立かつ同時に撮像することができる。原色フィルタR,G,Bが配される検知部(検知要素)は、通過波長領域である可視光領域をさらに波長分離して検知するためのものである。
なお、上記例では、可視光カラー画像撮像用の色フィルタ14として、原色フィルタ14R,14G,14Bを用いていたが、補色フィルタCy,Mg,Yeを用いることもできる。補色フィルタCy,Mg,Yeが配される検知部(検知要素)は、通過波長領域である可視光領域をさらに波長分離して検知するためのものである。この場合たとえば、図41(B)に示すように、原色フィルタ14RをイエローYeに、原色フィルタ14GをマゼンタMgに、原色フィルタ14BをシアンCyに、それぞれ置き換えた配置とするとよい。そして、対角に2つ存在することになるマゼンタMgの一方に、補正画素としての黒色フィルタBKを配する。
黒色フィルタが配される画素を除く画素12Cy,12Mg,12Ye上には誘電体積層膜1が形成され、さらにその上に、補色フィルタ14Cy,14Mg,14Yeが設けられ、補色フィルタ14Cy,14Mg,14Yeを通して可視光VLの内の対応するシアンCy、マゼンタMg、およびイエローYeの各色を受光するようにする。つまり、誘電体積層膜を補色系のカラーフィルタのある画素の検知部上に形成することで、赤外光を効果的にカットできる機能を持たせる。
また、Cy,Mg,Yeの補色フィルタのみの組合せに限らず、原色フィルタの1つである緑色フィルタGや白色フィルタWを補色フィルタと組み合せたものに対しても、補正画素をなす黒色フィルタBKの画素を設けることもできる。たとえば、図41(C)に示すように、Cy,Mgの2つの補色フィルタとGの原色フィルタとを組み合わせたフィールド蓄積周波数インターリーブ方式用のものにおいて、4画素内に2つ存在する原色フィルタGの内の一方を補正画素としての黒色フィルタBKに置き換えるとよい。
<センサ構造の具体例1;CCD対応>
図42および図43は、図41に示した色分離フィルタの配置を持ち、赤外光IRのみと可視光VLの2つの波長成分を同時に像として別々に撮像できるようにしたCCD固体撮像素子を説明する図である。ここで、図42は、構造例を示す見取り図(斜視図)である。また、図43は、基板表面付近の断面構造図である。なおここでは、誘電体積層膜1を利用したCCD固体撮像素子101への適用事例で示している。
図42に示すCCD固体撮像素子101の構造においては、4画素でなる単位画素マトリクス12だけを示しているが、実際にはこれを横方向に繰り返し、それをさらに縦方向に繰り返した構造である。
単位画素マトリクス12をなす周期配列の4画素の内、1つの画素12IR上には誘電体積層膜1が形成されていないが黒色フィルタ14BKが設けられていて、この黒色フィルタ14BKを通して赤外光IRのみを受光するようになっている。つまり、赤外光IRの画素12IRの上に、色フィルタ14として黒色フィルタ14BKを用いることによって、可視光VLをカットし、赤外光IRのみを受光できるようにしている。この黒色フィルタ14BKが設けられた画素12IRを黒色画素12BKとも呼ぶ。
一方、他の3つの画素12B,12G,12R上には誘電体積層膜1が形成され、さらにその上に原色フィルタ14R,14G,14Bが設けられていて、原色フィルタ14R,14G,14Bを通して可視光VLの内の対応する青色B、緑色G、および赤色Rの3原色を受光するようにしている。つまり、誘電体積層膜を3原色系のカラーフィルタのある画素の検知部上に形成することで、赤外光を効果的にカットできる機能を持たせている。なお、回路構成は、図29に示されるものを採用した。
また基板表面付近の断面構造図を示した図43では、可視光VLのみを受光する画素を示している。赤外光IRを受光する画素12IRは、誘電体積層膜1および黒色フィルタ14BKがない構造である。すなわち、図33で説明した作製プロセス工程のように誘電体積層膜を図13に示した構造でCVD法でSiN層とSiO2層を順次積層した後、リソグラフィ技術とRIE法によって赤外光IRを受光する画素のみにおいて除去する。その後、再びSiO2層を積層して平坦化した。
このような構造で作製された撮像素子を用いることで、3原色成分に基づく可視光カラー画像と、赤外光IRのみの像を同時に撮像できることが分かった。すなわち、色フィルタ14Cとして、可視光VLのみを吸収するような黒色フィルタ14BKを設けると、可視光VLをこの黒色フィルタ14BKで吸収させることができ、赤外光IRの画素12IRからの画像データに基づいて赤外光IRのみの像が得られることになる。
<色分離フィルタ配列;第2例>
図44は、色分離フィルタ配置の第2の具体例(以下第2具体例という)を示す図である。この第2具体例は、可視光カラー画像を撮像するための検知領域以外に、赤外光とともに可視光の全波長成分をも受光・検知する検知領域を設ける点に特徴を有する。
図44(A)に示すように、いわゆるベイヤー配列の基本形のカラーフィルタを利用しており、先ず、正方格子状に配された単位画素が赤(R),緑(G),青(B)の3色カラーフィルタに対応するように、色分離フィルタの繰返単位が2画素×2画素で配されて画素部を構成するようにする。また、赤外光とともに可視光の全波長成分を受光・検知する検知部(検知領域)を設けるべく、2つの緑(G)のうちの一方を白色フィルタWに置き換える。つまり、可視光カラー画像用に原色フィルタR,G,Bの3つの波長領域(色成分)用のものと、原色フィルタR,G,Bの成分とは異なる赤外光用の白色フィルタWといった別個のフィルタ特性を有する4種類の色フィルタを規則的に配設している。
なお、白色フィルタWが配される白色画素は、可視光から赤外光(特に近赤外光)までの全波長の成分を通過させるものであり、この点においては、事実上、カラーフィルタを設けない構成を採ることができる。
たとえば、偶数行奇数列には第1のカラー(赤;R)を感知するための第1のカラー画素を配し、奇数行奇数列には第2のカラー(緑;G)を感知するための第2のカラー画素を配し、奇数行偶数列には第3のカラー(青;B)を感知するための第3のカラー画素を配し、偶数行偶数列には赤外光IRを感知するための第4のカラー画素(ここでは白画素)を配しており、行ごとに異なったG/B、またはR/Wの画素が市松模様状に配置されている。このようなベイヤー配列の基本形のカラーフィルタの色配列は、行方向および列方向の何れについても、G/BまたはR/Wの2色が2つごとに繰り返される。
原色フィルタR,G,Bを通して対応する検知部で検知することで可視光カラー画像を撮像できるとともに、白色フィルタWを通して対応する検知部で検知することで赤外光画像、もしくは赤外光と可視光の混在画像を可視光カラー画像とは独立かつ同時に撮像することができる。たとえば、赤外光IRと可視光VLの混合成分を受光する画素12IRからの画素データをそのまま用いることで、赤外光IRと可視光VLの混合成分の像を得ることができ、感度を高くすることができる。また、赤外光IRと可視光VLの混合成分の像とともに可視光VLの像が得られるが、両者の差分を取ることで、赤外光IRのみの像が得られる。
なお、上記例では、可視光カラー画像撮像用の色フィルタ14として、原色フィルタ14R,14G,14Bを用いていたが、補色フィルタCy,Mg,Yeを用いることもできる。この場合たとえば、図44(B)に示すように、原色フィルタ14RをイエローYeに、原色フィルタ14GをマゼンタMgに、原色フィルタ14BをシアンCyに、それぞれ置き換えた配置とするとよい。そして、対角に2つ存在することになるマゼンタMgの一方に、赤外光像取得用の白色フィルタWを配する。
白色フィルタが配される画素を除く画素12Cy,12Mg,12Ye上には誘電体積層膜1が形成され、さらにその上に、補色フィルタ14Cy,14Mg,14Yeが設けられ、補色フィルタ14Cy,14Mg,14Yeを通して可視光VLの内の対応するシアンCy、マゼンタMg、およびイエローYeの各色を受光するようにする。つまり、誘電体積層膜を補色系のカラーフィルタのある画素の検知部上に形成することで、赤外光を効果的にカットできる機能を持たせる。
また、Cy,Mg,Yeの補色フィルタのみの組合せに限らず、原色フィルタの1つである緑色フィルタGを補色フィルタと組み合せたものに対しても、補正画素をなす白色フィルタWの画素を設けることもできる。たとえば、図44(C)に示すように、Cy,Mgの2つの補色フィルタとGの原色フィルタとを組み合わせたフィールド蓄積周波数インターリーブ方式用のものにおいて、4画素内に2つ存在する原色フィルタGの内の一方を補正画素としての白色フィルタWに置き換えるとよい。
ところで、白色補正画素12Wは、可視光VLから赤外光IRまで広い波長領域において感度があるので、可視光カラー画像撮像用の画素(ここでは原色フィルタが配された原色画素)に比べて信号が飽和し易く、特に明るい環境下での撮像においては、この飽和現象が問題となり得る。具体的には、明るい環境下では、適正な赤外光画像を取得できない。
この飽和の問題を解消するには、白色フィルタWが配される検知部の検知時間を駆動制御部146により制御するとよい。たとえば、明るい環境下での撮像においては、シャッタ機能(メカシャッタに限らず電子シャッタを含む)を利用した露光制御を用いて、高速で撮像するようにするとよい。たとえば、撮像素子に対して短い周期で露光を行なって、その撮像素子(詳しくは検知部)から画素信号を読み出して、それを画像信号処理部140に送ってもよい。
この場合、たとえば60フレーム/秒より高いレートで露光と信号読出し行なうことで飽和に対して効果が高まる。あるいは単に0.01667秒より短い時間(蓄積時間)で信号読出し行なうことができればよい。この場合、たとえば、オーバーフローを用いて基板側に電荷信号を排出することで実効的に短い時間での電荷の蓄積を読み出してもよい。
さらに望ましくは240フレーム/秒より高いレートで露光と信号読出し行なうことで飽和に対しての効果をさらに向上させることができる。あるいは単に4.16ミリ秒より短い時間(蓄積時間)で信号読出し行なうことができればよい。
なお、このように飽和しないように短い時間(蓄積時間)で電荷を読み出す対象画素は、白色補正画素12Wのみとしてもよいし、可視光カラー画像撮像用の他の画素(ここでは原色フィルタが配された原色画素)を含む全画素としてもよい。
また、さらに短い露光時間で読み取った信号を2回以上積算することで、暗部における弱い信号を強い信号に変換し、S/N比を高めてもよい。たとえば、このようにすることで、暗い環境下で撮像しても、また明るい環境下で撮像しても適切な感度と高いS/N比が得られ、ダイナミックレンジが広がることになる。つまり、高速で撮像することで白色補正画素12Wでの飽和が起き難くなるとともに、信号を積算することで広いダイナミックレンジがとれるようになる。
<センサ構造の具体例2;CCD対応>
図45は、図44に示した色分離フィルタの配置を持ち、赤外光IRと可視光VLの2つの波長成分を同時に像として別々に撮像できるようにしたCCD固体撮像素子を説明する図である。ここで、図45は、構造例を示す見取り図(斜視図)である。なおここでは、誘電体積層膜を利用したCCD固体撮像素子101への適用事例で示している。基板表面付近の断面構造図は図43と同様である。
図45に示すCCD固体撮像素子101の構造においては、4画素でなる単位画素マトリクス12だけを示しているが、実際にはこれを横方向に繰り返し、それをさらに縦方向に繰り返した構造である。
単位画素マトリクス12をなす周期配列の4画素の内、1つの画素12IR上には誘電体積層膜1が形成されていないし色フィルタ14が設けられておらず、色フィルタ14を通さずに赤外光IRを受光するようになっている。この場合、画素12IRでは、赤外光IRと可視光VLの混合成分を受光できるようになる。この色フィルタ14が設けられていない画素12IRを白色画素12Wあるいは全域通過画素と呼ぶ。
このように、誘電体積層膜1を形成しなかった画素12IRにおいて、赤外光IRだけでなく可視光VLも同時に信号に寄与するように、白色画素12Wについては、色フィルタ14を入れない。こうすることで、実質的に、赤外光用の画素12IRを、赤外光IR用のみでなく、赤外光IR用と可視光VL用を兼ねる画素として機能させることができる。
一方、他の3つの画素12B,12G,12R上には誘電体積層膜1が形成され、さらにその上に、原色フィルタ14R,14G,14Bが設けられていて、原色フィルタ14R,14G,14Bを通して可視光VLの内の対応する青色B、緑色G、および赤色Rの3原色を受光するようにしている。つまり、誘電体積層膜を3原色系のカラーフィルタのある画素の検知部上に形成することで、赤外光を効果的にカットできる機能を持たせている。第2具体例において用いる原色フィルタ14R,14G,14Bとしては、図64(A)に示した第1具体例と同様のものを用いることができる。なお、回路構成は、図29に示されるものを採用した。
このような構造で作製された撮像素子を用いることで、3原色成分に基づく可視光カラー画像と、赤外光IRのみの像または赤外光IRと可視光VLの混合の像を同時に撮像できることが分かった。たとえば、赤外光IRと可視光VLの混合成分を受光する画素12IRからの画素データをそのまま用いることで、赤外光IRと可視光VLの混合成分の像を得ることができ、感度を高くすることができる。また、赤外光IRと可視光VLの混合成分の像とともに可視光VLの像が得られるが、両者の差分を取ることで、赤外光IRのみの像が得られる。
なお、図示を割愛するが、白色フィルタ14Wを可視光領域の内のG色成分と赤外光成分とを通過させ、残り(可視光領域の内のB色成分とR色成分)を遮断する緑色フィルタに置き換えるなど、赤外光とともに可視光内のある特定の波長成分を受光・検知する検知領域を設ける構成を採ることもできる。
この場合でも、赤外光IRと可視光VLの内のある波長成分を受光する画素12IRからの画素データをそのまま用いることで、赤外光IRと可視光VLの内のある波長成分の混合成分の像を得ることができ、感度を高くすることができる。また、その混合成分の像とともに可視光VLの像が得られるが、可視光VLの像の内の前記ある波長成分との差分を取ることで、赤外光IRのみの像が得られる。
<色分離フィルタの他の配置例>
図46〜図52は、解像度低下を考慮した画素配列を説明する図である。画素配列に関して言えば、図41や図44のような配列構造を適用した場合、単純に従来のRGB原色フィルタやCyMgYe補色フィルタ(あるいは原色フィルタG)の可視光の画素に、赤外光(または赤外光と可視光の混合)検知用の画素を追加することになる。
たとえば、本来、可視光カラー画像撮像用の緑色画素Gやマゼンタ色画素Mgが、黒色補正画素や白色画素や緑色補正画素もしくはマゼンタ色補正画素に置き換わることになり、可視光カラー画像および赤外光画像の何れについても、解像度低下を招く可能性がある。たとえば、従来のRGBベイヤー配列のGの1つの画素を赤外画素に置き換えると、解像度が低下する。しかしながら、補正画素と解像度に大きく寄与する波長成分の画素(たとえば緑色画素G)の配置態様を工夫することで、この解像度低下の問題を解消することができる。
この際に重要なことは、従来と同様に、各色のフィルタをモザイク状に配した色分離フィルタ構造を採用する場合、赤外光(または赤外光と可視光の混在)の画素がある一定の格子間隔を持ってモザイク模様になるようにするとともに、可視光の原色系RGBまたは補色系CyMgYe画素の内の1つの画素がある一定の格子間隔を持ってモザイク模様になるように配置することである。
ここで、「モザイク模様になるようにする」とは、ある色画素に着目したとき、それらがある一定の格子間隔を持って格子状に配列されるようにすることを意味する。必ずしも、その色画素が隣接することを必須とはしない。なお、色画素が隣接する配置態様を採った場合の典型例としては、赤外光の画素とその他の色画素の正方形を互い違い並べた碁盤目模様(市松模様)となるようにする配置態様がある。あるいは、可視光の原色系RGBまたは補色系CyMgYe画素の内の1つの画素とその他の色画素の正方形を互い違い並べた碁盤目模様(市松模様)となるようにする配置態様がある。
<原色フィルタへの適用例>
たとえば、RGB原色フィルタを用いつつ可視光カラー画像の解像度低下を抑えるには、可視光領域のGの画素の配置密度を維持し、可視光領域の残りのRもしくはBの画素を、補正用の黒画素や白画素や緑色画素に置き換えるとよい。たとえば図46に示すように、2行2列の単位画素マトリクス12内において、先ず、奇数行奇数列および偶数行偶数列に可視光領域の緑色成分を感知するためのカラー画素Gを配し、偶数行奇数列には補正用の黒画素(図46(A))や白画素(図46(B))や緑色画素(図示せず)を配する。
また、単位画素マトリクス12の列方向の奇数番目においては、行方向の奇数番目の単位画素マトリクス12における奇数行偶数列に可視光領域の青色成分を感知するためのカラー画素Bを配し、行方向の偶数番目の単位画素マトリクス12における奇数行偶数列に可視光領域の赤色成分を感知するためのカラー画素Rを配する。単位画素マトリクス12の列方向の偶数番目においては、カラー画素Bとカラー画素Rの配置を逆にする。全体としては、色フィルタ14の繰返しサイクルは、2×2の単位画素マトリクス12で完結することになる。
この図46に示すような配置形態の場合、可視光の原色系RGB画素の内の1つの画素Gとその他の色画素の正方形を互い違い並べた市松模様の配置態様を採用しており、可視光カラー画像における解像度に大きく寄与するカラー画素Gの配置密度をベイヤー配列と同じにできるので、可視光カラー画像の解像度の低下はなくなる。
ただし、カラー画素Rとカラー画素Bの配置密度はベイヤー配列に対して1/2になるのでカラー分解能が低下する。しかしながら、色に関する人間の視感度は、緑Gに比べて赤Bや青Bは劣るので、大きな問題にはならないと考えてよい。一方、補正画素を利用した赤外光画像に関しては、補正画素の配置密度が、可視光領域の緑色成分を感知するためのカラー画素Gに対して1/2になるので、分解能は可視光カラー画像よりも劣る。
たとえば、図47に示すような透過スペクトル特性を呈する黒色フィルタ14BKを用いて、図46(A)に示すような配置態様で黒色補正画素を配した、図31に示される層構造(可視光を受光する画素に対応する断面構造図は図35)のCMOS固体撮像素子(画素回路構成は図31)を図33の作製プロセス工程のようにして製造して実験をしてみたところ、3原色の可視光の高解像度カラー画像と、カラー画像よりは低解像度ではあるが比較的高解像度の赤外光の像を同時に撮像できることが分かった。
また、図46(B)に示すような配置態様で白色画素を配した、図37に示される層構造(可視光を受光する画素に対応する断面構造図は図35)のCMOS固体撮像素子(画素回路構成は図31)を図33の作製プロセス工程のようにして製造して実験をしてみたところ、3原色の可視光の高解像度カラー画像と、カラー画像よりは低解像度ではあるが比較的高解像度の赤外光と可視光とが混在した画像を同時に撮像でき、また3原色の可視光画素R,G,Bで検知される青、赤、緑の強度を減じることで、赤外光のみの画像を同時に撮像できることが分かった。
また、飽和しないように、全ての画素を短い時間で露光し電荷信号を読み出し、さらに短い時間で読み取った信号を2回以上積算することで、大きい信号に変換することができ、暗い環境下で撮像しても、また明るい環境下で撮像しても、適切な感度が得られ、ダイナミックレンジが広がることを確認した。
また、図46(A)に示すような黒色補正画素と多層膜を組み合わせた構造や図46(B)に示すような白色画素と多層膜を組み合わせた構造は、CMOS固体撮像素子のみならず、図43に示されるようなCCD構造に作製しても同様な効果が確認された。
また、赤外光画像の解像度低下を抑えるには、たとえば図48に示すように、図46に示す可視光領域の緑色成分を感知するためのカラー画素Gと、補正用の黒画素(図48(A))や白画素(図48(B))や緑色画素(図示せず)の配置を入れ替えるとよい。この場合、補正画素としての赤外光の画素とその他の色画素の正方形を互い違い並べた市松模様の配置態様を採用しており、補正画素の配置密度をベイヤー配列の場合と同じにできるので、赤外光画像の解像度の低下はなくなる。ただし、可視光カラー画像における解像度に大きく寄与するカラー画素Gの配置密度は、補正画素に対して1/2になるので、可視光カラー画像は、赤外光画像の分解能よりも劣る。カラー分解能に関しては、図46の場合と同様である。
たとえば、図47に示すような透過スペクトル特性を呈する黒色フィルタ14BKを用いて、図48(A)に示すような配置態様で黒色補正画素を配したCCD固体撮像素子(画素回路構成は図29、可視光を受光する画素に対応する断面構造図は図43)を製造して実験をしてみたところ、高解像度の赤外光画像と、赤外光画像よりは低解像度ではあるが比較的高解像度の可視光カラー画像を同時に撮像できることが分かった。
また、図46(B)に示すような配置態様で白色画素を配したCCD固体撮像素子(画素回路構成は図29、可視光を受光する画素に対応する断面構造図は図43)を製造して実験をしてみたところ、高解像度の赤外光と可視光とが混在した画像を同時に撮像でき、また3原色の可視光画素R,G,Bで検知される青、赤、緑の強度を減じることで高解像度の赤外光のみの画像を撮像でき、同時に、赤外光画像よりは低解像度ではあるが比較的高解像度の可視光カラー画像を撮像できることが分かった。
何れも、赤外光カットフィルタを使用しなくても、赤外光のある環境下で撮像しても色再現がよく、また白色画素を配した構成の場合には、白色画素から得られる可視光成分を使って、3原色の可視光画素に基づき得られる輝度信号に補正を加えることで、さらに色再現性とは独立して、可視光カラー画像の高感度化を図ることができることも確かめられた。
また、飽和しないように、白画素のみをオーバーフローを用いて短い時間で電荷を読み出し、さらに短い時間で読み取った信号を2回以上積算することで、大きい信号に変換することができ、暗い環境下で撮像しても、また明るい環境下で撮像しても、適切な感度が得られ、ダイナミックレンジが広がることを確認した。
また、図48(A)に示すような黒色補正画素と多層膜を組み合わせた構造や図48(B)に示すような白色画素と多層膜を組み合わせた構造は、CCD固体撮像素子のみならず、CMOS固体撮像素子構造で作製しても同様な効果が確認された。
図49は、可視光カラー画像とは独立に赤外光画像を取得するための画素を設ける場合における他の画素配列を説明する図である。この変形態様は、赤外光画像取得用の画素に配する色フィルタの色を複数組み合わせる点に特徴を有する。たとえば、図49に示す例では、第1具体例と第2具体例とを組み合わせており、赤外光画像取得用の画素として黒色フィルタ14BKと白色フィルタ14Wとを単位画素マトリクス12に対して交互に配している。ここで、図49(A)は図41と図44との組合せ、図49(B)は図46(A),(B)の組合せ、図49(C)は図48(A),(B)の組合せである。
このような組合せの配置態様とすることで、たとえば白色画素12Wは主に高感度化のために使用し、黒色画素12BKは通常の照度や高照度時のために使用することができる。また、両者の出力を合成することで、低照度レベルから高照度レベルまでの再現域を持つようにでき、ダイナミックレンジの拡大を図ることもできる。
<補色フィルタへの適用例>
また、CyMgYe補色フィルタを用いつつ可視光カラー画像の解像度低下を抑えるには、可視光領域のMgの画素の配置密度を維持し、可視光領域の残りのRもしくはBの画素を、赤外光画像取得用の黒画素や白画素や緑色画素に置き換えるとよい。たとえば図50に示すように、2行2列の単位画素マトリクス12内において、先ず、奇数行奇数列および偶数行偶数列に可視光領域のマゼンタ色成分を感知するためのカラー画素Mgを配し、偶数行奇数列には赤外光画像取得用の黒画素(図50(A))や白画素(図50(B))やマゼンタ色画素(図示せず)を配する。なお、マゼンタ色Mgの内の一方を緑色Gに置き換えることもできる。
この場合、可視光の補色系CyMgYe画素の内の1つの画素Mgとその他の色画素の正方形を互い違い並べた市松模様の配置態様を採用しており、可視光カラー画像における解像度に大きく寄与するカラー画素Mgの配置密度をベイヤー配列と同じにできるので、可視光カラー画像の解像度の低下はなくなる。
なお、カラー画素Cyとカラー画素Yeの配置密度はカラー画素Mgの配列に対して1/2になるのでカラー分解能が低下するが、色に関する人間の視感度は低く大きな問題にはならないと考えてよい。また、補正画素を利用した赤外光画像に関しては、補正画素(赤外光画素)の配置密度が、可視光領域のマゼンタ色成分を感知するためのカラー画素Mgに対して1/2になるので、分解能は可視光カラー画像よりも劣る。
また、赤外光画像の解像度低下を抑えるには、たとえば図51に示すように、可視光領域のマゼンタ色成分を感知するためのカラー画素Mgと、赤外光画像取得用の黒画素(図51(A))や白画素(図51(A))やマゼンタ色画素(図示せず)の配置を入れ替えるとよい。この場合、補正画素としての赤外光の画素とその他の色画素の正方形を互い違い並べた市松模様の配置態様を採用しており、補正画素の配置密度をベイヤー配列の場合と同じにできるので、赤外光画像の解像度の低下はなくなる。ただし、可視光カラー画像における解像度に大きく寄与するカラー画素Mgの配置密度は、補正画素に対して1/2になるので、可視光カラー画像は、赤外光画像の分解能よりも劣る。カラー分解能に関しては、図50の場合と同様である。
なお、解像度低下を抑えるための上記の配置態様例では、緑色Gまたはマゼンタ色Mgの画素をできるだけ高密度でモザイク模様(定型例としての市松模様)となるように配置していたが、その他の色(R,BまたはCy,Ye)の画素を市松模様となるように配置しても、ほぼ同様の効果を得ることができる。もちろん、解像度や色分解能を高める上では、視感度の高い色成分のフィルタをできるだけ高密度でモザイク模様となるように配置するのが好ましい。
<斜め配置への適用例>
なお、上記例では、正方格子状に色フィルタを配置する事例を説明したが、斜め格子状に配列することもできる。たとえば、図52(A)に示す配置態様は、図46(B)に示す配置態様を、右回りに略45度だけ回転させた状態の画素配列になっている。また図52(B)に示す配置態様は、図48(B)に示す配置態様を、右回りに略45度だけ回転させた状態の画素配列になっている。このように、斜め格子状に配列すると、垂直方向と水平方向の各画素密度が増すことになり、その方向での解像度をさらに高くすることができるのである。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
また、上記の実施形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
上記で説明した構造は、本発明の一実施形態を示したものであり、上記で説明したように、隣接する層間で屈折率が異なり所定の厚みを持つ層を複数積層した構造を有し、電磁波の内の所定の波長領域成分を反射させ残りを通過させる特性を持った積層部材(誘電体積層膜)を用いて波長分別可能にするのは、他の同様な構造でも可能である。
さらに上述の技術は必ずしも可視光と赤外光の分光に限った技術ではない。たとえば、可視光と紫外光の分光や検知も可能となり、可視光とともに紫外光も同時に検出してイメージ化できる。また、同時に検出する可視光については、分光せずにモノクロ画像を検知することに限らず、上述のようにして色別の色フィルタを用いて可視光帯内をたとえば3原色成分に分光することでカラー画像を検知することもできる。
これにより、眼で見ることができる可視光のイメージ像(モノクロ画像あるいはカラー画像)と対応して、眼で見ることのできない紫外光の像情報を同時に取得することができる。これによって光合成監視カメラなどの新しい情報システムのキーデバイスとして応用が広がる。
たとえば、可視光VLを反射波長領域成分とし、通過波長領域成分を可視光VLよりも低波長側(たとえば紫外光)とする誘電体積層膜1を利用することで、可視光VLと可視光VLよりも低波長側(たとえば紫外光)の分光や検知も可能となる。
たとえば、図示を割愛するが、図41において、単位画素マトリクス12をなす周期配列の4画素の内、1つの画素12IR上には可視光VL以上の波長成分を反射する誘電体積層膜1を形成することで、可視光VLよりも低波長側(紫外光)のみを受光し、他の3つの画素12B,12G,12R上には誘電体積層膜1を形成せず、色フィルタ14(14R,14B,14B)を設けることで、可視光VLの内の対応する青色B、緑色G、および赤色Rの3原色を低波長側(紫外光)とともに受光するようにする。
通過波長領域成分の影響をほぼ全く受けない反射波長領域成分としての可視光VLの信号を得るに際しては、通過波長領域成分である紫外光成分との間での演算処理を行なえばよい。なお、色フィルタ14(14R,14B,14B)の特性として、通過波長領域成分である紫外光成分に対する透過率が略ゼロであるものを使用すれば、可視光VLよりも低波長側(紫外光)の成分が色フィルタ14(14R,14B,14B)によってかっとされるので、この演算処理が不要になる。
1…誘電体積層膜、10…分光フィルタ、11…分光イメージセンサ、12…単位画素マトリクス、100…撮像装置、101…CCD固体撮像素子、122…垂直転送CCD、124…読出ゲート、126…水平転送CCD、128…出力アンプ、140…画像信号処理部、142…画像切替制御部、146…駆動制御部、201…CMOS固体撮像素子、205…画素内アンプ、207…駆動制御部、219…垂直信号線、226…カラム処理部