[触媒]
本発明の触媒は、硫酸根ジルコニアと、白金族金属成分(A)(単に、白金族金属成分ということがある)と、遷移金属成分(B)(単に、遷移金属成分ということがある)とで構成されている。
硫酸根ジルコニアは、硫酸根とジルコニア(ZrO2)とで構成されている。硫酸根ジルコニアを構成するジルコニアは、触媒活性を有する限り、どのような結晶構造(晶系)を有していてもよく、通常、正方晶の酸化ジルコニウム(IV)(ジルコニア、ZrO2)の構造を有していてもよい。なお、ジルコニアは、少量の単斜晶のジルコニアを含んでいてもよい。ジルコニアは、単独酸化物(ZrO2)の形態であってもよく、ジルコニウムに加えて他の金属を含む複合酸化物(例えば、ジルコニアと、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化タングステンなどとの複合酸化物(ZrO2・TiO2など))であってもよいが、通常、単独酸化物の形態である。
なお、ジルコニア(又はジルコニウム)は、酸化物(ジルコニア)として含まれる場合に限られず、触媒の活性が妨げられない範囲であれば、ジルコニアに加えて、非酸化物(例えば、水酸化物、ハロゲン化物、酸素酸塩、有機酸塩)の形態のジルコニウム化合物を含んでいてもよい。また、市販のジルコニアやその前駆体には、少量(例えば、ジルコニアに対する重量比で0〜5%(例えば、0.01〜3%)程度)の他の金属原子(ハフニウムなど)が含まれていることが多い。本発明では、触媒(又はジルコニア)に、このような少量の他の金属原子(ハフニウムなど)が含まれていても触媒活性に悪影響はない。
硫酸根ジルコニアは、通常、正方晶の酸化ジルコニウム(IV)(ジルコニア)の表面に硫酸根(SO4 2−)が存在している形態をとる場合が多い。また、硫酸根ジルコニアは、配位子や塩などとして硫酸根を含んでいてもよい。
硫酸根ジルコニアにおいて、硫酸根(硫黄S換算)の割合は、触媒の活性が妨げられない範囲であればよく、ジルコニア(ZrO2)100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部(例えば、0.2〜10重量部)、好ましくは0.2〜8重量部(例えば、0.2〜5重量部)、さらに好ましくは0.5〜6重量部(例えば、0.5〜5重量部)、通常1〜4重量部程度であってもよい。
白金族金属成分(A)は、白金族金属を含む成分で構成される。白金族金属としては、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウムなどが挙げられる。白金族金属の価数は、特に制限されず、例えば、0価、二価、三価、四価などであってもよい。白金族金属成分は、触媒の活性に影響を与えない範囲で、単体であってもよく、白金族金属化合物の形態であってもよい。白金族金属化合物は、例えば、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、無機酸塩、有機酸塩などであってもよい。白金族金属成分の少なくとも一部は、酸化物[例えば、酸化白金(酸化白金(II)、酸化白金(IV)二白金(II)、酸化白金(IV)など)、酸化パラジウム(酸化パラジウム(II)、酸化パラジウム(IV)など)、酸化ロジウム(酸化ロジウム(III)、酸化ロジウム(IV)など)など]として存在していてもよい。
白金族金属成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
触媒を構成する白金族金属成分は、好ましくは、白金成分、パラジウム成分、及びロジウム成分から選択された少なくとも一種の成分で構成される。特に、白金族金属成分は、パラジウム成分及びロジウム成分とで構成されていてもよい。白金族金属成分がパラジウム成分及びロジウム成分とで構成される場合、両者の割合は、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)換算で、前者/後者=10/1〜1/10(重量比)、好ましくは、5/1〜1/5(重量比)、さらに好ましくは4/1〜1/4(重量比)程度であってもよい。
触媒を構成する遷移金属成分(B)は、通常、マンガン、鉄及びコバルトから選択された少なくとも一種の遷移金属を含む成分で構成される。遷移金属成分の価数は、特に制限されず、例えば、0価、二価、三価などであってもよい。遷移金属成分は、触媒の活性に影響を与えない範囲で、単体であってもよく、遷移金属化合物の形態であってもよい。遷移金属化合物は、例えば、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、無機酸塩、有機酸塩などの形態で含まれていてもよい。遷移金属成分の少なくとも一部は、酸化物[例えば、酸化マンガン(酸化マンガン(II)など)、酸化鉄(酸化鉄(II)、酸化鉄(III)など)など]として存在していてもよい。
遷移金属成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
遷移金属成分は、好ましくは、鉄成分及びマンガン成分から選択された少なくとも一種の成分で構成されていてもよく、特に、少なくとも鉄成分で構成される。鉄成分は、環境面からも有利であり、自動車排ガス用触媒のような粉化や飛散の可能性がある触媒であっても好適に構成できる。
触媒を構成する白金族金属成分及び遷移金属成分は、少なくとも一方の成分が硫酸根ジルコニアに担持(又は含有)されている限り、どのような形態で触媒に含まれていてもよく、例えば、本発明の触媒は、双方の成分が担持された硫酸根ジルコニア、一方の成分が担持された硫酸根ジルコニアと他方の成分との混合物、又はこれらの混合物などで構成してもよく、また、前記他方の成分は担体に担持された形態で前記混合物を構成してもよい。
本発明の触媒は、代表的には、(1)白金族金属成分及び遷移金属成分が同一担体(硫酸根ジルコニア)に担持(含有)されている触媒で構成してもよく(すなわち、白金族金属成分及び遷移金属成分を担持又は含有する硫酸根ジルコニアであってもよく)、又は(2)一方の成分(例えば、遷移金属成分)を担持(含有)する硫酸根ジルコニアと他方の成分(例えば、白金族金属成分)を担持(含有)する担体(他方の成分を担持する担体、以下、単に他方の担体ということもある)とで構成された混合触媒(又は混合物)で構成してもよい。
代表的な本発明の触媒では、少なくとも遷移金属成分が硫酸根ジルコニアに担持(又は含有)されているのが好ましく、特に白金族金属成分及び遷移金属成分が硫酸根ジルコニアに担持(又は含有)されているのが好ましい。このような双方の成分を担持した硫酸根ジルコニアは、前記触媒(2)などに比べて触媒活性が高い場合が多く、本発明において好適に使用できる。
前記触媒(1)において、白金族金属成分および遷移金属成分の含有形態は特に制限されず、例えば、硫酸根ジルコニア(又はその表面)に、白金族金属成分及び遷移金属成分が担持(特に均一に分散して担持)されていてもよく、一方の成分(例えば、遷移金属成分)を含む硫酸根ジルコニア(又はその表面)に他方の成分(例えば、白金族金属成分)が担持されていてもよい。
また、前記触媒(2)において、他方の担体としては特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化タングステン、これらの複酸化物などであってもよい。また、他方の担体が、硫酸根ジルコニアであってもよい。すなわち、本発明の触媒は、白金族金属成分(A)を担持する硫酸根ジルコニアと、遷移金属成分(B)を担持する硫酸根ジルコニアとで構成されていてもよい。
触媒(1)および(2)のいずれにおいても、白金族金属成分および遷移金属成分の含有形態は、各金属成分が、それぞれ少なくとも一部において担体(硫酸根ジルコニア、他方の担体)の表面に露出している形態であるのが好ましく、さらには担体の表面に均一に分散している形態であるのが好ましい。なお、白金族金属成分及び/又は遷移金属成分の一部が、担体に固溶した形態で含有されていてもよい。
白金族金属成分の割合は、対応する白金族金属原子換算で、硫酸根ジルコニア、白金族金属成分及び遷移金属成分の総量100重量部に対して、0.001〜0.1重量部、好ましくは0.003〜0.05重量部、さらに好ましくは0.005〜0.01重量部程度であってもよい。白金族金属成分の割合が上記の範囲にあると、触媒活性(特に可燃性成分の除去活性)を低下させることなく、アンモニアの過剰な酸化を抑制しつつ窒素酸化物を効率よく浄化できる。
触媒中の白金族金属成分の割合は、ジルコニア(ZrO2)100重量部に対して、対応する白金族金属原子換算で、例えば、0.001〜1重量部(例えば、0.01〜1重量部)、好ましくは0.01〜0.5重量部(例えば、0.02〜0.3重量部)、さらに好ましくは0.03〜0.2重量部程度であってもよい。
遷移金属成分の割合は、対応する遷移金属原子換算で、硫酸根ジルコニア、白金族金属成分及び遷移金属成分の総量100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜1重量部程度であってもよい。
触媒中の遷移金属成分(例えば、鉄成分)の割合は、ジルコニア(ZrO2)100重量部に対して、対応する遷移金属原子(例えば、鉄Fe)換算で、例えば、0.1〜25重量部、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部程度であってもよい。遷移金属成分(例えば、鉄成分)の割合を上記範囲にすると、粗大な酸化物(例えば、酸化鉄)粒子の形成を抑制でき、また、アンモニアの過剰な酸化を抑制しつつ窒素酸化物を効率よく浄化できる。
前記触媒において、白金族金属成分と遷移金属成分との割合は、十分な触媒活性を付与できる範囲であればよく、対応する白金族金属原子及び遷移金属原子換算で、例えば、0.01/99.99〜10/90(重量比)(例えば、0.05/99.95〜5/95(重量比))、好ましくは0.1/99.9〜3/97(重量比)、さらに好ましくは0.2/99.8〜2/98(重量比)程度であってもよい。
また、前記触媒(例えば、触媒(1))において、硫酸根、白金族金属成分および遷移金属成分の総量の割合は、ジルコニア(ZrO2)100重量部に対して、硫黄換算および対応する金属原子換算で、例えば、1〜100重量部、好ましくは2〜80重量部、さらに好ましくは5〜50重量部程度であってもよい。
さらに、前記触媒(例えば、触媒(1))において、白金族金属成分および遷移金属成分の総量の割合は、硫酸根(硫黄換算)100重量部に対して、対応する金属原子換算で、例えば、1〜500重量部、好ましくは10〜300重量部、さらに好ましくは20〜200重量部程度であってもよい。
本発明の触媒の形状は、特に限定はなく、例えば、粉粒状、粒状(又は顆粒状)、ペレット状、ハニカム状などが挙げられる。これらの形状のうち、非処理ガス処理時の圧力損失を低減する観点から、ハニカム状が好ましい。なお、触媒は、非多孔質であってもよく、多孔質であってもよい。
本発明の触媒のBET比表面積は、通常10〜300m2/g程度であり、好ましくは30〜200m2/g、特に好ましくは35〜180m2/g(例えば、45〜160m2/g)程度である。
なお、本発明の触媒には、必要であれば、触媒の活性を損なわない範囲で、慣用の添加剤が配合されていてもよい。
[触媒の製造方法]
本発明の触媒は、硫酸根ジルコニアに、白金族金属成分(A)及び遷移金属成分(B)から選択された少なくとも一方の成分を担持させる工程を少なくとも経ることにより製造することができる。例えば、本発明の触媒は、触媒の形態に応じて、硫酸根ジルコニアに、白金族金属成分(A)及び遷移金属成分(B)の双方の成分を硫酸根ジルコニアに担持させる工程を経ることにより製造してもよく、硫酸根ジルコニアに、白金族金属成分(A)及び遷移金属成分(B)のうち一方の成分を担持させ、得られた金属担持硫酸根ジルコニアと、他方の成分(又は他方の成分を担持した担体)とを混合する工程を経ることにより製造してもよい。なお、前記触媒(2)は、このような工程により、白金族金属成分(A)及び遷移金属成分(B)から選択された一方の成分(例えば、遷移金属成分(B))を担持する硫酸根ジルコニアを調製し、この一方の成分を担持する硫酸根ジルコニアと、他方の成分(例えば、白金族金属成分(A))を担持する担体とを混合することにより製造できる。
前記製造方法は、硫酸根ジルコニアに、白金族金属成分(A)及び遷移金属成分(B)から選択された少なくとも一方の成分を担持させることができる方法であれば、特に限定はなく、白金族金属成分(A)及び/又は遷移金属成分(B)は、それぞれ、硫酸根ジルコニアに、一括(又は一回)で又は複数回に分けて含有させてもよい。
また、前記製造方法において、白金族金属成分(A)及び/又は遷移金属成分(B)は、硫酸根ジルコニアに担持させることができれば、触媒調製工程のどの段階で含有させてもよく、例えば、ジルコニウム成分(ジルコニアを生成可能な成分)、ジルコニア、及び硫酸根ジルコニアから選択された成分(硫酸根ジルコニア源)のいずれに含有させてもよい。なお、ジルコニウム成分又はジルコニアに含有させる場合、硫酸根を含有させる工程が必要となる。このような硫酸根を含有させる工程もまた、触媒の調製工程の適当な段階で行うことができ、例えば、白金族金属成分(A)及び/又は遷移金属成分(B)とともに硫酸根を含有させてもよく、白金族金属成分(A)及び/又は遷移金属成分(B)を含有させた後に含有させてもよい。
なお、前記触媒(1)(すなわち、白金族金属成分(A)及び遷移金属成分(B)を担持(又は含有)する硫酸根ジルコニア)において、白金族金属成分(A)及び遷移金属成分(B)は、同時にまたは別々に(個別に)担持(又は含有)させてもよく、別々に担持(又は含有)させる場合、その順序は特に限定はない。
例えば、本発明の触媒は、白金族金属(a)(白金族金属成分(A)に対応する白金族金属(a))及び遷移金属成分(B)に対応する遷移金属(b)から選択された少なくとも一方の金属の存在下で硫酸根ジルコニアを焼成する工程を少なくとも経ることにより製造できる。白金族金属(a)及び遷移金属成分(B)に対応する遷移金属(b)は、金属原子、金属イオン、金属化合物などであってもよく、好ましくは、金属イオンであってもよい。
代表的には、本発明の触媒は、(i)ジルコニウム成分又はジルコニアと、硫酸イオンと、白金族金属成分(A)に対応する白金族金属イオン(a)及び遷移金属成分(B)に対応する遷移金属イオン(b)から選択された少なくとも一方の成分とを含む混合液を乾燥し、焼成する工程、又は(ii)担体としての硫酸根ジルコニアと、白金族金属イオン(a)及び遷移金属イオン(b)から選択された少なくとも一方の成分とを含む混合液を乾燥し、焼成する工程を経ることにより製造でき、特にジルコニウム成分を用いる工程(i)を少なくとも経て製造する場合が多い。
特に、前記触媒(1)は、代表的には、例えば、(i−1)ジルコニウム成分と、硫酸イオンと、白金族金属イオン(a)及び遷移金属イオン(b)のうちの一方の成分とを含む混合液(特に溶液)を乾燥し、焼成して焼成物(すなわち、一方の金属成分を担持する硫酸根ジルコニア)を調製し、得られた焼成物と他方の金属成分とを含む混合液を乾燥し、焼成する方法、(i−2)ジルコニウム成分、硫酸イオン、白金族金属イオン(a)及び遷移金属イオン(b)を含む混合液を乾燥し、焼成する方法などにより製造できる。なお、これらの方法のうち、方法(i−1)、特に方法(i−1)において一方の成分を遷移金属イオン(b)とする方法は、触媒の性能及び経済性の面から好ましい。
上記いずれの方法においても、ジルコニウム成分又は焼成物を含む混合液は、各イオン(硫酸イオン、白金族金属イオン(a)及び/又は遷移金属イオン(b))を含む溶液に、ジルコニウム成分又は焼成物が分散した分散液(分散溶液、混合分散液)である場合が多い。このような混合液は、例えば、ジルコニウム成分と、各イオン(硫酸イオン、白金族金属イオン(a)及び/又は遷移金属イオン(b))を含む溶液とを混合して調製することができる。通常、混合液は、ジルコニウム成分や焼成物を各イオン(硫酸イオン、白金族金属イオン(a)及び/又は遷移金属イオン(b))を含む溶液に浸漬(又は含浸)することにより調製してもよい。
本発明の製造方法(又は工程)において、ジルコニウム成分とは、水酸化ジルコニウム又は水酸化ジルコニウムを生成可能なその前駆体の総称であり、水酸化ジルコニウムの前駆体としては、化合物(特に、水溶性化合物)、例えば、無機酸塩(硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなど)、ハロゲン化物(塩化ジルコニウムなど)、有機酸塩(酢酸ジルコニウムなど)などが例示できる。これらのジルコニウム成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのジルコニウム成分のうち、水酸化ジルコニウムが好ましい。
硫酸イオンを含む混合液(又は溶液、特に水溶液)は、触媒の活性に影響を与えない限り、例えば、硫酸及び/又は種々の硫酸塩(硫酸アンモニウム、硫酸白金、硫酸鉄などの硫酸塩など)を適当な溶媒(特に水)に溶解して調製してもよい。これらは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、残存する陽イオンが触媒の活性に悪影響を及ぼさない点から、硫酸アンモニウムが好ましく、特に水酸化ジルコニウムと硫酸アンモニウム溶液とを組み合わせて用いるのが好ましい。
白金族金属イオン(a)を含む混合液(又は溶液、特に水溶液)は、触媒の活性に影響を与えない限り、種々の白金族金属化合物を適当な溶媒(特に水)に溶解して調製してもよい。なお、これらの化合物は、水和物であってもよい。代表的な白金族金属化合物としては、例えば、無機酸塩[例えば、硫酸塩(例えば、硫酸白金(IV)、硫酸パラジウム(II)、硫酸ロジウム(III)などの硫酸塩及び硫酸複塩;硝酸白金(II)などの硝酸塩)など]、ハロゲン化物[例えば、塩化白金(II)、塩化白金(IV)、塩化白金(IV)酸、塩化パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)酸、塩化ロジウム(III)、塩化ロジウム(III)酸、これらの塩などの塩化物]、有機酸塩[例えば、酢酸白金、酢酸パラジウム、酢酸ロジウムなどの酢酸塩など]、錯体(例えば、白金カルボニル化合物、パラジウムカルボニル化合物、ロジウムカルボニル化合物などのカルボニル化合物など)などが挙げられる。これらの白金族金属化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。このような白金族金属化合物は、通常、水溶性であり、前記溶液を水溶液として効率よく調製できるため好適に用いることができる。
遷移金属イオン(b)を含む混合液(又は溶液、特に水溶液)は、触媒の活性に影響を与えない限り、種々の遷移金属化合物を適当な溶媒(特に水)に溶解して調製してもよい。なお、これらの化合物は、水和物であってもよい。代表的な遷移金属化合物としては、例えば、無機酸塩[例えば、硫酸塩(例えば、硫酸マンガン(II)、硫酸マンガン(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、硫酸コバルトなどの硫酸塩及び硫酸複塩);硝酸マンガン(II)、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硝酸コバルトなどの硝酸塩など]、ハロゲン化物[例えば、塩化マンガン(II)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、塩化コバルトなどの塩化物など]、有機酸塩[例えば、酢酸マンガン(II)、酢酸マンガン(III)、酢酸鉄(III)、酢酸コバルトなどの酢酸塩など]、錯体(例えば、マンガンカルボニル化合物、鉄カルボニル化合物、コバルトカルボニル化合物などのカルボニル化合物など)などが挙げられる。これらの遷移金属化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。これらの遷移金属化合物のうち、無機酸塩(例えば、硫酸鉄などの硫酸塩)が好ましい。このような遷移金属化合物は、通常、水溶性であり、前記溶液を水溶液として効率よく調製できるため好適に用いることができる。
なお、前記製造方法において、混合液又は溶液を構成する溶媒は、各成分(白金族金属成分、遷移金属成分、硫酸成分など)を溶解可能な溶媒であれば特に限定されず、水、有機溶媒(アルコール類、ケトン類、エステル類など)などであってもよい。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。通常、前記混合液又は溶液は、各成分が水溶性である場合が多く、環境的にも有利であるため、水溶液である場合が多い。なお、水溶液は、他の溶媒(アルコール類など)を含んでいてもよい。
ジルコニウム成分、硫酸イオン、白金族金属イオン(a)及び遷移金属イオン(b)の割合は、前記成分割合の触媒を生成できる限り、特に限定されない。焼成により揮発する成分(硫酸イオンなど)は、最終触媒での割合よりも多く添加してもよい。例えば、前記混合液又は溶液において、硫酸イオンの割合(SO4 2−換算)は、ジルコニウム成分(ジルコニア換算)100重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましくは3〜50重量部、さらに好ましくは5〜30重量部(特に10〜30重量部)程度であってもよく、通常1〜25重量部(例えば、10〜20重量部)程度であってもよい。白金化合物及び/又は遷移金属化合物として硫酸塩(例えば、硫酸鉄など)を用いる場合は、硫酸根が過剰とならないよう適宜調整してもよい。
混合(浸漬又は含浸)温度は、通常、室温(15〜25℃程度)であるが、加温(例えば、30〜80℃、特に50〜80℃程度)してもよい。
乾燥条件は、特に限定されず、大気圧下で30〜200℃、好ましくは40〜180℃、さらに好ましくは50〜150℃程度の範囲で行えばよく、減圧乾燥により、室温(15〜25℃程度)〜100℃程度の範囲で行ってもよい。
焼成は、空気流通下で行ってもよいが、酸素や窒素などを添加するなどして酸素濃度が1〜50体積%、好ましくは2〜40体積%、さらに好ましくは5〜30体積%程度となる範囲で調整して行ってもよい。焼成温度は、通常、300〜750℃(例えば、300〜700℃)、好ましくは450〜750℃(例えば、450〜600℃)、さらに好ましくは500〜700℃(例えば、550〜700℃)程度である。焼成温度が上記の範囲にあると、硫酸根が揮発消失する虞が少なく、安定な結晶を形成しやすい。焼成時間は、通常、1〜20時間、好ましくは2〜15時間、さらに好ましくは3〜10時間程度である。
また、前記工程(ii)において使用される硫酸根ジルコニアは、定法を用いて作製してもよく、例えば、ジルコニウム成分と、硫酸イオンとを含む混合液を乾燥し、焼成して得ることができる。代表的には、硫酸根ジルコニアは、(ii−1)硫酸根ジルコニア、ならびに白金族金属イオン(a)及び遷移金属イオン(b)のうちの一方の成分を含む混合液を乾燥し、焼成して焼成物(すなわち、一方の金属成分を担持(又は含有)する硫酸根ジルコニア)を調製し、得られた焼成物と他方の金属成分を含む混合液を乾燥し、焼成する方法、又は(ii−2)硫酸根ジルコニア、白金族金属イオン(a)及び遷移金属イオン(b)を含む混合液を乾燥、焼成する方法により製造できる。なお、混合液は、前記と同様にして調製でき、ジルコニウム成分および硫酸イオンの種類や調製も前記と同様である。また、硫酸根ジルコニアの調製において、混合温度、乾燥条件、焼成温度、焼成時間なども前記と同様である。
なお、前記触媒(2)において、他方の担体として硫酸根ジルコニアを使用する場合、他方の成分を担持する硫酸根ジルコニアは、上記と同様の方法を利用して製造できる。
触媒の成形方法としては、慣用の方法、例えば、練合機、成形機(押出成形機や圧縮成形機など)、打錠機を用いた方法などが例示できる。触媒をハニカム状に成形する方法としては、例えば、ハニカム状耐火性セラミック上に触媒をコートする方法や、必要に応じてバインダーを添加し、ハニカム形状に押出成形する方法などが挙げられる。ハニカム状に成形する方法としては、触媒の性能の点から、押出成形する方法が好ましい。ハニカムのセル数は、被処理ガス処理時の圧力損失の増大を抑制できる範囲で選択でき、例えば、1〜250個/cm2、好ましくは5〜150個/cm2、さらに好ましくは10〜100個/cm2程度であってもよい。ハニカムの開口率は、50〜80%、好ましくは55〜75%程度であってもよい。
本発明の触媒は、アンモニア及び/又は窒素酸化物を分解するための触媒として利用できる。例えば、本発明の触媒は、アンモニアの存在下で、窒素酸化物を還元するための触媒として有用である。特に、本発明の触媒は、窒素酸化物の還元機能のみならず可燃性成分(一酸化炭素、炭化水素、酸素原子含有有機化合物など)の酸化機能も有している。そのため、本発明の触媒は、アンモニアの存在下で、窒素酸化物を還元するとともに、可燃性成分を酸化するための触媒として好適に使用できる。また、このような本発明の触媒は、通常、窒素酸化物に対する還元機能(及び可燃性成分に対する酸化機能)のみならず、アンモニアに対する分解機能を有しているため、過剰量のアンモニアを用いても、リークするアンモニアの量を低減できる。また、本発明の触媒は、被処理ガスが窒素酸化物(及び可燃性成分)を含むか否かにかかわらず、アンモニアを窒素に分解するための触媒としても有用である。すなわち、前記触媒は、窒素酸化物(及び可燃性成分)の分解用触媒として作用するが、アンモニアの分解用触媒(詳細には、アンモニアを少なくとも含む被処理ガス中のアンモニアを分解するための触媒)としても機能する。以下に、本発明の触媒を用いた窒素酸化物(及び可燃性成分)の分解方法、及びアンモニアの分解方法について詳述する。
[窒素酸化物の除去方法]
本発明においては、前記触媒を用いて、アンモニアの存在下、被処理ガス(例えば、内燃機関から排出される排ガスなど)を処理することにより、高い脱硝率で被処理ガス中に含まれる窒素酸化物を除去できる。本発明における被処理ガスとは、本発明の触媒により浄化する対象となりうる窒素酸化物含有ガスのことを指す。例えば、燃焼排ガス、硝酸製造プロセスガスなどが挙げられる。被処理ガス中の窒素酸化物濃度は、体積比で、5000ppm以下(例えば、1〜5000ppm)であってもよく、通常、5〜4000ppm、好ましくは10〜3000ppm程度であってもよい。
被処理ガスは、窒素酸化物の他に、酸素、水蒸気、二酸化炭素などを含んでいてもよい。酸素の割合は、被処理ガス中、例えば、0.1〜30体積%、好ましくは1〜20体積%、さらに好ましくは2〜15体積%程度である。水蒸気の割合は、被処理ガス中、例えば、0.1〜50体積%、好ましくは1〜30体積%、さらに好ましくは2〜20体積%程度である。二酸化炭素の割合は、被処理ガス中、例えば、0.1〜20体積%、好ましくは0.5〜15体積%、さらに好ましくは1〜10体積%程度である。
また、燃焼排ガスなどには、後続機器を劣化させる硫黄酸化物が含まれることが多く、本発明の触媒は、硫黄酸化物を含むガスにも適用できる。被処理ガス中の硫黄化合物の濃度は、体積比で、0.1〜100ppm(例えば、1〜70ppm)程度であってもよい。
さらに、本発明の触媒は、窒素酸化物を還元するだけでなく、通常、可燃性成分を酸化する機能も有している。そのため、被処理ガスには、さらに、可燃性成分が含まれていてもよい。可燃性成分としては、例えば、一酸化炭素、炭化水素[例えば、脂肪族炭化水素(エチレン、プロピレンなど)など]、酸素含有有機化合物[例えば、アルコール類(メタノール、エタノールなど)、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど)、カルボン酸類(酢酸、プロピオン酸など)など]などが例示できる。これらの可燃性成分は、単独で又は2種以上組み合わせて被処理ガスに含まれていてもよい。なお、これらの可燃性成分は、酸素ガスの存在下で酸化(分解)される。酸素ガスは、被処理ガスに添加して供給してもよいが、通常、前記のように被処理ガスに含まれている。このため、通常、被処理ガスに含まれる酸素ガスを、可燃性成分の酸化(分解)に利用してもよい。
本発明の触媒では、このような可燃性成分を含む被処理ガスであっても、汎用の触媒においてみられるような触媒活性の低下を生じることなく、窒素酸化物を還元でき、しかも、可燃性成分を酸化により分解できる。被処理ガス中の一酸化炭素の濃度は、体積比で、2000ppm以下(例えば、0.1〜1500ppm)、例えば、1〜1000ppm(例えば、1〜700ppm)程度であってもよい。このような濃度(例えば、1000ppm程度)で一酸化炭素が含まれていても、本発明では触媒の活性(例えば、窒素酸化物還元性能)の低下を防止できる。また、被処理ガス中の炭化水素及び酸素含有有機化合物の総量の濃度が、THC(全炭化水素)換算で200〜2000ppm(例えば、300〜1000ppm)程度であっても、本発明では触媒の活性(例えば、窒素酸化物還元性能)の低下を防止できるとともに、これらの可燃性成分を酸化分解できる。
本発明の窒素酸化物除去方法では、アンモニアの存在下、窒素酸化物を含む被処理ガスを、前記触媒に接触させることにより、被処理ガスから窒素酸化物を除去する。さらに、本発明の窒素酸化物除去方法では、窒素酸化物を還元するとともに、炭化水素、一酸化炭素及び酸素原子含有有機化合物などの可燃性成分を酸化できる。
アンモニアは被処理ガス処理系内にて存在すればよく、公知の方法を適用して系内に存在させてもよい。例えば、液化アンモニアを用いてガス状のアンモニアを添加する方法だけでなく、尿素や炭酸アンモニウムなどの熱分解によりアンモニアを生成する化合物の水溶液を噴霧する方法など系内にてアンモニアを生成させる方法を用いて、アンモニアを存在させてもよい。処理開始前のアンモニアの量は、被処理ガスの種類に応じて適宜調整すればよく、例えば、被処理ガス中の窒素酸化物1モルに対して0.9〜1.5モル(例えば、1.0〜1.5モル)程度であり、好ましくは1.0〜1.3モル、さらに好ましくは1.1〜1.2モル程度であってもよい。特に、本発明では、アンモニアが窒素に変換されるため、特に、被処理ガス中の窒素酸化物1モルに対して1モル以上(例えば、1.1〜1.5モル程度)のアンモニアを含んでいても、アンモニアのリーク量を十分低いレベルに抑制できる。なお、アンモニアの量は、少なすぎると十分な脱硝率が得られず、多すぎるとリークアンモニア量が増えるおそれがあり、また経済性も低下する。
窒素酸化物含有被処理ガスと、前記触媒との接触温度は、脱硝率を損なわず、かつリークアンモニア量を抑制できる範囲から選択でき、例えば、200℃以上、好ましくは250℃以上(例えば、250〜500℃)、より好ましくは300℃以上(例えば、300〜450℃)、さらに好ましくは350℃以上(例えば、350〜450℃)程度である。温度が低すぎると触媒活性が低下し、脱硝率の低下とリークアンモニア濃度の増加を伴う。一方、高すぎると脱硝率が低下し、触媒の耐久性が低下する。ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類は比較的容易に酸化除去されるが、エチレンや酢酸などは反応性が比較的低いので、より高い温度で触媒を使用することが望ましい。
触媒の使用量は、多すぎると経済性が悪化し、少なすぎると性能が不十分となる虞がある。従って、被ガス処理系において、時間あたりのガス空間速度(GHSV)は、経済性および脱硝性を両立する範囲とするのが好ましく、例えば、500〜200000h−1、好ましくは1000〜150000h−1、さらに好ましくは2000〜100000h−1、特に5000〜30000h−1程度である。なお、反応性が比較的低い可燃性成分に対して高い転化率を要する場合には、2,000〜15,000h−1程度の範囲としてもよい。
触媒層としての長さは、触媒活性を損なわない範囲で選択でき、例えば、0.01〜10m、好ましくは0.05〜5m、さらに好ましくは0.1〜1m程度であってもよい。
[アンモニア分解方法]
また、本発明のアンモニアの分解方法では、アンモニアを含む被処理ガス(アンモニア含有被処理ガス、例えば、内燃機関から排出される排ガスなど)を、前記触媒に接触させて、アンモニアを無害な窒素に分解(変換)して除去する。被処理ガス中のアンモニア濃度は、体積比で、5000ppm以下(例えば、1〜5000ppm)であってもよく、通常、5〜4000ppm、好ましくは10〜3000ppm程度であってもよい。なお、前記と同様に、被処理ガスは、窒素酸化物を含んでいてもよく、前記と同様に、酸素、水蒸気、二酸化炭素、炭化水素、一酸化炭素、酸素含有有機化合物などを含んでいてもよい。なお、被処理ガス中のこれらのガスの含有割合は、前記窒素酸化物除去方法の場合と同様の範囲から選択できる。被処理ガスは、実質的に窒素酸化物を含んでいない被処理ガスであってもよい。例えば、本発明のアンモニア分解方法では、窒素酸化物が還元除去され、窒素酸化物を実質的に含んでいない被処理ガスであって、アンモニアを含む被処理ガスを使用してもよい。
アンモニア含有被処理ガスと、前記触媒との接触温度は、例えば、350℃以上、好ましくは400℃以上(例えば、400〜600℃)、より好ましくは450℃以上(例えば、450〜550℃)程度である。温度が低すぎると触媒活性が低下し、分解率の低下を伴う。一方、高すぎるとアンモニアの一部が窒素酸化物に変換される虞がある他、触媒の耐久性が低下する虞がある。なお、ガス空間速度や触媒層の長さなどは、前記窒素酸化物除去方法の場合と同様の範囲から選択できる。
なお、前記窒素酸化物除去方法および前記アンモニア分解方法は、他の方法と組み合わせてもよく、前記窒素酸化物除去方法および前記アンモニア分解方法を組み合わせてもよい。例えば、アンモニアの存在下、窒素酸化物(及び可燃性成分)を含む被処理ガスを、前記触媒又は従来の触媒(例えば、酸化チタン系触媒)に接触させて、窒素酸化物を還元除去(及び可燃性成分を酸化除去)したのち、窒素酸化物(及び可燃性成分)が除去され、かつアンモニアを含む被処理ガスを、さらに下流側において、前記触媒に接触させて、アンモニアを窒素に分解してもよい。
以下、実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
硫酸アンモニウム4.5gと、硫酸鉄(II)・7水和物(FeSO4・7H2O)11.6gとを120mlの純水に溶解し、この水溶液に水酸化ジルコニウム(新日本金属化学(株)製;Zr(OH)4−D;ZrO2として77重量%含有)30gを浸漬した後、100℃のホットプレート上で蒸発乾固し、さらに550℃で4時間焼成して鉄含有硫酸根ジルコニアを得た。
硝酸パラジウム水溶液(Pd含量:23.26重量%)0.0134gと硝酸ロジウム水溶液(Rh含量:7.85重量%)0.0386gを20mlの純水で混合希釈した。この水溶液に前記の鉄含有硫酸根ジルコニア6gを浸漬し、100℃のホットプレート上で乾燥、さらに500℃で4時間焼成して、Pd−Rh/鉄硫酸根ジルコニア触媒(BET比表面積42m2/g)を得た。
この触媒を打錠成型して粒径1〜2mmにそろえて3ml(2.4g)とり、石英製反応管(内径8mm)に充填した。触媒層の温度を450℃に保ち、被処理ガスを毎時48リットル(0℃、1気圧の状態における体積、以下同様)の流量で流通した(GHSV 16,000h−1)。なお、被処理ガスの組成は、NOが200ppm、NH3が300ppm、COが500ppm、C2H4が100ppm、O2が10%、H2Oが2%、SO2が1ppm、残部がヘリウムであった。数時間活性を安定化させた後、アンモニア濃度を160、200、240、300ppm(それぞれ[NH3]/[NO]=0.8、1.0、1.2、1.5に相当)に順次変えて、NOxの転化率、CO及びHCの転化率を測定し、さらに触媒層の温度を400、350、300℃に変えてそれぞれの温度で同様に測定した。なお、各転化率は下記の式で計算される。
NOxの転化率(%)=100×{1−(反応後NOx濃度)/(反応前NOx濃度)}
COの転化率(%)=100×{1−(反応後CO濃度)/(反応前CO濃度)}
HCの転化率(%)=100×{1−(反応後エチレン濃度)/(反応前エチレン濃度)}
ここで、反応前とはガス流通方向に対して触媒より上流側、反応後とはガス流通方向に対して触媒より下流側で測定したことを意味する。
なお、NOx濃度は化学発光式NOx分析計で、COおよびエチレン濃度はガスクロマトグラフで、それぞれ測定した。反応後のリークアンモニア濃度は検知管((株)ガステック製)で測定した。
各温度およびアンモニア濃度([NH3]/[NO]比)におけるNOxの転化率、[NH3]/[NO]=1.5におけるリークアンモニア濃度、COおよびHCの転化率を表1に示す。[NH3]/[NO]=1.0におけるNOxの転化率は300〜400℃の範囲で80%以上であり、450℃でもアンモニアをやや過剰にすると、NOxの転化率はほぼ100%となる。[NH3]/[NO]=1.5におけるリークアンモニア濃度は300℃でも6ppmに過ぎず、アンモニアが過剰に投入されてもアンモニアが漏出する虞はないことが分かる。COおよびHCの転化率は350℃以上では75%以上となり、効果的に除去できることが分かる。
比較例1
実施例1で用いた鉄含有硫酸根ジルコニアを、白金族金属成分を担持することなく、そのまま用い、実施例1と同様に触媒活性を評価した(触媒量は3ml,2.4g)。結果を表2に示す。脱硝性能は十分であるが、COおよびHCの転化率は低い。
比較例2
シュウ酸バナジル水和物(VOC2O4・nH2O;VOC2O4として71重量%含有)1.20gを20mlの純水に加え、加熱溶解した。この溶解物とメタタングステン酸アンモニウム水溶液(WO3として50%含有)2.00gを20mlの純水で希釈したものを混合し、この混合物に酸化チタン(石原産業(株)製、ST−01、BET比表面積300m2/g)8.50gを浸漬し、100℃で乾燥、400℃で4時間焼成して、酸化チタン−酸化バナジウム−酸化タングステン触媒Aを得た。
この触媒を実施例1と同様に評価した(触媒量は3ml,1.8g)。結果を表3に示す。脱硝性能は十分であるが、COおよびHCの転化率は低いことが明らかである。
比較例3
酸化チタンを石原産業(株)製MC−90(BET比表面積97m2/g)に代えた他は比較例2と同様にして酸化チタン−酸化バナジウム−酸化タングステン触媒Bを得た。
この触媒を実施例1と同様に評価した(触媒量は3ml,2.0g)。結果を表4に示す。脱硝性能は十分であるが、COおよびHCの転化率は低い。特に一酸化炭素の転化率は大きな負の値を示したが、これはエチレンが不完全酸化されて一酸化炭素を生成したためと考えられる。
比較例4
比較例3で調製した酸化チタン−酸化バナジウム−酸化タングステン触媒Bの6gを、テトラアンミン白金硝酸塩(Pt(NH3)4(NO3)2)水溶液(Pt含量:5.77重量%)0.1045gを純水20mlで希釈した水溶液に浸漬し、100℃のホットプレート上で蒸発乾固、500℃で4時間焼成して、Pt/酸化チタン−酸化バナジウム−酸化タングステン触媒を調製した。
この触媒を実施例1と同様に評価した(触媒量は3ml,2.5g)。結果を表5に示す。NOxの転化率が450℃では大きく低下したほか、COおよびHCの転化率も実施例の触媒に比較すると低いものであった。
実施例2
テトラアンミン白金硝酸塩(Pt(NH3)4(NO3)2)水溶液(Pt含量:5.77重量%)0.0524gを純水20mlに溶解した水溶液を調製した。この溶液に、実施例1と同様に調製した鉄含有硫酸根ジルコニア6gを浸漬し、100℃のホットプレート上で蒸発乾固、さらに500℃で4時間焼成して、Pt/鉄硫酸根ジルコニア触媒(BET比表面積48m2/g)を得た。
この触媒を実施例1と同様に評価した(触媒量は3ml,2.4g)。結果を表6に示す。[NH3]/[NO]=1.0におけるNOxの転化率は300〜450℃の範囲で80%以上であり、450℃でもアンモニアをやや過剰にすると、ほぼ100%となる。[NH3]/[NO]=1.5におけるリークアンモニア濃度は400℃以上ではほぼ0となり、アンモニアが過剰に投入されてもアンモニアが漏出する虞はないことが分かる。COおよびHCの転化率は400℃以上では80%以上となり、効果的に除去できることが分かる。
比較例4の触媒と比較すると、COおよびHCの転化率は同等以上であるが、これらの成分が有効に除去できる400℃以上の温度域でのNOxの転化率は、実施例2の触媒の方が優れている。
比較例5
担体をアルミナ[住友化学(株)製KHO−24(BET比表面積140m2/g)を粉砕したもの]に代えた以外は、実施例2と同様にして0.1% Pt/アルミナ触媒を得た。この触媒を実施例1と同様に評価した(触媒量は3ml,1.9g)。結果を表7に示す。COおよびHCの転化率は300℃でも99%と極めて高かったが、NOxは全く浄化できないどころか、アンモニアからNOxを生成して、NOxを増やす結果となった。一般に広く用いられている有機化合物酸化分解用の触媒は、単独では脱硝機能を持たないことは明らかである。
比較例6
硫酸アンモニウム2gと、硫酸鉄(III)・15水和物(Fe2(SO4)3・15H2O)36gとを150mlの純水に溶解し、この水溶液に水酸化ジルコニウム(三津和化学薬品(株)製;ZrO2として79重量%含有)180gを15時間浸漬した後、120℃のホットプレート上で蒸発乾固し、さらに空気中550℃で6時間焼成して鉄含有硫酸根ジルコニアを得た。
得られた鉄含有硫酸根ジルコニアのBET比表面積は、155m2/gであった。また、蛍光X線分析の結果、この触媒の鉄含有量は、Fe換算でジルコニア(ZrO2)に対して4.0重量%であった。
この触媒を打錠成型して粒径1〜2mmにそろえて4.5ml(4.0g)とり、石英製反応管(内径14mm)に充填した。触媒層の温度を300℃、350℃、400℃、450℃に順次変えて、被処理ガスを毎分1.2リットル(0℃、1気圧の状態における体積)の流量で流通した(GHSV 16,000h−1)。被処理ガスの組成は、一酸化窒素が300ppm、酸素が10%、水蒸気が10%、一酸化炭素が500ppm、エチレンが200ppm、二酸化硫黄が0.5ppm、アンモニアが225ppm、300ppm、375ppm、450ppm(それぞれ[NH3]/[NO]=0.75、1.0、1.25、1.5に相当)で残部がヘリウムであった。反応前後のガスの窒素酸化物濃度を化学発光式NOx分析計で測定し、エチレン、一酸化炭素濃度をガスクロマトグラフで測定し、実施例1と同様にNOx、COおよびHCの転化率を計算した。結果を表8に示す。なお、表中の「−」は、測定しなかったことを示す。
表8から明らかなように、脱硝性能は高いが、COおよびHCの転化率が低い。また、実施例1と同様に検知管で反応管出口のアンモニア濃度(リークアンモニア濃度)を測定したところ、触媒層温度450℃、[NH3]/[NO]=1.5の条件で、100ppm以上のアンモニアが検出された。
実施例3
硝酸ロジウム(Rh(NO3)3)水溶液(Rhとして5重量%含有、約5重量%の硝酸を含有)0.48gを10gの純水で希釈した。この水溶液に、比較例6で調製した鉄硫酸根ジルコニア(12g)を12時間浸漬し、常圧(大気圧)下、温度120℃のホットプレート上で蒸発乾固した後、500℃で6時間焼成して、Rh/鉄硫酸根ジルコニア触媒を得た。この触媒を比較例6と同様に評価した。結果を表9に示す。なお、表中の「−」は、測定しなかったことを示す。
表9から明らかなように、Rhを担持しない比較例6と比べて、COおよびHCの転化率は大きく向上し、かつ、脱硝性能は大きな影響は受けない。350〜400℃の範囲では、[NH3]/[NO]=1.0の条件で、NOx、COおよびエチレンはいずれも90%程度除去できる。実施例1と同様にリークアンモニア濃度を測定したところ、触媒層温度450℃、[NH3]/[NO]=1.5の条件で、24ppmであり、比較例6と比べて大きく減少した。
比較例7
硫酸マンガン・5水和物(MnSO4・5H2O)15.6gと、硫酸鉄(III)・15水和物(Fe2(SO4)3・15H2O)21.4gとを110mlの純水に溶解し、この水溶液に水酸化ジルコニウム(三津和化学薬品(株)製;ZrO2として79重量%含有)135gを15時間浸漬した。常圧(大気圧)下、温度120℃のホットプレート上で蒸発乾固した後、空気中、650℃で6時間焼成して鉄マンガン硫酸根ジルコニアを得た。
得られた鉄マンガン硫酸根ジルコニアのBET比表面積は、77m2/gであった。また、蛍光X線分析の結果、得られた鉄マンガン硫酸根ジルコニア触媒のマンガン含有量は、Mn換算でジルコニア(ZrO2)に対して3.2重量%、鉄含有量は、Fe換算でジルコニアに対して3.0重量%であった、この触媒を比較例6と同様に評価した。結果を表10に示す。なお、表中の「−」は、測定しなかったことを示す。
表10から明らかなように、この触媒も脱硝性能は高いが、COおよびHCの転化率は低い。
実施例4
硝酸ロジウム(Rh(NO3)3)水溶液(Rhとして5重量%含有、約5重量%の硝酸を含有)0.085gを7.5gの純水で希釈した。この水溶液に、比較例7で調製した鉄マンガン硫酸根ジルコニア(8.5g)を12時間浸漬し、常圧(大気圧)下、温度120℃のホットプレート上で蒸発乾固した後、500℃で6時間焼成して、Rh/鉄マンガン硫酸根ジルコニア触媒を得た。この触媒を比較例6と同様に評価した。結果を表11に示す。なお、表中の「−」は、測定しなかったことを示す。
表11から明らかなように、Rhを担持しない比較例7と比べて、COおよびHCの転化率は大きく向上し、かつ、脱硝性能は大きな影響を受けない。