JP4878868B2 - 炭化水素用脱硫剤 - Google Patents
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Description
そこで定置型燃料電池発電システムにおいては、市販の炭化水素をオンサイトで吸着により脱硫する手法が種々提案されており、炭化水素、とりわけ灯油などの重質炭化水素を、200℃付近の反応条件でNi‐Cu系脱硫剤や、Ni−Zn系脱硫剤を用いて脱硫する方法などが提案されている。(例えば、特許文献2および3参照)。
そこで、本発明は、水素を炭化水素と共に供給することなく、炭化水素中の硫黄分を効率よくppbレベルの低濃度まで除去し得て、かつ破過時間が延長された寿命の長い炭化水素用脱硫剤を提供することを目的とするものである。
1.ニッケルを酸化物(NiO)換算で50〜95質量%、ルテニウムを酸化物(RuO2)換算で0.1〜12質量%、及び無機酸化物を含有し、銅を含有しないことを特徴とする炭化水素用脱硫剤。
2.無機酸化物が、SiO2、Al2O3、およびSiO2-Al2O3のうちいずれか1つもしくは2つ以上の組合せである上記1に記載の炭化水素用脱硫剤。
3.上記1または2に記載の脱硫剤を用い、反応温度0〜400℃、反応圧力0.1MPa以上、液空間速度0.01〜100hr−1の条件下で、炭化水素中の硫黄分を50質量ppb以下にする、炭化水素の脱硫方法。
本発明における脱硫剤は、ニッケルおよびルテニウムを含んでなり、原料炭化水素中に存在する硫黄含有化合物を吸着除去して、原料炭化水素中の硫黄濃度を低減(脱硫)させるものである。
脱硫剤におけるニッケルの含有量は、酸化物(NiO)換算で50〜95質量%、好ましくは60〜90質量%である。ニッケル酸化物量が50質量%以上であれば所望の脱硫性能が発現されるため好ましく、95質量%以下であれば、脱硫効果が飽和せず、またNi同士の凝集による脱硫性能の低下が生じにくいため好ましい。
無機酸化物の種類は特に限定されないが、Si、Al、B、Mg、Ce、Zr、P、Ti、W、Mnからなる群から選ばれるいずれか1種の元素の酸化物もしくはこれらの混合物、または2種以上の元素の複合酸化物が好ましく、これらは結晶構造が無定形であっても結晶性であっても構わない。例えば、SiO2、Al2O3、TiO2、B2O3、MgO、SiO2-Al2O3、Al2O3-B2O3、MgO-SiO2、ゼオライトなどが挙げられる。各種無機酸化物の中でも、高表面積、高成形性、高耐破壊・耐磨耗性を有していることから、SiO2、Al2O3、およびSiO2-Al2O3が特に好ましい。無機酸化物成分含有量については、特に制限はなく、各種条件において適宜選定すればよいが、通常は脱硫剤全体に対して好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは0.5〜40質量%の範囲であればよい。含有量が0.5質量%以上であれば、無機酸化物成分としての効果が十分に発揮され、また50質量%以下であれば、吸着活性成分の低下による脱硫性能の低下が防ぐことができ、好ましい。
脱硫剤の調製方法については特に規定されず、任意の方法で適宜調製することができるが、望ましくは無機酸化物を用いて、含浸法、混練法、共沈法、ゾルゲル法、平衡吸着法などにより調製することができ、ニッケルおよびルテニウムを有効的に機能させるためには含浸法および共沈法が好ましい。さらに、ニッケルの場合、含浸法であると1回の操作における担持量が少ないため、共沈法がより好ましい。ルテニウムの場合、高活性が得られることから含浸法がより好ましい。
好適な脱硫剤の調製方法としては、まず、ニッケル原料及びアルミニウム原料を含む酸性水溶液と、Si原料および無機塩基を含む塩基性水溶液を別個に調製する。
上記ニッケル原料としては特に限定されないが、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケルなどの水溶性ニッケル金属塩およびその水和物が好適に使用できる。これらのニッケル原料は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、アルミニウム原料としては、特に限定されないが、ベーマイト、擬ベーマイト、γアルミナ、βアルミナなどが好ましい。これらは粉体状、あるいはゾルの形態で用いることができ、一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ニッケル原料及びアルミニウム原料を含む水溶液は、塩酸、硫酸、硝酸などの酸によって調整することが好ましい。
また、無機塩基としては、アルカリ金属の炭酸塩や水酸化物などが好ましく、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてよいが、特に炭酸ナトリウムが好適である。この無機塩基の使用量は、次の工程において、前記酸性水溶液と、塩基性水溶液を混合した場合の混合液が実質上中性から塩基になるように選ぶのが有利である。
なお、上記アルミニウム原料やSi原料は、脱硫剤に無機酸化物成分を加えるために用いるものである。
ルテニウム原料としては、特に限定されないが、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウムなどの水溶性ルテニウム金属塩およびその水和物が好適に使用できる。
次いで、上記ルテニウム成分の含浸、固定化物を乾燥させる際の温度としては120℃以下であることが好ましい。120℃以下であれば、酸化ルテニウムの生成を抑制でき、後の還元工程を効率化することができる。また、乾燥方法は特に限定されず、常圧での乾燥、減圧での乾燥、空気中での乾燥、不活性ガス雰囲気下での乾燥を任意に選ぶことができる。
上記のようにして調製した脱硫剤は、脱硫反応に供す前に、還元処理しておくことが好ましい。これにより、脱硫剤の含有金属が活性化され、硫黄分を吸着しやすい状態となる。還元方法は、水素、CO等による気相還元、ホルムアルデヒド、エタノール等を用いた液相還元等の公知の方法を用いることが可能であるが、気相による水素化還元が好ましく、この場合、水素雰囲気で200〜500℃、より好ましくは300〜450℃の温度で行うことが好ましい。
なお、水素化還元処理は、実際の脱硫器内(オンサイト)でも、事前の水素化還元処理装置(オフサイト)でもかまわないが、使用脱硫器の耐熱性などを考慮するとオフサイト還元が好ましい。さらにオフサイト水素化還元処理においては、還元処理後に脱硫剤の安定性を向上させるために、酸素や二酸化炭素などによる安定化処理を施すことがさらに好ましい。
また、温度は0〜400℃が好ましく、より好ましくは100〜300℃、更に好ましくは140〜300℃である。低温すぎると吸着脱硫速度が低下し、逆に高温すぎる場合には脱硫剤中のニッケル成分が凝集して脱硫サイト数が減少し、脱硫性能が低下する恐れがある。
また、液空間速度(LHSV)は0.01〜100hr−1、より好ましくは0.1〜20hr−1が好ましい。
脱硫条件を上記範囲で適当に選択することにより、硫黄分をppbレベルに低減した炭化水素を長時間得ることができる。
実施例及び比較例における脱硫剤の物性、及び炭化水素(生成油)中の硫黄分の機器分析方法を以下に示す。
BET(Braunauer−Emmett−Tailor specific surface area)比表面積の測定には、日本ベル社製表面積測定装置(Belsorp Mini)を用いた。試料約200〜300mgを精秤し、これを石英製の試料管に充填し、10-1〜10-3mmHg台に減圧しながら室温から400℃まで1時間かけて昇温し、減圧下、同温度で3時間保持して脱気処理を行った。その後、減圧しながら室温まで降温させ、高純度ヘリウムガスで置換し、脱気後の試料重量を精秤した。この後、液化窒素温度で窒素吸着を行い、比表面積を測定した。
<炭化水素中の硫黄分析>
炭化水素中の硫黄分析は、HOUSTON ATLAS社製Thermo Onix XVIを用いた。
ベーマイトAP-3(触媒化成工業製)1.24g、1N HNO3水溶液40mlをイオン交換水1Lに加え80℃に加温後、Ni(NO3)2・6H2Oを159g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1Lにコロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)33.9g、炭酸ナトリウム99.4gを加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて、洗浄、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けた。次いで、RuCl3・nH2O(小島化学薬品製、Ru含有量41mass%、n=1〜3)2.3gをイオン交換水11.4gに溶解させた水溶液に上記メッシュ破砕したもの30gを1時間浸漬し、該メッシュ破砕したものに該水溶液を含浸担持させ、乾燥後、7規定(mol/L)のNH3水150gに1時間漬け、ろ過後、イオン交換水2Lでろ過洗浄、120℃で乾燥し、脱硫剤1を得た。
1NHNO3水溶液40mlをイオン交換水1Lに加え80℃に加温後、Ni(NO3)2・6H2Oを160g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1Lにコロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)36.4g、炭酸ナトリウム99.4gを加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて、洗浄、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けた。次いで、RuCl3・nH2O(小島化学薬品製、Ru含有量41mass%、n=1〜3)0.4gをイオン交換水11.4gに溶解させた水溶液にメッシュ破砕したもの30gを1時間浸漬し、該メッシュ破砕したものに該水溶液を含浸担持させ、乾燥後、7N NH3水150gに1時間漬け、ろ過後、イオン交換水2Lでろ過洗浄し、120℃で乾燥し、脱硫剤2を得た。
ベーマイトAP-3(触媒化成工業製)1.9g、1NHNO3水溶液40mlをイオン交換水1Lに加え80℃に加温後、Ni(NO3)2・6H2Oを140g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1Lにコロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)53.3g、炭酸ナトリウム99.4gを加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて、洗浄、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けた。次いで、RuCl3・nH2O(小島化学薬品製、Ru含有量41mass%、n=1〜3)5.4gをイオン交換水11.4gに溶解させた水溶液に上記メッシュ破砕したもの30gを1時間浸漬し、該メッシュ破砕したものに該水溶液を含浸担持させ、乾燥後、7N NH3水150gに1時間漬け、ろ過後、イオン交換水2Lでろ過洗浄し、120℃で乾燥し、脱硫剤3を得た。
ベーマイトAP-3(触媒化成工業製)1.24g、1NHNO3水溶液40mlをイオン交換水1Lに加え80℃に加温後、Ni(NO3)2・6H2Oを164g、RuCl3・nH2O(小島化学薬品製、Ru含有量41mass%、n=1〜3)3.6g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1Lにコロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)26.7g、炭酸ナトリウム99.4gを加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて、洗浄、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けし、脱硫剤4を得た。
ベーマイトAP-3(触媒化成工業製)1.24g、1N HNO3水溶液40mlをイオン交換水1Lに加え80℃に加温後、Ni(NO3)2・6H2Oを159g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1Lにコロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)33.9g、炭酸ナトリウム99.4g加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて、洗浄、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けし、脱硫剤5を得た。
ベーマイトAP-3(触媒化成工業製)1.24g、1N HNO3水溶液40mlをイオン交換水1Lに加え80℃に加温後、Ni(NO3)2・6H2Oを149g、Cu(NO3)2・4H2Oを7.9g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1Lにコロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)33.9g、炭酸ナトリウム99.4g加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて、洗浄、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けし、脱硫剤6を得た。
ベーマイトAP-3(触媒化成工業製)1.24g、1N HNO3水溶液40mlをイオン交換水1Lに加え80℃に加温後、Ni(NO3)2・6H2Oを149g、Zn(NO3)2・6H2Oを8.9g加え調製液Aを得た。別途用意したイオン交換水1Lにコロイダルシリカ スノーテックスXS(日産化学製)33.9g、炭酸ナトリウム99.4g加え、80℃に加温し、調製液Bを得た。調製液AとBを80℃に保持しながら、B液をA液に瞬時に加えて、1時間攪拌した。その後、イオン交換水を5L用いて、洗浄、ろ過後に空気中120℃で12時間乾燥、400℃で1時間焼成し、得られた焼成物を破砕し、1.0mmと1.4mmの網目を有する篩で篩い分けし、脱硫剤7を得た。
脱硫剤1〜7を用い、灯油の脱硫試験を行い、脱硫性能を比較した。この脱硫試験では、初留温度148℃、10%留出温度172℃、30%留出温度185℃、50%留出温度202℃、70%留出温度225℃、90%留出温度251℃、終点281℃の蒸留性状を有し、硫黄分6質量ppmを含むJIS 1号灯油を用いた。この用いた灯油の性状を表1に示す。
まず、脱硫反応に先立ち、脱硫剤を還元・活性化した。脱硫剤1〜3および5〜7については、内径16mmのSUS製反応管に脱硫剤11.6mlを充填した。そして、反応管を400℃に昇温し、常圧下、水素気流中で3時間保持することによって、脱硫剤を還元・活性化した。
一方、脱硫剤4については、内径16mmのSUS製反応管に脱硫剤20mlを充填した。水素ガス流通下で400℃まで昇温し、400℃で3時間保持後、室温まで冷却し、その後希釈酸素雰囲気下で100℃以下で酸化安定化した。次いで酸化安定化した脱硫剤を抜き出し、そのうち11.6mlを別の内径16mmのSUS製反応管に充填した。そしてその反応管を220℃に昇温し、常圧下、水素気流中で3時間保持することによって、脱硫剤を還元・活性化した。
その後、上記JIS 1号灯油を、圧力0.4MPa、温度220℃、液空間速度10hr-1で、上記活性化された脱硫剤が入った各反応管に流通させ、反応管の下流で生成油を1時間ごとに採取した。採取した生成油中の硫黄分が50質量ppbを越えるまで脱硫実験を継続し、50質量ppbを破過するまでの時間を50質量ppb破過時間とした。結果を表2に示す。
Claims (3)
- ニッケルを酸化物(NiO)換算で50〜95質量%、ルテニウムを酸化物(RuO2)換算で0.1〜12質量%、及び無機酸化物を含有し、銅を含有しないことを特徴とする炭化水素用脱硫剤。
- 無機酸化物が、SiO2、Al2O3、およびSiO2-Al2O3のうちいずれか1つもしくは2つ以上の組合せである請求項1に記載の炭化水素用脱硫剤。
- 請求項1または2に記載の脱硫剤を用い、反応温度0〜400℃、反応圧力0.1MPa以上、液空間速度0.01〜100hr−1の条件下で、炭化水素中の硫黄分を50質量ppb以下にする、炭化水素の脱硫方法。
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