ところで、図8に示す据付架台において、設置部材72の中間部にエアコン室外機を載置する際には、室外機を天井等の固定体と設置部材72との間に横から挿入する作業が必要となる。しかしこのような作業では、室外機の設置スペースによっては作業を行い難い場合もある。そこで、固定部材71のレール部73が設置部材72の凹部75に嵌まり込まないように、設置部材72と固定部材71とをボルトナット74で連結し、この状態で固定部材71に対して設置部材72を回動させれば、室外機を両設置部材72の間を通して下から挿入すれば、作業の手間を低減できるようになる。しかしながら、この場合でも、設置部材72の凹部75にレール部73が嵌まり込まないように設置部材72を保持する必要があるので、設置作業が必ずしも楽になるわけではない。
そこで、本発明の目的は、据付架台へエアコン室外機を設置する作業の手間を低減することである。
前記の目的を達成するため、本発明は、据付架台(10)へのエアコン室外機の据付方法であって、前記据付架台(10)は、固定体に固定される固定部材(12)と、前記固定部材(12)に連結される第1設置部材(14)と、前記固定部材(12)に連結される第2設置部材(16)と、連結具(20)と、を備え、前記固定部材(12)及び前記第2設置部材(16)の一方の部材に凹部(38)が形成されたものであり、前記固定部材(12)と前記第2設置部材(16)とを前記連結具(20)により互いに回動可能な状態に連結する連結ステップと、前記凹部(38)を塞ぐように前記一方の部材に冶具(50)が取り付けられた状態で、前記第2設置部材(16)を、前記固定部材(12)に連結された前記第1設置部材(14)から離れる方向に前記固定部材(12)に対して回動し、前記第1設置部材(14)にエアコン室外機(21)を載置する第1設置ステップと、前記第2設置部材(16)を前記第1設置部材(14)に近づく方向に回動する戻しステップと、前記凹部(38)を露出させる露出ステップと、前記凹部(38)に前記固定部材(12)及び前記第2設置部材(16)のうちの他方の部材を嵌め、前記エアコン室外機(21)を前記第2設置部材(16)に載置する第2載置ステップと、が含まれているエアコン室外機の据付方法である。
本発明では、固定部材(12)及び第2設置部材(16)を連結具(20)によって互いに連結すると、固定部材(12)に対して第2設置部材(16)を回動させることができる。このとき、固定部材(12)及び第2設置部材(16)の一方の部材に形成された凹部(38)が冶具(50)で覆われているので、第2設置部材(16)を固定部材(12)に対して回動したとしても、固定部材(12)及び第2設置部材(16)の他方の部材が前記一方の部材の凹部(38)に引っ掛かることはない。このため、凹部(38)に前記他方の部材が嵌まり込まないように第2設置部材(16)を保持する必要がないので、エアコン室外機(21)を第1設置部材(14)上に設置する際の作業者の負担を軽減することができる。しかも、凹部(38)に前記他方の部材が接触して傷がつくことを防止することも可能となる。そして、第2設置部材(16)を、第1設置部材(14)に載置された室外機(21)の下の位置に達するまで回動させるとともに凹部(38)を露出させ、この状態で、凹部(38)に前記他方の部材を嵌めれば、第2設置部材(16)を所定の姿勢に保持することができる。なお、このときの第2設置部材(16)の回動操作は、エアコン室外機(21)が第1設置部材(14)に設置された状態での操作となるため、室外機(21)を保持する作業負担が軽減された状態での回動操作となる。したがって、凹部(38)が露出した状態で第2設置部材(16)を回動するとしても、この操作が煩わしくなるというものではない。また回動後に凹部(38)を露出させるようにしても、回動操作時の負担を軽減することができる。
前記据付方法において、前記凹部(38)は、前記第2設置部材(16)に設けられ、前記固定部材(12)には、前記連結具(20)の頭部(20f)をスライド可能なレール部(24)が設けられる場合には、前記連結ステップでは、前記第2設置部材(16)から突出した状態にある前記連結具(20)の前記頭部(20f)を前記固定部材(12)の前記レール部(24)の内側に挿入し、前記第1設置ステップでは、前記凹部(38)を覆うように前記冶具(50)が取り付けられた前記第2設置部材(16)を前記固定部材(12)に対して回動するのが好ましい。
この態様では、第2設置部材(16)に取り付けられた連結具(20)の頭部(20)fを固定部材(12)のレール部(24)に挿入して、このレール部(24)に沿って連結具(20)を移動させることより、第2設置部材(16)と固定部材(12)との連結箇所を任意の位置に設定することができる。そして、この設定位置で第2設置部材(16)を固定部材(12)に対して回動させることが可能である。このとき、第2設置部材(16)の凹部(38)が冶具(50)で覆われているので、第2設置部材(16)を固定部材(12)に対して回動したとしても、固定部材(12)が第2設置部材(16)の凹部(38)に引っ掛かることはない。
また、この態様において、前記レール部(24)が、前記固定部材(12)の部材本体(22)に対して突出するように設けられる場合には、前記第2設置ステップでは、前記凹部(38)に前記固定部材(12)の前記レール部(24)を嵌めるのが好ましい。
この態様では、固定部材(12)の部材本体(22)から突出したレール部(24)に連結具(20)の頭部(20f)を挿通し、この状態で第2設置部材(16)を回動する。そして、第2設置ステップにおいて、第2設置部材(16)の凹部(38)にレール部(24)を嵌めることができる。
また、前記連結ステップでは、前記凹部(38)を塞ぐように前記第2設置部材(16)に取り付けられた前記冶具(50)によって前記頭部(20f)が前記第2設置部材(16)から突出した状態に前記連結具(20)を保持しながら、前記固定部材(12)と前記第2設置部材(16)とを前記連結具(20)によって連結するのが好ましい。
この態様では、冶具(50)によって連結具(20)の頭部(20f)が第2設置部材(16)から突出した状態に維持することができるので、作業者は、連結具(20)がこのような状態に維持されるように連結具(20)を保持する必要がなくなる。したがって、第2設置部材(16)と固定部材(12)とを連結する作業を容易化することができる。
この態様において、前記第1設置ステップにおいて、前記第2設置部材(16)を回動させるときに、前記連結具(20)を前記第2設置部材(16)に対して固定した状態で前記第2設置部材(16)と一緒に回動させるようにしてもよい。
この態様では、冶具(50)によって第2設置部材(16)に対して連結具(20)を安定して保持することができ、この状態で第2設置部材(16)を回動操作することができる。
また、前記据付方法において、前記露出ステップにおいて、前記冶具(50)を前記凹部(38)の形成された部材から取り外すようにしてもよい。
この態様では、冶具(50)が凹部(38)の形成された部材に残されないため、据付架台(10)をすっきりさせることができる。
本発明は、前記エアコン室外機の据付方法に用いられる冶具であって、前記凹部(38)の形成された部材に外嵌可能で、かつ前記凹部(38)を塞ぐことができるように前記凹部(38)の形成された部材に対してスライド可能に構成されている冶具である。
本発明の冶具では、冶具(50)を前記凹部(38)の形成された部材に外嵌するとともに、当該部材に沿ってスライドさせることにより、冶具(50)によって凹部(38)を塞ぐことができる。そして、この部材の凹部(38)に固定部材(12)を嵌め合わせる際には、凹部(38)を露出させることができる。
前記冶具において、前記凹部(38)の形成された部材の外形寸法に対応した形状寸法の本体部(51)と、前記頭部(20f)が前記凹部(38)の形成された部材から突出した状態に前記連結具(20)を保持する押え部(52)と、を備えているのが好ましい。
この態様では、押え部(52)によって連結具(20)の頭部(20f)が凹部(38)の形成された部材から突出した状態に保持することができるので、第2設置部材(16)の回動時に作業者が連結具(20)を保持する必要がなくなる。
本発明は、エアコン室外機の据付架台であって、レール部(24)を有し、固定体に固定される固定部材(12)と、前記固定部材(12)に連結される第1設置部材(14)と、凹部(38)を有し、前記固定部材(12)に連結される第2設置部材(16)と、頭部(20f)を有する連結具(20)と、を備え、前記凹部(38)に前記レール部(24)又は前記固定部材(12)が嵌め込まれた状態で、前記頭部(20f)が前記レール部(24)に挿入された前記連結具(20)によって前記第2設置部材(16)と前記固定部材(12)とが連結され、前記連結具(20)は、前記レール部(24)又は前記固定部材(12)が前記凹部(38)に嵌め込まれていない状態で前記第2設置部材(16)と前記固定部材(12)とを互いに回動可能な状態で連結可能な長さを有するとともに、前記レール部(24)の内側で回動可能な寸法形状の頭部(20f)を有し、かつ前記第2設置部材(16)に対して回動不能な寸法形状に構成されているエアコン室外機の据付架台である。
本発明では、連結具(20)が、レール部(24)又は固定部材(12)が凹部(38)に嵌め込まれていない状態でも第2設置部材(16)と固定部材(12)とを互いに回動可能な状態で連結できる。しかも、第2設置部材(16)を固定部材(12)に対して回動する際に、連結具(20)は第2設置部材(16)と一緒に回動し、このとき連結具(20)の頭部(20f)がレール部(24)の内側で回動する。そして、第1設置部材(14)にエアコン室外機(21)を載置し、第2設置部材(16)を回動させて凹部(38)にレール部(24)又は固定部材(12)を嵌め込んだときには、その分だけ連結具(20)の長さが余剰分となる。
前記据付架台において、前記第2設置部材(16)は、前記連結具(20)が挿通される角孔からなる挿通孔(34c)を有し、前記連結具(20)は、前記挿通孔(34c)に係合可能な角形断面の軸部(20e)と、この軸部(20e)の先端部に設けられた雄ねじ部(20c)と、この雄ねじ部(20c)に螺合する雌ねじ部(20d)と、を備えているのが好ましい。
この態様では、固定部材(12)に対して第2設置部材(16)を回動すると、当該第2設置部材(16)の挿通孔(34c)に係合している連結具(20)の軸部(20e)が、第2設置部材(16)と一緒に回動する。一方、固定部材(12)に対して第2設置部材(16)を連結具(20)によって固定する際に、雌ねじ部(20)dを雄ねじ部(20c)に対して締め付けていくときには、連結具(20)の軸部(20e)が第2設置部材(16)の挿通孔(34c)に係合しているので、雄ねじ部(20c)の回り止めをすることなく、雌ねじ部(20d)を螺合させることができる。
以上説明したように、本発明によれば、据付架台へエアコン室外機を設置する作業の手間を低減することができる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係るエアコン室外機の据付方法が適用可能な据付架台を示している。この据付架台10は、例えば、ベランダの天井等の固定体に吊り下げるようにして固定される、いわゆる吊り下げタイプの架台である。
本据付架台10は、固定体に固定可能に構成される固定部材12と、この固定部材12に連結可能な第1設置部材14と、固定部材12に連結可能な第2設置部材16と、固定部材12及び設置部材14,16を互いに連結する連結具20と、を備えている。
第1設置部材14及び第2設置部材16は、エアコン(エアコンディショナー)の室外機(以下、単に室外機)21(図7参照)の挿入方向に見て、両端部が上を向くコ字状に形成されている。そして、固定部材12は2つ設けられていて、一方の固定部材12は、第1設置部材14及び第2設置部材16の各一端部に連結され、他方の固定部材12は、第1設置部材14及び第2設置部材16の各他端部に連結されている。
各固定部材12は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金の押出し材によって構成されており、図2(a)(b)にも示すように、一方向に延びる形状を有している。固定部材12は、部材本体22とレール部24とを一体的に備えている。部材本体22は、固定部22aと、この固定部22aの幅方向端部に繋がる懸架部22bとを有し、部材本体22は、長手方向に垂直な方向の断面が略L字状に構成されている(図2(a))。
固定部22aは、固定体に固定するための部位であり、長手方向に長い長孔22cが形成されている。長孔22cは、固定体に固定部22aを締結する図略のボルト等の締結具を挿通させるためのものである。
懸架部22bは、固定部22aから下方に延出されており、懸架部22bには、長手方向の全体に亘って孔が形成されていて、中空状に形成されている。
レール部24は、固定部材12と第1設置部材14及び第2設置部材16との連結位置を調整可能にするために設けられるものであり、固定部材12の長手方向の全体に亘って形成されている。レール部24は、連結具20をスライド可能に保持するものであり、懸架部22bにおける外側面に、側方に突出するように設けられている。具体的に、レール部24は、懸架部22bの側面からそれぞれ側方に延びる上下一対の基部24a,24bと、この上側の基部24aの端部から下方に延出される上押え部24cと、下側の基部24bの端部から上方に延出される下押え部24dと、を一体的に有している。
図3に示すように、上押え部24cと下押え部24dとの間の間隙は、連結具20の軸部20eを案内する開口部24eとなる。上下一対の基部24a,24bの間隔は、ボルト20a(図5参照)の頭部20fの幅(外径)よりも僅かに大きく、上下一対の基部24a,24bの延出長さは、ボルト20aの頭部20fの厚みよりも僅かに長い値に設定されている。また、上押え部24cの下端部と下押え部24dの上端部との間の間隔(開口部24eの上下幅)は、ボルト20aの軸部20eを回転可能に挿通できる大きさとなっている。したがって、レール部24内にボルト20aの頭部20fを挿入した状態で、連結具20の軸部20eが開口部24eに沿うように連結具20をレール部24に沿ってスライドすることができる。
図2(a)に示すように、レール部24の長さ方向中間部には、ボルト20aの頭部20fを挿通可能な挿入可能部24fが設けられている。挿入可能部24fは、上押え部24c及び下押え部24dの所定範囲を切り欠くことで、ボルト20aの頭部20fを挿入可能にしたものである。レール部24の中間部に挿入可能部24fが形成されることにより、連結具20をレール部24の両端部から装着するのではなく、レール部24の中間部から装着することが可能となる。
第1設置部材14及び第2設置部材16は同じ構成であるので、ここでは、第2設置部材16の構成について説明する。第2設置部材16は、図1に示すように、上下方向に延びる一対の吊持部28と、両吊持部28間に配置される設置部30とを有し、コ字状に構成されている。各吊持部28及び設置部30は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金の押出し材によって構成されている。設置部30の両端部には、上方に折り曲げられた形状のブラケット32が結合されていて、このブラケット32は、吊持部28の下端部に結合可能に構成されている。吊持部28とブラケット32の結合、及びブラケット32と設置部30との結合には、ボルトナット等の締結具による結合となっている。
吊持部28は、室外機21の高さよりも少し長い形状に形成され、設置部30は、室外機21の一方向の幅よりも少し長い形状に形成され、固定部材12は、室外機21の前記一方向に直交する方向の幅と同程度の長さを有する。なお、吊持部28と設置部30は、ブラケット32を介さずに直接接続する構成としてもよい。
設置部30は、室外機21を設置するための部位であり、上面にはレール30aが形成されている。このレール30aは、室外機21を固定するための締結具をスライド移動可能なものであり、図1には防振ゴム30bを取り付けた状態を示している。
図4(a)(b)は、吊持部28における上端部近傍の部位を示し、図4(c)は、吊持部28の長手方向に垂直な断面を示している。吊持部28は、断面が略矩形状の中空形状に形成された角筒状の吊持部本体34と、この吊持部本体34の一側面から突出した一対の突出部36とを一体的に有している。
突出部36は、吊持部本体34を構成する一側壁34aの幅方向両側の角部からそれぞれ同じ方向(平行な方向)に張り出している。したがって、各突出部36は、吊持部本体34の長手方向に沿って延びる平板形状となっている。突出部36の突出高さは、部材本体22からのレール部24の突出高さに対応した高さとなっている。
各突出部36には、それぞれ切欠き部36aが形成されている。この切欠き部36aは、レール部24を嵌合させるためのものであり、レール部24を挿入可能な切欠き幅を有する。言い換えると、第2設置部材16は、レール部24を嵌挿可能な凹部38を有する。両切欠き部36aは、各突出部36の長手方向端部から同じ距離の位置に形成されている。したがって、両切欠き部36aによって形成される空間すなわち凹部38内にレール部24が挿入されるときには、吊持部28が立ち上がる姿勢となる。
ここで、吊持部28(第2設置部材16)と固定部材12とを連結する連結具20について説明する。連結具20は、雄ねじ部20cを有するボルト20aと、雌ねじ部20dを有するナット20bとを備えている。ボルト20aは、図5(a)(b)にも示すように、雄ねじ部20cと、雄ねじ部20cにつながる軸部20eと、この軸部20eにつながる頭部20fとを一体的に有する。軸部20eは、雄ねじ部20cよりも幅の広い部位を有するように断面角形(図例では、六角形)に形成されている。頭部20fは、軸部20eよりもさらに幅が広く、本実施形態では、円形断面を有している。ナット20bは雌ねじ部20dとフランジ部20gとを有する(図3参照)。雌ねじ部20dは、ボルト20aの雄ねじ部20cに螺合可能なものであり、断面角形の外形状を有する。フランジ部20gは、雌ねじ部20dの端部において径方向外側に延設されている。
図4(a)に示すように、吊持部本体34の側壁34a及びこれに対向する対向側壁34bには、切欠き部36aに対応する位置に挿通孔34cが貫通形成されている。この挿通孔34cは、ボルト20aの軸部20eを挿通させる貫通孔であり、かつ軸部20eに係合可能な角孔となっている。したがって、この挿通孔34cに挿通されたボルト20aは、第2設置部材16に対して回動できないことになる。吊持部本体34には、前記側壁34aと対向側壁34bとの間に、つぶれ防止用のスペーサ40(図3参照)が配設されている。挿通孔34cは、このスペーサ40も貫通している。
前記の切欠き部36aに対応する位置とは、吊持部28の長手方向において切欠き部36aに対応する位置であって、各切欠き部36aの中央位置同士を結ぶ仮想線L(図4(a)参照)上の位置を意味している。切欠き部36aの中央位置とは、吊持部28の長さ方向における中央の位置を意味する。挿通孔34cが仮想線L上に形成されていれば、挿通孔34cに挿通された軸部20eを軸芯として吊持部28(第2設置部材16)を回動した場合において、前記仮想線Lとレール部24が平行な位置関係になると、レール部24を凹部38内に挿入することができる。特に、本実施形態では、挿通孔34cは、側壁34aの幅方向中央部に形成されている。ただし、これに限定されるものではなく、挿通孔34cは、側壁34aの幅方向に偏った位置に形成されていてもよい。
室外機21を据付架台10に据え付ける際には、冶具50が用いられる。冶具50は、図6(a)〜(c)に示すように、第2設置部材16の吊持部28に外嵌可能なものであり、例えば樹脂製のものである。冶具50は、吊持部28に接触する本体部51と、ナット20bを押え付けるための押え部52と、操作部53とを一体的に有する。本体部51は、吊持部28の外形寸法に対応した形状寸法を有しており、吊持部本体34における対向側壁34bに沿う対向部51aと、この対向部51aの幅方向両端部から対向部51aに垂直な方向に延び、吊持部28の突出部36に係合可能な引っ掛け部51bと、を有する。
対向部51aは、吊持部28の側壁34a(対向側壁34b)の幅に対応した幅を有するとともに、少なくともナット20bのフランジ部20gの外径よりも長い形状を有する。
また、対向部51aには、ナット20bのフランジ部20gを挿通可能な挿通部51cが形成されている。挿通部51cは、吊持部28の長さ方向における対向部51aの一方の端部(第1端部)から反対側の端部(第2端部)に向かう方向に、所定範囲に亘って対向部51aを切り欠いたものである。挿通部51cは、フランジ部20gの外径よりも僅かに大きな間隔で第1端部から平行に延びる平行部51dと、この平行部51dの奥側端部で半円状に形成された半円部51eとを有する。
引っ掛け部51bは、対向部51aとともに突出部36を挟持する爪部を有するものであり、吊持部28の長さ方向において突出部36の切欠き部36aを覆うことができる長さを有する。本実施形態では、冶具50はナット20bを押え付け可能な押え部52を有しており、押え部52がナット20bに係合した状態で、引っ掛け部51bは、切欠き部36aを塞ぐことができる寸法に設定されている。
押え部52は、対向部51aに形成された挿通部51cの半円部51e及び平行部51dの一部につながっており、吊持部本体34の側壁34aとの間にナット20bのフランジ部20gを挟み込むようにフランジ部20gの一部に被さる形状に形成されている。
操作部53は、対向部51aの第2端部から引っ掛け部51bとは反対側に向かって延びており、吊持部本体34の長さ方向に対して垂直な平板状に形成されている。したがって、この操作部53を押圧することによって、冶具50をスライドさせることができる。
続いて、室外機21の据付手順について説明する。
据付架台10に室外機21を設置する際には、まず据付架台10を天井等の固定体に固定する。この固定は、固定部材12を天井等の下面に締結具(図示省略)によって締結することによる。次に、第1設置部材14にボルト20a及びナット20bを取り付け、このボルト20aの頭部20fを固定部材12のレール部24に挿入し、所定位置までスライドさせて、ナット20bを締めることにより、第1設置部材14を固定する。
一方、第2設置部材16については、吊持部28における凹部38を塞ぐように冶具50が取り付けられている。この冶具50は、ボルト20aの頭部20fが第2設置部材16の吊持部本体34から突出した状態に維持されるようにボルト20aを保持する。具体的には、冶具50の押え部52がナット20bのフランジ部20gを押えることにより、ボルト20aの頭部20fが吊持部本体34の側壁34aから所定距離だけ離間した状態に保持される。この所定距離は、レール部24の押え部24c,24dの厚み分よりも少し長い距離に設定されている。
なお、冶具50は、据付現場で第2設置部材16の吊持部28に装着してもよく、あるいは、予め冶具50が装着された第2設置部材16を据付現場に搬入するようにしてもよい。
また、冶具50の装着は、吊持部28の上端部側から行っても、下端部側から行ってもよい。ただし、下端部側から冶具50を装着するには、吊持部28とブラケット32及び設置部30とを締結する前に冶具50を装着し、その後に設置部30を接続するようにする。この場合には、室外機21の設置後に冶具50を取り外すことができなくなるので、冶具50を破壊して取り外すことになる。また、上端部側から冶具50を装着する場合において、図7の向きに冶具50を装着するには、ボルト20aを挿通孔34cに挿通する前に冶具50を装着すればよい。また、図7とは反対向きに冶具50を装着することも可能である。
続いて、このボルト20aの頭部20fを固定部材12のレール部24の内側に挿入し、所定位置までスライドさせる。これにより、固定部材12と吊持部28(第2設置部材16)とが連結具20により互いに回動可能な状態に連結される(連結ステップ)。このとき、ボルト20aの頭部20fは、吊持部28から突出した状態に維持されてレール部24の内側に挿入される。すなわち、ボルト20aの頭部20fと吊持部本体34の側壁34aとの間の間隙に、レール部24の上押え部24c及び下押え部24dが入り込むことにより、固定部材12と第2設置部材16とが連結される。そして、吊持部28には凹部38が覆われるように冶具50が装着されているので、第2設置部材16のスライド時にもレール部24が凹部38に嵌まり込むことはない。このため、後から第2設置部材16を回動する際にもスムーズに回動することができる。なお、第1設置部材14及び第2設置部材16の吊持部28を固定部材12に連結した状態で固定部材12を固定体に取り付けるようにしてもよい。
次に、図7に示すように、冶具50が装着された第2設置部材16を第1設置部材14から離れる方向に回動し、第1設置部材14に室外機21を載置する(第1設置ステップ)。室外機21の載置作業は、第2設置部材16を回動した状態に保持するとともに、この状態で室外機21を、第2設置部材16と第1設置部材14との間のスペースを通して下から上に移動させて第1設置部材14に載置する。
この回動時において、第2設置部材16の吊持部28では、凹部38が冶具50によって覆われているので、レール部24が吊持部28の凹部38に嵌まり込むことなく、第2設置部材16をスムーズに回動することができる。このため、作業者は、凹部38にレール部24が入り込まないように第2設置部材16を保持する必要がないので、室外機21を持って第1設置部材14に設置しようとする作業者が、第2設置部材16に気を使う必要がなくなる。
また、第2設置部材16の回動時においては、連結具20は、第2設置部材16に対して固定された状態で第2設置部材16と一緒に回動する。すなわち、ボルト20aの軸部20eが挿通孔34cに係合するので、ボルト20a及びナット20bは、第2設置部材16と一緒に回動する。したがって、ボルト20aの頭部20fはレール部24内で回動することになる。
また、第2設置部材16の回動時には、連結具20によって固定部材12と第2設置部材16とが互いに連結されている。すなわち、ボルト20aは、レール部24が凹部38に嵌め込まれていない状態で第2設置部材16と固定部材12とを連結可能な長さを有していることになる。そして、ボルト20aの頭部20fは、レール部24の内側で回動可能な寸法形状を有し、ボルト20aの軸部20eは、第2設置部材16に対して回動不能な寸法形状を有することになる。
次に、凹部38を露出させるとともに(露出ステップ)、第2設置部材16を第1設置部材14に近づく方向に回動する(戻しステップ)。凹部38を露出させるには、冶具50をスライドさせて吊持部28の上端部から取り外すようにしてもよく、あるいは冶具50をスライドさせた上で(又はスライドさせることなく)破壊してもよい。なお、露出ステップと戻しステップとは、何れが先でもよい。すなわち、凹部38を露出させてから第2設置部材16を回動してもよく、あるいは第2設置部材16を元の位置に戻してから凹部38を露出させるようにしてもよく、あるいは同時に行ってもよい。
次に、凹部38にレール部24を嵌め、室外機21を第2設置部材16に載置する(第2載置ステップ)。そして、ナット20bを締めることにより、吊持部28を固定部材12に対して固定し、室外機21を第1設置部材14及び第2設置部材16に固定する。これにより、室外機21の据付が完了する。
以上説明したように、本実施形態では、固定部材12及び第2設置部材16を連結具20によって互いに連結すると、固定部材12に対して第2設置部材16を回動させることができる。このとき、吊持部28に形成された凹部38が冶具50で覆われているので、第2設置部材16を固定部材12に対して回動したとしても、固定部材12のレール部24が凹部38に引っ掛かることはない。このため、凹部38にレール部24が嵌まり込まないように第2設置部材16を保持する必要がないので、室外機21を第1設置部材14上に設置する際の作業者の負担を軽減することができる。しかも、凹部38に固定部材12が接触して傷がつくことを防止することも可能となる。そして、凹部38を露出させるとともに第2設置部材16を、第1設置部材14に載置された室外機21の下の位置に達するまで回動させて、第2設置部材16の凹部38に固定部材12のレール部24を嵌めれば、第2設置部材16を所定の姿勢に保持することができる。なお、このときの第2設置部材16の回動操作は、室外機21が第1設置部材14に設置された状態での操作となるため、室外機21を保持する作業負担が軽減された状態での回動操作となる。したがって、凹部38が露出した状態で第2設置部材16を回動するとしても、この操作が煩わしくなるというものではない。
しかも本実施形態では、第2設置部材16に取り付けられたボルト20aの頭部20fを固定部材12のレール部24に挿入して、このレール部24に沿って連結具20を移動させることができるので、第2設置部材16と固定部材12との連結箇所を任意の位置に設定することができる。そして、この設定位置で第2設置部材16を固定部材12に対して回動させることが可能である。このため、固定部材12の部材本体22に対して突出するようにレール部24が設けられる構成であっても、凹部38に引っ掛かることなく第2設置部材16を回動操作することができる。
また本実施形態では、冶具50によってナット20bのフランジ部20gを押え付けるようにしているので、第2設置部材16に対してボルト20aナット20bを安定して保持することができ、この状態で第2設置部材16を回動操作することができる。
また本実施形態では、最後に冶具50を取り外すようにしているので、冶具50が第2設置部材16に残されず、据付架台10をすっきりさせることができる。
また本実施形態の冶具50では、冶具50を凹部38の形成された第2設置部材16に外嵌するとともに、当該部材16に沿ってスライドさせることにより、冶具50によって凹部38を塞ぐことができる。そして、第2設置部材16の凹部38に固定部材12のレール部24を嵌め合わせる際には、冶具50をずらす等して凹部38を露出させることができる。
また本実施形態の冶具50では、押え部52によってボルト20aの頭部20fが凹部38の形成された吊持部28から突出した状態に保持することができるので、第2設置部材16の回動時に作業者が連結具20を保持する必要がなくなる。したがって、第2設置部材16と固定部材12とを連結する作業を容易化することができる。
また本実施形態の据付架台10では、固定部材12に対して第2設置部材16を回動すると、当該第2設置部材16の挿通孔34cに係合しているボルト20aの軸部20eが、第2設置部材16と一緒に回動する。一方、固定部材12に対して第2設置部材16を固定する際に、ナット20bを雄ねじ部20cに対して締め付けていくときには、ボルト20aの軸部20eが第2設置部材16の挿通孔34cに係合しているので、雄ねじ部20cの回り止めをすることなく、雌ねじ部20dを螺合させることができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、吊持部28が突出部36を有しないで、吊持部28自体(吊持部本体34)に、その側面から窪むように凹部38が形成される構成としてもよい。すなわち、吊持部28において、挿通孔34cが開口する側壁34a自体を矩形状に凹ませる構成としてもよい。
また、固定部材12のレール部24が突出しない構成としてもよい。この場合には、第2設置部材16の凹部38に固定部材12自体が嵌め込まれる構成となる。
また、固定部材12がレール部24を有しない構成としてもよい。この場合には、固定部材12には、第1設置部材14及び第2設置部材16の連結位置にボルト挿通孔34cが形成されることになり、このボルト挿通孔34cと設置部材14,16に形成された挿通孔34cとに跨ってボルト20aが挿通されて、固定部材12に対して設置部材が回動可能となる。なお、この構成では設置部材の連結位置を任意に調整することはできなくなるが、ボルト挿通孔34cを複数設けることにより、段階的に連結位置を調整することが可能となる。
また、第2設置部材16に凹部38が設けられるのではなく、固定部材12に凹部38が設けられる構成としてもよい。この凹部38には第2設置部材16自体が嵌め込まれる構成となる。
また、連結具20のボルト20aが、多角形状の軸部20eと円形断面の頭部20fとを有する構成としたが、これに限られるものではない。例えば、頭部20fを多角形状とし、軸部20eを円形状にしてもよい。この場合には、吊持部本体34の挿通孔34cは円形孔となる。また、連結具20としては、ボルトナットに限られるものではない。