JP4877686B2 - 柱脚部の固定構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は柱の下端部に取付固定されたベースプレートを、建物の基礎コンクリートに埋め込まれたアンカーボルトの上部に固定する柱脚部の固定構造に係り、特に、露出型柱脚構造の耐震性の向上に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の一般的な露出型の柱脚部の固定構造は、例えば図9に示す如く、基礎コンクリート51に埋め込まれたアンカーボルト52上部に、柱53の下端部に取り付けたボルト孔を有するベースプレート54を設置し、座金を挿通した後でナット55締めすること、もしくは直接ナット55締めすることにより固定していた。図中56はモルタルである。
【0003】
従来の鉄骨造の建物の大部分は、極めて稀に発生する大きな地震動に対し、鉄骨造を構成する柱や梁などの主要な構成部材が必ずしも弾性範囲の状態でなくともよく、前記構成部材が降伏点を過ぎて塑性変形することによって、極めて稀に発生する大きな地震動によって建物に入力されるエネルギーを吸収すればよいという考え方に基づいて構造計算がなされている。したがってエネルギー吸収能力の高い前記構成部材を用いた接合部を採用することは、建物の耐震性能を向上させる上で重要である。
【0004】
柱脚部においても、極めて稀に発生する大きな地震動に対しては、柱脚部が降伏しても可とする考え方があるが、前記従来の技術によれば、露出型の柱脚部は、極めて稀に発生する大きな地震動に対して、一般的にアンカーボルトが降伏点を過ぎて塑性変形するよう設計されており、エネルギー吸収能力は低いとされている。
【0005】
前述の図9に示す一般的な露出柱脚部が、前述のようにエネルギー吸収能力が低い理由を、図10(a)〜(e)に示す一般的な露出柱脚部が地震動によって変形する図と、図11(a)〜(i)に示すエネルギー吸収能力を表す復元力特性のグラフとを用いて説明すると次の通りである。
【0006】
先ず図10(a)、(d)に示す如く、地震時には柱53を回転させる力(以下単にモーメントMまたはMと表示する)が生じ、かつその力Mによって柱53には傾斜角(以下単に傾斜角θまたはθと表示する)が生じる。
【0007】
前記図9は柱53にモーメントMが作用していない、即ち地震前の柱脚部の状態を示している。このようにモーメントMが作用していない状態では、当然の如く柱53の傾斜角は0であるために、Mとθの関係は図11(a)のグラフに示すとおりの原点となる。
【0008】
次に、地震が発生し、時計回りのモーメントMが柱53に作用した場合には図10(a)の如く向かって左側のアンカーボルト52aに引張り力が生じ、同時にアンカーボルト52aに伸びが発生する。この場合のアンカーボルト52aに生ずる引張り力が、アンカーボルト52aの弾性範囲であれば、柱53の傾斜角θ1とモーメントM1の関係は図11(b)のグラフ(イ)の範囲であって、モーメントM1が0になると、柱53は図9の状態及びMとθの関係は図11(a)のグラフの原点の状態に復帰する。
【0009】
しかし、上記の場合で、アンカーボルト52aの弾性範囲を超える引張り力がアンカーボルト52aに生じた場合には、アンカーボルト52aは、降伏点を過ぎて塑性化し伸び変形するため、柱53の傾斜角θ2とモーメントM2は図11(b)のグラフの(ロ)の範囲となる。このとき柱脚部としては塑性変形によるエネルギー吸収をおこなっている。また、この後、モーメントM2が0になったとしても、柱53の傾斜角が残留し、図10(b)の如く傾斜角は0には戻らない。このときのMとθの関係を示したものが図11(c)のグラフであり、同図の(ハ)の点は、モーメントMが0の状態を示している。
【0010】
地震は、建物に左右交互に作用するものであるため、柱53には次に反時計回りのモーメントM(時計回りのモーメントを正とすると、反時計回りのモーメントは負となる)が作用する。しかし図10(b)の状態では、反時計回りの柱53の傾斜を抑制するための反力が働かないため、ごくわずかなモーメントMによって図10(c)の状態まで柱53は変動する。このときのMとθの関係を示したものが図11(d)のグラフであり、同図11(d)のグラフに示す(ニ)の現象が、スリップ現象と呼ばれている。
【0011】
柱53に反時計回りのモーメントMが作用すると図10(d)の如く、今度は向かって右側のアンカーボルト52bに引張り力が生じるが、上記時計回りの場合と同様に、アンカーボルト52bの弾性範囲を超える引張り力が生じた場合には、アンカーボルト52bが、降伏点を過ぎて塑性化することで伸び変形し、同時に柱脚部は塑性変形によるエネルギー吸収をおこなっている。このときの状態を示したのが図10(d)であり、Mとθの関係を示したものは図11(e)のグラフである。
【0012】
また、上記時計回りの場合と同様に、モーメントが0になった時点でも柱53の傾斜角θは図11(f)のグラフ(ヘ)点に示すように0とはならない。また同様に、わずかな時計回りのモーメントMによって柱53の傾斜角θは大きく変動する。このときのMとθの関係を示したものが前記図11(f)のグラフである。
【0013】
以上のように、一度スリップ現象が生じると、柱53の傾斜角θが、図11(f)のグラフに示すθハとθヘに挟まれている範囲では、柱脚部はほとんど力を負担できない状態であり、柱脚部におけるエネルギー吸収能力はほとんど期待できない。
【0014】
地震発生中に、図10(a)或は図10(d)に示した傾斜角θよりも大きい傾斜角の状態になることも考えられる。この場合、再度アンカーボルト52a、52bは塑性変形し、図10(a)或は図10(d)のアンカーボルト52a、52bの状態からさらに伸び変形する。このとき柱脚部としては塑性変形によるエネルギー吸収を行う。図11(g)〜図11(i)のグラフがこの状態を示している。
【0015】
しかし、モーメントMが0になった時点で、残留する傾斜角θは図11(h)のグラフの(ハ)点よりもさらに大きい(ニ)点となる。これはスリップ範囲がさらに広くなったことを示すものである。
【0016】
塑性化によるエネルギー吸収能力は、復元力特性を表すMとθの履歴において、ループ状に囲まれた面積の累加で表されるため、スリップ現象をともなう従来技術による一般的な露出柱脚部のエネルギー吸収能力は、図11(a)〜(i)の復元力特性に示すとおり、地震時に生じた柱最大の傾斜角θ及びモーメントMに基づき算出できるが、累加はなく1サイクル分でしかない。
【0017】
一方、完全弾塑性型の復元力特性は、エネルギー吸収能力が高いとされている。この完全弾塑性型の復元特性は、図12(a)〜(e)のグラフに示す如く、モーメントMと傾斜角θとの関係で表され、柱梁接合部の復元力特性がこれに近い。
【0018】
前述の完全弾塑性型の復元力特性がエネルギー吸収能力の高い理由は、ループ状に囲まれた面積が、スリップ型のそれよりも大きいという影響よりは、地震によって建物は左右交互複数回の変動を余儀なくされ、その間、スリップ型とは異なり常に塑性変形によるエネルギー吸収を行っているため、ループ状に囲まれた面積を、複数回繰り返されるサイクル数分累加したものが、エネルギー吸収能力になるからである。
【0019】
また、柱脚部の復元力特性がスリップ型であると、柱梁接合部の復元力特性は完全弾塑性型に近い復元力特性であって、柱脚部の復元力特性とは異なることから、建物の第1層には異なる復元力特性が混在することになり、地震時の損傷が第1層に集中し、さらにそのような場合、損傷が完全弾塑性型の復元力特性を持つ要素に偏るため、第1層の柱梁接合部には特に損傷集中が生じるとも言われている。
【0020】
以上詳述した従来の一般的な露出型の柱脚部の固定構造は、柱脚部の復元力特性がスリップ型となるので、建物の耐震性能上に於いて好ましいことではないことが明らかとなった。そこで、前述の従来の露出型の柱脚部の固定構造の問題点を改善するために、最近になって、後述のような種々の発明がなされ、既に公知技術となって公開されている。
【0021】
即ち、前述の問題点を解決するために、例えば特開平4−80428号公報(第1公知技術)或は特開平8−209721号公報(第二公知技術)に示す如く、露出型の柱脚部の固定構造に於いて、アンカーボルトの上部ねじに螺合する上ナットと下ナットとの間にベースプレートを挟持する工法が開発されている。これ等の工法はアンカーボルトに加えられる引張り力によって、従来技術同様にアンカーボルトは降伏後に塑性変形するが、ベースプレート下面に当接する下ナットを配置したことにより、ベースプレートが下がろうとする下向きの力の伝達をアンカーボルトに期待し、アンカーボルトの降伏及び塑性変形後も柱脚部のスリップ現象を防止しようとした工法である。
【0022】
また、例えば特開平7−305418号公報(第3公知技術)に示す如く、ベースプレートに働く下向きの力をアンカーボルトへ伝達するため、上記下ナット方式ではなく、アンカーボルトとベースプレートを一体化または当接させることで解決しようとした工法もある。
【0023】
さらに、例えば特開平10−292487号公報(第4公知技術)に示す如く、基礎コンクリートに埋設されたアンカーボルトを降伏させることなく、ベースプレートと締付ナットとの間にアンカーボルトに挿通したバネ座金を介在せしめ、柱脚部を常に弾性範囲で使用することが出来るようにした構造の露出型の柱脚部の固定構造も開発されている。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
然るに、前述の第1公知技術乃至第3公知技術の場合には、いずれもアンカーボルトに生ずる力が降伏点を過ぎて、塑性変形後にアンカーボルトに伸び変形が残留することによるスリップ現象を防止しようとしたものであって、アンカーボルトが伸びて降伏点を過ぎて塑性変形しているにもかかわらず、アンカーボルトに生ずる圧縮力による圧縮方向の塑性ひずみをアンカーボルトという細長い線材に期待するということに構造上無理があった。また、この場合には、柱脚におけるエネルギー吸収をアンカーボルトの塑性化に頼らざるをえなかった。
【0025】
また、降伏点を超えて伸び変形により塑性化、及び圧縮により塑性化されたアンカーボルトは、当初の塑性変形能力をすでに下回っている。そのため当初の期待する性能まで柱脚性能を戻そうとするためには、アンカーボルトの交換を行う必要があり、その場合は、基礎コンクリート構造の取り壊し等のため、多大な労力と費用を要することになる等の大きな問題が発生していた。
【0026】
さらに、前述の第4公知技術に於いては、柱脚としての十分な回転変形能力があり、大地震時にもアンカーボルトが降伏することなく健全なままではあるけれども、図13のグラフに示す如く、この工法による柱脚部分のモーメントMと傾斜角θは常に弾性範囲の関係にあり、塑性化する部位はなく、塑性変形によるエネルギーの吸収能力は考えていない。また、期待できない。従って、大地震時にも柱脚部は健全であるが、この柱脚部に於いてエネルギーを吸収することが出来ないので、建築物の柱や梁或はこれ等の接合部の断面を大きくするなどしなければならず、建築費がコスト高になる等の問題があった。
【0027】
本発明は、前述の従来の一般的技術或は最近開発された公知技術の多くの問題点に鑑み開発された全く新しい技術であって、地震時に建物に生じるエネルギーを柱脚部位で吸収するにあたり、アンカーボルトの塑性化に伴う効果だけに期待するのではなく、柱脚においてのエネルギー吸収能力を飛躍的に向上させた、エネルギー吸収性能の高い全く新しい柱脚部の工法を提供することを目的としたものである。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の多くの問題点を根本的に改善した発明であって、建物の基礎コンクリートに埋め込まれたアンカーボルト上部に、柱下端部に取り付けたべースプレートを固定してなる柱脚構造において、ベースプレートの上下動に追随する追随部と、アンカーボルトに固定される固定部と、前記追随部と前記固定部とを連結する連結部を有するベースプレート固定手段を用いた柱脚構造であって、建物に地震動などの外力が作用したときに、前記追随部、或は前記固定部、或は前記連結部の一部もしくは複数部が塑性変形することによって、上記目的を達成しようとしたものである。
【0029】
前記目的を達成するための本発明の柱脚部の固定構造の第1発明の要旨は、柱の下端部に取付固定されたべースプレートを建物の基礎コンクリートに埋設されたアンカーボルトの上部に取付固定する柱脚部の固定構造に於いて、前記ベースプレートの上下動に追随する追随部と、前記アンカーボルトに固定される固定部と、これ等の追随部と固定部とを相互に連結する連結部とよりなるベースプレート固定装置を介して前記ベースプレートを基礎コンクリートに固定して構成し、前記ベースプレート固定装置は、前記アンカーボルトに生ずる力が、アンカーボルトの降伏する力に達するに先立って塑性変形し、前記追随部と固定部とを相互に連結する連結部は所定の塑性化性を有して構成され、前記追随部は、前記ベースプレートの下部のTねじが前記アンカーボルトを貫通させる挿通管を具備し、前記Tねじが前記ベースプレートの上部にあるキャップねじ下部に対して螺合することで構成されることを特徴とした柱脚部の固定構造である。
【0030】
前述の第1発明に於いては、基礎コンクリートに埋設されたアンカーボルトの上部に設けられた柱脚部の固定構造を、柱側のベースプレートの上下動に追随し得る追随部と、アンカーボルトに固定される固定部との両方を連結部を介して相互に連結して構成したので、地震などが発生し、柱脚に力が作用した場合には、この固定部や追随部、連結部を塑性変形することによって、地震のエネルギーを効率良く吸収することが出来る。
【0031】
また、第1発明では、前記ベースプレート固定装置をアンカーボルトの降伏に先んじて降伏することも特徴である。
【0032】
このように、前記アンカーボルト固定装置が当該アンカーボルトに先んじて降伏し塑性変形することで、アンカーボルトが降伏する力以上の力をアンカーボルトに作用させないことが可能なため、地震発生後もアンカーボルトは健全な状態であり、従って、前述の従来技術或は公知技術のように基礎コンクリートに埋設されたアンカーボルトを塑性化させることがない。そのために、基礎コンクリートを取り壊して、アンカーボルトを交換する作業を不要とすることが出来る。
【0033】
また、第1発明では、前記追随部と固定部とを相互に連結する連結部は所定の塑性化性を有して構成されていることも特徴である。
【0034】
このように、前記追随部と固定部とを相互に連結する連結部に所定の塑性化性を与えたので、一定以上の地震等による震動があった場合には、この連結部を正確かつ簡単に塑性変形することが出来、これによって振動のエネルギーを正確にかつ効果的に吸収することが出来る。
【0035】
前記目的を達成するための本発明の第2発明の要旨は、前記アンカーボルト或は前記ベースプレートが、前記追随部、固定部、連結部の一部もしくは複数部を構成していることを特徴とした第1発明の柱脚部の固定構造である。
【0036】
前述の第2発明に於いては、前記追随部、固定部、連結部の一部もしくは複数部を前記アンカーボルト或はベースプレートが構成していることで、前記ベースプレート固定装置を構成する部品数を少なくすることが可能であり、施工性が向上すると共に、低コストにすることが出来る。
【0037】
【発明の実施の形態】
図により本発明に係る柱脚部の固定構造の一実施例を具体的に説明すると、図1は本発明に係る柱脚部の固定構造の正面図、図2(a)、(b)は図1の柱脚部の固定構造の要部の拡大説明図、図3(a)、(b)、(c)は夫々地震時に図1の柱脚部の固定構造が変化する状態を示す正面説明図、図4(a)、(b)は上部キャップねじの下部に設けられた連結部が塑性変形する状態を示す断面拡大説明図である。
【0038】
図1乃至図4(a)、(b)に於いて、1は基礎コンクリート、2はアンカーボルトであって、その下部は基礎コンクリート1に埋設されている。3は柱であり、この柱3の下端部にはベースプレート4が取付けられている。5はベースプレート4と基礎コンクリート1との間に介在されたモルタル等のグラウト材等よりなるグラウト材層である。
【0039】
6は前記ベースプレート4をアンカーボルト2に固定するための固定構造であって、特に図2(a)、(b)に明らかなように、中空状の上部キャップねじ7と、逆T型の下部Tねじ8との組合せにより構成されている。該下部Tねじ8は、アンカーボルト2を挿通し得る挿通管8aと、前記ベースプレート4に穿設された穴9よりも大きい外径を有する平ナット部8bとより構成されている。前記挿通管8aの上部外周にはねじ10が穿設されている。
【0040】
前記上部キャップねじ7の上部内周面にはアンカーボルト2に螺合し得るねじ11が穿設されており、かつその上部キャップねじ7の下部内周面には、前記下部Tねじ8の挿通管8aの上部外周に設けられたねじ10に螺合し得るねじ12が穿設されている。前記上部キャップねじ7の中間中空部には、一定以上の力が発生した場合には降伏点を過ぎて塑性変形して折れ曲がることが出来る複数スリット13aが設けられた連結部13が一体的に設けられており、かつこの連結部13の内周面にはリング状の切欠溝14が設けられている。図中15はナットであって、アンカーボルト2の上部に螺合されて、上部キャップねじ7の上縁に当接されている。
【0041】
前述のような構成を有する本発明の柱脚部の構成について説明すると次の通りである。前記アンカーボルト2は基礎コンクリート1に埋設されており、ベースプレート4と柱3とは現場搬入前に予め溶接固定されている。前記下部Tねじ8は、柱3の建て方の前に挿通管8aをアンカーボルト2の上部に挿通して逆T字となるように配置する。
【0042】
柱3の建て方時には、アンカーボルト2にベースプレート4の穴9が挿通されるように柱3を設置する。次に、上部キャップねじ7の上部をアンカーボルト2の上部に螺合すると共に、その下部内周面のねじ12を前記挿通管8aのねじ10に螺合し、上部キャップねじ7の下端面と下部Tねじ8の平ナット部8bとでベースプレート4を上下よりして、ベースプレート4の追随部を構成挟持する。次にベースプレート4が桟木で囲まれ、ベースプレート4の底面にグラウト材等を注入してグラウト材層5を形成して建て方を完成させる。
【0043】
このような構成の本発明実施例においては、例えば図3(a)、(b)、(c)に示す如く、地震時において柱脚部に交互的に作用する曲げモーメントによって生じる柱3の下端部に取り付けられたベースプレート4の上方への移動に対しては、上部キャップねじ7がベースプレート4によって押し上げられるが、上部キャップねじ7は上部のねじ11によってアンカーボルト2に固定されて固定部を構成しており、ベースプレート4の上方への移動を抑制している。
【0044】
この場合、アンカーボルト2に作用する引張り力と上部キャップねじ7に作用する圧縮力の絶対値は同値である。ここに上部キャップねじ7の連結部13の圧縮降伏する力及び圧縮降伏後十分に変形するに至るまでの最大圧縮力をアンカーボルト2が引張り降伏する値より小さく設計することによって、アンカーボルト2が引張り降伏する以前に上部キャップねじ7の連結部13を降伏、塑性変形させることができ、エネルギーの吸収を図ることができる。
【0045】
また、この時、下部Tねじ8は下部Tねじ8の挿通管8aと上部キャップねじ7とがねじ10、12で相互に螺合されて嵌め合っていることから、下部Tねじ8はベースプレート4に追随して上方へ移動している。
【0046】
次に、柱脚部の回転の方向が変わり、ベースプレート4に下向きの力が作用した場合には、ベースプレート4の下向きの移動に伴い下部Tねじ8も下方に移動しようとするが、挿通管8aと上部キャップねじ7とがねじ10、12で相互に螺合されて嵌め合っていることから、上部キャップねじ7も下がろうとするが、その上端部の固定部がねじ11によってアンカーボルト2に固定されており、ベースプレート4の下方への移動を抑制する。この場合、アンカーボルト2に作用する圧縮力と上部キャップねじ7に作用する引張り力の絶対値は同値である。
【0047】
ここに、上部キャップねじ7の連結部13の引張り降伏する力または圧縮降伏後の変形を当初の形状に近づけるに至るまでの最大引張り力をアンカーボルト2が圧縮降伏する値より小さく設計することによって、特に図4(a)、(b)に示す如く、アンカーボルト2が圧縮降伏する以前に上部キャップねじ7の連結部13を降伏、塑性化させることができ、塑性変形に伴うエネルギーの吸収を図ることができるとともに、ベースプレート4を所定の位置に戻すことが可能である。
【0048】
したがって本実施例によれば、交互的に柱に作用する曲げモーメントにおいて、柱脚部は降伏してもアンカーボルト2は降伏することなく、常に上キャップねじ7の塑性変形に伴うエネルギーの吸収が行われ、かつ柱脚部のスリップ現象は防止される。また、柱脚部の降伏後の復旧に対しても、基礎構造の取り壊し等多大な労力と費用を要することなく、比較的簡単に安価に地震動発生前の当初の状態に戻すことができる。前述のように塑性変形した連結部13は外方から簡単に目視して確認することが出来る。このように連結部13が塑性変形した上部キャップねじ7は新しいものに簡単に交換することが出来、元の状態に復元することが出来る。
【0049】
なお、上記の実施例では、下部Tねじ8と上部キャップねじ7でベースプレート4を挟持することによって前記追随部を構成している。また、上部キャップねじ7の上部のアンカーボルト2に螺合して固定することによって前記固定部を構成している。また上部キャップねじ7の中間部が前記連結部13を構成している。
【0050】
このように、前記追随部は下部Tねじ8と上部キャップねじ7から構成されており、上部キャップねじ7は前記ベースプレート追随部と前記連結部13と前記アンカーボルト固定部を有しているが、本発明において前記ベースプレート追随部、前記連結部、前記アンカーボルト固定部の各々は、独立した一つの部品、もしくは複数個から構成される部品であってよい。また一つの部品は前記ベースプレート追随部、前記連結部、前記アンカーボルト固定部の一部もしくは複数部を構成していてもよい。
【0051】
また、上記実施例は、ベースプレート4の上下動に追随するベースプレート追随部と、アンカーボルト2に固定される固定部と、前記追随部と前記固定部とを連結する連結部13を有するベースプレート4の固定手段を用いた柱脚構造となる一具体例を示したものであり、本発明の本質を限定するものではない。また、上記実施例において連結部13は降伏後塑性変形しやすいように所定間隔でスリット13a及びリング状の切角溝14を設けているが、アンカーボルト固定部、ベースプレート追随部を含め形状を限定するものではない。なお、上記実施例においてナット51は緩み止めである。
【0052】
次に、アンカーボルト2に固定される前記固定部の具体的実施例を図5及び図6によって説明する。図5(a)はアンカーボルト2にベースプレート4を直接に螺合した固定例、図5(b)はアンカーボルト2とベースプレート4とを2つのナット16を介して挟み込んだ固定例、図5(c)はアンカーボルト2とベースプレート4とを溶着17によって固定した例である。
【0053】
また、図6(a)、(b)はアンカーボルト2の特定形状を有する頭部2aをプレスすることによってこのアンカーボルト2をベースプレート4に直接固定した例である。前述の実施例にとらわれることなく、要はアンカーボルト2への固定部がアンカーボルトに対して不動の状態であれば良い。
【0054】
さらに、今度はベースプレート4に追随する追随部の具体的実施例を図7及び図8によって説明する。即ち、図7(a)はベースプレート4と上部キャップねじ7とを螺合によって追随させた実施例、図7(b)は両者をボルト18を介して追随させた実施例、図7(c)は両者を溶着19によって追随させた実施例である。
【0055】
次に、図8(a)はベースプレート4にフック部20を設け、このフック部20を上部キャップねじ7に係合して追随させた実施例、図8(b)はベースプレート4が上部キャップねじ7に直接連結されて追随している実施例である。この追随部も、前記実施例にとらわれずに、ベースプレート4の追随部が、ベースプレート4の少なくとも上下動に追随する構成になっていれば良い。
【0056】
また、前記ベースプレート固定装置は必ずしもベースプレートの上側だけで構成されているばかりでなくともよい。
【0057】
以上の本実施例によれば、中程度の地震の場合、上記柱脚部を構成する部材は弾性範囲であり、極めて稀に発生する大きな地震の場合に柱脚を降伏させる設計手法も可能であるし、塑性化部位に鉛や低降伏点鋼、揺変性のある材料などを使用する、形状を変化させることによって小、中程度の地震や地震以外の振動などに対しても塑性変形によるエネルギー吸収効果を期待できる柱脚部となり得る。また、柱脚部を限りなくピンに近づけたり、柱脚部の回転剛性を所定の回転剛性に設定することや、柱脚部の降伏耐力を所定の降伏耐力にすることが、比較的容易に可能となる。
【0058】
【発明の効果】
本発明に於いては、前述のように、基礎コンクリートに埋設されたアンカーボルトの上部に設けられた柱脚部の固定構造を、柱側のベースプレートの上下動に追随し得る追随部と、アンカーボルトに固定される固定部との両方を連結部を介して相互に連結して構成したので、極めて大きな地震が発生した場合には、この連結部を塑性化させることによって、地震のエネルギーを効率良く吸収することが出来る効果を有している。
【0059】
さらに、塑性変形する部位が十分変形するに至るまでアンカーボルトを降伏させないことで、前述の従来技術或は公知技術のように基礎コンクリートに埋設されたアンカーボルトを塑性化させることがない。そのために、基礎コンクリートを取り壊して、アンカーボルトを交換する作業を不要とすることが出来る等の多大な効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る柱脚部の固定構造の正面図である。
【図2】 図2(a)、(b)は図1の柱脚部の固定構造の要部の拡大説明図である。
【図3】 図3(a)、(b)、(c)は夫々地震時に図1の柱脚部の固定構造が変化する状態を示す正面説明図である。
【図4】 図4(a)、(b)は上部キャップの下部に設けられた連結部が塑性変形する状態を示す断面拡大説明図である。
【図5】 図5(a)、(b)、(c)は夫々アンカーボルトとベースプレートとの固定部の実施例を示す断面説明図である。
【図6】 図6(a)、(b)はアンカーボルトの頭部で固定部を構成する実施例を示す断面説明図である。
【図7】 図7(a)、(b)、(c)は夫々ベースプレートの追随部の実施例を示す断面説明図である。
【図8】 図8(a)、(b)は夫々ベースプレートを特定の構造にすることによって追随部を構成した実施例を示す断面説明図である。
【図9】 従来の一般的柱脚部の固定構造の要部の簡略説明図である。
【図10】 図10(a)〜(e)は図5の固定構造が地震時に作動される状態の説明図である。
【図11】 図11(a)〜(i)は図5及び図6に示す状態の固定構造の柱に作用するモーメントMと傾斜角θとの関係を示すグラフである。
【図12】 図12(a)〜(e)は従来の完全弾塑性型の復元力特性を示すグラフである。
【図13】 前記第4公知技術の柱脚部の固定構造の復元特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 …基礎コンクリート
2 …アンカーボルト
3 …柱
4 …ベースプレート
5 …グラウト材層
6 …固定構造
7 …上部キャップねじ
8 …下部Tねじ
8a …挿通管
8b …平ナット部
9 …穴
10 …ねじ
11 …ねじ
12 …ねじ
13 …連結部
14 …切欠溝
15 …ナット
16 …ナット
17 …溶着
18 …ボルト
19 …溶着
20 …フック部
51 …基礎コンクリート
52 …アンカーボルト
53 …柱
54 …ベースプレート
55 …ナット
56 …モルタル
Claims (2)
- 柱の下端部に取付固定されたべースプレートを建物の基礎コンクリートに埋設されたアンカーボルトの上部に取付固定する柱脚部の固定構造に於いて、
前記ベースプレートの上下動に追随する追随部と、前記アンカーボルトに固定される固定部と、これ等の追随部と固定部とを相互に連結する連結部とよりなるベースプレート固定装置を介して前記ベースプレートを基礎コンクリートに固定して構成し、
前記ベースプレート固定装置は、前記アンカーボルトに生ずる力が、アンカーボルトの降伏する力に達するに先立って塑性変形し、
前記追随部と固定部とを相互に連結する連結部は所定の塑性化性を有して構成され、
前記追随部は、前記ベースプレートの下部のTねじが前記アンカーボルトを貫通させる挿通管を具備し、前記Tねじが前記ベースプレートの上部にあるキャップねじ下部に対して螺合することで構成されることを特徴とした柱脚部の固定構造。 - 前記アンカーボルト或は前記ベースプレートが、前記追随部、固定部、連結部の一部もしくは複数部を構成していることを特徴とした請求項1の柱脚部の固定構造。
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