JP4877591B2 - ポリエチレンテレフタレート系樹脂のインフレーション法フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明者らの先願については、長期間の製造運転においてインフレーション法フィルムに不均一反応に起因するゲルやフィッシュアイ(FE)が副生するのを防止する必要がある。また、さらに耐熱性、透明性および黄変防止などの改善も必要である。
第1に、(A)ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル100重量部、(B)結合剤として重量平均分子量9,000〜300,000および該分子内に10〜100個のエポキシ基を含有する高分子型多官能エポキシ化合物0.05〜5重量部、(C)結合反応触媒として有機酸の金属塩0.1〜1重量部、(D)エチレングリコール・シクロヘキサンジメタノール・テレフタール酸の重縮合物(PETG)0〜100重量部、(E)ポリエステル・エラストマー0〜10重量部から構成される混合物を、250℃以上の温度で均一反応させてJIS法で280℃、荷重2.16Kgにて50g/10分以下の樹脂ペレットとし、該樹脂ペレットを260〜280℃にてインフレーション法にてフィルム成形することを特教とするポリエチレンテレフタレート系樹脂のインフレーション法フィルムの製造方法。
第2に、前項のポリエチレンテレフタレート系樹脂のインフレーション法フィルムを結晶化度20%以上でコロナ処理された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム間に挿入し、130〜220℃に加熱接着させて積層させることを特教とする延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム・ポリエチレンテレフタレート系樹脂の積層体の製造方法。
本発明により、比較的分子量の低いPET系ポリエステル樹脂原料に結合剤および触媒とから成る改質剤を添加して、反応押出法により分子量および熔融粘度を増大させてPET系樹脂を製造するに際し、従来法の低分子量液体の2〜3官能(最大6官能)混合エポキシ樹脂系結合剤とは異なって、高分子型固体の多官能エポキシ系結合剤およびそれら混合物を使用することにより、長期間均一的に結合反応させてもゲルおよびフィッシュアイ(FE)の副生が無く、かつ従来法よりも成形加工性が画期的に改善されたPET系ポリエステル樹脂にすることが出来る。
また、その固有粘度は、1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール(1:1)混合溶媒に溶解して25℃で測定して0.60dl/g以上であることが好ましく、0.70dl/g以上であることがより好ましい。固有粘度が0.60dl/g未満であると、本発明によっても高分化が困難であり、得られるポリエステル樹脂が必ずしも優れた機械的強度を得ることができないおそれがある。固有粘度の上限は、特に制限されないが、通常0.90dl/g以下、好ましくは安価な0.80dl/g以下である。
ポリエステル回収品を使用する場合には、通常その成形品が有している固有粘度であり、一般的には0.60〜0.80dl/g、特に0.65〜0.75dl/g程度である。回収したポリエステル成形品を利用する場合、その成形品の形態は、繊維、フィルム、シート、ボトルあるいは他の成形物のいずれであっても良い。また充填剤、顔料、染料などの添加剤を少量含有したものでもよい。特に、ペットボトルは、回収され再循環使用のための社会的環境が整備されつつあり、その上ボトルのポリエステルは再利用に適した組成であるので、本発明の原料のポリエステルとして好適である。
(B成分の高分子型多官能結合剤)
B成分の骨格を形成する樹脂は、アクリル樹脂系がポリオレフィン系(PP、PS、PE)よりも好ましい。何故ならば、樹脂の溶解度パラメーターは、原料PET 10.7、エポキシ樹脂10.8、ポリアクリル酸メチル10.2、ポリアクリル酸エチル9.4、ポリプロピレン(PP)9.3、ポリメタクリル酸エチル9.0、ポリスチレ(PS)8.9、ポリエチレン(PE)8.0であり、数値が近いほど混合性が良いからである。なお、ポリオレフィン系は1−2%の混合でも、PET系樹脂のフィルム・シートを白濁させるので、成形品が透明性を必要とする場合には適さない。
また、分子内に平均3個のエポキシ基を有する化合物は、代表例としてトリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテル(分子量288、エポキシ等量150g/eq.、官能基数3個/分子)であった。更にまた、分子内に平均3個以上のエポキシ基を有する多官能化合物は、代表例としてエポキシ化大豆油(分子量約1,000、エポキシ等量232g/eq.、官能基数4個/分子)およびエポキシ化アマニ油(分子量約1,000、エポキシ等量176g/eq.、官能基数6個/分子)であった。
PETは、固有粘度(IV値)0.7dl/gのもので数平均分子量1.2万程度で絶対分子量がが小さく、分子量分布もMw/Mn2−3で極めて狭い。従って、従来法の結合反応による生成物の分子量は、2.4万(2官能)、3.6万(3官能)および高々7.2万(6官能)であった。一方、ポリオレフィン系樹脂は、一般に数平均分子量10万−100万と大きく、分子量分布もMw/Mn5−20と極めて広い。例えて言えば、PETは東京タワー型で、ポリオレフィン系樹脂は富士山型である。従って、成形加工性は、前者が困難で、後者が極めて容易である。
分子量分布の制御は、高分子型多官能エポキシ化合物として例えば、分子内に15個のエポキシ基を持つ物100%、分子内に30個のエポキシ基を持つ物50%、分子内に60個のエポキシ基を持つ物25%から成る混合物を使用することにより、数平均分子量1.2万の原料PETから数平均分子量18万、数平均分子量36万、数平均分子量72万のグラフト共重合体をそれらの仕込み比率および配合量にて生成させて実施することが出来る。但し、ポリオレフィン系樹脂は線状構造体であるが、本発明樹脂はグラフト共重合体であるので、樹脂モデルは異なる。PET系ポリエステルは、通常両末端が水酸基が多いが、片末端がカルボン酸基もあり、エポキシ基と触媒で結合反応をする。従って、本発明品のモデル的イメージは、数平均分子量1.2万の原料PETの海に、数平均分子量18万、数平均分子量36万、数平均分子量72万の栗毬状グラフト共重合体の島がそれぞれの仕込み比率で分散している状態である。
本発明では、高分子型多官能エポキシ化合物の配合量が増大するほど、一般にPET系ポリエステル樹脂の溶融張力や伸張粘度が増大し、一般に、成形加工性が改良される。また、高分子型多官能エポキシ化合物およびカルボン酸金属塩系触媒が「分子サイズの結晶核形成剤」として作用するので、PET系ポリエステル樹脂の結晶化速度の増大する。成形加工における効果は、例えば射出成形のサイクルが短縮されて生産性が向上する。インフレーション・フイルム成形では、バブルが安定し、フィルムの偏肉が減少する。Tダイ・フイルム成形では、水平押出が可能となり、ネックインが減少し、フイルムの歩留まりが向上する。シート成形では、ドローダウン性が改善され、安定な成形が可能となる。
反応押出の樹脂製造においては、原料PETと高分子型多官能エポキシ固体との溶融粘度がほぼ同じなので混合性が良く、従来法の低分子量エポキシ液体の使用での黄変・着色とゲルやFE副生の問題が起こらなくなった。
(C成分結合反応触媒)
カルボン酸の金属塩を形成する金属としては、リチウム、ナトリウムおよびカリウムのようなアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムのようなアルカリ土類金属が使用できる。これらの粉末状触媒は、それぞれ作用が異なるので、混合して使用するのが好ましい。例えば、ステアリン酸リチウム2.5重量部とステアリン酸ナトリウム2.5重量部に滑剤およびマスターバッチの基材としてのステアリン酸カルシウム5.0重量部を加えた。これらの粉末状複合触媒をタンブラーで均一になるまで混合した(粉末状複合触媒マスターバッチ:Li/Na/Ca=25/25/50)。
この結合反応触媒としてのカルボン酸塩の配合量は、A成分のPET系ポリエステル100重量部に対して0.1〜1重量部である。特に、0.1〜1重量部であることが好ましい。0.1重量部未満では触媒効果が小さく、反応が未達となって分子量が充分増大しないことがある。1重量部を超えると局部反応によるゲル生成や溶融粘度の急上昇による押出成形機内のトラブルなどが生じる。
(D成分のPETG)
(E成分のポリエステル・エラストマー)
(配合方法、結合反応)
各成分をタンブラーやヘンシェルミキサー等の混合機で混和させてから、反応押出装置に供給する。加熱溶融する温度は、ポリエステルの融点250℃以上で300℃以下であることが反応制御の観点から望ましい。特に、280℃以下が好ましく、300℃を越えるとポリエステルの変色や熱分解が生じるおそれがある。
加熱溶融する反応装置としては、単軸押出機、二軸押出機、それらの組合せの二段押出機等を使用することができる。ただし、特殊スクリュー構造の押出機と特殊な真空ラインを必要とする。混練工程の段階数や加熱条件を考慮して最適な配合組成を選定することが重要である。
(1)メルトフローレート(MFR):JIS K6760に従い、温度 280℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
(2)固有粘度(IV値):1,1,2,2ーテトラクロロエタンとフェノールの等重量の混合溶媒を使用し25℃にて、キャノンフェンスケ粘度計で測定した。
(3)分子量の測定はGPC法によった。
昭和電工社製SYSTEM−21、カラム(サンプル、リファレンス側とも)Shodex KF−606M(2本)、溶剤ヘキサフロロイソプロピルアルコール、カラム温度 40℃、流量 0.6ml/分、ポリマー濃度 0.15重量%、検出器 Shodex RI−74、分子量換算スタンダード PMMA(Shodex M−75)、注入量 20μl
(4)ヒートシール強度:本発明のフィルムまたはフィルム・基体を15mm巾に裁断し、フィルム面を合わせ、基体裏面より100〜200℃のヒーターで2kg/cm2×1秒間ヒートシールをした。テンシロンRTC−121Cにより、引張速度300mm/分にてシール強度を測定した。
(5)層間の剥離強度:本発明のフィルム・基体を15mm巾に裁断し、その一端を酢酸エチル溶液に浸漬させ、剥離した2層間のT型剥離強度を、テンシロンRTC−121Cにより引張速度300mm/分にて測定した。
(6)機械的物性の測定:本発明のフィルムの引張試験は、JIS K7113に従い、テンシロンRTC−121Cを使用し、引張速度50mm/分で行った。
(7)溶融粘度:スウェーデン国REOLOGICA社製DynAlyser DAR−100を使用し、2cm角×厚さ2mmの試験片を窒素雰囲気下280℃でホットプレート間のねじり振動を加えることにより測定した。
(8)DSCの測定:セイコー電子製DSC220を使用し、サンプル5−15mg、窒素50ml/分、昇温速度10℃/分、20−300℃で測定した。
かくして、微黄色透明樹脂ペレットL1(MFR7g/10分)を約50Kg得た。120℃・12時間熱風乾燥して後に、防湿袋または防湿容器に貯蔵した。
(株)山口製作所製のインフレーション法フイルム成形装置(単軸スクリュ−径50mmΦ、L/D=26、丸型ダイス径250mm、リップ間隔0.7−1mm)を使用し、この押出機のスクリュ−とダイスの設定温度を夫々220−270℃と270℃とした。上記のパリソン混合物をホッパ−に投入し、押出機で樹脂を押出して、ブロー比 2.5−3、引取速度25−30m/分にてインフレーション法フイルムの製造を行った。かくして、フイルム厚み約25μm×折径400mmのフィルムF1約200mを得た。本インフレーション法フイルムF1には、ゲル・フィッシュアイが全くなかった。
実施例2と同様に、(株)山口製作所製のインフレーション法フイルム成形装置を使用し、インフレーション法フイルムの製造を行った。かくして、フイルム厚み約25μm×折径400mmのフイルムG1約100mを得た。本インフレーション法フイルムG1は、透明性は良かったが、10cm角のフィルムにゲル・フィッシュアイが大小含めて約5−7個全あった。
ユニチカ製のコロナ処理された2軸延伸PETフィルムを封筒状に裁断し、その2枚間の周辺3箇所に5mm巾テープを挿入した。石崎電機製作所製のインパルス式シーラーNL−451PS(片面、260℃設定、約1秒、足踏み方式)に加熱接着させて、透明耐熱性封筒状の積層体を製造した。周辺3箇所の接着強度は、充分であった。
Claims (2)
- (A)ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル100重量部、(B)結合剤として重量平均分子量9,000〜300,000および該分子内に10〜100個のエポキシ基を含有する高分子型多官能エポキシ化合物0.05〜5重量部、(C)結合反応触媒として有機酸の金属塩0.1〜1重量部、(D)エチレングリコール・シクロヘキサンジメタノール・テレフタール酸の重縮合物0〜100重量部、(E)ポリエステル・エラストマー0〜10重量部から構成される混合物を、250℃以上の温度で均一反応させてJIS法で280℃、荷重2.16Kgにて50g/10分以下の樹脂ペレットとし、該樹脂ペレットを260〜280℃にてインフレーション法にてフィルム成形することを特教とするポリエチレンテレフタレート系樹脂のインフレーション法フィルムの製造方法。
- 請求項1のポリエチレンテレフタレート系樹脂のインフレーション法フィルムを結晶化度20%以上でコロナ処理された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム間に挿入し、130〜220℃に加熱させて積層させることを特教とする延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム・ポリエチレンテレフタレート系樹脂の積層体の製造方法。
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