JP4877297B2 - 選択結合性物質が固定化された基材を用いた被験物質の検出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、被検物質と選択的に結合する物質(本明細書において「選択結合性物質」)を固定化した基材を用いた被検物質の検出方法に関する
各種生物の遺伝情報解析の研究が始められており、ヒト遺伝子をはじめとして、多数の遺伝子とその塩基配列、また遺伝子配列にコードされる蛋白質およびこれら蛋白質から二次的に作られる糖鎖に関する情報が急速に明らかにされつつある。配列の明らかにされた遺伝子、蛋白質、糖鎖などの高分子体の機能については、各種の方法で調べることができる。主なものとしては、核酸についてはノーザンハイブリダイゼーション、あるいはサザンハイブリダイゼーションのような、各種の核酸/核酸間の相補性を利用して各種遺伝子とその生体機能発現との関係を調べることができる。蛋白質については、ウエスタンハイブリダイゼーションに代表されるような、蛋白質/蛋白質間の反応を利用し蛋白質の機能および発現について調べることができる。
近年、多数の遺伝子発現を一度に解析する手法としてDNAマイクロアレイ法(DNAチップ法)と呼ばれる新しい分析法、ないし方法論が開発され、注目を集めている。これらの方法は、いずれも核酸/核酸間ハイブリダイゼーション反応に基づく核酸検出・定量法である点で原理的には従来の方法と同じであり、蛋白質/蛋白質間あるいは糖鎖/糖鎖間や糖鎖/蛋白質間のハイブリダイゼーションに基づく蛋白質や糖鎖検出・定量にも応用が可能ではある。これらの技術は、マイクロアレイ又はチップと呼ばれる平面基板片上に、多数のDNA断片や蛋白質、糖鎖が高密度に整列固定化されたものが用いられている点に大きな特徴がある。マイクロアレイ法の具体的使用法としては、例えば、研究対象細胞の発現遺伝子等を蛍光色素等で標識したサンプルを平面基板片上でハイブリダイゼーションさせ、互いに相補的な核酸(DNAあるいはRNA)同士を結合させ、その箇所を高解像度解析装置で高速に読みとる方法や、電気化学反応にもとづく電流値等の応答を検出する方法が挙げられる。こうして、サンプル中のそれぞれの遺伝子量を迅速に推定できる。
核酸を基板上に固定化するための技術としては、上記ノーザン法同様、ナイロンシート等の上に高密度に固定化する方法の他、更に密度を高めるため、スライドガラス等の平坦な基板の上にポリ−L−リジン、アミノシラン等をコーティングして、スポッターと呼ばれる点着装置を用いて、各核酸を固定化する方法などが開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、従来のDNAチップでは、ハイブリダイゼーションを行った時、どうしてもスポット以外の部分に非特異的に検体試料が吸着してしまう。そしてスキャナーと呼ばれる装置で蛍光検出を行う際、この非特異的に吸着した検体をも検出し、ノイズが大きくなり、結果的にS/Nが悪くなるといった問題があった。
また、ポリ−L−リジン、アミノシラン処理を行ったスライドガラス等の平坦な固体表面にスポッターを用いて核酸をスポットする場合、各スポットの大きさがばらつき、後の解析に支障をきたす問題点がある。
このような問題を解決するため、例えば二本鎖核酸に特異的にインターカレートする試薬を用い、ハイブリダイゼーション後に、この酸化電流を測定してハイブリダイゼーションした核酸の定量を行う方法などが提案されている(例えば特許文献2参照)。しかし、この方法では、蛍光スキャナーを用いることが不可能であり、特殊な装置が必要であると行った問題点があった。
また、基材の凸部にDNAを固定化した例もあるが、この方法では、後述する理由のため蛍光スキャナーで読みとることが困難である(例えば、特許文献3参照)。
蛋白質や糖鎖を用いたマイクロアレイについても、これら核酸を用いたマイクロアレイ同様の問題点がある。
特表平10−503841号公報(特許請求の範囲) 特開2001−165894号公報(特許請求の範囲) 国際公開第02/056011号パンフレット(請求項24)
本発明が解決しようとする課題は、上記のようなS/Nの悪化を防ぎ、検出感度の高い被検物質の検出方法を提供することである。
また、各スポットのばらつきが小さい選択結合性物質が固定化された基材を用いた被検物質の検出方法を提供することである。
すなわち、本発明は、平坦部と凹凸部が設けられ、該凹凸部の凸部の上面の高さと平坦部分の高さが略同一であり、該凹凸部の複数の凸部に選択結合性物質が固定化された基材を用いて検体に含まれる被検物質を検出する方法であって、集光された光を該基材平坦部で焦点を合わせてから該基材凹凸部の凸部上面に照射し、選択結合性物質と被検物質との反応を検出する方法である。
本発明により、S/Nが良好な被検物質の検出方法を提供することができる。また、ハイブリダイゼーションの高速化も可能である。
本発明の検出方法において、選択結合性物質が固定化される基材には平坦部と凹凸部があり、凸部上面に選択性適合物質が固定化されている必要がある。このような構造を取ることにより、検出の際、後述のように非特異的に吸着した検体を検出することがないので、ノイズが小さく、結果的にS/Nが良好な選択結合性物質が固定化された基材を提供することができる。そして、凹凸部の複数の凸部の高さに関しては、凸部の上面の高さが略同一であるであることが好ましい。ここで、高さが略同一とは、多少高さの違う凸部の表面に選択結合性物質を固定化し、これと蛍光標識した被検体とを反応させ、そして、スキャナーでスキャンした際、その信号レベルの強度差が問題とならない高さをいう。具体的に高さが略同一とは、高さの差が100μmより小さいことをいう。具体例を図1、図2に示す。1が平坦部であり、かつ、2で示される凹凸部の凸部上面に選択結合性物質(例えば核酸)が固定化されている。そして、該凹凸部の凸部分の上面が実質的に平坦であることが好ましい。ここで凸部上面の実質的に平坦とは、50μm以上の凹凸がないことを意味する。さらに、後述のとおり選択結合性物質が固定化される基材凹凸部の凸部の上面の高さと平坦部分の高さが略同一である必要がある。ここで、平坦部と凹凸部との高さが略同一とは、スキャナーでスキャンした際、その信号レベルの低下具合が問題とならない高さをいう。具体的に高さの差が略同一とは、凹凸部凸部上面の高さと、平坦部の高さとの差が100μmより小さいことをいう。
一般に、マイクロアレイは、蛍光標識化された被検物質と基材に固定化された選択結合性物質とを反応させ、スキャナーと呼ばれる装置で蛍光を読みとることが一般的である。スキャナーは励起光であるレーザー光を対物レンズで絞り込み、レーザー光を集光する。そして、何らかの方法でマイクロアレイ表面でレーザービームをフォーカスして集光させ、このフォーカス条件を保持して、対物レンズもしくは、マイクロアレイ自体を走査することによりマイクロアレイから発生する蛍光を読み込むような仕組みとなっていることが多い。従って、選択性結合物質を固定化した凸部の上面の高さは、略同一であることが好ましい。もしも、選択結合性を固定化した凸部上面の高さが大きく違えば、それぞれの凸部上面にて集光されたレーザー光の大きさにばらつきが生じ(ぼやけてしまい)、最悪の場合、ある凸部上面では全くシグナルを検出できなくなることがある。
本発明において、選択結合性物質を固定化する基材をスキャンする場合は、いったん平坦部の上面で励起光の焦点を合わせる。具体的には、図3に示すように、治具に基材を突き当て、レーザー光の焦点を基材の平坦部にあわせる。そして、その条件のまま、基材の凹凸部の凸部をスキャンする。このようにして、平坦部で励起光の焦点を合わせるので、選択結合性物質が固定化された凸部上面の高さと平坦部の高さが略同一である必要がある。
凸部の上面の高さと平坦部の高さの差が大きく違えば、以下のような問題点が生じることが多い。すなわち、励起光の焦点は平坦部の上面で調整されているので、凸部の上面の高さが異なると、凸部上面での励起光の焦点がぼやけてしまい、最悪の場合、選択結合性物質と検体が反応したことによる蛍光が全く検出されないことが起こりうる。
また、凸部の上面が平坦でない場合、凸部上面での励起光の焦点の大きさにばらつきが起き、結果的に1つの凸部上面内で検出された蛍光の強さにむらが発生する。こうなると、後の解析が困難となる。従って、凸部上面は平坦であることが好ましく、この場合は、上記のような問題は起きず、良好なシグナル(蛍光)を得ることが可能である。
また、複数の凸部の高さのばらつきに関して、詳しく述べれば、選択結合性物質が固定化された凸部の上面の高さが、略同一であれば、本発明の効果は得られるが、好ましくは、選択結合性物質が固定化された複数の凸部の内、最も高い凸部の高さと、最も低い凸部の高さの差が50μm以下であることが好ましい。より好ましくは、30μm以下であることがより好ましく、凸部の上面の高さと平坦部分の高さが同一であればなお好ましい。なお、本願でいう同一の高さとは、生産等で発生するばらつきによる誤差も含むものとする。
なお、選択結合性物質が固定化された複数の凸部とは、データとして必要な選択結合性物質(例えば核酸)が固定化された凸部をいうのであって、何も固定化していない凸部や、ただ単にダミーの選択結合性物質を固定化した凸部は除く。
また、本発明の検出方法において、選択結合性物質固定化された基材の凸部の上面の高さと平坦部分の高さの差は、略同一であれば良いが、好ましくは50μm以下であり、30μm以下であることがより好ましく、凸部の上面の高さと平坦部分の高さが同一であればなお好ましい。なお、本願でいう同一の高さとは、生産等で発生するばらつきによる誤差も含むものとする。
また本発明の検出方法では、平面上の基材に選択結合性物質を点着するのではなく、凹凸部分の凸部上面にのみ選択結合性物質を固定化している。したがって、凸部上面以外の部分に非特異的に検体試料が吸着しても、凸部上面以外の部分では、励起光の焦点がぼやけてるため、望まざる非特異的な吸着をした検体試料からの蛍光を検出することがない。このため、ノイズが小さくなり、結果的にS/Nが良くなるという効果を発揮する。
このような構造を取ることにより、検出の際、前記の非特異的に吸着した検体を検出することがないので、ノイズが小さく、結果的にS/Nが良好な被検物質の検出方法を提供することができる。
また、凸部の上面の面積は略同一であることが好ましい。このようにすることにより、多種の選択結合性物質が固定化される部分の面積を同一にできるので、後の解析に有利である。ここで、凸部の上部の面積が略同一とは、凸部の中で最も大きい上面面積を、最も小さい上面面積で割った値が1.2以下であることを言う。
基材の材質としては、ガラス、セラミック、シリコンなどの無機材料、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーンゴム等のポリマーなどを挙げることができる。本願のような形状を持つ基材の製造方法としては、プラスチックの場合、射出成形法や、ホットエンボス法、ガラスやセラミックの場合、サンドブラスト法、シリコンの場合は公知の半導体プロセスなどで作製できる。この中でも、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマー、ガラス、シリコンを特に好ましく用いることができる。
上記の材料を本願の基材の形状に形成するには、ガラスや無機物の場合は、サンドブラスト法、フォトリゾグラフィー法など、ポリマーの場合は射出成型法、ホットエンボス法、鋳型内で重合させる方法などの公知の方法により達成しうる。
本発明に用いる基材は、無処理の状態でそのまま用いてもよいが、必要に応じて、反応性官能基を凸部の表面に導入した基材であってもよく、また、プラズマ処理、紫外線処理やγ線、電子線などの放射線処理を施した基材であってもよい。これら基材に選択結合性物質を固定化する場合には、基材と選択結合性物質との間における各種化学的又は物理的な相互作用、すなわち基材が有している官能基と、選択結合性物質との間の化学的又は物理的な相互作用を利用し公知の方法によって達成しうる。
例えば、基材に選択性結合物質を固定化するため、ポリカチオンで被覆処理することや、官能基を表面に設けるような化学修飾をすることが好ましい。ガラスの基材に核酸を固定化する場合であると、基材(ガラス)表面にポリ−L−リシン、シランカップリング剤などでコーティングすることで官能基(アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基など)を表面に導入でき、核酸を固定化することが可能である。このようなシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシ−3−メルカプトプロピルメチルシランなどが挙げられる。シリコンの場合も同様な処理を施すことにより、核酸を固定化できる。
また、ポリマーの場合の表面修飾方法としては、アルゴンなどの希ガス、窒素、酸素雰囲気下でのプラズマ処理やオゾン処理などで、基材の表面にラジカルを発生させ、グラフト重合を行うなどの公知の方法で化学修飾することが可能である。
また、少なくとも凸部の側面が導電性材料でコートされていることが好ましい。こうすると、例えば、対抗電極を設け、対抗電極とこの導電性材料の間に電流、電圧を印加することにより核酸の場合であるとハイブリダイゼーションの高速化が可能となる。導電性材料がコートされる好ましい領域としては、凹部の全部、凸部の側面全部である。その例を図4に示す。
印加する電圧の範囲としては、電流が流れる場合は、0.01V以上、2V以下の範囲が好ましい。特に好ましい範囲は、0.1V以上、1.5V以下である。これより、大きい電圧を印加すると水が電気分解をおこし、表面の選択結合性物質に悪影響を及ぼす場合がある。導電性材料の材質としては特に限定されないが、炭素、マグネシウム、アルミ、シリコン、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、錫、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、銀、ハフニウム、タンタル、タングステン、白金、金、ステンレスやこれらの混合物や導電性ポリマーが挙げられる。この中でも、白金、金、チタンが特に好ましく用いられる。これらの導電性材料の膜の作製方法としては、蒸着、スパッタ、CVD、メッキなどが挙げられる。
上記のように凸部に導電性材料をコートした場合は、凸部の上面以外はさらに絶縁材料の層を設けることが好ましい。絶縁材料の層があると、電流を流した場合凸部の上面にのみ被検体を引き寄せることが可能である。絶縁材料の材料としては、金属の酸化物(例えば、Al−O、SiO、TiO、VO、SnO、Cr−O、Zn−O、GeO、Ta、ZrO、Nb−O、Yなど)、窒化物(Al−N、Si3N4、TiN、Ta−N、Ge−N、Zr−N、NbNなど)、硫化物(ZnS、PbS、SnS、CuS)、絶縁性のポリマーが挙げられる。後述の理由から、撥水性を持つポリマーが特に好ましく用いることができる。このポリマーの中でもシリコーンゴムが特に好ましく用いることができる。シリコーンゴムとしては、付加重合型のもの、縮合重合型のものいずれも用いられる。この中でも、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマーが特に好ましく用いることができる。
基材の凹凸部分において、凸部の側面および凹部が、凸部の上面より疎水的な材料が設けられていることが好ましい。このようにすることにより、選択結合性物質を含む溶液を凸部に点着しても、この溶液が凹部や凸部の側面に流れてしまうことを防止することができる。ここでいう疎水的な材料とは、該材料と水との接触角の方が、基材凸部上面と水との接触角よりも大きい材料のことをいう。水との接触角は、一般の接触角計により容易に測定できる。この疎水的な材料としては、好ましくは、前述のシリコーンゴムが挙げられる。
本発明の凸部の表面の面積は、特に限定される物ではないが、選択結合性物質の量を少なくすることができる点とハンドリングの容易さの点から、4mm以下、10μm以上が好ましい。
凹凸部における凸部の高さとしては、0.05mm以上、1mm以下が好ましい。凸部の高さがこれより低いと、スポット以外の部分の非特異的に吸着した検体試料を検出してしまうことがあり、結果的にS/Nが悪くなることがある。また、凸部の高さが1mm以上であると、凸部が折れて破損しやすいなどの問題が生じる場合がある。
さらに、S/Nを向上させるという観点から、基材の少なくとも一部を黒色にすることが好ましい。こうすることにより、基材からの自家蛍光を低減することができる。基材の黒色にする部分としては、凹凸部が設けられた基材の本体でも良いし、凸部の側面、凹部に設けられた疎水的な材料や絶縁層でも良いし、これらの全部でも良い。
ここで、基材が黒色とは、可視光(波長が400nmから800nm)範囲において、基材の黒色部分の分光反射率が特定のスペクトルパターン(特定のピークなど)を持たず、一様に低い値であり、かつ、基材の黒色部分の分光透過率も、特定のスペクトルパターンを持たず、一様に低い値であることをいう。
この分光反射率、分光透過率の値としては、可視光(波長が400nmから800nm)の範囲の分光反射率が7%以下であり、同波長範囲での分光透過率が2%以下であることが好ましい。なお、ここでいう分光反射率は、JIS Z 8722 条件Cに適合した、照明・受光光学系で、基材からの正反射光を取り込んだ場合の分光反射率をいう。
黒色にする手段としては、基材、絶縁材料に黒色物質を含有させることにより達成しうる。この黒色物質は、光を反射したり透過し難いものであれば特に制限はないが、好ましいものを挙げると、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、アニリンブラック、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、CoおよびCuの酸化物、Si、Ti、Ta、ZrおよびCrの炭化物などの黒色物質が使用できる。
これらの黒色物質は単独で含有させる他、2種類以上を混合して含有させることもできる。例えば、基材、絶縁材料がポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂などのポリマーの場合は、この中の黒色物質の中でも、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、アニリンブラックを好ましく含有させることができ、特にカーボンブラックを好ましく用いることができる。ガラス、セラミックの無機材料の場合は、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、CoおよびCuの酸化物、Si、Ti、Ta、ZrおよびCrの炭化物を好ましく含有させることができる。
ここで、「選択結合性物質」とは、被検物質と直接的又は間接的に、選択的に結合し得る物質を意味し、代表的な例として、核酸、タンパク質、糖類及び他の抗原性化合物を挙げることができる。核酸は、DNAやRNAでもPNAでもよい。特定の塩基配列を有する一本鎖核酸は、該塩基配列又はその一部と相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸と選択的にハイブリダイズして結合するので、本発明でいう「選択結合性物質」に該当する。また、タンパク質としては、抗体及びFabフラグメントやF(ab')2フラグメントのような、抗体の抗原結合性断片、並びに種々の抗原を挙げることができる。抗体やその抗原結合性断片は、対応する抗原と選択的に結合し、抗原は対応する抗体と選択的に結合するので、「選択結合性物質」に該当する。糖類としては、多糖類が好ましく、種々の抗原を挙げることができる。また、タンパク質や糖類以外の抗原性を有する物質を固定化することもできる。「選択結合性物質」として、特に好ましいものは、核酸、抗体及び抗原である。本発明に用いる選択結合性物質は、市販のものでもよく、また、生細胞などから得られたものでもよい。
生細胞からのDNA又はRNAの調製は、公知の方法、例えばDNAの抽出については、Blinらの方法( Blin et al., Nucleic Acids Res. 3: 2303 (1976))等により、また、RNAの抽出については、Favaloroらの方法(Favaloro etal., Methods Enzymol.65: 718 (1980))等により行うことができる。固定化する核酸としては、更に、鎖状若しくは環状のプラスミドDNAや染色体DNA、これらを制限酵素により若しくは化学的に切断したDNA断片、試験管内で酵素等により合成されたDNA、又は化学合成したオリゴヌクレオチド等を用いることもできる。
本発明の検出方法に供せられる被検物質としては、測定すべき核酸、例えば、病原菌やウイルス等の遺伝子や、遺伝病の原因遺伝子等並びにその一部分、抗原性を有する各種生体成分、病原菌やウイルス等に対する抗体等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの被検物質を含む検体としては、血液、血清、血漿、尿、便、髄液、唾液、各種組織液等の体液や、各種飲食物並びにそれらの希釈物等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、被検物質となる核酸は、血液や細胞から常法により抽出した核酸を標識してもよいし、該核酸を鋳型として、PCR等の核酸増幅法によって増幅したものであってもよい。後者の場合には、測定感度を大幅に向上させることが可能である。核酸増幅産物を被検物質とする場合には、蛍光物質等で標識したヌクレオシド三リン酸の存在下で増幅を行うことにより、増幅核酸を標識することが可能である。また、被検物質が抗原又は抗体の場合には、被検物質である抗原や抗体を常法により直接標識してもよいし、被検物質である抗原又は抗体を選択結合性物質と結合させた後、基材を洗浄し、該抗原又は抗体と抗原抗体反応する標識した抗体又は抗原を反応させ、基材に結合した標識を測定することもできる。
固定化物質と被検物質を相互作用させる工程は、従来と全く同様に行うことができる。反応温度及び時間は、ハイブリダイズさせる核酸の鎖長や、免疫反応に関与する抗原及び/又は抗体の種類等に応じて適宜選択されるが、核酸のハイブリダイゼーションの場合、通常、50℃〜70℃程度で1分間〜十数時間、免疫反応の場合には、通常、室温〜40℃程度で1分間〜数時間程度である。
上記方法により、固定化された選択結合性物質と選択的に結合する核酸や抗体、抗原等の被検物質を測定することができる。すなわち、選択結合性物質として核酸を固定化した場合には、この核酸又はその一部と相補的な配列を有する核酸を測定することができる。また、選択結合性物質として抗体又は抗原を固定化した場合には、この抗体又は抗原と免疫反応する抗原又は抗体を測定することができる。なお、本明細書でいう「測定」には検出と定量の両者を示すものである。
本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
(基材の処理)
顕微鏡用のスライドガラス(松浪ガラス製)にサンドブラスト法により、一辺の長さが8mmの正方形の領域の部分うち、核酸を固定化する部分以外のガラスを削り、凹凸部と平坦部を備える基材をえた。具体的には、凹凸部における、凹部から凸部表面までの高さ0.5mm、直径0.5mm、ピッチが2mmである9本の凸部を設けた。なお、サンドブラスト処理していない部分は平坦である(この部分が本発明における平坦部に相当する)。
実際に測定顕微鏡にて、各凸部上面部分の形状を観察して凸部上部がほぼ真円であることを確認した。ついで、この測定顕微鏡にて各凸部上面の直径を測定して面積を計算したところ、いずれの凸部上面部分の面積は、ほぼ0.2mm2であり、同一であった。すなわち、9個の凸部の内、(最も大きい上面の面積)を(最も小さい上面の面積)で割った値は1.2未満であった。
次いで、スライド全面に真空蒸着法によりCrを2nm蒸着し、次いで金を100nm蒸着した。そして、凸部上面と平坦部上面が電気的に導通していることを確認した。このとき、凸部の側面には、導電性材料(金)が均一に作製されていることを確認した。
さらに、ラッピングペーパーにより凸部上面のみの金とCrを除去した。次いで、この加工したスライドを3mol/l、NaOH水溶液に30分浸し、次いで、超純水で十分に洗浄して乾燥した。そして、10体積% 3-アミノプロピルトリエトキシシランのアセトン溶液に5時間浸した。その後、スライドガラスを引き上げ、アセトンで洗浄して乾燥した。このようにして、凸部上面のガラス面にアミノ基を導入した。
次に、シリコーン樹脂であるシルガード184(Sylgard 184(登録商標))(Sylgardはダウ・コーニング(Dow Corning)社の登録商標)のキットに含まれるシリコーンエラストマー液とキュアリングエージェント液をメーカー推奨の割合で混ぜた後、さらに、トルエンを加え粘度を調整した。この溶液を、凹部の端からスポイドで注意深くゆっくりと注入し、凹部全体と、凸部の側面をこの溶液(シリコーン樹脂)で覆うことができた。これを、80℃に保持してシリコーン樹脂を硬化した。硬化後、凸部の表面部分には、シリコーン樹脂が付着していないことを顕微鏡で確認した。作製した基材の模式図を図5に示す。
そして、1体積%グルタルアルデヒド水溶液にこの基材を1時間浸した。こうして、ガラス表面に、アルデヒド基を導入した。
また、同様な基材を作製して、任意の1つの凸部上面の平坦性をAFM(原子間力顕微鏡;デジタルインスツルメント社製 NanoscopeIII)で測定したところ、この部分の凹凸の自乗平均平方根(RMS)は30nm以下であり、また、全ての凸部上面部分に50μm以上の凹凸は認められず十分平滑であった。また、それぞれの凸部上面の高さのばらつき(最も高い凸部上面の高さと最も低い凸部上面との高さの差)、さらには、凸部上面の高さの平均値と平坦部上面の高さの差を測定したところそれぞれ0.5μm以下であった。
このようにして、凹凸部と平坦部が設けられており、該凹凸部の凸部上面は実質的に平坦であり、凸部の上面の高さと平坦部分の上面の高さが、同一であることを特徴とする選択結合性物質が固定化された基材を得た。
なお、別に本実施例で用いたシリコーン樹脂と、3-アミノプロピルトリエトキシシランで処理したスライドガラスについて、それぞれ、水の接触角を測定したところ、シリコーン樹脂の接触角の方が明らかに大きかった。3-アミノプロピルトリエトキシシランで処理したスライドガラスの対水接触角が40度、シリコーン樹脂の対水接触角が100度であった。なお、接触角は、純水を20μl程度、サンプルの上に静かに置いて、接触角計(協和界面(株)製、CA−D)を用いて測定した。
(核酸の処理および基材への核酸の固定)
以下の配列の核酸を合成した。
5'-TTTACGTATACACGCGTGTA-3'(配列番号1;5’末端アミノ化)
配列番号(DNA)1の5’末端はアミノ化されている。これを、これをPBS(NaClを8g、NaHPO・12HOを2.9g、KClを0.2g、KHPOを0.2g純水に溶かし1lにメスアップしたもの)に、100pmol/μlの濃度で溶かした。
上記で調整した基材の凸部に、この調整した核酸溶液をマイクロピペットで点着した。この時、凸部の上面以外の部分は、シリコーン樹脂にて撥水処理を施しているので、凸部の上面から核酸溶液が流れてしまうようなことはなかった。計9個の凸部に溶解した核酸溶液を点着して、湿度100%のプラスチック溶液にいれ30℃で24時間放置した。このようにして、DNA1の5’末端のアミノ基と基材のアルデヒド基をシッフ塩基結合させることにより、DNAを固定化した。
次いで、この基材を0.2重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)水溶液の中にスライドを入れ、2分間振とうし、さらに、純水中で2分間振とうして洗浄した。さらに、1.5gのNaBHに450mlのPBS(NaClを8g、NaHPO・12HOを2.9g、KClを0.2g、KHPOを0.2g純水に溶かし1lにメスアップしたもの)、100%エターノールを133ml加えた溶液を準備した。溶液の準備後、素早く前記スライドグラスをこの溶液に浸し、5分後、スライドガラスを取りだした。このようにして、DNAと結合していない、スライドガラス上の余分なアルデヒド基をブロッキングした。次いで、0.2重量%SDS水溶液、純水の順に洗浄し、乾燥した。
(ハイブリダイゼーション用核酸の調整)
以下の配列の核酸を合成した。
5'-TAGCATGCTAATGCATGCATTGGAGAACTGATCGACACAGTACACGCGTGTATACGTAAAGTGGCCATCCATAGTCTTCTAGGCTGCTCCCCGCGTGGCC-3'(配列番号2)
5'-GGCCACGCGGGGAGCAGCCTACAAGACTATGGATGGCCACTTTACGTATACACGCGTGTACTGTGTCGATCAGTTCTCCAATGCATGCATTAGCATGCTA-3'(配列番号3)
配列番号(DNA)2の5’末端から41番目の塩基から60番目の塩基までは、配列番号(DNA)1と相補的な配列を有している。また、配列番号(DNA)3と配列番号(DNA)2とは、相補的な塩基配列を有している。
100nmolのDNA2と100nmolのDNA3をそれぞれ19.7mlの純水にとかし、これらを混合し二本鎖のDNAとした。さらに、9merのランダムプライマー(宝酒造(株)製;製品番号3802)を6mg/mlの濃度に溶かしたものを2μl加えた。この溶液を100℃に加熱した後、氷上で急冷した。これらにKlenow Fragment(宝酒造(株)製;製品番号2140AK)付属のバッファーを5μl、dNTP混合物(dATP、dTTP、dGTPの濃度はそれぞれ2.5mM、dCTPの濃度は400μM)を2.5μl加えた。さらに、Cy5−dCTP(アマシャムファルマシアバイオテク製;製品番号PA55021)を2μl加えた。この溶液に10UのKlenow Fragmentを加え、37℃で20時間インキュベートし、Cy5で標識されたDNAを得た。ついでこれを精製、乾燥した後、ヒスチジン溶液(50mM)100μlに溶かし、ハイブリダイゼーション用の溶液を得た。
(ハイブリダイゼーション)
カバーガラスにクロムを5nm、金を100nm蒸着した。これに金線をはんだで付けた。
一方、先に用意した核酸が固定化されている基材の凹凸部分に、ハイブリダイゼーション用の溶液を50μl加え、カバーガラスの金の面が基材の凹凸部分に向くようにして、上記のカバーガラスをかぶせた。この時、基材の金とカバーガラスの金が電気的にショートしないように、高さ0.2mmのスペーサーを間に入れた。カバーガラスの周りをペーパーボンドでシールし、ハイブリダイゼーションの溶液が乾燥しないようにした。
ついで、基材の金を電源の陽極、カバーガラスの金(金線)を電源の陰極につないだ。これを65℃のオーブンに入れ15分間インキュベートした。そして、電源から1Vの電圧を3分間印加した後、オーブンから取りだし、カバーガラスを剥離後に洗浄、乾燥した。
(測定)
スキャナー(Axon Instruments社のGenePix 4000A)に上記処理後の基材をセットし、レーザー出力33%、フォトマルチプライヤーの電圧を500に設定した状態で測定を行った。その結果を表1に示す。
Figure 0004877297
なお、ここでいうノイズとは、凸部上面のまわりの蛍光強度のメジアンであり、蛍光強度とは、スポット内の蛍光強度のメジアンである。
また、各スポットの大きさは、凸部上面の面積と等しく、スポットの大きさのばらつきもなかった。また、本実施例では、ハイブリダイゼーションの時間も20分以内で完了した。
比較例1
顕微鏡用のスライドガラス(松浪ガラス製)を3mol/l、NaOH水溶液に30分浸し、次いで、超純水で十分に洗浄して乾燥した。そして、10体積% 3-アミノプロピルトリエトキシシランのアセトン溶液に5時間浸した。その後、スライドガラスを引き上げ、アセトンで洗浄して乾燥した。そして、1体積%グルタルアルデヒド水溶液にこの基材を1時間浸した。このような処理を施すことにより、ガラス表面に、アルデヒド基を導入した。
実施例1と同じ核酸を用い、また、核酸の処理も実施例1と同様に行った。調整した基材固定用の核酸(DNA1)溶液をマイクロピペットで9箇所に点着し、この後の処理(洗浄、ハイブリダイゼーション溶液などの処理)も実施例1と同様に行った。
ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション用の溶液を調整したスライドグラスに20μl加えカバーガラスをかぶせた。この時、高さ0.1mmのスペーサーを入れた。カバーガラスの周りをペーパーボンドでシールし、ハイブリダイゼーションの溶液が乾燥しないようにした。
ついで、65℃のオーブンに入れ10時間インキュベートした。そして、オーブンから取りだし、カバーガラスを剥離後に洗浄、乾燥した。実施例1と同様に測定を行った結果を表2に示す。
Figure 0004877297
なお、ここでいうノイズとは、スポットのまわりの蛍光強度のメジアンであり、蛍光強度とは、スポット内の蛍光強度のメジアンである。このように、実施例1と比較し、明らかにノイズの大きいことがわかった。また、スポットの大きさのばらつきも大きかった。
また、本比較例の場合、事前の予備検討により、ハイブリダイゼーションを完了させるためには、65℃でおおむね3時間以上必要であることがわかった。すなわち、実施例1では、ハイブリダイゼーションの時間も大幅に短縮できることがわかった。
実施例2
ホットエンボス法により、基材の材料がポリメチルメタクリレート(PMMA)の基材を作製した。全体の大きさは、顕微鏡用のスライドガラスと同じ大きさであり、厚さを1mmとした。また、一辺の長さが8mmの正方形の領域の部分をへこませ、この中に、凸部を設け凹凸部を作製した。具体的には、凹凸部における、凹部から凸部表面までの高さ0.5mm、直径500μm、ピッチが2mmである9本の凸部を設けた。
ついで、凸部をラッピングペーパーで削り、平坦部上面と、凸部上面の高さの差が50μm、30μm、0μmの3種類の基材を作製した。凸部の上面(8箇所)にCy5−dCTPを500pl点着、乾燥し、それぞれの基材について測定を行った。その結果(Cy5の蛍光強度とノイズの平均値)を表3に示す。
比較例2
平坦部上面と、凸部上面の高さの差を100μmにした他は、実施例2と同様に基材を作成し、評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 0004877297
この結果から、平坦部上面と、凸部上面の高さの差が50μm以下であると、実用上ほぼ問題のないことがわかった。
このように、凸部上面の高さと平坦部分の高さの差が大きいと、スキャナーの焦点深度の関係で分析できないほどシグナルが小さくなってしまい、評価に用いる基材としては不適切である。
実施例3
ホットエンボス法により、基材の材料がポリメチルメタクリレート(PMMA)製の透明な基材を作製した。全体の大きさは、顕微鏡用のスライドガラスと同じ大きさであり、厚さを1mmとした。また、一辺の長さが8mmの正方形の領域の部分をへこませ、この中に、凸部を設け凹凸部を作製した。具体的には、凹凸部における、凹部から凸部表面までの高さ0.5mm、直径500μm、ピッチが2mmである9本の凸部を設けた。ついで、凸部をラッピングペーパーで削り、平坦部上面と、凸部上面の高さの差が0μmの基材を作製した。
別途、エチレンジアミン5mlを密閉容器の中に入れ、窒素でパージした後、n−ブチルリチウムを5ml少しずつ加えた。これを2時間程度十分に攪拌し、紫色の反応物(n−リチウムエチレンジアミン)を得た。これを、作製した基材に滴下し1分後に水で洗浄して、基材の表面にアミノ基を導入した。
次いで、シリコーン樹脂であるシルガード184(Sylgard 184(登録商標))(Sylgardはダウ・コーニング(Dow Corning)社の登録商標)のキットに含まれるシリコーンエラストマー液とキュアリングエージェント液をメーカー推奨の割合で混ぜた後、さらに、トルエンを加え粘度を調整した。この溶液を、基材の凹部の端からスポイドで注意深くゆっくりと注入し、凹部全体と、凸部の側面をこの溶液(シリコーン樹脂)で覆うことができた。60℃に保持してシリコーン樹脂を硬化した。
なお、別に本実施例で用いたシリコーン樹脂と、本実施例の方法でアミノ基を導入した透明なPMMA板について、それぞれ、水の接触角を測定したところ、シリコーン樹脂の接触角の方が明らかに大きかった。実施例1と同様に接触角を測定したところ、アミノ基を導入したPMMA板の対水接触角が60度、本実施例で用いたシリコーン樹脂の対水接触角が100度であった。
次いで、実施例1と同様に調整したDNA1の溶液を、基材の9箇所の凸部に点着して、乾燥した。こうして、基材表面のアミノ基とDNAを静電的な結合により固定化した。そしてこの基材をさらに純水で洗浄した。
ハイブリダイゼーション用のDNAは実施例1と同様に調整した。ただし、ハイブリダイゼーション用のDNAは、終濃度が、5×SSC(5×SSCとはNaClを43.8g、クエン酸3ナトリウム水和物を22.1gの純水にとかし、200mlにメスアップしたもの)、0.01重量%サケ精子DNA、1.0重量%ウシ血清アブルミン、0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)である溶液100μlに溶解した。
そして、このハイブリダイゼーション用の溶液を基材上に50μlたらして、カバーガラスをかぶせた。この時、高さ0.2mmのスペーサーをカバーガラスと基材の間に入れた。カバーガラスの周りをペーパーボンドでシールし、ハイブリダイゼーションの溶液が乾燥しないようにした。これを65℃の条件で、10時間インキュベートした後、オーブンから取りだし、カバーガラスを剥離後に洗浄、乾燥した。
スキャナー(Axon Instruments社のGenePix 4000A)に上記処理後の基材をセットし、レーザー出力33%、フォトマルチプライヤーの電圧を500に設定した状態で測定を行った。その結果(Cy5の蛍光強度とノイズの凸部9箇所における平均値)を表4に示す。
実施例4
PMMA中に1重量%の割合でカーボンブラックを混合した黒色平面板から、ホットエンボス法により基材を作製した。全体の大きさ、凹凸部の形状は、実施例3と同様にした。また、平坦部上面と凸部上面の高さの差は、実施例3と同様に0μmとした。また、基材表面のアミノ基導入は実施例3と同様に行った。
次いで、シリコーン樹脂である、シルガード184(Sylgard 184(商標))(Sylgardはダウ・コーニング(Dow Corning)社の商標)のキットに含まれるシリコーンエラストマー液とキュアリングエージェント液をメーカー推奨の割合で混ぜた後、さらに、トルエンを加え粘度を調整した。これに、カーボンブラックを1重量%の割合で混ぜて黒色にした。この溶液を、基材の凹部の端からスポイドで注意深くゆっくりと注入し、凹部全体と、凸部の側面をこの溶液(シリコーン樹脂)で覆うことができた。60℃に保持してシリコーン樹脂を硬化した。
別途、本実施例で用いたカーボンブラック入りのシリコーン樹脂と、本実施例の方法でアミノ基を導入した黒色PMMA板について、それぞれ、水の接触角を測定したところ、シリコーン樹脂の接触角の方が明らかに大きかった。実施例1と同様に接触角を測定したところ、アミノ基を導入したPMMA板の対水接触角が60度、本実施例で用いたシリコーン樹脂の対水接触角が100度であった。
さらに、別途同様な基材を作製して、この凹部における基材の分光反射率と分光透過率を測定したところ、可視光領域(400nmから800nm)のいずれの波長でも4.7%以下であり。また、同範囲の波長で、透過率は0.5%以下であった。分光反射率、分光透過率とも、可視光領域において特定のスペクトルパターン(ピークなど)はなかった。なお、分光反射率は、JIS Z 8722の条件Cに適合した照明・受光光学系を搭載した装置(ミノルタカメラ製、CM−2002)を用いて、基材からの正反射光を取り込んだ場合の分光反射率を測定した。
実施例3と同様に、点着するDNAの調整、凸部へのDNA溶液の点着、ハイブリダイゼーション用のDNAの調整、ハイブリダイゼーションの操作を行い、実施例3と同様に、測定を行った。その結果(Cy5の蛍光強度とノイズの凸部9箇所における平均値)を表4に示す。
実施例5
ホットエンボス法により、材料がポリメチルメタクリレート(PMMA)製の透明な基材を作製した。全体の大きさ、凹凸部の形状は、実施例3と同様にした。また、平坦部上面と凸部上面の高さの差は、実施例3と同様に0μmとした。また、基材表面のアミノ基導入は実施例3と同様に行った。
次いで、シリコーン樹脂である、シルガード184(Sylgard 184(登録商標))(Sylgardはダウ・コーニング(Dow Corning)社の登録商標)のキットに含まれるシリコーンエラストマー液とキュアリングエージェント液をメーカー推奨の割合で混ぜた後、さらに、トルエンを加え粘度を調整した。これに、カーボンブラックを1重量%の割合で混ぜて黒色にした。この溶液を、基材の凹部の端からスポイドで注意深くゆっくりと注入し、凹部全体と、凸部の側面をこの溶液(シリコーン樹脂)で覆うことができた。60℃に保持してシリコーン樹脂を硬化した。
別途、本実施例で用いたカーボンブラック入りのシリコーン樹脂と、本実施例の方法でアミノ基を導入した透明なPMMA板について、それぞれ、水の接触角を測定したところ、シリコーン樹脂の接触角の方が明らかに大きかった。実施例1と同様に接触角を測定したところ、アミノ基を導入したPMMA板の対水接触角が60度、本実施例で用いたシリコーン樹脂の対水接触角が100度であった。
さらに、別途同様な基材を作製して、この凹部における基材の分光反射率と分光透過率を実施例4と同様に測定したところ、可視光領域(400nmから800nm)のいずれの波長でも分光反射率は、5%以下であり、また、同範囲の波長で、分光透過率は1%以下であった。分光反射率、分光透過率とも、可視光領域において特定のスペクトルパターン(ピークなど)はなく、ブロードであった。
実施例3と同様に、点着するDNAの調整、凸部へのDNA溶液の点着、ハイブリダイゼーション用のDNAの調整、ハイブリダイゼーションの操作を行い、実施例3と同様に測定を行った。その結果(Cy5の蛍光強度とノイズの凸部9箇所における平均値)を表4に示す。
比較例3
厚さ1mmの透明なPMMA板をスライドガラスと同じ大きさに切りだした。別途、エチレンジアミン5mlを密閉容器の中に入れ、窒素でパージした後、n−ブチルリチウムを5ml少しずつ加えた。これを2時間程度十分に攪拌し、紫色の反応物(n−リチウムエチレンジアミン)を得た。これを、作製したPMMA板に滴下し1分後に水で洗浄して、表面にアミノ基を導入した。
次いで、実施例1と同様に調整したDNA1の溶液を、PMMA板の9箇所に点着して、乾燥した。こうして、表面のアミノ基とDNAを静電的な結合により固定化した。そして、これを純水で洗浄した。
ハイブリダイゼーション用のDNAは実施例3と同様に調整した。そして、このハイブリダイゼーション用の溶液をPMMA板の上に20μlたらして、カバーガラスをかぶせた。この時、高さ0.2mmのスペーサーをカバーガラスと基材の間に入れた。カバーガラスの周りをペーパーボンドでシールし、ハイブリダイゼーションの溶液が乾燥しないようにした。これを65℃の条件で、10時間インキュベートした後、オーブンから取りだし、カバーガラスを剥離後に洗浄、乾燥した。そして、実施例3と同様に測定を行った。その結果を表4に合わせて示す。
Figure 0004877297
このように、本発明の基材では、平面板と比較し、S/Nが良好であることがわかる。また、基材を黒色にすることにより、さらにS/Nが向上することがわかった。
実施例6
次いで、凸部の高さがばらついた場合について実験を行った。ホットエンボス法により、基材の材料がポリメチルメタクリレート(PMMA)製の透明な基材を作製した。全体の大きさは、顕微鏡用のスライドガラスと同じ大きさであり、厚さを1mmとした。また、一辺の長さが8mmの正方形の領域の部分をへこませ、この中に、凸部を設け凹凸部を作製した。具体的には、凹凸部における、凹部から凸部表面までの高さ0.2mm、直径500μm、ピッチが2mmである9本の凸部を設けた。ついで、凸部をラッピングペーパーで削り、凸部上面の高さに差を設けた。すなわち、他の凸部上面(基準となる凸部)よりも、30μm低い凸部(3箇所)がある基材(基材ア)、他の凸部上面よりも、50μm低い凸部(3箇所)がある基材(基材イ)をそれぞれ作製した。なお、これら基材の低い部分以外の凸部上面の高さと、平坦部分の高さの差は0μmであった。実施例3と同様に、点着するDNAの調整、凸部上面へのDNA溶液の点着、ハイブリダイゼーション用のDNAの調整、ハイブリダイゼーションの操作を行い、実施例3と同様に測定を行った。その結果(蛍光強度とノイズの平均値)を表5に示す。
比較例4
実施例6と同様に、同様に基材を調整し他の凸部上面よりも、100μm低い凸部(3箇所)がある基材(基材ウ)をそれぞれ作製した。実施例3と同様に測定を行った。その結果(蛍光強度とノイズの平均値)を表5に示す。
Figure 0004877297
このように、凸部の高さが大きく違うと、スキャナーの焦点深度の関係で、凸部の高さによってシグナル強度が大きく違ってしまい、評価する基材としては不適である。
本発明の基材の模式図 本発明の基材の断面模式図 マイクロアレイ突き当て用治具の例 基材凹凸部の断面図 実施例1で作製した基材の凹凸部における断面模式図
符号の説明
1 平坦部
2 凹凸部
3 マイクロアレイ
4 対物レンズ
5 励起光
6 マイクロアレイを治具に突き当てるためのバネ
10 導電性膜
11 凸部上面
12 導電性膜
13 絶縁膜

Claims (6)

  1. 平坦部と凹凸部が設けられ、該凹凸部の凸部の上面の高さと該平坦部分の高さが略同一であり、該凹凸部の複数の凸部の上面に選択結合性物質が固定化された基材を用いて検体に含まれる被検物質を検出する方法であって、集光された光を該基材平坦部で焦点を合わせてから該基材凹凸部の凸部上面に照射し、選択結合性物質と被検物質との反応を検出する方法。
  2. 該凹凸部の凸部上面が実質的に平坦であり、選択結合性物質が固定化された凸部上面の高さが、略同一である請求項1に記載の検出する方法。
  3. 選択結合性物質が固定化された複数の凸部の内、最も高い凸部の高さと、最も低い凸部の高さの差が50μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の検出する方法。
  4. 凹凸部の凸部の上面の高さと平坦部分の高さの差が50μmである請求項1から3のいずれかに記載の検出する方法。
  5. 基材上に設けられた複数の凸部の上面の面積が、略同一である請求項1から4のいずれかに記載の検出する方法。
  6. 少なくとも基材の一部が黒色である請求項1からのいずれか記載の検出する方法。
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